特許第6117449号(P6117449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117449フィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117449
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】フィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20170410BHJP
   C08J 3/07 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C08J3/16CFD
   C08J3/07
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-549751(P2016-549751)
(86)(22)【出願日】2015年7月16日
(65)【公表番号】特表2017-504707(P2017-504707A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】KR2015007414
(87)【国際公開番号】WO2016010388
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0090590
(32)【優先日】2014年7月17日
(33)【優先権主張国】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516229106
【氏名又は名称】ウルトラ ヴイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ミュン
(72)【発明者】
【氏名】キム サン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ビェン モ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス マイケル ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】クォン ハン ジン
【審査官】 佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0129669(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0075618(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0104219(KR,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2002−0008815(KR,A)
【文献】 特開平08−052205(JP,A)
【文献】 特開昭53−145905(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0488218(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00 − 64/42
C08J 3/00 − 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)過フッ素アルコールにポリジオキサノンを溶解させてポリジオキサノン溶液を製造する段階;
b)ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド三元共重合体、酸(acid)、水及び界面活性剤を混合撹拌して高分子乳化溶液を製造する段階;
c)前記高分子乳化溶液に前記ポリジオキサノン溶液を混合撹拌してポリジオキサノン粒子を生成させる段階;
d)ポリジオキサノン粒子が分散されている分散溶液に安定化剤を添加して撹拌して粒子を熟成させる段階;及び
e)ポリジオキサノン粒子を回収した後、洗浄して精製する段階;
を含む、フィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記a)段階の過フッ素アルコールはフッ素原子が3〜13個置換された炭素数1〜6のアルコール化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記a)段階の過フッ素アルコールは1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールであることを特徴とする、請求項2に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項4】
前記a)段階のポリジオキサノン溶液は、ポリジオキサノンの濃度が1.0〜5.0重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項5】
前記b)段階の高分子乳化溶液は、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド三元共重合体の濃度が0.1〜2.0重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項6】
前記b)段階のポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド三元共重合体は重量平均分子量が1,000〜50,000g/molの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項7】
前記b)段階の酸(acid)は、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、炭酸、リン酸及びホウ酸からなる群から選択された1種以上で、水に20〜40重量%の濃度で溶解させて水溶液として使うことを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項8】
前記b)段階の酸(acid)は、高分子乳化溶液のpHが1.5〜4.5となるように使うことを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記b)段階の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタントリオレエートからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記c)段階の撹拌は超音波振動または高速撹拌器を使う条件で行われることを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項11】
前記d)段階の安定化剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチルアセテート、酢酸、アセトアルデヒド、メチレンクロライド、クロロホルム、アセトン、ジメチル及びその水溶液からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【請求項12】
前記d)段階の安定化剤は、前記高分子乳化溶液100重量部を基準に100〜500重量部使うことを特徴とする、請求項1に記載のフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法に係り、より詳しくは過フッ素アルコールに溶解されたポリジオキサノン溶液をポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド三元共重合体が含まれた高分子乳化溶液に一定の割合で混合してポリジオキサノン粒子を生成した後、熟成及び洗浄によって回収する過程が含まれたポリジオキサノン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子粒子の製造方法としては、大別して、乳化重合法、分散重合法、シード重合法及び懸濁重合法などがある。その中でも、乳化重合法によれば、粒子サイズの分布度が極めて均一な粒子を製造し易くて、現在一番広く使われている。しかし、乳化重合法で製造される高分子粒子は直径が1μmを超えなく、粒子の安全性を付与するために使われる界面活性剤が粒子の表面に吸着され、これによって泡が発生するとか高分子の物性低下などの欠点がある。
【0003】
分散重合は、重合反応に使われる反応媒質として、エタノール及びメタノールなどを単独で使うかあるいはトルエン、ベンゼン、2−メトキシエタノールなどの異種の有機溶媒または少量の水とともに混合して共溶媒として使うことができ、前記媒質を用いた分散重合によって生成される高分子粒子のサイズは通常1μm未満である。また、分散重合法は、均一な粒子を得る重合過程が、反応組成物の変化、酸素の存在などの反応環境に非常に敏感に依るので、粒子分布度が多様に変わるだけでなく、工程の再現性が良くない欠点がある。
【0004】
シード重合は乳化重合または分散重合によって製造された均一なサイズの粒子を分散媒に分散させた後、単量体の膨潤過程によってミクロン単位の均一な粒度分布度を持つ高分子粒子を製造する方法である。このようなシード重合は、粒子サイズの調節は容易であるが、重合過程が非常にややこしくて2段階または3段階の重合過程が必要であるので、長期間が要求される欠点を持つ。
【0005】
懸濁重合は、水を分散媒にし、高分子の立体安定剤の存在下で、水に不溶性である単量体を用いて高分子粒子を製造する方法である。しかし、この重合は機械的力によって収容液内に存在する単量体を分散させて製造するので、得られる高分子粒子のサイズが0.1〜1000μmの非常に広い分布度を持つため、粒子サイズ分布度を低めるために付加の機械装置を必要とする。アメリカ特許第4,017,670号、同第4,071,670号、同第4,085,169号、同第4,129,706号、ヨーロッパ特許第0,443,609号には直列式及び並列式で連結された三重反応器を用いて10,000〜30,000rpmの非常に高い撹拌速度で懸濁重合を実施し、最終に収得される粒子サイズが5〜50μmの高分子粒子の製造方法が開示されている。アメリカ特許第5,852,140号には、一次に塊状重合によって単量体を転換率が約50%に至るまで重合させた後、このオリゴマーを強い攪拌器ミキサーを用いて、分散媒存在下の水溶液に分散させる二次重合によって0.1〜5μmのサイズを持つ高分子粒子を製造する方法が開示されている。
【0006】
しかし、このような懸濁重合で粒子サイズの均一な高分子粒子を製造するのには多くの難しさが伴い、これを解決するための方法として日本国特許公開平11−6−615号、及び国際特許公開WO99/19370号にはSPG(Shirasu porous glass)膜乳化法によって比較的サイズの均一な単量体液滴から分散剤存在下の水溶液を形成した後、懸濁重合法で直径1〜10μmの均一なサイズを持つことになる方法が開示されている。しかし、前記方法は膜乳化装置の追加的な工程が必要であり、またポリジオキサノン(PDO)粒子を製造するとき、高価の溶媒である1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールを使用するため、経済性が落ちるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、生体への適用が容易でありながらも生体適合性に優れ、生体内に注入されて組職の間に数ヶ月にわたって皮膚ボリューム感を付与することができるポリジオキサノン粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記方法で製造された粒子を皮膚美容成形用または陷沒した組職再建用注射剤として使用する用途を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような課題解決のために、本発明は、
a)過フッ素アルコールにポリジオキサノンを溶解させてポリジオキサノン溶液を製造する段階;
b)ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−ポリエチレンオキサイド三元共重合体、酸(acid)、水及び界面活性剤を混合撹拌して高分子乳化溶液を製造する段階;
c)前記高分子乳化溶液に前記ポリジオキサノン溶液を混合撹拌してポリジオキサノン粒子を生成させる段階;
d)ポリジオキサノン粒子が分散されている分散溶液に安定化剤を添加して撹拌して粒子を熟成させる段階;及び
e)ポリジオキサノン粒子を回収した後、洗浄して精製する段階;
を含むフィラー用ポリジオキサノン粒子の製造方法をその特徴とする。
【0010】
また、本発明は前記の方法で製造されたポリジオキサノン粒子が含まれた皮膚美容成形及び陷沒した組職再建用注射剤をその特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、ポリエチレンオキサイド(PEO)−ポリプロピレンオキサイド(PPO)−ポリエチレンオキサイド(PEO)三元共重合体の含有量及び酸(acid)の含有量によって所望サイズのポリジオキサノン粒子を製造することができる効果がある。
【0012】
本発明の製造方法は、既存の粒子製造方法に比べ、工程が単純で初期費用及び追加工程の投入が不要であり、かつ粒子製造の際、短時間で大量生産が可能であって、追加費用を節減することになり、溶媒に対するポリジオキサノンの溶解度が比較的低いにもかかわらず、最少の溶媒を使って酸及び水と三元共重合体の相互作用により、最少の有機溶媒の使用によっても粒子の製造が可能な効果がある。
【0013】
本発明の方法で製造されたポリジオキサノン粒子は、生体への適用が容易でありながらも生体適合性に優れた素材からなり、生体内に注入されて皮膚真皮層を活性化させ、粒子周囲の細胞が再生されてより弾力的で生動感ある皮膚弾力を維持する効果がある。
【0014】
本発明の方法で製造されたポリジオキサノン粒子は皮膚の内部に注入されて数ヶ月にわたって皮膚ボリューム感を維持することができるので、フィラー剤として広範囲に適用される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の製造方法で製造した非晶形のポリジオキサノン粒子の電子燎微鏡写真(×100)である。
図2】既存のシード重合法で製造した非晶形のポリジオキサノン粒子の電子燎微鏡写真(×100)である。
図3】既存の懸濁重合法で製造したポリジオキサノン粒子の写真で、粒子が形成されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は生体への適用が容易でありながらも生体適合性に優れ、生体内に注入されて組職成長に有用な効果を現すので、組織工学分野で広範囲な用途に使われるポリジオキサノン粒子の製造方法に関する。
【0017】
本発明によるポリジオキサノン粒子の製造方法を段階別により具体的に説明すれば下記のようである。
【0018】
第1段階はポリジオキサノン溶液を製造する段階である。
【0019】
すなわち、過フッ素アルコールにポリジオキサノンを溶解してポリジオキサノン溶液を製造する。ポリジオキサノン(Polydioxanone;PDO)は生体に適した生分解性高分子で、重量平均分子量が200,000〜250,000の範囲のものを使う。
【0020】
前記ポリジオキサノンを溶かす溶媒としては過フッ素アルコールを使う。過フッ素アルコールはフッ素原子が3〜13個置換された炭素数1〜6のアルコール化合物で、例えば1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールが含まれることができる。
【0021】
前記ポリジオキサノン溶液はポリジオキサノンの濃度が1.0〜5.0重量%を維持するようにする。その濃度が前記範囲を超えれば、以後に実施されるポリジオキサノン粒子生成段階で水/有機層に層分離が発生して安定的に粒子が形成されなく、生成された粒子のサイズが不均一な問題がある。
【0022】
第2段階は高分子乳化溶液を製造する段階である。
【0023】
すなわち、ポリエチレンオキサイド(PEO)−ポリプロピレンオキサイド(PPO)−ポリエチレンオキサイド(PEO)三元共重合体、酸(acid)、水及び界面活性剤を混合撹拌して高分子乳化溶液を製造する。
【0024】
前記PEO−PPO−PEO三元共重合体は、ポリジオキサノン溶液が水に安定的に均一に分散されるようにする安定剤としての役目をする。前記PEO−PPO−PEO三元共重合体は重量平均分子量が1,000〜50,000g/molの範囲であるものを使い、好ましくは10,000〜20,000g/molの範囲であるものを使う。本発明において、PEO−PPO−PEO三元共重合体はポリジオキサノンの表面に吸着されて粒子間の相互作用を防ぐ役目をする。すなわち、PEO−PPO−PEO三元共重合体水溶液とポリジオキサノン粒子の間で橋の役目をすることにより、分散されたポリジオキサノン粒子が疎水性相互作用(hydrophobic interaction)によって互いに凝集して沈澱を引き起こす現象を防止する。具体的には、ポリジオキサノン溶液に分散され、PEO−PPO−PEO三元共重合体の疎水性グループが溶媒に溶けているポリジオキサノンをくるんでマイクロエマルジョン化して粒子に吸着膜を形成することで、凝集を防止する作用をする。PEO−PPO−PEO三元共重合体は、高分子乳化溶液中に0.1〜2.0重量%の濃度で含まれることが良い。高分子乳化溶液中に含まれたPEO−PPO−PEO三元共重合体の濃度が0.1重量%未満であれば、ポリジオキサノンが溶媒内に均一に分散されずに互いに凝集する現象が起こることができ、2.0重量%の濃度を超えれば、ポリジオキサノン粒子のサイズ及び形状が一定に維持されない問題がある。
【0025】
本発明は、高分子乳化溶液を製造する過程で酸(acid)を含ませる。酸(acid)はPEO−PPO−PEO三元共重合体の存在下でポリジオキサノン粒子の形成を助ける役目をする。前記酸(acid)は、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、炭酸、リン酸及びホウ酸からなる群から選択された1種以上を使うことができ、水に20〜40重量%の濃度で溶解させて水溶液に製造して使うことができる。前記酸は、40重量%の濃度の酸溶液を使う場合、PEO−PPO−PEO三元共重合体が含まれた溶液100重量部を基準に0.5〜3.5重量部の範囲で使うことができ、酸溶液は高分子乳化溶液のpHを1.5〜4.5の範囲に調節することができる含量範囲で使われることができる。酸(acid)の使用量が前記範囲を超えれば、ポリジオキサノン粒子のサイズが不均一になることができ、または層分離現象によって粒子が形成されない問題がある。
【0026】
水と界面活性剤はエマルジョンの形成のために使われる。エマルジョン形成のために使われる水と界面活性剤は1:0.001〜1:0.02重量比の範囲で使うことが良く、好ましくは1:0.01〜1:0.02の範囲で使うことが良い。前記界面活性剤としては通常の界面活性剤を使い、陰イオン性、陽イオン性または両性の界面活性剤のいずれも使うことができる。本発明は、界面活性剤として代表的に市販されているツイン(Tween)製品を使った。例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ツイン20商品)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(ツイン40商品)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(ツイン60商品)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ツイン80商品)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(ツイン85商品)などが含まれることができる。
【0027】
第3段階はポリジオキサノン粒子を生成させる段階である。
【0028】
すなわち、前記準備した高分子乳化溶液に前記ポリジオキサノン溶液を混合した後、撹拌することで、平均粒径が1〜150μmで、粒径サイズが均一なポリジオキサノン粒子を製造する。前記撹拌過程では、均一な粒子形成のために超音波振動または高速撹拌器を使うなど、当該分野で通用される粒子安定化法をさらに遂行することができる。本発明は、ポリジオキサノン粒子生成段階で行う粒子安定化法に対しては特に制限しない。
【0029】
第4段階は生成されたポリジオキサノン粒子を熟成させる段階である。
【0030】
すなわち、ポリジオキサノン粒子が分散されている分散溶液に安定化剤を添加し、撹拌することで、粒子を熟成させる。本発明は、粒子が安定的に熟成できるように安定化剤を添加する。前記安定化剤は、炭素数1〜4のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール)、エチルアセテート、酢酸、アセトアルデヒド、メチレンクロライド、クロロホルム、アセトン、ジメチルホルムアミド及びその水溶液からなる群から選択された1種以上を使うことができる。本発明の実施例においては、主に安定化剤としてエタノールまたはエタノール水溶液を使ったが、本発明の安定化剤がこれらに制限されるものでは決してない。前記安定化剤は高分子乳化溶液100重量部を基準に100〜500重量部の範囲で使うことができ、前記範囲を超えれば、本発明が目的するサイズを持つポリジオキサノン粒子を得ることができない。
【0031】
第5段階はポリジオキサノン粒子を精製する段階である。
【0032】
すなわち、溶液からポリジオキサノンナノ粒子を回収した後、溶媒で洗浄して精製する。洗浄溶媒としては、水の外にも、エタノール、イソプロピルアルコール、ジエチルエーテル、エチルアセテート、及び酢酸の中で選択された1種以上を使うことができる。より好ましくは水とエタノールの混合溶媒を使い、水:エタノールを5:5→9:1の重量比に変化させながら洗浄することである。
【0033】
以上の製造方法で製造されたポリジオキサノン粒子は生体への適用が容易でありながらも生体適合性に優れた素材からなっているので、皮膚美容成形及び陷沒組職再建用注射剤として有用である。本発明の製造方法で製造されたポリジオキサノン粒子は皮膚内に注入されて皮膚真皮層を活性化させ、粒子周囲の細胞が再生してより弾力的で動感ある皮膚弾力を維持させる。また、皮膚の内部に注入されて数ヶ月にわたって皮膚ボリューム感を維持することができる。
【0034】
したがって、本発明は、前記製造方法で製造されたポリジオキサノン粒子を含むフィラー用注射剤を権利範囲に含む。フィラー用注射剤に製造するためには、前記ポリジオキサノン粒子を有効成分として使い、その他に美容成形を目的として使用される通常のフィラー添加剤をさらに含むことができる。本発明で使用可能なフィラー添加剤は、ヒアルロン酸、ヘパリン、デキストラン、アルギン酸、コラーゲン、アルブミン、ゼラチン、キトサン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエチレングリコール、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリヒドロオキシバレート、アルギネート、カルボキシメチルセルロースからなる群から選択された1種以上である。前記フィラー添加剤の使用量は当該分野で通常に使われる含量の範囲のもので、本発明はフィラー用注射剤の製造方法やフィラー添加剤の含量に対しては特に制限しない。
【0035】
以上説明したような本発明を下記の実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
実施例1.
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール50gにポリジオキサノン(PDO;重量平均分子量200,000)0.5gを溶かしてポリジオキサノン溶液を製造した。
【0037】
別の容器にポリエチレン(PEO)−ポリプロピレン(PPO)−ポリエチレン(PEO)三元共重合体(BASF社製、製品名F127、重量平均分子量12,600)10g、40%塩酸水溶液25g、水940g及び界面活性剤としてのツイン−80(Tween−80)0.1gを入れ、撹拌してpH2.5程度の高分子乳化溶液を製造した。
【0038】
前記ポリジオキサノン溶液と高分子乳化溶液を混合した後、1500rpmで高速撹拌し、ポリジオキサノン粒子がすべて均一に分散されている分散溶液を製造した。前記分散溶液1025gに安定化剤としてエタノール1025gを添加し、100rpmで撹拌しながら粒子を熟成させた。熟成されたポリジオキサノン粒子を濾過した後、水で洗浄して乾燥した。
【0039】
前記製造方法で製造されたポリジオキサノン粒子のサイズ及び物性を測定した結果は下記表1に示した。
【0040】
実施例2.ポリジオキサノン溶液の濃度別ポリジオキサノン粒子の特性
前記実施例1と同様な方法でポリジオキサノン粒子を製造するが、ポリジオキサノン溶液の製造時にポリジオキサノンの濃度を0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0及び5.5に変更しながらポリジオキサノン粒子を製造した。ポリジオキサノン溶液の濃度別に製造されたポリジオキサノン粒子の収率及びサイズを測定して、下記表1にまとめて示した。
【0041】
【表1】
【0042】
前記表1によれば、ポリジオキサノン溶液の濃度が1〜5重量%であるとき、ポリジオキサノン粒子が形成されることを確認することができる。好ましくは、ポリジオキサノン溶液の濃度が2〜4重量%であるとき、より均一なサイズのポリジオキサノン粒子を製造することができることを確認することができる。
【0043】
実施例3.高分子乳化溶液内三元共重合体の濃度別ポリジオキサノン粒子の特性
前記実施例1と同様な方法でポリジオキサノン粒子を製造するが、高分子乳化溶液の製造時に使われるPEO−PPO−PEO三元共重合体の含量を異にしながらポリジオキサノン粒子を製造した。すなわち、PEO−PPO−PEO三元共重合体は、高分子乳化溶液中の濃度を0.05、0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5重量%に変更し、高分子乳化溶液の組成別に製造されたポリジオキサノン粒子の収率及びサイズを測定して、下記表2にまとめて示した。
【0044】
【表2】
【0045】
前記表2によれば、高分子乳化溶液中のPEO−PPO−PEO三元共重合体の濃度が0.1〜2.0重量%であるとき、ポリジオキサノン粒子が形成できることを確認することができる。PEO−PPO−PEO三元共重合体の濃度が0.1重量%または2.5重量%であるときはポリジオキサノン粒子が形成されないか粒子サイズが不規則なことを確認することができる。
【0046】
実施例4.高分子乳化溶液内の水と界面活性剤の濃度別ポリジオキサノン粒子の特性
前記実施例1と同様な方法でポリジオキサノン粒子を製造するが、高分子乳化溶液製造時にエマルジョン形成のために使われる水と界面活性剤の重量比を異にしながらポリジオキサノン粒子を製造した。すなわち、水/界面活性剤の重量比を1/0、1/0.001、1/0.01、1/0.02、1/0.1に変更し、高分子乳化溶液の組成別に製造されたポリジオキサノン粒子の収率及びサイズを測定して、下記表3にまとめて示した。
【0047】
【表3】
【0048】
前記表3によれば、高分子乳化溶液中に含まれる水/界面活性剤の重量比が1/0.001〜1/0.02重量比であるとき、ポリジオキサノン粒子が形成できることを確認することができる。一方、水/界面活性剤の重量比が1/0.1であるときはポリジオキサノン粒子が形成されなかった。
【0049】
実施例5.高分子乳化溶液内塩酸の添加量別ポリジオキサノン粒子の特性
前記実施例1と同様な方法でポリジオキサノン粒子を製造するが、高分子乳化溶液製造時に添加される塩酸水溶液の添加量を異にしながらポリジオキサノン粒子を製造した。すなわち、40重量%塩酸水溶液を添加して高分子乳化溶液のpHを調節し、高分子乳化溶液のpHによって生成される粒子の収率及びサイズを測定して、下記表4にまとめて示した。
【0050】
【表4】
【0051】
前記表4によれば、高分子乳化溶液のpHを1.5〜4.5範囲に維持するとき、粒子の平均サイズが1〜150μmを維持することを確認することができる。しかし、高分子乳化溶液のpHが高くなるにつれて粒子サイズが増加する傾向を示し、pH1.0未満であれば粒子が形成されないか1μm未満の微細粒子が形成され、pH5.0を超えれば150μm以上の巨大粒子が形成されることを確認することができる。
【0052】
比較例1
ポリジオキサノン(PDO:Polydioxanone)粒子をシード重合で製造した。
【0053】
すなわち、ポリジオキサノンシード粒子を1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールの分散媒に分散させた後、単量体に膨潤過程によってミクロン単位の均一な粒度分布度を持つ前記ポリジオキサノン(PDO:Polydioxanone)粒子を製造した。
【0054】
比較例2
ポリジオキサノン(PDO:Polydioxanone)粒子を懸濁重合で製造した。
【0055】
懸濁重合は、水を分散媒にし、ポリジオキサノン(PDO:Polydioxanone)の立体安定剤の存在下で水に不溶性単量体を用いて粒子を製造する方法である。しかし、懸濁重合は機械的力によって収容液中に存在する単量体を分散させて製造するので、得られる高分子粒子のサイズが非常に不均一であるか図3に示すようにポリジオキサノン(PDO:Polydioxanone)の溶解度が著しく低下して粒子が生成されない。
【0056】
【表5】
【0057】
一方、図1図3には、本発明による実施例1の方法で製造されたポリジオキサノン粒子(図1)、比較例1によるシード重合法で製造したポリジオキサノン粒子(図2)及び比較例2による懸濁重合法で製造したポリジオキサノン粒子(図3)の電子燎微鏡写真が添付されている。
【0058】
図1によれば、実施例1で製造されたポリジオキサノン粒子は均一なサイズ及び形態を持っていることを確認することができる。一方、図2のシード重合法で製造されたポリジオキサノン粒子は形態が非晶形であったが、そのサイズが非常に不均一であり、図3の懸濁重合法によれば、粒子形成過程で凝集現象が発生してポリジオキサノン粒子が製造されなかった。
【0059】
実験例1.PDO原料とPDO粒子の特性比較
本実験においては、ポリジオキサノン原料と前記原料を使い、本発明の粒子化方法で製造されたポリジオキサノン粒子の物理化学的特性を下記の実験方法で測定して比較した。
【0060】
[実験方法]
1)固有粘度(Inherent Viscosity;I.V)は極少量高周波粘度計で測定した値で、まず工程の前後のサンプル(0.1g)をそれぞれ取った後、30℃でHFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール)溶媒に0.1%(w/v)を製造した後、5mgを取って測定した。
【0061】
2)ガラス転移温度(Tg)及び溶融点(Tm)はDSC(視差走査熱量測定法、Differential Scanning Carorimetry)で1℃/1分の昇温速度で上昇させ、−20℃から150℃まで昇温させながら測定した。
【0062】
3)平均分子量はTHF−GPCで測定し、展開溶媒としてはHFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール)の下で標準物質としてPMMA(ポリメチルメタアクリレート)を使い、常温(25±1℃)で測定した。
【0063】
【表6】
【0064】
前記表6によれば、固有粘度、ガラス転移温度、融点及び平均分子量において格別の差がないことを確認することができる。したがって、本発明の粒子化方法によってポリジオキサノンの物理化学的な変化はほとんどないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、ポリジオキサノンは、生分解性、生体適合性材料であり、本発明の製造方法で製造されたポリジオキサノン(PDO)粒子は皮膚組職の再生のための注射剤として有用に使われることができる。
図1
図2
図3