特許第6117209号(P6117209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117209複数のアブレーションモードを備えたアブレーション装置及び同アブレーション装置を含むシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117209
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】複数のアブレーションモードを備えたアブレーション装置及び同アブレーション装置を含むシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   A61B18/14
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-530786(P2014-530786)
(86)(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-531244(P2014-531244A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012055155
(87)【国際公開番号】WO2013040201
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年6月22日
(31)【優先権主張番号】61/534,590
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニアム、ラージ
(72)【発明者】
【氏名】コブリッシュ、ジョセフ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】トゥン、ザヤ
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴィー、ガイ アール.
(72)【発明者】
【氏名】カオ、ミンチャウ エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】スパークス、カート ディ.
【審査官】 槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−528039(JP,A)
【文献】 米国特許第06640120(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体組織を焼灼するためのシステムであって、前記システムは、
第1位置と第2位置との間で作動可能な切替機構を備えたRF発生装置と、
電気伝導性流体の供給物を含む流体源と、
アブレーション装置と、を備え、
前記アブレーション装置は、
基端側区域、先端側区域および少なくとも1つの流体管腔、を有する長尺状シャフトと、
前記シャフトの先端側区域に接続された膨張可能なバルーンであって、該バルーンを潰れた状態と拡張状態との間で作動させるために、前記流体源と流体が流れるように連通した内部区域を備える、膨張可能なバルーンと、
前記バルーンの内部空間内に配置されるとともにRF発生装置に電気的に接続された第1電極であって、前記第1位置において作動する場合に、バルーンを介して第1RF電界を体組織に供給するように構成されている、第1電極と、
前記長尺状シャフトの先端部分に直接結合するように接続されるとともにRF発生装置に電気的に接続された第2電極であって、前記第2位置において作動する場合に、第2RF電界を組織に直接供給するように構成されている、第2電極と、を含む、システム。
【請求項2】
前記バルーンは、疎水性ポリマー材料を含む基端側バルーン区域と、親水性ポリマー材料を含む先端側バルーン区域とを有する複合構造を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記拡張状態において、前記バルーンは円錐状に形成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記バルーンの先端側区域は陥入している、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記バルーンの先端側区域は半透過性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記バルーンの厚さはバルーンの長さに沿って基端側バルーン区域から先端側バルーン区域に向かって漸減する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記バルーンは多層構造を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記バルーンを潰れた状態に付勢するように構成された、ばね作動プランジャアセンブリをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
体組織を治療するためのアブレーション装置において、前記装置は、
基端側区域、先端側区域、および電気伝導性流体を受容するように構成された少なくとも1つの流体管腔、を有する長尺状シャフトと、
前記長尺状シャフトの先端側区域に接続された膨張可能なバルーンであって、該バルーンを潰れた状態と拡張状態との間で作動させるために、少なくとも1つの流体管腔と流体が流れるように連通した内部区域を備える、膨張可能なバルーンと、
前記バルーンの内部空間内に位置する少なくとも1つの電極であって、RF電界を前記バルーンを介して該バルーンに接触した体組織に伝達するように構成されている、少なくとも1つの電極と、
を備え、
記アブレーション装置の先端側区域に備えられた前記バルーンは、陥入している先端側区域を有するように構成されており、前記陥入している先端側区域は、前記バルーンの内部空間内に位置する電極から該バルーンを介して該バルーンに接触した体組織に伝達されるRF電界を、前記バルーンの先端側区域に向けて指向して伝達するように構成されている、アブレーション装置。
【請求項10】
前記バルーンは、疎水性ポリマー材料を含む基端側バルーン区域と、親水性ポリマー材料を含む先端側バルーン区域とを有する複合構造を備える、請求項9に記載のアブレーション装置。
【請求項11】
前記拡張状態において、前記バルーンは円錐状に形成されている、請求項9に記載のアブレーション装置。
【請求項12】
前記バルーンの先端側区域は半透過性である、請求項9に記載のアブレーション装置。
【請求項13】
前記バルーンの厚さはバルーンの長さに沿って基端側バルーン区域から先端側バルーン区域に向かって漸減する、請求項9に記載のアブレーション装置。
【請求項14】
前記バルーンは多層構造を備える、請求項9に記載のアブレーション装置。
【請求項15】
前記バルーンを潰れた状態に付勢するように構成された、ばね作動プランジャアセンブリをさらに備える、請求項9に記載のアブレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概してアブレーション装置に関する。より具体的には、本開示は、体組織において高周波アブレーション治療(radio−frequency ablation therapy)を実施するためのイオン伝導性バルーンを備えたアブレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心律動異常の治療は、時に、心室または心臓に通じる血管もしくは心臓から通じる血管のうちの1つに挿入されたアブレーションカテーテルと併せて実施される。心房細動の治療において、例えば、多数の電極を装備した高周波(RF)アブレーションカテーテルを、組織に沿って1箇所以上の焼灼点(ablation points)を形成するために、心臓組織と接触させることができる。アブレーションの間、RF発生装置は前記電極に電気エネルギーを供給し、組織において電界を生成する。この電界から生じる熱は、電気的インパルスが前記組織を通って伝導されるのを阻止し、かつ心臓内の適切な電気的経路を通る電気的インパルスの正常な伝導を促進するように機能する制御された損傷部(lesion)を形成する。
【0003】
特定のカテーテルアブレーション手順において、治療すべき組織を電気的に隔離する(electrically isolate)ことが困難な場合がある。例えば、発作性心房細動の治療においては、組織と直接接触するアブレーション電極を有するアブレーションカテーテルを用いて肺静脈を隔離することは、多くの場合、回りくどく、多大な時間を要する。さらに、いくつかのアブレーション電極によって形成されたアブレーションは、組織にて脱水を引き起こすことがあり、これは損傷部が治癒する際に瘢痕および石灰化を生じ得る。焼灼点の離散的性質により、焼灼線(ablation line)内に、不整脈の点を開始し続け得る電気伝導性組織の小さなギャップを残してしまう可能性もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、概して、体組織において高周波アブレーション治療を実施するためのイオン伝導性バルーンを備えたアブレーション装置に関する。
実施例1では、体組織を治療するためのアブレーション装置は、基端側区域、先端側区域、および電気伝導性流体を受容するように構成された少なくとも1つの流体管腔、を有する長尺状シャフトと、該シャフトの先端側区域に接続された膨張可能なバルーンであって、該バルーンは、該バルーンを潰れた状態(collapsed state)と拡張状態との間で作動させるために、少なくとも1つの流体管腔と流体が流れるように連通した内部区域を備え、かつ該バルーンは、第1ポリマー材料を含む基端側バルーン区域と、第1材料とは異なる第2ポリマー材料を含む先端側バルーン区域とを有する複合構造を備える、バルーンと、該バルーンの内部空間内に位置する少なくとも1つの電極と、を備える。
【0005】
実施例2では、実施例1に従ったアブレーション装置において、第1ポリマー材料は疎水性ポリマーである。
実施例3では、実施例1乃至2のいずれかに従ったアブレーション装置において、第2ポリマー材料は親水性ポリマーである。
【0006】
実施例4では、実施例1乃至3のいずれかに従ったアブレーション装置は、該装置を介して流体を再循環させるための少なくとも1つの付加的な流体管腔をさらに備える。
実施例5では、実施例1乃至4のいずれかに従ったアブレーション装置において、拡張状態にあるとき、バルーンは円錐状に形成されている。
【0007】
実施例6では、実施例1乃至5のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンの先端側区域は陥入している。
実施例7では、実施例1乃至6のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンの先端側区域は半透過性である。
【0008】
実施例8では、実施例1乃至7のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンの厚さはバルーンの長さに沿って基端側バルーン区域から先端側バルーン区域に向かって漸減する(taper)。
【0009】
実施例9では、実施例1乃至8のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンは多層構造を備える。
実施例10では、実施例1乃至9のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンの先端側区域に接続された温度感知要素をさらに備える。
【0010】
実施例11では、実施例1乃至10のいずれかに従ったアブレーション装置は、バルーンの先端側区域に接続された少なくとも1つの心電図センサーをさらに備える。
実施例12では、実施例1乃至11のいずれかに従ったアブレーション装置は、バルーンを潰れた状態に付勢するように構成された、ばね作動プランジャアセンブリをさらに備える。
【0011】
実施例13では、実施例12に従ったアブレーション装置において、プランジャアセンブリは、プランジャ機構と、プランジャ機構をバルーンに対して付勢するように構成されたばねとを備える。
【0012】
実施例14では、実施例13に従ったアブレーション装置において、プランジャ機構は、プランジャ軸と、非外傷性チップとを備える。
実施例15では、実施例14に従ったアブレーション装置において、プランジャ軸は、カテーテルシャフトおよび電極内に摺動可能に配置されている。
【0013】
実施例16では、体組織を治療するためのアブレーション装置は、基端側区域、先端側区域、および電気伝導性流体を受容するように構成された少なくとも1つの流体管腔、を有する長尺状シャフトと、該シャフトの先端側区域に接続された膨張可能なバルーンであって、該バルーンは、該バルーンを潰れた状態と拡張状態との間で作動させるために、少なくとも1つの流体管腔と流体が流れるように連通した内部区域を備える、バルーンと、該バルーンの内部空間内に位置する少なくとも1つの電極と、該バルーンを潰れた状態に付勢するように構成されたばね機構と、を有する。
【0014】
実施例17では、アブレーションカテーテルのバルーンを形成する方法において、該バルーンは基端側区域および先端側区域を有し、該方法は、バルーンの基端側区域をマスクすることと、バルーンの先端側区域を電離放射線源によって照射することと、バルーンの先端側区域を通る複数のミクロ細孔を形成するために、バルーンをエッチングすることと、バルーンをカテーテル上に固定することと、を含む。
【0015】
実施例18では、実施例17に従った方法において、電離放射線源はアルゴンイオン源を備える。
実施例19では、実施例17乃至18のいずれかに従った方法において、バルーンの基端側区域は疎水性ポリマーを含み、かつバルーンの先端側区域は親水性ポリマーを含む。
【0016】
実施例20では、実施例17乃至19のいずれかに従った方法において、ミクロ細孔の細孔径は直径約0.1ミクロン(0.1μm)〜5ミクロン(5μm)である。
実施例21において、体組織を焼灼する(ablating)ためのシステムは、第1位置と第2位置との間で作動可能な切替機構を備えたRF発生装置と、電気伝導性流体の供給物を含む流体源と、アブレーション装置とを備え、該アブレーション装置は、基端側区域、先端側区域および少なくとも1つの流体管腔、を有する長尺状シャフトと、該シャフトの先端側区域に接続された膨張可能なバルーンであって、該バルーンは、該バルーンを潰れた状態と拡張状態との間で作動させるために、流体源と流体が流れるように連通した内部区域を備える、バルーンと、該バルーンの内部空間内に配置され、RF発生装置に電気的に接続された第1電極であって、該第1電極は、第1位置において作動する場合に、バルーンを介して第1RF電界を体組織に供給するように構成されている、第1電極と、長尺状シャフトの先端部分に接続され、RF発生装置に電気的に接続された第2電極であって、該第2電極は、第2位置において作動する場合に、第2RF電界を組織に直接供給するように構成されている、第2電極とを備える。
【0017】
実施例22では、実施例21に従ったシステムにおいて、バルーンは、疎水性ポリマー材料を含む基端側バルーン区域と、親水性ポリマー材料を含む先端側バルーン区域とを有する複合構造を備える。
【0018】
実施例23では、実施例21乃至22のいずれかに従ったシステムにおいて、拡張状態において、バルーンは円錐状に形成されている。
実施例24では、実施例21乃至23のいずれかに従ったシステムにおいて、バルーンの先端側区域は陥入している。
【0019】
実施例25では、実施例21乃至24のいずれかに従ったシステムにおいて、バルーンの先端側区域は半透過性である。
実施例26では、実施例21乃至25のいずれかに従ったシステムにおいて、バルーンの厚さはバルーンの長さに沿って基端側バルーン区域から先端側バルーン区域に向かって漸減する。
【0020】
実施例27では、実施例21乃至26のいずれかに従ったシステムにおいて、バルーンは多層構造を備える。
実施例28では、実施例21乃至27のいずれかに従ったシステムは、バルーンを潰れた状態に付勢するように構成された、ばね作動プランジャアセンブリをさらに備える。
【0021】
実施例29において、患者の身体においてアブレーション治療を実施する方法は、アブレーション装置を標的体組織領域に進めることと、アブレーション装置は、長尺状シャフトに接続された膨張可能なバルーンと、バルーンの内部空間内に配置された第1電極と、バルーンの外部に配置された第2電極とを備えることと、バルーンの内部区域に電気伝導性流体を注入し、バルーンを身体内において潰れた状態から拡張状態に膨張させることと、第1電極に選択的にエネルギーを与えて、バルーン内部で第1RF電界を生成することと、第1RF電界を用いて、体組織内において少なくとも1つのアブレーション損傷部(ablation lesion)を形成することと、第2電極に選択的にエネルギーを与えて第2RF電界を生成することと、第2RF電界を用いて、体組織内において少なくとも1つのアブレーション損傷部を形成することとを含む。
【0022】
実施例30では、実施例29に従った方法は、切替機構を備えたRF発生装置をさらに備え、第1電極または第2電極に選択的にエネルギーを与えることは、切替機構を第1スイッチ位置と第2スイッチ位置との間で操作することを含む。
【0023】
実施例31では、実施例29乃至30のいずれかに従った方法において、第1RF電界を用いて体組織内において少なくとも1つのアブレーション損傷部を形成することは、長尺状シャフトより先端側の位置にある体組織に損傷部を形成することを含む。
【0024】
実施例32では、実施例29乃至31のいずれかに従った方法において、第1RF電界を用いて体組織に形成された少なくとも1つのアブレーション損傷部は、第2RF電界を用いて体組織に形成された少なくとも1つのアブレーション損傷部よりも大きい。
【0025】
実施例33では、体組織を治療するためのアブレーション装置は、基端側区域、先端側区域、および電気伝導性流体を受容するように構成された少なくとも1つの流体管腔、を有する長尺状シャフトと、シャフトの先端側区域に接続された膨張可能なバルーンであって、該バルーンは、該バルーンを潰れた状態と拡張状態との間で作動させるために、少なくとも1つの流体管腔と流体が流れるように連通した内部区域を備える、バルーンと、バルーンの内部空間内に位置する少なくとも1つの電極とを備え、少なくとも1つの電極は、RF電界をバルーンを介して、バルーンに接触した体組織に伝達するように構成されており、バルーンはRF電界をアブレーション装置の前端に先端側に向かう方向に伝達するように構成されている。
【0026】
実施例34では、実施例33に従ったアブレーション装置において、バルーンは、疎水性ポリマー材料を含む基端側バルーン区域と、親水性ポリマー材料を含む先端側バルーン区域とを有する複合構造を備える。
【0027】
実施例35では、実施例33乃至34のいずれかに従ったアブレーション装置において、前記拡張状態において、バルーンは円錐状に形成されている。
実施例36では、実施例33乃至35のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンの先端側区域は陥入している。
【0028】
実施例37では、実施例33乃至36のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンの先端側区域は半透過性である。
実施例38では、実施例33乃至37のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンの厚さはバルーンの長さに沿って基端側バルーン区域から先端側バルーン区域に向かって漸減する。
【0029】
実施例39では、実施例33乃至38のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンは多層構造を備える。
実施例40では、実施例33乃至39のいずれかに従ったアブレーション装置において、バルーンを潰れた状態に付勢するように構成された、ばね作動プランジャアセンブリをさらに備える。
【0030】
複数の実施形態が開示されているが、本発明のさらに他の実施形態は、当業者には、本発明の例示的実施形態を示して記載している以下の詳細な説明から明白になるであろう。従って、図面および詳細な説明は、本質的に実例であり、限定するものではないとみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】例示的実施形態に従ったアブレーション装置の概略図である。
図2】潰れた状態にある図1のアブレーション装置の先端側区域を示す部分断面図である。
図3】拡張状態にある図1のアブレーション装置の先端側区域を示す別の部分断面図である。
図4】アブレーション装置の多孔性バルーンを製造する方法の例を示す流れ図である。
図5】例示的実施形態に従った複合バルーンの例を示す斜視図である。
図6】別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置の先端側区域を示す部分断面図である。
図7】別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置の先端側区域を示す部分断面図である。
図8】別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置の先端側区域を示す部分断面図である。
図9】別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置の概略図である。
図10図9のアブレーション装置を用いて心臓アブレーション手順を実施する例示的方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は様々な修正および代替形態を受け入れるが、特定の実施形態が例として図面に示され、以下で詳細に説明される。しかしながら、本発明を記載した特定の実施形態に限定しないものとする。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるすべての変更物、均等物、および代替物に及ぶことを意図している。
【0033】
図1は、例示的実施形態に従ったアブレーション装置10の概略図である。図1に示すように、アブレーション装置10は、基端側区域14と、先端側区域16と、基端側区域14と先端側区域16との間においてシャフト12を通って延びる少なくとも1つの管腔18とを有する長尺状シャフト12を備える。シャフト12の先端側区域16に接続された膨張可能なアブレーションバルーン20を、体内(例えば心臓血管内)の標的位置において膨張させて、治療されるべき体組織と接触させることができる。いくつかの実施形態では、さらに下記で述べるように、バルーン20の内部に位置するRF電極アセンブリ22は、組織内に制御された損傷部を形成するために用いることができるRF電界を生成する。例えば、発作性心房細動の治療において、バルーン20およびRF電極22は、左心内の電気信号の異常な伝導を防止するために、肺静脈内における電気的隔離を行うために用いることができる。アブレーション装置10はまた、体内における他の種類の心律動異常および/または心疾患の治療のために用いることもできる。アブレーション装置10はまた、アブレーション装置によって一般に実施される他の症状の治療のために用いることもできる。
【0034】
シャフト12の基端側区域14に連結されたハンドル24は、アブレーションを実施するために、体内の標的部位に先端側区域16を操作および操縦するために臨床医によって使用され得る。いくつかの実施形態において、ハンドル24は、電気伝導性流体30の供給源と流体が流れるように連通した流体ポート26および弁28を備える。いくつかの実施形態において、例えば、流体30は、塩水または塩水溶液と、透視用造影剤とを含有し、それらは双方とも伝導性かつ生体適合性である。アブレーション手順中、加圧流体30は、流体管腔18を介してバルーン20の内部に送達され得、バルーン20を膨張させるとともに、電極22と、治療されるべき体組織と接触したバルーン20の部分との間に電気的経路を形成する。いくつかの実施形態において、バルーン20内の温度を制御するための閉ループ系の一部としてアブレーション装置10を介して流体30を再循環させるために、多数の流体ポートが備えられてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、アブレーション装置10は、体内においてシャフト12の先端側区域16を機械的に操縦するために用いることができるステアリング機構32をさらに備える。特定の実施形態において、例えば、ステアリング機構32は、シャフト12内に位置する多数のステアリングワイヤーと係合するように臨床医によって作動され得るハンドル24上のスライダまたはレバー機構を備える。装置10を体内の標的部位に送達する間、ステアリング機構32はシャフト12の先端側区域16を偏向させるために係合され得、臨床医が血管系を介して装置10をより良好に誘導することを可能にする。
【0036】
RF発生装置34は高周波エネルギーを電極アセンブリ22に供給するように構成されている。いくつかの実施形態において、装置10は、RF発生装置34によって供給されたアブレーションエネルギーが、電極アセンブリ22の1つの電極から電極アセンブリ22の別の電極へ流れるか、または装置10に沿った(例えばシャフト12の先端側区域16に沿った)異なる位置で提供される双極モードで作動するように構成されている。他の実施形態において、装置10は、不関電極(例えば電極パッチ)が患者に背中または他の外側皮膚領域に取り付けられ、RF発生装置34からのアブレーションエネルギーはアセンブリ22の1つの電極から前記不関電極に流れ込む単極モードで作動するように構成されている。
【0037】
図2は、図1のアブレーション装置10の先端側区域16をより詳細に示す部分断面図である。図2およびいくつかの実施形態においてさらに見られるように、電極アセンブリ22は、バルーン20の内部空間38内に位置する少なくとも1つのRF電極36を備える。RF電極36は、(例えば、電極36の両端において適当な接着剤を用いて)シャフト12の先端40に固定して取り付けられ、RF発生装置34に電気的に接続されている。図2の実施形態において、RF電極36は、白金のような適切に導電性である金属から製造された金属管状部材を備え、シャフト12内に位置する多数の導体ワイヤ(図示せず)を介してRF発生装置34に電気的に接続されている。しかしながら、RF電極36の形態は例示したものとは変更できる。例えば、RF電極36は、コイル、リング、平坦リボン、または他の適当な形状を有し得る。いくつかの実施形態において、電極アセンブリ22は、双極RFアブレーションシステムの一部として、または複数電極(multiple electrodes)を備えた単極システムの一部として、複数電極36を備えることができる。
【0038】
装置10は、加圧流体30をバルーン20の内部空間38に送るために少なくとも1本の流体管腔を備える。図2の実施形態では、装置10は、シャフト12を通り、さらにRF電極36の一部を通って長手方向に延びる中央流体管腔18を備える。いくつかの実施形態において、流体管腔18は、先端でRF電極36のまわりに周方向に配置された多数の膨張ポート42において終了する。いくつかの実施形態において、同一の流体管腔18はバルーン20の膨張および収縮の双方に用いることができる。他の実施形態では、バルーン20の膨張および収縮のために、別個の流体管腔が用いられる。そのような形態は、バルーン20内における制御された動作圧および温度の双方を維持するために、バルーン20内における流体の連続的な注入および排出を提供することができる。一実施形態において、シャフト12内の多数の流体管腔は、電気伝導性流体30がアブレーション手順の間に装置10を通って再循環されることを可能にし得る。流体30はまた、蛍光透視下におけるバルーン20の視覚化を容易にするために造影剤を含有することができる。
【0039】
図2の実施形態において、バルーン20は先端側シャフト端40またはその付近においてシャフト12の先端側区域16に接続されており、また身体を通る装置10の横断を容易にする低プロファイルを有する初期の潰れた位置(collapsed position)から、焼灼されるべき体組織と接触して係合する第2拡張位置に膨張可能である。特定の実施形態において、バルーン20は異なるポリマー材料から形成された複合構造を有する。前記構造は、RF電極36からのRFエネルギーをバルーン20の先端44またはその付近に位置する体組織に導き、集束させるのを助ける。一実施形態において、例えば、複合バルーン20は、疎水性ポリマーから製造された基端側非伝導性区域46aと、親水性ポリマーから製造された先端側伝導性区域46bとを備える。非伝導性区域46aのポリマーは非イオン伝導性であり得、また先端側区域46bのポリマーはイオン伝導性であり得る。いくつかの実施形態において、例えば、前記複合バルーン構造は、TECOPHILIC 60D−35(登録商標)のような疎水性ポリウレタン材料から製造された基端側区域46aと、TECOPHILIC 60D(登録商標)のような親水性ポリウレタン材料から製造された先端側区域46bとを備え得る。前記材料の双方とも、マサチューセッツ州ウォーバーン(Woburn)所在のサーメディクスポリマープロダクツ(Thermedics Polymer Products)から入手可能である。TECOPHILIC(登録商標)はポリエーテル系脂肪族ポリウレタンであり、バルーン20が膨張したときに、その平衡寸法を越えて実質的に伸張することができるように十分な弾性を示す。基端側区域および先端側区域46a,46bに異なる親水性特性を与えるために、他のポリマー材料を用いることもできる。本明細書において、「親水性」という用語は、ポリマーが、水溶液と接触した場合に、その構造的完全性を維持しながら、一定量の水を吸収することができることを指す。
【0040】
電気伝導性流体30によって膨張させた場合、複合バルーン20の先端側区域46bは、RF電極36にRFエネルギーが供給されると、流体30のイオン含有量(ionic content)により、水和によって伝導性にされる。結果として、電流は、流体30を介して、バルーン20の先端側区域46bに接触した組織に伝えられる。一部の例では、電流は、親水性であるバルーン材料の全領域を通過するが、疎水性または非伝導性であるバルーンの領域は通過しない。
【0041】
前記複合バルーン構造は多くの異なる技術を用いて形成することができる。例えば、バルーン20の異なる区域46a,46bは、所定の寸法および形状を有するマンドレル上においてバルーン20の各区域を別々に浸漬被覆することによって形成することができる。バルーン20はまた、他の技術を用いて、例えば中空型におけるスピンコーティングによって、または射出成形もしくはブロー成形によって、形成することもできる。透過性または半透過性の先端側区域を有する複合バルーン構造を構成する別の方法の例について、図4に関して本明細書にて更に検討する。
【0042】
いくつかの実施形態において、装置10は、バルーン20内の流体30の温度を感知するために用いることができる1つ以上の温度感知要素をさらに備える。特定の実施形態において、図2に示すように、熱電対またはサーミスターのような温度感知要素48は、先端側区域46bにおいてバルーン20の内面50に接続されている。他の実施形態では、温度感知要素48は先端側区域48においてバルーン20の外面52に接続されているか、またはバルーン20の別の部分もしくはシャフト12に接続されている。別の実施形態では、温度感知要素48はバルーン材料の内部に包み込まれている。いくつかの実施形態では、多数の位置において温度を感知するために、多数の温度感知要素がバルーンの内面および/または外面50,52、および/またはシャフト12に接続され得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、温度感知要素48は、バルーン20の内部区域38内に含まれている流体30の温度を感知し、身体の外部に位置する温度感知回路構成(例えば、温度計に基づく)に接続されている。アブレーション中、RF発生装置34はバルーン20に含まれている流体30の温度を所望温度に調整するように制御され得る。装置10を介して流体を再循環させるために多数の流体ポートが用いられるそれらの実施形態では、バルーン20内の流体を特定の温度で、または一定の温度範囲内に、維持するために、温度感知要素48からのフィードバックに基づいて、流体の流量も制御され得る。様々な実施形態において、温度センサーは、バルーンの外面上および/またはバルーンの壁内に位置する。そのような形態は、アブレーションを受ける組織の温度を測定することができる。本明細書において参照するこれらの実施形態またはその他の実施形態において、アブレーション治療の強度(例えば電力)は、アブレーションを受ける組織の温度を制限するために、測定した温度に基づいて自動的に調節され得る。そのような形態は、そうでない場合には前記温度が100℃以上に達したときに蒸気に変わる組織中の水によって組織中に小さなガス破裂(gaseous rupture)を生じ得るスチームポップからの保護を提供することができる。
【0044】
心臓またはその付近の電気的活動を感知するために、いくつかの実施形態では、バルーン20に接続された1つ以上の心電図センサーを用いることもできる。図2の実施形態において、例えば、心電図センサー54は先端側区域46bにおいてバルーン20の内面50に接続され、臨床医が標的アブレーション部位における任意の電気的活動の存在について監視することを可能にする。他の実施形態において、心電図センサー54は、先端側区域46においてバルーン20の外面52に接続されるか、またはバルーン20もしくはシャフト12の別の部分に接続される。別の実施形態において、心電図センサー52はバルーン材料の内部に包み込まれている。いくつかの実施形態では、複数の心電図センサーは、複数の位置における電気的活動を感知するために、バルーン20および/またはシャフト12に接続され、かつ/またはそれらの中に包み込まれ得る。
【0045】
ばね作動プランジャアセンブリ56は、所望の標的組織位置でバルーン20を膨張させる前に身体内を通る装置10の送達を容易にすべく、バルーン20を潰れた低プロファイル位置に維持するために用いられ得る。図2の実施形態において、アセンブリ56は、プランジャ機構58と、ばね60とを備える。ばね60は、RF電極36より基端側のシャフト12の内部に位置し、プランジャ機構58をバルーン20の先端44に向かって先端方向に機械的に付勢し、よってバルーン20を膨張するまで伸長位置において維持するように構成されている。
【0046】
いくつかの実施形態において、プランジャ機構58は、バルーン20の内部区域38内およびRF電極36の一部を通って摺動可能に配置されたプランジャ軸62を備える。プランジャ軸62の先端は、非外傷性チップ64を備える。非外傷性チップ64は、プランジャ機構58が先端方向に完全に係合されたときに、バルーン20の先端44と接触して係合し、示したようにバルーン20を潰して低プロファイル位置をとらせるように構成されている。チップ64の形状は先端44においてバルーン20の形状に一致するように湾曲している。プランジャ軸62の基端はプランジャ封止体66に接続されており、プランジャ封止体66は、ばね60がプランジャ軸62と係合する表面を提供する。ばね60の基端側のシャフト12の内部に位置する肩部68は、ばね60が圧縮されたときに、ばね60の基端方向の移動を防止する基端側の止め具を提供する。
【0047】
図3は、第2の完全拡張位置にあるバルーン20を示している図1のアブレーション装置10の別の部分断面図である。図3においてさらに見られるように、加圧流体30がバルーン20の内部区域38に注入されると、プランジャ封止体66の表面に対して付与される流体圧力は、ばね60によって提供されるばねの付勢に打ち勝って、ばね60をシャフト内部において第2圧縮位置へ移動させるように構成されている。バルーン20が膨張すると、バルーン20の内部区域38内の圧力は、プランジャアセンブリ56を基端方向に押圧する。結果として、プランジャ軸62は、シャフト内部に基端方向に引き込まれ、バルーン20の先端44から非外傷性チップ64を離脱させる。
【0048】
チップ64がバルーン20の先端44から離脱した場合、図3に示すように、バルーン20はその第2拡張位置に拡張するように構成されている。いくつかの実施形態において、膨張したバルーン20の形状は、バルーン20の基端側区域46aが先端側区域46bのそれとは異なるプロファイルおよび形状を有するように、その長さに沿って変化し得る。図3の実施形態では、例えば、膨張したバルーン20は、バルーン20の先端側伝導性区域46bがバルーン20の先端44に向かって比較的広い面積を露出するようなほぼ円錐形を有する。先端側区域46bの円錐形は、装置10の主に先端側に位置する体組織とバルーン20との接触を容易にする。一方、バルーン20の基端側区域46aは、比較的低プロファイルを有し、よって体組織と接触しない。先端側区域46bとは対照的に、基端側区域46aの疎水性材料もまたバルーン20内の流体30と導通(conduct with)しない。
【0049】
図3の例示的なバルーン20は、拡張時に円錐形を有するが、他の実施形態では、バルーン20は、膨張時に異なる形状および/またはプロファイルを有し得る。他のバルーン形状の例としては、楕円形、球形またはダンベルを含み得る。いくつかの実施形態において、バルーン形状は、米国特許第7,736,362号に記載されている自己固定型バルーン形状(self−anchoring balloon shapes)のうちの1つに類似し得る。上記特許文献の内容は、参照により、すべての目的について余すところなく本願に援用される。他のバルーン形態も可能である。
【0050】
いくつかの実施形態において、バルーン20の先端側区域46bは半透過性であり、バルーン20の内部区域38内の加圧流体30のうちの少なくとも一部が標的アブレーション部位またはその近くにおいて体内に滲み込むことを可能にする。いくつかの実施形態において、バルーン20の先端側区域46bは透過性であり、バルーン20の内部区域38内の加圧流体30が、標的アブレーション部位またはその近くにおいて体内に滲み込むことを可能にする。アブレーション中、この界面領域における電気伝導性流体の存在は、RF電極36によって発生した電界に対する電気的導管(electrical conduit)の形成を支援し、さらにアブレーション部位を冷却するように作用する。RFエネルギーがバルーン20の内側のRF電極36に適用されると、RFエネルギーはバルーン20から滲み出す電気伝導性流体によって、バルーン20と接触した組織に伝えられる。先端側区域46bの透過性または半透過性により、流体30内に含有される薬剤または医薬品の送達も可能となる。このように、バルーン20はまた、電気伝導性流体30中に1種以上の薬剤を導入し、前記薬剤がバルーン20を通過して組織内に入ることを可能にすることによって、薬物送達装置として作用してもよい。
【0051】
図4は、多孔性バルーンを製造する方法70の例を示す流れ図である。方法70は、概して、基端側非伝導性区域と、先端側伝導性区域とを有する複合バルーンを製造することによって、ブロック72において開始し得る。尚、いくつかの実施形態では、先端側区域が非伝導性である。特定の実施形態において、例えば、図2図3に示すような複合バルーン20は、浸漬被覆、スピンコーティング、射出成形またはブロー成形のような適当なプロセスを用いて製造することができる。複合バルーンを製造するための他の二次加工技術(fabricating techniques)も用いられ得る。
【0052】
1種以上のバルーン材料は、該バルーン材料を通るミクロ細孔を生成するさらなる処理工程を容易にするように選択され得る。いくつかの実施形態において、例えば、前記複合バルーンを生成するために用いられるワークピースは、ポリエチレンテレフタレート(PET)のような熱可塑性ポリマー樹脂から形成することができる。PETの熱特性および/または化学的特性により、バルーンの所望の引張強度および弾性特性を維持しながら、バルーンに対して後続の処理工程が実施されることを可能にする。
【0053】
複合バルーンが製造されたならば、バルーンの基端側非伝導性区域をマスクし(ブロック74)、バルーンの先端側(例えば、伝導性)区域に電離放射線源からのイオンを照射する(ブロック76)。一実施形態において、前記複合バルーンにアルゴンプラズマ供給源からのアルゴン原子を照射する。他の適当な電離放射線源を用いてバルーンの先端側区域にイオンを照射することもできる。
【0054】
照射したならば、前記バルーンの先端側区域に均一なミクロ細孔を生成するために、前記バルーンを一定期間にわたって水酸化ナトリウム(NaOH)エッチングプロセスに供する(ブロック78)。特定の実施形態において、例えば、前記バルーンをエッチング槽中に挿入し、所望サイズの細孔がバルーン材料を介して形成されるまで、約10〜15分間にわたって処理することができる。前記細孔径は、電離放射工程およびエッチング工程の継続時間、電離放射の強度およびエッチング液の濃度(strength)によって制御することができる。バルーン組成、バルーン厚さ、並びに他の特性のような他の要因もまた細孔径に影響を与え得る。このプロセスを用いて生成することができる細孔径の例は直径約0.1ミクロン(0.1μm)〜約5ミクロン(5μm)であり得るが、より大きいかまたはより小さい他の細孔径も企図される。例えば、いくつかの場合には、細孔は直径20ミクロン(20μm)以内であり得る。
【0055】
ミクロ細孔がバルーンの先端側区域に生成されたならば、バルーンをシャフト上に固定するために、付加的な加工工程を実施することができる(ブロック80)。一実施形態において、前記バルーンは、図2図3に示す例示的な実施形態に示されるそれと同様に、シャフトの先端へ取り付けられ得る。前記バルーンは、接着、熱接合、機械的結合、ねじ、ワインディング(winding)またはこれらの組合せを含む様々な方法で前記シャフトに取り付けられ得る。
【0056】
図5は、図4の方法70を用いて処理された複合バルーン20の例を示す斜視図である。図5において見られるように、バルーン20の先端側区域46bは複数のミクロ細孔82を備える。前記ミクロ細孔82は、先端側区域46bのその膨張状態における寸法および形状により、バルーン20の先端44から先端方向に、概して矢印84によって示した方向に、ほぼ向いている。電気伝導性流体の定常流がバルーン20の内部区域38に提供されると、前記流体30の少なくとも一部は、ミクロ細孔82を介して滲み出して、バルーン20の先端側に位置する体組織と接触する。バルーン20の基端側区域46aは実質的に非多孔性であり、よって基端側区域46aを介した加圧流体の流動を妨げる。
【0057】
図6は、別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置86の先端側区域を示す部分断面図である。アブレーション装置86は、膨張可能なアブレーションバルーン90に接続された長尺状シャフト88を備える。シャフト88の基端側区域(図示せず)は、電気伝導性流体源およびRF発生装置に接続されている。図6の実施形態において、シャフト88の先端側区域92はバルーン90の内部94を通って延び、バルーン内部94を介して流体を循環させるための多数の流体ポート96,98を備える。シャフト88内の第1管腔と流体が流れるように連通する第1流体ポート96は、電気伝導性流体を外部流体源からバルーン内部94へ送達するように構成されている。一方、シャフト88の帰還(return)流体管腔と流体が流れるように連通する第2流体ポート98は、バルーン内部94内の加熱された流体を、冷却のために患者の体外の位置に再循環させるための帰還ポートとして機能する。
【0058】
バルーン90の内部94に配置された電極アセンブリ100は、RF発生装置に電気的に接続されており、かつバルーン90に隣接して位置する組織内において制御された損傷部を生成するためにRF電界を生成するように構成されている。いくつかの実施形態において、図6に示すように、電極アセンブリ100は、バルーン内部94内に位置するシャフト88の一部の周りに延びるらせん形状を有する金属コイルRF電極102を備える。他の実施形態において、RF電極102は、管状部材、リング、平坦リボン、または他の適当な形状を備え得る。いくつかの実施形態において、電極アセンブリ100は、双極RFアブレーションシステムの一部として、または複数電極を備えた単極システムの一部として、複数電極102を備えることができる。
【0059】
図6の実施形態では、バルーン90の基端側区域112aは、長尺状シャフト88の先端側区域92に接続されている。一方、バルーン90の先端側区域112bは、長尺状シャフト88の先端108に接続されている。いくつかの実施形態では、図6に示すように、バルーン90の先端側区域112bは、バルーン90の一部をそれ自体の上に折り畳むか、または折り返して、バルーン90の先端106をシャフト先端108の内面に取り付けることによって形成された陥入形態を有する。バルーン90は、身体を通る装置86の横断を容易にする低プロファイルを有する、初期の潰れた位置から焼灼されるべき体組織と接触して係合する第2拡張位置に膨張可能である。いくつかの実施形態において、バルーン90は異なるポリマー材料から形成された複合構造を有する。前記構造は、RF電極100からのRFエネルギーをバルーン90の先端側区域112bまたはその付近に位置する体組織に導き、集束させることを助ける。一実施形態において、例えば、複合バルーン90は、疎水性ポリマーから製造された基端側非伝導性区域112aと、親水性ポリマーから製造された先端側伝導性区域112bとを備える。いくつかの実施形態において、例えば、前記複合バルーン構造は、TECOPHILIC 60D−35(登録商標)のような疎水性ポリウレタン材料から製造された基端側区域112aと、TECOPHILIC 60D(登録商標)のような親水性ポリウレタン材料から製造された先端側区域112bとを備え得る。基端側区域および先端側区域112a,112bに異なる親水性特性を与えるために、所望により他のポリマー材料を用いることもできる。
【0060】
電気伝導性流体による膨張時、RF電極102にRFエネルギーが供給されると、複合バルーン90の先端側区域112bは、前記流体のイオン含有量により、水和によって伝導性にされる。よって、電流は、前記流体を介して、バルーン90の先端側区域112bに接触した組織に伝えられる。膨張時、バルーン90の陥入形態はまた、RF電界をバルーン90の先端側区域112bに向けて指向するようにも作用する。
【0061】
アブレーション装置86は、バルーン90の表面内または前記表面上の流体の温度を感知するための1つ以上の温度センサー、および心臓またはその付近の電気的活動を感知するための1つ以上の心電図センサーを含む、他の実施形態に関して記載された1つ以上の機能をさらに備えることができる。装置86はまた、ばね作動プランジャアセンブリのような他の機能を備えることもできる。特定の実施形態において、バルーン90を透過性または半透過性にして、バルーン90の内部区域94内の加圧流体30のうちの少なくとも一部が、標的アブレーション部位またはその付近において身体内に滲み込むことを可能にする。
【0062】
図7は、別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置114の先端側区域を示す部分断面図である。アブレーション装置114は、膨張可能なアブレーションバルーン118に接続された長尺状シャフト116を備える。シャフト116の基端側区域は電気伝導性流体源およびRF発生装置に接続されている。図7の実施形態において、シャフト116の先端側区域120はバルーン118の内部122を通って延び、バルーン内部122を介して流体を循環させるために多数の流体ポート124,126を備える。シャフト116内の第1管腔と流体が流れるように連通する第1流体ポート124は、電気伝導性流体を外部流体源からバルーン内部122へ送達するように構成されている。一方、シャフト116内の帰還流体管腔と流体が流れるように連通する第2流体ポート126は、バルーン内部122内の加熱された流体を冷却のために患者の体外の位置に再循環させるための帰還ポートとして機能する。
【0063】
バルーン118の内部122に配置された電極アセンブリ128は、RF発生装置に電気的に接続されており、かつバルーン118に隣接して位置する組織内において制御された損傷部を生成するためにRF電界を生成するように構成されている。いくつかの実施形態において、図7に示すように、電極アセンブリ128は、バルーン内部122内に位置するシャフト116の一部の周りに延びるらせん形状を有する金属コイルRF電極130を備える。他の実施形態では、RF電極130は、管状部材、リング、平坦リボン、または他の適当な形状を備え得る。いくつかの実施形態において、電極アセンブリ128は、双極RFアブレーションシステムの一部として、または複数電極を備えた単極システムの一部として、複数電極130を備えることができる。
【0064】
図7の実施形態では、バルーン118の基端部分134は、長尺状シャフト118の先端側区域120に接続されている。バルーン118は、身体を通る装置114の横断を容易にする低プロファイルを有する、初期の潰れた位置から焼灼されるべき体組織と接触して係合する第2拡張位置に膨張可能である。いくつかの実施形態では、示したように、バルーン118の厚さは、基端側区域134aの厚さが先端側区域134bの厚さより大きくなるように、シャフト116とほぼ平行であるバルーン118の長さに沿って漸減し得る。特定の実施形態において、バルーン118の厚さは、基端側区域134aと先端側区域134bとの間でバルーン118の長さに沿って連続的に漸減する。一実施形態において、例えば、バルーン118は、バルーン118の基端側区域134aが長尺状シャフト116に付着している位置132またはその付近における約5ミル(0.005インチ)(0.127mm)〜15ミル(0.015インチ)(0.381mm)の厚さから、バルーン118の先端分136またはその付近における約0.5ミル(0.013mm)〜5ミル(0.127mm)の厚さに連続的に漸減し得る。
【0065】
他の実施形態において、バルーン118は、基端側区域134aの厚さが先端側区域134bの厚さより大きくなるように、バルーン118の長さに沿った1つ以上の個別の位置(discrete locations)において厚さが移行してもよい。一実施形態において、例えば、バルーン118の厚さは、バルーン118の長さに沿ったほぼ中間位置で、バルーン118の基端側部分134aにおける比較的厚い形態から、バルーン118の先端側区域134bの比較的薄い形態に移行し得る。バルーン118はまた、バルーン118の基端側区域134aおよび/または先端側区域136bに沿った複数の位置において厚さが段階的に移行してもよい。他のバルーン形態も可能である。
【0066】
バルーン118は、RF電極130によって生成された電磁場のバルーン材料を介して伝達および組織との接触を容易にする親水性ポリマーを含有し得る。いくつかの実施形態において、バルーン118は、バルーン118をバルーン118の基端側区域134aに沿った比較的疎水性の組成からバルーン118の先端側区域134bに沿った比較的親水性の組成に移行させるために複数の材料が用いられている複合構造を備える。いくつかの実施形態において、例えば、前記複合バルーン構造は、本明細書で議論したように、TECOPHILIC 60D−35(登録商標)のような疎水性ポリウレタン材料から製造された基端側区域134aと、TECOPHILIC 60D(登録商標)のような親水性ポリウレタン材料から製造された先端側区域134bとを備え得る。結果として生じる構造は、バルーン118の長さに沿って、材料組成および厚さの双方において移行する複合バルーン118である。アブレーション中、このバルーン118の長さに沿った厚さの減少(およびいくつかの実施形態では材料組成の変化)は、RF電極130によって生成される電界をより多くバルーン118の先端側区域134bに通過させ、臨床医がバルーン118の先端側に位置する体組織を標的とすることを可能にする。
【0067】
アブレーション装置114は、バルーン118の外面内または外面上における流体の温度を感知するための1つ以上の温度センサー、および/または心臓もしくはその付近における電気的活動を感知するための1つ以上の心電図センサーを含む、他の実施形態に関して本明細書において記載する1つ以上の機能をさらに備えることができる。装置114はまた、ばね作動プランジャアセンブリのような他の機能を備えることができる。特定の実施形態において、バルーン118を透過性または半透過性にして、バルーン118の内部区域122内の加圧流体のうちの少なくとも一部が、標的アブレーション部位またはその付近において身体内に滲み込むことを可能にすることもできる。
【0068】
図8は、別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置138の先端側区域を示す部分断面図である。アブレーション装置138は、膨張可能なアブレーションバルーン142に接続された長尺状シャフト140を備える。シャフト140の基端側区域は電気伝導性流体源およびRF発生装置に接続されている。図8の実施形態において、シャフト140の先端側区域144はバルーン142の内部146を通って延び、バルーン内部146を介して流体を循環させるために多数の流体ポート148,150を備える。シャフト140内の第1管腔と流体が流れるように連通する第1流体ポート148は、電気伝導性流体を外部流体源からバルーン内部146へ送達するように構成されている。一方、シャフト140内の帰還流体管腔と流体が流れるように連通する第2流体ポート150は、バルーン内部146内の加熱された流体を、冷却のために患者の体外の位置に再循環させるための帰還ポートとして機能する。
【0069】
バルーン142の内部146に配置された電極アセンブリ152は、RF発生装置に電気的に接続されており、かつバルーン142に隣接して位置する組織内において制御された損傷部を生成するためにRF電界を生成するように構成されている。いくつかの実施形態において、図8に示すように、電極アセンブリ152は、バルーン内部146内に位置するシャフト140の一部の周りに延びるらせん形状を有する金属コイルRF電極154を備える。他の実施形態において、RF電極154は、管状部材、リング、平坦リボン、または他の適当な形状を備え得る。いくつかの実施形態において、電極アセンブリ152は、双極RFアブレーションシステムの一部として、または複数電極を備えた単極システムの一部として、複数電極154を備えることができる。
【0070】
図8の実施形態では、バルーン142の基端部分156は、長尺状シャフト140の先端側区域144に接続されている。バルーン142は、身体を通る装置138の横断を容易にする低プロファイルを有する、初期の潰れた位置から、焼灼されるべき体組織と接触して係合する第2拡張位置に膨張可能である。いくつかの実施形態では、図8に示すように、バルーン142は、第1層158と第2層160とを有する多層構造を備える。バルーン142の第1層158は、バルーン142の基端側区域162aおよび先端側区域162bの双方に沿ってバルーン142の全表面領域にわたって延びる、親水性の水和可能なイオン伝導性材料層を備える。特定の実施形態において、例えば、第1層158は、TECOPHILIC 60D(登録商標)のような親水性ポリウレタン材料を含む。特定の実施形態において、第1層158の厚さは約1ミル(0.025mm)〜3ミル(0.076mm)である。
【0071】
いくつかの実施形態において、第1層158は、バルーン142の全長に沿って均一な厚さを有する。他の実施形態では、第1層158の厚さはバルーン142の長さに沿って、厚さが移行し得る。例えば、いくつかの実施形態において、バルーン142の第1層158は、バルーン142の基端側区域162aに沿って位置する第1層158の部分が先端側区域162bに沿って位置する第1層158の部分よりも厚くなるように、バルーン142の長さに沿って厚さが漸減し得る。第1層158の厚さは、バルーン142の長さに沿って、連続的に、または1つ以上の個別の位置において、漸減し得る。いくつかの実施形態において、第1層158の厚さは、バルーン142の基端部分156が長尺状シャフト140に付着している位置またはその付近における約3ミル(0.076mm)から、バルーン142の先端部分164またはその付近における約1ミル(0.025mm)の厚さに、厚さが移行し得る。
【0072】
バルーン142の第2層160は疎水性材料を含み、バルーン142の一部のみにわたって延びている。例えば、図8の実施形態では、第2層160はバルーン142の基端側区域162aのみに沿って位置する。いくつかの実施形態において、第2層160は、バルーン製造工程の間に第1層158上に噴霧被覆される疎水性ポリマーマスクからなる。第2層160を形成するために用いることができる疎水性材料の例は、TECOPHILIC 60D−35(登録商標)を含む。第2層160を形成するために、スパッタリング、接着または共押出しを含む他の技術を用いることもできる。
【0073】
図8の実施形態では、第2層160の厚さは、その長さに沿って連続的に漸減している。他の実施形態では、第2層160は、その長さに沿って1つ以上の個別の位置で厚さが減少する。いくつかの実施形態において、第2層160の厚さは、バルーン142の基端部分156が長尺状シャフト140に付着している位置またはその付近における約5ミル(0.127mm)から、第2層160が終了する位置または付近における約1ミル(0.025mm)の厚さの間で移行し得る。
【0074】
アブレーション中、バルーン142の第1層158上に疎水性第2層160が存在することにより、より多くのRF電極154によって生成された電界をバルーン142の先端側区域162bに通過させ、臨床医がバルーン142の先端側に位置する体組織を標的とすることを可能にする。アブレーション中のいくつかの場合において、バルーン142の第1層158上に疎水性の第2層160が存在することにより、RF電流はバルーンのマスクされていない親水性の先端側表面のみを通って集中させられ、均一に送達され、臨床医がバルーン142の先端側に位置する体組織を標的とすることを可能にする。
【0075】
アブレーション装置138は、バルーンの表面内または表面上における流体の温度を感知するための1つ以上の温度センサー、および/または心臓もしくはその付近における電気的活動を感知するための1つ以上の心電図センサーを含む、他の実施形態に関して記載した1つ以上の機能をさらに備えることができる。装置138はまた、ばね作動プランジャアセンブリのような他の機能を備えることもできる。特定の実施形態において、バルーン142を透過性または半透過性にして、バルーン142の内部区域146内の加圧流体のうちの少なくとも一部が、標的アブレーション部位またはその付近において身体内に滲み込むことを可能にすることもできる。
【0076】
図9は別の例示的実施形態に従ったアブレーション装置166の概略図である。アブレーション装置166は、基端側区域170と、先端側区域172と、基端側区域170と先端側区域172との間においてシャフト168を通って延びる少なくとも1つの管腔173とを有する長尺状シャフト168を備える。シャフト168の先端側区域172に接続された膨張可能なバルーン174を体内の標的位置において膨張させて、治療されるべき体組織と接触させることができる。図9の実施形態では、シャフト168の先端側区域172はバルーン170の内部176を通って延び、バルーン内部176を介して流体を循環させるために多数の流体ポート176,178を備える。シャフト168内の第1管腔と流体が流れるように連通する第1流体ポート178は、電気伝導性流体を外部流体源からバルーン内部176へ送達するように構成されている。一方、シャフト168内の帰還流体管腔と流体が流れるように連通する第2流体ポート180は、バルーン内部176内の加熱された流体を、冷却のために患者の体外の位置に再循環させるための帰還ポートとして機能する。
【0077】
バルーン174の内部176に配置された電極アセンブリ182は、RF発生装置34に電気的に接続されており、RF発生装置34は組織内において制御された損傷部を生成するためのRF電界を発生させるために用いられ得る。図9の実施形態において、電極アセンブリ182は第1電極184および第2電極186を備える。第1電極184は、バルーン内部176内に位置するシャフト168の一部の周りに延びるらせん形状を有する金属コイルRF電極を備える。他の実施形態において、第1電極184は、管状部材、リング、平坦リボン、または他の適当な形状にされた電極を備え得る。一方、第2電極186は長尺状シャフト168の先端部分188に接続され、かつバルーン174の外部に位置し、焼灼されるべき体組織と直接接触する。
【0078】
いくつかの実施形態において、RF発生装置34は、第1電極184または第2電極186のいずれかを選択的に作動させるためのスイッチ190を備える。一実施形態では、示したように、スイッチ190は、第1電極184に電気的に接続された第1電線192と、第2電極186に電気的に接続された第2電線194とを備える。アブレーション手順中、第1電極184と第2電極186との間で交互に切り替えができることにより、操作者が、バルーン174を介した伝導による比較的広い領域にわたるアブレーションの提供、または組織と直接接触し、バルーン174よりも小さな接触表面積を有する第2電極186による比較的小さな集束した領域にわたるアブレーションの提供との間で調整することを可能にする。
【0079】
図9の実施形態では、バルーン174の基端側区域196aは、長尺状シャフト168の先端側区域172に接続されている。一方、バルーン174の先端側区域196bは、長尺状シャフト168の先端188に接続されている。特定の実施形態において、バルーン166は異なるポリマー材料から形成された複合構造を有する。例えば、一実施形態において、複合バルーン166は、疎水性ポリマーから製造された基端側の非伝導性区域196aと、親水性ポリマーから製造された先端側の水和可能なイオン伝導性区域196bとを備える。いくつかの実施形態において、例えば、前記複合バルーン構造は、TECOPHILIC 60D−35(登録商標)のような疎水性ポリウレタン材料から製造された基端側区域196aと、TECOPHILIC 60D(登録商標)のような親水性ポリウレタン材料から製造された先端側区域196bとを備え得る。基端側区域および先端側区域196a,196bに異なる親水性特性を与えるために、他のポリマー材料を用いることができる。
【0080】
電気伝導性流体による膨張時、バルーン174の先端側区域196bは、第1RF電極184にRFエネルギーが供給されると、前記流体のイオン含有量により、水和によって伝導性にされる。結果として、電流は、流体を介して、バルーン174の先端側区域196bに接触した組織に伝えられる。
【0081】
アブレーション装置166は、バルーン−組織界面におけるバルーン内またはバルーンの表面上における流体の温度を感知するための1つ以上の温度センサー、および心臓またはその付近における電気的活動を感知するための1つ以上の心電図センサーを含む、他の実施形態に関して記載された1つ以上の機能をさらに含むことができる。装置166はまた、ばね作動プランジャアセンブリのような他の機能を備えることもできる。特定の実施形態において、バルーン174を透過性または半透過性にして、バルーン174の内部区域176内の加圧流体のうちの少なくとも一部が、標的アブレーション部位またはその付近において身体内に滲み込むことを可能にする。
【0082】
図10は、アブレーション装置を用いるアブレーション手順を実施する例示的な方法198の流れ図である。図10は、例えば、心臓の組織上でアブレーションを実施するために、図9のアブレーション装置166とともに用いられ得るいくつかの工程の例を表す。方法198は本明細書に記載されたアブレーション装置のうちのいずれを用いても実施することができ、また他の種類のアブレーション治療を実施するために用いることができる。一実施形態において、例えば、方法198はパーキンソン病のような神経学的障害を治療するために脳組織においてアブレーション治療を実施するために用いることができる。
【0083】
治療を実施するために、臨床医はアブレーション装置166をガイドカテーテルの管腔内に挿入し、アブレーション装置166を治療されるべき心臓またはその付近の領域に進める(ブロック200)。例えば、発作性心房細動の治療において、臨床医は、ガイドカテーテルおよびアブレーション装置を主たる静脈または主たる動脈(例えば大腿動脈)内に挿入し、そのアセンブリを血管系を介して治療されるべき心腔または心血管(例えば肺静脈)内の適所に進め得る。いくつかの実施形態において、ガイドカテーテル内またはアブレーション装置166自身内のステアリング機構を用いて、装置166の先端を所望の治療部位に対して適所に操縦することができる。
【0084】
適所に位置したら、次に電気伝導性流体をバルーン174に注入して、バルーン174を膨張させる(ブロック202)。必要により、次いでRF発生装置34上のスイッチ190を第1(すなわちバルーン)電極184を作動させるように設定して(ブロック204)、エネルギーを電極184から流体およびバルーン材料を介した伝導によってバルーン174の先端側伝導性区域196bへ流すことができる。次に、臨床医は、バルーン174の先端側区域196bを組織と接触させることによって、前記組織上に比較的広い損傷部を形成し得る(ブロック206)。
【0085】
先端側バルーン区域196bの寸法および形状は、性質が非常に均一であり、焼灼されるべき組織と直接接触した電極を用いるカテーテルにおいて生じ得る脱水または炭化した領域がない損傷部を生成する。いくつかの手順において、膨張したバルーン174の寸法および形状はまた、連続的な焼灼線が形成され、異常な電気伝導が完全に阻止されることを保証するために、重複した損傷部の形成を容易にすることもできる。先端側区域196bが多孔性でもあるそれらの実施形態では、バルーン174と体組織との間に電気的経路を形成するようにさらに機能する電気伝導性流体の定常流がアブレーション期間中維持され得る。
【0086】
アブレーション手順の間に、操作者が組織上に非常に小さい(pinpoint)損傷部を提供することを所望する場合には、スイッチ190を、第2電極186を用いて動作するように設定することができる(ブロック208)。設定されると、次にRF発生装置34からのエネルギーは、RFエネルギーを組織内に直接指向する第2(すなわちチップ)電極186に伝えられる。焼灼されるべき組織と接触した比較的大きな表面積を有する第1電極184とは対照的に、第2電極186はより小さく、集束したアブレーションを生成する(ブロック210)。特定の手順において、例えば、第2電極186は狭小な集束した焼灼点を生成するために用いることができるのに対して、第1電極184はより広い、集束していない焼灼点を生成するために用いることができる。電極184,186の各々の間で交互に切り替わるプロセスを、アブレーション手順が完了するまで、1回以上繰り返すことができる。
【0087】
検討した具体例としての実施形態に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および追加をなすことができる。例えば、上記に記載した実施形態は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態および記載した特徴のすべてを含んでいるとは限らない実施形態も包含する。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲内にあるすべてのそのような代替案、変更例および別例を、それらのすべての均等物と共に、包含するように意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10