(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層を有する単層又は積層のポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、フィラー(a)及び樹脂バインダー(b)を含有する被覆層(II層)を有し、前記フィラー(a)が、無機フィラーであり、厚みが23μm以下である積層多孔フィルムであって、前記被覆層(II層)中における、前記フィラー(a)と樹脂バインダー(b)の総量に占めるフィラー(a)の含有率が、95質量%以上、99.9質量%以下の範囲であり、該積層多孔フィルムの全厚みに占める前記被覆層(II層)の厚み比率が10%以上、45%以下であり、該積層多孔フィルムの厚みあたりの突き刺し強度が5gf/μm以上であり、該積層多孔フィルムの透気度が50〜300秒/100mLであり、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の透気度に対する該積層多孔フィルムの透気度の増加率が5%以上、35%以下であることを特徴とする積層多孔フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の積層多孔フィルムの実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0021】
以下に、本発明の積層多孔フィルムを構成する各成分について説明する。
【0022】
<ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)>
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)に用いるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンを重合した単独重合体または共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体または共重合体を2種以上混合することもできる。この中でもポリプロピレン系樹脂、または、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
【0024】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%であることが好ましい。より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとフィルムの機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。 アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠した。
【0025】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが2.0未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、積層多孔フィルムの機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって得られる。
【0026】
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。MFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定する。
【0027】
なお、前記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法などが挙げられる。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ社製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学社製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学社製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学社製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、プライムポリマー社製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー社製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル社製)など市販されている商品を使用できる。
【0029】
(ポリエチレン系樹脂)
本発明に用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
【0030】
これらのポリエチレン系樹脂の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの中から選ばれる少なくとも1種のポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0031】
前記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cm
3であることが好ましく、0.930〜0.970g/cm
3であることがより好ましく、0.940〜0.970g/cm
3であることが更に好ましい。密度が0.910g/cm
3以上であれば適度なSD特性を有することができるため好ましい。一方、0.970g/cm
3以下であれば適度なSD特性を有することができるほか、延伸性が維持される点で好ましい。
密度の測定は密度勾配管法を用いてJIS K7112に準じて測定することができる。
【0032】
また、前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常MFRは0.03〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れ好ましい。一方、30g/10分以下であれば、十分な機械的強度を得ることができるために好ましい。
MFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
【0033】
ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。ポリエチレン系樹脂の重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレン系樹脂も使用可能である。
【0034】
(β晶活性)
本発明の積層多孔フィルムにおいて、前記I層はβ晶活性を有することが好ましい。β晶活性は、延伸前の膜状物においてβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中にβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、透気特性を有する積層多孔フィルムを得ることができる。
【0035】
本発明の積層多孔フィルムにおいて、「β晶活性」の有無は、後述する示差走査型熱量計によりβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出された場合か、及び/又は後述するX線回折装置を用いた測定により、β晶に由来する回折ピークが検出された場合、「β晶活性」を有すると判断している。
【0036】
以下、前記ポリオレフィン系樹脂が前記ポリプロピレン系樹脂である場合について具体的に例示する。
【0037】
「β晶活性」の有無は、、示差走査型熱量計で積層多孔フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β晶活性を有すると判断している。
【0038】
また、前記積層多孔フィルムのβ晶活性度は、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算している。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
【0039】
前記I層のβ晶活性度は大きい方が好ましく、具体的には20%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。積層多孔フィルムが20%以上のβ晶活性度を有すれば、延伸前の膜状物中においてもポリプロピレン系樹脂のβ晶が多く生成することができることを示し、延伸により微細かつ均一な孔が多く形成され、結果として機械的強度が高く、透気性能に優れた非水電解液二次電池用セパレータとすることができる。
β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
【0040】
また前記β晶活性の有無は、特定の熱処理を施した積層多孔フィルムの広角X線回折測定により得られる回折プロファイルでも判断できる。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170℃〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔フィルムについて広角X線測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°〜16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性が有ると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
【0041】
前記β晶活性は、本発明の積層多孔フィルムが積層多孔フィルム全層の状態で測定することができる。
また、仮に、ポリプロピレン系樹脂からなる層以外に、ポリプロピレン系樹脂を含有する層などを積層させる場合には、両層ともにβ晶活性を有することが好ましい。
【0042】
前述したβ晶活性を得る方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
【0043】
(β晶核剤)
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
【0044】
β晶核剤の市販品としては新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
【0045】
前記ポリオレフィン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリオレフィン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対しβ晶核剤は0.0001〜5質量部であることが好ましい。0.001〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が更に好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリオレフィン系樹脂のβ晶を生成・成長させることができ、セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、5質量部以下の添加であれば、経済的にも有利になるほか、積層多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
【0046】
(他の成分)
本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性およびポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、変性ポリオレフィン系樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂もしくはその変性体、エチレン系重合体、ワックス、または低分子量ポリプロピレンを添加しても構わない。
【0047】
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の層構成)
本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)は、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「A層」と称する場合がある)の単層、当該A層の機能を妨げない範囲で、当該A層と他の層(以降「B層」と称する場合がある)との積層が好ましい。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際には、特開平04−181651号に記載されているような高温雰囲気化で孔閉塞し、電池の安全性を確保する低融点樹脂層を積層させることができる。
具体的にはA層/B層を積層した2層構造、A層/B層/A層、若しくは、B層/A層/B層として積層した3層構造などが例示できる。また、他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を持つ層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
【0048】
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の物性は、層構成や積層比、各層の組成、製造方法によって自由に調整できる。
【0049】
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の製造方法)
次に、本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造されるポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)のみに限定されるものではない。
【0050】
具体的には、前記ポリオレフィン系樹脂を用いて、溶融押出により無孔膜状物を作製し、当該無孔膜状物を延伸することにより厚さ方向に連通性を有する微細孔を多数形成した多孔フィルムを得ることができる。
【0051】
無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されることなく、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化など、公知の方法を用いてもよい。延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン系樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。
【0052】
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)を積層にする場合、製造方法は、多孔化と積層の順序等によって以下の4つに大別される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
(iv)多孔層を作製した後、無機・有機粒子などのコーティング塗布や、金属粒子の蒸着などを行うことにより積層多孔フィルムとする方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
【0053】
以下に、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の製造方法の詳細を説明する。
まずポリオレフィン系樹脂と、必要であれば熱可塑性樹脂、添加剤の混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、および所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
【0054】
前記のペレットを押出機に投入し、Tダイ押出用口金から押出して膜状物を成形する。Tダイの種類としては特に限定されない。例えばポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)が2種3層の積層構造をとる場合、Tダイは2種3層用マルチマニホールドタイプでも構わないし、2種3層用フィードブロックタイプでも構わない。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では生産速度という観点から好ましくなく、また3.0mmより大きければ、ドラフト率が大きくなるので生産安定性の観点から好ましくない。
【0055】
押出成形において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜300℃が更に好ましい。180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性が向上することから好ましい。一方、350℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる積層多孔フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、膜状物中のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで、膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができるために好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
【0056】
前記温度範囲にキャストロールを設定することで、延伸前の膜状物のポリオレフィン系樹脂のβ晶比率は30〜100%に調整することが好ましい。40〜100%がより好ましく、50〜100%が更に好ましく、60〜100%が最も好ましい。延伸前の膜状物中のβ晶比率を30%以上とすることで、その後の延伸操作により多孔化が行われやすく、透気特性の良いポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得ることができる。
延伸前の膜状物中のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリオレフィン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
【0057】
ついで、得られた無孔膜状物を延伸する。延伸工程としては、一軸延伸であっても良いが、少なくとも二軸延伸することがより好ましい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよいが、各延伸工程で延伸条件(倍率、温度)を簡便に選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。なお、膜状物及びフィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。また、長手方向への延伸を「縦延伸」、長手方向に対して垂直方向への延伸を「横延伸」と称する。
【0058】
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時変える必要があるが、縦延伸での延伸温度は概ね0〜130℃が好ましく、より好ましくは10〜120℃、更に好ましくは20〜110℃の範囲で制御される。また、2〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、好ましい縦延伸倍率は1.2〜10倍が好ましく、より好ましくは1.5〜8倍、更に好ましくは2〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がさらに好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
【0059】
このようにして得られたポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)は、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、温度は好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上とすることで、寸法安定性の効果が期待できる。一方、熱処理温度は好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が170℃以下であれば、熱処理によってポリオレフィン系樹脂の融解が起こりにくく、多孔構造を維持できるため好ましい。また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施しても良い。なお、熱処理後、均一に冷却して巻き取ることにより、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)が得られる。
【0060】
<被覆層(II層)>
本発明は、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、フィラー(a)と樹脂バインダー(b)を含有する被覆層(II層)を有することが重要である。
【0061】
(フィラー(a))
本発明に用いることができるフィラー(a)としては無機フィラー、有機フィラーなどが挙げられるが、特に制約されるものではない。
【0062】
本発明に用いることができる無機フィラーの例としては、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウムなどの金属硫酸塩、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、酸化チタンなどの金属酸化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化銀、塩化カルシウムなどの金属塩化物、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイトなどの粘土鉱物が挙げられる。中でも電池用セパレータとして用いた場合、電池に組み込んだ際に化学的に不活性であるという観点で、金属酸化物がより好ましく、アルミナが特に好ましい。
【0063】
本発明に用いることができる有機フィラーの例としては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾクナミンなどの熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いた場合における、耐電解液膨潤性の観点より、架橋ポリスチレンなどが好ましい。
【0064】
前記フィラー(a)の平均粒径の下限としては、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。一方、上限として好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。前記平均粒径を0.01μm以上とすることで、本発明の積層多孔フィルムが十分な耐熱性を発現することができるため好ましい。また、前記平均粒径を3.0μm以下とすることで、前記II層におけるフィラー(a)の分散性が向上するという観点から好ましい。
なお、本実施の形態において「フィラーの平均粒径」とは、例えば画像解析装置を用いて、縦方向・横方向それぞれ2方向から当該フィラーを投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値を、各方向について算出した後にさらに平均した値として算出される。
【0065】
(樹脂バインダー(b))
本発明に用いる樹脂バインダー(b)としては、前記フィラー(a)と、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)とを良好に接着でき、電気化学的に安定で、かつ積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合に有機電解液に対して安定であれば、特に制限されるものではない。具体的には、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル由来の構造単位が0〜20モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン−トリクロロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ポリビニルアルコール、シアノエチルポリビニルアルコール、ポリビニルブチラゾール、ポリビニルピロリドン、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの樹脂バインダー(b)は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの樹脂バインダー(b)の中でもポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその誘導体、マレイン酸変性ポリオレフィンが水中でも比較的安定であることからより好ましい。
【0066】
さらに、本発明においては前記樹脂バインダー(b)の融点あるいはガラス転移温度のいずれかが200℃以上であることが好ましい。より好ましくは210℃以上、更に好ましくは220℃以上である。
前記樹脂バインダー(b)の融点あるいはガラス転移温度のいずれかが200℃以上であることにより、前記被覆層(II層)が特に耐熱性に優れるため好ましい。
【0067】
前記被覆層(II層)において、前記フィラー(a)と前記樹脂バインダー(b)との総量に占めるフィラー(a)の含有率は、80質量%以上、99.9質量%以下の範囲であることが好ましい。フィラー(a)の含有率は92質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましい。フィラー(a)の含有率がこの範囲内であることにより、前記II層が優れた透気性と結着性を維持することができる。
【0068】
(被覆層(II層)の製造方法)
本発明の積層多孔フィルムにおける被覆層(II層)の形成方法としては、共押出法、ラミネート法、塗布乾燥法等が挙げられるが、連続生産性の面で塗布乾燥法により形成することが好ましい。
【0069】
塗布乾燥法で作成する場合において、分散媒はフィラー(a)、樹脂バインダー(b)が適度に均一かつ安定に溶解または分散可能な溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、ジオキサン、アセトニトリル、低級アルコール、グリコール類、グリセリン、乳酸エステルなどが挙げられるが、中でもコスト面、環境負荷の点で水を分散媒として用いることが好ましい。また、必要に応じて水と他の溶媒とを併用して用いても良い。
【0070】
前記フィラー(a)、前記樹脂バインダー(b)を分散媒に溶解または分散させる方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法等が挙げられる。
【0071】
前記フィラー(a)、前記樹脂バインダー(b)を分散媒に分散させる際、その分散液の安定性を向上、粘性の最適化をするために分散助剤、安定剤、増粘剤等をその前後で添加してもよい。
【0072】
前記分散液をポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の表面に塗布する方法としては、特に限定されることはない。押出成形の後であってもよいし、縦延伸工程の後であってもよいし、横延伸工程の後であってもよい。
【0073】
前記塗布工程における塗布方式としては、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法、等が挙げられる。また、また、前記分散液は、その用途に照らし、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の片面だけに塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。
【0074】
前記分散媒を除去する方法としては、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)に悪影響を及ぼさない方法であれば、特に限定することなく採用することができる。前記分散媒を除去する方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、前記樹脂バインダーに対する貧溶媒に浸漬して樹脂バインダーを凝固させると同時に溶媒を抽出する方法などが挙げられる。
【0075】
(積層多孔フィルムの形状及び物性)
本発明の積層多孔フィルムの厚みの上限は23μm以下である。前述した通り、非水電解液二次電池の小型化が進むにつれて、電池用セパレータの薄肉化のニーズがある中で、本願発明は従来の電池用セパレータより薄肉化することに特徴がある。さらに、厚みが23μm以下であることにより、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能が十分に確保することができる。
一方、厚みの下限は5μm以上であることが好ましく、8μm以上であることが更に好ましく、10μm以上であることが特に好ましい。非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、5μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。
【0076】
また、本発明の積層多孔フィルムの全厚みに占める前記被覆層(II層)の厚み比率が10%以上、45%以下であることが重要である。より好ましくは12%以上、40%以下であり、更に好ましくは15%以上、35%以下である。
前記被覆層(II)層の厚み比率が10%以上であることにより、23μm以下という薄肉化を達成しながらも、本発明の積層多孔フィルムが耐熱性に優れる。一方、前記被覆層(II)層の厚み比率が45%以下であることにより、本発明の積層多孔フィルムが透気性(電気抵抗)と強度、耐粉落ち性に優れる。
【0077】
本発明の積層多孔フィルムの突き刺し強度は100gf以上が好ましく、110gf以上がより好ましく、120gf以上が更に好ましい。突き刺し強度が100gf以上であれば、電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。
一方、上限については特に制限は無いが500gf以下が好ましい。なお、突き刺し強度は実施例に記載の方法で測定している。
【0078】
中でも、本発明の積層多孔フィルムの厚みあたりの突き刺し強度は5gf/μm以上であることが重要であり、6gf/μm以上であることがより好ましく、8gf/μm以上であることが更に好ましく、10gf/μm以上であることが特に好ましい。厚み当りの突き刺し強度が5gf/μm以上であることにより、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する際に、破膜や粉落ちなどの問題が生じにくく、特に安全性に優れる。一方上限については、特に制限はないが、通常20gf/μm以下である。
積層多孔フィルムの厚みあたりの突き刺し強度を上記範囲とする手段としては、被覆層(II層)中のフィラー(a)の平均粒径や含有率、樹脂バインダー(b)の種類、本発明の積層多孔フィルムの全層の厚みに占める前記被覆層(II層)の厚み比率などを、本明細書に記載の範囲において調整する方法を好ましく例示できる。
【0079】
本発明の積層多孔フィルムの透気度は500秒/100mL以下が好ましく、10〜400秒/100mLがより好ましく、50〜300秒/100mLが更に好ましい。透気度が500秒/100mL以下であれば、積層多孔フィルムに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mLの空気が当該フィルムを通過するのに必要な数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
【0080】
中でも、本発明においては、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の透気度に対する本発明の積層多孔フィルムの透気度の増加率が5%以上、35%以下であることが重要である。すなわち、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)上に前記被覆層(II層)を設けた場合であっても、I層のみの場合の透気度に対して可能な限り透気度が増加しないことが重要である。一方で、高い耐熱性の維持も必要であることから、最低限の透気度の増加は許容するものである。
透気度の増加率は、5%以上、30%以下であることが更に好ましく、5%以上、25%以下であることが特に好ましい。透気度の増加率が5%以上であれば、本発明の積層多孔フィルムについて高い耐熱性を維持することができる。一方、透気度の増加率が35%以下であれば、本発明の積層多孔フィルムが透気性に優れ、非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合に電気抵抗値が増大するおそれがないため好ましい。
透気度の増加率を上記範囲とする手段としては、被覆層(II層)中のフィラー(a)の平均粒径や含有率、樹脂バインダー(b)の種類、本発明の積層多孔フィルムの全層の厚みに占める前記被覆層(II層)の厚み比率などを、本明細書に記載の範囲において調整する方法を好ましく例示できる。
【0081】
本発明の積層多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして使用時において、SD特性を有することが好ましい。具体的には、135℃で5秒間加熱後の透気度は10000秒/100ml以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100ml以上、さらに好ましくは50000秒/100ml以上である。135℃で5秒間加熱後の透気度が10000秒/100ml以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
【0082】
本発明の積層多孔フィルムは、150℃における収縮率が縦方向と横方向の合計で20%未満であることが好ましく、18%未満であることがより好ましく、16%未満であることが更に好ましい。前記150℃における収縮率が、縦方向と横方向の合計で20%未満であれば、SD温度を超えて異常発熱した際においても、寸法安定性がよく、耐熱性を有することを示唆しており、破膜を防ぎ、内部短絡温度を向上することができる。また、縦方向と横方向のそれぞれについて、150℃における収縮率が10%未満であることが特に好ましい。
なお、下限としては特に限定しないが、通常縦方向と横方向の合計で1%以上である。
【0083】
(電池)
続いて、本発明の前記積層多孔フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、
図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
【0084】
前記正極板21、電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池を作製している。
【0085】
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
【0086】
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。 負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
【0087】
本実施形態では、負極として、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に平均粒径10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板としたものを用いている。
【0088】
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
【0089】
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。すなわち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)に導電助剤としてリン状黒鉛を(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
【実施例】
【0090】
以下に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、積層多孔フィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。
【0091】
(1)II層のフィラー(a)の含有率
分散液中のフィラー(a)と樹脂バインダー(b)との総量に占めるフィラー(a)の割合を、II層へのフィラー(a)の含有率とした。
【0092】
(2)固形分率
固形分率は、フィラー(a)と樹脂バインダー(b)の総量の、分散液100質量%に対する比率とした。
【0093】
(3)全厚み
1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値を積層多孔フィルムの全厚みとした。
【0094】
(4)被覆層(II層)の厚み
被覆層(II層)の厚みは、塗工後の積層多孔フィルムの全厚みと、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の厚みとの差として算出した。
【0095】
(5)透気度(ガーレ値)
JIS−P8117(2009年)に準拠して透気度(秒/100mL)を測定した。
【0096】
(6)透気度の増加率
(5)により測定したポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の透気度(以下、P
Iと表記する)と積層多孔フィルムの透気度(以下、P
I+IIと表記する)を用いて、以下の式により算出した。
透気度の増加率 = (P
I+II−P
I)/P
I
【0097】
(7)突き刺し強度
日本農林規格告示1019号に準じ、ピン径1.0mm、先端部0.5R、ピン刺速度300mm/分の条件で測定した。
【0098】
(8)厚み当りの突き刺し強度
厚み当りの突き刺し強度は、以下の式により算出した。
厚み当りの突き刺し強度 = 突き刺し強度 / 積層多孔フィルムの厚み
【0099】
(9)強度
強度は、以下の評価基準によって評価した。
○:厚み当りの突き刺し強度が6gf/μm以上
△:厚み当りの突き刺し強度が5gf/μm以上、6gf/μm未満
×:厚み当りの突き刺し強度が5gf/μm未満
【0100】
(10)150℃における収縮率
積層多孔フィルムを150mm×10mm四方に切り出したサンプルをチャック間100mmとなるように印を入れ、150℃に設定したオーブン(タバイエスペック社製、タバイギヤオーブンGPH200)に該サンプルを入れ、1時間静置した。該サンプルをオーブンから取り出し冷却した後、長さを測定し、以下の式にて収縮率をそれぞれ算出した。
収縮率(%)={(100−加熱後の長さ)/100}×100
以上の測定は、積層多孔フィルムの縦方向、横方向について行った。
【0101】
(11)耐熱性
耐熱性は、以下の評価基準において評価した。
○:150℃における収縮率が、縦方向と横方向の合計で16%未満
△:150℃における収縮率が、縦方向と横方向の合計で16%以上20%未満
×:150℃における収縮率が、縦方向と横方向の合計で20%以上
【0102】
(12)示差走査型熱量測定(DSC)
得られた積層多孔フィルムを株式会社パーキンエルマー製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃〜25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。この再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ晶活性の有無を以下の基準にて評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β晶活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、β晶活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
【0103】
(13)広角X線回折測定(XRD)
積層多孔フィルムを縦60mm、横60mm角に切り出し、
図2(A)に示すように中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)2枚の間にはさみ、
図2(B)に示すように周囲をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態で設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点で取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたものについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:株式会社マックサイエンス製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β晶活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、積層多孔フィルム片が縦60mm、横60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴に積層多孔フィルムが設置されるように調整しても構わない。
【0104】
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の作製)
ノバテックPPFY6HA(日本ポリプロ社製、MFR;2.4g/10分)100質量部に対し、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン0.2質量部、及びIRGANOX−B225(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.1質量部を東芝機械株式会社製の2軸押出機(口径40mmφ、L/D=32)に投入し、設定温度270℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットすることで、ペレットを作製した。次いで、三菱重工株式会社製の単軸押出機を用いて、200℃で溶融混合後Tダイより押出した溶融樹脂シートを127℃のキャストロールで引き取り、次いで、得られた膜状物に対し、フィルムロール縦延伸機を用い、105℃に加熱したロール間において、4.6倍縦方向に1軸目の延伸を行い、縦一軸延伸フィルムを得た。
次いで、得られた縦一軸延伸フィルムを、槽内温度150℃としたアイランド工業社製二軸延伸機を用いて、1軸目の延伸方法と垂直方向に延伸速度1000%/minで2倍、横方向に延伸して厚み16μm、20μm、30μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムをそれぞれ得た。
【0105】
[実施例1]
アルミナ(日本軽金属社製、低ソーダアルミナLS−235C、平均粒径:0.5μm)39.4質量部、ポリビニルアルコール(クラレ社製、PVA124、鹸化度:98.0〜99.0、平均重合度:2400)0.6質量部を、水55.0質量部とイソプロピルアルコール5.0質量部の混合溶媒に分散させた分散液を得た。この時、分散液中の固形分の含有率は、分散液100質量%に対し40%であった。
得られた分散液を前記の製造方法により得た厚み16μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に#20のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で2分間かけて乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0106】
[実施例2]
実施例1において得られた分散液を、前記の製造方法により得た厚み16μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に#10のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で2分間かけて乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0107】
[比較例1]
実施例1において得られた分散液を、前記の製造方法により得た厚み30μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に#6のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で2分間かけて乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0108】
[比較例2]
実施例1において得られた分散液を前記の製造方法により得た厚み20μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に#40のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で20分間かけて乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0109】
[比較例3]
前記の製造方法により得た厚み20μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0110】
[参考例1]
実施例1において得られた分散液を前記の製造方法により得た厚み20μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に#20のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で2分間かけて乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0111】
[参考例2]
実施例1において得られた分散液を前記の製造方法により得た厚み30μmのポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面に#20のバーコーターを用いて塗布した後、60℃で2分間かけて乾燥した。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0112】
【表1】
【0113】
表1より、実施例1及び2で得た積層多孔フィルムは、薄肉化を達成しながら、高い耐熱性を維持し、かつ透気性と強度に優れるものであった。
一方、比較例1で得た積層多孔フィルムは、厚みが厚すぎる上に、被覆層(II層)の厚み比率や、透気度の増加率がいずれも低すぎて、十分な耐熱性が発揮されなかった。また、強度にも劣っていた。
また、比較例2の積層多孔フィルムは、厚みが厚すぎる上に、被覆層(II層)の厚み比率や、透気度の増加率がいずれも大きすぎて、柔軟性に劣り強度が低下した上、透気性にも劣っていた。
比較例3のポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)は被覆層(II層)が積層されていないため、耐熱性が不十分であった。
【0114】
本発明の積層多孔フィルムは、透気特性が要求される種々の用途に応用することができる。非水電解液二次電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に使用できる。