(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するその断片の前記レベルが、連続変数またはカテゴリー変数として、前記BODE指数パラメータと組み合わされる請求項1に記載の方法。
前記少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するその断片の前記レベルと前記BODE指数パラメータとがスコアとして組み合わされる請求項1又は2に記載の方法。
前記少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するその断片の前記レベルと前記BODE指数パラメータとが別々に重み付けされる請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記リスク評価が、2年以内、1年以内、6ヶ月以内、3ヶ月以内、90日以内、1ヶ月以内、30日以内、14日以内、又は7日以内に急性増悪を起こすリスク評価に関する請求項8に記載の方法。
前記試料が、血液試料、血清試料、血漿試料、脳脊髄液試料、唾液試料および尿試料または前述の試料のいずれかの抽出物を含む群から選択される請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
MR−プロADM、NT−プロBNP、BNP、MR−プロANP、コペプチン、PCT1〜116、PCT2〜116またはPCT3〜116からなる群から選択される前駆体断片のレベルが決定される請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
PCTの閾値が0.07から0.5ng/mLの間、0.07から0.25ng/mLの間、0.07から0.2ng/mLの間、又は0.07から0.1ng/mLの間である請求項11に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
一般的な予防可能で治療可能な疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、通常は進行性であり、有害な粒子または気体に対する気道および肺における増強された慢性炎症性応答に関連する持続的気流制限を特徴とする。COPDの症状には、呼吸困難、慢性咳嗽および慢性痰生成が含まれる。肺活量測定はCOPDの臨床診断を下すのに必要である。気管支拡張薬後FEV
1/FVC(1秒間強制吸気容量/強制肺活量)<0.70が存在すれば、持続的気流制限の存在およびしたがってCOPDが確認される。
【0003】
臨床的に関連するCOPDの有病率は、欧州の成人人口中約4〜6%であり、COPD患者の推定数は英国で300万人、ドイツで270万人、フランスで260万人である。合衆国ではおよそ1600万の成人がCOPDに冒されている。さらに、COPDは、罹患および死亡のもっとも急速に増えている原因の1つになっている(PauwelsおよびRabe 2004年.Lancet 364:613〜620ページ;Sullivanら、2000年.Chest 117:5S〜9S;Lopezら、2006年.Lancet 367:1747〜1757ページ)。COPDは世界的には5番目の主要な死因であり、今後数十年でその罹患率および死亡率のさらなる増加が予想される(PauwelsおよびRabe 2004年.Lancet 364:613〜620ページ)。
【0004】
慢性閉塞性肺疾患の増悪(症状の急性悪化のエピソード)はすべての急性入院の2.4%を超える原因であり、COPDに関連するもっとも重要な直接的医療費を構成する(Donaldsonら、2006年.Thorax 61:164〜168ページ;Halbertら、2006年.Eur Respir J 28:523〜532ページ;Lindenauerら、2006年.Ann Intern Med 144:894〜903ページ)。米国では、重篤なCOPDの患者のコホート中におけるCOPDによる平均入院費は、7100米ドルと推定された(Halbertら、2006年.Eur Respir J 28:523〜532ページ;Connorsら、1998年.Am J Respir Crit Care Med 154:959〜967ページ)。増悪は現在では、疾患進行の自然経過における重要なイベントと認識されている(Celliら、2007年.Eur Respir J 29:1224〜1238ページ)。いくつかの臨床的特性が、AECOPDにおける罹患率および死亡率の予後因子として広く確証されている(Connorsら、1998年.Am J Respir Crit Care Med 154:959〜967ページ;Antonelli Incalziら、1997年.Eur Respir J 10:2794〜2800ページ;Fusoら、1995年.Am J Med 98:272〜277ページ;Gunenら、2005年.Eur Respir J 26:234〜24ページ;Almagroら、2006年.Respiration 73:311〜317ページ)。
【0005】
疫学的には興味深いが、臨床パラメータの適中率は研究が異なれば変化し、その大多数は正確な個人のリスク評価を許さない(Antonelli Incalziら、1997年.Eur Respir J 10:2794〜2800ページ;Yohannesら、2005年.Age Ageing 34:491〜496ページ;Almagroら、2006年.Respiration 73:311〜317ページ)。
【0006】
COPD評価の目標は、治療を導くために、疾患の重症度、患者の健康状態に対するその影響、および将来のイベントのリスク(増悪、入院、死亡)を決定することである。
【0007】
気流制限の程度は肺活量測定(肺機能検査)を使用して評価され、1秒間強制呼気の容量は1秒間強制吸気容量(FEV
1)と呼ばれ、リットル単位で測定される。全呼気は強制肺活量(FVC)と呼ばれ、これもリットル単位で測定される。正常な肺機能を有する人では、FEV
1はFVCの少なくとも70%である。次に、GOLD(慢性閉塞性肺疾患のグローバルイニシアティブ)COPD分類法を使用して閉塞または気流制限の重症度を記載する。人の気流制限が悪くなるに従って、そのFEV
1は低くなる。COPDが進行するに従って、FEV
1は低下する傾向がある。GOLD COPD病期分類は、表1に要約されているFEV
1の値に基づいてCOPDについての重症度の4つのカテゴリーを使用する。
【0008】
BODE指数(肥満度指数(B)、肺機能検査により測定される気流閉塞の程度(O)、および呼吸困難(D)、ならびに6分間歩行検査により測定される運動能力(E))は最近確立されており、COPDの患者における死亡率(Celliら、2004年.N Engl J Med;350:1005〜1012ページ)およびCOPDによる入院(Ongら、2005年.Chest 128:3810〜3816ページ)の予後のためのツールであることが明らかにされた。しかし、この指数の決定は、疾患の安定状態での6分間歩行検査(6MWT)が必要であり、急性増悪にも適していないために、厄介である。したがって、COPDの患者における疾患重症度をモニターする肺バイオマーカーを含む、他のパラメータを使用することに益々関心が高まってきた(Barnesら、2006年.Am J Respir Crit Care Med 174:6〜14ページ)。TNF−α、IL−6、C−反応性タンパク質、エンドセリン−1およびプロカルシトニンを含むいくつかの循環バイオマーカーは増悪中に増加し、循環中への局所的気道炎症の溢流を潜在的に反映している(Hurstら、2006年.Am J Respir Crit Care Med 174:867〜874ページ;Pinto−Plataら、2007年.Chest 131:37〜43ページ;Rolandら、2001年.Thorax 56:30〜35ページ;Stolzら、2007年.Chest 131:9〜19ページ)。
【0009】
全身マーカーも安定的なCOPDにおける疾患重症度および予後を決定する手段として最近一般的な関心を集めている(Dahlら、2007年.Am J Respir Crit Care Med 175:250〜255ページ;de Torresら、2006年.Eur Respir J 27:902〜907ページ;Manら、2006年.Thorax 61:849〜853ページ)。しかし、それでも、現行のバイオマーカーが著しい臨床転帰、特にAECOPD中および外部の生存とどのように関係するのか、ならびに安定的なCOPDの予後に関してどの全身バイオマーカーがBODE指数に取って代わることができるのかどうかについての情報は乏しい(Barnesら、2006年.Am J Respir Crit Care Med 174:6〜14ページ;Franciosiら、2006年.Respir Res 7:74ページ;Bhowmikら、2000年.Thorax 55:114〜120ページ;Wedzichaら、2000年.Thromb Haemost 84:210〜215ページ;Devら、1998年.Respir Med 92:664〜667ページ)。
【0010】
バイオマーカーであるコペプチン、中間領域プロアドレノメデュリン(MR−プロADM)および中間領域プロ心房性ナトリウム利尿ペプチド(MR−プロANP)は、入院を必要とするCOPDの重度の増悪を抱えた患者の予後において助けとなる可能性があることが最近明らかにされた(Stolzら、2007年.Chest 131:1058〜1067ページ;Stolzら、2008年.Chest 134:263〜272ページ;Bernasconiら、2011年.Chest 140:91〜99ページ)。しかし、安定状態でのそのようなバイオマーカーの予後的価値はまだ知られておらず、外来患者のためのリスク層別化戦略は見つかっていない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのMR−プロADM値の箱髭図である。
【
図2】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのMR−プロANP値の箱髭図である。
【
図3】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのコペプチン値の箱髭図である。
【
図4】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのPCT値の箱髭図である。
【
図5】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのMR−プロADMのROCプロット(AUC=0.632)である。
【
図6】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのMR−プロANPのROCプロット(AUC=0.611)である。
【
図7】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのコペプチンのROCプロット(AUC=0.605)である。
【
図8】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのPCTのROCプロット(AUC=0.604)である。
【
図9】COPDの患者のMR−プロADMの四分位点によるカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図10】COPDの患者のMR−プロANPの四分位点によるカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図11】COPDの患者のコペプチンの四分位点によるカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図12】COPDの患者のPCTの四分位点によるカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図13】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODEと組み合わせたMR−プロADMのROCプロット(AUC=0.750)である。
【
図14】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODと組み合わせたMR−プロADMのROCプロット(AUC=0.743)である。
【
図15】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBDと組み合わせたMR−プロADMのROCプロット(AUC=0.756)である。
【
図16】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODEと組み合わせたMR−プロANPのROCプロット(AUC=0.736)である。
【
図17】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODと組み合わせたMR−プロANPのROCプロット(AUC=0.727)である。
【
図18】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBDと組み合わせたMR−プロANPのROCプロット(AUC=0.741)である。
【
図19】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODEと組み合わせたコペプチンのROCプロット(AUC=0.710)である。
【
図20】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODと組み合わせたコペプチンのROCプロット(AUC=0.703)である。
【
図21】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBDと組み合わせたコペプチンのROCプロット(AUC=0.724)である。
【
図22】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODEと組み合わせたPCTのROCプロット(AUC=0.698)である。
【
図23】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBODと組み合わせたPCTのROCプロット(AUC=0.678)である。
【
図24】COPDの患者の2年以内の死亡予測についてのBDと組み合わせたPCTのROCプロット(AUC=0.706)である。
【
図25】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODEとMR−プロADM(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図26】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODとMR−プロADM(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図27】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBDとMR−プロADM(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図28】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODEとMR−プロANP(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図29】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODとMR−プロANP(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図30】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBDとMR−プロANP(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図31】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODEとコペプチン(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図32】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODとコペプチン(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図33】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBDとコペプチン(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図34】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODEとPCT(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図35】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBODとPCT(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【
図36】COPDの患者を組み合わせスコアに応じてリスク群に分けることによるBDとPCT(表5に示される通りにカットオフを使用し続いてスコア化しカテゴリー変数として適用される)の組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線(2年以内の死亡)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の主題は、COPDの患者の予後および/またはリスク評価および/または治療のモニタリングおよび/またはマネージメントを行う方法であって、この方法は、
(i)患者から体液の試料を得るステップと、
(ii)プロアドレノメデュリン(プロADM)、プロナトリウム利尿ペプチド、プロバソプレシン(プロAVP)およびプロカルシトニン(PCT)からなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するそれらの断片のレベルを前記試料において決定するステップと、
(iii)BODE指数パラメータである肥満度指数(BMI、パラメータB)、気流閉塞の程度(FEV
1、パラメータO)、呼吸困難(パラメータD)および運動能力(パラメータE)のうちの1つ、2つ、または3つを決定するステップと、
(iv)前記ステップ(ii)で決定された少なくとも1つのバイオマーカーの前記レベルを、前記ステップ(iii)で決定された1つ、2つまたは3つのBODE指数パラメータと組み合わせて、COPDの患者の予後および/またはリスク評価および/または治療のモニタリングおよび/またはマネージメントと相関させるステップと
を含む。
【0019】
用語「組み合わせ」とは、各種複数のパラメータを可能な限り選択し、数学的アルゴリズムを使用してこれらパラメータを特定の群にアレンジすることと定義される。
【0020】
用語「パラメータ」は、特定の系を定義する際に助けとなり得る特性、特長または測定可能な因子として、本発明では用いており、例えば、バイオマーカー(コペプチンやPCTなど)、説明変数(年齢、性別、BMIなど)または臨床変数(FEV
1など)がある。
【0021】
好ましい実施形態では、前記少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するそれらの断片の前記レベルは、BODE指数パラメータである肥満度指数(BMI、パラメータB)と気流閉塞の程度(FEV
1、パラメータO)と呼吸困難(パラメータD)の組み合わせ、又はBODE指数パラメータである肥満度指数(BMI、パラメータB)と呼吸困難(パラメータD)の組み合わせで使用される。
【0022】
別の好ましい実施形態では、プロADM、プロナトリウム利尿ペプチド、プロAVPおよびPCTからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するそれらの断片の前記レベルと、前記1つ、2つまたは3つのBODE指数パラメータとを、連続変数またはカテゴリー変数として組み合わせることが可能である。
【0023】
好ましい実施形態では、プロADM、プロナトリウム利尿ペプチド、プロAVPおよびPCTからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するそれらの断片の前記レベルと、前記1つ、2つまたは3つのBODE指数パラメータとを、スコアにして、組み合わせることが可能である。例えば、前記バイオマーカーレベルは、1つまたは複数の閾値(cut-off value)を使用して二択化(dichotomized)されるか又はカテゴリー化されるような、2値変数またはカテゴリー変数としてもよい。次に、このような変数、すなわちスコアは、例えば、指数パラメータであるBODまたはBDから導き出される(retrieved)スコアと加算して、組み合わせスコアとすることができる。
【0024】
本発明の方法の具体的な実施形態では、プロADM、プロナトリウム利尿ペプチド、プロAVPおよびPCTからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーまたは少なくとも12のアミノ酸の長さを有するそれらの断片の前記レベルと、前記1つ、2つまたは3つのBODE指数パラメータとは、別々に重み付けされる。
【0025】
別の好ましい実施形態では、予後および/またはリスク評価は、死亡率のリスクと関係し、患者は潜在的生存者と潜在的非生存者に層別化される。
【0026】
特に好ましい実施形態では、予後および/またはリスク評価は、5年以内、より好ましくは4年以内、さらに好ましくは3年以内、さらに好ましくは2年以内、さらに好ましくは1年以内、もっとも好ましくは6ヶ月以内の死亡率のリスク評価に関する。
【0027】
別の好ましい実施形態では、予後および/またはリスク評価は、急性増悪の発生のリスクに関し、患者は、急性増悪を起こす可能性が高い患者群か、急性増悪を起こさない可能性が高い患者群かのどちらかに分類される。
【0028】
特に好ましい実施形態では、予後および/またはリスク評価は、2年以内、より好ましくは1年以内、さらに好ましくは6ヶ月以内、さらに好ましくは3ヶ月以内、さらに好ましくは90日以内、さらに好ましくは1ヶ月以内、さらに好ましくは30日以内、さらに好ましくは14日以内、もっとも好ましくは7日以内に急性増悪を起こすリスク評価に関する。
【0029】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、GOLDガイドライン(予測値の70%より下のFEV
1/FVC比および80%より下のFEV
1の絶対的減少)に従って診断される。
【0030】
本発明によれば、COPDと診断された患者は、疾患の安定状態にあっても不安定(急性増悪)状態にあってもよい。
【0031】
COPDの急性増悪は、「正常な日々の変動を超えており、発症が急性であり、根底にあるCOPDを抱えている患者における常用薬剤の変化を正当化し得る患者のベースラインの呼吸困難、咳、および/または痰の変化に特徴がある前記疾患の自然経過におけるイベント」として定義されている(Rabeら、2007年.Am J Respir Crit Care Med 176:532〜555ページ)。
【0032】
COPDの重症度は、予測される気管支拡張薬後FEV
1%を使用して、GOLD基準に従って類別される。予測値の50%から80%のFEV
1は中程度COPD(GOLD II)と定義し、30%から50%のFEV
1は重症COPD(GOLD III)と定義し、30%未満のFEV
1は極めて重症COPD(GOLD IV)と定義する(表1参照)。1秒間強制呼気の容量は、1秒間強制呼気容量(FEV
1)と呼ばれ、リットルで測定される。
【0033】
BODEは、COPDにかかった人の臨床リスクを評価するために考案された多次元指数である(Celliら、2004年.N Engl J Med 350:1005〜1012ページ)。BODEは4つの変数、すなわち、(B)肥満度指数と、(O)1秒間強制呼気容量(FEV
1)により測定される気流閉塞と、(D)修正医学研究審議会(MRC)スケールにより測定される呼吸困難と、(E)6分間歩行距離(6MWD)により測定される運動能力とを、1つのスコアに組み合わせるものである。それぞれの要素はグレード化されており、10段階のスコアが得られ(表2)、スコアが高いほど大きなリスクを示している。BODE指数は、COPDにおける予後および生存に対する肺要因と肺外要因の両方の影響を反映する。
【0034】
本発明において、用語「予後」(prognosis)とは、対象(例えば、患者)の医学的な症状がどのように進行するか予測することをいう。これには、対象の回復の可能性や転帰不良の可能性を推定することも含まれ得る。
【0035】
本発明において、用語「リスク評価」(risk assessment)とは、一個人に各種有害な事象を経験する確率を割り当てることをいう。これによって、一個人は好ましくは各種のリスクカテゴリーに評価され、これらカテゴリーには、例えば、高リスク対低リスクのリスクカテゴリーや、リスクカテゴリー1、2、3等などの数値に基づくリスクカテゴリーが含まれる。
【0036】
本発明の文脈における用語「治療のモニタリング」とは、患者の治療処置のコントロールおよび/または適合をいう。
【0037】
本発明の文脈における用語「患者のマネージメント」とは、
・病院または集中治療室への入所の判断、
・専門病院または専門病院組織への患者の移転の判断、
・集中治療室または病院から早期退院についての評価、
・リソース(例えば、内科医および/または看護士、診断器具、薬物)の配分、
・治療処置の判断
をいう。
【0038】
診断および予後マーカーの使用に関して本明細書で使用される用語「相関させる」とは、患者の前記マーカーの存在またはレベルを、所定の状態に罹っていると判明している又はそのリスクがあると判明している人におけるその存在または量と比較することである。患者の試料中のマーカーレベルは、特定の診断と関連があると判明しているレベルと比較することができる。前記試料のマーカーレベルは、診断と相関していると言われており、すなわち、当業者であれば前記マーカーレベルを使用して、患者が特定の種類の疾患に罹っているかどうかを決定することができ、それ相応に応答することができる。あるいは、前記試料のマーカーレベルは、良好な転帰(例えば、疾患の非存在など)と関連していることが判明しているマーカーレベルと比較することができる。好ましい実施形態では、マーカーレベルのパネルは、包括的確率または特定の転帰と相関する。
【0039】
閾レベル(threshold level)は、例えば、疾患の発生または重態および/もしくは死亡の確率が、集団中のそれぞれのマーカーの四分位点などと相関するカプラン−マイヤー分析から得ることができる。この分析によれば、75パーセンタイルを超えるマーカーレベルを有する対象は、本発明に従って疾患に罹るリスクが著しく増加する。この結果は、古典的リスク因子を調整したコックス回帰分析によって更に支持される。他のすべての対象に対する最も高い四分位点は、本発明に従って疾患に罹る増大したリスクまたは重態および/もしくは死亡の確率と著しく高度に関連する。他の好ましい閾値は、例えば、準拠集団の90、95または99パーセンタイルである。75パーセンタイルよりも高いパーセンタイルを使用することにより、同定される偽陽性対象の数は減少するが、それでもリスクが増大しているにもかかわらず中程度である対象を同定しそこなう可能性がある。したがって、「偽陽性」も同定する犠牲を払ってリスクのある対象の大半を同定するほうが適切であると見なされるのか、または中程度リスクの対象をいくつか見逃す犠牲を払っても主に高リスクの対象を同定するほうが適切であると見なされるのかに応じて閾値を適合させてもよい。
【0040】
個人のマーカーレベル値ならびに他の予後検査および臨床パラメータを使用することにより個人のリスクを計算する他の数学的可能性は、例えば、NRI(純再分類指数)またはIDI(統合判別指数)である。前記指数はPencina(Pencina MJ.ら、:Evaluating the added predictive ability of a new marker:from area under the ROC curve to reclassification and beyond. Stat Med.2008年;27:157〜172ページ)に従って計算することができる。
【0041】
マーカーペプチドおよびその前駆体という文脈において本明細書で述べたように、用語「断片」(fragment)とは、より大きなタンパク質またはペプチドから誘導され得るより小さなタンパク質またはペプチドのことであり、したがって、より大きなタンパク質またはペプチドの部分的な配列を含む。これら断片は、より大きなタンパク質またはペプチドから、そのペプチド結合のうちの1つ又は複数の鹸化によって、誘導され得るものである。マーカーペプチドであるプロADM、プロナトリウム利尿ペプチド、プロAVP、およびPCTの「断片」は、好ましくは少なくとも12のアミノ酸の長さを有する断片に関する。そのような断片は、好ましくは、本明細書に記載される免疫アッセイを用いて検出することが可能である。
【0042】
プロナトリウム利尿ペプチドは、プロ心房性ナトリウム利尿ペプチド(プロANP)およびプロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(プロBNP)、または少なくとも12のアミノ酸の長さを有するそれらの断片からなる群から選択される。
【0043】
153アミノ酸の配列であるプレ−プロANPは配列番号1に示されている。N末端シグナルペプチド(25アミノ酸)と2つのC末端アミノ酸を切断すると、プロANP(配列番号2)が放出される。このプロホルモンは切断されて、ANP(1〜28)またはα−ANPとしても知られる、成熟28アミノ酸ペプチドANPおよびアミノ末端プロANP断片(1〜98)(NT−プロANP、配列番号3)になる。中間領域プロANP(MR−プロANP)は、NT−プロANPまたはプロANPの少なくともアミノ酸残基53〜90(配列番号4)を含むその任意の断片として定義される。
【0044】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、プロANP前駆体断片、MR−プロANPのレベルが決定される。
【0045】
アドレノメデュリンの前駆体ペプチド(プレ−プロアドレノメデュリン)のアミノ酸配列は、配列番号5としている。プロアドレノメデュリンは、プレ−プロアドレノメデュリンの配列のアミノ酸残基22から185に関係する。プロアドレノメデュリン(プロADM)のアミノ酸配列は、配列番号6としている。MR−プロアドレノメデュリン(MR−プロADM)は、プレ−プロADMのアミノ酸残基45〜92に関係する。MR−プロADMのアミノ酸配列は、配列番号7としている。
【0046】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、プロADM前駆体断片、MR−プロADMのレベルが決定される。
【0047】
バソプレシンの164アミノ酸前駆体ペプチド(プレ−プロバソプレシン)の配列は、配列番号8としている。プロバソプレシンはプレ−プロバソプレシンの配列のアミノ酸残基19から164に関係する。プロバソプレシンのアミノ酸配列は、配列番号9としている。プロバソプレシンは切断されて、成熟バソプレシン、ニューロフィジンIIおよびC末端プロバソプレシン(CT−プロAVPまたはコペプチン)になる。コペプチンはプレ−プロバソプレシンのアミノ酸残基126から164に関係する。コペプチンのアミノ酸配列は、配列番号10としている。ニューロフィジンIIはプレ−プロバソプレシンのアミノ酸残基32から124を含み、その配列は配列番号11に示されている。
【0048】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、プロAVP前駆体断片、コペプチンのレベルが決定される。
【0049】
プロカルシトニンは、カルシトニンおよびカタカルシンの前駆体である。PCT1〜116のアミノ酸配列は、配列番号12としている。
【0050】
脳性ナトリウム利尿ペプチドの134アミノ酸前駆体ペプチド(プレ−プロBNP)の配列は、配列番号13としている。プロBNPは、プレ−プロBNPのアミノ酸残基27から134に関係する。プロBNPの配列は、配列番号14に示されている。プロBNPは切断されて、N末端プロBNP(NT−プロBNP)および成熟BNPとなる。NT−プロBNPはアミノ酸残基27から102を含み、その配列は配列番号15に示されている。配列番号16は、プレ−プロBNPペプチドのアミノ酸残基103から134を含むBNPの配列を示している。
【0051】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、プロBNP前駆体断片、NT−プロBNPまたはBNPのレベルが決定される。
【0052】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、アミノ酸1から116または2から116または3から116からなるPCTのレベルが決定される。
【0053】
本発明の別の好ましい実施形態では、カテゴリー変数として使用される場合のバイオマーカーについて閾値を定義することができる。例えば、スコア0、2または4を生じる2つの異なる閾値をそれぞれのバイオマーカーについて定義することができる。
【0054】
好ましくはMR−プロADMの閾値は0.5から2nmol/Lの間、より好ましくは0.5から1nmol/Lの間、もっとも好ましくは0.5から0.8nmol/Lの間である。本発明の特に好ましい実施形態では、前記閾値は0.5および0.8nmol/Lである。
【0055】
好ましくはMR−プロANPの閾値は50から250pmol/Lの間、より好ましくは50から200pmol/Lの間、もっとも好ましくは50から140pmol/Lの間である。本発明の特に好ましい実施形態では、前記閾値は50および140pmol/Lである。
【0056】
好ましくはコペプチンの閾値は2から30pmol/Lの間、さらに好ましくは2から20pmol/Lの間、もっとも好ましくは2から14pmol/Lの間である。本発明の特に好ましい実施形態では、前記閾値は2および14pmol/Lである。
【0057】
好ましくはPCTの閾値は0.07から0.5ng/mLの間、さらに好ましくは0.07から0.25ng/mLの間、さらに好ましくは0.07から0.2ng/mLの間、もっとも好ましくは0.07から0.1ng/mLの間である。本発明の特に好ましい実施形態では、前記閾値は0.07および0.1ng/mLである。
【0058】
上記閾値は、これらの値が本発明において使用されるアッセイ系とは異なる較正が行われる場合は、他のアッセイでは異なることもある。したがって、上記閾値は、そのような異なる較正が行われるアッセイには、較正の違いを考慮に入れて、それに合うように適用する。較正の違いを定量化する1つの可能性は、両方の方法を使用して試料中のそれぞれのバイオマーカー(例えば、PCT)を測定することによる、問題のアッセイ(例えば、PCTアッセイ)と本発明で使用されるそれぞれのバイオマーカーアッセイ(例えば、BRAHMS KRYPTOR PCT高感度)の方法比較分析(相関)である。別の可能性は、この検査が十分な分析感度を有すると仮定して、代表的正常集団の中央値バイオマーカーレベルを問題のアッセイを用いて決定し、結果を文献(例えば、PCTではEP09011073.5、「無症候集団における有害事象の予後のためのプロカルシトニン」(「Procalcitonin for the prognosis of adverse events in the asymptomatic population」))に記載されている中央値バイオマーカーレベルと比較し、この比較により得られる違いに基づいて較正を再計算することである。較正を本発明において使用して、正常(健康)対象由来の試料は測定されており、中央値(四分位範囲)血漿プロカルシトニンは、男性で0.018(0.015〜0.022)ng/mL、女性で0.014(0.012〜0.017)ng/mL(Abbasiら、2010年.JCEM 95:E26〜E31)、中央値(範囲)血漿MR−プロADMは0.41(0.23〜0.64)nmol/L(Smithら、2009年.Clin Chem 55:1593〜1595ページ)、中央値(四分位範囲)コペプチン濃度は4.7(2.9〜7.5)pmol/Lで、男性(6.2(4.1〜9.5)pmol/L)のほうが女性(3.6(2.4〜5.5)pmol/L)よりも有意に高い濃度であり(Meijerら、2010年.Kidney Int 77:29〜36ページ)、および中央値(四分位範囲)MR−プロANP濃度は66(51〜86)pmol/Lであった(Melanderら、2009年.JAMA 302:49〜57ページ)。
【0059】
本発明の文脈における用語「スコア」とは、特定の成果、または前記患者に存在する各種の質もしくは状態(例えば、前記バイオマーカーのレベルや前記BODE指数パラメータ)の程度に基づいて、数値により表される評点のことである。
【0060】
本発明の文脈における用語「レベル」は、患者の試料から採取されるマーカーペプチドの濃度(好ましくは、重量/容積;w/vとして表される)に関する。
【0061】
本明細書で述べるように、「アッセイ」または「診断アッセイ」は、診断学の分野で適用されるいかなる種類のものでも可能である。そのようなアッセイは、検出される分析物が1つまたは複数の捕捉プローブに一定の親和性で結合することに基づいていてもよい。捕捉分子と標的分子または対象の分子の間の相互作用に関して、親和定数は好ましくは10
8M
−1よりも大きい。
【0062】
本発明の文脈では、「捕捉分子」は、試料由来の標的分子または対象の分子、すなわち、分析物(例えば、本発明の文脈では、心血管ペプチド(複数可))に結合するのに使用し得る分子である。したがって、捕捉分子は、空間的にも、表面電荷、疎水性、親水性、ルイス供与体および/または受容体の存在または非存在などの表面特長の点でも、標的分子または対象の分子に特異的に結合するのに適した形状でなければならない。これにより、結合は、捕捉分子と標的分子もしくは対象の分子の間の、例えば、イオン性、ファンデルワールス、pi−pi、シグマ−pi、疎水性もしくは水素結合相互作用、または前述の相互作用のうちの2つ以上の相互作用の組み合わせにより媒介されることがある。本発明の文脈では、捕捉分子は、例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチドまたは糖タンパク質を含む群から選択してもよい。好ましくは、捕捉分子は、標的または対象の分子に対して十分な親和性を有するその断片を含む抗体、および組換え抗体または組換え抗体断片を含む抗体、ならびに前記抗体の化学的に、および/もしくは生化学的に修飾された誘導体またはその少なくとも12のアミノ酸の長さを有するバリアント鎖に由来する断片である。
【0063】
好ましい検出方法は、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)、化学発光および蛍光免疫アッセイ、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)、ルミネックスベースのビーズアッセイ、タンパク質マイクロアレイアッセイなどの様々なフォーマット、ならびに、例えば、免疫クロマトグラフィーストリップ試験などの迅速試験フォーマットでの免疫アッセイを含む。
【0064】
アッセイは均一または不均一アッセイ、競合および非競合アッセイであっても可能である。特に好ましい実施形態では、アッセイは非競合免疫アッセイであるサンドイッチアッセイの形態であり、検出されるおよび/または定量される分子は第1の抗体におよび第二の抗体に結合している。第一の抗体は固相、例えば、ビーズ、ウェルもしくは他の容器の表面、チップまたはストリップに結合していてもよく、第二の抗体は、例えば、色素で、放射性同位元素で、または反応性もしくは触媒活性のある部分で標識されている抗体である。次に、分析物に結合している標識抗体の量が適切な方法により測定される。「サンドイッチアッセイ」に関係する一般的構成および手順は確立しており、当業者には公知である(The Immunoassay Handbook、David Wild編、Elsevier LTD、Oxford;第3版(2005年5月)、ISBN−13:978−0080445267;Hultschig Cら、Curr Opin Chem Biol.2006年2月;10(1):4〜10ページ.PMID:16376134、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0065】
特定の好ましい実施形態では、アッセイは、両方とも液体反応混合物中に分散系として存在している2つの捕捉分子、好ましくは抗体を含み、第一の標識化成分は第一の捕捉分子に付着しており、前記第一の標識化成分は、蛍光もしくは化学発光−消光または増幅に基づく標識化システムの一部であり、前記マーキングシステムの第二の標識化成分は第二の捕捉分子に付着しているために、両方の捕捉分子が分析物に結合すると、試料を含む溶液中において形成されたサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定可能なシグナルが発生する。
【0066】
さらに好ましくは、前記標識化システムは、希土類クリプテートまたは希土類キレートを、蛍光色素または化学発光色素、特にシアニン型の色素と組み合わせて含む。本発明の文脈では、蛍光ベースのアッセイは、例えば、FAM(5−または6−カルボキシフルオセイン)、VIC、NED、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、IRD−700/800、CY3、CY5、CY3.5、CY5.5、Cy7などのシアニン色素、キサンテン、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、TET、6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン(JOE)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、5−カルボキシローダミン−6G(R6G5)、6−カルボキシローダミン−6G(RG6)、ローダミン、ローダミングリーン、ローダミンレッド、ローダミン110、BODIPY TMRなどのBODIPY色素、オレゴングリーン、ウンベリフェロンなどのクマリン、ヘキスト33258などのベンズイミド;テキサスレッドなどのフェナントリジン、ヤキマイエロー、アレクサフルオル(Alexa Fluor)、PET、臭化エチジウム、アクリジニウム色素、カルバゾール色素、フェノキサジン色素、ポルフィリン色素、ポリメチン色素、および同類のものを含む群から選択しうる色素の使用を含む。
【0067】
本発明の文脈では、化学発光ベースのアッセイは、Kirk−Othmer、Encyclopedia of chemical technology、第4版、編集主幹、J.I.Kroschwitz;編集、M.Howe−Grant、John Wiley&Sons、1993年、vol.15、518〜562ページにおいて化学発光物質について記載された物理的原理に基づく色素の使用を含み、前記文献は551〜562ページの引用を含めて参照により本明細書に組み込まれる。好ましい化学発光色素はアクリジニウムエステルである。
【0068】
本明細書で使用される用語「試料」とは、患者などの対象の診断、予後、または評価を目的に得られる体液の試料のことである。好ましい検査試料には、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰および胸水が含まれる。さらに、当業者であれば、いくつかの検査試料は、分画または精製手順、例えば、全血から血清または血漿成分への分離に従ってより容易に分析されることを認識していると考えられる。
【0069】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、脳脊髄液試料、唾液試料および尿試料または前述の試料のいずれかの抽出物を含む群から選択される。好ましくは、試料は血液試料、もっとも好ましくは血清試料または血漿試料である。
【実施例】
【0070】
(マーカー測定)
MR−プロANPは、B.R.A.H.M.S KRYPTOR(B.R.A.H.M.S GmbH、Hennigsdorf/Berlin、Germany)上で新規の完全自動化サンドイッチ免疫アッセイシステムを使用して検出された。この無作為アクセス分析器は、2つのフルオロフォア、ユーロピウムクリプテートとXL665の間の非放射性移行に基づく高感度時間分解増幅クリプテート放出(Time Resolved Amplified Cryptate Emission;TRACE)技術を用いる。自動化アッセイは、他で(Morgenthalerら、2004年.Clin Chem 50:234〜6ページ)詳細に記載されており、他の研究(Khanら、2008年.J Am Coll Cardiol 51:1857〜64ページ;Gegenhuberら、2006年.Clin Chem 52:827〜31ページ)で使用されたサンドイッチ化学発光アッセイに基本的に基づいている。MR−プロANP検出では、14μlの患者血清は14分間インキュベートされた。測定範囲は0〜10000pmol/L、検出限界は2.1pmol/L、定量下限は4.5pmol/Lであった。アッセイ内CVは1.2%であり、検査室間CVは5.4%であった。このアッセイは基準アッセイとして同じ抗体対を使用し(Morgenthalerら、2004年.Clin Chem 50:234〜6ページ)、2つのアッセイシステム間の相関性はr=0.99であった。
【0071】
MR−プロADMは、B.R.A.H.M.S KRYPTOR(B.R.A.H.M.S GmbH、Hennigsdorf/Berlin、Germany)上で新規の完全自動化サンドイッチ免疫アッセイシステムを使用して検出される(Caruhelら、2009年.Clin Biochem 42:725〜8ページ)。この無作為アクセス分析器は、2つのフルオロフォア、ユーロピウムクリプテートとXL665の間の非放射性移行に基づく高感度時間分解増幅クリプテート放出(TRACE)技術を用いる。自動化アッセイは、他で(Morgenthalerら、2005年 Clin Chem 51:1823〜9ページ)詳細に記載されており、他の研究(Khanら、2007年.J Am Coll Cardiol 49:1525〜32ページ;Gegenhuberら、2007年.J Card Fail 13:42〜9ページ)で使用されたサンドイッチ化学発光アッセイに基本的に基づいている。MR−プロADM検出では、26μlの血清は29分間インキュベートされる。測定範囲は0〜100nmol/L、検出限界および定量下限はそれぞれ0.05および0.23nmol/Lであった。アッセイ内CVは1.9%であり、検査室間CVは9.8%である。このアッセイは他で(Morgenthalerら、2005年.Clin Chem 51:1823〜9ページ)詳細に記載されている同じ抗体対を使用し、2つのアッセイ系間の相関性はr=0.99である。
【0072】
コペプチンレベルは、検出限界がさらに低い1.7pmol/Lの化学発光サンドイッチ免疫アッセイで測定された(Morgenthalerら、2006年.Clin Chem 52:112〜9ページ)。359人の健康な個人(男性153人および女性206人)において、中央値コペプチンレベルは4.2pmol/Lであり、1.0〜13.8pmol/Lの範囲であった。コペプチンの中央値濃度は男性と女性の間で有意に異なっていた。コペプチンレベルと年齢の間には相関はなかった。>2.25pmol/Lの試料では、検査室間CVは<20%であり、アッセイ内CVは<10%であった。
【0073】
PCTは、Morgenthalerら(Morgenthalerら、2002年.Clin Chem 48:788〜790ページ)に記載されている通りに、0.007ng/mLの機能的アッセイ感度を有する超高感度の市販の検査システムを使用して測定された。
【0074】
(データ分析)
研究集団のベースライン特性を要約する記述分析が実施された。連続変数について与えられる記述統計は中央値(範囲)であり、カテゴリー変数では我々はn(パーセント)を報告している。単一マーカー値の箱髭図を使用して、生存者と非生存者の間のマーカー値の分布を要約した。2年以内死亡の予測では、コックス回帰モデルが使用された。死亡率予測のための様々なマーカーの能力を説明するため、我々はカプランマイヤー生存曲線を計算し、マーカー四分位点または組み合わせスコア三分位値により患者を層別化した。さらに、時間依存性受信者動作特性(ROC)プロットが実施された。受信者動作特性は、そのカットオフが変動するので、転帰(死亡)については感度対(1−特異度)のグラフィカルプロットである。感度(バイオマーカーによりそれとして正しく同定される実陽性の割合)および特異度(正しく同定される陰性の割合)は選択されたカットオフについて計算された。バイオマーカーは、バイオマーカーのカテゴリー化および異なるカテゴリーへの重み付けの配分によりBODE指数パラメータと組み合わされた。
【0075】
(結果)
総数で548患者が本研究に含まれた。中央値年齢は67歳(範囲40〜88)であった。166患者(30.3%)は女性であった。これらの患者のうちの43人(7.8%)は2年以内に亡くなった。研究集団のベースライン特性は表3に提示されている。
【0076】
2年以内の死亡の予測のための単一マーカー値の箱髭図は
図1から4に示されている。MR−プロADM、MR−プロANP、コペプチンおよびPCT濃度はそれぞれが生存者よりも非生存者のほうが有意に高かった(クラスカルウォリス検定、4つのマーカーペプチドすべてでp<0.001)。単一マーカーについての受信者動作特性(ROC)は
図5から8に示されている。マーカーペプチドの予後値を説明するため、単一マーカーごとにカプランマイヤー生存曲線が計算され、患者をそれぞれのマーカー濃度に応じて四分位に分けた(
図9から12)。
図9から12に示されるように、MR−プロADM、MR−プロANP、コペプチンおよびPCT濃度それぞれが、第1から第3四分位にある場合と比べて第4四分位にある場合のほうが2年以内の高い死亡率が観察された。
【0077】
マーカーペプチドの全体的予後の正確さは、単変量および多変量コックス回帰分析を使用して評価された(表4および5)。多変量モデルでは、バイオマーカーは、連続変数(表4)およびカテゴリー化された変数(表5)としてBODE指数パラメータと組み合わされた。バイオマーカーをカテゴリー化された変数として使用する場合、スコア0、2または4を生じる2つの異なるカットオフがバイオマーカーごとに定義され、MR−プロADMでは0.5と0.8nmol/L、MR−プロANPでは50と140pmol/L、コペプチンでは2と14pmol/LおよびPCTでは0.07と0.1ng/mLであった。次に、それぞれのバイオマーカースコアは、指数パラメータであるBODE、BODまたはBDから組み合わせスコアに引き出されたスコアに加算された。
【0078】
それぞれBODE指数、BOD指数およびBD指数と組み合わされたカテゴリー化された変数としてのバイオマーカーMR−プロADMのROC曲線は
図13から15に示されている。それぞれBODE指数、BOD指数およびBD指数と組み合わされたカテゴリー化された変数としてのバイオマーカーMR−プロANPのROC曲線は
図16から18に示されている。それぞれBODE指数、BOD指数およびBD指数と組み合わされたカテゴリー化された変数としてのバイオマーカーコペプチンのROC曲線は
図19から21に示されており、それぞれBODE指数、BOD指数およびBD指数と組み合わされたカテゴリー化された変数としてのバイオマーカーPCTのROC曲線は
図22から24に示されている。
【0079】
これらの結果から、バイオマーカー(連続またはカテゴリー変数として)を含むモデルは、BODE指数パラメータのみを使用するモデルよりも有意に良好であったことが明らかにされている。驚くべきことに、2年以内の死亡の予測は、指数パラメータEおよび/またはOを含まずに、バイオマーカーを指数パラメータであるBODまたはBDと組み合わせた場合と類似するまたはその場合よりもはるかに良好であった。言い換えると、決定するのが難しく複雑であるパラメータE(6分間歩行検査)およびO(気流閉塞の程度)を含まずに、バイオマーカーを、容易に評価可能なパラメータBMI(B)および呼吸困難(D)と組み合わせて使用するスコアは、バイオマーカーを全部そろったBODE指数と組み合わせて使用するスコアと比べると類似する結果またははるかに良好な結果を与える。
【0080】
マーカーペプチドと指数パラメータであるBODE、BODまたはBDとの組み合わせについてカプランマイヤー生存曲線が計算され(
図25から36)、患者をそれぞれのスコアに応じてリスク群に分けた。例えば、
図25は、MR−プロADMと指数パラメータBODEの組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線を示している。可能なスコアは0から13の間である(表2のBODEのスコアリングプラス表5に示されている閾値0.5と0.8nmol/Lを使用するMR−プロADMについてのスコア0、2または4に従って)。患者がスコア0から3の間を有する場合低い死亡率が観察され(2.5%)、スコアが4から6の間の場合は中程度の死亡率(6.8%)が観察され、スコアが7から13では高い死亡率(15.8%)が観察された。
図27は、MR−プロADMと指数パラメータBDの組み合わせについてのカプランマイヤー生存曲線を示している。可能なスコア(表2のBDのスコアリングプラス表5に示されている閾値0.5と0.8nmol/Lを使用するMR−プロADMについてのスコア0、2または4に従って)は0から8の間であった。患者がスコア0から2の間を有する場合低い死亡率が観察され(3.0%)、スコアが3から4の間の場合は中程度の死亡率(8.3%)が観察され、スコアが5から8では高い死亡率(18.0%)が観察された。
【0081】
さらに、この所見は以下の分析および所見により強調される。
6分間歩行検査(指数パラメータE)が欠けている追加の45患者が研究中に含まれた。これらの患者のうち11人が2年間の追跡調査期間内で亡くなった。これらの患者の死亡率は24.4%であり、すべての指数パラメータ(Eを含む)が入手可能であった最初に分析された548患者の死亡率の3倍よりも高かった。したがって、これらの45患者の6分間歩行検査は無作為に欠けていたのではなく、むしろ患者の虚弱体質のせいで実施することができないと仮定された。欠けていた変数Eは最大数3ポイントで置き換えられ(表2参照)45患者はモデルに含まれた(表6)。さらに、バイオマーカーを含むモデルは、BODE指数パラメータのみを使用するモデルよりも有意に良好であり、2年以内の死亡の予測は、バイオマーカーを、指数パラメータであるEおよび/またはOを含まずに、指数パラメータであるBODまたはBDと組み合わせた場合と類似しているまたはその場合よりはるかに良好であった。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】