(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
R”部分が、少なくとも1以上のポリオキシアルキレン基によって置換されており、シロキサン結合によってSiに結合しているオルガノポリシロキサン部分である、請求項4又は5に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示する方法は、木材パルプスラリー、例えば、パルプ褐色原料洗浄において形成される木材パルプスラリー等の繊維状セルロース性物質の水性懸濁液の水切れにおいて特に有益である。水性スラリー中の木材パルプを洗浄し
、洗浄された木材パルプスラリーを
水切りし、乾燥させることによって洗浄された乾燥木材パルプを製造するための本明細書に開示する方法では、分枝状オルガノポリシロキサン構造を含むオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーを水切
り前に水性スラリーに添加して、木材パルプスラリーの水切れの速度を上昇させ、水切
り及びスラリーの乾燥において用いられる総エネルギーを低減させる。また、本明細書に開示する方法は、紙若しくはティッシュを製造するための製紙用木材パルプスラリーの、又は繊維状物質の再生において形成されるパルプスラリーの水切れにおいても有利である。
【0009】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーが水切
りにおいて利益をもたらす繊維状物質の更なる例は、織物材料、特にセルロース性織物材料、例えば、木綿で作製される衣料品又は再生セルロース繊維の布地である。分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、織物、特に、セルロース性織物を洗浄し、すすぐための洗濯プロセスに組み込んで水切れを改良したり、セルロース性又は他の織物用繊維のスラリーに添加して、織物用製造プロセスの任意の段階における水切れを改良したりすることができる。
【0010】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーが水切れを改良し得る、懸濁している固体物質の更なる例は、石炭及び他の鉱物、並びに下水汚泥である。分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、石炭の洗浄中に生じるような微細な石炭の懸濁液の水切れを改良する。また、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、下水処理場の沈降プロセスにおける汚泥の水切れを改良する。
【0011】
分枝状オルガノポリシロキサン構造は、オルガノポリシロキサンにおけるケイ素原子から3又は4個のポリシロキサン部分が延びている構造であってもよく、オルガノポリシロキサン鎖を部分的に架橋させることによって分岐している構造であってもよい。架橋部分は、シロキサン単位を組み込んでもよく、有機骨格を有していてもよい。オルガノポリシロキサン構造は、そこから少なくとも3個のオルガノポリシロキサン部分、又はオルガノポリシロキサン部分によって置換されている有機基が延びているオルガノポリシロキサン中のケイ素原子が少なくとも1つ存在する場合、分岐しているとみなす。
【0012】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、好ましくは、次の一般式:
R
2R
*SiO(RR’SiO)
x(R
2SiO)
y(RR”SiO)
zSi R
2R
* (I)
(式中、各Rは、1〜25個の炭素原子を有する炭化水素基を表し;各R’は、次の式:
−A−O−(A’−O)
w−(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
b(C
4H
8O)
c−R
2
(式中、Aは、1〜20個の炭素原子を有する二価炭化水素基又は式−A”C(O)−(式中、A”は、2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基又は直接結合である)のアシルアルキル基を表し、A’は、2〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、R
2は、水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜6個の炭素原子を有するアシル基を表し、w=0又は1であり、a=0〜50であり、b=0〜50であり、c=0〜20であるが、但し、a+b+cは少なくとも1である)のポリオキシアルキレン基を表し;各R”は、オルガノポリシロキサン部分又はオルガノポリシロキサン部分によって置換されている有機基を表し、且つSi−C結合又はシロキサン結合によってSiに結合しており;各R
*は、R、R’、又はR”基であり;x=1〜40であり;y=0〜300であり;z=1〜5である)を有する。
【0013】
各R”部分は、様々な異なる方法のうちの1つで分岐点を形成し得る。(RR”SiO)単位は、例えば、式RSiO
3/2(式中、R”部分は、任意で1以上のポリオキシアルキレン基によって置換されており、シロキサン結合によってSiに結合しているオルガノポリシロキサン部分である)のT単位であり得る。好ましい例では、(RR”SiO)単位は、ヒドロシリル化によってSi−H官能性シロキサン単位RHSiOから誘導され得る。Si−H官能性ポリシロキサンは、例えば、少なくとも2つのエチレン性基を含有する有機又はシリコーン化合物でヒドロシリル化されて、(RR”SiO)単位に分岐点を有する架橋構造を形成することができる。あるいは、Si−H官能性ポリシロキサンは、エチレン性基を含有するオルガノポリシロキサンでヒドロシリル化されて、分岐構造を形成することができる。ペンダント反応性有機官能基を含有するオルガノポリシロキサンは、反応性有機官能基の反応によって部分的に架橋され得る。
【0014】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、例えば、ポリ(アルキルヒドロジェンシロキサン)等の複数のSi−H基を有するポリシロキサン、例えば、ポリ(メチルヒドロジェンシロキサン)、又はアルキルヒドロジェンシロキサンジアルキルシロキサンコポリマー、例えば、メチルヒドロジェンシロキサンジメチルシロキサンコポリマーから誘導され得る。複数のSi−H基を有するポリシロキサンは、白金族化合物等、ヒドロシリル化反応のための触媒の存在下でエチレン性不飽和化合物と反応され得る。
【0015】
式(RR’SiO)のシロキサン単位は、複数のSi−H基を有するポリシロキサンとエチレン性不飽和基を含有するポリエーテルとの反応によって形成され得る。式(RR”SiO)のシロキサン単位は、複数のSi−H基を有するポリシロキサンと、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機若しくはオルガノシロキサン化合物、又は少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有するポリシロキサンとの反応によって形成され得る。式(R
2SiO)のシロキサン単位は、例えば、アルキルヒドロジェンシロキサンジアルキルシロキサンコポリマー試薬中に存在するジアルキル基であり得る、又は複数のSi−H基を有するポリシロキサンと1−アルケンとの反応によって形成され得る。
【0016】
複数のSi−H基を有するポリシロキサンと反応するエチレン性不飽和基を含有するポリエーテルは、例えば、次の式:
CH
2=CH−CH
2−O−(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
b(C
4H
8O)
c−R
2
(式中、a、b、c、及びR
2は、上の通り定義される)を有するポリオキシアルキレングリコールのモノアリルエーテルであり得る。ポリエーテル基は、好ましくは、ヒドロキシで終端する、すなわち、基R
2は、水素原子を表す。各−(C
2H
4O)−単位は、一般的に、式−CH
2CH
2O−のオキシエチレン単位である。各−(C
3H
6O)−単位は、好ましくは、式−CH
2CH(CH
3)O−のオキシプロピレン単位である。各−(C
4H
8O)−単位は、例えば、CH
2CH(CH
2CH
3)単位又は−(CH
2)
4O−単位であり得る。
【0017】
あるいは、エチレン性不飽和基を含有するポリエーテルは、ポリオキシアルキレングリコールのアクリレート又はメタクリレートエステル、例えば、次の式:
CH2=CH−COO−(A’−O)w−(C
2H
4)
a(C
3H
6O)
b(C
4H
8O)
c−R
2
(式中、A’、w、a、b、c、及びR
2は、上の通り定義されるか、又は対応するメタクリレートエステルである)を有するアクリレートエステルであり得る。
【0018】
全ての分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、一般的に、分枝状オルガノポリシロキサン構造を有しないオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーに比べて改良された水切れ性能を示すが、本発明者らは、ポリアルキレンオキシド部分がポリプロピレンオキシドリッチである分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーが、水切れ性能を最も改良することを見出した。上記式(I)中、bは、好ましくは少なくとも5、最も好ましくは少なくとも10から、最大40又は50であり、且つbは、好ましくは少なくともaに等しく、最も好ましくはaよりも大きい。
【0019】
複数のSi−H基を有するポリシロキサンと反応する少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物は、例えば、式CH
2=CR
3−Y−CR
3=CH
2(式中、各R
3は、水素又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Yは、加水分解性結合を含有しない有機又はオルガノシロキサン結合を表す)の化合物であり得る。好ましくは、各R
3は、水素を表す。Yによって表される有機基は、例えば、メチレン、ジメチレン、トリエチレン、ペンタメチレン、及びデカメチレン等のC1〜C10アルキレンラジカル;シクロへキシレン等のシクロアルキレンラジカル;p−フェニレン又はo−フェニレン等の二価芳香族ラジカル;並びに−COO−CH
2CH
2−OOC−及び−CH
2−O−CH
2−−等の酸素含有ラジカルを含み得る。
【0020】
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機化合物は、例えば、式CH
2=CH(CH
2)
dCH=CH
2(式中、dは1〜14である)のα,ω−ジエン等、α,ω−ジオレフィンであり得る。本明細書で使用するのに好適なα,ω−ジエンの幾つかの代表的な例は、1,4−ペンタジエン;1,5−ヘキサジエン;1,6−ヘプタジエン;1,7−オクタジエン;1,8−ノナジエン;1,9−デカジエン;1,11−ドデカジエン、及び1,13−テトラデカジエンである。炭素−炭素結合の鎖を有するこのような有機化合物が好ましいが、あるいは、有機化合物は、2,5−ノルボルナジエン又はジビニルシクロヘキサン等の環状化合物であってもよく、エーテル結合等の非加水分解性ヘテロ原子結合を含有してもよい。有機化合物は、例えば、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等のポリオールのジアリルエーテルであり得る。多くの目的について、エステル結合は、十分に加水分解に対して耐性であり得る、例えば、有機化合物は、コハク酸ジビニルであり得る。少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機化合物は、それ自体、ポリエーテルであってよく;例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジアリルエーテルであり得る。各分子末端に不飽和脂肪族炭化水素基を有するポリオキシアルキレンは、NOF(Nippon Oil and Fat(Tokyo,Japan))及びClariant Corp.(Charlottesville,NC)から市販されている。代表的な非限定的な例としては、式CH
2=C(CH
3)CH
2O(C
2H
4O)
13CH
2C(CH
3)=CH
2を有するUniox DMUS−5及び式CH
2=C(CH
3)CH
2O(C
2H
4O)
10(C
3H
6O)
7.6CH
2C(CH
3)=CH
2を有するPolycerin 50DMUS−60が挙げられ、これらは両方NOF America Corporation(White Plains,NY)から入手可能である。1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,2,5−トリビニルシクロヘキサン、及びトリアリルイソシアヌレートは、複数のSi−H基を有するポリシロキサンと反応し得る2超のエチレン性不飽和基を有する好適な有機化合物の例である。
【0021】
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するオルガノシロキサン化合物は、好ましくは、2以上、例えば、2〜400個のシロキサン単位の鎖を有するビニル末端オルガノポリシロキサンである。本発明者らは、少なくとも50、例えば、50〜200個のシロキサン単位の鎖を有するビニル末端オルガノポリシロキサンでSi−H基を含有するオルガノポリシロキサンを部分的に架橋させることによって分岐しているオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーが、水切れの改良において特に有効であることを見出した。
【0022】
式(I)中のRによって表される炭化水素基は、一般に、飽和又は不飽和開鎖炭化水素基のいずれかを含んでもよく、シクロアルキル又はアリール基であってもよい。例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシル、ドデシル、オクタデシル、及びエイコシル等の飽和炭化水素基が好ましい。多くの場合、基Rの大多数はメチル基である。例えば、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーが、複数のメチルヒドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサンと、エチレン性不飽和基を含有するポリエーテル及び少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物との反応によって調製されるとき、(RR’SiO)及び(RR”SiO)単位中の基Rは全て、一般的にメチル基である。(R
2SiO)単位は、存在する場合、通常、メチルヒドロジェンシロキサンジメチルシロキサンコポリマー試薬中に存在するジメチルシロキサンであるか、又はメチルヒドロジェンシロキサン単位と1−アルケンとの反応によって形成されるメチルエチルシロキサン又はメチルへキシルシロキサン等のメチルアルキルシロキサン単位である。基Rの大多数はメチル基であることが好ましく、オルガノシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーの基R中の炭素原子の平均数は、好ましくは2未満である。
【0023】
複数のSi−H基を有するポリシロキサンと、エチレン性不飽和基を含有するポリエーテル及び少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物との反応により、例えば、次の一般式:
【化1】
(式中、R、R
*、R’、x、y、及びzは、請求項2に定義する通りであり;各R
3は、水素又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Yは、加水分解性結合を含有しない有機又はオルガノシロキサン結合を表す)を有する分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーが生じ得る。この構造では、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーの基R”は、次の式:
【化2】
を有する。
【0024】
このようなオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、部分的な架橋によって分岐する。
【0025】
一般に、複数のSi−H基を有するポリシロキサンは、エチレン性不飽和基を含有するポリエーテル、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物、及び用いられる場合1−アルケンと任意の順序で反応し得る、又はこれらの全てと同時に反応し得る。複数のSi−H基を有するポリシロキサンは、例えば、5〜100個のメチルヒドロジェンシロキサン単位を含有し得る。各反応は、一般的に、VIII族遷移金属、特に、白金、ヒドロシリル化触媒の存在下で実施される。1つの好ましい白金触媒は、典型的に、トルエン等の溶媒中に約1重量パーセントの白金を含有する白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。別の好ましい白金触媒は、塩化白金酸と末端脂肪族不飽和を含有するオルガノシリコン化合物との反応生成物である。貴金属触媒は、好ましくは、≡SiH含有ポリシロキサン100重量部当たり0.00001〜0.5部、最も好ましくは0.00001〜0.002部の量で用いられる。反応は高温、例えば、50〜120℃の範囲で、例えば、非反応性液体有機又はシリコーン材料の分散液中にて実施され得る。
【0026】
1つの好ましい手順では、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物を、まず、好適なヒドロシリル化触媒と共に複数のSi−H基を有するポリシロキサンに添加し、加熱して、反応させる。エチレン性不飽和基を含有するポリエーテルを、次に反応させ得る。ポリエーテルを反応容器に添加し、適当なヒドロシリル化触媒及び熱の存在下で反応させ得る。
【0027】
この手順では、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物と、複数のSi−H基を有するポリシロキサンとの反応中、ポリアルキレン基を導入するためのエチレン性不飽和基を含有するポリエーテルとの反応に十分なSi−H基を確実に残すために、また、ゲルが形成される程度に架橋を避けるために、Si−H基は、エチレン性不飽和基に対してモル過剰である。通常、複数のSi−H基を有するポリシロキサンは、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物に対してモル過剰であることが好ましい。複数のSi−H基を有するポリシロキサンの、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物に対するモル比は、例えば、1:0.1〜1:0.35の範囲であり得る。反応のこの段階におけるSi−H基のエチレン性不飽和基に対するモル比は、例えば、1:0.02〜1:0.07であり得る。
【0028】
これらモル比における反応は、通常、Si−H官能性ポリシロキサンの全てを架橋させるわけではない。しかし、本発明者らは、これら比における架橋反応の反応生成物は、ポリオキシアルキレン基を導入するために更に反応した後、水切れの改良に非常に有効であり、且つ複数のSi−H基を有する同じポリシロキサン及びエチレン性不飽和基を含有する同じポリエーテルから形成される非分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーよりも著しく有効であることを見出した。
【0029】
したがって、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、次の一般式:
R
2R
*SiO(RR’SiO)
x(R
2SiO)
y(RR”SiO)
zSi R
2R
* (I)
(式中、R、R’、R”、R
*、x、及びyは、請求項2に定義する通りであり、z=0であり、組成物中の総オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー中のzの平均値は、0.1〜2の範囲である)を有するオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーも含有する組成物の一部として存在し得る。
【0030】
エチレン性不飽和基を含有するポリエーテルの、複数のSi−H基を有するポリシロキサンのSi−H基に対するモル比は、1:1未満であっても、1:1と等しくても、1:1超であってもよい。反応のこの段階でSi−H基が過剰である場合、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー中の反応性Si−H基を避けるために、生成物と1−アルケンとが反応することが好ましい場合がある。ポリエーテルのエチレン性不飽和基が過剰である場合、生成物は、エチレン性不飽和基を含有する未反応のポリエーテルを含有する場合があるが、これは通常、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物において有害ではない。
【0031】
メチルアルキルシロキサン単位が、メチルヒドロジェンシロキサン単位と1−アルケンとの反応によって形成される場合、1−アルケン試薬の一部は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する化合物及びエチレン性不飽和基を含有するポリエーテルと反応する前に、複数のSi−H基を有するポリシロキサンと反応し得る。最初に反応する脂肪族ラジカル前駆体のこの部分は、架橋剤及びポリオキシアルキレンの付加のために十分な水素化ケイ素反応部位を確実に残すために、化学量論的量よりも遥かに少ない。用いられる場合、1−アルケン試薬の残りは、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する化合物及びエチレン性不飽和基を含有するポリエーテルとの反応後に反応容器に添加され、ヒドロシリル化触媒及び熱の存在下で反応する。この段階で、1−アルケン試薬は、残りの水素化シロキサン反応部位に対して化学量論的に過剰であり得る。
【0032】
あるいは、式(RR”SiO)のシロキサン単位は、複数のSi−H基を有するポリシロキサンと、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機又はオルガノシロキサン化合物の代わりに少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有するポリシロキサンとを反応させることによって形成し得る。分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーを形成する手順は、一般的に、上記の通りである。1つのエチレン性不飽和基を有するポリシロキサンが反応するとき、形成されるコポリマーは、分岐しているが、架橋していない。
【0033】
複数のSi−H基を有するポリシロキサンは、通常、直鎖状ポリシロキサンであるが、Si−H基がシクロテトラシロキサン又はシクロペンタシロキサン環中に存在するポリシロキサンであってもよい。例えば、複数のSi−H基を有するポリシロキサンは、次の式:
【化3】
(式中、n=2〜300である)であり得る。このような環状Si−H官能性ポリシロキサンは、上記手順を用いて、エチレン性不飽和基を含有するポリエーテル、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有する有機若しくはオルガノシロキサン化合物、又は1つのエチレン性不飽和基を有するポリシロキサン、及び任意追加的に上記1−アルケンと反応し得る。生成される分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、例えば、次の一般式:
【化4】
(式中、Rは、請求項2に定義する通りであり;各R
5は、1〜25個の炭素原子を有する炭素原子基、次の式:
−A−O−(A’−O)
w−(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
b(C
4H
8O)
c−R
2
(式中、Aは、1〜20個の炭素原子を有する二価炭化水素基又は式−A”C(O)−(式中、A”は、2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基である)のアシルアルキル基を表し、A’は、2〜5個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、R
2は、水素原子、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は1〜6個の炭素原子を有するアシル基を表し、w=0又は1であり、a=0〜50、b=0〜50、及びc=0〜20であるが、但し、a+b+cは、少なくとも1である)、又は任意で1以上のポリオキシアルキレン基によって置換されており、Si−C結合によってSiに結合しているオルガノポリシロキサン部分を表すが、但し、少なくとも1つの基R
5は、ポリオキシアルキレン基を表し、少なくとも1つの基R
5は、オルガノポリシロキサン部分を表し、n=1〜400であり、各q=1又は2である)のポリオキシアルキレン基を有し得る。
【0034】
あるいは、部分的架橋によって分岐しているオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、ペンダント反応性有機官能基を含有するオルガノポリシロキサンと少なくとも1つの基、好ましくは少なくとも2つの基を有する架橋剤との反応によって形成され得、これは、反応性有機官能基と反応する。
【0035】
例えば、ペンダントアミノアルキル基を含有するアミノ官能性オルガノポリシロキサン、例えば、−(CH
2)
3NH
2、−(CH
2)
4NH
2、−(CH
2)
3NH(CH
2)
2NH
2、又は−CH
2CH(CH
3)CH
2NH(CH
2)
2NH
2基は、部分的架橋をもたらすために化学量論的量よりも少ない量の少なくとも2つのエポキシド基を含有する化合物又はポリマーと反応させてもよい。また、このようなアミノ官能性オルガノポリシロキサンは、求核付加反応によってポリオキシアルキレン基を有する
【化5】
と反応させてもよい。
【化6】
は、ポリオキシアルキレングリコールのアクリレートエステル、例えば、次の式:
CH2=CH−COO−(A’−O)
w−(C
2H
4O)
a(C
3H
6O)
b(C
4H
8O)
c−R
2
(式中、A’、w、a、b、c、及びR
2は、上の定義通りである)を有するアクリレートエステルであり得る。あるいは、アミノ官能性オルガノポリシロキサンは、少なくとも2つのエポキシド基を含有する化合物又はポリマーと反応した後、エポキシド末端ポリエーテルと反応させてもよい。
【0036】
ペンダントアミノアルキル基を含有するオルガノポリシロキサン、又は2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシアルキル基、又は3−メタクリルオキシプロピル等のカルボキシル基は、部分的架橋をもたらすために化学量論的量よりも少ない量の、少なくとも2つのイソシアヌレート基を含有する化合物又はポリマーと反応させてもよい。得られるオルガノポリシロキサンは、ポリオキシアルキレン基を有する
【化7】
エポキシド末端ポリエーテル、又はイソシアネート末端ポリエーテルと反応させてもよい。カルボキシル基を含有するオルガノポリシロキサンは、ポリオキシアルキレングリコールと反応させてもよい。
【0037】
あるいは、オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーの分枝状オルガノポリシロキサン構造は、オルガノポリシロキサン中の式RSiO
3/2のT単位又は式SiO
4/2のQ単位から誘導され得る。T単位は、3つのポリシロキサン部分に結合し得、Q単位は、3又は4つのポリシロキサン部分に結合し得、それによって分枝状オルガノポリシロキサン構造を形成する。少なくとも1つ、好ましくは1超のこれらポリシロキサン部分は、これらに結合している次の式:
−A−O−(A’−O)w−(C
2H
4)
a(C
3H
6O)
b(C
4H
8O)
c−R
2
のポリオキシアルキレン基を有する。
【0038】
したがって、T単位を含有する分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、次の式:
R
2R
*SiO(RR’SiO)
x(R
2SiO)
y(RR”SiO)
zSi R
2R
* (I)
(式中、R、R’、R
*、x、y、及びzは、上の定義通りであり、各R”は、オルガノポリシロキサン部分を表す)を有する。オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、例えば、次の一般式:
【化8】
(式中、R、R’、R
*、x、y、及びzは、請求項2に定義する通りであり、各R
4は、1〜25個の炭素原子を有する炭化水素基又は式R
2R
*SiO(RR’SiO)
x’(R
2SiO)
y(RR”SiO)
z’−(式中、R、R’、R”、R
*、及びyは、請求項2に定義する通りであり、x’=0〜10であり、z’=0〜5である)のポリオルガノシロキサン基を表す)を有してもよい。Q単位を含有する分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、式(I)を有しないが、式R
2R
*SiO(RR’SiO)
x(R
2SiO)
y(R”
2SiO)
zSi R
2R
*
(式中、R、R’、R
*、x、y、及びzは、上の定義通りであり、各R”は、オルガノポリシロキサン部分を表す)を有してもよい。
【0039】
T単位及び/又はQ単位を含有する分枝状オルガノポリシロキサンは、加水分解、及び式R
3SiCl及びRSiCl
3又はSiCl
4のクロロシランと、通常、式R
2SiCl
2のクロロシランとのシロキサン縮合によって形成され得る。このような分枝状オルガノポリシロキサンは、一般的に、Si−OH基を含有し、これらは、分枝状オルガノポリシロキサン中にポリオキシアルキレン基を組み込むために強酸又は塩基触媒下でポリオキシアルキレングリコールと反応させてもよい。あるいは、式R
2HSiCl、RHSiCl
2、及び/又はHSiCl
3のクロロヒドロシランは、式RSiCl
3及びR
2SiCl
2のクロロシランと反応して、Si−H基を含有する分枝状オルガノポリシロキサンを形成し得、前記Si−H基は、上記ヒドロシリル化条件下でエチレン性不飽和基を含有するポリエーテルと反応させてもよい。
【0040】
また、T単位又はQ単位を含有する分枝状オルガノポリシロキサンは、アルキルジヒドロキシシリル末端基を含有するオルガノポリシロキサン、例えば、ビス(ジヒドロキシ)末端ポリジメチルシロキサンから生成され得る。このようなオルガノポリシロキサンは、それ自体と、又はジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、又はテトラアルコキシシランとのシロキサン縮合反応によって分枝状オルガノポリシロキサンを形成し得る。
【0041】
あるいは、T単位又はQ単位及びSi−H基を含有する分枝状オルガノポリシロキサンは、強酸触媒下で、少なくとも1つのSiH基を含有するポリシロキサン並びにT単位及び/又はQ単位からなる分枝状ポリシロキサンと、M単位及び/又はD単位との再配置反応によって調製され得る。任意追加的に、アルコキシシラン、ジヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、又はシクロシロキサンは、少なくとも1つのSiH基を含有するポリシロキサン及び分枝状ポリシロキサンと共反応させてもよい。得られるSi−H基を含有する分枝状オルガノポリシロキサンは、エチレン性不飽和基を含有するポリエーテルと反応さえてもよい。
【0042】
別の分枝状オルガノポリシロキサンは、式SiO4/2を有する四官能性シロキサンQ単位、並びに式R
3SiO1/2及びR’R
2SiO1/2(式中、R及びR’は、それぞれ、上の定義通りである)によって表し得る一官能性シロキサン単位に基づく。四官能性シロキサン単位の一官能性シロキサン単位に対する比は、好ましくは、1:0.4〜1.2である。Rは、好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表し、最も好ましくはメチルである。二官能性及び三官能性シロキサン単位(それぞれ、R
2SiO
2/2及びRSiO
3/2)が含まれていてもよいが、これらは、典型的に、各単位につき10%未満で存在する。樹脂中の一官能性シロキサン単位の総数は、シロキサン単位の総数に基づいて、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%である。樹脂は、好ましくは、R
3SiCl、HR
2SiCl及びSiCl
4の混合物を共加水分解及び縮合し、次いで、白金触媒を用いてアリルオキシ末端ポリオキシアルキレンポリマーとカップリングさせることによって調製される。また、樹脂は、好ましくは水酸化カリウム又はオクタン酸スズ等のシロキサン縮合触媒の存在下で、還流させながら約2時間2つの成分の混合物を加熱することによって、式SiO
4/2を有する四官能性シロキサン単位及び式R
3SiO
1/2を有する一官能性シロキサン単位を含有する樹脂を、ヒドロキシル含有ポリオキシアルキレンポリマーと反応させることによって得ることもできる。
【0043】
T単位及び/又はQ単位を含有する分枝状オルガノポリシロキサンは、任意の架橋の必要なく分岐する。しかし、これらは、更に分岐を導入するために部分的に架橋してもよい。例えば、エチレン性不飽和基を含有するポリエーテルと反応させる前に、Si−H基を含有するT分岐又はQ分岐オルガノポリシロキサンを、少量の式CH
2=CR
3−Y−CR
3=CH
2(式中、各R
3は、水素又は1〜3個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Yは、加水分解性結合を含有しない有機又はオルガノシロキサン化合物を表す)の化合物と反応させてよく、両反応は、ヒドロシリル化条件下で実施される。
【0044】
しかし、調製される分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、好ましくは、25℃で50000mPa.s未満、より好ましくは30000mPa.s未満の粘度を有する。分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、例えば、25℃で100mPa.s〜25000mPa.s未満の範囲の粘度を有し得る。
【0045】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物、又は反応生成物として調製した分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物を、懸濁液を水切りする前に水中固体物質の懸濁液に添加する。一般に、オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、任意の便利な時点で添加し得る。分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、通常、水に分散可能であり、例えば、予形成水性懸濁液として添加し得る。このような分散液は、例えば、2〜50重量%の分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物(0.2〜50重量%の分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー自体)を含有し得る。あるいは、未希釈分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物を、洗浄液等の液体媒体又はスラリーに添加してもよい。
【0046】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、様々な業界及び方法において固体物質の懸濁液の水切れ速度を改良する。
【0047】
例えば、水性スラリー中の木材パルプを洗浄し、水切りし、洗浄された木材パルプスラリーを乾燥させることによって洗浄された乾燥木材パルプを製造するプロセスでは、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、洗浄前に木材パルプ又は洗浄媒体に添加してもよく、洗浄工程で撹拌する前に木材パルプと洗浄液との混合物に添加してもよく、洗浄後且つ水切
り前に添加してもよい。
【0048】
水性洗剤溶液中で織物材料を洗浄し、洗浄された織物材料を水ですすぐことを含む洗濯プロセスでは、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、洗濯プロセスの最初に織物を洗浄するために用いられる水性洗剤溶液に添加してもよく、洗濯プロセスのすすぎ工程の最初にすすぎ水に添加してもよい。
【0049】
石炭洗浄プロセスでは、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、石炭洗浄に用いられる水に添加してもよく、洗浄中に生じる微細な石炭の懸濁液に添加してもよい。
【0050】
下水処理では、好ましくは水性分散液の形態の分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、沈降タンクに供給するときに汚泥に添加してよい。
【0051】
反応生成物として調製した分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、懸濁している固体物質の重量に基づいて0.01〜5000百万分率の濃度で固体物質の懸濁液に添加してよい。本発明者らは、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、懸濁している固体物質の重量に基づいて、0.01〜50百万分率の分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物(これは、0.001〜50百万分率の分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー自体と同程度に低濃度であり得る)等の非常に低濃度でさえも水切れの改良に有効である。
【0052】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、望ましい場合、別の流体シリコーン、例えば、ポリジメチルシロキサン流体と混合してもよい。このような流体シリコーンは、例えば、25℃で2E−5〜0.02m
2/s(20〜20000cSt)の範囲の粘度を有し得る。流体シリコーンは、メチル以外のSi結合基、例えば、他のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又はシラノール基を含有し得る。流体シリコーンは、用いられる場合、例えば、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーに基づいて1〜200重量%で存在し得る。
【0053】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、その中に分散している固体物質、例えば、超微粒子状シリカを有し得るが、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、その中に任意の分散している固体のない水切れの改良に有効である。
【0054】
分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー水切れ助剤を他の添加剤と併用してもよい。例えば、木材パルプを洗浄するためのプロセスにおいて、それを消泡剤と併用してもよい。消泡剤は、例えば、分枝状ポリジメチルシロキサン流体又はメチルアラルキルシロキサン単位を含有するポリジオルガノシロキサンであり得る。分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、消泡剤性能を改良してもよく、しなくてもよく、消泡添加剤の非存在下でさえも若干の発泡阻害特性を有し得る。しかし、分枝状オルガノポリシロキサン構造を含むオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、発泡阻害特性を有しているかどうかにかかわらず非分岐オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーに比べて懸濁液の水切れを改良するか、又は添加される消泡剤の発泡阻害特性を改良する。この改良された水切れ性能は、分枝状シリコーンポリエーテルの脱泡及び消泡能とは無関係である。
【0055】
消泡剤の不在下で用いられる場合、好ましい濃度は、例えば、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーをパルプ洗浄で用いるときの木材パルプ繊維の重量に基づいて、0.1〜100百万分率の調製した分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物の範囲内であり得る。洗濯プロセス又は織物製造プロセスにおける織物の水切れ改良において分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物を用いる場合、より高い濃度、例えば、最大5000百万分率を用いてもよい。消泡剤と共に用いる場合、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物は、例えば、懸濁している固体物質の重量に基づいて、消泡剤組成物の0.5〜10%として、及び0.05〜10百万分率の分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー組成物で添加し得る。これら非常に低濃度でさえも、分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、非分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーを含有する消泡組成物に比べて水切れを改良する。
【0056】
パルプ及び紙用途では、水切れの改良により、淡水の消費及び乾燥エネルギーを低減することができる。木材パルプを製造するための化学プロセスは、例えば水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムを含有する水性蒸解液中で木材チップを加熱して第1の木材パルプスラリーを形成する工程と、スクリーン上に木材パルプスラリーを堆積させて初期パルプ層を形成する工程と、このように堆積させた初期パルプ層を、例えば苛性ソーダ及び脂肪酸を含有する水性洗浄液で洗浄して第2の木材パルプスラリーを形成する工程と、この洗浄された木材パルプスラリーを水切
り及び乾燥する工程とを含む。本発明者らは、水切
り前の洗浄工程で分枝状オルガノポリシロキサン構造を含むオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーを水性木材パルプスラリーに添加すると、木材パルプスラリーの水切れ速度が上昇し、スラリーの水切
り及び乾燥で用いられる総エネルギーが減少することを見出した。分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、水切
り前の洗浄工程における任意の段階で添加し得る。例えば、洗浄工程に入るパルプに添加してもよく、水性洗剤液に添加してもよく、又は水切
り前の洗浄された木材パルプスラリーに添加してもよい。パルプ洗浄プロセスにおける水切れが改良されると、必要とする漂白用化学物質が少ないより清浄なパルプが得られ、それに加えて、淡水の消費及び乾燥エネルギーが減少する。加熱後且つ水切
り前に分枝状オルガノポリシロキサン構造を含むオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーを第1の水性木材パルプスラリーに添加したときも、後続の洗浄工程における洗浄された木材パルプ層を通じた洗浄液の水切
りが若干改良される。
【0057】
水切れの改良は、時間に対する水切れ速度の上昇、又は一定時間水切
りした後の固体物質の稠度上昇として測定することができる。例えば、懸濁液から除去される濾液の重量、又は分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーが添加されているスラリーから、堆積しているパルプ層を通じて洗浄される濾液の重量を連続的に測定し、時間に対してプロットしてよく、水切れ速度は、時間に対する濾液の重量のグラフの勾配である。あるいは、一定時間水切りした後の湿潤固体の重量を測定してもよく、湿潤固体の重量が少ないと、湿潤固体残渣の稠度が高く、水切れが改良されたことを示す。いずれかの測定によって、分枝状オルガノポリシロキサン構造を含むオルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーは、非分枝状オルガノポリシロキサンポリアルキレンオキシドコポリマーに比べて懸濁液の水切れを改良する。
【0058】
本発明を以下の実施例によって説明し、実施例において部及び百分率は、特に指定しない限り重量によるものであり、粘度は25℃で測定される。実施例は、添付図面の
図1を参照して説明するが、これは、各実施例における水切れ試験中に時間に対する濾液の重量をプロットしたグラフである。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
式MD
108D
H10M(式中、Mは(CH
3)
3Si−基を表し、Dは、(CH
3)
2SiOシロキサン単位を表し、D
Hは、(CH
3)HSiOシロキサン単位を表す)のSi−H官能性オルガノポリシロキサン1モルを、約150シロキサン単位の重合度を有する、粘度3.5E−4m
2/s(350cSt)のビニル末端ポリジメチルシロキサン0.27モルと、塩化白金酸触媒の存在下で1時間40℃にて反応させて、部分的架橋によって分岐しているオルガノポリシロキサンを得た。この分枝状オルガノポリシロキサンを、式CH
2=CH−CH
2−O−(C
2H
4O)
18−(C
3H
6O)
18−Hのアリルポリグリコールエーテル15モルと、酢酸ナトリウム及びイソプロパノールの存在下で80℃にて、Si−Hの反応速度をモニタリングしながら反応させて、溶媒を除去した後の粘度が20000mPa.sである分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを得た。分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを水で希釈して、10%水性分散液を形成した。
【0060】
パルプ製造工場からサンプリングしたパルプスラリーと、パルプ洗浄プロセス液をシミュレートするために用いられる2.75%苛性ソーダ及び0.25%脂肪酸を含有する溶液とから、稠度3.5%のパルプ分散液を調製した。パルプ洗浄機に入るパルプスラリーをシミュレートするこの分散液を80℃で12時間保持して、パルプをコンディショニングした。上で調製した分枝状シリコーンポリエーテルの10%水性分散液5mgを、このパルプ分散液800gに混合した。パルプ分散液を40秒間真空下で増粘し、パルプ洗浄プロセス液をシミュレートするために用いられる2.75%苛性ソーダ及び0.25%脂肪酸を含有する溶液600mLを、パルプマット上に添加し、80℃で真空下にてそれを通して水切
りした。
以上
【0061】
連続記録計量機に濾液を回収した。時間に対して濾液の重量をプロットしてグラフを作成し、このグラフを
図1の線E1として示す。分かる通り、このグラフは、濾液の10%〜70%が回収された期間全体にわたって直線である。グラフの勾配を測定して、水切れ速度をg/秒で求め、これを表1に記録する。
【0062】
150秒間の真空後、水切れを止め、パルプ残渣の稠度を測定した。これを表1に記録する。
【0063】
比較例1
式MD
108D’
10M(式中、M及びDは、実施例1に記載の意味を有し、D’は、CH
3R’SiOシロキサン単位(式中、R’は、−(CH
2)
3−O−(C
2H
4O)
18−(C
3H
6O)
18−Hポリエーテル基である)を表す)の非分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを、パルプ分散液に添加し、実施例1に記載の通り試験した。非分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーは、2500mPa.sの粘度を有していた。結果を表1、及び
図1の線C1として示す。
【0064】
(実施例2)
式MD
13D
H5.5M(式中、Mは(CH
3)
3Si−基を表し、Dは、(CH
3)
2SiOシロキサン単位を表し、D
Hは、(CH
3)HSiOシロキサン単位を表す)のSi−H官能性オルガノポリシロキサン1モルを、約40シロキサン単位の重合度を有する、粘度6E−5m
2/s(60cSt)のビニル末端ポリジメチルシロキサン0.20モルと、実施例1の白金触媒の存在下で1時間40℃にて反応させて、部分的架橋によって分岐しているオルガノポリシロキサンを得た。この分枝状オルガノポリシロキサンを、式CH
2=CH−CH
2−O−(C
2H
4O)
9−(C
3H
6O)
27−Hのアリルポリグリコールエーテル8モルと、酢酸ナトリウム及びイソプロパノールの存在下で80℃にて、Si−Hの反応速度をモニタリングしながら反応させて、溶媒を除去した後の粘度が3000mPa.sである分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを得た。
【0065】
分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを水で希釈して、10%水性分散液を形成し、パルプ分散液に添加し、実施例1に記載の通り試験した。結果を
図1の線E2及び表1に示す。
【0066】
比較例2
式MD
13D’
5.5M(式中、M及びDは、実施例2に記載の意味を有し、D’は、CH
3R’SiOシロキサン単位(式中、R’は、−(CH
2)
3−O−(C
2H
4O)
9−(C
3H
6O)
27−Hポリエーテル基である)を表す)の非分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを、パルプ分散液に添加し、実施例1に記載の通り試験した。結果を
図1の線C2及び表1に示す。
【0067】
(実施例3)
平均式MT
1.9D
21.2D
H5.3M(式中、M、D、及びD
Hは、実施例1に記載の意味を有し、Tは、CH
3SiO
3/2シロキサン単位である)の分枝状ポリシロキサンを、次の式、CH
2=CH−CH
2−O−(C
2H
4O)
9−(C
3H
6O)
27−Hの不飽和ポリエーテルと、実施例1の白金触媒、酢酸ナトリウム、及びイソプロパノールの存在下で、Si−Hの反応速度をモニタリングしながら80℃で反応させて、溶媒を除去した後の粘度が5600mPa.sの分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを得た。
【0068】
分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを水で希釈して、10%水性分散液を形成し、パルプ分散液に添加し、実施例1に記載の通り試験した。結果を
図1の線E3及び表1に示す。
【0069】
(実施例4)
用いたアリルポリグリコールエーテルが、実施例1で用いた通り式CH
2=CH−CH
2−O−(C
2H
4O)
18−(C
3H
6O)
18−Hを有していたことを除いて、実施例2を繰り返した。生成された分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを水で希釈し、実施例1に記載の通り試験した。結果を
図1の線E4及び表1に示す。
【0070】
(実施例5)
実施例2のSi−H官能性オルガノポリシロキサン1モルを、実施例1で用いた粘度3.5E−4m
2/s(350cSt)のビニル末端ポリジメチルシロキサン0.20モルと、実施例1の白金触媒の存在下で1時間40℃にて反応させて、部分的架橋によって分岐しているオルガノポリシロキサンを得た。この分枝状オルガノポリシロキサンを、式CH
2=CH−CH
2−O−(C
2H
4O)
9−(C
3H
6O)
27−Hのアリルポリグリコールエーテル8モルと、酢酸ナトリウム及びイソプロパノールの存在下で、Si−Hの反応速度をモニタリングしながら80℃で反応させて、溶媒を除去した後の粘度が2400mPa.sである分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを得た。生成された分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを水で希釈し、実施例1に記載の通り試験した。結果を
図1の線E5及び表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
図1及び表1から分かる通り、実施例1の分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーは、比較例1の非分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーよりもパルプ分散液の水切れが実質的に優れており、これらは、両方共、水切れ速度によって測定され、パルプ残渣の稠度によって測定した。同様に、実施例2の分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーは、両測定によって比較例2の非分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーよりもパルプ分散液の水切れが実質的に優れている。
【0073】
また、
図1及び表1から分かる通り、ポリオキシプロピレンリッチなポリエーテル鎖を含有する分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーは、ポリエーテル基が同量のポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンを含有している分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーよりも水切れが優れている。実施例5の分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーは、実施例1の分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーよりもパルプ分散液の水切れ速度が実質的に優れている。同様に、実施例2の分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーは、実施例4の分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーよりもパルプ分散液の水切れ速度が実質的に優れている。
【0074】
(実施例6)
約4.4の平均Dpを有するポリ(メチルヒドロジェン)環状シロキサン6モル及び実施例1で用いた150の平均重合度を有する、粘度3.5E−4m
2/s(350cSt)のビニル末端ポリジメチルシロキサン1モルとを、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体及びトルエンの存在下で2.5時間50℃で反応させて、部分的架橋によって分岐しているオルガノポリシロキサンを得た。95℃でオルガノポリシロキサン、未反応ポリ(メチルヒドロジェン)環状シロキサン及びトルエンを除去し、冷却した後、0.006モルのマレイン酸ジアリルを添加した。この分枝状オルガノポリシロキサンは、滴定によって測定したとき0.072重量%のSiH濃度(HとしてのSi−H)を有していた。それを、実施例1の白金触媒、酢酸ナトリウム、及びイソプロパノールの存在下で、式CH
2=CH−CH
2−O−(C
2H
4O)
9−(C
3H
6O)
27−H(式中、Vi基/SiH基のモル比は1.2であった)のアリルポリグリコールエーテルと、80℃で4時間反応させた。溶媒を除去した後、粘度13800mPa.sの分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーが得られた。
【0075】
生成された分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーを水で希釈し、実施例1に記載の通り試験した。実施例6の分枝状シリコーンポリエーテルコポリマーについて得られた水切れプロファイルは、
図1に示すプロファイルE4に類似していた。