(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面から下面に貫通する吐出溝が基準方向に配列する複数の溝列と、前記吐出溝の側面に設置される駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し下面に設置される端子電極とを有する圧電体基板と、
前記端子電極と電気的に接続し、前記圧電体基板の下面に接続されるフレキシブル回路基板と、を備え、
前記圧電体基板は、複数の前記溝列の間に上面から下面に貫通する第一の開口部を備え、前記フレキシブル回路基板は前記第一の開口部を通して前記圧電体基板の下面から上面に引出される液体噴射ヘッド。
前記圧電体基板は、上面から下面に貫通し前記吐出溝と基準方向に交互に配列する非吐出溝と、前記非吐出溝の側面に設置される駆動電極と、を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
前記吐出溝に連通するノズルが基準方向に配列する複数のノズル列を有し、前記圧電体基板の下面に接合されるノズルプレートを備える請求項1〜5のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッド。
前記溝形成工程は、前記圧電体基板の上面から切削して前記吐出溝を形成する吐出溝形成工程と、前記圧電体基板の下面から切削して非吐出溝を形成する非吐出溝形成工程とを備える請求項8〜13のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、記録紙等にインク滴を吐出して文字や図形を記録する、或いは素子基板の表面に液体材料を吐出して機能性薄膜を形成するインクジェット方式の液体噴射ヘッドが利用されている。この方式は、インクや液体材料などの液体を液体タンクから供給管を介してチャンネルに導き、チャンネルに充填される液体に圧力を印加してチャンネルに連通するノズルから液滴として吐出する。液滴の吐出の際には、液体噴射ヘッドや被記録媒体を移動させて文字や図形を記録する、或いは所定形状の機能性薄膜や三次元構造を形成する。
【0003】
この種の液体噴射ヘッドは、液体に瞬間的に圧力を印加するためのチャンネルが複数配列しチャンネル列を構成するアクチュエータ部と、各チャンネルに液体を供給する液室を備える液体供給部と、複数のチャンネルそれぞれに連通し、液滴を噴射するノズルが配列するノズルプレートとを備える。近年、記録密度の増大化に伴って、一つの液体噴射ヘッドに複数のチャンネル列を構成するものが実用化されている。しかし、個々のチャンネルに独立して駆動信号を供給する必要があるため、チャンネル列が増加すると駆動信号を供給するための電極配線が複雑となる。個別に製造した液体噴射ヘッドを複数並べて複数のチャンネル列を構成する場合は、液体噴射ヘッド全体の容積が大きくなると共に、製造時のばらつきにより各液体噴射ヘッドのノズル位置を高精度に合わせ込むことが難しくなる。
【0004】
特許文献1には4つのノズル列を備える液体噴射ヘッドが記載されている。
図10は特許文献1に記載される液体噴射ヘッドの分解斜視図である。液体噴射ヘッドは、4つのノズル列が形成される液室ユニット106と、ベース部材141の上面に4個の圧電素子部材142が設置されるアクチュエータユニット104と、収納部152にアクチュエータユニット104を装着し、液室ユニット106に液体を供給するフレームユニット105から構成される。液室ユニット106は、4つのノズル列が並列して形成されるノズル板101と、液体を加圧するための液室が4列形成され、各列の液室が各列のノズル111に連通するようにノズル板101に接合される流路部材102と、液室を閉塞するように流路部材102に接合され、各列の各液室に独立して振動を伝達する振動部材103とから構成される。アクチュエータユニット104の4個の圧電素子部材142は4列の液室に対応して接合される。圧電素子部材142は各列の各液室に独立して振動を伝達する。フレームユニット105は各列の液室に液体を供給する4つの共通液室151を備える。
【0005】
ここで、4つの圧電素子部材142を保持するベース部材141は、2列目の圧電素子部材142と3列目の圧電素子部材142との間に貫通孔144を備える。この貫通孔144にフレキシブル回路基板(FPCケーブル143)を通す。即ち、1列目の圧電素子部材142と4列目の圧電素子部材142はベース部材141の外側面に沿う2枚のFPCケーブル143に接続される。2列目の圧電素子部材142と3列目の圧電素子部材142はベース部材141の貫通孔144を通る2枚のFPCケーブル143に接続される。各FPCケーブル143は各圧電素子部材142の側面に接続され、各圧電素子の端子と電気的に接続される。
【0006】
特許文献2には第1列〜第4列のチャンネル列が形成される液体噴射ヘッドが記載される。各チャンネルは圧電体基板の表面に形成した細長い溝からなり、溝と溝を区画する側壁の側面に駆動電極が形成され、この駆動電極に駆動信号を与えて側壁を厚みすべり変形させて溝に充填される液体に圧力を印加し、溝に連通するノズルから液滴を吐出する。第1列と第4列を構成する圧電体基板は溝が基板の前端から後端にストレートに形成される。第2列と第3列を構成する圧電体基板は溝が基板の前端から後端の手前で終端し、終端近傍では基板の後方に向かって溝の深さが漸次浅くなる。第1列と第4列を構成する圧電体基板では、溝の側面に設置される駆動電極と電気的に接続される引き出し電極が圧電体基板の後端側面に引出され、後端側面においてフレキシブル回路基板に接続される。第2列と第3列を構成する圧電体基板では、溝の側面に設置される駆動電極と電気的に接続される引き出し電極は圧電体基板の後端近傍の基板表面に引出され、基板表面においてFPCに接続される。第1列〜第4列を構成する各圧電体基板は個別に製造されて接着剤により接続されて一体化される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の液体噴射ヘッドは、構成要素が極めて多く、製造方法が複雑で生産性が低い。例えば、貫通孔144を挟んで両側に設置される2列目と3列目の圧電素子部材142について、圧電素子部材142をベース部材に接着した状態で貫通孔144側の側面にFPCケーブル143を圧着するのは困難である。そこで、圧電素子部材142の側面にFPCケーブル143を圧着して接続し、その後、FPCケーブル143が接続された圧電素子部材142をベース部材141に接合する。そのため、組み立て工程が煩雑で位置合わせが難しくなる。
【0009】
また、特許文献2に記載の液体噴射ヘッドは、第1列〜第4列を構成する圧電体基板を個別に作成し、第2列の圧電体基板と第3列の圧電体基板を接合し、第2列の圧電体基板の上面に第1列の圧電体基板を接合し、第3列の圧電体基板の下面に第4列の圧電体基板を接合する。そのため、各列の溝の位置合わせが煩雑となる。また、第1列と第4列の溝の形状と、第2列と第3列の溝の形状が異なるので、各列の吐出条件を一定にするのが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液体噴射ヘッドは、上面から下面に貫通する吐出溝が基準方向に配列する複数の溝列と、前記吐出溝の側面に設置される駆動電極と、前記駆動電極に電気的に接続し下面に設置される端子電極とを有する圧電体基板と、前記端子電極と電気的に接続し、前記圧電体基板の下面に接続されるフレキシブル回路基板と、を備え、前記圧電体基板は、複数の前記溝列の間に上面から下面に貫通する第一の開口部を備え、前記フレキシブル回路基板は前記第一の開口部を通して前記圧電体基板の下面から上面に引出されることとした。
【0011】
また、前記吐出溝に連通する液室を有し、前記圧電体基板の上面に接合されるカバープレートを備え、前記カバープレートは、板厚方向に貫通する第二の開口部を備え、前記フレキシブル回路基板は前記第二の開口部を通して引出されることとした。
【0012】
また、前記カバープレートの前記圧電体基板とは反対側の表面に接合され、前記液室に連通する流路を有する流路プレートを備え、前記流路プレートは、前記カバープレートの側から前記カバープレートとは反対側に貫通する第三の開口部を備え、前記フレキシブル回路基板は前記第三の開口部を通して引出されることとした。
【0013】
また、前記圧電体基板は、上面から下面に貫通し前記吐出溝と基準方向に交互に配列する非吐出溝と、前記非吐出溝の側面に設置される駆動電極と、を有することとした。
【0014】
また、前記圧電体基板は、基準方向に並列に4列の溝列が設置され、前記第一の開口部は2列目と3列目の前記溝列の間に設置され、1列目と2列目の隣接する2つの前記溝列、又は、3列目と4列目の隣接する2つの前記溝列において、一方側の溝列に含まれる前記吐出溝の他方側の端部と、他方側の溝列に含まれる前記非吐出溝の一方側の端部とは離間し、かつ、前記圧電体基板の厚さ方向において重なることとした。
【0015】
また、前記吐出溝に連通するノズルが基準方向に配列する複数のノズル列を有し、前記圧電体基板の下面に接合されるノズルプレートを備えることとした。
【0016】
本発明の液体噴射装置は、上記の液体噴射ヘッドと、前記液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させる移動機構と、前記液体噴射ヘッドに液体を供給する液体供給管と、前記液体供給管に前記液体を供給する液体タンクと、を備えることとした。
【0017】
本発明の液体噴射ヘッドの製造方法は、圧電体基板を切削し、吐出溝が基準方向に配列する溝列を複数形成する溝形成工程と、前記吐出溝の側面に駆動電極を形成し、前記圧電体基板の下面に端子電極を形成する電極形成工程と、前記圧電体基板の隣り合う前記溝列の間を切削し、前記圧電体基板の上面から下面に貫通する第一の開口部を形成する開口部形成工程と、配線パターンが形成されるフレキシブル回路基板を、前記配線パターンと前記端子電極とを電気的に接続させ、前記第一の開口部を通して前記圧電体基板の下面に接続する回路基板接続工程と、を備えることとした。
【0018】
また、複数の液室が形成されるカバープレートを、前記液室と前記吐出溝とが連通するように前記圧電体基板の上面に接合するカバープレート接合工程を備え、前記カバープレートは、隣り合う前記液室の間を板厚方向に貫通する第二の開口部を備え、前記回路基板接続工程は、前記フレキシブル回路基板を前記第二の開口部を通す工程を含むこととした。
【0019】
また、複数の液室が形成されるカバープレートを、前記液室と前記吐出溝とが連通するように前記圧電体基板の上面に接合するカバープレート接合工程を備え、前記開口部形成工程は、前記第一の開口部を形成すると同時に、前記カバープレートの隣り合う液室の間を切削して板厚方向に貫通する第二の開口部を形成する工程を含み、前記回路基板接続工程は、前記フレキシブル回路基板を前記第二の開口部を通す工程を含むこととした。
【0020】
また、前記カバープレートの前記圧電体基板の側とは反対側の表面に流路プレートを接合する流路プレート接合工程を備え、前記流路プレートは板厚方向に貫通する第三の開口部を備え、前記回路基板接続工程は、前記フレキシブル回路基板を前記第三の開口部を通す工程を含むこととした。
【0021】
また、前記カバープレートの前記圧電体基板の側とは反対側の表面に流路プレートを接合する流路プレート接合工程を備え、前記開口部形成工程は、前記第一及び第二の開口部を形成すると同時に、前記流路プレートを切削して板厚方向に貫通する第三の開口部を形成する工程を含み、前記回路基板接続工程は、前記フレキシブル回路基板を前記第三の開口部を通す工程を含むこととした。
【0022】
また、前記圧電体基板の下面にノズルプレートを接合するノズルプレート接合工程を備え、前記ノズルプレート接合工程は、前記圧電体基板の下面に前記ノズルプレートを接合した後に、前記ノズルプレートを切削して前記圧電体基板の前記端子電極が形成される領域を露出させる工程を含むこととした。
【0023】
また、前記溝形成工程は、前記圧電体基板の上面から切削して前記吐出溝を形成する吐出溝形成工程と、前記圧電体基板の下面から切削して非吐出溝を形成する非吐出溝形成工程とを備えることとした。
【発明の効果】
【0024】
本発明による液体噴射ヘッドは、上面から下面に貫通する吐出溝が基準方向に配列する複数の溝列と、吐出溝の側面に設置される駆動電極と、駆動電極に電気的に接続し下面に設置される端子電極とを有する圧電体基板と、端子電極と電気的に接続し、圧電体基板の下面に接続されるフレキシブル回路基板と、を備え、圧電体基板は、複数の溝列の間に上面から下面に貫通する第一の開口部を備え、フレキシブル回路基板は第一の開口部を通して圧電体基板の下面から上面に引出される。これにより、溝列の数が増加しても端子電極と外部回路とを容易に接続することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態係に係る液体噴射ヘッド1の説明図である。
図1(a)は、液体噴射ヘッド1の吐出溝3の溝方向の断面模式図であり、
図1(b)は、液体噴射ヘッド1の模式的な部分分解斜視図であり、フレキシブル回路基板8を省略している。
【0027】
図1に示すように、液体噴射ヘッド1は、圧電体基板2と、圧電体基板2の上面USに接合されるカバープレート9と、圧電体基板2の下面LSに接合されるノズルプレート13と、圧電体基板2の下面LSに接続されるフレキシブル回路基板8とを備える。圧電体基板2は、第一溝列5aと第二溝列5bが設置され、第一溝列5aと第二溝列5bの間に上面USから下面LSに貫通する第一の開口部H1が形成される。第一溝列5aは、上面USから下面LSに貫通する第一吐出溝3aが基準方向Kに配列し、第二溝列5bは、上面USから下面LSに貫通する第二吐出溝3bが基準方向Kに配列する。第一及び第二吐出溝3a、3bの側面には駆動電極6が設置され、各駆動電極6は圧電体基板2の下面LSに設置される端子電極7に電気的に接続され、端子電極7がフレキシブル回路基板8に形成される図示しない配線パターンに電気的に接続される。
【0028】
即ち、圧電体基板2は、上面USから下面LSに貫通する第一及び第二吐出溝3a、3bが基準方向Kにそれぞれ配列する第一及び第二溝列5a、5bと、第一及び第二吐出溝3a、3bの側面に設置される駆動電極6と、駆動電極6に電気的に接続し下面LSに設置される端子電極7と、第一溝列5aと第二溝列5bの間の上面USから下面LSに貫通する第一の開口部H1とを備える。そして、フレキシブル回路基板8xは第一の開口部H1を通して圧電体基板2の下面LSから上面USに引出される。
【0029】
カバープレート9は2つの第一液室10aと2つの第二液室10bと、第一液室10aと第二液室10bの間にカバープレート9の板厚方向に貫通する第二の開口部H2とを備える。2つの第一液室10aは第一吐出溝3aの両端部にそれぞれ連通し、2つの第二液室10bは第二吐出溝3bの両端部にそれぞれ連通する。第二の開口部H2は圧電体基板2の第一の開口部H1に連通し、フレキシブル回路基板8xは第二の開口部H2を通して上方に引出される。ノズルプレート13は、各吐出溝3a、3bそれぞれに連通するノズル14を有し、第一吐出溝3aに連通するノズル14が基準方向Kに配列する第一ノズル列15aと、第二吐出溝3bに連通するノズル14が基準方向Kに配列する第二ノズル列15bとを備える。ノズルプレート13は、フレキシブル回路基板8が圧電体基板2の下面LSに接続される領域においては、端子電極7が露出するように除去される。
【0030】
液体噴射ヘッド1は、更に、フレキシブル回路基板8yを備え、圧電体基板2の外周側の下面LSに接続され、圧電体基板2及びカバープレート9の側面に沿って上方に引出される。第一溝列5aと第二溝列5bとは基準方向Kに半ピッチずれて設置される。従って、第一ノズル列15aと第二ノズル列15bも基準方向Kに半ピッチずれて形成される。
【0031】
以上のとおり、圧電体基板2の第一溝列5aと第二溝列5bの間、及び、カバープレート9の第一液室10aと第二液室10bの間にそれぞれの板厚方向に貫通する第一の開口部H1及び第二の開口部H2を形成し、この第一及び第二の開口部H1、H2を通してフレキシブル回路基板8xを下面LSから上方に引出す。同一工程で第一吐出溝3aと第二吐出溝3bとを形成することができるので、組み立て時に第一吐出溝3aと第二吐出溝3bとの間の位置合わせを行う必要が無い。また、第一の開口部H1を形成することにより、第一及び第二溝列5a、5bに接続する端子電極7が第一及び第二溝列5a、5bの両側に振り分けられる。そのため、端子電極7の基準方向Kの配列ピッチが広がり、端子電極7とフレキシブル回路基板8の配線パターンとの間の接続が容易となる。吐出溝3の基準方向Kの配列が高密度化する場合に特に有効である。
【0032】
ここで、圧電体基板2としてPZTセラミックス材料を使用することができる。圧電体基板2は分極処理が施される。例えば、上面US又は下面LSの垂直方向に一様に分極処理が施される圧電体基板2や、上面US又は下面LSの垂直方向に分極処理が施される圧電体基板とこれと反対方向に分極処理が施される圧電体基板とを接合したシェブロン型の圧電体基板を使用することができる。また、本発明における圧電体基板2は、少なくとも隣接する溝の間の側壁に圧電体材料が使用されるものであればよく、圧電体基板2の周縁部やカバープレート9の液室10が対応する領域に非圧電体材料が使用されるものであってもよい。
【0033】
カバープレート9は、セラミックス材料、金属材料、合成樹脂材料等を使用することができる。カバープレート9として圧電体基板2と同程度の熱膨張係数を有する材料が好ましい。カバープレート9として、例えばPZTセラミックスやマシナブルセラミックスを使用することができる。
【0034】
液体噴射ヘッド1は次のように駆動する。第一液室10aの一方に液体を供給し、第一溝列5aの各第一吐出溝3aに液体を充填する。更に、各第一吐出溝3aから第一液室10aの他方に液体を排出し、他方から外部に液体を排出する。2つの第二液室10bも同様である。そして、4つのフレキシブル回路基板8x、8yの配線パターンから端子電極7に駆動信号を供給し、駆動電極6に駆動信号を与えて第一及び第二吐出溝3a、3bを構成する側壁に厚みすべり変形を誘起する。例えば、吐出溝3の容積を増加させ、次に収縮させる引き打ち法によりノズル14から液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1には2列の第一及び第二溝列5a、5bとこれらに対応する2列の第一及び第二ノズル列15a、15bを備え、一つの溝列の場合と比べて2倍の記録密度、或いは2倍の記録速度で記録することができる。
【0035】
圧電体基板2に形成する第一の開口部H1は、圧電体基板2を完全に分割する開口であってもよいし、圧電体基板2が完全に分割せず一部が連続して残る開口であってもよい。同様に、カバープレート9に形成する第二の開口部H2は、カバープレート9を完全に分割する開口であってもよいし、カバープレート9が完全に分割せず一部が連続して残る開口であってもよい。また、第一の開口部H1によって圧電体基板2は分割されるが、カバープレート9は一部が連続して残る構成であってもよい。
【0036】
なお、上記第一実施形態では2列の第一及び第二溝列5a、5b、2列の第一及び第二ノズル列15a、15bとしたが、更に多くの溝列5とノズル列15とすることができる。特に、3列以上の溝列5を構成する場合に中央部の溝列5と外部回路とを電気的に容易に接続することができる。また、各溝列5を構成する溝を、交互に吐出溝と非吐出溝の配列構成とすることができる。また、吐出溝や非吐出溝の形状は問わない。
【0037】
(第二実施形態)
図2は、本発明の第二実施形態に係る液体噴射ヘッド1の断面模式図である。第一実施形態と異なる点は、カバープレート9の上面に流路プレート11が設置される点であり、その他の構成は第一実施形態と同様である。以下、第一実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成については説明を省略する。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0038】
液体噴射ヘッド1は流路プレート11を備える。流路プレート11は、カバープレート9に圧電体基板2とは反対側の表面に接合され、液室10に連通する流路12を有する。流路プレート11は、カバープレート9の側からカバープレート9とは反対側に貫通する(以下、板厚方向に貫通する、という。)第三の開口部H3を備える。第三の開口部H3は、カバープレート9の第二の開口部H2に連通し、フレキシブル回路基板8xは、この第三の開口部H3を通して上方に引出される。
【0039】
具体的には、流路プレート11は、2つの第一液室10aの一方と2つの第二液室10bの一方に連通する供給流路12xと、2つの第一液室10aの他方と2つの第二液室10bの他方に連通する排出流路12yを備え、一体的に一つの流路プレート11により構成することができる。フレキシブル回路基板8xは、連通する第一の開口部H1〜第三の開口部H3を通して液滴が吐出される方向と反対の上方に引出され、フレキシブル回路基板8yは、圧電体基板2、カバープレート9及び流路プレート11の側面に沿って液滴が吐出される方向と反対の上方に引出される。そのため、駆動信号等を生成するドライバーや制御回路を液滴が吐出される側とは反対側の上方に収納することができるので、液体噴射ヘッド1をコンパクトに構成することができる。
【0040】
(第三実施形態)
図3は本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッドの模式的な部分分解斜視図である。
図4は本発明の第三実施形態に係る液体噴射ヘッド1の説明図である。
図4(a)は吐出溝3の溝方向の断面模式図であり、
図4(b)は圧電体基板2を下面LS側から見る平面模式図であり、フレキシブル回路基板8と流路プレート11を省略している。第一実施形態と異なる主な点は、第一溝列5a〜第四溝列5dの4つの溝列5を備え、これに対応する第一ノズル列15a〜第四ノズル列15dの4つのノズル列15を備え、各ノズル列15を構成する溝は吐出溝3と非吐出溝4が交互に配列する点である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0041】
図3に示すように、液体噴射ヘッド1は、圧電体基板2の上面USに接合されるカバープレート9と、圧電体基板2の下面LSに接合されるノズルプレート13と、
図4に示すように、圧電体基板2の下面LSに接続されるフレキシブル回路基板8x、8yとを備える。圧電体基板2は、基準方向Kに配列する吐出溝3と、上面USから下面LSに貫通し吐出溝3と基準方向Kに交互に配列すると非吐出溝4とを有する。基準方向Kに交互に配列する吐出溝3と非吐出溝4は、第一溝列5a〜第四溝列5dの並列する4つの溝列5を構成する。圧電体基板2は、更に、吐出溝3と非吐出溝4の側面に設置される駆動電極6と、駆動電極6に電気的に接続し下面LSに設置される端子電極7と、第二溝列5bと第三溝列5cの間に上面USから下面LSに貫通する第一の開口部H1を有する。フレキシブル回路基板8xは、この第一の開口部H1を通して圧電体基板2の下面LSから上面USに引出される。
【0042】
カバープレート9は、吐出溝3に連通する液室10と、板厚方向に貫通する第二の開口部H2を備え、フレキシブル回路基板8xは、第一の開口部H1と第二の開口部H2を通して上方に引出される。ノズルプレート13は、各吐出溝3それぞれに連通するノズル14を有し、第一溝列5a〜第四溝列5dのそれぞれに対応する第一ノズル列15a〜第四ノズル列15dの4つのノズル列15を構成する。
【0043】
具体的に説明する。
図4(a)に示すように、圧電体基板2の上面USから下面LSに貫通する吐出溝3は上面USから下面LSに凸形状を有し、非吐出溝4は下面LSから上面USに凸形状を有する。ここで、第一溝列5aに含まれる吐出溝3と非吐出溝4を第一吐出溝3aと第一非吐出溝4aとし、第二溝列5bに含まれる吐出溝3と非吐出溝4を第二吐出溝3bと第二非吐出溝4bとし、第三溝列5cに含まれる吐出溝3と非吐出溝4を第三吐出溝3cと第三非吐出溝4cとし、第四溝列5dに含まれる吐出溝3と非吐出溝4を第四吐出溝3dと第四非吐出溝4dとする。
【0044】
隣接する第一溝列5aと第二溝列5bにおいて、一方側の第一溝列5aに含まれる第一吐出溝3aの第二溝列5b側の端部と、他方側の第二溝列5bに含まれる第二非吐出溝4bの第一溝列5a側の端部とは離間し、かつ、圧電体基板2の厚さ方向において重なる。また、第一溝列5aに含まれる第一非吐出溝4aの一方側の端部は浅溝で圧電体基板2の一方側の側面までストレートに形成される。第二溝列5bに含まれる第二非吐出溝4bの他方側の端部は浅溝で第一の開口部H1の側面までストレートに形成される。各浅溝は、下面LSからの深さが圧電体基板2の厚さの1/2よりも深い。
【0045】
同様に、隣接する第三溝列5cと第四溝列5dにおいて、一方側の第三溝列5cに含まれる第三吐出溝3cの第四溝列5d側の端部と、他方側の第四溝列5dに含まれる第四非吐出溝4dの第三溝列5c側の端部とは離間し、かつ、圧電体基板2の厚さ方向において重なる。また、第三溝列5cに含まれる第三非吐出溝4cの一方側の端部は浅溝で第一の開口部H1の側面までストレートに形成される。第四溝列5dに含まれる第四非吐出溝4dの他方側の端部は浅溝で圧電体基板2の他方側の側面までストレートに形成される。各浅溝は、下面LSからの深さが圧電体基板2の厚さの1/2よりも深い。吐出溝3と非吐出溝4をこのように形成することにより、第一溝列5aと第二溝列5bの溝方向の幅と、第三溝列5cと第四溝列5dの溝方向の幅を短縮することができる。また、非吐出溝4の一方側の端部を浅溝に形成することにより、各非吐出溝4の両側面に形成する図示しない駆動電極を電気的に分離して端子電極7に接続することができる。
【0046】
第一溝列5aに含まれる第一吐出溝3aは基準方向KにピッチPで配列する。第二〜第四溝列5b〜5dそれぞれに含まれるに第二〜第四吐出溝3b〜3dも基準方向KにおいてそれぞれピッチPで配列する。そして、第一吐出溝3aと第二吐出溝3bとは基準方向Kに1/2ピッチPずれている。第三吐出溝3cと第四吐出溝3dとは、同様に、基準方向Kに1/2ピッチPずれている。更に、第二吐出溝3bと第三吐出溝3cは、基準方向Kに1/4ピッチPずれている。その結果、第一〜第四吐出溝3a〜3dは基準方向Kついて1/4ピッチPで配列し、一つの溝列5の場合と比べ記録密度を4倍とすることができる。
【0047】
図4(b)を用いて駆動電極6及び端子電極7の構成を説明する。圧電体基板2の下面LSには、溝方向の長さの短い吐出溝3と溝方向の長さの長い非吐出溝4が基準方向Kに交互に配列し、第一〜第四溝列5a〜5dを構成する。圧電体基板2の溝方向の幅の中央には第一の開口部H1が開口する。非吐出溝4の溝方向の両端部の内、一方の端部はストレートの浅溝からなり(
図4(b)を参照)、第一溝列5aの第一非吐出溝4aは圧電体基板2の側面まで延設され、第二溝列5bの第二非吐出溝4bは第一の開口部H1の側面まで延設される。第三及び第四溝列5c、5dの第三及び第四非吐出溝4c、4dも同様の構造を有する。吐出溝3と非吐出溝4の側面には駆動電極が設置される。駆動電極は、各溝の下面LSからの深さが圧電体基板2の厚さの略1/2に設置さる。
【0048】
第一溝列5aに関し、端子電極7は圧電体基板2の側面近傍の下面LSに設置される。端子電極7は、第一吐出溝3aの両側面の駆動電極と電気的に接続する共通端子電極7xと、第一吐出溝3aを挟む2つの第一非吐出溝4aの両側面の駆動電極と電気的に接続する個別端子電極7yとを含む。個別端子電極7yが圧電体基板2の側面側に設置され、共通端子電極7xが個別端子電極7yよりも第一吐出溝3aの側に設置され、いずれも、フレキシブル回路基板8yが接続される領域に露出する。第二溝列5bに関し、端子電極7は、第二吐出溝3bの両側面の駆動電極6と電気的に接続する共通端子電極7xと、第二吐出溝3bを挟む2つの第二非吐出溝4bが第一の開口部H1の側面側の駆動電極と電気的に接続する個別端子電極7yとを含む。個別端子電極7yが第一の開口部H1の開口部側に設置され、共通端子電極7xが個別端子電極7yよりも第二吐出溝3bの側に設置され、いずれも、フレキシブル回路基板8xが接続される領域に露出する。第三溝列5c及び第四溝列5dに関しても同様の構成を備える。
【0049】
そして、フレキシブル回路基板8yを第一溝列5aの端子電極7(共通端子電極7x及び個別端子電極7y)の領域に熱圧着により接続し、フレキシブル回路基板8yの配線パターンと端子電極7とを電気的に接続する。また、フレキシブル回路基板8xを第二の開口部H2及び第一の開口部H1を通して第二溝列5bの端子電極7の領域に熱圧着により接続し、フレキシブル回路基板8xの図示しない配線パターンと端子電極7とを電気的に接続する。第三溝列5c及び第四溝列5dについても、同様に、フレキシブル回路基板8x、8yを下面LSに接続し、端子電極7と配線パターンとを電気的に接続する。
【0050】
カバープレート9は、溝方向の幅の中央に形成される第二の開口部H2と、第一〜第四液室10a〜10dと第一及び第二共通液室10e、10fを有する。第一共通液室10eは、第一溝列5aに含まれる第一吐出溝3aの第二溝列5b側の端部と、第二溝列5bに含まれる第二吐出溝3bの第一溝列5a側の端部に連通し、第一液室10aは第一吐出溝3aの他の端部に連通し、第二液室10bは第二吐出溝3bの他の端部に連通する。同様に、第二共通液室10fは、第三溝列5cに含まれる第三吐出溝3cの第四溝列5d側の端部と、第四溝列5dに含まれる第四吐出溝3dの第三溝列5c側の端部に連通し、第三液室10cは第三吐出溝3cの他の端部に連通し、第四液室10dは第四吐出溝3dの他の端部に連通する。各液室10が開口する圧電体基板2の上面USには非吐出溝4が開口しない。そのため、各液室10に、吐出溝3と連通し非吐出溝4を閉塞するスリットを設ける必要が無い。これにより、液室10の構造が極めて簡単になる。第一及び第二共通液室10e、10fに液体を流入し、第一〜第四液室10a〜10dから液体流出させて液体を循環させることもできる。また、その逆に循環させることができる。或いは、すべての液室10に液体を供給してもよい。
【0051】
流路プレート11は、カバープレート9の圧電体基板2とは反対側の表面に接合される。流路プレート11は供給流路12xと排出流路12yと第三の開口部H3とを備える。第三の開口部H3は流路プレート11の板厚方向に貫通し、フレキシブル回路基板8xはこの第三の開口部H3を通して上方へ引出される。供給流路12xは、カバープレート9の第一共通液室10eと第二共通液室10fに連通し、排出流路12yは、第一〜第四液室10a〜10dに連通する。つまり、供給流路12xから液体を圧電体基板2側に供給し、排出流路12yから液体を排出する。或いは、その逆に流してもよい。
【0052】
ノズルプレート13は、吐出溝3に連通するノズル14が基準方向Kに配列する第一〜第四ノズル列15a〜15cを有し、圧電体基板2の下面LSに接合される。ノズルプレート13は、下面LSに一括して貼り付け、その後、端子電極7が形成され、フレキシブル回路基板8が接続される領域及び第一の開口部H1が開口する領域からノズルプレート13を除去する。つまり、各ノズル列15を一回で位置合わせすることができる。
【0053】
このように、圧電体基板2に第一の開口部H1を設けたので、3列以上の溝列5に接続される端子電極7と外部回路とを容易に電気的に接続することができる。また、非吐出溝4に設置される駆動電極6や個別端子電極7yには液体が接触することが無いので、外部から与える駆動信号が液体を介して漏えいすることが無く、また、駆動電極6の表面で電気分解を起こし断線等を発生させることも無い。また、第一溝列5aと第二溝列5bの間において第一吐出溝3aと第二非吐出溝4bの端部、及び第二吐出溝3bと第一非吐出溝4aの端部を圧電体基板2の板厚方向に重なるように構成し、かつ、第一共通液室10eに第一吐出溝3aと第二吐出溝3bの両方を連通させたので、溝方向の幅を大幅に短縮させることができる。第三溝列5c及び第四溝列5dにおいても同様である。
【0054】
なお、本発明において、吐出溝3や非吐出溝4の形状について、また、第一吐出溝3a〜第四吐出溝3dの基準方向Kの位置等は本実施形態に限定されない。また、圧電体基板2の下面LSに設置する端子電極7について、共通端子電極7xを各第一吐出溝3aや各第二吐出溝3bに対応させて圧電体基板2の端部側や第一の開口部H1の側に引出したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第一溝列5aと第二溝列5bの間隔を広げ、第一吐出溝3aと第二吐出溝3bの各共通端子電極7xを第一溝列5aと第二溝列5bの間の下面LSに引出して共通電極化し、圧電体基板2の基準方向Kの端部近傍の下面LSを引き回してフレキシブル回路基板8y又は8xの配線パターンに電気的に接続させてもよい。同様に、第三溝列5cと第四溝列5dの間隔を広げ、第三吐出溝3cと第四吐出溝3dの各共通端子電極7xを第三溝列5cと第四溝列5dの間の下面LSに引出して共通電極化し、圧電体基板2の基準方向Kの端部近傍の下面LSを引き回してフレキシブル回路基板8yやフレキシブル回路基板8xの配線パターンに電気的に接続させてもよい。これにより、端子電極7の配列ピッチが拡大し、フレキシブル回路基板8の配線パターンとの電気的接続が容易となる。
【0055】
(第四実施形態)
図5及び
図6は、本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を説明するための図である。
図5は本発明の第四実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を表す工程図であり、
図6は本発明の第四実施形態の各工程を説明するための図である。本実施形態は本発明の液体噴射ヘッドの基本的な製造方法を表す。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0056】
本発明の液体噴射ヘッド1の製造方法は、圧電体基板2に複数の溝列を形成する溝形成工程S1と、圧電体基板2に電極を形成する電極形成工程S2と、圧電体基板2の溝列5の間に第一の開口部H1を貫通させる開口部形成工程S3と、圧電体基板2の下面LSに第一の開口部H1を通してフレキシブル回路基板8を接続する回路基板接続工程S4とを備える。これにより、溝列が増えても外部回路から各溝列5に駆動信号を容易に供給することができる。以下、
図6を用いて各工程を具体的に説明する。
【0057】
図6(S1)に示すように、溝形成工程S1において、ダイシングブレード20を用いて、圧電体基板2を切削し、吐出溝3が基準方向Kに配列する溝列5を複数形成する。圧電体基板2としてPZTセラミックスを使用することができる。
図6においては第一溝列5aと第二溝列5bの2つの溝列5を紙面手前から奥に向かう基準方向Kに並列に形成する。なお、ダイシングブレード20を用いて上面USから下面LSに貫通しない溝を形成し、次に下面LSを研削し、溝を貫通させてもよい。また、後に説明するように、吐出溝3と非吐出溝4を基準方向Kに交互に形成してもよい。
【0058】
図6(S2)に示すように、電極形成工程S2において、吐出溝3の側面に駆動電極6を形成し、圧電体基板2の下面LSに端子電極7を形成する。駆動電極6は下面LSからの深さが圧電体基板2の板厚の略1/2の深さに形成する。端子電極7は吐出溝3を挟んで一方側と他方側に形成する。例えば、一方側の端子電極7は圧電体基板2の端部近傍の下面LSに設置し、他方側の端子電極7は圧電体基板2の中央部の下面LSに設置する。例えば第一溝列5aに関して、一方側の端子電極7を第一吐出溝3aの一方の側面に設置する駆動電極6に電気的に接続し、他方側の端子電極7を第一吐出溝3aの他方の側面に設置する駆動電極6に電気的に接続する。第二溝列5bの側の端子電極7も同様に形成する。駆動電極6と端子電極7は、例えば、下面LSのパターニングされたレジスト上に下面LSの側からアルミニウム、ニッケル、金、銀等の金属を斜め蒸着法により堆積し、レジストを剥離するリフトオフ法により同時に形成することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、表面の垂直方向に一方向に分極処理が施されている圧電体基板2を使用している。これに代えて、シェブロン型の圧電体基板2を使用する場合は、下面LSからの駆動電極6の深さを圧電体基板の分極境界よりも深く形成する必要がある。
【0060】
図6(S3)に示すように、開口部形成工程S3において、隣り合う第一溝列5aと第二溝列5bの間を切削し、圧電体基板2の上面USから下面LSに貫通する第一の開口部H1を形成する。第一の開口部H1は、ダイシングブレード20やサンドブラスト法等により形成することができる。次に、
図6(S4)に示すように、回路基板接続工程S4において、図示しない配線パターンが形成されるフレキシブル回路基板8xを、配線パターンと第一の開口部H1近傍の端子電極7とが電気的に接続し、第一の開口部H1を通して圧電体基板2の下面LSに接続する。更に、配線パターンが形成されるフレキシブル回路基板8yを配線パターンと圧電体基板2の外周端近傍の端子電極7とが電気的に接続するように下面LSに接続する。
【0061】
このように複数の溝列5の間に第一の開口部H1を形成するので、3列以上の溝列5が形成される場合でも、端子電極7に電気的に接続するフレキシブル回路基板8を圧電体基板2の端子電極7が形成される側とは反対側に容易に引き出すことができる。
【0062】
なお、実際に液体噴射ヘッド1を構成する場合には、溝形成工程S1の後に上面USにカバープレート9を接合し、回路基板接続工程S4の前又は後に、圧電体基板2の下面LSにノズルプレート13を接合する。また、開口部形成工程S3において、圧電体基板2に第一の開口部H1を形成すると同時にカバープレート9に第二の開口部H2を形成することができる。そして、回路基板接続工程S4の工程においてフレキシブル回路基板8を第一の開口部H1と第二の開口部H2を通して下面LSに接続することができる。
【0063】
(第五実施形態)
図7及び
図8は、本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を説明するための図である。
図7は本発明の第五実施形態に係る液体噴射ヘッド1の製造方法を表す工程図であり、
図8は本発明の第五実施形態の各工程を説明するための図である。本実施形態では、第一溝列5a〜第五溝列5dの4つの溝列5を形成し、各溝列5は吐出溝3と非吐出溝4が基準方向Kに交互に配列し、第二溝列5bと第三溝列5cの間の圧電体基板2に第一の開口部H1を形成する例である。同一の部分又は同一の機能を有する部分には同一の符号を付している。
【0064】
図7に示すように、本実施形態の液体噴射ヘッド1の製造方法は、溝形成工程S1と、カバープレート接合工程S5と、電極形成工程S2と、開口部形成工程S3と、流路プレート接合工程S6と、ノズルプレート接合工程S7と、回路基板接続工程S4とを備える。以下、工程順に具体的に説明する。
【0065】
図8(S1)に示すように、溝形成工程S1において、圧電体基板2を切削し、吐出溝3と非吐出溝4が基準方向に交互に配列する第一〜第四溝列5a〜5dを形成する。具体的には、圧電体基板2の上面USから切削して第一〜第四吐出溝3a〜3dを形成する吐出溝形成工程S11と、圧電体基板2の下面LSから切削して第一〜第四非吐出溝4a〜4dを形成する非吐出溝形成工程S12を含む。非吐出溝形成工程S12において、第一非吐出溝4aの第二溝列5bとは反対側の端部を浅溝として圧電体基板2の側面までストレートに形成する。第二非吐出溝4bの第三溝列5c側の端部を浅溝として圧電体基板2の溝方向の幅の中央までストレートに形成する。第三非吐出溝4cの第二溝列5b側の端部を浅溝として溝方向の幅の中央までストレートに形成する。第四非吐出溝4dの第三溝列5cとは反対側の端部を浅溝として圧電体基板2の側面までストレートに形成する。
【0066】
ここで、第一溝列5aの第一吐出溝3aと第二溝列5bの第二吐出溝3bとは基準方向Kに半ピッチずらして形成する。同様に、第三溝列5cの第三吐出溝3cと第四溝列5dの第四吐出溝3dとは基準方向Kに半ピッチずらして形成する。そして、第二溝列5bの第二吐出溝3bと第三溝列5cの第三吐出溝3cとは基準方向に1/4ピッチずらして形成する。これにより、溝方向から見て各溝列5の吐出溝3は1/4ピッチの等間隔で配列し、記録密度が一つの溝列の場合と比べて4倍となる。
【0067】
更に、第一吐出溝3aと第二非吐出溝4b、及び、第一非吐出溝4aと第二吐出溝3bは溝方向に直線状に設置され、同様に、第三吐出溝3cと第四非吐出溝4d、及び、第三非吐出溝4cと第四吐出溝3dは溝方向に直線状に設置される。そして、第一吐出溝3aと第二非吐出溝4bは離間し、かつ、圧電体基板2の板厚方向に重なるように形成し、第一非吐出溝4aと第二吐出溝3bは離間し、かつ、圧電体基板2の板厚方向に重なるように形成することができる。同様に、第三吐出溝3cと第四非吐出溝4dは離間し、かつ、圧電体基板2の板厚方向に重なるように形成し、第三非吐出溝4cと第四吐出溝3dは離間し、かつ、圧電体基板2の板厚方向に重なるように形成することができる。このように形成すれば、第一溝列5aと第二溝列5bとの間、及び、第三溝列5cと第四溝列5dとの間の距離を短縮し、液体噴射ヘッド1の全体をコンパクトに構成することができる。なお、第一〜第四非吐出溝4a〜4dは、圧電体基板2の上面USに開口しないように形成してもよい。
【0068】
図8(S5)に示すように、カバープレート接合工程S5において、複数の液室10が形成されるカバープレート9を、液室10と吐出溝3とが連通するように圧電体基板2の上面USに接合する。具体的に説明する。カバープレート9は、第一共通液室10eと、第一共通液室10eの両側に離間して第一液室10a及び第二液室10bと、第二共通液室10fと、第二共通液室10fの両側に離間して第三液室10c及び第四液室10dとを有する。第一液室10aは第一吐出溝3aの一方側の端部に連通する。第一共通液室10eは第一吐出溝3aの他方側の端部と第二吐出溝3bの一方側の端部に連通する。第二液室10bは、第二吐出溝3bの他方側の端部に連通する。第三液室10cは、第三吐出溝3cの一方側の端部に連通する。第二共通液室10fは、第三吐出溝3cの他方側の端部と第四吐出溝3dの一方側の端部に連通する。第四液室10dは、第四吐出溝3dの他方側の端部に連通する。なお、第一及び第二共通液室10e、10f、第一〜第四液室10a〜10dの圧電体基板2側のいずれの開口領域にも第一〜第四非吐出溝4a〜4dのいずれも開口しない。
【0069】
図8(S2)に示すように、電極形成工程S2において、吐出溝3及び非吐出溝4の両側面に駆動電極6を形成し、圧電体基板2の下面LSに端子電極7を形成する。下面LSのパターニングされたレジスト上に下面LSの側からアルミニウム、ニッケル、金、銀等の金属を斜め蒸着法により堆積し、レジストを剥離するリフトオフ法により駆動電極6と端子電極7を同時に形成することができる。上面US又は下面LSの垂直方向に一様に分極処理が施されている圧電体基板2の場合は、駆動電極6を圧電体基板2の厚さの略1/2よりも下面LS側に形成し、シェブロン型の圧電体基板2の場合は、下面LSからの駆動電極6の深さを圧電体基板の分極境界よりも深く形成する必要がある。圧電体基板2の下面LSに形成する端子電極7は第三実施形態の
図4(b)に示すものと同様である。
【0070】
図8(S3)に示すように、開口部形成工程S3において、圧電体基板2の隣り合う第二溝列5bと第三溝列5cの間を切削し、圧電体基板2の上面USから下面LSに第一の開口部H1を形成すると同時に、カバープレート9の隣り合う第二液室10bと第三液室10cの間を板厚方向に貫通する第二の開口部H2を形成する。これにより、第一の開口部H1及び第二の開口部H2を一回の切削工程で開口することができる。なお、カバープレート9に、隣り合う第二液室10bと第三液室10cの間を板厚方向に貫通する第二の開口部H2を予め形成しておき、開口部形成工程S3において第一の開口部H1のみを切削してもよい。
【0071】
図8(S6)に示すように、流路プレート接合工程S6において、カバープレート9の圧電体基板2の側とは反対側の表面に流路プレート11を接合する。流路プレート11には、板厚方向に貫通する第三の開口部H3を備え、接合する際にカバープレート9の第二の開口部H2と連通させる。更に、流路プレート11には供給流路12xと排出流路12yとを備え、供給流路12xがカバープレート9の第一共通液室10e及び第二共通液室10fに連通し、排出流路12yが第一〜第四液室10a〜10dに連通する。なお、予め第三の開口部H3を形成していない流路プレート11をカバープレート9の圧電体基板2の側とは反対側の表面に接合し、第一の開口部H1及び第二の開口部H2を形成すると同時に、流路プレート11を切削して板厚方向に貫通する第三の開口部H3を形成してもよい。
【0072】
図8(S7)に示すように、ノズルプレート接合工程S7において、圧電体基板2の下面LSにノズルプレート13を接合する。ノズルプレート13には、第一〜第四吐出溝3a〜3dに対応する位置にノズル14を穿孔し、第一〜第四ノズル列15a〜15dを形成しておく。そして、ノズルプレート13を下面LSに接合した後に、ノズルプレート13を切削し、圧電体基板2の端子電極7が形成される領域を露出させる。これにより、4列の第一〜第四溝列5a〜5dの各吐出溝3と、4列の第一〜第四ノズル列15a〜15dの各ノズル14を一回の工程で位置合わせを行うことができる。なお、ノズルプレート13を下面LSに接合した後にノズル14を穿孔する、或いは、ノズルプレート13をノズル列15ごとに下面LSに接合し、ノズルプレート13の切削工程を省くことができる。
【0073】
図8(S4)に示すように、回路基板接続工程S4において、配線パターンが形成されるフレキシブル回路基板8xを、配線パターンと端子電極7とを電気的に接続させ、第一の開口部H1〜第三の開口部H3を通して圧電体基板2の下面LSに接続する。圧電体基板2の下面LS側の空間は広く開放される。そのため、下面LSとフレキシブル回路基板8との間に異方性導電材を介在させ、フレキシブル回路基板8の背面側から圧着端子を当接させて、端子電極7と配線パターンとを一括して接続することができる。
【0074】
なお、溝形成工程S1において吐出溝3を上面USから下面LSに貫通させず、カバープレート接合工程S5を圧電体基板2に接合した後に圧電体基板2の下面LSを研削して、吐出溝3を下面LSに開口させてもよい。カバープレート接合工程S5において吐出溝3の底部に圧電体材料が残るので、吐出溝3の底部側の欠け等の発生を防ぐことができる。また、開口部形成工程S3は、流路プレート接合工程S6の後であってもよいし、ノズルプレート接合工程S7の後であってもよい。また、第一溝列5aと第二溝列5bの間や第三溝列5cと第四溝列5dの間において、吐出溝3と非吐出溝4が圧電体基板2の厚さ方向に重なるように形成したが、本発明のこの構成に限定されず、吐出溝3と非吐出溝4とが厚さ方向に重ならないように離間させてもよい。また、溝列5は4列よりもさらに増加させ、圧電体基板2の上面USから下面LSに貫通する開口部を更に増加させることができる。
【0075】
(第六実施形態)
図9は本発明の第六実施形態に係る液体噴射装置30の模式的な斜視図である。液体噴射装置30は、液体噴射ヘッド1、1’を往復移動させる移動機構40と、液体噴射ヘッド1、1’に液体を供給し、液体噴射ヘッド1、1’から液体を排出する流路部35、35’と、流路部35、35’に連通する液体ポンプ33、33’及び液体タンク34、34’とを備えている。各液体噴射ヘッド1、1’は複数の溝列を備え、一方側の溝列に含まれる吐出溝の他方側の端部と、他方側の溝列に含まれる非吐出溝の一方側の端部とは離間し、かつ、圧電体基板の厚さ方向において重なる。液体噴射ヘッド1、1’は既に説明した第一〜第五実施形態のいずれかを使用する。
【0076】
液体噴射装置30は、紙等の被記録媒体44を主走査方向に搬送する一対の搬送手段41、42と、被記録媒体44に液体を吐出する液体噴射ヘッド1、1’と、液体噴射ヘッド1、1’を載置するキャリッジユニット43と、液体タンク34、34’に貯留した液体を流路部35、35’に押圧して供給する液体ポンプ33、33’と、液体噴射ヘッド1、1’を主走査方向と直交する副走査方向に走査する移動機構40とを備えている。図示しない制御部は液体噴射ヘッド1、1’、移動機構40、搬送手段41、42を制御して駆動する。
【0077】
一対の搬送手段41、42は副走査方向に延び、ローラ面を接触しながら回転するグリッドローラとピンチローラを備えている。図示しないモータによりグリッドローラとピンチローラを軸周りに移転させてローラ間に挟み込んだ被記録媒体44を主走査方向に搬送する。移動機構40は、副走査方向に延びた一対のガイドレール36、37と、一対のガイドレール36、37に沿って摺動可能なキャリッジユニット43と、キャリッジユニット43を連結し副走査方向に移動させる無端ベルト38と、この無端ベルト38を図示しないプーリを介して周回させるモータ39とを備えている。
【0078】
キャリッジユニット43は、複数の液体噴射ヘッド1、1’を載置し、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液滴を吐出する。液体タンク34、34’は対応する色の液体を貯留し、液体ポンプ33、33’、流路部35、35’を介して液体噴射ヘッド1、1’に供給する。各液体噴射ヘッド1、1’は駆動信号に応じて各色の液滴を吐出する。液体噴射ヘッド1、1’から液体を吐出させるタイミング、キャリッジユニット43を駆動するモータ39の回転及び被記録媒体44の搬送速度を制御することにより、被記録媒体44上に任意のパターンを記録することできる。
【0079】
なお、本実施形態は、移動機構40がキャリッジユニット43と被記録媒体44を移動させて記録する液体噴射装置30であるが、これに代えて、キャリッジユニットを固定し、移動機構が被記録媒体を2次元的に移動させて記録する液体噴射装置であってもよい。つまり、移動機構は液体噴射ヘッドと被記録媒体とを相対的に移動させるものであればよい。