特許第6117047号(P6117047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117047
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/18 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   B62D25/18 F
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-160099(P2013-160099)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-30337(P2015-30337A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100119699
【弁理士】
【氏名又は名称】塩澤 克利
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】関根 正幸
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−046605(JP,U)
【文献】 実開昭56−073683(JP,U)
【文献】 米国特許第05340154(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部の一部を凹設させた凹設部と、前記凹設部に形成した通孔と、前記凹設部における開口部を塞ぎ、前記凹設部との間で空気室を形成するプレートと、を備えたカバー部材において、
前記開口部の周縁にスリットが形成され、
前記プレートは、合成樹脂層が裏打ちされたシート状の不織布からなり、
前記プレートの周縁部を前記スリットに挿入して画成された前記空気室が、ヘルムホルツ式レゾネータとして形成されていることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記本体部は、湾曲面形状に形成され、
前記湾曲面形状に弾性変形した前記プレートの周縁部を前記スリットに挿入係止したことを特徴とする請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記挿入部位における前記不織布が、圧縮形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内に配され、騒音等を遮断して車室内を静寂に保ち、また、車外に騒音が漏出するのを防ぐカバー部材に関する。尚、本発明では、車両の前後進方向を前後方向として定義し、車両の正面側から見たときの車両の幅方向を左右方向として定義している。また、水平面上に載置された車両を見たとき、水平面に対して垂直方向を上下方向として定義している。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッドカーの普及により、車の静粛化が進んでおり、更なる吸音、遮音の改善、また、今まで目立たなかった音の減少が求められている。吸音、遮音するカバー部材としては、例えば、エンジンルームと車室とを画成するエンジンカバーや、エンジンルームとタイヤとの間を画成するフェンダーライナ、更には車両の床側を覆うアンダーカバーなどとして用いられている。
【0003】
従来から、カバー部材のうちで吸音構成を設けたフェンダーライナとしては、図11に示すような吸音構造を備えた構成が採用されている。フェンダーライナの本体部32にタイヤ側とは反対側に突出する凸部32aが形成されており、凸部32aの外周面、即ち、タイヤ側とは反対側の面には樹脂層33が被覆された構成になっている。凸部32aの内面側、即ち、タイヤ側の面が凹設部として構成されており、凹設部の開口部が塞がれることで空気室を形成して、ヘルムホルツ式レゾネータを構成している。
【0004】
また、吸音性を高めたカバー部材としては、吸音機能付自動車用エンジンアンダーカバー(特許文献1参照)や車両用フェンダーライナ(特許文献2参照)などが提案されている。特許文献1に記載された発明では、カバー本体にエンジン等と干渉しない凹凸形状の面を形成している。そして、凸形状の面の開口部側、即ち、カバー本体の底面壁にプレートを設けることで、凹部とプレートとの間に空気層を形成した構成になっている。
【0005】
凹部には、ヘルムホルツ孔と呼ばれる通孔が形成されている。そして、凹部の開口を塞ぎ、空気層を画成するプレートは、ステプラー等によってカバー本体に固着されている。プレートの構成材料としては、合成樹脂の他に、アルミニウム、鉄、真鍮等の金属が用いられている。
【0006】
特許文献2に記載された発明では、フェンダーライナの構成として、吸音作用を有するシート状の基材層と、基材層と加熱プレス成形により一体的に設けたLDPE樹脂(低密度ポリエチレン樹脂)からなる耐水性保護膜と、を備えた構成になっている。基材層は、主繊維とバインダー繊維とからなる繊維ウェブによって取り囲まれた空間を形成しており、この空間を形成するセルを極めて微小かつ多数形成させている。そして、セルを微小かつ多数形成することによって、吸音効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−207833号公報
【特許文献2】特開2011−240821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の発明では、プレートはある程度剛性を有する構成になっているので、曲面形状のカバー本体部にプレートを取り付けるときには、カバー本体部の形状に合わせてプレートを湾曲状に強制的に変形させなければならない。しかし、プレートは剛性を有する構造のため、弾性変形させながらの組み付け作業には困難なものが伴っていた。
【0009】
そして、フェンダーライナのような部品にプレートを取り付けた場合には、プレートが硬質材料で構成されているため、石跳ねと言われるチッピングあるいは、水跳ねと言われるスプラッシュ等で発生する打音に対して、有効な消音作用を奏することが難しかった。また、プレートをカバー本体部に取り付ける際には、湾曲状に変形させた状態を維持しながら、ステプラー装置等の固着具を用いてプレートの一か所ごとに固着していく組み付け作業や接着作業を行うことが必要であった。
【0010】
特許文献2の発明では、車種やカバー部材を配設する部位ごとに消音したい音域が異なるため、吸音したい周波数域を設定したい場合であっても、この周波数領域に対応した調整作業を簡単に行うことができず、消音したい音域ごとに材料の選定作業をやり直さなければならなかった。
【0011】
本発明は、上述したような従来の問題を解決することができ、プレートをカバー部材に対して簡単に取り付けることができ、しかも、空気室のシール性を高めることができ、チッピングやスプラッシュ等の発生する部位に設けたとしても、これらによって発生する打音を低減することのできるカバー部材の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、請求項1〜3に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本発明に係るカバー部材では、本体部の一部を凹設させた凹設部と、前記凹設部に形成した通孔と、前記凹設部における開口部を塞ぎ、前記凹設部との間で空気室を形成するプレートと、を備えたカバー部材において、
前記開口部の周縁にスリットが形成され、前記プレートは、合成樹脂層が裏打ちされたシート状の不織布からなり、前記プレートの周縁部を前記スリットに挿入して画成された前記空気室が、ヘルムホルツ式レゾネータとして形成されていることを最も主要な特徴としている。
【0013】
また、本発明に係るカバー部材では、前記本体部は、湾曲面形状に形成され、前記湾曲面形状に弾性変形した前記プレートの周縁部を前記スリットに挿入係止したことを主要な特徴としている。
更に、本発明に係るカバー部材では、前記挿入部位における前記不織布が、圧縮形成されていることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わるカバー部材は、このように構成されているので、プレートをカバー部材に取り付ける作業を、スリットにプレートの周縁部を挿入するという組み付け作業によって簡単に行うことができる。しかも、プレートは、合成樹脂層を裏打ちしたシート状の不織布から構成されているので、チッピングやスプラッシュ等の発生する部位にプレートを設け、不織布側の面をタイヤ側に向けておくことによって、発生する打音を不織布で吸音して低減させることができる。
【0015】
しかも、空気室は、裏打ちした合成樹脂層と凹設部とによって囲まれた空間として形成されるので、ある特定の周波数域の音源の音量を低減させることが容易にできる。即ち、空気室の容積やヘルムホルツ孔として機能する通孔の形状を任意に調整することができるので、特定の周波数領域の音を吸音させたい場合でも、吸音したい周波数領域の音に対して簡単に調整作業を行うことができる。
【0016】
プレートは、強度を有しながら、柔軟に変形させることができるので、カバー部材の湾曲した面にプレートを取り付ける際でも、プレートを簡単に変形させることができ、プレートの周縁部をスリットに挿入係止できる。しかも、プレートを湾曲させることにより、弾性力による反力を発生させた状態で、プレートをカバー部材に組み付けることができる。これによって、凹設部の開口部がプレートによって補強された構成になり、カバー部材自体の剛性を高めることができる。
【0017】
また、スリットに挿入した挿入部位における不織布を圧縮形成させることによって、不織布は圧縮された状態でカバー部材の本体部に係止されることになり、空気室におけるシール性を圧縮された不織布によって確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】フェンダーライナ及びプレートの斜視図である。(実施例1)
図2図1のA−A断面図及びB−B断面図である。(実施例1)
図3図1のC−C断面図及びプレートの端部側での要部拡大断面図である。(実施例1)
図4】凹設部の要部拡大斜視図である。(実施例1)
図5図1のC−C断面であって、別のフェンダーライナに係る断面図である。(実施例2)
図6図1のC−C断面であって、別のフェンダーライナに係る断面図である。(実施例3)
図7図1のC−C断面であって、別のフェンダーライナに係る断面図である。(実施例5)
図8図1のC−C断面であって、別のフェンダーライナに係る断面図である。(実施例6)
図9】吸音性能を示す図である。(実施例1)
図10】遮音性能を示す図である。(実施例1)
図11】凹設部の要部拡大斜視図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本発明に係わるカバー部材としては、以下においてはフェンダーライナを例に挙げて説明を行う。本発明に係わるカバー部材としては、フェンダーライナに限定されるものではなく、エンジンカバーやアンダーカバーなどに対しても適用することができる。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0020】
図1図4を用いて、本発明の実施例1に係わるカバー部材の構成について説明する。以下では、カバー部材として、フェンダーライナ1を例に挙げて説明する。図1(a)に示すように、フェンダーライナ1は、図示せぬタイヤの外周面側を覆う本体部2と、フェンダーライナ1を車体に取り付ける取付部3とを有する構成になっている。本体部2は湾曲面状に形成されており、湾曲面の頂部側には、ヘルムホルツ式レゾネータを構成するための凹設部2aが、湾曲面の外方側に突出する形状に形成されている。
【0021】
凹設部2a周辺の拡大図を示している図4に示すように、凹設部2aの上面、即ち、タイヤ側とは反対側に当たる凹設部2aの底面には、多数の通孔2bが形成されている。図3(a)に示すように形成された多数の通孔2bは、ヘルムホルツ孔として作用する。
【0022】
図2(a)、図4に示すように、凹設部2aの前端面及び後端面におけるそれぞれの下端部、即ち、本体部2との接合部には、左右方向に所定幅を有するスリット2cが形成されている。また、凹設部2aの左右両側面の下端部にもスリット2cが形成されている。凹設部2aの前後端面に形成したスリット2cは、凹設部2aの前端面及び後端面の下端部に本体部2の上面との間に形成した段差部14の部位に形成されている。
【0023】
尚、スリット2cの形成個数として、凹設部2aの前端面及び後端面にそれぞれ一つずつ形成した構成例を示しているが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、凹設部2aの前端面及び後端面にそれぞれ複数個のスリット2cを形成した構成にしておくこともできる。
【0024】
図1(b)には、凹設部2aの開口部2d(図2参照)を塞ぐプレート4の斜視図を示している。プレート4は、前後方向の両端部に突出片4cが形成されており、各突出片4cは、プレート4の両端部から外方に延出した形状に形成されている。凹設部2aの前後両端面に形成したスリット2cの数と、突出片4cの形成数としては対応させて形成している。そして、プレート4は、プレート4をスリット2cに挿入係止させる前の状態において、平板状に構成されている。
【0025】
本発明では、プレート4の前後方向の両端部に突出片4cを形成していない構成にしておくこともできる。この場合には、凹設部2aの前後両端面にはスリット2cを形成せずに、凹設部2aの両側面のうち少なくとも一つの側面に、プレート4の周縁部4dを挿入するスリット2cを形成した構成にしておくことができる。
【0026】
尚、以下では、突出片4cの部位を特定するため突出片と周縁部とは、別の部材符号を用いて、本発明の実施例を説明するが、本発明では、突出片4cは、プレート4をスリット2cに挿入するための周縁部4dの一部として機能しており、周縁部4dの一形態として取り扱っている。そのため、スリット2cに挿入するプレート4の周縁部4dとしては、突出片4cも包含しているものである。
【0027】
プレート4は、シート状の不織布4bに合成樹脂層4aを裏打ちした形状に構成されており、図3(b)に示すように、合成樹脂層4aの板厚Dよりも不織布4bの厚さを厚く構成している。合成樹脂層4aの板厚Dを厚く構成すると、プレート4を湾曲させ難くしてしまう。また、板厚Dを薄く構成すると、プレート4としての強度を得られなくなる。
【0028】
そのため、板厚Dとしては、プレート4をフェンダーライナ1の曲面形状に倣った曲面に形成しておくことができ、また、後述するようにプレート4の突出片4cを凹設部2aのスリット2cに挿入係止させた状態で、プレート4の弾性復帰力によって、凹設部2aに対して凹設部2aの前後方向に押圧力を与えることができる板厚となるように構成しておくことができる。
【0029】
合成樹脂層4aの板厚Dとしては、1.5mm以下に構成しておくことができ、特に、0.5mm〜1.0mmに構成しておくことにより、合成樹脂層4aとしての機能を効果的に奏させることができる。そして、本体部2の曲面形状に倣って湾曲させたとき、プレート4に生じる反力を小さくすることができる。これによって、本体部2の曲面形状に倣ってプレート4を湾曲変形させた状態で、凹設部2aのスリット2cに突出片4cやプレート4の周縁部4dを簡単に挿入係止させることができ、凹設部2a内に空気室5を画成できる。
【0030】
突出片4cの構成やスリット2cに挿入するプレート4の周縁部4dの構成としては、図3(a)に示すように、合成樹脂層4aのみをスリット2cから突出させた構成にしておくことも、図3(b)に示すように、合成樹脂層4aと不織布4bとを共にスリット2cから突出させた構成にしておくこともできる。図3(b)に示すように、凹設部2aに形成したスリット2cの高さはHの寸法として形成されている。そして、凹設部2aの前後端面において、高さHのスリット2cに突出片4cや周縁部4dをそれぞれ挿入することにより、プレート4を凹設部2aに組み付けることができる。
【0031】
図3(a)に示すように、突出片4cや周縁部4dの構成として合成樹脂層4aのみを突出させた構成のときには、スリット2cの高さHを合成樹脂層4aの板厚Dよりも僅かに低い高さ寸法に構成しておくことができる。また、図3(b)に示すように、突出片4cや周縁部4dの構成として合成樹脂層4aと不織布4bの二層を突出させた構成のときは、不織布4bを圧縮した状態において、圧縮した不織布4bの厚さに合成樹脂層4aの板厚Dを加えた厚さよりも僅かに低い高さ寸法に、スリット2cの高さHを形成しておくことができる。
【0032】
合成樹脂層4aと不織布4bの二層からなる突出片4cや周縁部4dをスリット2cに挿入する際には、予め突出片4cや周縁部4dの部位における不織布4bを圧縮させた状態から挿入作業を行うことも、不織布4bを圧縮させながらスリット2cに押し込む挿入作業を行うこともできる。
【0033】
図2(a)に示すように、凹設部2aの開口部2dを塞ぐように突出片4cをスリット2cに挿入することによって、凹設部2aとプレート4の合成樹脂層4aとによって囲まれた空気室5を形成することができる。そして、空気室5が多数の通孔2bによって、フェンダーライナ1の上面における空間と連通した構成にすることができ、ヘルムホルツ式レゾネータを構成することができる。このとき、スリット2cに挿入するプレート4の部位としては、プレート4の前後端部に形成した突出片4やプレート4の周縁部4dを用いることができる。
【0034】
このように構成することによって、ある特定の周波数の音源の音量を小さくするヘルムホルツ式レゾネータを簡単に構成することができる。そして、空気室5の容積や形状、ヘルムホルツ孔として機能する通孔2bの形状を適宜の大きさに調整したり、適宜の個数形成することによって、吸音させたい周波数領域の音に対して簡単に調整作業を行うことができ、吸音したい特定の周波数の音源の音に対して効率的に吸音して消音させることができる。
【0035】
また、スリット2cが、凹設部2aの下端側、即ち、本体部2からの立ち上がり側に形成されているので、タイヤ側に面した面において、本体部2の内面と、プレート4の不織布4bの面とを、ほぼ面差のない面一の構成にすることができる。即ち、図3(b)においてhで示した本体部2の内面と不織布4bとの段差を小さく構成することができる。
【0036】
このように構成することができるので、フェンダーライナ1の内面、即ち、タイヤ側に面した面を滑らかな面形状に形成することができる。そして、フェンダーライナ1の内面に沿って流れる空気流を滑らかな状態で流すことができる。
【0037】
スリット2cに挿入した突出片4cや周縁部4dは、本体部2のスリット2cによって挿入係止された状態になっているので所望の取付強度を得ることができる。更に取付強度を高める場合には、接着剤、両面テープ、超音波溶着、振動溶着、熱カシメ等の固着方法を用いて、更に強固に固着しておくことができる。また、図2(b)に示すように、凹設部2aの下端側に段差部14を形成しておき、プレート4の外周端面を段差部14の内面側に対して、上述した固着方法を用いて固着しておくこともできる。段差部14としては、図1に示すように凹設部2aの左右両側面に形成しておくことも、図4に示すように凹設部2aの周囲に沿って形成しておくこともできる。
【0038】
このように、プレート4の外周縁部を本体部2の段差部14に固着しておくことにより、プレート4と凹設部2aとの間におけるシール性を向上させることができる。また、不織布4bをタイヤ側に配することができるので、チッピングやスプラッシュ等が発生した際には、不織布4bによって効率的に打音を小さくさせることができる。しかも、小石等が衝突する不織布4bは、スリット2cを介して、また、段差部14を介して凹設部2aに対して強固に固着されているので、プレート4が凹設部2aから外れてしまうのを防止でき、長期に亘って打音等に対する消音効果を奏することができる。
【0039】
また、スリット2cに挿入する突出片4cや周縁部4dを本体部2の上面側、即ち、車両の内側に配することができるので、小石・泥・水・雪等がプレート4に衝突したり、付着しても、プレート4が本体部2から剥がれるのを防止することができ、長期に亘って吸音・消音性能を維持することができる。
【0040】
更に、本発明では、従来の吸音装置を配設している部位に対して、同じように配設することができるので、車体等に対するレイアウト変更等の影響が少なくてすむ。しかも、プレート4としては、二層構造に構成して、必要により突出片4cを新たに形成するだけであり、凹設部2aとしてはスリット2cを新たに形成するだけで構成することができるので、製造コストを抑えて安価に製造することができる。
【0041】
尚、凹設部2aをノイズ等の音源から離れた方向に形成した構成について、説明を行ったが、本発明に係るカバー部材をエンジンカバー等として使用する際には、凹設部2aの底部側がノイズ等の音源側を向くように構成しておくこともできる。
【0042】
次に、図9図10を用いて、本発明に係る凹設部2aとプレート4とからなる吸音構造を用いた場合での、吸音性能、遮音性能について説明する。本発明に係る吸音構造を用いた実験結果を、太線で示している。比較例として、図11に示す従来例のように不織布を用いた吸音装置の場合を点線で示し、PP(ポリプロピレン)板にシンサレート(登録商標)を貼り付けた吸音板を用いた吸音装置の場合を細線で示している。
【0043】
図9に示されるように、実験した周波数帯に亘って、本発明の構成では吸音効果が高いことが分かる。特に、500Hzから2200Hzの音源に対しては、比較例の吸音装置に比べて吸音効果が優れていることが分かる。また、図10に示す遮音効果では、実験したほぼ全域に亘って、ほぼ満遍なく遮音性能が高いことが分かる。
【0044】
このように、本発明に係るカバー部材を用いることによって、プレート4をフェンダーライナ1(カバー部材)に対して簡単に取り付けることができ、しかも、空気室5のシール性を高めることができ、チッピングやスプラッシュ等の発生する部位に設けたとしても、これらによって発生する打音を低減することができる。
【実施例2】
【0045】
次に図5を用いて、実施例2の構成について説明する。実施例2では、凹設部2aの側面側における構成が実施例1とは異なっており、他の構成は同様の構成を備えている。実施例2では、凹設部2aの左右側面のうち一方の側面には、下端部にスリット2cを形成し、他方の側面には、段差部14を形成している。段差部14の下面側には、プレート4の周縁部4dを配し、スリット2cには、プレート4の周縁部4dのうちで樹脂層4aを挿入している。
【0046】
凹設部2aの前後両端面に関しては、実施例1の構成と同様の構成にしておくことができる。そして、凹設部2aの前後両端面及び一方の側面側にそれぞれ形成したスリット2cに挿入した周縁部4dは、本体部2の上面に対して、上述した固着方法を用いて固着しておくことができる。また、凹設部2aの前後両端面及び他方の側面部の下端部に形成した段差部14とプレート4の周縁部4dとの間に関しても、上述した固着方法を用いて、段差部14の内面側に固着しておくことができる。
【0047】
このように構成することによって、プレート4は前後面における突出片4cと周縁部4dとを凹設部2aのスリット2cに挿入係止することができ、プレート4の凹設部2aへの取付作業を簡略化させることができる。しかも、スリット2cに挿入した突出片4cや周縁部4d及び段差部14に対峙したプレート4の部位を本体部2に固着することができるので、プレート4の本体部2への固着状態を強固に構成できる。尚、図5では、周縁部4dをスリット2cに挿入した構成を示している。
【0048】
凹設部2aにおける一方の側面にスリット2cを形成し、他方の側面に段差部14を形成した構成について説明を行ったが、凹設部2aの左右両側面に段差部14を設けた構成にしておくこともできる。この場合、プレート4は、前後端部に形成した突出片4cによって、凹設部2aに挿入係止されることになる。そして、湾曲面形状に変形されているプレート4の左右周縁部4dは、段差部14の内面に当接することになり、プレート4が凹設部2aから取れ難く組み付けておくことができる。上述した固着手段を用いてプレート4の周囲を段差部14の内面及び本体部2の上面に固着しておくことができる。
【実施例3】
【0049】
次に、図6を用いて、実施例3の構成について説明する。実施例3では、突出片4cや周縁部4dの本体部2への固着方法が、実施例1、2とは異なった構成になっており、他の構成は実施例1、2と同様の構成になっている。尚、図6では、周縁部4dをスリット2cに挿入した構成を示している。実施例1、2では、本体部2における凹設部2aの開口部2dをプレート4で塞ぎ、塞いだ状態を固定するのに上述した固着方法を用いて行う構成について説明を行った。本発明では、上述した固着方法以外にも、図6に示すような固着方法を用いることができる。
【0050】
スリット2cに挿入したプレート4の突出片4cや周縁部4dを、本体部2の上面から立設した突起12に刺し通し、突出片4cや周縁部4dを刺し通した突起12の自由端をワッシャー9に挿入して、突起12の自由端側を加熱して溶融させることで、突起12をビスのようにしてプレート4の突出片4cや周縁部4dを本体部2との間で挟持することができる。突起12に突出片4cや周縁部4dを刺し通した構成について説明を行ったが、突出片4cや周縁部4dに突起12を挿入する切込みを形成しておくこともできる。
【0051】
凹設部2aのスリット2cに挿入した突出片4cや周縁部4dは、スリット2cを抜けた後に突出片4cや周縁部4dに形成した切込み内に突起12を挟み込むことができる。この状態からワッシャー9を突起12に被せ、ワッシャー9から突出している突起12の頂部を溶融させることで、突起12が切込みから抜け出ないようにできる。
【0052】
開口部2dにおける本体部2の端部にテーパ面8を形成しておくことにより、突出片4cや周縁部4dをスリット2cに挿入するときの突出片4cや周縁部4dの挿入を容易にすることができる。即ち、突出片4cや周縁部4dをスリット2cに挿入する際には、テーパ面8がスリット2cへの案内面として機能して、突出片4cや周縁部4dのスリット2cへの取付作業を効率化させることができる。
【実施例4】
【0053】
次に、図7を用いて、実施例4の構成について説明する。実施例1乃至3では、一つの凹設部2aを形成した構成について説明を行ったが、図7に示すように、タイヤ10の幅方向に沿って、図示例では二つであるが、複数の凹設部2aを形成することができる。また、図示を省略しているが、凹設部2aをフェンダーライナ1の長手方向に沿って複数形成しておくことも、フェンダーライナ1の長手方向と左右方向とにそれぞれ複数個ずつ凹設部2aを形成しておくこともできる。
【0054】
凹設部2aを複数形成することによって、それぞれの凹設部2aで吸音させる音源の周波数を異ならせることができる。また、騒音等のノイズが発生し易い部位に集中的に凹設部2aを配設して、吸音、消音を効率的に行わせることもできる。
【実施例5】
【0055】
次に、図8を用いて、実施例5の構成について説明する。実施例1乃至4では、空気室5を中空状態のままで使用した構成について説明を行ったが、図8に示すように、空気室5内に吸音材6を充てんさせた構成にしておくこともできる。空気室5に吸音材8を充てんさせることにより、ヘルムホルツ式レゾネータとしての機能を高めることができる。
【0056】
本発明をフェンダーライナ1に設けた構成について説明を行ったが、本発明に係るカバー部材としてはフェンダーライナ1の構成に限定されるものではなく、吸音性能や遮音性能を求められている部位に配するカバー部材として適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…フェンダーライナ(カバー部材)、2…本体部、2a…凹設部、2b…通孔、2c…スリット、3…取付部、4…プレート、4a…樹脂層、4b…不織布、4c…突出片、5…空気室、6…吸音材、8…テーパ面、9…ワッシャー、12…突起、14…段差部、32…本体部、32a…凹設部、33…吸音材、D…樹脂層の厚さ、H…スリット高さ、h…本体部と不織布との段差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11