特許第6117075号(P6117075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117075
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】触覚呈示装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20170410BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G06F3/01 560
   G06F3/041 480
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-212845(P2013-212845)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-75995(P2015-75995A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(72)【発明者】
【氏名】小野 泰弘
【審査官】 円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−330618(JP,A)
【文献】 特開2008−225690(JP,A)
【文献】 特開2011−159280(JP,A)
【文献】 特開2015−035141(JP,A)
【文献】 特開2013−127687(JP,A)
【文献】 特開2013−012150(JP,A)
【文献】 特表2010−506302(JP,A)
【文献】 特開2005−267080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面に対する検出対象物の接近及び接触を検出する検出部と、
前記検出部に振動を付加して触覚を呈示する触覚呈示部と、
前記検出部によって、前記検出対象物の接近に続いて接触が検出された場合、接近が検出されている間は、第1の振動パターンに基づく触覚を呈示させるように前記触覚呈示部を制御し、接触が検出された後は、前記第1の振動パターンよりも振幅が大きい第2の振動パターンに基づく触覚を、前記第1の振動パターンに基づく触覚に続けて呈示させるように前記触覚呈示部を制御する制御部と、
を備えた触覚呈示装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の振動パターンと前記第2の振動パターンとの位相が合うように前記触覚呈示部を制御して触覚を呈示させる、
請求項1に記載の触覚呈示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の振動パターンに基づく触覚の呈示によって前記検出部が上方向に移動する期間に接触が検出された場合は、次に前記検出部が下方向に移動する期間に、前記第1の振動パターンの位相に合わせて前記下方向に移動する前記第2の振動パターンに基づく触覚を呈示させる、
請求項1又は2に記載の触覚呈示装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1の振動パターンに基づく触覚の呈示によって前記検出部が下方向に移動する期間に接触が検出された場合は、次に前記検出部が上方向に移動する期間に、前記第1の振動パターンの位相に合わせて前記上方向に移動する前記第2の振動パターンに基づく触覚を呈示させる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の触覚呈示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記検出部が、触覚が呈示される前の基準位置に移動するタイミングで、位相を合わせて前記第1の振動パターンから前記第2の振動パターンに切り替える、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の触覚呈示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚呈示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、装置において触覚的効果を生成する方法であって、装置の入力領域近傍における、物体の存在を検出するステップと、存在検出に応答して、装置上の触覚的効果を生成するステップと、を含む方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この触覚的効果を生成するステップは、物体が入力領域に触れる前に、アクチュエータを電気的に付勢するステップを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−506302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、操作者に触覚を呈示する場合、振動を付加する対象の慣性により、振動開始からしばらくの間は、予定した振動が得られず、予定した触覚ではないことに基づく操作性の低下が考えられる。この操作性の低下を解決するため、例えば、従来の方法では、物体が入力領域に触れる前から振動を付勢する方法が採用されている。しかし、従来の方法によって入力領域に触れる前に付勢される振動は、物体に触覚的効果をもたらすための振動の初めの部分であり、操作者がこの振動を認識する可能性があると共に、物体の存在を検出してから触れるまでの時間が長くなると、予定していた触覚的効果をもたらす振動に移行し、さらに操作性が低下する可能性がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、操作性を低下させることなく触覚を呈示することができる触覚呈示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、操作面に対する検出対象物の接近及び接触を検出する検出部と、検出部に振動を付加して触覚を呈示する触覚呈示部と、検出部によって、検出対象物の接近に続いて接触が検出された場合、接近が検出されている間は、第1の振動パターンに基づく触覚を呈示させるように触覚呈示部を制御し、接触が検出された後は、第1の振動パターンよりも振幅が大きい第2の振動パターンに基づく触覚を、第1の振動パターンに基づく触覚に続けて呈示させるように触覚呈示部を制御する制御部と、を備えた触覚呈示装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作性を低下させることなく触覚を呈示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、第1の実施の形態に係る触覚呈示装置が搭載された車両内部の概略図であり、(b)は、触覚呈示装置の上面図である。
図2図2(a)は、第1の実施の形態に係る触覚呈示装置のブロック図であり、(b)は、図1(b)のII(b)-II(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、アクチュエータの構造を説明するための要部断面図であり、(d)は、触覚呈示装置と接続された表示装置に表示された表示画像を示す概略図である。
図3図3(a)〜(d)は、第1の実施の形態に係る触覚呈示装置の振動パターンに関する概略図である。
図4図4は、第1の実施の形態に係る触覚呈示装置の動作に関するフローチャートである。
図5図5(a)は、第2の実施の形態に係る触覚呈示装置の要部断面図であり、(b)は、触覚呈示装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る触覚呈示装置は、操作面に対する検出対象物の接近及び接触を検出する検出部と、検出部に振動を付加して触覚を呈示する触覚呈示部と、検出部によって、検出対象物の接近に続いて接触が検出された場合、接近が検出されている間は、第1の振動パターンに基づく触覚を呈示させるように触覚呈示部を制御し、接触が検出された後は、第1の振動パターンよりも振幅が大きい第2の振動パターンに基づく触覚を、第1の振動パターンに基づく触覚に続けて呈示させるように触覚呈示部を制御する制御部と、を備えて概略構成されている。
【0011】
この触覚呈示装置は、検出対象物の接近により第1の振動パターンに基づく触覚を呈示し、検出対象物の接触により第1の振動パターンよりも振幅が大きい第2の振動パターンに基づく触覚を呈示することができる。従って触覚呈示装置は、接触により呈示される振動を接近の検出から呈示する場合と比べて、接触により呈示される第2の振動パターンより小さい第1の振動パターンによる触覚を、接近が検出された後に呈示し、また接触が検出されるまで第1の振動パターンによる触覚の呈示から第2の振動パターンによる触覚の呈示に切り替わらないので、操作性を低下させることなく触覚を呈示することができる。
【0012】
[第1の実施の形態]
(触覚呈示装置1の構成)
図1(a)は、第1の実施の形態に係る触覚呈示装置が搭載された車両内部の概略図であり、(b)は、触覚呈示装置の上面図である。図2(a)は、第1の実施の形態に係る触覚呈示装置のブロック図であり、(b)は、図1(b)のII(b)-II(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、(c)は、アクチュエータの構造を説明するための要部断面図であり、(d)は、触覚呈示装置と接続された表示装置に表示された表示画像を示す概略図である。なお、以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率は、実際の比率とは異なる場合がある。また図2(a)における矢印は、主な信号や情報の流れを示している。
【0013】
触覚呈示装置1は、図1(a)に示すように、車両5の運転席と助手席の間に伸びるフロアコンソール50に配置されている。
【0014】
この触覚呈示装置1は、電磁気的に接続された電子機器の操作を行うことが可能であると共に、電子機器が操作を受け付けたことを示す触覚の呈示を行うことを可能としている。なお、この電磁気的に接続とは、導電体による接続、電磁波の一種である光による接続、及び電磁波の一種である電波による接続の少なくとも1つを用いた接続である。
【0015】
触覚呈示装置1は、接続された電子機器の表示部として機能する表示装置3と当該電子機器を介して接続されている。この表示装置3は、図1(a)に示すように、フロアコンソール50から立ち上がるように設けられたインストルメントパネル51に配置されている。
【0016】
触覚呈示装置1は、例えば、操作面100になされた操作に基づいて、表示装置3の表示画面30に表示されたカーソル等を操作可能に構成されている。触覚呈示装置1は、例えば、操作者の体の一部(例えば、指)や専用のペンで操作面100に触れることにより、触れた操作面100上の位置を検出するタッチセンサである。操作者は、例えば、操作面100に操作を行うことにより、接続された電子機器の操作を行うことが可能となる。以下では、検出対象物は、一例として、操作者の指とする。
【0017】
触覚呈示装置1は、図1(b)及び図2(a)に示すように、操作面100に対する指の接近及び接触を検出する検出部10と、検出部10に振動を付加して触覚を呈示する触覚呈示部12と、検出部10によって、指の接近に続いて接触が検出された場合、接近が検出されている間は、第1の振動パターンに基づく触覚を呈示させるように触覚呈示部12を制御し、接触が検出された後は、第1の振動パターンよりも振幅が大きい第2の振動パターンに基づく触覚を、第1の振動パターンに基づく触覚に続けて呈示させるように触覚呈示部12を制御する制御部18と、を備えて概略構成されている。
【0018】
また触覚呈示装置1は、図2(a)に示すように、後述する記憶部14と、後述するタイマ部15と、接続された電子機器と通信を行う通信部16と、を備えて概略構成されている。
【0019】
触覚呈示装置1は、図2(b)に示すように、上面21に開口22が形成された筐体20を有している。この開口22には、検出部10が露出しており、開口22の縁には、ベゼル部24が設けられている。この開口22に露出した検出部10の表面が、操作面100となる。
【0020】
このベゼル部24は、図2(b)に示すように、上面21から検出部10に向かって傾斜するように設けられている。
【0021】
この筐体20の内側の側面には、図2(b)に示すように、検出部10の端部を収容する収容部26が設けられている。また筐体20の底部28は、図2(b)に示すように、触覚呈示部12の第1のアクチュエータ12a〜第4のアクチュエータ12dが動作可能となるように凹形状に形成されている。
【0022】
収容部26には、検出部10の四隅を支持する4つの弾性部材29が配置されている。この弾性部材29は、一例として、エボナイト等の硬質ゴムが用いられる。弾性部材29は、例えば、円柱形状を有しているが、これに限定されず、検出部10側が頂点となる円錐形状等であっても良い。また弾性部材29は、硬質ゴムに限定されず、樹脂材料や金属材料を用いたバネ等であっても良い。
【0023】
なお、弾性部材29は、検出部10の四隅に配置されているが、これに限定されず、環形状を有して検出部10と収容部26の間に配置されても良い。また弾性部材29の数は、上述の数に限定されず、適宜変更可能である。
【0024】
(検出部10の構成)
検出部10は、一例として、操作面100に指が近づくことによる、センサワイヤと指との距離に基づく電流の変化を検出する静電容量方式のタッチセンサである。このセンサワイヤは、図示は省略しているが操作面100の下に複数設けられている。
【0025】
この検出部10は、例えば、図1(b)の紙面において左上を原点として、横方向にx軸、縦方向にy軸が設定されている。このxy座標系は、一例として、直交座標系である。
【0026】
センサワイヤは、x軸とy軸に沿って複数配置され、検出周期に基づいて駆動と静電容量の読み出しが行われる。
【0027】
検出部10は、この検出周期に基づいて検出情報Sを生成し、制御部18に出力するように構成されている。なお検出周期は、一例として、20msである。
【0028】
(触覚呈示部12の構成)
触覚呈示部12は、一例として、図1(b)及び図2(a)に示すように、第1のアクチュエータ12a〜第4のアクチュエータ12dを備えて構成されている。なお、触覚呈示部12を構成するアクチュエータの数は、上記に限定されず、適宜変更可能である。
【0029】
第1のアクチュエータ12a〜第4のアクチュエータ12dは、検出部10に振動を与えるものであり、例えば、ピエゾ素子、ボイスコイルモータ及びモータ等の振動を発生することができるものを用いることが可能である。本実施の形態のアクチュエータは、一例として、図2(c)に示すボイスコイルモータが用いられる。
【0030】
またアクチュエータが生成する振動は、例えば、x軸とy軸とが作るxy平面に、ほぼ垂直な方向、つまり図2(b)に示す矢印A方向及び矢印B方向に検出部10を移動させる振動である。
【0031】
第1のアクチュエータ12a〜第4のアクチュエータ12dは、図2(b)に示すように、検出部10の裏面101に取り付けられている。第1のアクチュエータ12a〜第4のアクチュエータ12dは、図1(b)の紙面、左上から時計回りとなる、開口22に露出する検出部10の四隅に配置されている。
【0032】
第1のアクチュエータ12a〜第4のアクチュエータ12dは、いずれも同じ構成を有しているので、以下では、第1のアクチュエータ12aの構成について説明する。
【0033】
第1のアクチュエータ12aは、底部120aを有する円筒形状のアウターヨーク120と、アウターヨーク120の底部120aの中央に設けられた円柱形状の磁石121と、磁石121上に設けられたインナーヨーク122と、円筒形状を有するボビン123と、このボビン123に電線が巻き回されて構成され、ボビン123の開口である収容孔123aをインナーヨーク122が移動するコイル124と、を備えて概略構成されている。
【0034】
アウターヨーク120とインナーヨーク122は、例えば、高透磁率を有する材料を用いて形成される。この高透磁率を有する材料は、一例として、純鉄、パーマロイ、電磁鋼板、フェライト等の軟磁性体材料である。
【0035】
磁石121は、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石等の永久磁石、又は、フェライト系、ネオジム系、サマコバ系、サマリウム鉄窒素系等の磁性体材料と、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリアミド系、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)等の合成樹脂材料と、を混合して所望の形状に成形したプラスチックマグネットである。この磁石121は、図2(c)の紙面において、垂直方向に磁化されている。
【0036】
アウターヨーク120は、円筒の先端の縁に沿って環状に突出する凸部120bが設けられている。また検出部10の裏面101側には、この凸部120bに対応するように環状に突出する凸部102が設けられている。コイルバネ125は、この凸部120bと凸部102とが、コイルバネ125の開口に嵌るように取り付けられている。このコイルバネ125は、例えば、鋼、リン酸銅等の金属材料、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の樹脂材料を用いて形成される。なお、コイルバネ125は、例えば、板ばねであっても良い。
【0037】
ボビン123は、例えば、ポリイミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂フィルム、アルミニウムフィルム等の金属フィルムを用いて形成されている。本実施の形態のボビン123は、一例として、ポリイミドフィルムを用いて形成されている。
【0038】
この第1のアクチュエータ12aは、コイル124に供給される電流の向きに応じて、主に、インナーヨーク122を吸引する力、反発する力を生じさせ、その結果、検出部10に振動を付加するように構成されている。
【0039】
第1のアクチュエータ12aは、制御部18から出力される駆動信号Sに基づいて振動するように構成されている。同様に、第2のアクチュエータ12b〜第4のアクチュエータ12dは、制御部18から出力される駆動信号S〜駆動信号Sに基づいて振動するように構成されている。
【0040】
検出部10は、触覚呈示部12の振動により、上方向及び下方向、つまり図2(c)に示す矢印A方向及び矢印B方向に移動する。なお検出部10は、触覚呈示部12による振動が付加されていない状態では、図2(c)に示す基準位置にあるものとする。
【0041】
(記憶部14の構成)
図3(a)〜(d)は、第1の実施の形態に係る触覚呈示装置の振動パターンに関する概略図である。図3(a)〜(d)は、第1のアクチュエータ12aに供給される駆動信号Sを示しており、横軸が時間t、縦軸が電圧Vである。第1のアクチュエータ12aは、図3(a)〜(d)の縦軸の正方向の電圧が供給されると、検出部10を上側に移動させ、縦軸の負方向の電圧が供給されると、下側に移動させるように振動するものとする。以下では、第1のアクチュエータ12aに供給される駆動信号Sについて説明するが、駆動信号S〜駆動信号Sにおいても同様である。
【0042】
記憶部14は、例えば、半導体素子を用いて構成された半導体メモリである。この記憶部14は、例えば、後述する制御部18のRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)であっても良い。
【0043】
記憶部14は、図2(a)に示すように、振動パターン情報140と、画像情報141と、を記憶している。
【0044】
振動パターン情報140は、図3(a)〜(d)に示すように、接近が検出された際の微振動を生成するための第1の振動パターン140aと、第1の振動パターン140aより大きい振幅を有する本振動を生成するための第2の振動パターン140bと、を有している。
【0045】
第1の振動パターン140aは、振幅が電圧±Vとなる周期振動を生成する振動パターンである。第1のアクチュエータ12aは、この第1の振動パターン140aに基づいて生成された駆動信号Sにより駆動される。従って検出部10は、電圧が負から正に変化する際に図2(b)の紙面において上側となる矢印A方向に移動する。また検出部10は、電圧が正から負に変化する際に、図2(b)の紙面において下側となる矢印B方向に移動する。なお、検出部10の実際の移動は、駆動信号Sに遅れるが、説明のため、ほぼ同じように移動するものとする。
【0046】
第2の振動パターン140bは、振幅が電圧±Vとなる周期振動を生成する振動パターンである。この電圧±Vの絶対値は、第1の振動パターン140aの電圧±Vの絶対値よりも大きい。具体的には、第2の振動パターン140bの電圧±Vの絶対値は、一例として、第1の振動パターン140aの電圧±Vの絶対値の50〜100倍程度である。つまり、第1の振動パターン140aは、例えば、操作者に聞き取れない程度の動作音となると共に、操作者が検出部10を見ても振動しているか否かが分からない程度の振動となるように設定される。
【0047】
第1の振動パターン140aは、指の接近が検出されてから接触が検出され、さらに本振動に移行するまでのパターンである。第2の振動パターン140bは、一例として、予め定められた期間、具体的には、1〜10波形の振動のパターンである。本実施の形態では、第2の振動パターン140bは、一例として、5波形、つまり5周期分であるものとする。なお第1の振動パターン140aと第2の振動パターン140bは、一例として、同じ振動数であるものとするが、これに限定されない。
【0048】
画像情報141は、例えば、触覚呈示装置1が接続された電子機器が、表示装置3に表示させている表示画像31の情報である。触覚呈示装置1は、この画像情報141と、操作が検出された座標と、に基づいて振動の呈示、すなわち触覚の呈示を行う。
【0049】
具体的には、触覚呈示装置1の後述する制御部18は、例えば、図2(d)に示すように、表示装置3が、表示画面30にカーソル32、アイコン33及びアイコン34を含む表示画像31を表示している場合、カーソル32によりアイコン33又はアイコン34が選択されると、触覚を呈示するように触覚呈示部12を制御する。この際、制御部18は、記憶部14に記憶された画像情報141に基づいてアイコン33又はアイコン34が選択されたか否かを判定するように構成されている。
【0050】
(タイマ部15の構成)
タイマ部15は、時間を測定するように構成されている。タイマ部15は、例えば、第1の振動パターン140aが継続する時間を時間情報150として蓄積するように構成されている。またタイマ部15は、第3のしきい値151を有している。この第3のしきい値151は、第1の振動パターン140aが継続する時間が、予め定められた時間を超えないように判定するために用いられる。
【0051】
(制御部18の構成)
制御部18は、例えば、記憶されたプログラムに従って、取得したデータに演算、加工等を行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM及びROM等から構成されるマイクロコンピュータである。このROMには、例えば、制御部18が動作するためのプログラムが格納されている。RAMは、例えば、一時的に演算結果等を格納する記憶領域として用いられる。このRAMには、例えば、取得した検出情報Sが格納される。また制御部18は、その内部にクロック信号を生成する手段を有し、このクロック信号に基づいて駆動信号S〜駆動信号Sの生成等を行うものである。
【0052】
制御部18は、第1のしきい値180及び第2のしきい値181を有している。第1のしきい値180は、操作面100に接近する検出対象物を検出するためのしきい値である。また第2のしきい値181は、操作面100に接触する検出対象物を検出するためのしきい値である。
【0053】
制御部18は、検出部10から取得した検出情報Sと、第1のしきい値180及び第2のしきい値181と、を比較することにより、接近及び接触を検出するように構成されている。
【0054】
ここで制御部18は、第1の振動パターン140aと第2の振動パターン140bとの位相が合うように触覚呈示部12を制御して触覚を呈示させるように構成されている。
【0055】
具体的には、制御部18は、検出部10が、触覚が呈示される前の基準位置に移動するタイミングで、位相を合わせて第1の振動パターン140aから第2の振動パターン140bに切り替えるように構成されている。この基準位置に移動するタイミングとは、例えば、第1の振動パターン140a及び第2の振動パターン140bにおいて、電圧がゼロとなるタイミングである。
【0056】
さらに具体的には、制御部18は、第1の振動パターン140aに基づく触覚の呈示によって検出部10が上方向に移動する期間に接触が検出された場合は、次に検出部10が下方向に移動する期間に、第1の振動パターン140aの位相に合わせて下方向に移動する第2の振動パターン140bに基づく触覚を呈示させるように構成されている。
【0057】
図3(a)は、第1の振動パターン140aにおいて電圧がマイナスであり、かつ検出部10が上方向に移動する期間に接触が検出された場合を示し、図3(b)は、第1の振動パターン140aにおいて電圧がプラスであり、かつ検出部10が上方向に移動する期間に接触が検出された場合を示している。
【0058】
制御部18は、図3(a)に示すように、時間Tにおいて接近が検出された後、記憶部14に記憶された振動パターン情報140に基づいて、第1の振動パターン140aに応じた振動を呈示するように触覚呈示部12を制御する。
【0059】
続いて図3(a)に示すように、電圧がマイナスであり、かつ検出部10が上方向に移動する時間Tにおいて接触が検出された場合、制御部18は、接触が検出された時点で第1の振動パターン140aから第2の振動パターン140bに切り替えるのではなく、次に検出部10が下方向に移動する期間内に切り替えを行う。
【0060】
この切り替えは、検出部10が下方向に移動する期間であって、検出部10が基準位置に移動するタイミング、すなわち、接触が検出された時間Tから時間(1/f)−α後に第2の振動パターン140bに切り替わる時間Tにおいて行われる。つまり時間Tから時間(1/f)−α後は、図3(a)に示すように、第1の振動パターン140aが、電圧ゼロとなるタイミングである。なおfは、振動数であり、αは、接触が検出された時間Tの前に電圧ゼロとなる時間から時間Tまでの時間である。
【0061】
また第1の振動パターン140aに続く第2の振動パターン140bは、制御部18によって位相が合わせられ、電圧ゼロから検出部10を下方向に移動させる振動パターンから始められる。
【0062】
図3(b)に示すように、電圧がプラスであり、かつ検出部10が上方向に移動する時間Tにおいて接触が検出された場合は、上述の電圧がマイナスであり、かつ検出部10が上方向に移動する時間Tにおいて接触が検出された場合と同様に、振動パターンの切り替えが行われる。
【0063】
また制御部18は、第1の振動パターン140aに基づく触覚の呈示によって検出部10が下方向に移動する期間に接触が検出された場合は、次に検出部10が上方向に移動する期間に、第1の振動パターン140aの位相に合わせて上方向に移動する第2の振動パターン140bに基づく触覚を呈示させるように構成されている。
【0064】
図3(c)に示すように、電圧がプラスであり、かつ検出部10が下方向に移動する時間Tにおいて接触が検出された場合、制御部18は、上述の場合と同様に、接触が検出された時点で第1の振動パターン140aから第2の振動パターン140bに切り替えるのではなく、次に検出部10が上方向に移動する期間内に切り替えを行う。
【0065】
この切り替えは、検出部10が上方向に移動する期間であって、検出部10が基準位置に移動するタイミング、すなわち、接触が検出された時間Tから時間(1/f)−α+(1/2f)後に第2の振動パターン140bに切り替わる時間Tにおいて行われる。つまり時間Tから時間(1/f)−α+(1/2f)後は、図3(c)に示すように、第1の振動パターン140aが、電圧ゼロとなるタイミングである。
【0066】
また図3(d)に示すように、電圧がマイナスであり、かつ検出部10が下方向に移動する時間Tにおいて接触が検出された場合、制御部18は、上述の場合と同様に、接触が検出された時点で第1の振動パターン140aから第2の振動パターン140bの切り替えを行わない。
【0067】
この切り替えは、検出部10が上方向に移動する期間であって、検出部10が基準位置に移動するタイミング、すなわち、接触が検出された時間Tから時間(1/f)−α+(1/2f)後に第2の振動パターン140bに切り替わる時間Tにおいて行われる。つまり時間Tから時間(1/f)−α+(1/2f)後は、図3(c)に示すように、第1の振動パターン140aが、電圧ゼロとなるタイミングである。
【0068】
しかし、図3(a)〜(c)に示す切り替えが、接触が検出されてから1周期以内に行われるのに対し、図3(d)に示す切り替えは、1.5周期以内の切り替えとなっている。
【0069】
従って電圧がマイナスであり、かつ検出部10が下方向に移動する時間Tにおいて接触が検出された場合は、切り替えのタイミングを早めるために、時間Tから時間(1/f)−α−(1/2f)後に第2の振動パターン140bに切り替えても良い。
【0070】
また第1の振動パターン140aが、検出部10の上方向の移動が発生するよう始められた場合は、図3(a)〜(d)において、各振動パターンを半波長ずらして時間Tから上方向の振動が始まるように考えれば良いので、上述したタイミングと同様のタイミングで切り替えが行われる。
【0071】
以下に、本実施の形態に係る触覚呈示装置1の動作について図4のフローチャートに従って説明する。
【0072】
(動作)
触覚呈示装置1の制御部18は、車両5の電源が投入されると、生成されたクロック信号に基づいて検出部10のセンサワイヤの駆動と読出しを行って検出情報Sを取得する(S1)。
【0073】
次に、制御部18は、取得した検出情報Sと第1のしきい値180とを比較し、指の接近があったか否かを判定する。制御部18は、比較の結果、指の接近を検出すると(S2:Yes)、微振動を呈示すると共に、タイマ部15を制御してタイマを起動する(S3)。タイマ部15は、カウントした時間を時間情報150として蓄積する。
【0074】
具体的には、制御部18は、比較の結果に基づいて記憶部14から振動パターン情報140を読み出し、読み出した振動パターン情報140の第1の振動パターン140aに基づいた駆動信号S〜駆動信号Sを生成し、触覚呈示部12に出力する。この微振動の呈示は、接触が検出されるまで継続されるか、又は、予め定められた時間が経過した後に停止される。
【0075】
次に、制御部18は、さらに検出部10から検出情報Sを取得する(S4)。続いて制御部18は、タイマ部15から時間情報150を取得して予め定められた時間以内であるか否かを判定する。制御部18は、カウントした時間が予め定められた時間以内である場合(S5:Yes)、検出情報Sと第2のしきい値181とを比較して指の接触の有無を判定する。
【0076】
次に制御部18は、指の接触があったと判定すると(S6:Yes)、タイマ部15を制御してタイマを停止してリセットすると共に、振動パターン情報140に基づいて第2の振動パターン140bを、第1の振動パターン140aの位相に合わせ、駆動信号S〜駆動信号Sを生成して触覚呈示部12に出力する。
【0077】
触覚呈示部12は、取得した駆動信号S〜駆動信号Sに基づいて予め定められた期間、本振動を呈示し(S7)、処理をステップ1に進める。
【0078】
ここで、ステップ2において、制御部18は、指の接近が検出されない場合は(S2:No)、ステップSに処理を進め、次の周期の検出情報Sの読み出しを行う。
【0079】
またステップ5において、第1の振動パターン140aによる微振動の呈示が、予め定められた時間を超えていた場合は(S5:No)、タイマを停止してリセットすると共に、ステップ1に処理を進め、次の周期の検出情報Sの読み出しを行う。
【0080】
さらにステップ6において、指の接触が検出されていない場合は(S6:No)、ステップ4に処理を進めて、次の周期の検出情報Sの読み出しを行う。
【0081】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る触覚呈示装置1は、操作性を低下させることなく触覚を呈示することができる。この触覚呈示装置1は、指の接近により第1の振動パターン140aに基づく触覚を呈示し、指の接触により第1の振動パターン140aよりも振幅が大きい第2の振動パターン140bに基づく触覚を呈示することができる。従って触覚呈示装置1は、接触により呈示される振動を接近の検出から呈示する場合と比べて、接触により呈示される第2の振動パターン140bより小さい第1の振動パターン140aによる触覚を、接近が検出された後に呈示し、また接触が検出されるまで第1の振動パターン140aによる触覚の呈示から第2の振動パターン140bによる触覚の呈示に切り替わらないので、操作性を低下させることなく触覚を呈示することができる。
【0082】
また触覚呈示装置1は、第1の振動パターン140aと第2の振動パターン140bの位相を合わせて振動を切り替えるので、位相を合わさない場合と比べて、操作性の低下が軽減される。
【0083】
また触覚呈示装置1は、第1の振動パターン140aにおいて、検出部10を上方向に移動させる場合に接触を検出した場合、位相を合わせてすぐに上方向の振動を生成するのではなく、下向きの振動を呈示する期間において位相を合わせるので、指に伝わる本振動の上向きの振動を大きくすることができ、効果的に触覚を呈示することができる。
【0084】
同様に、触覚呈示装置1は、第1の振動パターン140aにおいて、検出部10を下方向に移動させる際に接触を検出した場合、位相を合わせて下方向の第2の振動パターン140bを実行するのではなく、上方向に振動を呈示する期間において位相を合わせるので、指に伝わる本振動の上向きの振動を大きくすることができ、効果的に触覚を呈示することができる。
【0085】
さらに触覚呈示装置1は、検出部10が基準位置に戻るタイミングで、第1の振動パターン140aから第2の振動パターン140bに切り替えるので、他のタイミングで切り替える場合と比べて、最も検出部10の移動速度が高いタイミングで切り替えるので、慣性力による立ち上がりの遅い移動にならずに、触覚を呈示することができる。
【0086】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、触覚呈示部12としてピエゾ素子を用いている点で第1の実施の形態と異なっている。
【0087】
図5(a)は、第2の実施の形態に係る触覚呈示装置の要部断面図であり、(b)は、触覚呈示装置のブロック図である。なお、以下の第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同じ構成及び機能を有する部分については、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。また、以下では、主に、第1の実施の形態と異なる部分について説明する。
【0088】
本実施の形態に係る触覚呈示装置1の触覚呈示部12は、図5(a)及び(b)に示すように、筐体20の底部28と、検出部10との間の台座12fに配置されたピエゾ素子12eを有している。この触覚呈示部12は、検出部10の裏面101の中央に接触するように配置されている。
【0089】
ピエゾ素子12eは、例えば、供給される電圧により、伸縮を行う。この伸縮により、屈曲し、この屈曲によって振動が発生する構造となっている。
【0090】
ピエゾ素子12eの材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が用いられる。ピエゾ素子12eは、例えば、これらの材料を用いて形成された膜を積層して形成された積層型の素子である。
【0091】
この触覚呈示部12は、例えば、金属板と、ピエゾ素子12eと、を備えたモノモルフ型のアクチュエータであっても良い。このモノモルフ型のアクチュエータとは、1枚のピエゾ素子12eだけで屈曲する構造のアクチュエータである。なお、触覚呈示部12の変形例としては、2枚のピエゾ素子を金属板の両面に設けたバイモルフ型圧電アクチュエータであっても良い。
【0092】
上述の金属板は、例えば、細長い板形状を有し、導電性を有するアルミニウム、ニッケル、銅、鉄等の金属材料、それらを含有する合金材料、或いはステンレス等の合金材料を用いて形成される。なお、金属板は、例えば、合成樹脂等の非導電性材料を用いて形成されても良い。
【0093】
さらに触覚呈示部12は、ピエゾ素子12eの伸縮による変位を拡大する機構を有していても良い。
【0094】
この触覚呈示部12は、図5(b)に示すように、制御部18が生成する駆動信号S10に基づいて検出部10に振動を付加するように構成されている。なお、第1の振動パターン140aから第2の振動パターン140bに切り替わるタイミングは、第1の実施の形態におけるタイミングと同じである。
【0095】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る触覚呈示装置1は、ピエゾ素子12eを含む触覚呈示部12を備えているので、ボイスコイルモータを用いる場合と比べて、構成が簡略化され、製造コストが抑制される。
【0096】
以上述べた少なくとも1つの実施の形態の触覚呈示装置1によれば、操作性を低下させることなく触覚を呈示することが可能となる。
【0097】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1…触覚呈示装置、3…表示装置、5…車両、10…検出部、12…触覚呈示部、12a〜12d…第1のアクチュエータ〜第4のアクチュエータ、12e…ピエゾ素子、12f…台座、14…記憶部、15…タイマ部、16…通信部、18…制御部、20…筐体、21…上面、22…開口、24…ベゼル部、26…収容部、28…底部、29…弾性部材、30…表示画面、31…表示画像、32…カーソル、33…アイコン、34…アイコン、50…フロアコンソール、51…インストルメントパネル、100…操作面、101…裏面、102…凸部、120…アウターヨーク、120a…底部、120b…凸部、121…磁石、122…インナーヨーク、123…ボビン、123a…収容孔、124…コイル、125…コイルバネ、140…振動パターン情報、140a…第1の振動パターン、140b…第2の振動パターン、141…画像情報、150…時間情報、151…第3のしきい値、180…第1のしきい値、181…第2のしきい値
図1
図2
図3
図4
図5