【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要約)
本発明は、以下の工程を含む二価カチオン結合タンパク質の精製方法に関する:
(a)第1陰イオン交換樹脂物質に、二価カチオンの非存在下でローディング緩衝液中の二価カチオン結合タンパク質をロードし、所望により二価カチオンの非存在下、ロードした陰イオン交換樹脂物質を洗浄用緩衝液で洗浄し、
(b)二価カチオン結合タンパク質を対アニオンを含む溶離剤で溶出して二価カチオン結合タンパク質含有溶出液を得、
(c)工程(b)で得た溶出液に少なくとも1の二価カチオンを添加してpHを増加させ、
(d)第2陰イオン交換樹脂物質に工程(c)で得た添加溶出液をロードし、
(e)二価カチオン結合タンパク質を含むフロースルーを回収する。
2.工程(c)において該添加溶出液のpHを少なくとも0.5pH単位増加させる項目1記載の方法。
3.工程(b)の溶離剤の溶離剤が、工程(a)のローディング緩衝液、および洗浄工程を行う場合は工程(a)の洗浄用緩衝液の伝導度より高い伝導度を有し、工程(c)の該添加溶出液が工程(b)の溶離剤の伝導度より低い伝導度を有する項目1または2記載の方法。
4.工程(c)の少なくとも1の二価カチオンが、Ca
2+、Be
2+、Ba
2+、Mg
2+、Mn
2+、Sr
2+、Zn
2+、Co
2+、Ni
2+、およびCu
2+、またはその組み合わせからなる群から選ばれる項目1〜3のいずれかに記載の方法。
5.第1および第2陰イオン交換樹脂物質が、それぞれ独立してジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルアミノエタン(DMAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、第4級アミノアルキル、第4級アミノエタン(QAE)、および第4級アンモニウム(Q)からなる群から選ばれる正荷電基を有する項目1〜4のいずれかに記載の方法。
6.第1および第2陰イオン交換樹脂物質が、リガンドとして、それぞれ独立してアミノヘキシル、ベンズアミジン、リジン、およびアルギニンからなる群から選ばれる1級アミンを保持する項目1〜5のいずれかに記載の方法。
7.二価カチオン結合タンパク質が、カルシウム結合タンパク質である項目1〜6のいずれかに記載の方法。
8.二価カチオン結合タンパク質がビタミンK依存性タンパク質である項目1〜7のいずれかに記載の方法。
9.二価カチオン結合タンパク質が、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、アネキシン、およびカルモジュリンからなる群から選ばれ、特に好ましくは第IX因子、第VII因子、およびアネキシンVからなる群から選ばれる項目1〜8のいずれかに記載の方法。
該二価カチオン結合タンパク質は、天然供給源、例えば血漿由来であるか、組換えにより生成することができる。
10.ローディング工程(a)中のローディング緩衝液のpH、および/または所望の洗浄工程(a)に用いる洗浄用緩衝液のpHが
<pH7.4、好ましくはpH5.5〜pH7.0、より好ましくはpH6.0〜pH7.0、さらにより好ましくはpH6.5〜pH7.0である項目1〜9のいずれかに記載の方法。
11.項目1〜10のいずれかに記載の方法により得ることができる精製された二価カチオン結合タンパク質。
12.項目1〜10のいずれかに記載の方法を実施する手段を含むキット。
【0009】
したがって、本発明は、上記方法により得られる精製された二価カチオン結合タンパク質、および上記方法を実施する手段を含むキットにも関する。
(発明の詳細な説明)
【0010】
ある局面において、本発明は、以下の工程を含む二価カチオン結合タンパク質の精製方法に関する:
(a)第1陰イオン交換樹脂物質に二価カチオンの非存在下またはその低濃度下で二価カチオン結合タンパク質をロードし、所望により二価カチオンの非存在下、ロードした陰イオン交換樹脂物質を洗浄用緩衝液で洗浄し、
(b)二価カチオン結合タンパク質を対アニオン含有溶離剤で溶出して二価カチオン結合タンパク質含有溶出液を得、
(c)工程(b)で得た溶出液に少なくとも1の二価カチオンを添加してpHを増加させ、
(d)第2陰イオン交換樹脂物質に工程(c)で得た添加溶出液をロードし、
(e)二価カチオン結合タンパク質を含むフロースルーを回収する。
【0011】
本明細書で用いている用語「二価カチオンの非存在下」は、緩衝液中に遊離二価カチオンが存在しないことを表すが、タンパク質と結合するか、キレート剤(例えばEDTA)とまたはそれにより錯体を形成する二価カチオンは存在しうる。この文脈において「その低濃度下で」は、μMの範囲、特に最大限1000μM、好ましくは最大限800μM、より好ましくは最大限500μMの濃度の二価カチオン濃度を表す。この適用において、用語「二価カチオンの非存在下」は、上記「その低濃度下で」の定義も含むことを意味する。
【0012】
二価カチオンの非存在下の、ローディング緩衝液中の二価カチオン結合タンパク質の第1陰イオン交換樹脂物質へのローディングは当該分野で知られたあらゆる方法により実施することができる。特に、該二価カチオン結合タンパク質を該陰イオン交換樹脂物質にローディングするのに適した条件は当業者によく知られている。生成物の結合を可能にするローディング緩衝液の伝導度の特定の条件は、用いる陰イオン交換樹脂物質およびタンパク質の具体的特性(例えばリガンド密度、リガンド提示など)に依存する。二価カチオンは、通常強酸性の(すなわち負に荷電した)領域のタンパク質と結合する。負の荷電は、二価カチオンが結合すると隠される。しかしながら、陰イオン交換物質に二価カチオン非存在下で二価カチオン結合タンパク質をローディングすることにより、例えば、キレート剤(例えばEDTA)により結合した二価カチオンを除去することにより、該タンパク質は、陰イオン交換リガンドとの強い結合を可能にする表面に強く負に荷電したパッチを有する。タンパク質を陰イオン交換樹脂物質上にローディングするための条件として、さらに常に該対イオン(例えばCl
-)の濃度とpH間のバランスが必要である。対イオンの化学も溶出挙動に影響を与え、例えばCl
-は1個の負の荷電を保持し、中性pHのホスフェートは、2個の負の荷電を保持する。後者は伝導度が低くてもCl
-と比べて高い溶出力を有しうる。
【0013】
本明細書で用いる該溶液および緩衝液の塩濃度は、洗浄用緩衝液については典型的には20〜200mM(NaCl)、好ましくは100〜150mM(NaCl)である。溶出用緩衝液の好ましい塩濃度は300〜400mM(NaCl)であるが、カラム平衡化用緩衝液は好ましくはロードと同じ伝導度および/またはNaCl濃度であろう。
【0014】
さらに、二価カチオン結合タンパク質が陰イオン交換物質と結合する条件をもたらす、本発明の方法の工程(a)における、二価カチオン結合タンパク質の陰イオン交換物質へのローディングのための適切なローディング緩衝液は当該分野でよく知られている。例えば、該ローディング緩衝液のpHは、
<pH7.4、好ましくは
<pH7.0、より好ましくは
<pH6.5、最も好ましくは
<pH6.0でありうる。好ましくは、ローディング緩衝液のpHは、5.5より低くなく、好ましくはpH5.5〜H7.0、より好ましくはpH6.0〜pH7.0、さらにより好ましくはpH6.5〜pH7.0である。
【0015】
ロードは、さらなるローディング緩衝液を含むか含まない、実質的に炭酸塩で緩衝されている、二価カチオン結合タンパク質含有細胞培養上清でありうる。
【0016】
第2陰イオン交換工程用のローディング緩衝液は、上記の第1陰イオン交換工程用のものと同じでよい。本発明が提供する2つの陰イオン交換工程間の違いは、基本的に以下の通りである:
a)第1陰イオン交換カラムに、出発物質(すなわち、好ましい態様では細胞培養物質)をロードする。これは夾雑物の多い出発物質である。第2陰イオン交換カラムに、すでにある程度精製された物質(溶出(および添加)工程後に得られた物質である)をロードする。
b)第1陰イオン交換工程は、二価カチオンの非存在下で実施するが、第2陰イオン交換工程を実施する場合は、ロード物質に二価カチオンを添加している。
c)第2陰イオン交換における該ロードの伝導度は、好ましい態様において、第1陰イオン交換カラムの溶出工程の伝導度より低くなるように選択する。
d)次に、第1陰イオン交換工程を生成物結合モードで実施し、第2陰イオン交換工程を生成物非結合モードで実施する。
【0017】
当業者が容易に決定することができる、二価カチオン結合タンパク質の陰イオン交換樹脂物質への結合に適したあらゆる塩濃度が含まれうる。好ましい態様において、ローディング緩衝液は、キレート剤、例えばEDTA、好ましくは2mM EDTAを含みうる。本発明の方法において陰イオン交換樹脂物質に適用することができる二価カチオン結合タンパク質含有ローディング緩衝液は、例えば20mM MESおよび2mM EDTAを含みうる。
【0018】
本発明の方法は、所望により、二価カチオンの非存在下、ロードした陰イオン交換樹脂物質を洗浄用緩衝液で洗浄する工程を含む。この洗浄工程は当該分野で知られたあらゆる方法で行うことができる。二価カチオン結合タンパク質を実質的に溶出することなく陰イオン交換物質の不純物を洗浄除去するための適切な洗浄用緩衝液は当該分野でよく知られている。例えば、洗浄用緩衝液は、pH
<pH7.4、好ましくは
<pH7.0、より好ましくは
<pH6.5、最も好ましくは
<pH6.0である。好ましくは、該pHは、5.5以上であり、好ましくはpH5.5〜pH7.0、さらにより好ましくはpH6.0〜pH7.0、さらにより好ましくはpH6.5〜pH7.0である。
【0019】
当業者が容易に決定することができる有意な量の二価カチオン結合タンパク質を溶出することなく陰イオン交換樹脂物質を洗浄するのに適したあらゆる塩濃度を含むことができる。例えば、洗浄用緩衝液は、適切な緩衝剤、例えばトリスまたはMES、好ましくは20mM MESなどを含みうる。さらに、キレート剤、例えばEDTA、好ましくは2mM EDTAなどを含みうる。さらに、洗浄用緩衝液の伝導度を調節するための適切な塩、例えばNaClなどを含むことができ、これは以下の濃度で存在しうる:
<200mM、好ましくは100mM〜200mM、より好ましくは150mM〜200mM、より好ましくは170mM〜190mM、および最も好ましくは175mM〜185mM。本発明の別の好ましい態様において、洗浄用緩衝液は100〜200mM NaClを含む。塩濃度の絶対値は、精製する二価カチオン結合タンパク質に依存し、最適な純度を得るために二価カチオン結合タンパク質が低い塩濃度を必要とするかまたは高い塩濃度を必要とするかを決定することは当業者の知識の範囲内である。
【0020】
二価カチオン結合タンパク質の対イオン含有溶離剤による溶出は、当該分野で知られたあらゆる方法で実施することができる。具体的には、適切な対イオンを含む適切な溶離剤は当該分野でよく知られている。好ましい対イオンには、Cl
-、ブロミド、ボーレイト、スルホン酸、およびアセテートが含まれ、Cl
-が特に好ましい。好ましい態様において、溶離剤のpHは、工程(a)のローディング緩衝液のpHと同じである。例えば、溶離剤は、pH
<pH7.4、好ましくは
<pH7.0、より好ましくは
<pH6.5、および最も好ましくは
<pH6.0、好ましくはpH5.5以上、より好ましくはpH5.5〜pH7.0、さらにより好ましくはpH6.0〜pH7.0、さらにより好ましくはpH6.5〜pH7.0でありうる。
【0021】
当業者が容易に測定することができる有意な量の不純物を溶出せずに、第1陰イオン交換樹脂物質から二価カチオン結合タンパク質を溶出するのに適したあらゆる塩濃度を含むことができる。例えば、典型的には5〜50mMの範囲の濃度の適切な緩衝剤、例えば、MES、好ましくは20mM MES、トリス、HEPES、トリス/酢酸塩、ヒスチジン、Gly-Gly、MOPS、またはトリシンなどを含むことができる。下記は、特に好ましい緩衝剤のリストである。
トリス:(pH=8,06±1,0の緩衝剤)
MES:(pH=6,2±1,0の緩衝剤)
HEPES:(pH7,7±1,0の緩衝剤)
MOPS:(pH=7,3±1,0の緩衝剤)
トリシン:(pH=8,3±1,0の緩衝剤)
ヒスチジン:(pH=7,6±1,0の緩衝剤)
Gly-Gly:(pH=7,4±1,0の緩衝剤)
Bis-トリス:(pH=6,35±1,0の緩衝剤)
ACES:(pH=7,0±1,0の緩衝剤)(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)
ADA:(pH=7,0±1,0の緩衝剤)(N-(2-アセトアミド)-イミド2酢酸)
洗浄用緩衝液の伝導度を調節するのに適した塩、例えば濃度100〜200mMで存在しうるNaClなども含みうる。塩濃度の絶対値は、精製する二価カチオン結合タンパク質に依存し、最適な純度を得るために二価カチオン結合タンパク質がより低いまたは高い塩濃度を必要とするかを決定することは当業者の知識内である。本発明の方法に適用することができる溶離剤は、例えば20mM MESおよび350mM NaClを含み、pH6.0でありうる。
【0022】
本発明の方法によれば、工程(b)において得られる溶出液に、工程(c)の少なくとも1の二価カチオンを添加する。好ましい態様において、該溶出液に、Ca
2+、Be
2+、Ba
2+、Mg
2+、Mn
2+、Sr
2+、Zn
2+、Co
2+、Ni
2+、およびCu
2+、またはその組み合わせからなる群から選ばれる二価カチオンを添加する。該カチオンは、好ましくは濃度1mM〜20mM、より好ましくは濃度1mM〜10mM、最も好ましくは濃度2mMの該添加溶出液中に存在する。該カチオンは陰イオンを有する適切な塩の形の溶出液中に存在する。適切な陰イオンは、当業者に知られており、例えば硫酸、リン酸、炭酸、およびホウ酸ベースの陰イオン、またはその組み合わせを含む。二価カチオンを含む塩は、濃度1mM〜20mM、好ましくは2mMで溶出液中に存在しうる。好ましい態様において、該塩はCaCl
2である。特に好ましい態様において、該溶出液は2mM CaCl
2を含む。
【0023】
本発明の方法によれば、工程(b)で得られる該添加溶出液のpHは工程(c)で増加する。好ましい態様において、該添加溶出液のpHは、少なくとも0.5pH単位、好ましくは少なくとも1.0pH単位、より好ましくは少なくとも1.5pH単位、最も好ましくは少なくとも2.0pH単位増加する。好ましくは、該添加溶出液のpHは、6.5より高く、好ましくは7.0より高く、より好ましくはpH
>7.4、より好ましくは
>8.0であるが、pH9.0以下である。ただし、工程(c)の該添加溶出液のpHは、工程(b)の溶離剤のpHより高い。
【0024】
本発明の方法の好ましい態様において、工程(b)の溶離剤は、工程(a)のローディング緩衝液の伝導度より高い伝導度を有し、洗浄工程を行う場合は、工程(a)の洗浄用緩衝液、および工程(c)の該添加溶出液は、工程(b)の溶離剤の伝導度より低い伝導度を有する。特に、工程(a)のローディング緩衝液、および洗浄工程を行う場合は、工程(a)の洗浄用緩衝液は、8〜18mS/cmの伝導度(室温)を有しうる。さらに、工程(b)の溶出用緩衝液は25〜35mS/cmの伝導度(室温)を有しうる。最終的に、工程(c)の該添加溶出液は、c:<18mS/cmの伝導度(室温)を有しうる。
【0025】
本明細書で用いている用語「陰イオン交換樹脂物質」は、特定の制限を明確に示さない。本発明によれば、第1および第2樹脂には、当該分野で知られた陰イオン交換クロマトグラフィに適したあらゆる物質、例えばアガロースベースのクロマトグラフィ物質、例えばセファロース、例えばFast Flow(ファストフロー)またはカプト、ポリマー合成物質、例えばポリメタクリレート(例えばToyopearls)、ポリスチレン/ジビニルベンゼン、例えば、Poros、Source、またはセルロースが含まれる。本発明の具体例において、第1および第2陰イオン交換樹脂物質は、多糖鎖が架橋して三次元ネットワークを形成する修飾アガロースベースのセファロースである。好ましい態様において、第1および第2陰イオン交換樹脂物質には、限定されるものではないが、リガンドとして1級アミンを有する樹脂、例えば、アミノヘキシルセファロース、ベンズアミジンセファロース、リジンセファロース、またはアルギニンセファロースが含まれる。別の好ましい態様において、第1および第2陰イオン交換樹脂物質には、限定されるものではないが、中性pHで正荷電部分を有する樹脂、例えば、アルキルアミノエタン、例えば、ジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルアミノエタン(DMAE)、またはトリメチルアミノエチル(TMAE)、ポリエチレンイミン(PEl)、第4級アミノアルキル、第4級アミノエタン(QAE)、第4級アンモニウム(Q)などが含まれる。特に好ましい態様において、該陰イオン交換樹脂物質は、Q-Sepharose Fast Flow(Q-セファロースファストフロー)(Q-Sepharose FF)である。本発明の方法では、第1および第2陰イオン交換樹脂物質は同じでも異なってもよい。
【0026】
本発明の二価カチオン結合タンパク質は、あらゆる二価カチオン結合タンパク質、例えば、カルシウム結合タンパク質および/またはビタミンK依存性タンパク質などでありうる。好ましい態様において、該二価カチオン結合タンパク質は、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、アネキシン、およびカルモジュリンからなる群から選ばれ、特に好ましくは第IX因子(FIX)、第VII因子(FVII)、およびアネキシンVからなる群から選ばれる。
【0027】
該二価カチオン結合タンパク質は、当業者に知られた方法を用いて得ることができ、例えば、CHO細胞を用いた血漿由来タンパク質、トランスジェニック生成タンパク質、または組換え生成タンパク質などが含まれる。細胞培養からタンパク質を抽出するための分泌および非分泌的方法は当業者によく知られている。これには、以下のための当該分野で知られたあらゆる方法が含まれよう:(i)遺伝子操作、例えばRNAの逆転写および/またはDNAの増幅による組換えDNAの製造、(ii)トランスフェクション、例えばエレクトロポーレーションまたはマイクロインジェクションによる原核細胞または真核細胞への組換えDNAの導入、(iii)例えば連続方法やバッチ法による該形質転換細胞の培養、(iv)例えば構成的または誘導的二価カチオン結合タンパク質発現、および(v)例えば、粗二価カチオン結合タンパク質を得るための、例えば細胞培養からのまたは形質転換細胞の収集による該タンパク質の単離。さらに、二価カチオン結合タンパク質をコードする組換えDNA(例えばプラスミド)は、組換えDNAで成功裏にトランスフェクションされた細胞を選択するための選択可能マーカーをコードするDNA配列も含みうる。
【0028】
該タンパク質は、不純物を減らすために、例えば、ゲル電気泳動、クロマトグラフィ、ゲルろ過、遠心分離、ろ過、沈殿、結晶化、または当該分野で知られた他のあらゆる方法により予備精製してよい。本明細書で用いている用語「不純物」は、二価カチオン結合タンパク質の生成に起因するあらゆる不純物を含み、例えば、宿主細胞タンパク質(HCP)不純物、核酸不純物、ポリペプチド不純物、緩衝剤および塩不純物、細胞培養液由来の不純物、生成物関連不純物(例えば二量体または断片)、およびそれらの混合物を含みうる。
【0029】
好ましい態様において、本発明の方法により精製された二価カチオン結合タンパク質は、総宿主細胞タンパク質不純物に対して、タンパク質の少なくとも95%w/w、より好ましくは少なくとも98%w/w、より好ましくは少なくとも99%w/w、および最も好ましくは少なくとも99.5%w/w 二価カチオン結合タンパク質の純度を有する。したがって、好ましい態様において、精製二価カチオン結合タンパク質中の不純物の含有量は、5%w/w未満、より好ましくは2%w/w未満、より好ましくは1%w/w未満、および最も好ましくは0.5%w/w未満である。不純物のパーセンテージ値は、生成物、すなわち精製二価カチオン結合タンパク質のw/wを表し、例えばHPLCまたはELISAにより測定することができる。
【0030】
さらに、本発明の別の局面において、精製二価カチオン結合タンパク質は、本発明の方法、および本発明の方法を実施するための方法を実施するための手段を含むキットにより得ることができる。特に、本発明のキットは、本発明に従って陰イオン交換樹脂物質を用いる二価カチオン結合タンパク質を精製するのに適したローディング緩衝液および/または溶離剤および/または洗浄用緩衝液および/または二価カチオンの溶液を含みうる。好ましい態様において、該ローディング緩衝液、該洗浄用緩衝液、および/または該溶離剤は上記のものである。さらに、本発明のキットは、適切な陰イオン交換樹脂物質を含みうる。
【0031】
本発明は、さらに二価カチオン結合タンパク質を精製するための上記の本発明の方法および/または本発明のキットの使用に関する。
【0032】
本発明は、生成物を高収率で得ると同時にその製造法に関連する不純物を顕著に減らすことができる、陰イオン交換樹脂物質を用いる二価カチオン結合タンパク質の効率的精製方法を提供する。
【0033】
特に、本発明の方法は以下の原理に基づく。一般的には、タンパク質の陰イオン交換樹脂物質の結合は、より低伝導度とより高pH値で増加する。反対に、タンパク質の陰イオン交換樹脂物質への結合は、より高伝導度とより低pH値で減少する。本発明の方法において、該二価カチオン結合タンパク質は、二価カチオン結合タンパク質が第1陰イオン交換物質に結合することができ、該二価カチオン結合タンパク質の構造的完全性や活性に有害でない低pHでロードおよび/または洗浄するのが好ましい。そのような条件では多くのタンパク質不純物、特に該二価カチオン結合タンパク質より等電点(pI)が高いものは、第1陰イオン交換樹脂物質と結合せず、第1陰イオン交換樹脂物質への不純物の結合は顕著に減少する。これらの条件下で第1陰イオン交換樹脂物質と結合するタンパク質不純物、すなわち、低pIを有するタンパク質不純物は、溶出中に二価カチオン結合タンパク質と一緒に溶出されるかもしれない。しかしながら、該添加溶出液のpHの増加は、すべてのタンパク質の、第2陰イオン交換樹脂物質とのより強い結合をもたらす。本発明の方法では、該添加溶出液中に存在する二価カチオンにより、二価カチオン結合タンパク質のみが第2陰イオン交換物質と結合しない。この文脈で、上記のように、一般的にタンパク質は、より高pH値で陰イオン交換樹脂物質とより強く結合するので、陰イオン交換樹脂物質のローディング前のpHの増加は、ネガティブクロマトグラフィ、すなわち、精製するタンパク質がフロースルーに予期されるクロマトグラフィでは非常に特殊であることに注目すべきである。第1陰イオン交換樹脂物質からの溶出液に少なくとも1の二価カチオンを添加することにより、本発明の方法は、驚くべきことに好都合に、陰イオン交換クロマトグラフィによる二価カチオン結合タンパク質の高純度を達成する。
【0034】
特に、本発明は、第2陰イオン交換樹脂物質のローディング前にpHを増加させることにより精製されるタンパク質の表面荷電を好都合に修飾する。第2陰イオン交換樹脂物質をローディングするためのpHの増加は、不純物を第2陰イオン交換樹脂物質と強制的に結合させるが、二価カチオンの添加により精製するタンパク質の結合を阻害する。本発明では、上記条件は、高純度および高収率の二価カチオン結合タンパク質をもたらす。本発明の方法は、例えば、低下したpHで陰イオン交換樹脂物質にタンパク質溶液をローディングし、生成物を溶出し、該溶出液に少なくとも1の二価カチオンを添加し、該添加溶出液を第2陰イオン交換樹脂物質にローディングする前にpHを増加させ、フロースルーを回収することにより生成物関連ポリペプチド不純物の有意な減少をもたらすことができる。
【0035】
本発明の範囲と精神から逸脱しない、本発明の記載した方法および生成物の種々の修飾および変更は、当業者に明らかであろう。本発明の特に好ましい態様について記載するが、本発明はそのような態様に不当に限定されるものではない。