特許第6117498号(P6117498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117498
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】海流・潮流発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/10 20060101AFI20170410BHJP
   F03B 13/26 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F03B13/10
   F03B13/26
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-180724(P2012-180724)
(22)【出願日】2012年8月17日
(65)【公開番号】特開2014-37805(P2014-37805A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】515217395
【氏名又は名称】一般社団法人海流エネルギー活用推進機構
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和男
(72)【発明者】
【氏名】近藤 豊
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−016045(JP,A)
【文献】 特開昭54−074043(JP,A)
【文献】 特開2004−340116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/10
F03B 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中にワイヤーを海流又は潮流の方向に対して略直交するように張設し、前記ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置し、
前記発電ユニットは回転翼と発電機とからなる発電装置を少なくとも1つ備え、
前記発電ユニットは、前記接続部により前記回転翼の前面が海流又は潮流に対向するように海流又は潮流の力により前記ワイヤーの軸線を中心として揺動可能であり、
前記接続部は、前記ワイヤーに固定された固定リングと、該固定リングに嵌合されるとともに固定リングに対して回転可能になっている第1可動リングとを備え、前記第1可動リングが前記固定リングに対して回転することにより前記発電ユニットは前記ワイヤーの軸線を中心として揺動することを特徴とする海流・潮流発電装置。
【請求項2】
海中にワイヤーを海流又は潮流の方向に対して略直交するように張設し、前記ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置し、
前記発電ユニットは回転翼と発電機とからなる発電装置を少なくとも1つ備え、
前記発電ユニットは、前記接続部により前記回転翼の前面が海流又は潮流に対向するように海流又は潮流の力により前記ワイヤーの軸線を中心として揺動可能であり、
前記接続部は、前記ワイヤーに固定されるとともに外周面が球面になっている固定リングと、前記固定リングに嵌合されるとともに内周面が球面になっている可動リングとを備えた球面軸受からなることを特徴とする海流・潮流発電装置。
【請求項3】
前記ワイヤーは2本の支柱間に張設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の海流・潮流発電装置。
【請求項4】
前記発電ユニットは、海水の比重に近づけるためにフロートを設けて浮力調整を施していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の海流・潮流発電装置。
【請求項5】
前記発電ユニットの海水中比重は0.9〜1.1であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の海流・潮流発電装置。
【請求項6】
前記接続部は、前記第1可動リングに連結されるとともに前記ワイヤーの軸線に対して直交して配置された固定ピンと、該固定ピンに嵌合されるとともに固定ピンに対して回転可能になっている第2可動リングとを備え、前記第2可動リングが前記固定ピンに対して回転することにより前記回転翼の軸心が海流又は潮流と平行になるように調芯可能であることを特徴とする請求項1に記載の海流・潮流発電装置。
【請求項7】
前記発電ユニットは、双方向に流れる潮流に対して前記ワイヤーの軸線を中心として180°揺動可能であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の海流・潮流発電装置。
【請求項8】
前記発電ユニットをメンテナンスする際、前記発電ユニットを前記ワイヤーの軸線を中心として揺動させ、前記発電ユニットを前記ワイヤーより上方に位置させることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の海流・潮流発電装置。
【請求項9】
前記回転翼と前記発電機とからなる前記発電装置を複数個連結して円形状又は多角形状に一体化して一つのユニットを形成したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の海流・潮流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海流・潮流発電装置に係り、特に海流または潮流のエネルギーを利用して発電する海流・潮流発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模でのエネルギー需要の急速な増大に伴い、これまで依存してきた化石燃料や原子力に代わるエネルギー源として、枯渇、公害および汚染の恐れのない再生可能な自然エネルギーを利用しようとする様々な研究開発が進められている。このような再生可能な自然エネルギーとしては、太陽光および風力が代表的であるが、いずれも天候や季節に左右されやすいという欠点を有している。これに対して、天候や季節に左右されないでほぼ恒常的であり、しかも豊富でエネルギー密度の高い海流又は潮流を利用して電力を得る海流・潮流発電の商業性のあるレベルでの実用化が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−257023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図14は、実用化に向けて研究・開発段階にある水中浮遊体方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。図14に示す海流発電装置は、水中浮遊体方式の発電装置100を1本のワイヤー101で海底SBから係留し、海中に浮遊させるようにしている。発電装置100は、対向回転する双発式のタービン102,102を用いている。
しかしながら、図14に示す水中浮遊体方式の海流発電装置は、海底に設置された巨大な重り103から、1本のワイヤー101で発電装置100を係留し、発電装置100はフロート調整機能を使っているため、フロートバランスが難しく且つ電気制御によるフロート機能がついていると想定されることから、万が一故障した時に海底に激突するか或いは海上に浮かびあがり船舶と衝突する恐れがある。また、双発式のタービン102,102の一方が外的要因・内的要因を問わず停止してしまった場合には、打ち消す回転力がなくなり、大空に舞う凧のように海底に激突して破壊してしまう可能性がある。海流に乱流が発生した場合にも似たような現象がおこる可能性がある。さらに、発電装置を係留するワイヤーが長く1本のため、巨大な発電装置は僅かな潮の密度及び速度の影響で大きく蛇行する恐れがある。
【0005】
図15は、実用化に向けて研究・開発段階にある海底固定方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。図15に示す海流発電装置は、発電装置110を海底SBに固定された支持脚111で支持するようにしている。発電装置110は1個のタービン112を備えている。図15に示す海流発電装置は、海底に巨大な扇風機を置いたような構造であるが、水流抵抗の転倒モーメント荷重に対して、海底の固定方法が問題となる。巨大な風車は基礎工事が大掛かりになっていることから、図15に示す海流発電装置においても、実施にあたって、大掛かりな基礎工事が想定され、難工事が予想され、コストも増大すると考えられる。発電装置一基に対し、基礎工事が3ヶ所必要になる構造は、コスト・工事難易度の両面から、実用化への道のりは遠いと考えられる。また、海底で巨大な発電装置を水平に設置する工法は今後十分な検討が必要と思われる。さらに、図15に示す海流発電装置は、図14に示す海流発電装置と同様に一基の規模が大きく、故障した時のダメージが大きい。また、メンテナンスの際に、巨大な発電装置全体を海上に引き上げることは、アンカー部の離脱等、簡単な作業では無い。
【0006】
図16は、特許公報1(特開2002−257023号)において提案されている潮流発電装置を示す斜視図である。図16に示す潮流発電装置は、海底SBに設置された複数の中空な支持棹121に、海中の上層部の潮流を受けて回転するスクリュー羽根125および下層部の潮流を受けて回転するスクリュー羽根125を、側方に連通突出した中空な枝棹126を介して装着し、スクリュー羽根125の回転力を、支持棹121及び枝棹126内に組み込んだ回転力伝達材130により、支持棹121の上端の海面上に設けられたステーション122内に設置した発電機123に伝達するように構成している。
しかしながら、図16に示す潮流発電装置は、構造物が海底から海上まで広範囲であり、海底の深さに対応する為に、支持棹に伸縮機能まで持たせているが、海底が深くなると、海流抵抗も大きくなり、発電装置に比較して、過大な設備となってしまう。発電機を内部に設置したステーションが海面上に出ているため、海上の厳しい気象条件に対応しなくてはならない。また、海流の力をチェーンにより一ヶ所に集中させ海上の発電機へと導いていて、耐久性に問題がある。したがって、特許文献1で提案されている潮流発電装置は、機構的にもコスト的にも実用化の可能性は低いものと考えられる。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、設備が簡素であり、かつ水中での設置工事および保守が容易であり、出力あたりの建設費および運営費が廉価であり、正逆両方の海水の流れのエネルギーを効率よく電力に変換することのできる海流・潮流発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の海流・潮流発電装置の一態様は、海中にワイヤーを海流又は潮流の方向に対して略直交するように張設し、前記ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置し、前記発電ユニットは回転翼と発電機とからなる発電装置を少なくとも1つ備え、前記発電ユニットは、前記接続部により前記回転翼の前面が海流又は潮流に対向するように海流又は潮流の力により前記ワイヤーの軸線を中心として揺動可能であり、前記接続部は、前記ワイヤーに固定された固定リングと、該固定リングに嵌合されるとともに固定リングに対して回転可能になっている第1可動リングとを備え、前記第1可動リングが前記固定リングに対して回転することにより前記発電ユニットは前記ワイヤーの軸線を中心として揺動することを特徴とする。
本発明によれば、発電ユニットは、海流又は潮流の力によりワイヤーの軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼の前面を潮流に対向させることができる。
本発明によれば、発電ユニットはワイヤーの軸線を中心として回転する第1可動リングを介してワイヤーに吊り下げられているため、発電ユニットは海流又は潮流の力によりワイヤーの軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼の前面を潮流に対向させることができる。
本発明の海流・潮流発電装置の他の態様は、海中にワイヤーを海流又は潮流の方向に対して略直交するように張設し、前記ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置し、前記発電ユニットは回転翼と発電機とからなる発電装置を少なくとも1つ備え、前記発電ユニットは、前記接続部により前記回転翼の前面が海流又は潮流に対向するように海流又は潮流の力により前記ワイヤーの軸線を中心として揺動可能であり、前記接続部は、前記ワイヤーに固定されるとともに外周面が球面になっている固定リングと、前記固定リングに嵌合されるとともに内周面が球面になっている可動リングとを備えた球面軸受からなることを特徴とする。
本発明によれば、固定リングの外周面と可動リングの内周面は、ワイヤーの軸心にある支点を中心とした球面に形成されて球面の滑り接触になっており、可動リングは支点を中心として固定リングに対して全方向(360°)に回転可能となっている。したがって、発電ユニットは、海流又は潮流の力によりワイヤーの軸心にある支点を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)するとともに前記支点を中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼の前面を潮流に対向させることができ、また、ワイヤーが海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼のシャフトの軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、発電ユニットを流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記ワイヤーは2本の支柱間に張設されていることを特徴とする。
本発明によれば、2本の支柱間にワイヤーを張設し、ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げるだけで所望の発電能力を有した海流・潮流発電装置を構築することができる。
【0010】
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットは、海水の比重に近づけるためにフロートを設けて浮力調整を施していることを特徴とする。
本発明によれば、回転翼の外周縁を囲むように設置された円筒状部材の内部空間や該円筒状部材に連結されたパイプの内部空間に発泡材を充填するなどの手段によりフロートを形成し、該フロートにより発電ユニットの浮力調整を行って発電ユニットを海水の比重に近づけるようにしている。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットの海水中比重は0.9〜1.1であることを特徴とする。
本発明によれば、海水の比重(≒1)を基準として±0.1の範囲になるように、発電ユニットの海水中比重を設定することにより、発電ユニットを海流又は潮流の力により迅速に且つ確実に揺動させることができる。
【0013】
本発明の好ましい態様は、前記接続部は、前記第1可動リングに連結されるとともに前記ワイヤーの軸線に対して直交して配置された固定ピンと、該固定ピンに嵌合されるとともに固定ピンに対して回転可能になっている第2可動リングとを備え、前記第2可動リングが前記固定ピンに対して回転することにより前記回転翼の軸心が海流又は潮流と平行になるように調芯可能であることを特徴とする。
本発明によれば、発電ユニットはワイヤーに対して直交して垂直方向に延びる軸線を中心として回転する第2可動リングを介してワイヤーに吊り下げられているため、発電ユニットはワイヤーに対して直交して垂直方向に延びる軸線を中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、ワイヤーが海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼のシャフトの軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、発電ユニットを流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0015】
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットは、双方向に流れる潮流に対して前記ワイヤーの軸線を中心として180°揺動可能であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記発電ユニットをメンテナンスする際、前記発電ユニットを前記ワイヤーの軸線を中心として揺動させ、前記発電ユニットを前記ワイヤーより上方に位置させることを特徴とする。
本発明によれば、発電ユニットをメンテナンスする際に、発電ユニットを揺動させてワイヤーの上方に位置させた状態でメンテナンス作業を行い、メンテナンス作業の終了後に発電ユニットを放せば、発電ユニットは海流又は潮流の力により揺動して、回転翼の前面が海流又は潮流に対向するようになる。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記回転翼と前記発電機とからなる前記発電装置を複数個連結して円形状又は多角形状に一体化して一つのユニットを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)発電ユニットは、海流又は潮流の力によりワイヤーの軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)することができるため、双方向に流れる潮流に対して、回転翼の前面を潮流に対向させることができる。また、発電ユニットは、海流又は潮流の力によりワイヤーとの接続部分を中心として水平方向に揺動(スイング)することができるため、ワイヤーが海流・潮流抵抗を受けて撓んだ場合でも回転翼のシャフトの軸心が海流又は潮流と平行になるように自動的に調芯できる。したがって、発電装置を流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
(2)海中にワイヤーを海流又は潮流の方向に対して略直交するように張設し、ワイヤーに複数の発電ユニットを接続部を介して吊り下げて配置するだけで、海流・潮流発電装置を構築することができるため、設備がきわめて簡素であり、水中での設置工事および保守が容易であり、出力あたりの建設費および運営費が廉価である。
(3)発電ユニットの比重を海水の比重に近似させて発電ユニットを海流・潮流の力で浮遊させるようにした方式であるにも拘わらず、発電ユニットを海中に張設されたワイヤーに吊り下げて配置するだけで発電ユニットは海流又は潮流の力により揺動して回転翼の前面が海流又は潮流に対向するようになる。したがって、発電ユニットの姿勢制御や回転翼の方向制御などの電気制御は不要である。
(4)海中に2本の支柱を立設し、支柱間にワイヤーを張設するだけで基礎工事が完了するため、大掛かりな基礎工事を行う必要がなく、コスト・工事容易性の両面から実用化が容易である。
(5)発電ユニットをメンテナンスする際、発電ユニットをワイヤーの軸線を中心として揺動させて発電ユニットをワイヤーより上方に位置させ、ワイヤーとの接続部で分離した後に、発電ユニットを海面上に引き上げてメンテナンスを行うことができる。メンテナンス後には発電ユニットを海面下に沈めてワイヤーとの接続部で接続するだけで、発電ユニットは海流・潮流の力で揺動して海流・潮流に対して正対する。したがって、メンテナンス作業がきわめて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の海流・潮流発電装置の構成例を示す図であり、海流・潮流発電装置の模式的正面図である。
図2図2は、本発明の海流・潮流発電装置の構成例を示す図であり、図2は海流・潮流発電装置の模式的平面図である。
図3図3は、発電ユニットを海流の方向Aから見た図であり、発電ユニットの正面図である。
図4図4は、発電ユニットの海流にそった断面図であり、発電ユニットの横断面図である。
図5図5は、発電装置の詳細図である。
図6図6は、ワイヤーと発電ユニットのワイヤー接続部の詳細図であり、ワイヤー接続部の部分断面平面図である。
図7図7は、ワイヤーと発電ユニットのワイヤー接続部の詳細図であり、ワイヤー接続部の斜視図である。
図8図8は、ワイヤーと発電ユニットのワイヤー接続部の詳細図であり、図7はワイヤー接続部の斜視図である。
図9図9は、発電ユニットのワイヤー接続部の他の実施形態を示す詳細図であり、ワイヤー接続部の断面図である。
図10図10は、発電ユニットの主要構成部材である複数の発電装置の重心位置により発電装置の姿勢が変化することを示す模式図である。
図11図11(a),(b)は、発電ユニットを脱着する場合の詳細を示す図であり、図11(a)は発電ユニットの全体を示す模式図であり、図11(b)は図11(a)の脱着部詳細図である。
図12図12は、本発明の海流・潮流発電装置を多数海中に設置する場合を示す図であり、模式的正面図である。
図13図13は、本発明の海流・潮流発電装置を多数海中に設置する場合を示す図であり、模式的平面図である。
図14図14は、実用化に向けて研究・開発段階にある水中浮遊体方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。
図15図15は、実用化に向けて研究・開発段階にある海底固定方式の海流発電装置を示す模式的斜視図である。
図16図16は、特許公報1(特開2002−257023号)において提案されている潮流発電装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る海流・潮流発電装置の実施形態を図1乃至図13を参照して説明する。図1乃至図13において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1および図2は、本発明の海流・潮流発電装置の構成例を示す図であり、図1は海流・潮流発電装置の模式的正面図、図2は海流・潮流発電装置の模式的平面図である。図1および図2に示すように、海底SBには、所定距離だけ離間して2本の支柱1,1が立設されており、2本の支柱1,1間には予め張力を掛けたワイヤー3が張設されている。ワイヤー3は、海中で水平方向に張設されるとともに設置海域の海流の方向Aに対して略直交する方向に張設されている。ワイヤー3には、所定間隔をおいて多数の発電ユニット10が取り付けられている。ワイヤー3には、予め張力が掛けられているため、ワイヤー3が海流抵抗を受けて大きく撓むようなことはなく、発電ユニット10とワイヤー3とが干渉することがない。
【0020】
図3は、発電ユニット10を海流の方向Aから見た図であり、発電ユニット10の正面図である。図4は、発電ユニット10の海流にそった断面図であり、発電ユニット10の横断面図である。図3および図4に示すように、発電ユニット10は、回転翼(プロペラ)11と発電機12とからなる発電装置13を複数個連結することにより構成されている。図示の実施形態においては、発電ユニット10は、6個の発電装置13を円形状に配置して相隣接する発電装置13をボルト及び溶接等により連結して構成されている。このように、複数の発電装置13を連結して円形状又は多角形状に一体化して一つのユニットを形成する。発電装置13は、発電ユニット10の全体のバランスをとるためには偶数であることが好ましい。発電ユニット10は中心部にワイヤー3と接続するためのワイヤー接続部20を備えており、ワイヤー接続部20はワイヤー3に対して回転可能になっており、発電ユニット10はワイヤー接続部20によってワイヤー3に吊り下げられている。そして、ワイヤー接続部20と各発電装置13とは棒状のアーム14により連結されている。
【0021】
上述のように構成することにより、発電ユニット10は、海流・潮流の力によりワイヤー3を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)できるようになっており、図4の実線で示すように海流・潮流の方向が右方向である場合には回転翼11の前面11fが海流・潮流に対向することができ、海流・潮流の方向が左方向である場合には図4の点線で示すように回転翼11の前面11fが海流・潮流に対向することができる。
【0022】
図5は、発電装置13の詳細図である。図5に示すように、回転翼11の外周縁を囲むように円筒状部材15が設置されている。円筒状部材15の外周側は均一な外径であるのに対し、円筒状部材15の内周側は入口側から中間部に向かって内径が次第に小さくなり、中間部で内径が均一になり、中間部から出口側に向かって内径が次第に大きくなっている。このように構成された円筒状部材15により、海流は加速された後に回転翼11に流入するため、海流から回転翼11に大きな回転トルクを付与することができる。円筒状部材15は、下地材がメッキ鋼板からなり、表層材がFRP等の防水を施したものからなり、内部には補強材15aが設けられている。また、円筒状部材15の中空部には発泡ウレタン等の発泡材が注入されている。このように、円筒状部材15の中空部は発電ユニット10の浮力調整のためのフロートとして機能する。
【0023】
一方、回転翼11を支持するシャフト16は固定リング17により回転可能に支持されており、固定リング17と円筒状部材15との間には複数の棒状の連結部材18が設けられている。シャフト16には発電機12が連結されている。複数の連結部材18は、回転翼11の直上流に配置され、また、連結部材18の前面にはリング状のパイプ19が固定されており、パイプ19によって海流を部分的に加速させ、発電効率が最大値付近になる翼部分に海流を当てるようにしている。具体的には回転翼11の軸心から半径方向に回転翼全体の70%程度の位置にある翼部分である。パイプ19内には発泡ウレタン等の発泡材が充填されている。パイプ19の中空部は発電ユニット10の浮力調整のためのフロートとして機能する。
【0024】
図6乃至図8はワイヤー3と発電ユニット10のワイヤー接続部20の詳細図であり、図6はワイヤー接続部20の部分断面平面図、図7はワイヤー接続部20の斜視図、図8図6のVIII−VIII線矢視図である。図6乃至図8に示すように、ワイヤー接続部20は、ワイヤー3に固定された固定リング21と、固定リング21に嵌合されるとともに固定リング21に対して回転可能になっている第1可動リング22と、第1可動リング22に溶接等によって固定された矩形状の第1プレート23とを備えている。第1プレート23にはボルト・ナットにより矩形状の第2プレート24が固定されている。矩形状の第2プレート24の両側端部には概略三角形状の平板からなる支持部材25,25が立設されており、これら支持部材25,25間に固定ピン26が設けられている。固定ピン26には第2可動リング27が嵌合されており、第2可動リング27は固定ピン26に対して回転可能になっている。そして、第2可動リング27には複数の棒状のアーム14が固定されており、各アーム14の先端に発電装置13が支持されている(図3および図4参照)。
【0025】
上述のように構成することにより、6個の発電装置13は、ワイヤー3の軸線を中心として回転する第1可動リング22とワイヤー3に対して直交して配置された固定ピン26の軸線を中心として回転する第2可動リング27を介してワイヤー3に吊り下げられていることになる。したがって、6個の発電装置13は、海流の力によりワイヤー3の軸線を中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)するとともにワイヤー3に対して直交して垂直方向に延びる軸線を中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼11の前面11fを潮流に対向させることができ、また、ワイヤー3が海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼11のシャフト16の軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、6個の発電装置13を流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0026】
図9は、発電ユニットのワイヤー接続部の他の実施形態を示す詳細図であり、ワイヤー接続部の部分断面斜視図である。図9に示すように、ワイヤー接続部20は、ワイヤー3に固定されるとともに外周面が球面になっている固定リング31と、固定リング31に嵌合されるとともに内周面が球面になっている可動リング32とを備えた球面軸受から構成されている。そして、可動リング32には複数の棒状アーム14が固定されており、各アーム14の先端に発電装置13が支持されている(図3および図4参照)。
【0027】
図9に示すように構成することにより、固定リング31の外周面と可動リング32の内周面とは、ワイヤー3の軸心にある支点Oを中心とした球面に形成されて球面の滑り接触になっており、可動リング32は、支点Oを中心として固定リング31に対して全方向(360°)に回転可能となっている。したがって、6個の発電装置13は、海流の力によりワイヤー3の軸心にある支点Oを中心として上下方向にブランコのように揺動(スイング)するとともに支点Oを中心として水平方向に揺動(スイング)することができる。これにより、双方向に流れる潮流に対して、回転翼11の前面11fを潮流に対向させることができ、また、ワイヤー3が海流抵抗を受けて撓んだ場合でも、回転翼11のシャフト16の軸心が海流と平行になるように自動的に調芯できる。すなわち、6個の発電装置13を流れに対して常に正対させ、常に最大の発電量を得ることができる。
【0028】
次に、本発明の発電ユニット10の浮力調整について説明する。本発明の発電ユニット10は、海水の比重に近似させるためにフロートを設けて浮力調整を施している。すなわち、回転翼11の外周縁を囲むように設置された円筒状部材15の内部空間や円筒状部材15に連結されたパイプ19の内部空間に発泡ウレタン等の発泡材を充填するなどの手段によりフロートを形成し、該フロートにより発電ユニット10の浮力調整を行うことにより発電ユニット10を海水の比重に近づけるようにしている。
本発明では、発電ユニット10の海水中比重は、0.9〜1.1に設定している。すなわち、海水の比重(≒1)を基準として±0.1の範囲になるように、発電ユニット10の海水中比重を設定することにより、発電ユニット10を海流又は潮流の力により迅速に且つ確実に揺動させることができるようにしている。発電ユニット10の海水中比重を0.9〜1.1に設定する理由は、以下のとおりである。
1つの発電ユニットの空中重量を100Wとして鉄の塊と仮定すると、水中重量は約78.2Wとなる。このユニットを海水の比重(≒1)と同一にする為には78.2Wの浮力装置(フロート)が必要となる。海流の速度により、1つのユニットが受ける力をそれぞれの流速に対して大凡下記の荷重が掛かる。
2ノット時 20W
3ノット時 45W
4ノット時 80W
ここで1ノットは0.5144m/secである。
ユニットの海水中比重が1となれば最大効率の発電量が得られるが、ユニットの海水中比重が1からずれることで発電効率は低下する。従って、ある程度の範囲で浮力を制御する必要があり、ユニットの水流に対する最大角度を潮流の発電効率を考慮して6°以内に設定する。
流速2ノット時で6°以内に設定すると、浮力を78.2W±2.0W=80.2W又は76.2Wとし、比率にすると100±2.55%の範囲となる。すなわち、海水中比重は1±0.025となる。
流速3ノット時で6°以内に設定すると、浮力を78.2W±4.5W=82.7W又は73.7Wとし、比率にすると100±5.82%の範囲となる。すなわち、海水中比重は1±0.058となる。
流速4ノット時で6°以内に設定すると、浮力を78.2W±8.0W=86.2W又は70.2Wとし、比率にすると100±10.23%の範囲となる。すなわち、海水中比重は1±0.102となる。
以上より、発電ユニットの海水中比重を0.9〜1.1に設定している。そして、海流の速度に応じて、発電ユニットの海水中比重を0.95〜1.05や0.98〜1.02に設定してもよい。
【0029】
本発明の発電ユニット10においては、発電ユニット10の全体の比重を海水の比重に近似させることに加えて、フロートのサイズ、形状および位置を最適化することにより、発電ユニット10の主要構成部材である複数(本実施形態では6個)の発電装置13の重心位置が最適な位置になるようにしている。
図10は、発電ユニット10の主要構成部材である複数の発電装置13の重心位置により発電装置13の姿勢が変化することを示す模式図である。図10において右側の図は、発電装置の重心の位置がワイヤー3から近い場合を示し、図示するように発電装置のワイヤー3から遠い部分が浮き上がって発電装置が海流に対して傾いてしまう。図10において中央の図は、発電装置の重心の位置がワイヤー3から遠い場合を示し、図示するように発電装置のワイヤー3から遠い部分が沈み込んで発電装置が海流に対して傾いてしまう。図10において左側の図は、発電装置の重心の位置がワイヤー3から最適な位置にある場合を示し、図示するように発電装置は海流に対して傾くことなく正対する。このように、本発明においては、フロートのサイズ、形状および位置を最適化することにより、図10において左側の図に示すように発電装置が正規の姿勢を維持できるようにし、すなわち発電装置が海流・潮流に対して常に正対するようにし、常に最大の発電量を得るようにしている。
【0030】
図11(a),(b)は、発電ユニットを脱着する場合の詳細を示す図であり、図11(a)は発電ユニットの全体を示す模式図であり、図11(b)は図11(a)の脱着部詳細図である。
図11(a)に示すように、発電装置のメンテナンス時には、発電ユニット10を揺動させて発電ユニット10を上向きにしてワイヤー3の上方に位置させる。この状態で第1プレート23と第2プレート24とを固定しているボルトを外し(図11(b)参照)、ワイヤー接続部20をワイヤー接続側と発電装置側に分離し、第1プレート23と第2プレート24の間の脱着面より上方にある発電装置側のユニット(第2プレート24,支持部材25,固定ピン26,アーム14,6個の発電装置13を含む)を海面上に引き上げる(図11(a)参照)。そして、発電装置側ユニットのメンテナンス後の取付時には、発電装置側ユニットを上向きの姿勢で海面下に沈め、第1プレート23と第2プレート24とをボルトで固定し、ワイヤー接続部20を一体化して発電ユニット10を組み上げる。その後、発電ユニット10を放せば、発電ユニット10は海流の力で揺動して発電装置13が海流に対して正対する。
【0031】
図12および図13は、本発明の海流・潮流発電装置を海中に多数設置する場合を示す図であり、図12は模式的正面図、図13は模式的平面図である。
図12および図13に示すように、海底SBには、多数の支柱1が前後左右に間隔をあけて立設されている。また、多数の支柱1間を互いに接続するように多数のワイヤー3が張設されている。そして、支柱1,1間を接続している各ワイヤー3には、多数の発電ユニット10が取り付けられている。このように、多数の支柱1をマトリックス状に設け、支柱1,1間にワイヤー3を張設し、ワイヤー3に多数の発電ユニット10を取り付けることにより、所望の発電能力を有するパワープラントを構築できる。
【0032】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 支柱
3 ワイヤー
10 発電ユニット
11 回転翼(プロペラ)
11f 前面
12 発電機
13 発電装置
14 アーム
15 円筒状部材
15a 補強材
16 シャフト
17 固定リング
18 連結部材
19 パイプ
20 ワイヤー接続部
21 固定リング
22 第1可動リング
23 第1プレート
24 第2プレート
25 支持部材
26 固定ピン
27 第2可動リング
31 固定リング
32 可動リング
100,110 発電装置
101 ワイヤー
102 タービン
103 重り
111 支持脚
112 タービン
121 支持棹
122 ステーション
123 発電機
125 スクリュー羽根
126 枝棹
130 回転力伝達材
O 支点
SB 海底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16