特許第6117105号(P6117105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117105
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】風力エネルギー利用設備及び方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20170410BHJP
   F03D 1/02 20060101ALI20170410BHJP
   F03D 7/04 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F03D13/25
   F03D1/02
   F03D7/04 Z
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-539310(P2013-539310)
(86)(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公表番号】特表2014-500431(P2014-500431A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】FR2011052633
(87)【国際公開番号】WO2012066223
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年10月7日
(31)【優先権主張番号】1059434
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513122820
【氏名又は名称】イデオル
【氏名又は名称原語表記】IDEOL
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ドゥパン ドゥ ラ ゲリヴィエール,ポール
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−285214(JP,A)
【文献】 特表2001−509565(JP,A)
【文献】 特表2010−526963(JP,A)
【文献】 特開2007−331414(JP,A)
【文献】 特開2006−160025(JP,A)
【文献】 特開2011−007085(JP,A)
【文献】 特表2005−520088(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0148115(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 1/00−80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の浮遊プラットフォーム()を含むウインドファームであって、
前記複数の浮遊プラットフォーム()のそれぞれは、少なくとも1つのアンカーポイント(7,7’)に固定されており、かつ、少なくとも1つの風力タービン(2)と、前記風力タービン(2)を移動させるための移動装置と、を含み、
前記移動装置は、空気力学的な後流効果を最小化するべく、風向(V)及び風速を含むパラメータの組に応じて前記風力タービン(2)を移動させるように構成された能動型移動装置である、ウインドファーム。
【請求項2】
前記能動型移動装置は、少なくとも1つの風向センサ(15)を含むセンサの組を接続することができるとともに前記センサの組から送信された信号に応じて前記風力タービン(2)を移動させることができる制御ユニット(14)に接続されている、請求項1に記載のウインドファーム。
【請求項3】
前記能動型移動装置は、前記風力タービン(2)を移動させるためにアンカーライン(9,9’)を引っ張ることができる少なくとも1つのアクチュエータを含む、請求項1又は2に記載のウインドファーム。
【請求項4】
前記アクチュエータにつながれた前記アンカーライン(9,9’)は、それぞれが異なるアンカーポイント(7,7’)に接続された2つの端部を有する、請求項3に記載のウインドファーム。
【請求項5】
前記能動型移動装置は、前記風力タービン(2)を移動させる推力を発揮しうる少なくとも1つの流体力学的な推進器を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウインドファーム。
【請求項6】
前記浮遊プラットフォーム()は、係留ブイ(4)と、少なくとも垂直回転軸(Z)を有するヒンジ(6)を介して前記係留ブイ(4)に接続されているとともに前記風力タービン(2)を支持する浮体(5)と、を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のウインドファーム。
【請求項7】
前記移動装置は、前記風力タービン(2)を水平面において移動させることができる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のウインドファーム。
【請求項8】
前記移動装置は、前記風力タービン(2)を鉛直方向に移動させることができる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のウインドファーム。
【請求項9】
浮遊プラットフォーム()の組を用いて風力エネルギーを利用する方法であって、
前記浮遊プラットフォーム()のそれぞれは、少なくとも1つのアンカーポイント(7,7’)に固定されており、かつ、少なくとも1つの風力タービン(2)を含み、
前記浮遊プラットフォームの組の少なくとも1つの風力タービン(2)は、空気力学的な後流効果を最小化し、かつ前記浮遊プラットフォームの組の発電を最大化するために、風向(V)及び風速を含むパラメータの組に応じて能動的に移動させられる、風力エネルギー利用方法。
【請求項10】
前記風力タービン(2)は、アクチュエータによって少なくとも1つのアンカーライン(9,9’)に加えられた牽引力によって移動させられる、請求項9に記載の風力エネルギー利用方法。
【請求項11】
前記風力タービン(2)は、水中の推進器(10)によって移動させられる、請求項9又は10に記載の風力エネルギー利用方法。
【請求項12】
前記風力タービン(2)は、係留ブイ(4)の周りを回るように備え付けられた浮体(5)によって移動させられ、前記係留ブイ(4)には、少なくとも垂直回転軸(Z)を有するヒンジ(6)を介して前記浮体が接続されている、請求項9〜11のいずれか1項に記載の風力エネルギー利用方法。
【請求項13】
前記風力タービン(2)は、風向(V)及び風速を含むパラメータの組に応じて、発電を最大化するための予め定められた位置であって、前記パラメータの組に関する前記浮遊プラットフォームの組の空気力学的な後流をシミュレートするためのモデルを使用して計算された位置に移動させられる、請求項9〜12のいずれか1項に記載の風力エネルギー利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に海の沖合で風力エネルギーを利用するための方法及び浮遊プラットフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石エネルギー源への依存を減らす目的及び温室効果ガスの排出を回避する目的で、風力エネルギーの利用がますます関心を浴びている。特に、沖合に風力タービンを設置することによって、しばしば風力タービンが陸地に建てられることを妨げる視覚及び聴覚への影響を制限しながら、高い平均風速を有する地帯に大規模なウインドファームを構築し、運転することが可能になる。風力タービンは、海底の上に敷設された基礎の上に直接的に沖合に建てられているが、そのような方法は、通常、比較的浅い深さに制限される。そのため、このことは、その方法が使用されうる潜在的な場所の数を制限する。従って、風力エネルギーを利用するための浮遊設備が提案されている。そのような設備は、剛構造よりはむしろ、例えば、ケーブル、チェーン、ロープなどのアンカーラインを用いて、海底に対して適切な位置に保持される。
【0003】
例えば、国際特許出願WO2009/048830には、少なくとも1つのアンカーポイントに固定された浮遊プラットフォームが風力タービン及びアンカーラインとともに提案されている。国際特許出願WO03/004869には、少なくとも1つのアンカーポイントに固定された浮遊プラットホームが少なくとも1つの風力タービン及び風力タービンを移動させるための装置とともに提案されている。「移動」の語句は、従来から知られているように、風力タービンを風の方に向かせるために垂直軸の周りで風力タービンを旋回させるような単なる方向の変化とは異なり、風力タービンの位置の変化を意味するものとして使用される。従って、そのような浮遊プラットフォームによれば、深い沖合であっても風力タービンを設置し、それらを適切な位置に保持することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/048830号
【特許文献2】国際公開第03/004869号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
陸地及び沖合にある風力タービンに共通の欠点は、特に、それらが単独で設置されているときよりもむしろ、それらがウインドファームに設置されているとき、すなわち、複数のタービンの組で設置されているときに、各タービンの空気力学的な後流が隣接するタービンの発電に悪影響を及ぼしうることである。少なくとも部分的にその欠点を改善するために、ウインドファームの風力タービンは、通常、タービン間の後流効果を最小化するように位置が定められている。しかし、特に、風の方向が分散した場所においては、タービンの間隔をかなり増やさない限り、そのような位置決めは、通常、十分な最適化が達成されることを可能にせず、後流効果による発電損失が残る。
【0006】
本発明の目的は、発電を最大化することができる、風力エネルギーを利用するための浮遊設備を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、本発明の浮遊プラットフォームの少なくとも第1実施形態に係る、風力タービンを移動させるための移動装置が、空気力学的な後流効果を最小化するべく、風向を含むパラメータの組に応じて風力タービンを移動させるように構成されているという事実によって達成される。本文脈において、“パラメータの組”の語句は、必ずしも複数のパラメータを含むものとして理解されるべきではない。風向は、移動装置が当該パラメータに応じてタービンを移動させるように構成される、唯一のパラメータであってもよい。
【0008】
風力タービンを移動させるための装置のそのような構成によって、各風向に対する後流効果を最小化するようにウインドファームのタービンを再配置することができ、これにより、ファームの発電を最大化することができる。
【0009】
有利には、移動装置は、能動型移動装置、すなわち、風力タービンを能動的に再配置することができるアクチュエータの組及び/又は推進器の組を含む移動装置である。特に、移動装置は、風力タービンを移動させるために少なくとも1つのアンカーラインを引っ張ることができる少なくとも1つのアクチュエータを含んでいてもよい。従って、風向を含むパラメータの組に応じて容易かつ正確に風力タービンを移動させることができる。風力タービンへのアクセス及び風力タービンのメンテナンスを容易にするために、アクチュエータにつながれたアンカーラインは、それぞれが異なるアンカーポイントに接続された2つの端部を有していてもよい。従って、アンカーラインによって発揮される装置への作用力を大幅に低減しつつ、アクチュエータが発揮する牽引力によって、2つのアンカーポイントの間の経路上で風力タービンを移動させることが可能になる。アクチュエータは、必ずしも浮遊プラットフォームに搭載されている必要はない。特に、例えばモンスーン地帯又は貿易風地帯のように、季節ごとの風の変化が顕著に目立つ地域に浮遊プラットフォームが位置している場合、アクチュエータは、季節的な移動のために浮遊プラットフォームにドッキングするメンテナンス船に代わりに搭載されていてもよい。流体力学的な推進器から浮遊プラットフォームの少なくとも一部に及ぶ推力によって移動が実行されるように、能動型移動装置は、また、風力タービンを移動させる推力を発揮しうる少なくとも1つの流体力学的な推進器を含んでいてもよい。
【0010】
有利には、そのような能動型移動装置は、センサの組から送信された信号に応じて風力タービンを移動させるように、特に、風向及び/又は風速、水流方向及び/又は水流速度、うねり、及び/又は、隣接するプラットフォームの位置といった様々な異なるパラメータを感知するためのセンサの組を接続することができる制御ユニットに接続されていてもよい。このようにして、風力タービンを再配置することが自動化されうる。
【0011】
浮遊プラットホームは、例えば係留ブイ、特に複数のアンカーポイントに固定された係留ブイと、少なくとも垂直回転軸を有するヒンジを介してブイに接続されているとともに風力タービンを支持する浮体と、を含んでいてもよい。この構成によれば、風見効果によって風力タービンを受動的に移動させることができ、風及び水流によって風力タービン及び浮体に及ぼされた空気力学的及び流体力学的な力が垂直軸のまわりで風力タービンとともに浮体を回転させる。ただし、風力タービンの移動を能動的に制御するために、移動装置は、特に、垂直回転軸の周りで浮遊アームを移動させるように、浮体及び/又は浮体のアンカーラインを引っ張ることができる少なくとも1つのアクチュエータにつながれた推進器を含む能動型移動装置であってもよい。
【0012】
有利には、移動装置は、風向を含むパラメータの組に応じて水平面において風力タービンを移動させることができる。ただし、そのような水平移動に代えて又は水平移動に加えて、移動装置は、風向を含むパラメータの組に応じて、風力タービンを鉛直方向に移動させることができるものであってもよい。この目的のために、移動装置は、例えば、浮遊プラットフォームのバラストを変化させる装置又は風力タービンの可動支柱を含んでいてもよい。
【0013】
本発明は、また、そのような浮遊プラットフォームを複数含むウインドファームを提供する。本発明は、また、浮遊プラットフォームの組を用いて風力エネルギーを利用する方法であって、浮遊プラットフォームのそれぞれは、少なくとも1つのアンカーポイントに固定されており、かつ、少なくとも1つの風力タービンを含み、浮遊プラットフォームの組の少なくとも1つの風力タービンは、空気力学的な後流効果を最小化し、かつウインドファームの発電を最大化するために、風向を含むパラメータの組に応じて移動させられる、風力エネルギー利用方法を提供する。この移動は、瞬間的な風向又は短期予測風向に応じて制御されてもよいし、逆に、長期にわたる卓越風向に応じて制御されてもよい。例えば、風が季節的なものである場所では、季節に応じて風力タービンを移動させてもよい。
【0014】
本文脈において、“浮遊プラットフォームの組”の語句は、必ずしも複数の浮遊プラットフォームを含むものとして理解されるべきではない。実際、この方法は、孤立したプラットフォームにも適用することができる。ただし、本方法の主な利点は、複数のプラットフォームを含むウインドファームにおいて後流効果を最小化できることにある。
【0015】
有利には、風力タービンは、風向を含むパラメータの組に応じて、パラメータの組に関する浮遊プラットフォームの組の空気力学的な後流をシミュレートするためのモデルを使用して、ウインドファームの発電を最大化するための予め定められた位置に移動させられる。空気力学的なモデルは、また、収集された測定値及びデータを用いて、風力タービンの運転中に経験的に最適化又は再調整されてもよい。
【0016】
非限定的な例として示されている実施形態の以下の詳細な説明を読めば、本発明を十分に理解できるとともに、その利点をより明らかにすることができる。説明では、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A図1Aは、本発明の浮遊プラットフォームの第1実施形態の側面図である。
図1B図1Bは、図1Aの設備を上から見た図である。
図2A図2Aは、本発明の浮遊プラットフォームの第2実施形態の側面図である。
図2B図2Bは、図2Aの浮遊プラットフォームを上から見た図である。
図3A図3Aは、本発明の浮遊プラットフォームの第3実施形態の側面図である。
図3B図3Bは、図3Aの設備を上から見た図である。
図4A図4Aは、本発明の浮遊プラットフォームの第4実施形態の側面図である。
図4B図4Bは、図4Aの設備を上から見た図である。
図5A図5Aは、本発明の浮遊プラットフォームの第5実施形態の側面図である。
図5B図5Bは、図5Aの浮遊プラットフォームを上から見た図である。
図6図6は、図5A及び図5Bの浮遊プラットフォームを移動させるための装置の詳細図である。
図7図7は、第2実施形態から第5実施形態のプラットフォームのいずれかの制御システムを示す図である。
図8A図8Aは、本発明のウインドファームの実施形態の構成を様々な異なる風向とともに概略的に示す図である。
図8B図8Bは、本発明のウインドファームの実施形態の構成を様々な異なる風向とともに概略的に示す図である。
図8C図8Cは、本発明のウインドファームの実施形態の構成を様々な異なる風向とともに概略的に示す図である。
図9図9は、ウインドファームの設計方法を概略的に示す図である。
図10図10は、図9の方法を使用して設計されたウインドファームにおけるタービンの位置調整を制御する第1の方法を概略的に示す図である。
図11図11は、図9の方法を使用して設計されたウインドファームにおけるタービンの位置調整を制御する第2の方法を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
風向を含むパラメータの組に応じて水平面において移動させることができる風力タービン2を含む、風力エネルギーを利用するための浮遊プラットフォーム1の第1実施形態を図1A及び図1Bに示す。この風力タービン2は、支柱2a、ナセル2b及び実質的に水平な回転軸を有する多翼ロータ2cを備えている。ナセル2bは、発電機を含み、支柱2aに関する垂直な軸の周りで向きを変えることができる。浮遊プラットフォームは、また、係留ブイ4と、ヒンジ6を介して係留ブイ4に接続された浮体5とを備えている。ブイ4は、アンカーライン9を介して海底8の複数のアンカーポイント7に固定されている。本実施形態では、アンカーポイント7は、サクションアンカーとして断面で示されているが、特に、従来のアンカー、重力アンカー、従動杭、ネジアンカー、他の型式のアンカーのような他の代替形態が考えられる。それに代えて又はそれに加えて、アンカーライン9も他のプラットフォーム、岸壁、岩盤、杭などの既存の固定構造に結びつけられていてもよい。さらに、各実施形態では、プラットフォーム1が適切な位置によりしっかりと保持されることを保証するように、プラットフォーム1は、複数のアンカーポイント7に接続された複数のアンカーライン9を有しているが、本発明は、単一のアンカーポイントに接続された単一のアンカーラインを備えた浮遊プラットフォームにも適用可能である。
【0019】
この第1実施形態では、風力タービン2は、風力タービン2を移動させるための移動装置をヒンジ6とともに形成する浮遊アーム5によって支持されている。ヒンジ6が垂直回転軸Zを有するので、浮体5は、風見の方法における風の力によって動かされ、かつ、風向を含むパラメータの組に応じてブイの周りの円形軌道Cの上で風力タービン2を移動させつつ、ブイ4の周りを回ることができる。風力タービン2のこの移動によって、隣接する設備に及ぶ風力タービン2の後流効果の影響、及び/又は、風力タービン2に及ぶ隣接する設備の後流効果の影響を最小化するように、風力タービン2の位置を定めることができる。ヒンジ6が水平回転軸Xを有していてもよく、これにより、浮体5を垂直面で角度的に少し動かして、うねりの影響を相殺することが可能になる。
【0020】
本設備の第1実施形態は、受動型移動装置を提供するが、風の同様の力によって動かされるのであれば、風力タービンの移動を能動的に制御することを可能にする手段を有することが通常は望ましい。図2A及び図2Bに示す第2実施形態では、浮遊プラットフォーム1は、また、係留ブイ4と、ヒンジ6を介して係留ブイ4に接続されて風力タービン2を支持している浮体5とを備えている。第1実施形態と同様に、ブイ4は、アンカーライン9を介して海底8の複数のアンカーポイント7に固定されている。ただし、この第2実施形態では、浮体5は、風の力のみによって後押しされて軸Zの周りを回るのではなく、アームに対して垂直な方向を向いている、制御装置に接続された流体力学的な推進器10も有している。このように、アーム5が向いている方向及び円Cにおけるタービン2の位置は、風向を含むパラメータの組に応じて制御されうる。
【0021】
図3A及び図3Bに示す第3実施形態では、浮遊プラットフォーム1は、また、係留ブイ4と、ヒンジ6を介して係留ブイ4に接続されて風力タービン2を支持している浮体5とを備えている。第1及び第2実施形態と同様に、ブイ4は、アンカーライン9を介して海底8の複数のアンカーポイント7に固定されている。ただし、この第3実施形態では、浮体5もアンカーライン9’を介して海底のアンカーポイント7’に固定されている。浮遊プラットフォームにおいて、ライン9’と係合する駆動プーリー11を含むアクチュエータは、円形軌道Cの少なくとも一部の上で風力タービン2を移動させるために、ライン9’に牽引力を加えることができる。駆動プーリー11に代えて又は駆動プーリー11に加えて、アクチュエータは、直接又はウインチ−プーリーアセンブリのような中間装置を介してアンカーライン9’に係合している、チェーンアクチュエータのようなリニアアクチュエータを含んでいてもよい。図示された本実施形態では、アクチュエータは浮遊プラットフォームに搭載されているが、他の実施形態では、ライン9’への牽引力は、外部アクチュエータ、例えば、ライン9’に接続することが可能かつタービン2を移動させるためにライン9’に牽引力を加えることが可能な手段を伴って浮遊プラットフォーム1にドッキングするメンテナンス船に搭載されたアクチュエータによって加えられることも考えられる。この代替は、特に、タービン2を季節ごとに移動させるのに有用である。
【0022】
図4A及び図4Bに示す第4実施形態では、浮遊プラットフォーム1は、風力タービン2を支持しており、かつ、アンカーライン9を介して海底8の複数のアンカーポイント7に固定されている。浮遊プラットホーム1において、ライン9に係合する駆動プーリー11を含むアクチュエータは、少なくとも水平面内でタービン2を移動させるために、ライン9に牽引力を加えることができる。
【0023】
図5A及び図5Bに示す第5実施形態では、浮遊プラットフォーム1は、風力タービン2を支持しており、かつ、アンカーライン9を介して海底8の複数のアンカーポイント7に固定されている。ただし、この実施形態では、ライン9のそれぞれは、その2つの端部のそれぞれを介して、異なるアンカーポイント7に取り付けられている。浮遊プラットフォームにおいて、アクチュエータは、少なくとも水平面内でタービン2を移動させるべく、ライン9に牽引力を加えるようにライン9に係合する駆動プーリー11を含む。また、制御された移動がいったん終了したら、ライン9を停止させてプラットフォームの位置を設定するように、ブレーキ12が浮遊プラットフォームに設けられている。この装置は、図6にいっそう明確に示されている。
【0024】
これらの2つの例においても、駆動プーリー11に代えて又は駆動プーリー11に加えて、アクチュエータは、直接又はウインチ−プーリーアセンブリのような中間装置を介してアンカーライン9に係合する、チェーンアクチュエータのようなリニアアクチュエータを含んでいてもよい。アクチュエータは、浮遊プラットフォーム自身に搭載されているよりもむしろ、季節ごとの訪問のためのメンテナンス船に搭載されている可能性がある。
【0025】
風によって直接的に動かされる受動型移動装置を備えた第1実施形態は別として、図示された各実施形態は、風向を含むパラメータの組に応じて制御されうる能動型移動装置を含む。図7に示すように、この目的のために、風向センサ15、風速センサ16、温度センサ17、うねりセンサ18及び水流センサ23に次々に接続された制御ユニット14にマリン推進器(propulseurs marins)又は駆動プーリーのアクチュエータ13を接続することが可能である。制御ユニット14は、また、気象条件、特に風向に応じて予め定められた最適又は準最適な位置のテーブルを含むデータ記憶装置19に接続されていてもよく、センサ15〜18によってカバーされた区域よりも広い区域にわたる気象条件といった外部データを受信するための装置20に接続されていてもよい。
【0026】
後流効果を最小化するために、風力タービン2を鉛直方向に移動させることも考えられる。この目的のために、浮遊プラットフォーム1は、バラストを変化させるための装置又は風力タービン2を支持するための伸縮自在の支柱を含んでいてもよい。
【0027】
タービン2を特に水平面内で移動させる主な目的は、複数のそのようなタービンを含むウインドファームにおいて後流効果を回避することにある。図8A図8Cは、いくつかの異なる風向Vに関して、そのようなウインドファーム21における風力タービン2の位置決めを示している。基準位置22から出発して、風向、風速、気温、うねり、他の局所的又は広範囲の気象パラメータ、海底の特性及び深さなどの要因に応じて、後流効果を最小化するように各風力タービン2を移動させることができ、それにより、タービン2の組の発電を最大化する。
【0028】
図9に示すように、そのようなウインドファーム21を設計する第1工程において、ウインドファーム106の最適な発電に対して最適又は準最適な解決策であって、様々な異なる気象パラメータ107、特に風向を用いて各可動タービン2の位置を定めるための解決策105を求めるようにタービン2を移動させることに関する制約103を考慮に入れつつ、ウインドファームの後流損失をシミュレートするためのモデル102に最適化アルゴリズム101が適用されうる。それらの解決策は、その後、気象条件に関する最適又は準最適な位置のテーブル104に記録されうる。最適化アルゴリズム101は、例えば、組み合わせアルゴリズム、“焼きなまし法”アルゴリズムのような発見的アルゴリズム、遺伝的アルゴリズムなどであってもよい。後流モデル102は、例えば、N.O. Jensenの後流モデル、Ainslieモデル又は粘度−乱流モデルであってもよい。
【0029】
図10に示すように、このウインドファーム21の運転中、タービン2の位置を定めるための設定点205及びウインドファームの発電の推定値206を生成するために、最適又は準最適な位置のテーブル104、タービンを移動させることに関する制約103、及び、現実の気象条件207に基づき、“最近傍”型のアルゴリズム201が使用されうる。
【0030】
他の方法として、図11に示すように、十分なデータ処理能力が利用可能な場合には、モデル102、移動制約103、現実の気象条件207、及びテーブル104に基づき、他の最適化アルゴリズム301によって、タービン2の位置を定めるための設定点205がリアルタイムで生成されうる。
【0031】
両方の状況において、新たな位置決め設定点205は、アクチュエータ13に送信される前に、確認のために人間のオペレータに提示されてもよい。人間のオペレータが設定点205を修正する場合、アクチュエータ13に新たな設定点を送信する前に、タービン2の可動性の制約に関連して、修正された設定点の妥当性を検証するためのテストが実行されてもよい。
【0032】
強力に優勢である季節卓越風のある場所にウインドファーム21が位置している場合、リアルタイム制御の下でタービンを移動させるよりはむしろ、かなり長い間隔で、それらを一括して又は1つずつ定期的に移動させることができる。そのような状況においては、コントロールセンターにウインドファーム21の各浮遊プラットフォーム1を接続するよりはむしろ、浮遊プラットフォーム1又はメンテナンス船に搭載されたアクチュエータを用いて風力タービン2を移動させるための設備にオペレーターのチームが行くことができる。
【0033】
特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲によって定義される本発明の一般的範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更がこれらの例に対してなされてもよいことは明らかである。例えば、図示された風力タービンは、水平軸を持ったロータを有するタービンであるが、本発明は垂直軸を持ったロータを有するタービンにも適用可能である。同様に、移動のために提案されるアクチュエータは、モータ駆動プーリー又は流体力学的な推進器だけでなく、チェーンアクチュエータ、ラック、海中の流体力学的な平面キャリア(plans porteurs hydrodynamiques sous-marins)、又はそのような要素の組み合わせでありうる。図示した実施形態の全てにおいて、浮遊プラットフォームは、アンカーラインを介して複数のアンカーポイントに固定されており、このことは、比較的簡素な手段で良好な安定性をもたらすという利点を提供するものであるが、海底又は既存の固定構造に固定するための代替手段も想定されうる。また、説明した風力タービンは、電気を生成するのに特に適切なものであるが、本発明は、例えば、ポンプによる揚水又は海水の淡水化のような他の目的のために風力エネルギーを利用することにも適用可能である。最後に、海の沖合での用途に適用されるものとして本発明を説明したが、本発明は、例えば、天然又は人工の湖、ラグーン、河川、又は河口のような、どのような水域にも当然に等しく適用可能である。従って、明細書及び図面は、限定的ではなく、例示的に与えられているものと考えるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11