特許第6117073号(P6117073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブリヂストンサイクル株式会社の特許一覧

特許6117073バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車
<>
  • 特許6117073-バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車 図000002
  • 特許6117073-バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車 図000003
  • 特許6117073-バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車 図000004
  • 特許6117073-バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車 図000005
  • 特許6117073-バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車 図000006
  • 特許6117073-バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車 図000007
  • 特許6117073-バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117073
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】バッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
   E05B 71/00 20060101AFI20170410BHJP
   B62J 11/00 20060101ALI20170410BHJP
   B62M 6/90 20100101ALI20170410BHJP
【FI】
   E05B71/00 Z
   B62J11/00 G
   B62M6/90
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-206906(P2013-206906)
(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公開番号】特開2015-71865(P2015-71865A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102565
【弁理士】
【氏名又は名称】永嶋 和夫
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寛
(72)【発明者】
【氏名】藤木 優佑
(72)【発明者】
【氏名】武田 靖正
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−308202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00− 85/28
B62J 11/00
B62M 6/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリボックスに形成された被係止部と、該被係止部に係脱する係止部を有するバッテリボックスのロック機構において、前記係止部は、バッテリボックスの装着時に直線移動にて解錠位置への退避および施錠位置への進出をし、バッテリボックスの取外し時に揺動移動にて解錠位置に退避するように構成されるとともに、前記係止部を保持するベース部を備え、前記係止部はベース部に対して係脱方向に直線移動自在に保持されるとともに、バッテリボックスの取外し時には前記係止部がベース部とともに解錠方向に揺動するように構成されたことを特徴とするバッテリボックスのロック機構。
【請求項2】
前記係止部の傾斜面が、該係止部の揺動時の先端軌跡に沿う半径Rに略一致するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のバッテリボックスのロック機構。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載のバッテリボックスのロック機構を備えた電動アシスト自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリボックスに形成された被係止部と、該被係止部に係脱する係止部を有するバッテリボックスのロック機構に関する。好適には電動アシスト自転車等の補助動力駆動部に電源を供給するバッテリの車体への装着の際のロック機構に適用されるが、電動アシスト自転車に限定されることなく、自動二輪車等のバッテリ装着車両や補助動力が必要な運搬車両等、さらには車両のような移動体の他、移動することのない産業機器等における電源としてのバッテリボックスの装着におけるロック機構としても適用が可能である。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車においてはペダル踏動により駆動力を得ているが、登坂路を長時間にわたりペダル踏動にて走行する場合や、平坦な路であっても荷物を帯同してのペダル踏動は大きな労力を必要とし、特に、老人あるいは婦女子にとっては大変体力を消耗するものであった。そのようなことから、近年では、あまり体力を必要としない電動自転車や電動アシスト自転車が普及してきた。そして、このような主動力あるいは補助動力として自転車の動力の電源供給に供される比較的容量の大きいバッテリを収納するバッテリボックスは、充電のために頻繁に車体への着脱が行われる。そして、これらのバッテリボックスの車体への装着に関しては盗難防止や脱落防止の観点から、着脱が容易でありながら、意図しない取外しが容易に行えないようにロック機構を装備するように構成されている。
【0003】
そのようなバッテリボックスの装着機構におけるロック機構として下記特許文献1に記載されたような脱着式バッテリボックスのロック機構が提案された。そのような従来の脱着式バッテリボックスのロック機構を図7を用いて説明すると、この脱着式バッテリボックスのロック機構は、キー148の操作によってボディ143内を可動なシリンダ146と、該シリンダ146の動作に追従して前記ボディ143から出没することによって、バッテリボックス132の係合溝132aに係脱するフック151を含んで構成される脱着式バッテリボックスのロック機構において、前記フック151を、前記シリンダ146に対して移動可能に支持するとともに、突出方向に付勢し、該フック151の先端部にテーパ面151bを形成することによって、施錠状態におけるバッテリボックス132の装着動作によって解錠(フック151のみがシリンダ146方向に後退が可能)し、同バッテリボックス132の装着完了と同時に施錠(フック151がバッテリボックス132側に前進)するように構成されたものである。
【0004】
このような構成により、バッテリボックス132を取り外した後に、ロック機構を施錠状態にしておけば、以後のバッテリボックス132の装着時には、その装着動作によってロック機構が自動的に解錠されて該バッテリボックス132が装着され、このバッテリボックス132の装着が終了すると同時に施錠されることになり、面倒なキー操作が不要となって、バッテリボックス132を片手で容易に装着することが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3622021号公報(特許請求の範囲等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記第1従来例の脱着式バッテリボックスのロック機構では、図7(A)(C)に示されるように、バッテリボックス132をロックするところのフック151は、キー148の操作に追従してバッテリボックス132における係合溝132aに係脱する形式であるために、キー148の解錠操作に応じてフック151が外れ方向に移動可能であるため、不用意にバッテリボックス132が外れてしまう虞れがあった。
【0007】
そこで本発明では、前記従来の脱着式バッテリボックスのロック機構における課題を解決して、バッテリボックスをロック係止するフック等の係止部がキー操作に追従して解錠(開錠)方向に移動しないようにして、バッテリボックスが不用意に外れることがないようにできるバッテリボックスのロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、バッテリボックスに形成された被係止部と、該被係止部に係脱する係止部を有するバッテリボックスのロック機構において、前記係止部は、バッテリボックスの装着時に直線移動にて解錠位置への退避および施錠位置への進出をし、バッテリボックスの取外し時に揺動移動にて解錠位置に退避するように構成されるとともに、前記係止部を保持するベース部を備え、前記係止部はベース部に対して係脱方向に直線移動自在に保持されるとともに、バッテリボックスの取外し時には前記係止部がベース部とともに解錠方向に揺動するように構成されたことを特徴とする。本発明は、前記係止部の傾斜面が、該係止部の揺動時の先端軌跡に沿う半径Rに略一致するように構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記いずれかに記載のバッテリボックスのロック機構を備えた電動アシスト自転車を特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、請求項1に記載の構成要件である、バッテリボックスに形成された被係止部と、該被係止部に係脱する係止部を有するバッテリボックスのロック機構において、前記係止部は、バッテリボックスの装着時に直線移動にて解錠位置への退避および施錠位置への進出をし、バッテリボックスの取外し時に揺動移動にて解錠位置に退避するように構成されるとともに、前記係止部を保持するベース部を備え、前記係止部はベース部に対して係脱方向に直線移動自在に保持されるとともに、バッテリボックスの取外し時には前記係止部がベース部とともに解錠方向に揺動するように構成されたことにより、バッテリボックスの取外し動作が行われない限り、係止部が解錠位置に退避することはないので、キー解錠状態でバッテリボックスが不用意に外れることがなく安全である。しかも、バッテリボックスの装着時における係止部のベース部に対する直線移動による摺動方向と、バッテリボックスの取外し時における係止部およびベース部の揺動による摺動方向とが異なるので、それらの摺動部間における各作動耐久性が向上する。
【0010】
また、請求項2に記載の構成要件である、前記係止部傾斜面が、該係止部の揺動時の先端軌跡に沿う半径Rに略一致するように構成された場合は、係止部がケーシング内において揺動する際に、前記ケーシング内との干渉隙間を最小限に抑制できるとともに、係止部がケーシングから出没するための孔との揺動干渉も最小限にできて、孔の開口面積を必要最小限にすることができる。
【0011】
さらにまた、請求項に記載の構成要件である、前記いずれかに記載のバッテリボックスのロック機構を備えた電動アシスト自転車を特徴とする場合は、車体を傾動させて駐輪させる場合がある電動アシスト自転車の車体に取り付けられるバッテリボックスの取外し時等において、キー解除操作によってもバッテリボックスの取外し動作を行わないうちはバッテリボックスの解錠ができないので、傾動した車体からでも妄りにバッテリボックスが脱落することを防止できて安全である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のバッテリボックスのロック機構を示すもので、電動アシスト自転車にバッテリボックスが装着されつつある状態の要部斜視図とロック機構の要部斜視図である。
図2】同、バッテリボックスを装着する前の電動アシスト自転車の立パイプ近傍の要部斜視図である。
図3】同、バッテリボックスが装着された状態の電動アシスト自転車の立パイプ近傍の要部斜視図およびロック機構における係止部近傍の横断面図である。
図4】同、係止部が収納されるベース部の説明斜視図である。
図5】同、解錠(開錠)状態および施錠状態における係止部が収納されるベース部の被規制部とキーシリンダにおける規制部との関連動作を説明する斜視図である。
図6】同、キーシリンダケーシング内での係止部を収納したベース部の挙動を説明する各横断面図である。
図7】特許文献1に開示された第1従来例の脱着式バッテリボックスのロック機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のバッテリボックスのロック機構および電動アシスト自転車を図面に基づいて説明する。本発明のバッテリボックスのロック機構は、図1に示すように、バッテリボックス1に形成された被係止部2と、該被係止部2に係脱する係止部3を有するバッテリボックスのロック機構4において、前記係止部3は、(黒矢印のように)バッテリボックス1の装着時に(斜線矢印のように)直線移動にて解錠位置への退避および施錠位置への進出をし、バッテリボックス1の取外し時に(白矢印のように)揺動移動にて解錠位置に退避するように構成されるとともに、前記係止部3を保持するベース部7を備え、前記係止部3はベース部7に対して係脱方向に直線移動自在に保持されるとともに、バッテリボックス1の取外し時には前記係止部3がベース部7とともに解錠方向に揺動するように構成されたことを特徴とする。
【実施例1】
【0014】
図1から図6は、本発明のバッテリボックスのロック機構の第1実施例を示す。図1は本発明のバッテリボックスのロック機構を示すもので、図1(A)は電動アシスト自転車にバッテリボックスが装着されつつある状態の要部斜視図で、図1(B)はケーシングが省略されたロック機構の要部斜視図である。図2はバッテリボックスを装着する前の電動アシスト自転車の立パイプ近傍の要部斜視図である。図示は省略されているが、車体フレームの後ホーク(シートステー)16の下端部とチェーンステー14の後端部との接合部には後車輪15のハブ部が軸支されており、該後ホーク16には後車輪15の回転をロックするリヤサークル錠17が配設され、キーシリンダ18を備える。車体フレームのヘッドパイプから後下方に延びる下部のダウンチューブの下端部と、上部にサドル9を支持する立パイプ(シートチューブ)10の下端部との接合部には、ペダル踏力検出機構およびペダルクランク軸等が組み付けられたハンガー部11が溶接等により接合される。
【0015】
前記ハンガー部11の後部、すなわちハンガー部11と後端部に後車輪15を軸支するチェーンステー14の前端部との間には、図示しないブラケットが溶接等により接合されて配設され、該ブラケットの上面部にはバッテリ載置部13が固定される。該バッテリ載置部13の上部であって、立パイプ10の後部と後車輪15の前部との間の空間にバッテリを収納したバッテリボックス1が、図1に示したように、その下端部を中心とした揺動動作によって起立位置に装着される。図2におけるバッテリ載置部13の上面の車体の僅か左側の溝29にバッテリボックス1の下端部の適宜の凸部を挿入してバッテリボックス1が傾動装着に到ると、バッテリボックス1の下端部に露出せる補助動力駆動部への電源の供給や各種検出信号の接続線のコネクタ端子が、バッテリ載置部13の上面の対応位置に配列されたコネクタ端子30と整合して接続されることになる。
【0016】
バッテリ載置部13に載置して装着されるバッテリボックス1の上部側面には、ロック機構4におけるフック等の係止部3に対応して被係止部2が形成される。ロック機構4は図1(B)に示すような、キーシリンダ5と、これに組み合わされたフック等の係止部3が斜線矢印のように直線移動自在にフックホルダを構成するベース部7に収納され、かつベース部7が支軸22に対して解錠方向である白矢印のように揺動自在に配設されている。そして、詳細は後述するが、ベース部7はキーシリンダ5のキー操作に基づく規制部6によってその揺動が規制自在に構成される。そして、ロック機構4は、前記バッテリボックス1の被係止部2に対応する立パイプ10の、好適には左側面の対応する位置に設置される。通常、左側通行の車両である自転車にあっては車体の左側に搭乗者が立ってロック機構4等を操作することが多いからである。
【0017】
図3(A)はバッテリボックスが装着された状態の電動アシスト自転車の立パイプ近傍の要部斜視図であり、図3(B)はロック機構における係止部近傍の横断面図である。図3(A)では、キーシリンダ5のケーシングが図示省略されている。図1(A)(B)の黒矢印のようにして、バッテリボックス1における被係止部2がロック機構4におけるフックである係止部3を押圧すると、図3(B)に示すように、バッテリボックス1の装着に伴って被係止部2の先行側斜面31がロック機構4における係止部3のバッテリボックス装着方向に面する傾斜面26に作用して、直線移動の復元ばね24の復元力に抗して係止部3を後退させた後、バッテリボックス1の被係止部2がロック機構4におけるフック等の係止部3と復元ばね24の付勢力によって係止されることが理解される。
【0018】
図4は係止部が収納されるベース部の説明斜視図である。図4(A)に示すように、ロック機構4におけるフック等から構成される係止部3は、支軸22(図1図5および図6参照)の周りに揺動自在に支持されたフックホルダを構成するベース部7におけるフック収納部19内に矢印のように直線移動自在に収納される。ベース部7はそのフック収納部19の係止部3の移動方向にほぼ直交して延設される一対のアーム部20、20を有し、これらの先端近傍に各支軸孔21が穿設される。これらの各支軸孔21には、後述する図5に示すように、キーシリンダケーシング25に植設される支軸22が挿入され、キーシリンダケーシング25に対してベース部7すなわち係止部3がコイルばね23によって復元可能に揺動自在に配設されることになる。図4(B)はベース部7を下方から見た図である。図4(C)は係止部3がフック収納部19内に収納されて組み立てられた状態の斜視図である。なお、フック収納部19の上面には、後述するところの、ベース部7の揺動動作が規制される被規制部8が突出形成されている。
【0019】
図5は解錠(開錠)状態および施錠状態における係止部が収納されるベース部の被規制部とキーシリンダにおける規制部との関連動作を説明する斜視図である。先ず、係止部3が収納されるベース部7の施錠状態について説明する。それに先立って、図6(B)(C)によって、バッテリボックス1の装着動作に伴い係止部3の係止動作を説明すると、バッテリボックス1の装着動作によりバッテリボックス1における被係止部2の先行側傾斜面31(図3(B))が係止部3の傾斜面26に当接することにより、ベース部7におけるフック収納部19内に係止部3を復元ばね24の復元力に抗して押し戻して、図6(B)の状態にした後、係止部3が復元ばね24の復元力により図6(C)と同様の状態に戻って、バッテリボックス1における被係止部2と係止部3とが係合してロックされる。
【0020】
図5(C)(D)の施錠状態にては、キーシリンダ5の下部の規制部6は図の規制位置にある。このとき、図5(C)に示すように、支軸22を以てキーシリンダケーシング25部に対して揺動自在に組み合わされた係止部3を収納するベース部7における被規制部8と前記キーシリンダ5の下部の規制部6とは干渉規制される関係にある。つまり、ベース部7はフック収納部19の上面に形成された被規制部8の揺動軌跡にキーシリンダ5の下部の規制部6が位置することによりその揺動動作が規制されている。次いで、キーがキーシリンダ5に挿入されて回動されてキー解錠操作が行われると、キーシリンダ5(図1(B)参照)の回動動作に連動する規制部6が回動して図5(B)の非規制位置に位置する。つまり、規制部6が図5(C)における図面奥に移動し、ベース部7における被規制部8の揺動軌跡から退避するので、図5(A)の状態のように、ベース部7すなわち係止部3はコイルばねから構成される復元ばね23の復元力に抗して解錠方向(白矢印)に揺動することができる。
【0021】
図6は、フックから構成される係止部3が収納されるベース部7部における断面図を含み、その断面からキーシリンダ側を見上げた図であり、キーシリンダ側の規制部6を見ることができる。図6(B)(C)は、ベース部7の揺動が規制され係止部3の直線移動のみが可能な状態で解錠および施錠状態にある。キー操作に基づくキーの解錠操作によって、規制部6がベース部7における被規制部8の揺動軌跡から退避するに到る。しかし、そのままでは、コイルばね23の比較的大きな復元力によってベース部7の揺動は開始しない。人力によるバッテリボックス1の取外しすなわち解錠動作によって初めて、バッテリボックス1における被係止部2がロック機構4における係止部3のバッテリボックス取外し方向に面する平坦面33を揺動方向に押圧する。これによって、図6(A)に示すように、係止部3すなわちベース部7が支軸22を中心としてコイルばね23の復元力に抗して揺動するに到り、恰も、係止部3が直線的に後退した図6(B)の状態と同様となり、係止部3がバッテリボックス1の被係止部2から離脱するので、バッテリボックス1を取り外して充電等に供することができる。かくして、バッテリボックス1の装着時における係止部3のベース部7内での直線移動による摺動方向と、バッテリボックス1の取外し時における係止部3およびベース部7の揺動による摺動方向とが異なるので、それらの摺動部間における各作動耐久性が向上する。
【0022】
なお、図6(C)に明示されるように、フック等から構成される係止部3の前面の傾斜面26は、好適には支軸22を中心とする半径R上に一致するような円弧状に構成される。このように構成することによって、係止部3がキーシリンダケーシング25内において揺動する際に、前記ケーシング内との干渉隙間を最小限に抑制できるとともに、係止部3がキーシリンダケーシング25から出没するためのフック孔28との揺動干渉も最小限にすることができる。つまり、フック孔28の開口面積を必要最小限にすることができるのである。
【0023】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、本発明のバッテリボックスのロック機構が適用される部位、好適には、電動アシスト自転車に適用されるが、自動二輪車等のバッテリ装着車両や産業機器等における電源としてのバッテリボックスの装着におけるロック機構としても適用が可能である。そして、バッテリボックスの形状(図示の実施例のようなボックス形状の他、枠体形状でもよい)、形式、およびその被係止部の形状(バッテリボックスの装着時の被係止部の先行側に係止部前面の傾斜面に作用する傾斜面があり、係止部を適正にロックできれば、バッテリボックスの適宜部位に適宜の形状に形成できる)、バッテリボックスの装着形態(実施例のように、バッテリボックスの下端部を揺動中心とする揺動形態の他、ロック機構への水平方向の横移動形態(例えば、バッテリボックス載置部への横移動によるバッテリボックス底部のワンタッチ装着と、バッテリボックス上部における被係止部と係止部を有するロック機構への横移動による装着によるものでも可能である。その場合の、バッテリボックス載置部に設けられる配線のためのコネクタ端子等は横方向での接続形態とされる。また、設計上、シートステーとの干渉が回避できるなら、バッテリボックスの上方からの装着形態も考慮される。その場合は、ロック機構における係止部とバッテリボックスにおける被係止部との係合は、実施例の揺動係合に代えて上下方向の係合とされる。その場合でも、係止部を収納するベース部の上下方向の揺動を規制する規制部を形成したキーシリンダは、好適には図示の実施例のようにほぼ鉛直方向を向くように構成されるが、場合によっては、実施例のようなキーシリンダおよびベース部の組合せをそのまま採用するなら、キーシリンダをほぼ水平方向に配置することを妨げるものではない)、キーシリンダにおける規制部の形状および形成形態ならびに形成部位、ベース部における被規制部の形状および形成形態ならびに形成部位、係止部のベース部における収納形態およびその復元ばねによる復元形態、ベース部の解錠動作時の揺動形態(実施例では、バッテリボックスの解錠動作である取外し動作によって、コイルばねの復元力に抗してベース部を揺動させるが、ベース部の外周の適宜部位とこれに対応するキーシリンダケーシング内周の適宜部位との間にて、例えば、ばねとボールおよび突起群との組合せによる節度機構を設けて、バッテリボックスの取外しに節度感を持たせて安全に取り外すことができるように構成することもできる)、支軸を介したベース部のキーシリンダケーシングにおける支持形態(例えば、前記節度機構を支軸と支軸孔との間に形成してもよい)、本バッテリボックスのロック機構が適用される電動アシスト自転車の形式等については適宜採用できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のバッテリボックスのロック機構は、好適には電動アシスト自転車等の補助動力駆動部に電源を供給するバッテリの車体への装着の際のロック機構に適用されるが、電動アシスト自転車に限定されることなく、自動二輪車等のバッテリ装着車両や補助動力が必要な運搬車両等、さらには車両のような移動体の他、移動することのない産業機器等における電源としてのバッテリボックスの装着におけるロック機構としても適用が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 バッテリボックス
2 被係止部
3 係止部(フック)
4 ロック機構
5 キーシリンダ
6 規制部
7 ベース部(フックホルダ)
8 被規制部
9 サドル
10 立パイプ(シートチューブ)
11 ハンガー部
13 バッテリ載置部
14 チェーンステー
15 後車輪
16 後ホーク(シートステー)
22 支軸
23 コイルばね
26 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7