特許第6117360号(P6117360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117360
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】繊維補強複合材料成分およびその製造
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20170410BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C08J5/06CFC
   C08J5/24CFF
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-527870(P2015-527870)
(86)(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公表番号】特表2015-525828(P2015-525828A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2013067163
(87)【国際公開番号】WO2014029701
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2016年8月16日
(31)【優先権主張番号】12180970.1
(32)【優先日】2012年8月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン、フプカ
(72)【発明者】
【氏名】マルセル、ショルンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ディルク、ベゲナー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト、ラッセルンベルク
【審査官】 久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−203402(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0244520(US,A1)
【文献】 特表2010−529229(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0151138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/24
B29B 11/16、15/08−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアヌレート及びポリウレタンを基剤とし、ポリウレタン及びポリイソシアヌレートで含浸した一つ以上の繊維層を含んでなる繊維複合材料成分であって、前記ポリウレタン及び前記ポリイソシアヌレートが、
A)一種以上のポリイソシアネート、
B)一種以上のポリオール、
C)一種以上のポリエポキシド、
D)一種以上の潜在性触媒、
E)任意成分である添加剤、及び
F)任意成分である繊維材料
からなる反応混合物から得られ、
前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が20〜500mPasであり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が10:1〜16:1であり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が2:1〜25:1であり、前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が1.1:1〜12:1である、繊維複合材料成分。
【請求項2】
前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が50〜400mPasである、請求項1に記載の繊維複合材料成分。
【請求項3】
前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が60〜350mPasである、請求項1に記載の繊維複合材料成分。
【請求項4】
前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が11:1〜14:1である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の繊維複合材料成分。
【請求項5】
前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が7:1〜15:1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維複合材料成分。
【請求項6】
前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が10:1〜14:1である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の繊維複合材料成分。
【請求項7】
前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が3:1〜10:1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維複合材料成分。
【請求項8】
前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が5:1〜7:1である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の繊維複合材料成分。
【請求項9】
請求項1に記載の繊維複合材料成分の製造方法であって、
a)A)一種以上のポリイソシアネート、
B)一種以上のポリオール、
C)一種以上のポリエポキシド、
D)一種以上の潜在性触媒、
E)任意成分である添加剤、
F)任意成分である繊維材料
の混合物であって、前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が20〜500mPasであり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が10:1〜16:1であり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が2:1〜25:1であり、前記混合物における成分C)中のエポキシ基の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対するモル比が1.1:1〜12:1である混合物を製造し、
b)所望により、最初に繊維材料を型の一方の半分に装填し、
c)a)で製造した前記混合物を前記型の中に導入し、工程b)で最初に装填した繊維材料を含浸し、
d)工程a)における、又は工程b)における、又は工程a)及びb)の両方における前記混合物中の繊維材料を使用して、前記混合物を50℃〜170℃の温度で硬化させる、方法。
【請求項10】
前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が50〜400mPasである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が60〜350mPasである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が11:1〜14:1である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が7:1〜15:1である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が10:1〜14:1である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が3:1〜10:1である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が5:1〜7:1である、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程d)において、前記混合物を110℃〜140℃の温度で硬化させる、請求項9〜16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリオール、潜在性触媒及び所望により添加剤から構成される反応性樹脂混合物で繊維を含浸することにより得られる繊維複合材料成分、並びに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体系繊維複合材料は、高機械的強度を低重量との組合せで有するので、建設材料として使用されることが多い。マトリックス材料は、典型的には不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂及びエポキシ樹脂からなる。
【0003】
繊維複合材料は、例えば航空機製造、自動車製造又は風力発電プラントの回転翼に使用できる。
【0004】
独国特許出願公開第4416323号には、有機ポリイソシアネート、エポキシ基を有する有機化合物、及び特定の第三級アミン(触媒)の混合物を含んでなる熱硬化性の反応性樹脂混合物が記載されている。反応性樹脂混合物は、80℃までの温度で部分的に硬化し、100〜200℃の温度で完全に硬化する。これらの反応性樹脂混合物の欠点は、高い温度でのみ硬化し、長いサイクル時間を有し、これが高いエネルギー及び製造コストにつながることである。
【0005】
国際公開第2008/147641号パンフレットには、ブロックイソシアネート、エポキシ樹脂及び触媒から製造される硬化した組成物であって、少なくとも一種のオキサゾリドン及びイソシアヌレート環が形成されている硬化した組成物の製造が記載されている。この組成物は、塗装材料として、又は複合材料の製造に使用することができる。この組成物の欠点は、多段階製法で、ポリウレタンプレポリマーを最初に製造し、次いでこれを、反応性樹脂成分として使用できるブロックプレポリマーに転化しなければならないことである。
【0006】
国際公開第2012/022683号パンフレットには、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリオール及び所望により添加剤を含む反応性樹脂混合物を繊維に含浸させることにより得られ、オキサゾリジノン環は全く形成されない繊維複合材料成分が記載されている。これらの反応性樹脂は、20〜120℃の温度で硬化する。これらの反応性樹脂混合物の欠点は、数時間の長い熱処理時間、及び混合後における反応混合物の粘度の上昇である。
【発明の概要】
【0007】
今日まで使用されている反応性樹脂には、反応性樹脂混合物が硬化するまで長い時間を要し、生産性が低くなるという欠点がある。生産性を高めるためには、製造中のサイクル時間を短縮することが必要である。ここで、反応性樹脂混合物が、特に大きな成形品の場合、繊維を完全に含浸するまで十分に長い間、流動性であることが重要である。他方、硬化時間は、サイクル時間を短縮するために、非常に短い必要がある。経済的な理由から、エネルギーコストを節約できるので、低い硬化温度が望ましい。安全性の理由からは、繊維複合材料成分の高い難燃性が望ましい特性であり、これによって最終使用(例えば回転翼、車体構造部品)の安全性が増加する。
【0008】
従って、本発明の目的は、繊維の良好な含浸性及び濡れ性を可能にし、長時間流動性である(長いポットライフを有する)とともに、急速な硬化及び良好な機械的特性を確保するマトリックス材料を提供することである。同時に、完成した成形品は、良好な熱安定性を有するべきである。
【0009】
この目的は、驚くべきことに、繊維と、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、ポリオール、潜在性触媒及び所望により通常の添加剤を含む反応性樹脂混合物とから、OH基の数に対して大過剰のイソシアネート基を使用して得られる、繊維複合材料成分により達成される。
【発明の具体的説明】
【0010】
本発明は、ポリイソシアヌレート及びポリウレタンを基剤とし、ポリウレタン及びポリイソシアヌレートで含浸した一つ以上の繊維層を含んでなる繊維複合材料成分であって、
前記ポリウレタン及び前記ポリイソシアヌレートが、
A)一種以上のポリイソシアネート、
B)一種以上のポリオール、
C)一種以上のポリエポキシド、
D)一種以上の潜在性触媒、及び
E)任意成分である添加剤、
F)任意成分である繊維材料
からなる反応混合物から得られ、
前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が20〜500mPas、好ましくは50〜400mPas、より好ましくは60〜350mPasであり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が10:1〜16:1、好ましくは11:1〜14:1であり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が2:1〜25:1、好ましくは7:1〜15:1、最も好ましくは10:1〜14:1であり、前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が1.1:1〜12:1、好ましくは3:1〜10:1、最も好ましくは5:1〜7:1である、繊維複合材料成分を提供する。
【0011】
ポリイソシアヌレート(PIR)は、イソシアネート基の三量体形成により生じる。ポリイソシアヌレート環は、非常に安定している。開始時に、イソシアネートは、好ましくはポリオールと反応し、ポリウレタンを形成する。その後、OH基の大部分が反応した時、ポリイソシアヌレート形成がある。本発明の繊維補強された繊維複合材料成分は、緻密で、光学的に透明で、良好な熱安定性を有する。
【0012】
ポリウレタン/ポリイソシアヌレートは、原則的に、オキサゾリジノン基を全く含まない。予想に反して、オキサゾリジノン基が、ポリウレタン/ポリイソシアヌレート中に、僅かな副反応の結果、実際に生じた場合、その含有量は、ポリウレタン/ポリイソシアヌレートに対して5重量%未満である。オキサゾリジノン基は、ポリイソシアネートがエポキシドと反応した時に生じる。オキサゾリジノン基は、繊維複合材料成分中で分解しない。
【0013】
粘度は、DIN EN ISO 1342により測定し、実施例の項で詳細に説明する。
【0014】
繊維複合材料のポリウレタン/ポリイソシアヌレートマトリックスは、ポリイソシアヌレート含有量が55〜85重量%、好ましくは65〜75重量%である。
【0015】
繊維複合材料成分における充填剤含有量は、繊維複合材料成分の総重量に対して、好ましくは50重量%を上回り、より好ましくは55重量%を上回る。ガラス繊維の場合、繊維含有量は、例えば灰化し、重量を検査することにより、測定することができる。
【0016】
繊維複合材料成分、好ましくはガラス繊維複合材料成分、は、光学的に透明でよい。透明性のために、その成分は、例えば空気の包含に関して光学的に直接検査することができる。
【0017】
本発明の複合材料成分の成分を製造するには公知の方法、例えば手作業によるラミネーション(湿式圧縮方法)、トランスファー成形、型圧縮(mold compression)(SMC=シート成形コンパウンド又はBMC=バルク成形コンパウンド)、樹脂注入方法(=樹脂トランスファー成形)又は真空支援による注入方法(例えばVARTM(真空支援による樹脂トランスファー成形))又はプレプレグ技術を使用することができる。
【0018】
本発明は、本発明の繊維複合材料成分を製造する方法であって、
a)A)一種以上のポリイソシアネート、
B)一種以上のポリオール、
C)一種以上のポリエポキシド、
D)一種以上の潜在性触媒、
E)任意成分である添加剤、
F)任意成分である繊維材料
の混合物であって、前記混合物の25℃での粘度(DIN EN ISO 1342により測定)が20〜500mPas、好ましくは50〜400mPas、より好ましくは60〜350mPasであり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分B)中のOH基の数に対する比が10:1〜16:1、好ましくは11:1〜14:1であり、前記混合物における成分A)中のNCO基の数の成分C)中のエポキシ基の数に対する比が2:1〜25:1、好ましくは7:1〜15:1、最も好ましくは10:1〜14:1であり、前記混合物における成分C)中のエポキシ基の数の成分D)中の潜在性触媒のモル数に対する比が1.1:1〜12:1、好ましくは3:1〜10:1、最も好ましくは5:1〜7:1である混合物を製造し、
b)所望により、最初に繊維材料を型の一方の半分に装填し、
c)a)で製造した混合物を型の中に導入し、工程b)で最初に装填した繊維材料を含浸し、
d)工程a)における、又は工程b)における、又は工程a)及びb)の両方における混合物中の繊維材料を使用して、混合物を50℃〜170℃、好ましくは110℃〜140℃の温度で硬化させる
ことにより、本発明の繊維複合材料成分を製造する方法をさらに提供する。
【0019】
好ましくは、型半分には、繊維材料又は反応混合物を導入する前に、離型剤を提供(provide)する。型半分には、繊維材料又は反応混合物を導入する前に、さらに保護又は装飾層、例えば一つ以上のゲルコート層、をさらに導入することができる。装飾層は、望ましい特性に応じて、様々な材料からなることができる。使用する装飾層は、例えば、一般的に公知の、特に熱可塑性の、緻密な、又は発泡したフィルム、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)、ポリカーボナート(PC)、熱可塑性ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン及び/又はポリ塩化ビニル(PVC)を基剤とすることができる。さらに、被覆した、又は塗装したフィルムを使用することもできる。有用な装飾層には、全ての通常の金属ホイル、例えばアルミニウムホイル又は鋼ホイル、も含まれる。さらに、平らな織物、紙、木材(例えばベニヤ)、又はその他のポリウレタンのスプレー可能な、又はRIMスキンも装飾層として使用することができる。装飾表面層は、繊維複合材料成分の前及び後表面、又は両側表面を形成することができる。
【0020】
好ましいRTM方法(樹脂トランスファー成形)では、繊維材料を型の中に挿入した後、型を、型の反対側の半分で閉じ、型の中を減圧にし、次いで、反応混合物を圧力下で導入する。必要であれば、フローエイド(例えば圧力に対して安定した、ただし樹脂を透過できるマット)と呼ばれるものを、型の半分と繊維材料との間に導入し、これを硬化後に取り出す。
【0021】
本発明により使用する反応性樹脂混合物は、低粘度、長い処理時間及び低い硬化温度で短い硬化時間を有し、従って、繊維複合材料成分の迅速な製造が可能である。
【0022】
本発明により使用する反応性樹脂混合物のさらなる利点は、ポリオール及びポリエポキシドとポリイソシアネートの混合物の急速な相溶性の結果、処理特性が改良されていることである。ポリイソシアネート及びポリオールから構成された、今日使用されている系では、成分を数分前に混合する必要があるが、これは、ウレタン形成が開始されることによってのみ、成分の相溶性及び混合物の均質性が達成されるためであり、これが処理に必要である。さもなければ、不完全な硬化及び不均質な製品ができるであろう。反応性樹脂混合物の成分は、20〜100℃、好ましくは25〜70℃で混合し、繊維材料に施される。
【0023】
良好な繊維の含浸を確保するために、充填操作における反応性樹脂混合物は、好ましくは流動性であり、最大期間流動性のままである。これは、大きな部品の場合、ここでは充填時間が非常に長くなるので、特に必要である。好ましくは、本発明の反応性樹脂混合物の粘度は、25℃で、混合の直後では、20〜500mPas、好ましくは50〜400mPas、より好ましくは60〜350mPasである。好ましくは、本発明の反応性樹脂混合物の、一定温度25℃で成分を混合してから30分後の粘度は、800mPas未満、好ましくは500mPas未満、より好ましくは300mPas未満である。粘度は、各成分を25℃の一定温度で混合してから30分後に、回転粘度計でせん断速度60l/sで測定した。ポリオール成分B)における繊維材料F)を使用する場合、高充填剤含有量のみならず、繊維マットの良好な含浸が確保されるように、反応性樹脂混合物が低粘度であることも同様に有利である。
【0024】
本発明により使用される反応混合物は、短時間の混合が必要とされるだけなので、静止ミキサー又は動的ミキサーを備えたキャスティング機械で処理することができる。このことは、反応混合物が、良好な含浸性を得るために最大限の流動性を有していなければならないので、本発明の繊維複合材料成分の製造において非常に有利である。本発明に従わない混合物は、前もって数分間混合する必要があり、ウレタン基が形成される結果、すでに高すぎる粘度を示す。
【0025】
本発明により使用する反応混合物のさらなる利点は、一工程で処理することができ、140℃未満の低い硬化温度で十分なことである。
【0026】
ポリイソシアネート成分A)としては、通常の脂肪族、環状脂肪族及び特に芳香族ジ−及び/又はポリイソシアネートを使用する。そのような好適なポリイソシアネートの例は、ブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタン1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体状ビス(4,4’−イソシアネートシクロヘキシル)メタン又はその化合物と全ての異性体含有量との混合物、シクロヘキシレン1,4−ジイソシアネート、フェニレン1,4−ジイソシアネート、トリレン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート(TDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−及び/又は2,4’−および/又は4,4’−ジイソシアネート(MDI)及び/又はより高級な同族体(pMDI)、1,3−および/または1,4−ビス(2−イソシアネートプロパ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン(XDI)である。上記のポリイソシアネートと共に、一定比率の、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、カルボジイミド、ウレトンイミン、アロファナート又はビウレット構造を有する変性ポリイソシアネートを使用することもできる。使用するイソシアネートは、好ましくはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び特にジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(pMDI)の混合物である。ジフェニルメタンジイソシアネートとポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート(pMDI)の混合物は、好ましい単量体含有量が、60%〜100重量%、好ましくは70%〜95重量%、より好ましくは80%〜90重量%である。使用するポリイソシアネートのNCO含有量は、25重量%を上回り、より好ましくは30重量%を上回り、特に好ましくは32重量%を上回る。NCO含有量は、DIN 53185により測定できる。イソシアネートの粘度は、好ましくは≦250mPas(25℃で)、より好ましくは≦50mPas(25℃で)及び特に好ましくは≦30mPas(25℃で)である。
【0027】
ポリオールB)は、例えば数平均分子量Mが≧200g/mol〜≦8000g/mol、好ましくは≧500g/mol〜≦5000g/mol、より好ましくは1000g/mol〜≦3000g/molである。単独で加えるポリオールの場合、成分B)のOH数は、そのOH数である。混合物の場合、数平均OH数は報告されている。この値は、DIN 53240を参考にして決定できる。ポリオール処方物は、好ましくは、ポリオールとして、数平均OH数が25〜1000mgKOH/g、好ましくは30〜400 mgKOH/g、より好ましくは40〜80 mgKOH/gである処方物を含む。ポリオールの粘度は、好ましくは≦800mPas(25℃で)である。ポリオールは、少なくとも60%が第二級OH基、好ましくは少なくとも80%が第二級OH基、より好ましくは90%が第二級OH基を有する。プロピレンオキシドを基剤とするポリエーテルポリオールが、特に好ましい。好ましくは、使用するポリオールは、平均官能性が1.8〜4.0、より好ましくは1.9〜2.5である。
【0028】
本発明により、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はポリカーボナートポリオールを使用することができる。好適なポリエーテルポリオールは、ジ−又はポリ官能性スターター分子上へのスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドの付加生成物である。好適なスターター分子は、例えば水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルジグリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチルロールプロパン、プロピレングリコール、ペンタエリトリトール、エチレンジアミン、トルエンジアミン、トリエタノールアミン、ブタン−1,4−ジオール、ヘキサン1,6−ジオール及びそのようなポリオールとジカルボン酸又はヒドロキシル基を有するオイルとの低分子量ヒドロキシル−含有エステルである。
【0029】
ポリオールB)は、繊維、充填剤及び重合体を含むことができる。
【0030】
特に良好な適性を有するポリエポキシドC)は、低粘度脂肪族、環状脂肪族又は芳香族エポキシド及びそれらの混合物である。ポリエポキシドは、エポキシド、例えばエピクロロヒドリン、とアルコールの反応により製造できる。使用するアルコールは、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、シクロヘキサンジメタノール、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾールーホルムアルデヒドノボラック、ブタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチルロールプロパン又はポリエーテルポリオールでよい。例えばフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸及びそれらの混合物のグリシジルエステルを使用することもできる。エポキシドは、二重結合を含む有機化合物のエポキシド化により、例えば脂肪油、例えば大豆油、をエポキシド化された大豆油にエポキシド化することにより、製造することができる。ポリエポキシドは、反応性希釈剤として単官能性エポキシドを含むこともできる。ポリエポキシドは、アルコールとエピクロロヒドリン、例えばC4〜C18アルコールのモノグリシジルエーテル、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、の反応により製造できる。さらなる使用可能なポリエポキシドは、Henry Lee及びKris Neville、McGraw−Hill Book Company, 1967による「エポキシ樹脂のハンドブック(Handbook of Epoxy resins)」に記載されている。エポキシ当量が170〜250g/eq、より好ましくはエポキシ当量が176〜196g/eqを有するビスフェノールAのグリシジルエーテルを使用するのが好ましい。エポキシ当量は、ASTM D−1652により測定できる。例えばこの目的には、Eurepox 710又はAraldite(登録商標)GY−250を使用することができる。
【0031】
潜在性触媒D)としては、50℃〜120℃の範囲内で触媒的に活性である触媒を使用するのが好ましい。典型的な潜在性触媒は、例えば製造業者Air Productsから市販のブロックアミン及びアミジン触媒(例えばPolycat(登録商標)SA−1/10、Dabco KTM 60)及びTosoh Corporation(例えばToyocat(登録商標)DB2、DB30、DB31、DB40、DB41、DB42、DB60、DB70)及びHuntsman Corporation(例えばAccelerator DY 9577)である。ポリウレタン化学から公知の他の全ての典型的な、いわゆるスイッチ温度50℃〜120℃を有する、潜在性触媒を使用することもできる。
【0032】
使用する潜在性触媒D)は、公知の触媒、通常は、塩基(第三級アミン、弱酸の塩、例えば酢酸カリウム)及び有機金属化合物である。好ましい潜在性反応性触媒は、第三級アミンの塩である。潜在性反応性触媒は、例えば触媒的に活性なアミンの化学的ブロッキングにより得ることができる。化学的ブロッキングは、酸、例えばギ酸、酢酸、エチルヘキサン酸又はオレイン酸で第三級アミンの、又はフェノールの、又は三塩化ホウ素により、プロトン化することにより、行うことができる。アミンとしてはトリアルキルアミン及び複素環式アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジブチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルオクチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N−N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエトキシ)メタン、N,N,N’−トリメチル−N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、1,4−ジメチルピペリジン、1,2,4−トリメチルピペリジン、N−(2−ジメチルアミノエチル)モルホリン、1−メチル−4−(2−ジメチルアミノ) ピペリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン及び1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノナンを使用することができる。
【0033】
市販の潜在性反応性触媒は、Polycat(登録商標)SA1/10(フェノール−ブロック1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(=DBU))、Polycat(登録商標)SA 102/10、DABCO(登録商標)8154(ギ酸ブロックトリエチレンジアミン)又はDABCO(登録商標)WTである。トリクロロ(N,N−ジメチルオクチルアミノ)ホウ素が特に好ましい。
【0034】
所望により、添加剤E)を加えることができる。添加剤E)は、例えば追加の触媒、脱気剤、消泡剤、抑制剤、充填剤及び補強剤である。必要に応じて、さらなる公知の添加剤及び添加を使用することができる。
【0035】
耐火性を改良するために、難燃剤、例えばリン化合物、特にリン酸塩及びホスホン酸塩、及びハロゲン化ポリエステル及びポリオール又はクロロパラフィン、を所望によりマトリックスに加える。さらに、不揮発性難燃剤、例えばメラミン、又は火炎に露出した時に大きく膨張し、プロセスでさらなる加熱から表面を密封する、膨張可能なグラファイトを加えることができる。
【0036】
使用する繊維材料は、サイズ処理した、又はサイズ処理してない繊維でよく、例えばガラス繊維、炭素繊維、鋼又は鉄繊維、天然繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、玄武岩繊維又は炭素ナノチューブ(CNT)でよい。ガラス繊維及び炭素繊維が特に好ましい。繊維は、長さが0.4〜5000mm、好ましくは0.4〜2000mm、より好ましくは0.4〜1000mmでよい。長さが0.4〜50mmの短繊維と呼ばれるものを使用することもできる。連続的に繊維補強した複合材料成分を、連続繊維を使用して製造することができる。繊維は、繊維層内で、一方向に、不規則分布した、又は編み込んだ形態に配置することができる。複数の股から構成された繊維層を有する成分では、股毎の繊維方向を選択することができる。ここでは、一方向繊維層、クロス−ボンデッド層、又は多方向繊維層を、一方向又は編み込んだ股を互いに重ねた層を製造することができる。特に好ましくは、繊維材料として半加工の繊維、例えば織りあげた、スクリム、ブレード、マット、不織布、ループ−ドロウンニット及びループ形態ニット、又は3D半加工繊維製品を使用する。
【0037】
本発明の繊維複合材料成分は、自動車又は航空機製造、風力発電プラントの回転翼の製造用の構造部品、及び建物及び道路建設、及び高度の応力がかかる構造分野の部品に使用することができる。
【0038】
以下に本発明を実施例により、より詳細に説明する。
【実施例】
【0039】
本発明の、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリエポキシド及び潜在性触媒から形成された反応性樹脂混合物及び繊維補強複合材料成分を製造し、本発明に従わない、ポリイソシアネート、ポリオール及びポリエポキシド、所望により潜在性及び非潜在性触媒から形成された反応性樹脂混合物及び所望により複合材料成分と比較した。
【0040】
繊維補強複合材料成分をRTM方法(例1及び4)で製造するために、ガラス繊維布地(Hexcelから市販の0°/90°ガラス繊維布地、1102−290−0800、290g/m、K2/2)を、ガラス繊維含有量が、後の成分に対して約75重量%になるように、型の中に挿入した。続いて、閉じた型を130℃に加熱し、反応混合物を、圧力下で型の中に押し込み、仕上がった繊維複合材料成分を15分後に型から取り出した。
【0041】
繊維補強複合材料成分を真空注入方法(VARTM、例2及び3)で製造するために、直径6mmのテフロンチューブに、ガラス繊維粗糸(Vetroex(登録商標)EC2400 P207)を充填し、ガラス繊維含有量が、後の成分に対して約65重量%になるようにした。テフロンチューブの一端を反応混合物に浸漬し、他端からオイルポンプで真空を作用させることにより、反応混合物が吸い込まれた。チューブが満たされた後、それを80℃に熱処理した。テフロンチューブを取り除いた。
【0042】
機械的測定を、繊維補強した試料で行った。ガラス繊維含有量は、DIN EN ISO 1172により、試料を灰化することにより測定した。曲げ強さ及び曲げ伸長(flexural elongation)は、DIN EN ISO 178(RTM成分)又は3597−2(VARTM成分)により、3点曲げ試験により測定した。
【0043】
粘度は、成分を、混合直後に、及び混合してから60分後に、DIN EN ISO 1342により、回転粘度計により25℃で、せん断速度60l/sで測定した。
【0044】
難燃性の測定には、エッジ燃焼による垂直燃焼試験(vertical flam spread)を、DIN 53438−2に準じて小型バーナー試験により行った。
【0045】
本特許出願の文脈において、指数は、NCO/OH基の比を意味するものとする。
【0046】
ヒドロキシル価(OH価)は、本発明の反応混合物の全てのOH官能性構成成分を表す。
【0047】
使用した計器
DSC Texas Instrumentsから市販のDSC Q20 V24.8 Build 120計器
粘度計 Anton Paarから市販のMCR 501
【0048】
実施例1
OH価56mgKOH/g及び官能性2のポリエーテルポリオール(25℃における粘度400±50mPas、スタータとして1,2−プロピレングリコール、プロピレンオキシドに対して)60gを、Eurepox(登録商標)710(ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、平均分子量≦700g/mol、エポキシ当量183〜189g/eq、25℃における粘度10000〜12000mPas)26g及びメチルパラトルエンスルホナート250ppmと混合し、圧力1mbarで60分間脱気した。その後、Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11(Bayer Material Science AGから市販のポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、NCO含有量32.6重量%、25℃における粘度20mPas)214gを、DY 9577(登録商標)(Huntsman Corporationから市販のトリクロロ(N,N−ジメチルオクチルアミノ)ホウ素、融点25〜36℃)6gと混合し、ポリオール処方物に加え、1mbarで5分間撹拌しながら脱気した。その後、この反応混合物を使用して、RTM法により繊維補強成分を製造した。
【0049】
実施例2
OH価56mgKOH/g及び官能性2のポリエーテルポリオール(25℃における粘度400±50mPas、スタータとして1,2−プロピレングリコール、プロピレンオキシドに対して)60gを、Eurepox(登録商標)710(ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、平均分子量≦700g/mol、エポキシ当量183〜189g/eq、25℃における粘度10000〜12000mPas)26g及びメチルパラトルエンスルホナート250ppmと混合し、圧力1mbarで60分間脱気した。その後、Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11(Bayer Material Science AGから市販のポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、NCO含有量32.6重量%、25℃における粘度20mPas)214gを、DY 9577(登録商標)(Huntsman Corporationから市販のトリクロロ(N,N−ジメチルオクチルアミノ)ホウ素、融点25〜36℃)6gと混合し、ポリオール処方物に加え、1mbarで5分間撹拌しながら脱気した。その後、反応混合物を使用し、真空注入法により繊維補強成分を製造した。
【0050】
比較例3
OH価380mgKOH/g及び官能性3のポリエーテルポリオール(25℃における粘度600±50mPas、スタータとしてトリメチルロールプロパン、プロピレンオキシドに対して)30gを、Eurepox(登録商標)710(ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、平均分子量≦700g/mol、エポキシ当量183〜189g/eq、25℃における粘度10000〜12000mPas)30gと混合し、圧力1mbarで60分間脱気した。その後、Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11(Bayer Material Science AGから市販のポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、NCO含有量32.6重量%、25℃における粘度20mPas)53.03gを加え、1mbarで5分間撹拌しながら脱気した。その後、この反応混合物を使用し、真空注入法により繊維補強成分を製造した。
【0051】
比較例4
OH価56mgKOH/g及び官能性2のポリエーテルポリオール(25℃における粘度400±50mPas、スタータとして1,2−プロピレングリコール、プロピレンオキシドに対して)60gを、Eurepox(登録商標)710(ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、平均分子量≦700g/mol、エポキシ当量183〜189g/eq、25℃における粘度10000〜12000mPas)26g及びメチルパラトルエンスルホナート250ppmと混合し、圧力1mbarで60分間脱気した。その後、Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11(Bayer Material Science AGから市販のポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、NCO含有量32.6重量%、25℃における粘度20mPas)214gをDY 9577(登録商標)(Huntsman Corporationから市販のトリクロロ(N,N−ジメチルオクチルアミノ)ホウ素、融点25〜36℃)38.5gと混合し、ポリオール処方物に加え、1mbarで5分間撹拌しながら脱気した。この反応混合物で、RTM法により繊維補強成分を製造することは不可能であった。
【0052】
比較例5
OH価56mgKOH/g及び官能性2のポリエーテルポリオール(25℃における粘度400±50mPas、スタータとして1,2−プロピレングリコール、プロピレンオキシドに対して)60gを、Eurepox(登録商標)710(ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、平均分子量≦700g/mol、エポキシ当量183〜189g/eq、25℃における粘度10000〜12000mPas)26g及びメチルパラトルエンスルホナート250ppmと混合し、圧力1mbarで60分間脱気した。その後、Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11(Bayer Material Science AGから市販のポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、NCO含有量32.6重量%、25℃における粘度20mPas)103.6gをDY 9577(登録商標)(Huntsman Corporationから市販のトリクロロ(N,N−ジメチルオクチルアミノ)ホウ素、融点25〜36℃)6gと混合し、ポリオール処方物に加え、1mbarで5分間撹拌しながら脱気した。この反応混合物の混合直後の粘度は、25℃で1850mPasであり、非常に急速に増加した。従って、RTM法及びVARTM法により繊維補強成分を製造することは不可能であった。
【0053】
比較例6
OH価56mgKOH/g及び官能性2のポリエーテルポリオール(25℃における粘度400±50mPas、スタータとして1,2−プロピレングリコール、プロピレンオキシドに対して)60gを、Eurepox(登録商標)710(ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、平均分子量≦700g/mol、エポキシ当量183〜189g/eq、25℃における粘度10000〜12000mPas)26g及びメチルパラトルエンスルホナート250ppmと混合し、圧力1mbarで60分間脱気した。その後、Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11(Bayer Material Science AGから市販のポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、NCO含有量32.6重量%、25℃における粘度20mPas)214gをDesmorapid DB(Rhein Chemie Rheinau GmbHから市販のN,N−ジメチルベンジルアミン、室温で液体)2.95gと混合し、ポリオール処方物に加え、1mbarで5分間撹拌しながら脱気した。RTM法及びVARTM法により繊維補強成分を製造する際に、粘度が非常に急速に上がり、繊維補強成分を製造することができなかった。
【0054】
比較例7
OH価56mgKOH/g及び官能性2のポリエーテルポリオール(25℃における粘度400±50mPas、スタータとして1,2−プロピレングリコール、プロピレンオキシドに対して)60gを、Eurepox(登録商標)710(ビスフェノールAエピクロロヒドリン樹脂、平均分子量≦700g/mol、エポキシ当量183〜189g/eq、25℃における粘度10000〜12000mPas)26g及びメチルパラトルエンスルホナート250ppmと混合し、圧力1mbarで60分間脱気した。その後、Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11(Bayer Material Science AGから市販のポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートの混合物、NCO含有量32.6重量%、25℃における粘度20mPas)20.7gをDY 9577(登録商標)(Huntsman Corporationから市販のトリクロロ(N,N−ジメチルオクチルアミノ)ホウ素、融点25〜36℃)6gと混合し、ポリオール処方物に加え、1mbarで5分間撹拌しながら脱気した。反応混合物の粘度が混合直後に2060mPasであり、非常に急速に上がった。従って、RTM法及びVARTM法により繊維補強成分を製造することは不可能であった。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
本発明の実施例1は、非常に良好な機械的特性(25400MPaを超える弾性率、3.20%を超える曲げ伸長及び250℃を超えるHDT値)を有する緻密で、光学的に透明な複合材料成分を与える。繊維補強複合材料成分の製造には、特に非常に低い粘度が必要であり、これによって繊維スクリム又は布地が、より容易に、より良く浸漬又は含浸することができ、型がはるかに急速に、均質に充填される。これは、型が短時間だけ占有されるので、サイクル時間を短くすることができる。その上、特に大きな繊維複合材料成分には、長いポットライフが望ましい。本発明の実施例1では、ポットライフが24hを超えている。この期間の間、系の粘度はほとんど上昇しなかった。130℃で、成分は非常に急速に硬化した。比較例3から得た成分と比較して、本発明の繊維複合材料成分にさらなる熱処理は必要なかった。
【0058】
国際公開第2012/022683号パンフレットの先行技術では、系の粘度がはるかに急速に上昇し、ガラス繊維に必要な濡れ性が不十分であったので、RTM法による比較例が不可能であった。
【0059】
実施例1を繰り返した。しかし、実施例2における成分は、VARTM法により製造した。
【0060】
比較例3では、1.4のモル比NCO/OHを使用した。反応が非常に急速であったので、触媒は使用しなかった。比較例3における粘度は、25℃で混合後30分間で、すでに4230mPasである。粘度が急速に上昇したため、充填時間はより長く、サイクル時間時間は著しく増加し、個々の型が長く使用されるので、コストがはるかに高くなる。その上、高粘度の場合、繊維を濡らすのがはるかに困難であり、完成した繊維複合材料成分で離層が生じる。
【0061】
比較例4の重量及び比は、エポキシドと潜在性触媒の当量比が、触媒量の増加により、6.4から1に下がった以外、実施例1の重量及び比に対応する。ポットライフは、ここでは約40%短くなった。さらに、マトリックスは、130℃で完全には固化し得ない。130℃で60分後でも、材料は部分的に架橋していない形態にある。従って、完成した繊維複合材料成分を製造することはできなかった。
【0062】
比較例5では、本発明の実施例1と比較して、使用したイソシアネート(Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11)の量を下げることにより、NCO/OH当量比を12.4から6に下げた。対応して、NCO/エポキシド当量比も11.4から5.74に下がっている。NCO/OH当量比を下げた結果、出発粘度が25℃で約1850mPasであり、それによって型を均質に充填することは不可能であった。特に、マトリックス樹脂の繊維接着が、高粘度ではるかに困難である。その上、比較例5の系は、本発明の実施例1におけるように、室温で24時間を超える長いオープンポットライフを与えず、4時間後にはすでに固体であった。完成した繊維複合材料成分を製造することはできなかった。従って、さらなる機械的特性を突きとめることはできなかった。
【0063】
比較例6における重量及び比は、実施例1の重量及び比に相当するが、DY 9577(登録商標)触媒ではなく、対応するモル量の非潜在性触媒、この場合、Desmorapid DB、を使用した。この場合も、反応混合物の粘度は非常に急速に上昇し、型を、欠陥なしに、均質に充填することは不可能であった。オープンポットライフは、丁度25分間に短縮され、従って、本発明の実施例1におけるより23時間以上短い。完成した繊維複合材料成分を製造することは不可能であった。従って、さらなる機械的特性を突きとめることはできなかった。
【0064】
比較例6では、本発明の実施例1と比較して、使用したイソシアネート(Desmodur(登録商標)VP.PU 60RE11)の量を下げることにより、NCO/OH当量比を12.4から1.2に下げた。対応して、NCO/エポキシド当量比も11.4から1.15に下がった。NCO/OH当量比を下げた結果、出発粘度が25℃で約2060mPasであり、数分間で著しく上昇し、それによって型を均質に充填することは不可能であった。その上、比較例6の系は、非常に短い12分間未満のオープンポットライフしか有していなかった。完成した繊維複合材料成分を製造することはできなかった。従って、さらなる機械的特性を突きとめることはできなかった。
【0065】
大きな繊維複合材料成分の製造において高い生産性をもたらす、非常に良好な機械的特性及び250℃を超えるHDTと120mPasの非常に低い出発粘度及び非常に長い期間一定した低い粘度の組合せが、本発明の実施例によってのみ達成された。
【0066】
本発明の実施例1及び2の場合、火炎を取り除いた後、自己消化が55秒間で起こり、火炎の高さは最大で60mmであった。対照的に、比較例3の場合には、自己消化が起きず、火炎の高さは150mmを超えていた。従って、比較例3の成分は、燃焼試験に不合格である。