【実施例1】
【0020】
図1〜
図4を用いて、本発明の実施例1に係わるカバー部材の構成について説明する。以下では、カバー部材として、フェンダーライナ1を例に挙げて説明する。
図1(a)に示すように、フェンダーライナ1は、図示せぬタイヤの外周面側を覆う本体部2と、フェンダーライナ1を車体に取り付ける取付部3とを有する構成になっている。本体部2は湾曲面状に形成されており、湾曲面の頂部側には、ヘルムホルツ式レゾネータを構成するための凹設部2aが、湾曲面の外方側に突出する形状に形成されている。
【0021】
凹設部2a周辺の拡大図を示している
図4に示すように、凹設部2aの上面、即ち、タイヤ側とは反対側に当たる凹設部2aの底面には、多数の通孔2bが形成されている。
図3(a)に示すように形成された多数の通孔2bは、ヘルムホルツ孔として作用する。
【0022】
図2(a)、
図4に示すように、凹設部2aの前端面及び後端面におけるそれぞれの下端部、即ち、本体部2との接合部には、左右方向に所定幅を有するスリット2cが形成されている。また、凹設部2aの左右両側面の下端部にもスリット2cが形成されている。凹設部2aの前後端面に形成したスリット2cは、凹設部2aの前端面及び後端面の下端部に本体部2の上面との間に形成した段差部14の部位に形成されている。
【0023】
尚、スリット2cの形成個数として、凹設部2aの前端面及び後端面にそれぞれ一つずつ形成した構成例を示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、凹設部2aの前端面及び後端面にそれぞれ複数個のスリット2cを形成した構成にしておくこともできる。
【0024】
図1(b)には、凹設部2aの開口部2d(
図2参照)を塞ぐプレート4の斜視図を示している。プレート4は、前後方向の両端部に突出片4cが形成されており、各突出片4cは、プレート4の両端部から外方に延出した形状に形成されている。凹設部2aの前後両端面に形成したスリット2cの数と、突出片4cの形成数としては対応させて形成している。そして、プレート4は、プレート4をスリット2cに挿入係止させる前の状態において、平板状に構成されている。
【0025】
本発明では、プレート4の前後方向の両端部に突出片4cを形成していない構成にしておくこともできる。この場合には、凹設部2aの前後両端面にはスリット2cを形成せずに、凹設部2aの両側面のうち少なくとも一つの側面に、プレート4の周縁部4dを挿入するスリット2cを形成した構成にしておくことができる。
【0026】
尚、以下では、突出片4cの部位を特定するため突出片と周縁部とは、別の部材符号を用いて、本発明の実施例を説明するが、本発明では、突出片4cは、プレート4をスリット2cに挿入するための周縁部4dの一部として機能しており、周縁部4dの一形態として取り扱っている。そのため、スリット2cに挿入するプレート4の周縁部4dとしては、突出片4cも包含しているものである。
【0027】
プレート4は、シート状の不織布4bに合成樹脂層4aを裏打ちした形状に構成されており、
図3(b)に示すように、合成樹脂層4aの板厚Dよりも不織布4bの厚さを厚く構成している。合成樹脂層4aの板厚Dを厚く構成すると、プレート4を湾曲させ難くしてしまう。また、板厚Dを薄く構成すると、プレート4としての強度を得られなくなる。
【0028】
そのため、板厚Dとしては、プレート4をフェンダーライナ1の曲面形状に倣った曲面に形成しておくことができ、また、後述するようにプレート4の突出片4cを凹設部2aのスリット2cに挿入係止させた状態で、プレート4の弾性復帰力によって、凹設部2aに対して凹設部2aの前後方向に押圧力を与えることができる板厚となるように構成しておくことができる。
【0029】
合成樹脂層4aの板厚Dとしては、1.5mm以下に構成しておくことができ、特に、0.5mm〜1.0mmに構成しておくことにより、合成樹脂層4aとしての機能を効果的に奏させることができる。そして、本体部2の曲面形状に倣って湾曲させたとき、プレート4に生じる反力を小さくすることができる。これによって、本体部2の曲面形状に倣ってプレート4を湾曲変形させた状態で、凹設部2aのスリット2cに突出片4cやプレート4の周縁部4dを簡単に挿入係止させることができ、凹設部2a内に空気室5を画成できる。
【0030】
突出片4cの構成やスリット2cに挿入するプレート4の周縁部4dの構成としては、
図3(a)に示すように、合成樹脂層4aのみをスリット2cから突出させた構成にしておくことも、
図3(b)に示すように、合成樹脂層4aと不織布4bとを共にスリット2cから突出させた構成にしておくこともできる。
図3(b)に示すように、凹設部2aに形成したスリット2cの高さはHの寸法として形成されている。そして、凹設部2aの前後端面において、高さHのスリット2cに突出片4cや周縁部4dをそれぞれ挿入することにより、プレート4を凹設部2aに組み付けることができる。
【0031】
図3(a)に示すように、突出片4cや周縁部4dの構成として合成樹脂層4aのみを突出させた構成のときには、スリット2cの高さHを合成樹脂層4aの板厚Dよりも僅かに低い高さ寸法に構成しておくことができる。また、
図3(b)に示すように、突出片4cや周縁部4dの構成として合成樹脂層4aと不織布4bの二層を突出させた構成のときは、不織布4bを圧縮した状態において、圧縮した不織布4bの厚さに合成樹脂層4aの板厚Dを加えた厚さよりも僅かに低い高さ寸法に、スリット2cの高さHを形成しておくことができる。
【0032】
合成樹脂層4aと不織布4bの二層からなる突出片4cや周縁部4dをスリット2cに挿入する際には、予め突出片4cや周縁部4dの部位における不織布4bを圧縮させた状態から挿入作業を行うことも、不織布4bを圧縮させながらスリット2cに押し込む挿入作業を行うこともできる。
【0033】
図2(a)に示すように、凹設部2aの開口部2dを塞ぐように突出片4cをスリット2cに挿入することによって、凹設部2aとプレート4の合成樹脂層4aとによって囲まれた空気室5を形成することができる。そして、空気室5が多数の通孔2bによって、フェンダーライナ1の上面における空間と連通した構成にすることができ、ヘルムホルツ式レゾネータを構成することができる。このとき、スリット2cに挿入するプレート4の部位としては、プレート4の前後端部に形成した突出片4やプレート4の周縁部4dを用いることができる。
【0034】
このように構成することによって、ある特定の周波数の音源の音量を小さくするヘルムホルツ式レゾネータを簡単に構成することができる。そして、空気室5の容積や形状、ヘルムホルツ孔として機能する通孔2bの形状を適宜の大きさに調整したり、適宜の個数形成することによって、吸音させたい周波数領域の音に対して簡単に調整作業を行うことができ、吸音したい特定の周波数の音源の音に対して効率的に吸音して消音させることができる。
【0035】
また、スリット2cが、凹設部2aの下端側、即ち、本体部2からの立ち上がり側に形成されているので、タイヤ側に面した面において、本体部2の内面と、プレート4の不織布4bの面とを、ほぼ面差のない面一の構成にすることができる。即ち、
図3(b)においてhで示した本体部2の内面と不織布4bとの段差を小さく構成することができる。
【0036】
このように構成することができるので、フェンダーライナ1の内面、即ち、タイヤ側に面した面を滑らかな面形状に形成することができる。そして、フェンダーライナ1の内面に沿って流れる空気流を滑らかな状態で流すことができる。
【0037】
スリット2cに挿入した突出片4cや周縁部4dは、本体部2のスリット2cによって挿入係止された状態になっているので所望の取付強度を得ることができる。更に取付強度を高める場合には、接着剤、両面テープ、超音波溶着、振動溶着、熱カシメ等の固着方法を用いて、更に強固に固着しておくことができる。また、
図2(b)に示すように、凹設部2aの下端側に段差部14を形成しておき、プレート4の外周端面を段差部14の内面側に対して、上述した固着方法を用いて固着しておくこともできる。段差部14としては、
図1に示すように凹設部2aの左右両側面に形成しておくことも、
図4に示すように凹設部2aの周囲に沿って形成しておくこともできる。
【0038】
このように、プレート4の外周縁部を本体部2の段差部14に固着しておくことにより、プレート4と凹設部2aとの間におけるシール性を向上させることができる。また、不織布4bをタイヤ側に配することができるので、チッピングやスプラッシュ等が発生した際には、不織布4bによって効率的に打音を小さくさせることができる。しかも、小石等が衝突する不織布4bは、スリット2cを介して、また、段差部14を介して凹設部2aに対して強固に固着されているので、プレート4が凹設部2aから外れてしまうのを防止でき、長期に亘って打音等に対する消音効果を奏することができる。
【0039】
また、スリット2cに挿入する突出片4cや周縁部4dを本体部2の上面側、即ち、車両の内側に配することができるので、小石・泥・水・雪等がプレート4に衝突したり、付着しても、プレート4が本体部2から剥がれるのを防止することができ、長期に亘って吸音・消音性能を維持することができる。
【0040】
更に、本発明では、従来の吸音装置を配設している部位に対して、同じように配設することができるので、車体等に対するレイアウト変更等の影響が少なくてすむ。しかも、プレート4としては、二層構造に構成して、必要により突出片4cを新たに形成するだけであり、凹設部2aとしてはスリット2cを新たに形成するだけで構成することができるので、製造コストを抑えて安価に製造することができる。
【0041】
尚、凹設部2aをノイズ等の音源から離れた方向に形成した構成について、説明を行ったが、本発明に係るカバー部材をエンジンカバー等として使用する際には、凹設部2aの底部側がノイズ等の音源側を向くように構成しておくこともできる。
【0042】
次に、
図9、
図10を用いて、本発明に係る凹設部2aとプレート4とからなる吸音構造を用いた場合での、吸音性能、遮音性能について説明する。本発明に係る吸音構造を用いた実験結果を、太線で示している。比較例として、
図11に示す従来例のように不織布を用いた吸音装置の場合を点線で示し、PP(ポリプロピレン)板にシンサレート(登録商標)を貼り付けた吸音板を用いた吸音装置の場合を細線で示している。
【0043】
図9に示されるように、実験した周波数帯に亘って、本発明の構成では吸音効果が高いことが分かる。特に、500Hzから2200Hzの音源に対しては、比較例の吸音装置に比べて吸音効果が優れていることが分かる。また、
図10に示す遮音効果では、実験したほぼ全域に亘って、ほぼ満遍なく遮音性能が高いことが分かる。
【0044】
このように、本発明に係るカバー部材を用いることによって、プレート4をフェンダーライナ1(カバー部材)に対して簡単に取り付けることができ、しかも、空気室5のシール性を高めることができ、チッピングやスプラッシュ等の発生する部位に設けたとしても、これらによって発生する打音を低減することができる。