特許第6117213号(P6117213)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117213導電性流体の質量流量又は体積流量の非接触式測定方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117213
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】導電性流体の質量流量又は体積流量の非接触式測定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/00 20060101AFI20170410BHJP
   G01F 1/56 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G01F1/00 W
   G01F1/56
【請求項の数】17
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-531250(P2014-531250)
(86)(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公表番号】特表2014-526704(P2014-526704A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】EP2012068685
(87)【国際公開番号】WO2013041694
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】102011114506.4
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514070890
【氏名又は名称】テヒニッシェ・ウニヴェルジテート・イルメナウ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】フレーリッヒ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】テス・アンドレ
【審査官】 山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−079810(JP,A)
【文献】 特開昭57−199917(JP,A)
【文献】 特開2005−283438(JP,A)
【文献】 特開平07−181195(JP,A)
【文献】 特公昭52−044214(JP,B1)
【文献】 特表2002−540414(JP,A)
【文献】 米国特許第06538433(US,B1)
【文献】 特開昭62−255872(JP,A)
【文献】 特開2009−168805(JP,A)
【文献】 特開昭51−87074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00
G01F 1/56 − 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロー位置で磁界を発生させて、その結果生じるローレンツ力を検出する、導電性流体の質量流量又は体積流量を非接触式に測定する方法において、
この磁界内の質量流量又は体積流量が、別の導電性流体又は既知の速度で運動する導電性の固体の第二の既知の流量と重畳されて、測定すべき流体の流量が、この第二の既知の流量と、この重畳された流量により生じるローレンツ力測定信号とから算出されることを特徴とする方法。
【請求項2】
当該の別の流体又は固体のフロー方向が測定すべき流体のフロー方向と逆であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
当該の重畳された流量により生じるローレンツ力が所定の値又は時間的な推移を取るように、当該の既知の流量を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
当該の重畳された流量により生じるローレンツ力測定信号がゼロとなるように、当該の既知の流量を制御することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
当該の重畳された流量により生じるローレンツ力が所定の値又は時間的な推移を取るように、当該の導電性の固体の既知の運動を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
当該の重畳された流量により生じるローレンツ力測定信号がゼロとなるように、当該の導電性の固体の既知の運動を制御することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
当該の一様な運動形態で運動する導電性の固体の導電率所定の分布が、当該の重畳された流量により生じるローレンツ力の時間的に変化する推移を発生させることを特徴とする請求項1、2又は5に記載の方法。
【請求項8】
当該の既知の運動が回転運動であることを特徴とする請求項15、6又は7に記載の方法。
【請求項9】
フロー位置で磁界を発生させる磁石を備え、その磁界と質量フロー又は体積フローの間の相対運動により生じるローレンツ力を検出して、一つの管状又は溝状の流路(1)内を流れる導電性流体の質量流量又は体積流量を非接触式に測定する装置において、
この管状又は溝状の流路(1)の外に、別の流体が流れる別の管状又は溝状の流路(2)が、この磁石(3)の磁力線が両方の流路(1,2)を通り抜けるように配置されるとともに、この両方の流路(1,2)内を流れる流体の流量により生じるローレンツ力の測定信号と別の流路(2)内の既知の、或いは測定した流量とを処理する評価ユニットが配備されていることを特徴とする装置。
【請求項10】
磁石(3)として、永久磁石が用いられることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
当該の管状又は溝状の流路(1)に対して平行に、二つの別の管状又は溝状の流路(2.1,2.2)が配置されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
フロー位置で磁界を発生させる磁石を備え、その磁界と質量フロー又は体積フローの間の相対運動により生じるローレンツ力を検出して、一つの流路(1)内を流れる導電性流体の質量流量又は体積流量を非接触式に測定する装置において、
この磁石(3)の磁界によって、この磁界内を運動する導電性の部品が検出されるとともに、これらの流量と部品の両方により生じるローレンツ力の測定信号とこの運動する部品の測定した、或いは既知の速度とを処理する評価ユニットが配備されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
当該の運動する導電性の部品が、導電率所定の分布を有することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
運動する導電性の部品として、流体のフロー方向に対して直角に配置された回転軸上を回転する円板(4,4.1)が使用されることを特徴とする請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
運動する導電性の部品として、流体のフロー方向に対して直角に配置された回転軸上を回転する追加の円板(4.2)が配置されていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
当該の回転する円板(4.1)と追加の回転する円板(4.2)が同じ角速度で駆動されることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
当該の運動する導電性の部品が中空円筒(5)の形状をしており、流体のフロー方向に対して直角に配置された回転軸上を回転することを特徴とする請求項12又は13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローレンツ力補償により導電性流体の質量流量又は体積流量を非接触式に測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、半導体及びガラスの溶融物では、侵食が測定センサーを破壊させるので、羽根車、ピトー管等の従来の測定方法による流速の測定は不可能である。特許文献1〜4により、導電性流体を複数の流路内に流す特別な形の磁気誘導式流量計が知られている。しかし、測定信号の補償を目的とした部分流量の所定通りの調節は行なわれていない。特許文献1には、測定動特性を向上させるために、如何にしてフローを状況に応じて同じ方向であるが、異なる強さの二つの部分フローに分割して、二つの異なる測定システムで検出するのかが記載されている。特許文献2では、電極の分極の問題が機械運動式磁石により解決されており、電気信号の収率を向上させるために、同じ方向に貫流する複数の隣接する部分フローパスが直列構成に接続された電極によって繋がれている。特許文献3でも、部分信号を合算又は独立して再処理するために、流体力学的に分割された部分フローがそれぞれ電極と接触している。特許文献4は、ほぼ同じ大きさの流入量と還流量の差分として微細濾過速度を計測する装置を記載している。両方の流量は、それぞれ磁気誘導式流量計により計測されているが、同じ磁界内を逆方向に流れるフローが生じている。それによって、電極の電圧差を直接タップオフして、処理することが可能となっている。この電圧差は、測定すべき小さい流量差に関する尺度となっている。
【0003】
これらの導電性流体を測定するための磁気誘導式流量計も常に媒体と接触する電極が必要である。これらの電極は、侵食的な媒体によって望ましくない影響を受ける。そのため、高温の溶融物に対しては、非接触式電磁フロー測定方法が使用されている。
【0004】
特許文献5は、如何にして二つの移送フロー管内の流量測定により、一方の炉から他方の炉へ、並びにそこから鋳型への移送フロー時における液状の金属溶融物に関する充填レベル制御及び鋳込速度の制御動特性を改善できるのかを記載している。これら二つの別個の独立して実現された流量測定器の動作手法は開示されているが、特許文献6によるローレンツ力アネモメータを用いた測定の可能性も示唆されている。
【0005】
特許文献7には、ローレンツ力アネモメータ測定法と呼ばれる非接触式電磁測定方法が記載されている。この方法は、管又は溝内を運動する導電性物質の非接触式検査を行なうものである。それは、磁石システムによるフロー位置での磁界の生成とフローが磁石システムに作用するローレンツ力の測定とに関する。柔軟に使用可能な磁石システムを用いて、検査すべき物質に一次磁界を入力結合させて、好適な測定システムにより、一次磁界と検査すべき物質の間の相対運動により発生する磁石システムに作用する力及びモーメント成分を検出している。
【0006】
同様の方法が、特許文献8〜10に提示されている。
【0007】
これらの方法の欠点は、測定した力及びモーメント成分の形で得られるローレンツ力の測定信号が速度だけでなく、磁界の強さにも依存することである。磁界の強さが磁石材料の温度変動又は劣化現象により変化した場合、測定誤差が生じる。更に、多くの場合、既存の外部磁界「妨害磁界」が存在する下でフロー測定を行なわなければならない。それは、例えば、アルミニウム還元セル内で液状のアルミニウムのフロー測定を行なう場合である。アルミニウム還元セル内では、0.1テスラオーダーの均一な磁界が支配的であり、その磁界が速度に依存しない大きな引力をローレンツ力アネモメータの磁石システムに加えて測定品質を悪化させるために、このローレンツ力アネモメータ測定法による測定は困難である。特許文献10では、外部の妨害磁界を排除するために、更に、ヘルムホルツコイル対を取り付けることが提案されている。このコイル対の内部で外部磁界を補償することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ特許公開第102009006733号明細書
【特許文献2】ドイツ特許公開第00001961281号明細書
【特許文献3】米国特許第000006630285号明細書
【特許文献4】ドイツ特許公開第102010003642号明細書
【特許文献5】ドイツ特許公開第102009057861号明細書
【特許文献6】国際特許公開第2007/033982号明細書
【特許文献7】ドイツ特許公開第102005046910号明細書
【特許文献8】特開昭57−199917号公報
【特許文献9】国際特許公開第00/58695号明細書
【特許文献10】ドイツ特許公開第102007046881号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前述した測定誤差を防止する方法及び装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本課題は、本発明による請求項1に記載された特徴を有する方法及び請求項9又は12に記載された特徴を有する装置によって解決される。
【0011】
本発明の有利な実施形態は従属請求項の対象となっている。
【0012】
磁界内の測定すべき未知の流量(質量流量又は体積流量)vは、容易に取扱可能な導電性の流体又は既知の速度で運動する導電性の固体の第二の既知の流量vと重畳される。この重畳によって、その結果得られたローレンツ力が未知の流量により生じたローレンツ力と第二の既知の流量又は固体の既知の速度による力が重畳された力となる。この結果として得られたローレンツ力は、所定の一定の値に制御することによって、調整するか、或いは時間的な推移を目的通り生じさせることが可能である。
【0013】
ここで既知の、或いは明らかに容易に測定できる流量vから、求める流量vを非常に簡単に計算することができる。
【0014】
有利な実施形態は、そのローレンツ力が消失するように、この既知の流量をローレンツ力を補償するために使用するものと規定する。そのために、ローレンツ力測定の測定信号がゼロとなるように、流量を制御しなければならい。
【0015】
更に、そのローレンツ力が消失するように、導電性の固体の既知の運動をローレンツ力を補償するために使用することが可能である。この場合、ローレンツ力測定の測定信号がゼロとなるように、その運動が制御される。
【0016】
当業者には、そのような制御の好適な実施構成は良く知られている。
【0017】
この有利な形の運動は、その運動がエンドレスに進行するので、回転運動である。固体の運動方向は、流体の運動方向と逆であり、その大きさは、具体的な実施形態と導電率に依存する。
【0018】
そのため、場合によっては侵食的な媒体の流量測定が、流体外の速度又は角速度の測定にフィードバックされる。
【0019】
ここで既知の、或いは明らかに容易に測定できる速度と測定したローレンツ力から、そのために配備された評価ユニットでの計算によって、求める流量を決定することができる。
【0020】
入力信号が既知の場合に、ローレンツ力測定の出力信号の大きさを決定することによって、この既知の流量又は既知の運動をローレンツ力アネモメータの特性曲線を求めるために使用することもできる。それは、特性曲線上の任意の多数の点で行なうことができる。直線的な特性曲線に関しては、少なくとも二つの点が必要である。
【0021】
以下において、図面に基づき本発明の実施例を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一つの追加流体による構成図
図2】二つの追加流体による構成図
図3】一つの回転円板による構成図
図4】二つの回転円板による構成図
図5】一つの回転する中空円筒による構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
全ての図面において、互いに対応する部分には、同じ符号が付与されている。
【0024】
図1には、調査すべき流体が一つの管状又は溝状の流路1内を計測すべき速度vで流れる構成が図示されている。この流路1に対して平行に、流速がvである別の流体が貫流する別の管状又は溝状の流路2が配置されている。磁石3の磁界が両方の流路を通り抜けている。検出すべき未知の流速vは、容易に取扱可能な導電性流体の第二の流速vと重畳している。当業者には、容易に取扱可能な導電性流体、例えば、電解液又は少し溶解した金属及び合金は周知である。この既知の、或いは明らかに容易に測定できる流速vと測定したローレンツ力から、調べる流速vを非常に容易に計算することができる。ここでは図示されていない評価ユニットが、その役割を果たし、そのユニットを用いて、計測すべき流速vの尺度である、その結果生じる磁気流量又はそれにより生じるローレンツ力を決定する。
【0025】
流路1と追加の流路2の横断面は、同じ又は異なる形で実現することができる。水平又は垂直方向の立体的な構成は、同じ形で実現することができる。
【0026】
図2は、二つの別の管状又は溝状の流路2.1と2.2が取り付けられた実施構成を図示している。それによって、検出すべき流体の磁気作用の二つの基準流量とそのため作用するローレンツ力とを重畳することができる。この実施形態は、有利には、磁界特性が非直線的である構成を調査するために使用することができる。
【0027】
基準流量の代わりに、円板4の形の運動する導電性の部品を使用する実施構成が図3に図示されている。この円板4は、流体のフロー方向に対して直角に配置された回転軸上を回転する。
【0028】
図4は、回転する円板4.1と追加の回転する円板4.2が共通の軸上に配置された実施構成を図示している。
【0029】
図5に図示された実施構成では、中空円筒5がフロー軸に対して直角に配置された回転軸の周りを回転しており、その結果、この中空円筒5の外殻面が磁石3の磁界によって検出される。
【符号の説明】
【0030】
1 調査すべき流体用の管状又は溝状の流路
2 別の流体用の管状又は溝状の流路
2.1,2.2 別の流路
3 磁石
4 回転円板
4.1 回転する円板
4.2 追加の回転する円板
5 中空円筒
v1 調査すべき流体の流速
v2 別の流体の流速
S 磁石のS極
N 磁石のN極
図1
図2
図3
図4
図5