(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117316
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20170410BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20170410BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
G02F1/1339 500
G02F1/1368
G02F1/1343
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-217541(P2015-217541)
(22)【出願日】2015年11月5日
(62)【分割の表示】特願2011-159795(P2011-159795)の分割
【原出願日】2011年7月21日
(65)【公開番号】特開2016-14910(P2016-14910A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 安
(72)【発明者】
【氏名】國松 登
(72)【発明者】
【氏名】園田 英博
(72)【発明者】
【氏名】今西 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
【審査官】
磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−069391(JP,A)
【文献】
特開2001−222234(JP,A)
【文献】
特開2008−145461(JP,A)
【文献】
特開2004−109248(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/038432(WO,A1)
【文献】
特開2011−022535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
G02F 1/1343
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極とTFTがパッシベーション膜を介して配置し、前記画素電極と前記TFTがマトリクス状に形成されたTFT基板と、前記TFT基板と対向し、遮光膜を有する対向基板とを、所定の間隙を介して配置し、前記間隙に液晶を保持してなる液晶表示装置において、
前記TFT基板の前記パッシベーション膜に、前記TFTと前記画素電極とを接続するためのコンタクトホールを備えると共に、
前記対向基板には、前記遮光膜に対応した位置に形成した、セルギャップ確保用の柱状スペーサと、前記コンタクトホールに対応する位置に形成した、位置ずれ防止用の柱状突起とを備え、
前記柱状突起は、液晶パネルの中央の領域よりも周辺領域の密度を高く配置され、
前記柱状スペーサは、液晶パネルの画面全体でほぼ均等に配置され、
前記柱状突起の数は、前記柱状スペーサの数よりも少なく形成されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の液晶表示装置において、
前記パッシベーション膜は、有機パッシベーション膜を含むことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の液晶表示装置において、
前記パッシベーション膜は、無機パッシベーション膜のみから成ることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一つに記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起の高さh1と前記柱状スペーサの高さh2との差Δhは、前記コンタクトホールの深さz以下であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一つに記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起の高さh1は、セルギャップdより大きく、セルギャップdとスルーホールの深さzの和よりも小さいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起は、過大な力が加わった際に、前記コンタクトホールの底部に当接することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一つに記載の液晶表示装置において、
前記コンタクトホールは、上部に向かうにつれて径が大きくなる傾斜部を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一つに記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起の頂上部の径は、前記コンタクトホールの上部の径よりも小さいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一つに記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起の断面積は、前記柱状スペーサの断面積よりも小さいことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
請求項1記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起同士の間隔は、前記柱状スペーサの間隔よりも広いことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
請求項10記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起の個数は、前記柱状スペーサの個数よりも1桁以上少ないことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一つに記載の液晶表示装置において、
IPS方式であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
請求項1〜11の何れか一つに記載の液晶表示装置において、
TN方式またはVA方式であることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】
請求項3に記載の液晶表示装置において、
前記柱状突起は、前記コンタクトホールの底部に当接することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、上下基板の位置ずれを抑制した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、画素電極と薄膜トランジスタ(TFT)等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板とを、所定の間隙を介して配置し、TFT基板と対向基板との間の間隙に液晶を保持して構成している。そして、TFT基板と対向基板との間隙を一定に規制するために、両基板間に柱状スペーサを介在させている。
【0003】
液晶表示装置において、使用環境条件やバックライトの点灯による上下基板間の温度変化が発生した場合、上下基板の熱膨張の割合が異なり、一方の基板に対して他方の基板がその面方向にずれが生じ、上側基板の画素領域と下側基板の画素領域のずれによる輝度むらや面方向のずれに伴う配向膜削れ起因の輝点発生による表示不良を生じさせることになる。特に、画面サイズが大きい場合や上下基板に貼合される偏光板の厚みが異なる場合には、上下基板の面方向のずれが大きくなる。
【0004】
基板間隔の規制や上下基板の位置ずれ防止に関して、特許文献1には、一方の基板上に高さの異なる柱状スペーサを形成し、高い方のスペーサで対向基板との摩擦抵抗の低減を図り、低い方のスペーサで最終的に対向基板との間のセルギャップの確保を行うこと、が開示されている。
【0005】
特許文献2には、液晶表示装置において、基板間隙を保持する柱状スペーサを、画素電極内で且つ画素電極に電気信号を供給するコンタクト部に配置することで、表示品位及び画素の開口率を損なうことなく、安定したパネル間隙の制御を実現することが、開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、外力の印加による柱状スペーサの位置変動に起因する基板間位置やセルギャップの変動を抑制するために、一対の基板の一方の内面に固定的に形成した柱状スペーサの頂上部を他方の基板に有する多層構造膜の凹部に位置させることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−131238号公報
【特許文献2】特開2003−84290号公報
【特許文献3】特開2003−5190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載のものは、高さの異なる柱状スペーサの内の、高い方の柱状スペーサのみを対向基板に接触させることで、基板間の摩擦抵抗を低減し基板の位置ずれが発生しても戻りやすくしているが、基板の位置ずれ自体の発生を抑えることはできない。
【0009】
特許文献2記載のものについて、コンタクト部に整合するように柱状スペーサを形成するためには、スペーサ形成の位置精度(合わせマージン)を勘案すると、スペーサ頂上部より穴底部の面積を大きくする必要があり、コンタクト部の面積の拡大は画素開口率や透過率を低下させてしまう。
【0010】
特許文献3記載のものは、対向基板の凹部は各種配線の間に形成されるスペーサに比べてかなり広い範囲の凹んだ領域となっており、コンタクト部のような段差や位置精度が無いため、基板の位置ずれ自体を抑制することはできない。
【0011】
本発明は、液晶表示装置において、上下基板の位置ずれを抑制し、画素領域のずれによる輝度むらや配向膜削れ起因の輝点の発生を防止し、良好な画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の液晶表示装置は、画素電極とTFT等がマトリクス状に形成されたTFT基板と、前記画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板とを、所定の間隙を介して配置し、前記間隙に液晶を保持してなる液晶表示装置において、前記TFT基板に、パッシベーション膜に形成した、前記TFTと前記画素電極とを接続するためのコンタクトホールを備えるとともに、前記対向基板には、セルギャップ確保のための柱状スペーサと、前記コンタクトホールに対応する位置に形成した、位置ずれ防止用の柱状突起とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の液晶表示装置において、前記パッシベーション膜は、有機パッシベーション膜を含むものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記パッシベーション膜は、無機パッシベーション膜のみから成るものでよい。
【0014】
また、本発明の液晶表示装置において、前記対向基板を基準とした前記柱状突起の高さh1と前記柱状スペーサの高さh2との差Δhは、前記コンタクトホールの深さz以下であるものでよい。Δh=h1−h2≦z
但し、前記TFT基板から前記コンタクトホールの上面までの距離と前記TFT基板から前記柱状スペーサが接触する面までの距離との間にvの相違がある場合は、h1−(h2+v)≦zを満たすものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起の高さh1は、セルギャップdより大きく、セルギャップdとスルーホールの深さzの和よりも小さいものでよい。d<h1≦d+z
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起は、過大な力が加わった際に、前記コンタクトホールの底部に当接するものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記コンタクトホールは、上部に向かうにつれて径が大きくなる傾斜部を有するものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起の頂上部の径は、前記コンタクトホールの上部の径よりも小さいものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起の断面積は、前記柱状スペーサの断面積よりも小さいものでよい。
【0015】
本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起は、液晶パネルの中央の領域よりも周辺領域の密度を高く配置したものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状スペーサは、液晶パネルの画面全体でほぼ均等に配置したものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起同士の間隔が、前記柱状スペーサの間隔よりも広いものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起の個数は、前記柱状スペーサの個数よりも少ないものでよい。
また、本発明の液晶表示装置において、前記柱状突起の個数は、前記柱状スペーサの個数よりも1桁以上少ないものでよい。
【0016】
本発明の液晶表示装置において、IPS方式、TN方式またはVA方式の液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、柱状スペーサによりセルギャップを確実に確保できると共に、位置ずれ防止用の柱状突起をコンタクトホールに入り込ませアンカーすることにより、上下基板の位置ずれを抑制し、画素領域のずれによる輝度むらや、配向膜削れ起因の輝点の発生などを防止し、良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1のIPS方式の液晶表示装置を示す図である。
【
図2】液晶パネル全体における柱状スペーサの配置を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2のIPS方式の液晶表示装置を示す図である。
【
図4】本発明の実施例3のTN方式またはVA方式の液晶表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。各図面において、同一の構成要素には同一の番号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0020】
図1に、本発明の実施例1の液晶表示装置を示す。実施例1は、IPS( In Plane Switching )方式の液晶表示装置であって、有機パッシベーション膜(有機PAS膜)のコンタクトホールを備えたものに適用した実施例である。
図1(a)は、IPS方式の液晶表示パネルの一部を示す平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA…B線で示される箇所の断面図である。
【0021】
IPS方式の液晶表示装置は、簡単に言えば、画素電極108の上に、絶縁膜109を挟んで櫛歯状の対向電極110が形成されており、対向電極110と画素電極108の間の電圧により液晶分子301を回転させることによって、画素毎に液晶層300の光の透過率を制御することにより、画像を形成するものである。
【0022】
図1(a)において、TFT基板100上には走査線120と信号線121とがマトリクス状に配線されている。走査線120と信号線121で囲まれる領域内に画素電極108が配置され、走査線120と信号線121の交差部には薄膜トランジスタ(TFT)が形成される。走査線120はTFTのゲート電極に接続され、信号線121はTFTのドレイン電極に接続される。
【0023】
以下に、
図1(b)の構造を詳しく説明する。ガラスで形成されるTFT基板100の上に、走査線及びゲート電極101が形成されている。
走査線及びゲート電極101を覆って、ゲート絶縁膜102が形成されている。ゲート絶縁膜102の上に、ゲート電極101と対向する位置に図示しない半導体層が形成されている。半導体層はTFTのチャネル部を形成するが、チャネル部を挟んで半導体層上にソース電極104とドレイン電極105が形成される。ドレイン電極105は映像信号線が兼用し、ソース電極104は画素電極108と接続される。ソース電極104もドレイン電極105も同層で同時に形成される。
半導体層、ゲート電極101、ソース電極104およびドレイン電極105で、TFTを構成する。
【0024】
TFTを覆って無機パッシベーション膜106が形成される。無機パッシベーション膜106はTFTの、特にチャネル部を不純物から保護する。無機パッシベーション膜106の上には有機パッシベーション膜107が形成される。有機パッシベーション膜107はTFTの保護と同時に表面を平坦化する役割も有するので、厚く形成される。有機パッシベーション膜107には感光性のアクリル樹脂、シリコン樹脂、あるいはポリイミド樹脂等が使用される。有機パッシベーション膜107には、画素電極108とソース電極104を接続する部分にコンタクトホール111を形成する。
【0025】
有機パッシベーション膜107の上には画素電極108が形成される。画素電極108は透明導電膜であるITO( Indium Tin Oxide )を表示領域全体にスパッタリングで形成し、画素領域毎にパターニングすることによって形成される。コンタクトホール111により、画素電極108はソース電極104と接続される。コンタクトホール111において、TFTから延在してきたソース電極104と画素電極108が導通し、映像信号が画素電極108に供給されることになる。
【0026】
画素電極108を覆って無機パッシベーション膜109が形成される。その後、無機パッシベーション膜109上に、対向電極110となるITOをスパッタリングによって形成する。スパッタリングしたITOをパターニングして対向電極110を形成する。
【0027】
図1(a)に示すように、対向電極110は、両端が閉じた櫛歯状の電極である。櫛歯と櫛歯の間にスリット112が形成されている。対向電極110の下方には、平面状の画素電極108が形成されている。画素電極108に映像信号が印加されると、スリット112を通して対向電極110との間に生ずる電気力線によって液晶分子301が回転する。これによって液晶層300を通過する光を制御して画像を形成する。
対向電極110には一定電圧が印加され、画素電極108には映像信号による電圧が印加される。画素電極108に電圧が印加されると、電気力線が発生して液晶分子301を電気力線の方向に回転させてバックライトからの光の透過を制御する。画素毎にバックライトからの透過が制御されるので、画像が形成されることになる。
図1の例では、有機パッシベーション膜107の上に、面状に形成された画素電極108が配置され、無機パッシベーション膜109の上に櫛歯電極110が配置されている。しかしこれとは逆に、有機パッシベーション膜107の上に面状に形成された対向電極110を配置し、無機パッシベーション膜109の上に櫛歯状の画素電極108が配置される場合もある。
対向電極110の上には液晶分子301を配向させるための配向膜113が形成されている。
【0028】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が設置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタが形成されており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間には遮光ブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、遮光ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
カラーフィルタ201および遮光ブラックマトリクス202を覆って、オーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201および遮光ブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。
オーバーコート膜203の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。
【0029】
本実施例において、特徴構成として、対向基板200のオーバーコート膜203上に位置ずれ防止用の柱状突起210とセルギャップ確保のための柱状スペーサ220が設けられている。
【0030】
柱状突起210は、TFT基板100のコンタクトホール111に対応する位置に設けられており、TFT基板100と対向基板200を組み合わせた際に、柱状突起210がコンタクトホール111の中に入り込む。
図1(b)に示されるように、コンタクトホール111は、底部に比べて上部の径が大きくなるような傾斜部を備えており、柱状突起は、この傾斜部に案内されてコンタクトホール111内に入り込む。これにより、柱状突起210をコンタクトホール111でアンカーすることにより、TFT基板100と対向基板200との位置ずれをほぼ完全に抑制することができる。
柱状突起210の頂上部の径はコンタクトホール111の径よりも小さくなっており、パネル組み立て(ODF)の際の荷重印加時にコンタクトホール111に滑り込みやすく、また、コンタクトホールの傾斜部に当たっても歪み易く、柱状突起210のコンタクトホール111への位置合わせ尤度が拡大する。
【0031】
柱状スペーサ220は、対向基板200の遮光ブラックマトリクス202と重なり、TFT基板100のコンタクトホール以外に対応する位置、例えばゲート配線120と重なる位置に設けられており、TFT基板100と対向基板200を組み合わせた際に、配向膜106と当接することにより、セルギャップを確保する。スペーサの役割を果たすため、柱状スペーサ220の断面積は柱状突起210の断面積よりも大きくなっている。
【0032】
柱状突起210は、通常の状態では、コンタクトホール111の底部に接触しない方が好ましい。
そのため、柱状突起(h1)は、セルギャップ(d)よりも大きく、セルギャップ(d)とコンタクトホール111の深さ(z)の和より小さい。
【0033】
d<h1≦d+z
また、柱状突起210の高さ(h1)と柱状スペーサ220の高さ(h2)の差(Δh)がコンタクトホールの深さ(z)以下となる。
【0034】
Δh=h1−h2≦z
但し、柱状スペーサに対応するTFT基板上に、所謂台座と呼ばれる段差部を設ける場合がある。この場合、前記TFT基板から前記コンタクトホールの上面までの距離と、前記TFT基板から前記柱状スペーサに対応する面、つまり、柱状スペーサと接する面までの距離との間にvの相違がある場合がある。この場合は、h1−(h2+v)≦zを満たすものでよい。
なお、基板に過大な荷重が加わった場合には、柱状突起210の頂上部がコンタクトホール111の底部に当接し、スペーサとして働く。
【0035】
図2に、液晶パネル全体における柱状突起210および柱状スペーサ220の配置を示す。
【0036】
図に示すように、位置ずれ防止ストッパーとして働く柱状突起210は、中央の領域よりも周辺領域の密度が高くなっている。温度変化による面内位置ずれは画面の中央付近よりも周辺部の反りが大きいことが原因となっており、柱状突起の周辺部の密度を高めることにより、有効に位置ずれを抑えることができる。これに対し、セルギャップを確保するための柱状スペーサ220は、液晶パネル全体にほぼ均等に分布している。これにより、液晶パネル全面において、有効にセルギャップ間隔を確保することができる。
【0037】
柱状突起の個数は、柱状スペーサの個数よりも、例えば1桁以上少なくなっている。そして、柱状突起210同士の間隔が、柱状スペーサ220の間隔よりも広くなっている。
【実施例2】
【0038】
図3に、本発明の実施例2の液晶表示装置を示す。実施例2は、IPS方式の液晶表示装置であって、無機パッシベーション膜(無機PAS膜)のみのコンタクトホールを備えたものに適用した実施例である。
【0039】
実施例1では、TFTと画素電極または対向電極との間に、無機パッシベーション膜106、有機パッシベーション膜107および無機パッシベーション膜109が設けられていたが、本実施例では有機パッシベーション膜を設けることなく、無機パッシベーション膜106,109のみ設けている。そして、有機パッシベーション膜の分だけ、コンタクトホール111の深さが浅くなっている。
【0040】
対向基板200のオーバーコート膜203上に高さの高い柱状突起210と高さの低い柱状スペーサ220が設けられており、柱状突起210は、TFT基板100と対向基板200を組み合わせた際に、柱状突起210がコンタクトホール111の中に入り込む。また、柱状スペーサ220は、TFT基板100と対向基板200を組み合わせた際に、配向膜113と当接することにより、セルギャップを確保する。
【0041】
本実施例では、柱状突起の頂上部の径が対応するコンタクトホールの穴径に対して、十分小さくない場合には、パネル組み立て(ODF)時の荷重に対して変形し固定化される。
【0042】
本実施例では、コンタクトホール111が柱状突起210に対応した凹形状を持つ台座の役割を果たし、これによって、上下基板間の摩擦抵抗が非常に大きくなり、上下基板の位置ずれ抑制効果が高まる。
【実施例3】
【0043】
図4に、本発明の実施例3の液晶表示装置を示す。実施例3は、縦電界のTN( Twisted Nematic )方式またはVA( Vertical Alignment )方式の液晶表示装置であって、高透過率画素(有機PAS膜使用)のコンタクトホールを備えたものに適用した実施例である。
【0044】
図4(a)は、VA(TN)方式の液晶表示パネルの一部を示す平面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のA…B線で示される箇所の断面図である。
【0045】
縦電界方式の液晶表示装置では、TFT基板100上に画素電極108を配置し、対向基板200上に共通電極204を配置する。画素電極108に電圧を印加する、或いは印加しないことにより、液晶層300の液晶分子301の配列状態を変化させて、光の透過を制御する。
【0046】
TN方式では、画素電極108に電圧が印加されていない無電界時には、液晶分子301は両基板に対して水平方向に配列して光を透過させ、画素電極108に電圧を印加していくと、液晶分子301が垂直に立ち上がって光を遮る。
【0047】
VA方式では、誘電異方性が負の液晶層300を配置し、画素電極108に電圧が印加されていない無電界時には、液晶分子301は垂直方向に配列して光を遮り、画素電極108に電圧を印加した電界時には、画素電極と共通電極との間に電界が発生し、液晶分子301が水平方向に傾斜して光を通過させる。
【0048】
本実施例においても、TFT基板100上の有機パッシベーション膜107は、傾斜部を有するコンタクトホール111を備えている。また、対向基板200のオーバーコート膜203上に高さの高い柱状突起210と高さの低い柱状スペーサ220が設けられている。柱状突起210は、TFT基板100のコンタクトホール111に対応する位置に設けられており、TFT基板100と対向基板200を組み合わせた際に、柱状突起210がコンタクトホール111の中に入り込む。柱状スペーサ220は、対向基板200の遮光ブラックマトリクス202と重なり、TFT基板100のコンタクトホール以外に対応する位置、例えばゲート配線120と重なる位置に設けられており、TFT基板100と対向基板200を組み合わせた際に、配向膜113と当接することにより、セルギャップを確保する。柱状突起および柱状スペーサの動作は、実施例1と同様である。
【0049】
もちろん、上述の液晶表示装置以外、
図1で開示している平面電極と櫛歯状電極とによる構成を、櫛歯状電極対の構成としてもよい。また、TFT基板上に形成される電極対により生成された基板に平行な電界を利用して、液基板と平行な方向に配向された液晶分子を駆動する方法に限らず、基板と垂直に配向された液晶分子を駆動する方法であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、液晶表示装置の上下基板の位置ずれや押し荷重に対する輝度むらの発生を防止することができる。本発明は、IPS方式、VA方式、TN方式等の液晶ディスプレイに用いることができる。特に、画面サイズの大きな液晶ディスプレイや視野角補償の位相差偏光板を用いた液晶ディスプレイで効果が大きい。
【符号の説明】
【0051】
100…TFT基板、101…ゲート配線、102…ゲート絶縁膜、104…ソース電極、105…ドレイン電極、106…無機パッシベーション膜、107…有機パッシベーション膜、108…画素電極、109…無機パッシベーション膜、110…対向電極、111…コンタクトホール、112…スリット、113…配向膜、120…走査線121…信号線200…対向基板、201…カラーフィルタ、202…ブラックマトリックス、203…オーバーコート膜、204…共通電極210…柱状突起220…柱状スペーサ300…液晶層、301…液晶分子。