(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117411
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】板金結合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/00 20060101AFI20170410BHJP
B23K 20/02 20060101ALI20170410BHJP
B21D 39/03 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
B23K20/00 350
B23K20/02
B21D39/03 B
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-121175(P2016-121175)
(22)【出願日】2016年6月17日
(62)【分割の表示】特願2012-163271(P2012-163271)の分割
【原出願日】2012年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-165760(P2016-165760A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】306017405
【氏名又は名称】中部冷間株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 孝司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳典
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 友章
【審査官】
竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0279043(US,A1)
【文献】
特開2013−139048(JP,A)
【文献】
特開2009−90354(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00 − 20/26
B21D 39/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の板金を重ね合わせて前記第2の板金側からワーク支持ベースで支持し、前記第1の板金側から局所的にピンで押圧することでスポット膨出部を形成し、前記スポット膨出部で前記第1と第2の板金を圧接させる板金結合方法において、
前記ピンの外側に直動可能に嵌合した可動ベースを設けておき、
前記ワーク支持ベースと前記第2の板金との間に、前記ピンの押圧力で変形可能な背当部材を介在させた状態にし、
前記可動ベースと前記ワーク支持ベースとの間で、前記第1及び第2の板金と前記背当部材とを挟持した状態にして前記ピンで前記第1の板金をその板厚を超える移動量に亘って押圧し、前記第2の板金の外面からの前記スポット膨出部の膨出に伴って前記背当部材を窪ませながら、前記第1と第2の板金を圧接させることを特徴とする板金結合方法。
【請求項2】
前記ピンが前記第1の板金を押圧する移動量が前記第1の板金の板厚を超えるまで、前記背当部材のうち膨出した部分における外面を浮いた状態で維持するための逃がし孔を、前記ワーク支持ベースにおける前記ピンの延長線上に設けておくことを特徴とする請求項1に記載の板金結合方法。
【請求項3】
前記背当部材の引張り強さを前記第2の板金の引張り強さ以上としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の板金結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の板金と第2の板金とを重ね合わせて第1の板金側から局所的にピンで押圧して結合させる板金結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の板金結合方法としては、重ね合わせた第1と第2の板金を第2の板金側からワーク支持ベースで支持した状態で、第1の板金側から局所的にピンで押圧することでスポット膨出部を形成し、そのスポット膨出部で第1と第2の板金を圧接させるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。この結合方法によれば、第1の板金に対するピンの突入量が深まる程、重ね合わせ面の面積が拡大して新生面が多く出現し、結合強度が高まるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−150416号公報(段落[0016]〜[0029]、第1図,第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の板金結合方法において、ピンの突入量が深まると、スポット膨出部の突出量が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、板金対に形成されるスポット膨出部の突出量を抑えつつ、第1と第2の板金を強固に圧接させることが可能な板金結合方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、第1と第2の板金を重ね合わせて前記第2の板金側からワーク支持ベースで支持し、前記第1の板金側から局所的にピンで押圧することでスポット膨出部を形成し、前記スポット膨出部で前記第1と第2の板金を圧接させる板金結合方法において、前記ピンの外側に直動可能に嵌合した可動ベースを設けておき、前記ワーク支持ベースと前記第2の板金との間に、前記ピンの押圧力で変形可能な背当部材を介在させた状態にし、前記可動ベースと前記ワーク支持ベースとの間で、前記第1及び第2の板金と前記背当部材とを挟持した状態にして前記ピンで前記第1の板金をその板厚を超える移動量に亘って押圧し、前記第2の板金の外面からの前記スポット膨出部の膨出に伴って前記背当部材を窪ませながら、前記第1と第2の板金を圧接させることを特徴とする板金結合方法である。
【0007】
請求項2の発明は、前記ピンが前記第1の板金を押圧する移動量が前記第1の板金の板厚を超えるまで、前記背当部材のうち膨出した部分における外面を浮いた状態で維持するための逃がし孔を、前記ワーク支持ベースにおける前記ピンの延長線上に設けておくことを特徴とする請求項1に記載の板金結合方法である。
【0008】
請求項3の発明は、前記背当部材の引張り強さを前記第2の板金の引張り強さ以上としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の板金結合方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ワーク支持ベースと第2の板金との間に背当部材を介在させると共に、ピンの外側に直動可能に嵌合した可動ベースとワーク支持ベースとの間で、第1及び第2の板金と背当部材とを挟持した状態で、第1の板金側からピンによる押圧を行い、第2の板金の背面に突出したスポット膨出部によって背当部材を窪ませながら、第1と第2の板金を圧接させるための背圧を背当部材から第2の板金に付与するようにしたので、第1と第2の板金の重ね合わせ面の面積拡大によって出現した新生面同士を、ピンの押圧力と背当部材の背圧とによって強く押し付けながら摺接させることができる。これにより、スポット膨出部の突出量を抑えながら、第1と第2の板金を強固に圧接させることが可能になる。特に、背当部材の引張り強さを、第2の板金以上とすると、第1と第2の板金を良好に圧接させることができる(請求項3の発明)。
【0010】
ここで、スポット膨出部に押された背当部材の一部を逃がし孔に膨出させるようにしてもよいし(請求項2の発明)、背当部材の材質や形状によっては、スポット膨出部に押されて窪んだ分の体積を、板金対とワーク支持ベースとの間に形成された隙間に逃がすようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】背当プレートと第1及び第2の板金とがセットされた状態の板金結合プレス機の側断面図
【
図4】上挟持ブロックと下挟持ブロックとの間で板金対及び背当プレートを挟持した状態の板金結合プレス機の側断面図
【
図5】ピンによる押圧開始直後の板金結合プレス機の側断面図
【
図6】ピンによる押圧終了時の板金結合プレス機の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を
図1〜
図7に基づいて説明する。
図1には、本発明の板金結合プレス機10の側断面図が示されている。同図に示すように、板金結合プレス機10の基台11の上端部には円盤状のベースブロック12が備えられ、そのベースブロック12の中央部には円柱状の下挟持ブロック13が保持されている。ベースブロック12の上面と下挟持ブロック13の上面は面一になっている。下挟持ブロック13の中心部には逃がし孔14が形成されている。逃がし孔14は断面円形をなしていて、下挟持ブロック13を上下方向に貫通している。逃がし孔14内には、ノックアウトピン15が直動可能に備えられている。なお、ノックアウトピン15を備えていない構造にしてもよい。その場合、逃がし孔14は、下挟持ブロック13を貫通していない有底構造であってもよい。下挟持ブロック13は、本発明の「ワーク支持ベース」に相当する。
【0013】
下挟持ブロック13の上方には可動盤20が設けられている。可動盤20は、板金結合プレス機10のフレーム(図示せず)に上下動可能に支持されており、その可動盤20の下端部にはピンホルダ21が備えられている。ピンホルダ21の中心部には、下端開放の円筒孔22が形成されている。円筒孔22は断面円環状をなしており、その円筒孔22の下端部に円柱状の上挟持ブロック23(本発明の「可動ベース」に相当する)が直動可能かつ抜け止め状態で組み付けられている。ピンホルダ21と上挟持ブロック23の各中心部にはピン保持孔21A及びピン挿通孔23Aが貫通形成され、それらピン保持孔21Aとピン挿通孔23Aとに細長円柱状のピン24が通されている。ピン24の上端部はテーパー状に拡径しており、ピン保持孔21Aのテーパー部と嵌合している。また、ピン保持孔21Aに圧入された軸状のバックアップ部材27がピン24の上端部に突き当てられていて、ピンホルダ21とピン24とが一体に上下動するように固定されている。ここで、ピン24の形状は円柱状に限定するものではなく、多角柱状でもよい。
【0014】
ピンホルダ21の円筒孔22には、コイルスプリング25が収納されており、そのコイルスプリング25が円筒孔22の上端部と上挟持ブロック23の上面との間で突っ張り状態になっている。これにより、上挟持ブロック23が円筒孔22から下方に突出するように付勢され、常には、ピン24全体がピン挿通孔23A内に収容された状態(詳細には、ピン24の下端面と上挟持ブロック23の下端面とが面一の状態)に維持される。なお、ピンホルダ21のうちコイルスプリング25の内側に挿通された中心軸部21Bが、上挟持ブロック23の上面に陥没形成された中心凹部23Bに直動可能に嵌合していて、ピンホルダ21に対する上挟持ブロック23の傾きを防止することができる。
【0015】
さらに、本実施形態の板金結合プレス機10は、金属製の背当プレート30を備えている。背当プレート30は、例えば、平板状をなしており、板金対100と下挟持ブロック13との間に挟んで使用される(
図4参照)。背当プレート30は板金をボンデ処理してなり、板厚方向の両面全体にはボンデ皮膜が形成されている。
【0016】
背当プレート30は、特に材質を限定するものではない。例えば、アルミニウム系金属、鉄系金属、チタン系金属、銅系金属及びその他の金属でもよい。ここで、背当プレート30は、塑性変形のし易さが、結合の対象物である第1の板金101又は第2の板金102と同程度であると好ましい。また、背当プレート30は、第2の板金102の引張り強さ以上の引張り強さを有した金属であるとより好ましい。また、背当プレート30の板厚は、第1の板金101及び第2の板金102の板厚以上であるとより好ましい。具体的には、例えば、第1の板金101又は第2の板金102の打ち抜きにより生じた廃材を背当プレート30に利用してもよい。
【0017】
板金結合プレス機10の構成は以上である。ここで、第1及び第2の板金101,102は、材質を限定するものではない。例えば、純アルミニウム(A1000系)、アルミニウム合金(例えば、A2000系、A5000系、6000系)、純鉄、鉄合金(例えば、S10C〜45C、SUS304,SU316,SUS430)、純チタン(例えば、TB340C)、チタン合金、純銅(例えば、無酸素銅)、銅合金及び、その他の金属でもよい。また、第1と第2の板金101,102の組み合わせは、例えば、アルミニウム合金同士、鉄合金同士といった同種金属の組み合わせでもよいし、純鉄と鉄合金(例えば、SUS304,SU316,SUS430等)、鉄系金属(純鉄又は鉄合金)とアルミニウム系金属(純アルミニウム又はアルミニウム合金)、チタン系金属(純チタン又はチタン合金)と鉄系金属(純鉄又は鉄合金)、チタン系金属(純チタン又はチタン合金)とアルミニウム系金属(純アルミニウム又はアルミニウム合金)、銅系金属(純銅又は銅合金)と鉄系金属(純鉄又は鉄合金)、銅系金属(純銅又は銅合金)とアルミニウム系金属(純アルミニウム又はアルミニウム合金)といった異種金属の組み合わせでもよい。
【0018】
次に、板金結合プレス機10を使用して第1と第2の板金101,102を結合する方法を説明する。まずは、背当プレート30を下挟持ブロック13の上面に載置する。このとき、逃がし孔14の上面開口を背当プレート30で塞ぐように配置する(
図3参照)。
【0019】
次いで、第1と第2の板金101,102を重ね合わせた状態にして背当プレート30の上にセットする。第1と第2の板金101,102は、予めボンデ処理しておき、各板金101,102の各片面からボンデ皮膜及び酸化皮膜を除去した後で、それら皮膜が除去された皮膜除去面を重ね合わせる。皮膜の除去は、研磨(例えば、エメリー研磨やワイヤーバフ等)、研削又は薬品処理によって行えばよい。
【0020】
次に、板金結合プレス機10の可動盤20を降下させる。すると、
図4に示すように、ピン24と同時に上挟持ブロック23が板金対100の上面に当接して、板金対100及び背当プレート30のうち、ピン24が突き当たる部分(ピン24の延長線上に位置する部分)の周囲が、下挟持ブロック13と上挟持ブロック23との間で挟持される。この状態から、さらに可動盤20を降下させると、ピンホルダ21が上挟持ブロック23に対して降下して、
図5に示すように、ピン24が上挟持ブロック23の下端面から突出する。
【0021】
上挟持ブロック23の下端面から突出したピン24は、板金対100のうち、上側に配置された第1の板金101を局所的に押圧する。すると、第1の板金101のうち、ピン24で押圧された部分が局所的に窪んで有底円筒状の陥没部101cが形成される。また、陥没部101cの形成に伴って押し退けられた部分が、第2の板金102側に押し出されて、第1の板金101の重ね合わせ面101a(皮膜除去面)に略球面状の膨出面101eが形成される(
図7参照)。
【0022】
さらに、第1の板金101のうち、ピン24によって押し退けられた部分に押されて、第2の板金102が塑性変形する。即ち、第1の板金101に形成された膨出面101eに倣って第2の板金の重ね合わせ面102a(皮膜除去面)に略球面状の陥没面102eが形成され、その重ね合わせ面102aとは反対側の背面102bに膨出面102cが形成される。即ち、板金対100のうちピン24によって押圧された部分に、背当プレート30側に膨出したスポット膨出部100aが形成される。そして、例えば、
図6に示すように、第1の板金101に形成された陥没部101cの底面101dが、第2の板金102の背面102bと重ね合わせ面102aとの中間に形成されるまで、可動盤20を降下させてピン24を陥没部101c内に押し込んでいく。
【0023】
上述したように、板金対100がピン24に押されて塑性変形すると、これに押されて背当プレート30が塑性変形する。即ち、背当プレート30のうち、板金対100のスポット膨出部100aに押された部分が逃がし孔14内に膨出する。また、背当プレート30は、板金対100に対するピン24の押圧が開始された当初(スポット膨出部100aの形成当初)からピン24の押圧が終了するまで、第1と第2の板金101,102を圧接させるための背圧を付与し続ける。
【0024】
第1と第2の板金101,102が上記の如く塑性変形する過程で、それらの重ね合わせ面101a,102aの面積が徐々に拡大して新生面が出現すると共に、それら新生面同士が摺接する。このとき、ピン24の押圧力と背当プレート30の背圧とにより、新生面同士が強く押し付けられながら摺接する。これにより、第1と第2の板金101,102の重ね合わせ面101a,102a同士をスポット膨出部100aにおいて圧接させることができる。
【0025】
ピン24による押圧が完了したら可動盤20を上昇させ、結合された板金対100及び使用済みの背当プレート30を板金結合プレス機10から取り除く。このとき、ノックアウトピン15を直動させて板金対100及び背当プレート30を下方から突き上げてもよい。背当プレート30の板厚方向の両面にはボンデ皮膜が形成されているから、背当プレート30と下挟持ブロック13との間及び、背当プレート30と板金対100(第2の板金102)との間で凝着が発生することを確実に防止することができる。また、第1の板金101の上面101bもボンデ皮膜が形成されているから、ピン24と第1の板金101との間で凝着が発生することを防止することができる。
【0026】
このように、本実施形態によれば、下挟持ブロック13と第2の板金102との間に背当プレート30を介在させると共に、ピン24の外側に直動可能に嵌合した上挟持ブロック23と下挟持ブロック13との間で、第1及び第2の板金101,102と背当プレート30とを挟持した状態で、第1の板金101側からピン24による押圧を行い、第2の板金102の背面102bに突出したスポット膨出部100aによって背当プレート30を窪ませながら、第1と第2の板金101,102を圧接させるための背圧を背当プレート30から第2の板金102に付与するようにしたので、第1と第2の板金101,102の重ね合わせ面101a,102aの面積拡大によって出現した新生面同士を、ピン24の押圧力と背当プレート30の背圧とによって強く押し付けながら摺接させることができる。これにより、スポット膨出部100aの突出量を抑えながら、第1と第2の板金101,102を強固に圧接させることが可能になる。
【0027】
[実施例]
上記実施形態で説明した板金結合プレス機10を使用し、以下の条件において、第1と第2の板金101,102(板金対100)を結合した。即ち、第1の板金101として、厚さ3.0mmの鉄系合金(炭素鋼S45C)製の板金を用意し、第2の板金102として、厚さ3.0mmのアルミニウム系合金(A2017)製の板金及び厚さ3.0mmの純アルミニウム(A1000系)製の板金を用意し、背当プレート30として、厚さ3.0mmの鉄系合金(炭素鋼S45C)製の板金を用意した。そして、直径5.0mmのピン24を用いて、第1の板金101に形成される陥没部101cの底面101dの位置が、第2の板金102の背面102bから1.5mmだけ、重ね合わせ面102a側にオフセットした位置になるようなスポット膨出部100aを形成して、第1と第2の板金101,102を結合した。
【0028】
上記条件で結合された板金対100に対して「JIS Z3137」で規定された十字引張試験を行い、結合強度を確認した。また、十字引張試験によって分離した第1及び第2の板金101,102の剥離面を電子顕微鏡によって観察する実験を行った。
【0029】
[実験結果]
十字引張試験の結果、第2の板金102をアルミニウム系合金(A2017)製の板金とした場合に、第1と第2の板金101,102を分離させるのに要した荷重(結合強度)は約500[kgf]であった。また、第2の板金102を純アルミニウム(A1000系)製の板金とした場合に、第1と第2の板金101,102を分離させるのに要した荷重(結合強度)は約226[kgf]であった。また、電子顕微鏡による観察の結果、第1の板金101の剥離面(重ね合わせ面101aに形成された膨出面101e)には、第2の板金102(アルミニウム系合金又は純アルミニウム)の一部が付着していることが確認できた。このことから、スポット膨出部100aでは、第1の板金101と第2の板金102とが圧接されていることが分かった。
【0030】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0031】
(1)上記実施形態では、下挟持ブロック13の上面13Aに逃がし孔14を形成していたが、逃がし孔14を形成せずに、背当プレート30のうち、スポット膨出部100aによって押し退けられた部分を、板金対100と下挟持ブロック13との間の隙間で側方に逃がすようにしてもよい。
【0032】
(2)上記実施形態では、板金対100の1箇所にスポット膨出部100aを形成して圧接させる構成であったが、ピンホルダ21に複数のピン24を取り付けておき、同時に複数のスポット膨出部100aを形成して圧接させることが可能な構成としてもよい。その場合、複数のピン24にそれぞれ対応するように複数の逃がし孔14を設けてもよいし、複数のピン24で1つの逃がし孔14を共用する構成にしてもよい。複数のピン24で1つの逃がし孔14を共用する構成にすれば、ピン24と同一複数の逃がし孔14を設けた場合に比べて、下挟持ブロック13の制作費を抑えることができる。
【0033】
(3)上記実施形態では、背当プレート30が金属製であったが、背当プレート30を弾性変形可能な樹脂製又はゴム製としてもよい。このようにすれば、背当プレート30を繰り返し使用することが可能になる。
【0034】
(4)上記実施形態では、第2の板金102の背面102bにボンデ皮膜が形成されていたが、背当プレート30の板厚方向の両面にボンデ皮膜が形成されている場合には、第2の板金102の背面102bのボンデ皮膜は無くてもよい。
【0035】
(5)上記実施形態では、第1及び第2の板金のうち重ね合わせ面101a,102aとは反対側の上面101b及び背面102bにボンデ皮膜を形成していたが、ボンデ皮膜を形成する替わりに油(塑性加工油)を塗布しても、同等の効果を奏する。
【0036】
(6)上記実施形態では、第1と第2の板金101,102とを重ね合わせてなる板金対100の下に背当プレート30が配置されて、板金対100を上方からピン24で押圧する構成となっていたが、板金対100の上に背当プレート30が配置されて、板金対100を下方からピン24で押圧する構成としてもよい。
【0037】
(7)上記実施形態において、本発明に係る「背当部材」として例示した背当プレート30は板状であったが、「背当部材」は板状である必要はなく、例えば、ブロック状(丸棒材を輪切りにした切断材)でもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 板金結合プレス機
12 ベースブロック
13 下挟持ブロック(ワーク支持ベース)
14 逃がし孔
20 可動盤
21 ピンホルダ
23 上挟持ブロック(可動ベース)
24 ピン
30 背当プレート(背当部材)
100a スポット膨出部
101 第1の板金
102 第2の板金