特許第6117116号(P6117116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツェーテーエフ・ゾラール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特許6117116基体のコーティングのための方法および装置
<>
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000002
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000003
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000004
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000005
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000006
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000007
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000008
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000009
  • 特許6117116-基体のコーティングのための方法および装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117116
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】基体のコーティングのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/54 20060101AFI20170410BHJP
   C23C 14/56 20060101ALI20170410BHJP
   C03C 17/09 20060101ALI20170410BHJP
   C03C 17/22 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 51/48 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C23C14/54 D
   C23C14/56 G
   C03C17/09
   C03C17/22 Z
   H01L31/04 180
【請求項の数】25
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-553963(P2013-553963)
(86)(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公表番号】特表2014-506960(P2014-506960A)
(43)【公表日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】EP2012052860
(87)【国際公開番号】WO2012113750
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】102011004441.8
(32)【優先日】2011年2月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513210172
【氏名又は名称】ツェーテーエフ・ゾラール・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ハル・ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】リヒター・ヒルマー
(72)【発明者】
【氏名】ボサート・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュトイテン・ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルゲ・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ティッテル・ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シャーデ・ヴェルナー
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−025575(JP,A)
【文献】 特開2005−256094(JP,A)
【文献】 特開2007−266626(JP,A)
【文献】 特開2009−105130(JP,A)
【文献】 特開2003−306226(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/012890(WO,A2)
【文献】 特開2002−328381(JP,A)
【文献】 特開2003−292154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/54
C03C 17/09
C03C 17/22
C23C 14/56
H01L 51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転移温度に加熱された板状のガラス製基体(1)のコーティング方法において、
a)前記基体(1)を転移温度に加熱するステップ、
b)a)と同時および/またはその後に前記基体(1)の下面を前記基体の上面より高い温度に加熱し、ここで基体(1)の下面はローラ(213、214、313、314)上に載せられ、および基体(1)の下面と上面との間の温度差が、基体(1)のたわみに対する内部応力を基体(1)内に生じさせるステップ、
c)前記基体(1)の下面上に、少なくとも1種のコーティング材料を蒸着させるステップ、
を特徴とする方法。
【請求項2】
基体温度が、ステップc)の後で転移温度未満に下げられ、続いて新たに前記プロセスステップa)〜c)が実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
転移温度が540℃〜570℃の間、好ましくは550℃〜560℃の間である基体(1)が使用されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基体がソーダ石灰ガラスであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
コーティングの際の前記基体(1)の下面の温度が520℃超であり、好ましくは540℃〜570℃の間であり、かつ特に好ましくは555℃であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)の後の前記基体(1)の下面が、上面より少なくとも2K〜4K、好ましくは5K〜8K、特に好ましくは6K高い温度であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記コーティング材料がCdSおよび/またはCdTe、あるいはCISまたはCIGS(銅、インジウム、および/またはガリウム、セレン)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング材料がCZTS(銅、亜鉛、および/またはスズ、硫黄)であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記基体(1)の損傷したコーティング領域が、コーティング工程の後で除去されるか、または残りのコーティングから分離されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
前記損傷したコーティング領域を除去するためにレーザアブレーションまたはサンドブラストまたは前記コーティング領域を分離するために機械的作用による亀裂が用いられることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも下記のコンポーネント、すなわち、
−真空チャンバとして形成されており、内側チャンバにおいてそれぞれ独立に制御または調節可能な少なくとも2つの加熱システム(33、34)を備えている少なくとも1つの加熱チャンバ(3)であって、少なくとも1つの加熱システム(34)が前記基体の上面を加熱し、少なくとも1つの加熱システム(33)が前記基体の下面を加熱し、かつ前記加熱システム(33、34)が、前記基体(1)を、転移温度までおよび上面より下面が高い温度になるように加熱するように調整されており、それによって基体(1)のたわみに対する内部応力が基体(1)内に生じる前記加熱チャンバ(3)、
−真空チャンバとして形成されており、搬送方向において加熱チャンバ(3)の後ろに配置されており、コーティング材料が入った少なくとも1つの加熱可能な蒸発用るつぼを備えている少なくとも1つのコーティングチャンバ(2)であって、ここで基体(1)は、前記蒸発用るつぼの上を通り過ぎて、コーティング材料が基体(1)の下面上にコーティングされる前記コーティングチャンバ(2)、
−前記加熱チャンバ(3)を通って延びている前記基体(1)用搬送システム(30)および前記コーティングチャンバ(2)を通って延びている前記基体(1)用搬送システム(20)であって、両方の搬送システム(20、30)が、複数の平行な、軸方向に離隔し、搬送方向において相前後し、かつ搬送方向に垂直に配置されたシャフト(21、31)を有しており、それぞれのシャフトが外側ローラ(213、313)を備えており、前記外側ローラの間には、それぞれ少なくとも1つの内側ローラ(214、314)が配置されている前記搬送システム(20、30)、
を有する請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法を実施するための装置。
【請求項12】
それぞれの加熱チャンバ(3)およびそれぞれのコーティングチャンバ(2)が、チャンバ(2,3)への基体の入口として役立つ供給スリットであって、それを通して前置されたチャンバから前記基体(1)がプレッシャーロッキング(Druckschleusung)なしで搬入される供給スリットと、
チャンバ(2,3)からの基体の出口として役立つ供給スリットであって、それを通して後置されたチャンバ内に前記基体(1)がプレッシャーロッキングなしで搬出される供給スリットとを備えていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記外側ローラ(213、313)が、すぐ近くのシャフト端部(211、311)に向かって直径が次第に大きくなる円錐形の、前記基体(1)のための支持面(2131、3131)を有しており、前記支持面(2131、3131)が、1°〜5°、好ましくは1°〜2°の傾斜を有することを特徴とする請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記外側ローラ(213、313)が、130°〜150°、好ましくは139°の傾きで傾斜したガイドカラー(2132、3132)を備えており、前記ガイドカラー(2132、3132)が、前記外側ローラ(213、313)の前記支持面(2131、3131)より少なくとも5mm突き出ていることを特徴とする請求項11〜13のいずれか一つに記載の装置。
【請求項15】
前記基体(1)の下面温度が前記基体(1)の転移温度の範囲内にある装置の区域中に配置されている前記シャフト(21、31)が、前記基体(1)の下面温度が転移温度未満の装置の他の区域中に配置されているシャフト(21、31)より大きな前記ガイドカラー(2132、3132)の間隔を有し、装置の前記の異なる区域は、基体(1)の搬送方向に沿って異なる位置に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記基体(1)の下面温度が前記基体(1)の転移温度の範囲内にあるところでの前記シャフト(21、31)が、前記基体(1)の下面温度が転移温度未満のところでのシャフト(21、31)より多くの内側ローラ(214、314)を備えていることを特徴とする請求項11〜15のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
前記第1の内側ローラ(214、314)が、前記シャフト(21、31)上で、前記両方の外側ローラ(213、313)のほぼ真ん中に配置されていることを特徴とする請求項11〜16のいずれか一つに記載の装置。
【請求項18】
さらなる内側ローラ(214、314)がそれぞれ、ほぼ真ん中の内側ローラ(214、314)と前記外側ローラ(213、313)の間のほぼ半分の距離に配置されていることを特徴とする請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記搬送システム(30)の前記内側ローラ(214、314)が、搬送方向に見て一列に整列して配置されていることを特徴とする請求項11〜18のいずれか一つに記載の装置。
【請求項20】
前記基体(1)の支持点における前記内側ローラ(21、31)の外郭の半径が1mm〜4mmの範囲内、好ましくは2mmであり、前記内側ローラ(214、314)の幅が2mm〜6mm、好ましくは3mm〜5mmである、および/または前記外側ローラ(213、313)の前記支持面(2131、3131)の幅が6mm〜12mm、好ましくは10mmであることを特徴とする請求項11〜19のいずれか一つに記載の装置。
【請求項21】
前記シャフト(21、31)の駆動が、前記真空チャンバ内で、それぞれのシャフト(21、31)の少なくとも一方の端部(211、311)で、および前記シャフト(21、31)に対する直接的で機械的な結合によって行われることを特徴とする請求項11〜20のいずれか一つに記載の装置。
【請求項22】
前記加熱チャンバ(3)の前記加熱システム(33、34)が、ループ状、蛇行状、またはジグザグ状に配置された加熱コイルとして実施されており、前記基体の下面のための前記加熱システム(33、34)が、前記シャフト(31)の下に配置されていることを特徴とする請求項11〜21のいずれか一つに記載の装置。
【請求項23】
前記加熱システム(33、34)が、反射面と前記内側チャンバの内壁との間に配置されており、少なくとも、前記反射面が搬送方向に平行な外縁で、前記基体(1)の側面が同様に加熱されるように前記基体(1)の方向に横に屈曲された突出部を有していることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
加熱チャンバ(3)およびコーティングチャンバ(2)が、前記基体(1)の下面(下面温度)および上面の温度を測定するためのセンサならびに/または前記基体の位置決定のためのセンサを備えていることを特徴とする請求項11〜23のいずれか一つに記載の装置。
【請求項25】
温度を測定するセンサおよび基体の位置を測定するセンサから得られたデータに従い、加熱システムの制御を行う中央データ処理機構をさらに含む、請求項24に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の基体、特に太陽電池を製造するためのガラス基体をコーティングするための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
将来のエネルギー生産では太陽電池が重要な役割を果たすであろう。その際、特に薄膜太陽電池には、材料消費が少なく、大量生産に適しているという利点がある。シリコン系太陽電池に対する代替策として、特にテルル化カドミウム(CdTe)系薄膜太陽電池が提案されている。CdTeは1.45eVの禁制帯を有しており、したがって太陽光の吸収によく適している。これに対応してCdTe薄膜太陽電池では高い効率を達成することができる。一般にCdTeは、p−CdTe−n−CdSの二層から成る必要なpn接合を製造するため、硫化カドミウム(CdS)と共に層構造として使用される。この場合CdSは、いわば窓として作用し、可視光から僅かな部分しか吸収せず、その一方で残りをCdTeへと透過させ、CdTeでは最終的に、光起電力をもたらす電荷キャリアが生成される。
【0003】
CdTe系薄膜太陽電池を製造する場合、基体として通常はガラスが使用される。基体から始まってその後は順にフロントコンタクト、n−CdS層、p−CdTe層、および最後にバックコンタクトが施される。これに関しフロントコンタクトとしては透明導電性酸化物(TCO、transparent conductive oxide)が用いられ、一般的にはインジウムドープ酸化スズ(ITO)が使用される。その他の知られているTCOは、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)またはアルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)である。以下ではフロントコンタクトの製造については詳しく取り上げない。
【0004】
バックコンタクトとしては金属層が使用され、これに関しては太陽電池の安定性を上昇させるため、およびCdTe層に抵抗を適合させるため、部分的に追加的な層が挿入される。
【0005】
以下で基体について述べる場合は、基体での必要な準備作業、まさにフロントコンタクトの施し、洗浄ステップ、および研磨ステップなどは終了していることを前提とする。
【0006】
基体の温度について述べる場合は、下面の表面温度、つまり下に向いており通常はTCOによってコーティングされている面の表面温度が意図される。下面の表面温度は、上面の温度と同様に非接触でセンサにより決定される。このデータならびに装置のさらなるデータが、単独でまたは前もしくは後ろに接続された装置のデータと一緒に、1つまたは複数のデータ処理設備に送られ、データ処理設備がこれらのデータに基づき、プロセス全体を考慮して個々の設備の制御を取り計らうことは当業者に知られている。本発明による方法もこのやり方で制御される。
【0007】
CdSおよびCdTeの堆積には特に近接昇華(CSS)法が適していることが分かった。これに関しては蒸着すべき材料を昇華または蒸発させるため、原料、例えば高純度のCdTeの粒状物質を、容器、特にこれに適した蒸発用るつぼ内で約600〜770℃の高温へと加熱し、その際、基体は蒸発源の上を小さな間隔をあけて通り過ぎるよう案内される。これに関し、コーティング材料の蒸発源と基体の間隔は数ミリメートル〜数センチメートルしかない。蒸発用るつぼを加熱するには、例えば抵抗加熱要素またはIR放射要素を用いることができる。コーティングは、通常は残留ガス圧力が10−4〜10mbarの真空チャンバ内で行われ、その際、場合によっては予め窒素またはアルゴンのような不活性ガスによって掃気することができる。基体自体は、従来のソーダ石灰ガラスを使用する場合、コーティングの際の温度が典型的には480〜550℃である。ガラス基体は搬送工程中にこの温度に達し、この搬送工程でガラス基体は、堆積が行われる本来のコーティングチャンバに達する前に1つまたは複数の加熱チャンバを通り抜ける。575℃より低い基体温度では効率が有意に減少することが観察されたので、原理的には、高い効率のためには高い基体温度が望ましい。ただし非常に高い基体温度の場合、相応に高価な耐熱性ガラス基体しか使用できない。この方法は全般的に数μm/minの高い堆積速度を特色とする。
【0008】
加熱チャンバおよび/またはコーティングチャンバを通過する基体の移動は、シャフト上に配置されているローラを基礎とする搬送システムによって行われる。シリコンから成る太陽電池のための、連続した搬送シャフトを備えた搬送システムはWO03/054975A2(特許文献1)からも読み取れるが、ただしこの搬送シャフト上に追加的なローラは配置されておらず、したがって比較的小さな太陽電池はその面全体が搬送シャフト上に載っている。この搬送シャフトは、熱処理プロセス中に加熱炉内で使用される。このような搬送シャフトは、蒸着すべき材料を下からコーティングすることにより大面積のソーラーモジュールを製造するのには適していない。なぜならこの場合には基体の蒸着させる面または既に蒸着された面が全面的にシャフトと接触し、したがって面全体のコーティングが損傷されるおそれがあるからである。
【0009】
従来技術では板状の基体は、搬送方向を横切る典型的な支持されていない幅が600mmであり、外側ローラ上だけを移動する。通常のソーダ石灰ガラスを使用することに関連して、より大きな幅は適していない。基体としてはガラスが用いられることが好ましい。ガラスはしばしば、室温では粘度が非常に高い液体と見なされる。これに対応して溶融温度も簡単に規定できるわけではなく、温度が上昇するにつれて粘度が低下する。したがってガラスの軟化を表すには様々な温度点が引き合いに出され、この温度点の値は動的粘度の指数(常用対数)によって定義される。
【0010】
以下では、粘度指数が12.0の転移点Tgが使用される。転移点は、指数範囲が12.0〜13.4の転移範囲内にある。使用したガラスの場合、Tg値は約550〜555℃である(典型的なフロートガラスの値は540〜560℃の範囲内である)。転移温度とは、基体の動的粘度が転移点に達する温度値のことである。転移温度の範囲(転移温度範囲)は、以下では粘度指数が12.0〜13.4の範囲内にある温度範囲を示している。
【0011】
転移温度(ガラスの種類に応じて約540℃〜560℃)に近い高いプロセス温度では、ガラスの粘性流による塑性変形が生じ、この粘性流は不可逆的であり、できるだけ少なく保たれるのが望ましい。ガラスの転移温度が低いことは、基体を外側ローラ上だけで移動させる場合に現状では基体を約520℃より高い温度ではコーティングできないことの理由でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO03/054975A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、上述の従来技術に基づき、転移温度の範囲内の温度でのCSS法において、ほぼ任意の幅のガラス基体をコーティングするための方法および装置を紹介するという課題が提起される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、本発明に従い請求項1に記載の方法を使用することによって解決される。この方法が請求項13に記載の装置内で実施されることが有利である。方法および装置の有利な形態は、相応に関連する従属請求項に示されている。
【0015】
方法
本発明によれば、基体は1つの加熱チャンバまたは連続する加熱チャンバ内で、基体の転移温度の範囲内まで加熱される。転移温度への加熱と並行してまたはそのすぐ後に基体の上面を下面より低い温度に加熱し、これにより基体が膨らみ、これは、転移温度より高い温度でも基体が取り扱えることを保証する。このように加熱された基体をコーティングする。コーティング材料としてCdSおよび/またはCdTeを使用するのが好ましいが、CISまたはCIGSソーラーモジュールには材料として銅、インジウム、およびガリウム、CZTSソーラーモジュールには材料として銅、亜鉛、スズ、および硫黄も考えられる。
【0016】
CSS法でのコーティング中、基体は前述のようにコーティング容器の上にある。したがってコーティング容器の上で垂直に、基体のための支持装置を設けることは、この支持装置がコーティングを妨げ、また望ましくないようにコーティングさせるおそれさえあるので不可能である。基体は転移温度より高い温度になっているので、基体はこの位置では垂れ下がり過ぎているであろうし、コーティングが不均一になるであろう。
【0017】
これは本発明に従い、基体の下面を上面より高い温度に加熱することによって回避される。こうしてより強く加熱された下の基体面が上の基体面より強く膨張することが有利であり、すなわち基体内で、たわみに対抗する内部応力が生じる。
【0018】
基体は、好ましくは長方形に成形されている。さらなる好ましい一実施形態では基体は正方形である。コーティング容器の前および後ろで基体を多重に支持する場合、基体の下向きの湾曲が食い止められ、達成可能な支持間隔は、許容可能なたわみで容器幅をまたぐのに十分である。
【0019】
基体の転移温度は用いられる材料によって決まる。好ましくは従来のソーダ石灰ガラスが基体として用いられ、このソーダ石灰ガラスの転移温度は540℃〜560℃の間である。
【0020】
コーティングの際、ソーダ石灰ガラス基体の下面の温度は520℃より高く、好ましくは540℃〜570℃の間、および特に好ましくは約550℃である。
【0021】
ソーダ石灰ガラス基体の下面と上面の温度差は、好ましくは少なくとも2K〜4K、さらに好ましくは5K〜8K、および特に好ましくは約6Kである。ソーダ石灰ガラス基体を用いた試験は、典型的なプロセス条件(プロセス時間10分、プロセス温度550℃、ガラス厚さ約3.2mm)の場合、支えのない支持間隔が約300mm〜400mm、好ましくは350mmを超えなければ、ガラス基体の変形が許容可能な程度を超えないことを示した。
【0022】
この有利なやり方は、転移温度の範囲内の温度で実施すべき作業ステップを、基体の両面の間で熱伝導により温度の均一化が起こる前に終了させることを可能にする。
【0023】
コーティング工程の後、基体は徐冷される。これは、基体内の応力を回避するために必要である。蒸着した層の基体上での付着も徐冷の場合は損なわれない。
【0024】
好ましい一実施形態では、基体の上面と下面の本発明による温度差を含む平均基体温度が、層を施している間は基体の転移温度の範囲内にあり、層を施した後に転移温度の範囲より低く冷却される。続いて基体が改めて加熱され、上面と下面の本発明による温度差が再び作られる。その後、さらなるコーティングステップが続く。
【0025】
コーティング中、基体はコーティング材料が入った容器の上を案内される。この容器の温度は基体の下面温度より高い。基体内の熱伝導により、比較的ゆっくりではあるが基体全体が裏面まで貫いて加熱される。これにより基体内の応力が低下するであろう。したがって、それでも本発明による温度差を維持できるよう、基体を容器の間で冷却しなければならない。これに関しては基体を貫く温度勾配を意図的に生成し、これにより、基体下面はその後も過剰に熱くなることなくコーティングに必要なプロセス温度に保たれる。これは本発明による、内側チャンバ(トンネル)を含む加熱システムの装置ならびにこの装置の調節もしくは制御によって達成される。加熱システムの調整は、下面から上面への基体の熱伝導によって決まる。容器はペアで、搬送方向において相前後して、これら容器ペアの間に大きな間隔をあけて配置されるのが好ましい。この大きな間隔は好ましくは約385mmである。容器が互いに比較的大きな間隔をあけていれば、基体を転移温度より低く冷却することができる。この場合、次のコーティングステップの前に、平均基体温度を本発明に基づく加熱方法により再び転移温度にもっていかなければならない。このやり方は、上面と下面の間で温度が均一化することで基体の湾曲膨出も失われ、したがって基体が取り扱えなくなることを防止する。基体の湾曲膨出は、合間の冷却および新たな加熱によって再び作られる。
【0026】
この方法の間中、基体をローラ上に載せる搬送システムが用いられる。基体のうちローラに載っている部分では、損傷したコーティング領域が生じる。この領域内ではコーティングが完全ではなく、または一連の層が機械的影響により害されている。このような領域は、太陽電池の規定通りの機能方式に障害をもたらすので取り除かなければならない。これは、この領域内の欠陥のあるコーティングが、有利には、機械的作用による亀裂、レーザアブレーション、サンドブラスト、もしくは基体までの研磨により除去されることによって、または損傷したコーティング領域が損傷していない領域から分離され、したがって隔離されることによって行われる。これは好ましくはレーザアブレーションによって達成される。
【0027】
本発明による方法を実施するには、基体が、コーティングに必要な温度に達するまで、1つの加熱チャンバまたは温度が上昇していく複数の加熱チャンバを通過していくことが好ましい。基体が転移温度を超える領域までは、つまり540℃未満では、2つの外側ローラおよび少数の内側ローラ(好ましくは基体幅が1200mmの場合に1つの内側ローラ)を備えた搬送シャフト上で基体を移動させることが有利である。この内側ローラは基体を支持するローラであり、内側ローラは2つの外側ローラの間で、この外側ローラと共通のシャフト上に配置されている。遅くともコーティング前の最後のチャンバ内では、基体が転移温度の範囲に達し、また搬送システムのシャフトは好ましくはさらなる内側ローラを備えている(好ましくは基体幅が1200mmの場合に全部で3つの内側ローラ)。基体の上面および下面は、上面および下面のための加熱システムにより異なる強さで加熱される。これは、上面および下面のための加熱システムを別々に調節または制御することによって行うのが好ましい。上面および下面の温度は、センサ(好ましくは非接触で測定する高温計)によって監視するのが好ましい。基体は少し湾曲膨出しており、これにより、加熱チャンバから後続のコーティングチャンバに移る際に比較的大きなシャフト間隔を衝突することなくまたぐことができ、またはコーティングチャンバ内では追加的な支持装置なしでコーティング容器の上にもっていくことができる。
【0028】
この方法は、CdS/CdTe薄膜太陽電池を製造するために用いられるのが好ましい。
【0029】
コーティング中、基体と、蒸着すべき材料を昇華/蒸発させる容器との間隔は、好ましくは約3mm〜50mm、特に好ましくは5mm〜20mmである。CSS法の場合、この間隔をできるだけ小さく保つことが望ましい。従来技術では5mm未満の間隔も報告されている。これに関しては最初にCdS層が、続いてCdTe層が施される。これに対応して基体は最初にCdSが入った蒸発用るつぼの上を、続いてCdTeが入った蒸発用るつぼの上を移動する。つまり両方の材料によるコーティングは、好ましくは直接的に相次いで1つのプロセス内で行われる。
【0030】
さらなる好ましい一実施形態では、CdSによるコーティングが1つのコーティングチャンバ内で行われ、その後、第2のコーティングチャンバ内でCdTeによるコーティングが行われる。これに関し、同様に好ましい一形態では、両方のコーティングステップの間で基体の冷却が行われる。この中間冷却は、コーティングチャンバの間に配置された1つまたは複数の加熱チャンバ内で行われる。両方のコーティングステップを分離することにより、通り抜け速度を比較的高くできることが有利であり、この中間冷却のステップは、基体を軟化させ過ぎず、また新たな加熱により前述のような安定した湾曲膨出を再び作ることができるようにする。
【0031】
最後に基体は、冷却ゾーンとして作用する1つまたは複数の加熱チャンバを通り抜け、この冷却ゾーン内では、最初は基体を好ましくはゆっくりと、そしてガラスの種類に応じて約400℃〜500℃の間の温度を下回った後はより速く冷却することができる。
【0032】
冒頭に記載した従来技術でも述べたように、コーティングは好ましくは真空中で行われるが、原理的には標準圧力までのより高い圧力でのコーティングも可能である。
【0033】
本発明による方法は、搬送方向を横切る幅が、従来の600mm幅の基体より大きな基体をコーティングするために使用されるのが好ましい。これに対応して幅が>700mm、好ましくは>1000mmの、および特に好ましくは約1200mm幅の板状の基体をコーティングすることができる。ただし原則的には、2つのローラの間の支えのない支持間隔が、選択されたプロセス温度および基体材料のために許容できる程度を超えていない限り、ほぼ任意の幅の基体のコーティングが考えられる。
【0034】
装置
本発明による装置は、真空チャンバとして形成されており、内側チャンバにおいてそれぞれ独立に制御または調節可能な少なくとも2つの加熱システムを備えている少なくとも1つの加熱チャンバを有している。少なくとも1つの加熱システムが基体の上面を加熱し、少なくとも1つの加熱システムが下面を加熱する。それぞれの加熱システムは、1つまたは複数の加熱要素を有している。この加熱システムは、基体の下面が上面より高い温度になるように調整されている。それだけでなくこの装置は、搬送方向において加熱チャンバの後ろに配置された同様に真空チャンバとして形成されている少なくとも1つのコーティングチャンバ、ならびに加熱チャンバを通って延びている基体用搬送システムおよびコーティングチャンバを通って延びている基体用搬送システムを有している。両方の搬送システムは、複数の平行な、軸方向に離隔し、搬送方向において相前後し、かつこの搬送方向に垂直に配置されたシャフトを有している。搬送システムにおける基体の搬送速度は、好ましくは0.5m/s〜5m/sの間、特に好ましくは1m/s〜4m/sの間、およびさらに特に好ましくは1.5m/s〜3m/sの間である。
【0035】
真空チャンバとして実施された加熱チャンバは内側チャンバを備えており、この内側チャンバは有利には加熱チャンバの内壁から離隔している。内側チャンバの外面は断熱部を設けていることが好ましい。そこから内側に向かって加熱システムおよび内側チャンバの内壁が続いている。つまり加熱システムは断熱材と内壁の間に配置されている。このことは、内側チャンバの内壁が、加熱システムから放射された熱を拡散させて基体に分散し、実際には間接的な加熱器として基体に作用するトンネルとなることで、加熱システムの放熱の熱を均等に分散する働きをしている。断熱により、加熱システムの熱が加熱チャンバの壁に対して直接的に放射されることが阻止される。搬送システムは内側チャンバおよび加熱チャンバ全体を通って案内されており、この搬送システムは基体を移動させるための多数のシャフトを備えており、このシャフトは壁を貫通し、内側チャンバの外で支持されている。
【0036】
内側チャンバの内壁のための材料として例えばモリブデン(またはモリブデン合金)のような金属が使用されるのが好ましい。さらなる好ましい実施形態は、石英または炭素複合材料を使用する。
【0037】
基体の下面の表面温度は、好ましくは非接触でセンサにより記録される。好ましい一実施形態では、センサは加熱チャンバの外に配置されており、構造全体を貫通して延びている小さな穴を通して基体の温度値を記録する。加熱システムは調節可能であることが有利である。温度センサの記録データならびに装置のその他の情報(例えば基体の送り速度および位置)も記録され、詳しくは取り上げないが装置の制御を行う中央データ処理機構に送られる。加熱システムは、1つまたは複数の加熱コイルを備えており、この加熱コイルは、好ましくは抵抗加熱器として形成されている。これに関し加熱コイルは、単独でまたはグループで、ループ、ジグザグ、もしくは蛇行の形において、または従来技術から知られた別の施設法において、シャフトの間に配置されている。この加熱コイルのグループのそれぞれの加熱コイルは、その温度を個別に調節することができる。加熱システムの下側および上側には、また好ましくは横に屈曲された突出部を有して、反射金属板が配置されており、この反射金属板は、放射された熱を基体の方向に反射する。横の突出部により、基体の側縁も一緒に加熱される。加熱システムおよび内側チャンバの本発明による配置ならびに加熱システムの的確な制御によってのみ、基体を下からコーティングすることができ、かつガラス上面のより少ない加熱またはそれどころか冷却によってガラス下面での必要なプロセス温度を保つことができる。このため、上側の加熱システムは下側の加熱システムより約10K低い温度を生成することが好ましい。
【0038】
搬送システムのシャフトは、搬送方向において相前後し、および軸方向に互いに離隔し、ならびに搬送方向に垂直に配置されている。これに関してシャフトは水平に配置されており、連続するシャフトに搬送方向における高低差は生じていないか、または非常に少ししか(好ましくは<3%)生じていないことが好ましい。
【0039】
シャフトは、貫通部によって内側チャンバから外に案内されて、内側チャンバの外で支持されることが好ましい。シャフトの駆動部も、加熱される内側チャンバの外に、ただし真空中に配置されるのが好ましい。駆動は、シャフトに対する直接的で機械的な結合により、例えばモータ、モータの伝動装置、またはチェーン駆動装置が少なくとも一方のシャフト端部に直接的に設置されることで行われるのが好ましい。内側チャンバ内では、貫通部の間で、および貫通部に対して狭い間隔で、それぞれのシャフトに2つの外側ローラが配置されている。外側ローラの間には、それぞれ少なくとも1つの内側ローラが配置されている。外側ローラは、すぐ近くのシャフト端部に向かって直径が次第に大きくなる好ましくは円錐形の、基体のための支持面を有している。外側ローラは傾斜したガイドカラーを備えることが好ましい。基体の下面温度が基体の転移温度を超えているところでのシャフトは、好ましくは2つ以上の内側ローラを備えている。このシャフトの外側ローラは、基体の下面温度が転移温度未満のところでのシャフトより大きなガイドカラー間隔を有することが好ましい。
【0040】
基体は多数のローラ上で搬送されるので、どうしても防止しなければならないのは、板状の基体の搬送方向における前縁が、次のシャフトに達したときには垂れ下がっており、次のシャフトに移る際に衝突に曝されることである。これは縁を損傷させるおそれがある。この現象には、シャフトの間隔を小さくすることで対処できるであろう。ただしこれに関しては2本のシャフトの間でこの場合に提供される隙間が、例えば蒸発用るつぼのような必要な設備にスペースを提供するには十分でなくなるという問題がある。基体が1つのチャンバから別のチャンバに移る際も、基体の前縁が大きく垂れ下がることなく比較的大きなシャフト間隔をまたぐ必要がある。
【0041】
この問題を解決するため、加熱システムを適切に制御または調節することにより基体の下面を上面より強く加熱する。上面と下面の小さな温度差で既に、その結果として生じる両方の面の熱膨張の差により、基体の弾性歪曲が引き起こされる。これは、基体の端を中心部より高くする。同時に基体は重力を受けている。端にしか配置されていない外側ローラ上で基体を支持する場合、重力が、熱に起因する歪曲と同じ方向に向いた基体の歪曲を引き起こす。したがって両方の事象が相互に強められる。しかしながら端での外側ローラによる支持に加えて板の中心部での1つまたは複数の内側ローラによるもう1つの支持が加わると、内側ローラ上での板の支持により、基体の端の熱による上への歪曲が、下に向かう重力によって少なくとも部分的に補償され、したがって最終的に生じる全体的な歪曲が小さくなる。
【0042】
コーティングチャンバも真空チャンバとして実施されており、熱を均等に分散するための内側チャンバを備えている。コーティングチャンバ全体を通って延びている搬送システムは、前置された加熱チャンバまたはコーティングチャンバの搬送システムから基板を引き取り、後置された加熱チャンバまたはコーティングチャンバの搬送システムへと基板を引き渡す。内側チャンバを通過する搬送中に基板の下面がコーティングされる。コーティング材料(好ましくはCdSまたはCdTe)は、上方に開いた加熱される容器(蒸発用るつぼ)内に配置されており、この容器上を、小さな間隔をあけて基体が通り過ぎる。容器の真上では、搬送ローラの望ましくないコーティングを回避または大幅に減らすため、搬送ローラは配置されないことが有利である。したがって搬送システムのシャフトの少なくとも数本は互いに、加熱チャンバ内でそうであったより大きな間隔をあけている。シャフトの構造は、加熱チャンバ内の搬送システムのシャフトの構造に対応している。基体は転移温度の範囲内の温度でコーティングチャンバを通り抜けるので、このシャフトは、基体温度が転移温度未満のところでのシャフトより多くの内側ローラおよびより大きなガイドカラー間隔を有している。コーティングチャンバ内では加熱システムが搬送システムの上側にだけ設けられている。容器の温度が基体下面の温度より明らかに高いので、これにより基体の下面での加熱作用も達成される。ただし基体の温度は、蒸発または昇華した物質の基体下面での析出を達成するため、容器内の温度より明らかに低くなければならない。好ましい一実施形態では、コーティングチャンバ内でも、基体の上面および下面の温度がセンサによって記録される。
【0043】
加熱チャンバおよびコーティングチャンバ内のセンサは、好ましくは非接触で作動し、基体表面の温度を好ましくは表面からの放射に基づいて記録する(例えば高温測定のためのセンサ)。
【0044】
1つのチャンバの搬送システムから後続のチャンバの搬送システムへの基体の引き渡しは供給スリットを通して行われ、この供給スリットによりチャンバが相互に結合している。プレッシャーロッキング(Druckschleusung)は、基体を最初のチャンバ内に供給するためおよび最後のチャンバから取り出すためにだけ行われる。
【0045】
搬送システムの搬送シャフトは、好ましくは石英セラミックス(溶融シリカ)から成る。この材料は、非常に低い熱伝導および高温においてさえの高い機械的剛性を特色とする。個々のローラは、好ましくは研磨プロセスにより、最初は円筒形のシャフトから、ローラ以外の領域で直径を選択的に小さくすることよって作り出すことができる。このローラは、僅かにだけ、好ましくは10mm未満で、本来の搬送シャフトより飛び出ていれば十分である。好ましく使用される石英セラミックスの低い熱伝導により、搬送シャフトの両側の端部が特殊鋼キャップを設け得ることが有利である。搬送シャフトは両側で特殊鋼キャップを介して軸受内で案内され、駆動は好ましくは片側で歯車メカニズムによって行われる。石英セラミックスから成る搬送シャフトは高温での膨張が非常に少なく、したがって無視することができる。
【0046】
本発明によれば内側ローラも、基体の搬送方向を横切って一列に並んでいる外側ローラと同じ搬送シャフト上に配置されるのが好ましい。搬送方向において相次いでいるシャフトの内側ローラが一列に整列して配置されるのが好ましい。この場合、すべてのローラを搬送シャフトから作り出すことができる。これは、好ましくは研磨、旋盤加工、または従来技術に基づく別の加工方法によって行われる。ただしスムーズな走行という目標は、連続した搬送シャフト上に外側ローラがあるだけで既にほぼ達成されるので、内側ローラは1つまたは複数の別のシャフト上に配置してもよく、またはシャフト上の内側ローラの軸受での案内を緩くし、内側ローラを一緒に駆動しなくてもよい。
【0047】
好ましい一実施形態では、数本の搬送シャフトだけが、基体を前方に移動させるために駆動され、一方でその他の搬送シャフトはその上に配置されたローラと共に、基体を支持する働きだけをもつ。
【0048】
好ましいのは、一連の加熱チャンバおよびコーティングチャンバ内で、好ましい2種類の構造形式のシャフトだけを有する搬送システムが用いられることである。
【0049】
・ 温度が転移温度に近いかまたは転移温度の範囲内にある領域に関しては、シャフトがより多くの内側ローラおよびより大きなガイドカラー間隔を有している。ガイドカラー間隔は、好ましくは1205mm〜1207mm、特に好ましくは1206mmであり、こうして基板の横方向の振子運動が約±1mmに制限されることが有利である。
【0050】
・温度が転移温度未満の領域に関しては、シャフトが画一的なガイドカラー間隔(好ましくは1205mm)を有しており、好ましくは1つの(好ましくは真ん中の)内側ローラだけを備えている。基板の横方向の振子運動は、25℃〜約500℃の範囲内で±2.5mmに制限される。内側ローラの数は、基体幅がさらなる支持を必要とする場合にはより多くすることができる。さらに、軟化温度より高い温度範囲内にあるシャフトに関しても内側ローラの数が増やされる。
【0051】
シャフトの構造形式を2種類しか使用しないことは、構造形式ごとの生産ロット数量が多くなるので、費用に関して明らかな利点をもたらすこととなり有利である。
【0052】
外側ローラが、十分に高いねじり剛性を有する連続したシャフト上に配置されていることにより、外側ローラは常に同期して動いており、したがって伝達経路の長さが異なることによりスリップが発生する可能性がなくなる。
【0053】
外側ローラの円錐形の支持面は、断面での角度が好ましくは0.3°〜6°、特に好ましくは0.6°〜4°、およびさらに特に好ましくは1°〜2°である。これにより、ローラ上の基体の走行がかなりスムーズかつ均一になる。外側ローラのガイドカラーは傾斜していることが好ましく、この傾斜は、縁を損傷させるおそれのある大き過ぎる縁負荷を生じさせることなく、基体の横方向の案内をもたらす。シャフトの断面で測定したガイドカラーの角度は、120°〜150°の間、好ましくは130°〜142°の間、および特に好ましくは139°である。
【0054】
これに代わる外側ローラの好ましい一実施形態では、ガイドカラーは設けられず、搬送システムにおける基体の案内は横のガイドローラによって行われ、このガイドローラは、バネで弾性支持されており、基体の縁が搬送方向から横に逸れると、案内する反対圧力を生じさせる。
【0055】
特に有利なのは、この装置が、軟化点の比較的低い安価なソーダ石灰ガラスを加工するために使用可能なことである。もちろんこの装置を他の基体のコーティングに使用することもでき、例えば耐熱性がより高いガラスに対して使用してもよい。相応の数の内側ローラが適切な間隔をあけて用いられていれば、ほぼ任意の幅の基体をコーティングすることができる。これに対応して、例えば幅が1200mm以上のガラス基体を使用することもできる。
【0056】
厚さが3.2mmの好ましいソーダ石灰ガラス基体の、約550℃の温度のコーティングの場合、可能な支えのない支持間隔は約350mmである。したがって2つのローラの間隔は300mm〜400mm、好ましくは350mmであることが望ましい。それだけでなく例えば1200mm幅の基体は、2つの外側ローラとこのローラの間にある1つの中心ローラとで支持する場合、2つの外側ローラにしか載っていない600mm幅の基体の場合と比べて、支えのない領域の幅は両方の場合にそれぞれ600mmであるにもかかわらず、よりたわみが少ないことが分かった。これに対する理由は、外側の端に取り付けられた2つのローラ上でのみ支持された、基体として用いられる板のたわみ曲線は、水平線を規定の角度で交差し、これに対して中心ローラにより追加的に支持された板のたわみ曲線は、中心ローラのところで途切れることなく延びていかなければならず、したがって釣り合いをとるという理由から中心ローラの地点では水平線に対する角度がなくなるということに見てとることができる。この有利な本発明によるやり方は、上記の基体および上述のプロセス条件のためのシャフトの間隔を通常の約230mmから約350mmに増やすことを可能にする。
【0057】
基体の歪曲が減少することにより、コーティングを520℃より高い温度で、好ましくは540〜560℃の間で、特に好ましくは約550℃で実施することができる。
【0058】
約550℃の温度でのCdS/CdTeの堆積は、より低い温度を適用するのに比べ、完成した太陽電池の効率を上昇させることが有利である。この場合には確かに、基体のコーティングが内側ローラの走行軌道の領域内で損傷されることは甘受される。妨害されるCdS/CdTe層は、内側ローラの領域内では幅<12mmであり、外側ローラの領域内では幅<10mmである。転移温度の範囲内の温度では、基体案内路が示したように非常に狭く、したがって「ぐらつき」、つまり基体の横方向の移動が減少されるので、転移温度以降に初めてさらなる内側ローラを取り入れることにより、追加的な内側ローラに関しては破壊されるコーティング領域の幅は約6mmだけである。損傷した領域は、後のプロセスステップの枠内で除去しなければならない。それでもなお製品の実効面積のこれに起因する減少は、より高いプロセス温度およびその結果として生じるより高い効率によって十分以上に補償される。典型的には、ローラとの接触領域内のCdS/CdTe層は、コーティングに続く作業ステップにおいて例えばレーザアブレーションにより再び除去される。サンドブラストまたは機械的作用による亀裂でのコーティング除去も可能である。その代わりに、損傷した層領域を2つの薄い隔離切断面によって切り離すこともでき、この隔離切断面はコーティングを貫通しており、ただし基体内には僅かにしか食い込んでいない。このような隔離切断面に関する可能な幅は20μm〜100μmである。ローラによる太陽光発電の質の低下が僅かしかない場合、事情によっては接触領域の処理を完全に省いてもよい。これは、基体を分類する作業ステップ中に決定されるのが好ましい。このために、一方の望ましい高いプロセス温度と、もう一方の望ましくない面積損失との間の、技術的および経済的に有意義な妥協点を見つけなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】コーティングチャンバ(2)の搬送方向に垂直に延びる断面図である。基体(1)はシャフト(21)の外側ローラ(213)上で支持されている。外側ローラ(213)の間では基体(1)が内側ローラ(214)によって支持されている。シャフト(21)はその端部(211)の近くで、シャフト軸受(212)内で支持されている。
図2】搬送方向に沿ったコーティングチャンバ(2)の垂直断面図である。シャフト(21)は搬送システム(20)に属している。コーティング材料が入った容器(10)が配置されている位置では、コーティングチャンバ(2)の中心部よりシャフト(21)の間隔が明らかに大きく、中心部では3本のシャフト(21)が互いにあまり離隔されずに配置されている。
図3】コーティングチャンバ(2)の上側のカバーを取り除いたコーティングチャンバ(2)の3D図である。内側チャンバの上部も取り除かれた。シャフト(21)の間には、コーティング材料が入った容器(10)が示されている。コーティングチャンバ(2)の中心部で直接的に相並んでいるシャフト(21)の間の比較的小さな間隔(d)に対するコーティング容器の間のシャフトの比較的大きな間隔(D)が確認できる。基体(1)は供給スリット(22)を通ってコーティングチャンバ(2)に入り、搬送シャフト(21)によりコーティングチャンバ(2)を通過していく。基体(1)は第2の供給スリット(22)を通ってコーティングチャンバ(2)から再び離れる。
図4】基体の転移温度未満の温度範囲のためのシャフト(21)を示す図である。したがってシャフト(21)は、外側ローラ(213)の間に1つだけの内側ローラ(214)を備えている。外側ローラ(213)のガイドカラー(2132)の間隔(l)は、基体(1)の転移温度の温度範囲に近いかまたはこの温度範囲内のシャフト(21)の場合より小さい。
図5】シャフト(21)から、シャフト端部(211)が示され、ならびに外側ローラ(213)のガイドカラー(2132)および支持面(2131)が示されている図4の一部分Aを示す図である。ガイドカラー(2132)の角度(b)および支持面の角度(a)は、示したようにシャフト(21)の軸を通っている断面において決定される。
図6】加熱チャンバ(3)の、その上部のない3D図である。加熱チャンバ(3)内では、シャフト(31)が互いに同じ間隔をあけて配置されている。シャフト(31)の下には加熱要素(33)が示されている。基体(1)は供給スリット(32)を通って加熱チャンバ(3)に入り、ローラ(31)により加熱チャンバを通過していき、基体はその後第2の供給スリット(32)を通ってこの加熱チャンバから再び離れる。
図7】搬送方向に平行な加熱チャンバ(3)の断面図である。加熱チャンバ(3)の搬送システム(30)はシャフト(31)を有している。シャフトの互いの間隔(dd)は、すべての隣接するシャフトに対して同じである。
図8】搬送方向に垂直な加熱チャンバ(3)の断面図である。シャフト(31)はそれぞれ、2つの外側ローラ(313)の間に1つの内側ローラ(314)を備えている。シャフトは、内側チャンバ(35)の外で、シャフトの端部(311)で支持されている。下側の反射面(331)および上側の反射面(341)が示されており、これらの反射面は、加熱システムの熱放射を基体の方向に反射する。反射面が、基体(1)の側縁にも達し得るよう横に折り曲げられていることが確認できる。
図9】温度の関数としてのガラス基体の粘度挙動を示すグラフである。粘度指数が12.0に達する転移温度(553℃)が確認できる。
【発明を実施するための形態】
【0060】
妨害されたコーティング領域の広さに関する例示的実施形態
以下に、本発明による装置を用いて本発明による方法を実施する際の基体のコーティングにおいて、どんな妨害が予測され得るのかを例示的に確定する。
【0061】
板状のガラス基体は、例えば長さが1600mm、幅が1200mm、および厚さが3.2mmである。内側ローラの幅は2mm〜6mm、特に3mm〜5mmであることが好ましい。できるだけ細いローラ幅が有利である。なぜならそうすることで、ローラによって損傷され、後でコーティングを再び除去しなければならない領域が細く保たれるからである。センタリングされた板の場合、中心ローラによって損傷される領域は、基体の案内許容差lfuehr,tolと寸法許容差lMass,tolの2倍をローラ幅に加算することによって決定される。まさにこの領域内で破壊される領域を小さく保つため、内側ローラ、つまり中心ローラまたは中間ローラのローラ幅を外側ローラのローラ幅より小さく選択することができる。
【0062】
例えばローラ幅が内側で3.0mmであり、これに対して外側ローラの支持面の幅が5.0mmである。この場合、板の案内許容差が±0.5mmおよび板の寸法許容差が±0.5mmであれば、つまり内側ローラでは破壊されるCdTe帯の最大幅は5mmになる。
【0063】
上で既に述べたように、転移温度の範囲内ではnオーバー個のローラを備えた搬送シャフトが使用され、これに対して転移温度未満ではnアンダー個のローラを備えた搬送シャフトが使用されるように転移温度Tを選択する場合、さらに、追加的なローラによるコーティングの損傷を考慮しなければならない。T=500℃の場合、25℃〜500℃の間のガラス基体の線膨張dL25_500は約5mmであり、25℃〜550℃の間の線膨張dL25−550は約6mmである。したがって外側ローラによって破壊されるCdTe領域の幅は、
CdTe,外ローラ,外+dL25−500/2+2×(lfuehr,tol+lMass,tol)≒9.5mm
(外側ローラの幅bローラ,外=5mm)
である。
【0064】
追加的な中間ローラによって破壊されるCdTe領域の幅は、
CdTe,中間=bローラ,内+(dL25−550−dL25−500)/4+2×(lfuehr,tol+lMass,tol)≒5.25mm
(中間ローラの幅bローラ,内=3mm)
である。
【0065】
例示的実施形態
以下に、本発明による方法の実施に適した例示的な装置を説明する。符号は図中の対応する要素を示している。
【0066】
第1の加熱チャンバ(3)、コーティングチャンバ(2)、および第2の加熱チャンバ(3)が相前後して配置されている。
【0067】
転移温度550℃のソーダ石灰ガラスから成る板状の基体(1)が使用される。先行する作業ステップにおいて既に基体(1)の下面にフロント電極としてのTCO層が施された。搬送方向において基体(1)の幅は25℃で1200mmである。基体(1)の長さは1600mm(25℃)である。基体の縁は、C字形の研磨において丸くされている。基体(1)は、温度が480℃の第1の加熱チャンバ(3)に入る。基体は搬送システム(30)上を移動する。搬送システム(30)はシャフト(31)から成り、このシャフトは、傾斜したガイドカラー(3132)を備えた外側ローラ(313)を有している。それぞれの外側ローラ(313)のガイドカラー(3132)の傾きは、シャフト軸を通っている断面において139°である。ガイドカラー(313)の間隔は1205mmである。基体は、搬送方向に平行な縁を外側ローラ(313)の支持面(3131)に載せている。支持面(3131)は、3°の傾きならびに10mmの幅を有している。基体(1)は真ん中で第1の内側ローラ(314)によって支持され、この内側ローラの支持面での幅は3mmである。こうして基体(1)は加熱チャンバ(3)内で基体の上面および下面を加熱され、その際、チャンバをゆっくり通過していく(送り速度:約1.5m/min)。基体(1)が転移温度の範囲に達すると、その点からはシャフト(31)上に、第1の内側ローラ(314)と外側ローラ(313)の間のここでも真ん中で2つの第2の内側ローラ(314)が配置されている。ここからはガイドカラー(3132)の間隔が1206mmである。ここで加熱システム(34)は、基体(1)が加熱チャンバ(3)の端部に達するときには基体の下面がその上面より6K熱いように調整される。この温度差は内部応力をもたらし、この内部応力は結果として基体(1)を湾曲させ、この湾曲の曲率中心は基体(1)の上にある。3つの内側ローラ(314)で支持することにより、湾曲は阻まれずには下に向かって形成され得ない。これは基体(1)を突っ張らせる。この突っ張りにより基体(1)は、後続のコーティングチャンバ(2)への250mmのシャフト間隔を、コーティングチャンバ(2)の搬送システム(20)の最初のシャフト(21)にぶつからずに通過する。コーティングチャンバ(2)の搬送システム(20)は、基体(1)が転移温度の範囲に達した後の加熱チャンバ(3)の搬送システム(30)に対応している。基体(1)は搬送方向にさらに移動する。基体は、CdSが680℃の温度で蒸発している第1の容器(10)に達する。基体(1)は、容器(10)の上を縁に対して5mmの間隔をあけて通り過ぎていく。搬送方向における容器(10)の幅は300mmである。この領域内には支持するローラを配置できないので、基体(1)はこの間隔を、基体(1)の下面と上面の温度差から生じる内部応力および湾曲膨出だけに基づいてまたいでいく。これに関し、容器(10)内の温度が高いので下面は引き続き上面よりかなり強く加熱される。その際、基体(1)の下面は約555℃の温度に達する。第1の容器(10)を越えると、基体は再び2つの外側ローラ(213)および3つの内側ローラ(214)を備えたシャフト(21)によって支持される。250mmの間隔をあけて配置されている3本のこのシャフト(21)の後に続くのは、CdSが入っているさらなるコーティング容器(10)である。この容器を、CdTeが入った後続の両方のコーティング容器(10)と同様に上述のやり方でまたいでいく。次に、コーティングされた基体(1)は第2の加熱チャンバ(3)に達する。ここでは基体が徐冷される。基体は、温度が約500℃の第2の加熱チャンバから離れる。この第2の加熱チャンバの後ろには、詳しくは説明しないが、さらなる加熱チャンバが接続されており、このさらなる加熱チャンバ内では基体温度がさらに低下する。ガラスの転移範囲を下回ると基体(1)は再び、ガイドカラー(3132)の間隔が1205mmのローラ(31)および1つだけの内側ローラ(314)上で搬送される。
【符号の説明】
【0068】
1 基体
2 コーティングチャンバ
3 加熱チャンバ
10 CdSまたはCdTeが入った容器
20 コーティングチャンバの搬送システム
21 コーティングチャンバの搬送システムのシャフト
211 コーティングチャンバの搬送システムのシャフトのシャフト端部
212 コーティングチャンバの搬送システムのシャフトのシャフト軸受
213 コーティングチャンバの搬送システムのシャフトの外側ローラ
2131 コーティングチャンバ内のシャフトの外側ローラの円錐形の支持面
2132 コーティングチャンバ内のシャフトの外側ローラの傾斜したガイドカラー
214 コーティングチャンバの搬送システムのシャフトの内側ローラ
22 コーティングチャンバの供給スリット
30 加熱チャンバ内の搬送システム
31 加熱チャンバ内の搬送システムのシャフト
311 加熱チャンバの搬送システムのシャフトのシャフト端部
312 加熱チャンバの搬送システムのシャフトのシャフト軸受
3131 加熱チャンバ内のシャフトの外側ローラの円錐形の支持面
3132 加熱チャンバ内のシャフトの外側ローラのガイドカラー
313 加熱チャンバの搬送システムのシャフトの外側ローラ
314 加熱チャンバの搬送システムのシャフトの内側ローラ
32 加熱チャンバの供給スリット
33 基体の下面のための加熱チャンバ内の加熱システムの加熱要素
331 下面の加熱システムの反射面
34 基体の上面のための加熱チャンバ内の加熱システムの加熱要素
341 上面の加熱システムの反射面
35 加熱チャンバの内側チャンバ
l ガイドカラーの間隔
a 外側ローラの支持面の角度
b ガイドカラーの角度
d コーティングチャンバのうち容器が配置されていない領域内のシャフトの間隔
dd 加熱チャンバ内のシャフトの間隔
D コーティングチャンバのうち容器が配置されている領域内のシャフトの間隔

本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する。
1.
板状の基体(1)のコーティング方法において、
a)前記基体(1)を転移温度に加熱するステップ、
b)a)と同時および/またはその後に前記基体(1)の下面を前記基体の上面より高い温度に加熱するステップ、
c)前記基体(1)上に少なくとも1種のコーティング材料を蒸着させるステップ、
を特徴とする方法。

2.
前記基体(1)がコーティングの後に徐冷されることを特徴とする上記1に記載の方法。

3.
基体温度が、ステップc)の後で転移温度未満に下げられ、続いて新たに前記プロセスステップa)〜c)が実施されることを特徴とする上記1または2に記載の方法。

4.
転移温度が540℃〜570℃の間、好ましくは550℃〜560℃の間である基体(1)が使用されることを特徴とする上記1〜3に記載の方法。

5.
前記基体がソーダ石灰ガラスであることを特徴とする上記4に記載の方法。

6.
コーティングの際の前記基体(1)の下面の温度が520℃超であり、好ましくは540℃〜570℃の間であり、かつ特に好ましくは555℃であることを特徴とする上記5に記載の方法。

7.
ステップb)の後の前記基体(1)の下面が、上面より少なくとも2K〜4K、好ましくは5K〜8K、特に好ましくは6K高い温度であることを特徴とする上記1〜6のいずれか一つに記載の方法。

8.
前記コーティング材料がCdSおよび/またはCdTeであることを特徴とする上記1〜7のいずれか一つに記載の方法。

9.
前記コーティング材料がCISまたはCIGS(銅、インジウム、および/またはガリウム、セレン)であることを特徴とする上記1〜8のいずれか一つに記載の方法。

10.
前記コーティング材料がCZTS(銅、亜鉛、および/またはスズ、硫黄)であることを特徴とする上記1〜9のいずれか一つに記載の方法。

11.
前記基体(1)の損傷したコーティング領域が、コーティング工程の後で除去されるか、または残りのコーティングから分離されることを特徴とする上記1〜3のいずれか一つに記載の方法。

12.
前記損傷したコーティング領域を除去するためにレーザアブレーションまたはサンドブラストまたは前記コーティング領域を分離するために機械的作用による亀裂が用いられることを特徴とする上記11に記載の方法。

13.
少なくとも下記のコンポーネント、すなわち、
−真空チャンバとして形成されており、内側チャンバにおいてそれぞれ独立に制御または調節可能な少なくとも2つの加熱システム(33、34)を備えている少なくとも1つの加熱チャンバ(3)であって、少なくとも1つの加熱システム(34)が前記基体の上面を加熱し、少なくとも1つの加熱システム(33)が前記基体の下面を加熱し、かつ前記加熱システム(33、34)が、前記基体(1)を上面より下面が高い温度になるように加熱するように調整されている前記加熱チャンバ(3)、
−真空チャンバとして形成されており、搬送方向において加熱チャンバ(3)の後ろに配置されており、コーティング材料が入った少なくとも1つの加熱可能な蒸発用るつぼを備えている少なくとも1つのコーティングチャンバ(2)、
−前記加熱チャンバ(3)を通って延びている前記基体(1)用搬送システム(30)および前記コーティングチャンバ(2)を通って延びている前記基体(1)用搬送システム(20)であって、両方の搬送システム(20、30)が、複数の平行な、軸方向に離隔し、搬送方向において相前後し、かつ搬送方向に垂直に配置されたシャフト(21、31)を有しており、それぞれのシャフトが外側ローラ(213、313)を備えており、前記外側ローラの間には、それぞれ少なくとも1つの内側ローラ(214、314)が配置されている前記搬送システム(20、30)、
を有する上記1〜12のいずれか一つに記載の方法を実施するための装置。

14.
それぞれの加熱チャンバ(3)およびそれぞれのコーティングチャンバ(2)が、前置されたチャンバから前記基体(1)をロッキングプロセス(Schleusungsprozess)なしで搬入させる前記チャンバ(2、3)内への基体入口と、後置されたチャンバ内に前記基体(1)をロッキングプロセスなしで搬出させる前記チャンバ(2、3)からの基体出口とを備えていることを特徴とする上記13に記載の装置。

15.
前記外側ローラ(213、313)が、すぐ近くのシャフト端部(211、311)に向かって直径が次第に大きくなる円錐形の、前記基体(1)のための支持面(2131、3131)を有しており、前記支持面(2131、3131)が、1°〜5°、好ましくは1°〜2°の傾斜を有することを特徴とする上記13または14に記載の装置。

16.
前記外側ローラ(213、313)が、130°〜150°、好ましくは139°の傾きで傾斜したガイドカラー(2132、3132)を備えており、前記ガイドカラー(2132、3132)が、前記外側ローラ(213、313)の前記支持面(2131、3131)より少なくとも5mm突き出ていることを特徴とする上記13〜15のいずれか一つに記載の装置。

17.
前記基体(1)の下面温度が前記基体(1)の転移温度の範囲内にあるところでの前記シャフト(21、31)が、前記基体(1)の下面温度が転移温度未満のところでのシャフト(21、31)より大きな前記ガイドカラー(2132、3132)の間隔を有することを特徴とする上記16に記載の装置。

18.
前記基体(1)の下面温度が前記基体(1)の転移温度の範囲内にあるところでの前記シャフト(21、31)が、前記基体(1)の下面温度が転移温度未満のところでのシャフト(21、31)より多くの内側ローラ(214、314)を備えていることを特徴とする上記13〜17のいずれか一つに記載の装置。

19.
前記基体(1)の下面温度が転移温度を下回るところでの前記シャフト(21、31)が、前記両方の外側ローラ(213、313)の間に第1の内側ローラ(214、314)を備えており、前記基体(1)の下面温度が転移温度の範囲に達するところでの前記シャフト(21、31)が、少なくとも1つのさらなる内側ローラ(214、314)を備えていることを特徴とする上記13〜18のいずれか一つに記載の装置。

20.
前記第1の内側ローラ(214、314)が、前記シャフト(21、31)上で、前記両方の外側ローラ(213、313)のほぼ真ん中に配置されていることを特徴とする上記19に記載の装置。

21.
さらなる内側ローラ(214、314)がそれぞれ、ほぼ真ん中の内側ローラ(214、314)と前記外側ローラ(213、313)の間のほぼ半分の距離に配置されていることを特徴とする上記20に記載の装置。

22.
前記搬送システム(30)の前記内側ローラ(214、314)が、搬送方向に見て一列に整列して配置されていることを特徴とする上記13〜21のいずれか一つに記載の装置。

23.
前記基体(1)の支持点における前記内側ローラ(21、31)の外郭の半径が1mm〜4mmの範囲内、好ましくは2mmであり、前記内側ローラ(214、314)の幅が2mm〜6mm、好ましくは3mm〜5mmであることを特徴とする上記13〜22のいずれか一つに記載の装置。

24.
前記外側ローラ(213、313)の前記支持面(2131、3131)の幅が6mm〜12mm、好ましくは10mmであることを特徴とする上記13〜23のいずれか一つに記載の装置。

25.
前記シャフト(21、31)の駆動が、前記真空チャンバ内で、それぞれのシャフト(21、31)の少なくとも一方の端部(211、311)で、および前記シャフト(21、31)に対する直接的で機械的な結合によって行われることを特徴とする上記13〜24のいずれか一つに記載の装置。

26.
前記加熱チャンバ(3)の前記加熱システム(33、34)が、ループ状、蛇行状、またはジグザグ状に配置された加熱コイルとして実施されており、前記基体の下面のための前記加熱システム(33、34)が、前記シャフト(31)の下に配置されていることを特徴とする上記13〜25のいずれか一つに記載の装置。

27.
前記加熱システム(33、34)が、反射面と前記内側チャンバの内壁との間に配置されており、少なくとも、前記反射面が搬送方向に平行な外縁で、前記基体(1)の側面が同様に加熱されるように前記基体(1)の方向に横に屈曲された突出部を有していることを特徴とする上記26に記載の装置。

28.
加熱チャンバ(3)およびコーティングチャンバ(2)が、前記基体(1)の下面(下面温度)および上面の温度を測定するためのセンサならびに/または前記基体の位置決定のためのセンサを備えていることを特徴とする上記13〜27のいずれか一つに記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9