【実施例1】
【0014】
図1から
図6は、本発明のバッテリボックスのロック機構の第1実施例を示す。
図1は本発明のバッテリボックスのロック機構を示すもので、
図1(A)は電動アシスト自転車にバッテリボックスが装着されつつある状態の要部斜視図で、
図1(B)はケーシングが省略されたロック機構の要部斜視図である。
図2はバッテリボックスを装着する前の電動アシスト自転車の立パイプ近傍の要部斜視図である。図示は省略されているが、車体フレームの後ホーク(シートステー)16の下端部とチェーンステー14の後端部との接合部には後車輪15のハブ部が軸支されており、該後ホーク16には後車輪15の回転をロックするリヤサークル錠17が配設され、キーシリンダ18を備える。車体フレームのヘッドパイプから後下方に延びる下部のダウンチューブの下端部と、上部にサドル9を支持する立パイプ(シートチューブ)10の下端部との接合部には、ペダル踏力検出機構およびペダルクランク軸等が組み付けられたハンガー部11が溶接等により接合される。
【0015】
前記ハンガー部11の後部、すなわちハンガー部11と後端部に後車輪15を軸支するチェーンステー14の前端部との間には、図示しないブラケットが溶接等により接合されて配設され、該ブラケットの上面部にはバッテリ載置部13が固定される。該バッテリ載置部13の上部であって、立パイプ10の後部と後車輪15の前部との間の空間にバッテリを収納したバッテリボックス1が、
図1に示したように、その下端部を中心とした揺動動作によって起立位置に装着される。
図2におけるバッテリ載置部13の上面の車体の僅か左側の溝29にバッテリボックス1の下端部の適宜の凸部を挿入してバッテリボックス1が傾動装着に到ると、バッテリボックス1の下端部に露出せる補助動力駆動部への電源の供給や各種検出信号の接続線のコネクタ端子が、バッテリ載置部13の上面の対応位置に配列されたコネクタ端子30と整合して接続されることになる。
【0016】
バッテリ載置部13に載置して装着されるバッテリボックス1の上部側面には、ロック機構4におけるフック等の係止部3に対応して被係止部2が形成される。ロック機構4は
図1(B)に示すような、キーシリンダ5と、これに組み合わされたフック等の係止部3が斜線矢印のように直線移動自在にフックホルダを構成するベース部7に収納され、かつベース部7が支軸22に対して解錠方向である白矢印のように揺動自在に配設されている。そして、詳細は後述するが、ベース部7はキーシリンダ5のキー操作に基づく規制部6によってその揺動が規制自在に構成される。そして、ロック機構4は、前記バッテリボックス1の被係止部2に対応する立パイプ10の、好適には左側面の対応する位置に設置される。通常、左側通行の車両である自転車にあっては車体の左側に搭乗者が立ってロック機構4等を操作することが多いからである。
【0017】
図3(A)はバッテリボックスが装着された状態の電動アシスト自転車の立パイプ近傍の要部斜視図であり、
図3(B)はロック機構における係止部近傍の横断面図である。
図3(A)では、キーシリンダ5のケーシングが図示省略されている。
図1(A)(B)の黒矢印のようにして、バッテリボックス1における被係止部2がロック機構4におけるフックである係止部3を押圧すると、
図3(B)に示すように、バッテリボックス1の装着に伴って被係止部2の先行側斜面31がロック機構4における係止部3のバッテリボックス装着方向に面する傾斜面26に作用して、直線移動の復元ばね24の復元力に抗して係止部3を後退させた後、バッテリボックス1の被係止部2がロック機構4におけるフック等の係止部3と復元ばね24の付勢力によって係止されることが理解される。
【0018】
図4は係止部が収納されるベース部の説明斜視図である。
図4(A)に示すように、ロック機構4におけるフック等から構成される係止部3は、支軸22(
図1、
図5および
図6参照)の周りに揺動自在に支持されたフックホルダを構成するベース部7におけるフック収納部19内に矢印のように直線移動自在に収納される。ベース部7はそのフック収納部19の係止部3の移動方向にほぼ直交して延設される一対のアーム部20、20を有し、これらの先端近傍に各支軸孔21が穿設される。これらの各支軸孔21には、後述する
図5に示すように、キーシリンダケーシング25に植設される支軸22が挿入され、キーシリンダケーシング25に対してベース部7すなわち係止部3がコイルばね23によって復元可能に揺動自在に配設されることになる。
図4(B)はベース部7を下方から見た図である。
図4(C)は係止部3がフック収納部19内に収納されて組み立てられた状態の斜視図である。なお、フック収納部19の上面には、後述するところの、ベース部7の揺動動作が規制される被規制部8が突出形成されている。
【0019】
図5は解錠(開錠)状態および施錠状態における係止部が収納されるベース部の被規制部とキーシリンダにおける規制部との関連動作を説明する斜視図である。先ず、係止部3が収納されるベース部7の施錠状態について説明する。それに先立って、
図6(B)(C)によって、バッテリボックス1の装着動作に伴い係止部3の係止動作を説明すると、バッテリボックス1の装着動作によりバッテリボックス1における被係止部2の先行側傾斜面31(
図3(B))が係止部3の傾斜面26に当接することにより、ベース部7におけるフック収納部19内に係止部3を復元ばね24の復元力に抗して押し戻して、
図6(B)の状態にした後、係止部3が復元ばね24の復元力により
図6(C)と同様の状態に戻って、バッテリボックス1における被係止部2と係止部3とが係合してロックされる。
【0020】
図5(C)(D)の施錠状態にては、キーシリンダ5の下部の規制部6は図の規制位置にある。このとき、
図5(C)に示すように、支軸22を以てキーシリンダケーシング25部に対して揺動自在に組み合わされた係止部3を収納するベース部7における被規制部8と前記キーシリンダ5の下部の規制部6とは干渉規制される関係にある。つまり、ベース部7はフック収納部19の上面に形成された被規制部8の揺動軌跡にキーシリンダ5の下部の規制部6が位置することによりその揺動動作が規制されている。次いで、キーがキーシリンダ5に挿入されて回動されてキー解錠操作が行われると、キーシリンダ5(
図1(B)参照)の回動動作に連動する規制部6が回動して
図5(B)の非規制位置に位置する。つまり、規制部6が
図5(C)における図面奥に移動し、ベース部7における被規制部8の揺動軌跡から退避するので、
図5(A)の状態のように、ベース部7すなわち係止部3はコイルばねから構成される復元ばね23の復元力に抗して解錠方向(白矢印)に揺動することができる。
【0021】
図6は、フックから構成される係止部3が収納されるベース部7部における断面図を含み、その断面からキーシリンダ側を見上げた図であり、キーシリンダ側の規制部6を見ることができる。
図6(B)(C)は、ベース部7の揺動が規制され係止部3の直線移動のみが可能な状態で解錠および施錠状態にある。キー操作に基づくキーの解錠操作によって、規制部6がベース部7における被規制部8の揺動軌跡から退避するに到る。しかし、そのままでは、コイルばね23の比較的大きな復元力によってベース部7の揺動は開始しない。人力によるバッテリボックス1の取外しすなわち解錠動作によって初めて、バッテリボックス1における被係止部2がロック機構4における係止部3のバッテリボックス取外し方向に面する平坦面33を揺動方向に押圧する。これによって、
図6(A)に示すように、係止部3すなわちベース部7が支軸22を中心としてコイルばね23の復元力に抗して揺動するに到り、恰も、係止部3が直線的に後退した
図6(B)の状態と同様となり、係止部3がバッテリボックス1の被係止部2から離脱するので、バッテリボックス1を取り外して充電等に供することができる。かくして、バッテリボックス1の装着時における係止部3のベース部7内での直線移動による摺動方向と、バッテリボックス1の取外し時における係止部3およびベース部7の揺動による摺動方向とが異なるので、それらの摺動部間における各作動耐久性が向上する。
【0022】
なお、
図6(C)に明示されるように、フック等から構成される係止部3の前面の傾斜面26は、好適には支軸22を中心とする半径R上に一致するような円弧状に構成される。このように構成することによって、係止部3がキーシリンダケーシング25内において揺動する際に、前記ケーシング内との干渉隙間を最小限に抑制できるとともに、係止部3がキーシリンダケーシング25から出没するためのフック孔28との揺動干渉も最小限にすることができる。つまり、フック孔28の開口面積を必要最小限にすることができるのである。
【0023】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、本発明のバッテリボックスのロック機構が適用される部位、好適には、電動アシスト自転車に適用されるが、自動二輪車等のバッテリ装着車両や産業機器等における電源としてのバッテリボックスの装着におけるロック機構としても適用が可能である。そして、バッテリボックスの形状(図示の実施例のようなボックス形状の他、枠体形状でもよい)、形式、およびその被係止部の形状(バッテリボックスの装着時の被係止部の先行側に係止部前面の傾斜面に作用する傾斜面があり、係止部を適正にロックできれば、バッテリボックスの適宜部位に適宜の形状に形成できる)、バッテリボックスの装着形態(実施例のように、バッテリボックスの下端部を揺動中心とする揺動形態の他、ロック機構への水平方向の横移動形態(例えば、バッテリボックス載置部への横移動によるバッテリボックス底部のワンタッチ装着と、バッテリボックス上部における被係止部と係止部を有するロック機構への横移動による装着によるものでも可能である。その場合の、バッテリボックス載置部に設けられる配線のためのコネクタ端子等は横方向での接続形態とされる。また、設計上、シートステーとの干渉が回避できるなら、バッテリボックスの上方からの装着形態も考慮される。その場合は、ロック機構における係止部とバッテリボックスにおける被係止部との係合は、実施例の揺動係合に代えて上下方向の係合とされる。その場合でも、係止部を収納するベース部の上下方向の揺動を規制する規制部を形成したキーシリンダは、好適には図示の実施例のようにほぼ鉛直方向を向くように構成されるが、場合によっては、実施例のようなキーシリンダおよびベース部の組合せをそのまま採用するなら、キーシリンダをほぼ水平方向に配置することを妨げるものではない)、キーシリンダにおける規制部の形状および形成形態ならびに形成部位、ベース部における被規制部の形状および形成形態ならびに形成部位、係止部のベース部における収納形態およびその復元ばねによる復元形態、ベース部の解錠動作時の揺動形態(実施例では、バッテリボックスの解錠動作である取外し動作によって、コイルばねの復元力に抗してベース部を揺動させるが、ベース部の外周の適宜部位とこれに対応するキーシリンダケーシング内周の適宜部位との間にて、例えば、ばねとボールおよび突起群との組合せによる節度機構を設けて、バッテリボックスの取外しに節度感を持たせて安全に取り外すことができるように構成することもできる)、支軸を介したベース部のキーシリンダケーシングにおける支持形態(例えば、前記節度機構を支軸と支軸孔との間に形成してもよい)、本バッテリボックスのロック機構が適用される電動アシスト自転車の形式等については適宜採用できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。