(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
図により本発明に係る遊戯盤の一実施形態を具体的に説明する。
【0023】
図1は本発明に係る遊戯盤2を備えた遊戯装置の一例となるパチンコ機1の構成を示す。遊戯盤2の合成樹脂板やベニヤ板等により構成される下地材3の表面に装飾シート4が設けられる。
【0024】
図2(a)は基材フィルム5上に離型層6を介して装飾シート4が設けられた加熱処理前のシート体Aの構成を示す。シート体Aは、
図2(a)に示すように、基材フィルム5上に離型層6、保護層7、装飾層8、接着層9が順次、印刷処理により積層して設けられる。接着層9は熱溶融して下地材3に溶着する。
【0025】
基材フィルム5の一例としては、PET(Polyethylene terephthalate;ポリエチレンテレフタレート)フィルムが適用出来る。離型層6の一例としては、離型性に優れるメラミンが適用出来る。尚、保護層7がPETフィルムからなる基材フィルム5からの離型性が良い場合は離型層6は不要である。保護層7の一例としては、紫外線硬化型アクリル樹脂が適用出来る。装飾層8の一例としては、インキが適用出来る。
【0026】
尚、
図2(b)は、
図2(a)に示すシート体Aの離型層6を省略したものであり、
図2(d)は
図2(a)に示すシート体Aの装飾層8と接着層9との間に導電層10を印刷処理により積層したものである。
【0027】
図2(a),(b)に示された装飾シート4は、
図4に示して後述する加熱ロール成型時、或いは、
図5及び
図6に示して後述するインモールド成型時に付与される熱により、
図2(g)に示すように、保護層7内に含有させていたワックス、シリコーン、フッ素等の滑り剤粒子11aが該保護層7の基材フィルム5側(離型層6側)の内部表面側に並ぶことにより滑り性能が現れて、
図2(c)に示す滑り層11が形成される。
【0028】
滑り層11を形成する滑り剤としては、パラフィン、ポリエチレン、金属イオンによる凝集力を利用し高分子を凝集体とした合成樹脂からなるアイオノマー(Ionomer;IO)、シリコーン、フッ素系材料が適用可能である。
【0029】
尚、滑り層11は保護層7の表面に直接、ワックス、シリコーン、フッ素等の滑り剤をスプレーやウェス等を用いて塗布したりコーティングしても良い。或いは、印刷により形成しても良い。
【0030】
図1(b)に示すように、遊戯盤2の下地材3の表面に装飾シート4を貼着して設ける場合には、
図2(a)に示すシート体Aでは、離型層6を保護層7の内部表面側に形成された滑り層11から剥離する。
図2(b)に示すシート体Aでは、基材フィルム5を保護層7の表面に形成された滑り層11から剥離する。基材フィルム5(及び離型層6)を除去した装飾シート4を
図2(c)に示す。そして、
図2(c)に示す装飾シート4の接着層9を介して遊戯盤2の下地材3の表面に貼着する。
図1(b)に示すように、接着層9と保護層7との間で装飾層8が無い箇所は透明部分12となる。
【0031】
本実施形態では、
図3(a),(b)に示すように、遊戯盤2の装飾シート4を水平に配置し、該装飾シート4の表面に設けられる滑り層11の表面上に水滴13を滴下したときの該滑り層11の表面に対する水の接触角度θが最小角度θ
minで60度以上に設定されるような滑り剤により滑り層11が形成される。水の接触角度θを測定する装置としては、協和界面科学株式会社製の「自動接触角計FAMAS DM-501(商品名)」を採用することが出来る。
【0032】
実際にパチンコ機1の遊戯盤2に装飾シート4を組み込み、パチンコ玉を連続して80万発打ち続けた場合、装飾シート4の表面に設けた滑り層11の水の接触角度θが45度〜59度(水の接触角度θが60度よりも小さい場合)のときは装飾シート4が削れてしまい、下地材3が露出してしまった。また、装飾シート4の表面に設けた滑り層11の水の接触角度θが60度〜80度の範囲では保護層7の表面に僅かな傷が発生した。また、装飾シート4の表面に設けた滑り層11の水の接触角度θが81度〜100度の範囲では保護層7の表面は無傷であることが確認できた。装飾シート4の表面に設けた滑り層11の水の接触角度θが100度を越えた場合でも、特に問題はなく、前述した装飾シート4の表面に設けた滑り層11の水の接触角度θが81度〜100度で得られた結果と同様の結果が得られる。
【0033】
ここで、水滴13を固体表面に滴下すると、水滴13は自らの持つ表面張力で丸くなり、水の接触角度θは、「濡れ」を表す指標として採用されている。水の接触角度θが小さいと濡れ易く、水の接触角度θが大きいと濡れ難い。
【0034】
図3(a),(b)に示すように、水滴13の断面輪郭形状と滑り層11の表面との交点pを通り、該水滴13の断面輪郭形状を円の一部と仮定し、その円の接線Lと、交点pよりも水滴13側の滑り層11の表面との角度を接触角度θとして求めることが出来る。
【0035】
このような滑り層11を形成し得る滑り剤としては、パラフィン、ポリエチレン、アイオノマー、シリコーン、フッ素系材料が好適である。このような滑り層11は有機の分子が表面に均一に並び、撥水性を有するため水の接触角度θが大きくなる。
【0036】
また、装飾シート4の表面に設けられる滑り層11の滑り抵抗を20N以下に設定することでも良い。滑り抵抗は、
図3(c)に示すように、遊戯盤2の装飾シート4を水平に配置し、該装飾シート4の表面に設けられる滑り層11の表面上をステンレス(SUS)製で表面をバフ研磨した重さ4kg±0.04kgの球体14にテンションゲージ15を連結して所定の方向に引っ張ったときに該テンションゲージ15により測定される。テンションゲージ15としては、株式会社大場計器製作所製の「N丸型(棒)テンションゲージスタンダード 50N(商品名)」を採用することが出来る。
【0037】
実際にパチンコ機1の遊戯盤2に装飾シート4を組み込み、パチンコ玉を連続して80万発打ち続けた場合、装飾シート4の表面に設けた滑り層11の滑り抵抗が20N以下であれば保護層7の表面は略無傷、若しくは保護層7の表面に僅かな傷が発生する程度であることが確認できた。装飾シート4の表面に設けた滑り層11の滑り抵抗が21N以上(20Nを超える場合)になると装飾シート4が削れてしまい、下地材3が露出してしまった。
【0038】
図2(d),(e)に示す導電層10は、装飾シート4の装飾層8の内側(下地材3側)に導電層10を設けた一例であり、この場合の導電層10は不透明、透明または半透明の材料で構成することが出来る。
【0039】
尚、
図2(f)に示すように、装飾シート4の装飾層8の外側(遊戯盤2の表面側)に透明または半透明の導電層10を設けることでも良い。
【0040】
図4(a)に示すように、予め射出成型された下地材3上に
図2(a)に示すシート体Aを接着層9が下地材3側になるように載置し、ヒータ16により200℃〜240℃の温度に加熱されたゴムロール17をシート体Aに沿って
図4(a)の左方向から右方向に該シート体Aを下地材3側に加圧しつつ移動させる(
図4(b)参照)。
【0041】
ゴムロール17によりシート体A(一般的に熱転写箔)を加熱、加圧する際に、接着層9が下地材3に接着される(熱転写)。このとき、保護層7にワックス等の滑り剤を含ませ、保護層7は装飾層8の保護と滑り性能を兼ねる層として形成される。この場合の熱転写温度はゴムロール17の温度を200℃〜240℃に設定して行うことが出来る。
【0042】
そして、
図4(c)に示すように、ゴムロール17をシート体Aから退避させた後、図示しない切断装置により下地材3の外形に沿って、接着層9、装飾層8、保護層7及び滑り層11の深さで切断することにより、装飾シート4が離型層6から剥離して下地材3の表面に貼着される。そして、装飾シート4の表面に滑り層11が形成されている。尚、
図2(b),(d)に示すシート体Aも同様にヒータ16により加熱されたゴムロール17により加熱、加圧成型することが出来る。
【0043】
図5及び
図6は、装飾シート4と遊戯盤2とがインモールド成型により一体的に製造される様子を説明する図である。先ず、
図5(a)に示すように、射出成型用の金型18a,18bを開いて、
図2(a)に示すシート体Aを挿入し、
図5(b)に示すように、雌の金型18a側に真空引きして該金型18aの表面にシート体Aの基材フィルム5を密着する。
【0044】
次に、
図5(c)に示すように、雄の金型18bの表面をシート体A(一般的にインモールド転写箔)の接着層9側に当接させて金型18a,18bを閉じる(インモールド成形)。そして、
図5(d)に示すように、金型18bに設けられた注入口19から下地材3の素材となる合成樹脂20を注入し、
図6(a)に示すように下地材3を成型する凹部内に合成樹脂20を満たして所定の温度に加熱する。
【0045】
その際に、合成樹脂20からなる下地材3が成型されつつ接着層9に溶融して固定され、保護層7にワックス等の滑り剤を含ませておけば、保護層7は装飾層8の保護と滑り性能を兼ねる層として形成される。この場合の金型18a,18bの温度は60℃〜100℃に設定される。また、成型される合成樹脂20の温度は200℃〜250℃に設定される。
【0046】
そして、金型18a,18bを冷却して合成樹脂20からなる下地材3が硬化したら、
図6(b)に示すように、金型18bを開いて退避させ、
図6(c)に示すように、図示しない切断装置により下地材3の外形に沿って、接着層9、装飾層8及び保護層7の深さで切断することにより、装飾シート4が離型層6から剥離して下地材3の表面に設けられる。尚、
図2(b),(d)に示すシート体Aも同様に金型18a,18bにより合成樹脂20を射出成型して下地材3と一体的に成型することが出来、保護層7にワックス等の滑り剤を含ませておけば、保護層7は装飾層8の保護と滑り性能を兼ねる層として形成される。
【0047】
本実施形態の保護層7は、数μm(例えば、1μm〜10μm程度)の厚みを有して形成される。保護層7が厚いと装飾シート4がカールしたり、下地材3の外形に沿って、接着層9、装飾層8及び保護層7の深さで切断する際に切断し難く、切断箇所にバリが出易くなる。保護層7の硬度は、鉛筆硬度でBから4H程度が好ましい。
【0048】
上記遊戯盤2によれば、装飾シート4の表面に設けた滑り層11によりパチンコ玉等の滑走体が低摩擦抵抗の滑り層11上で滑走出来、滑走を繰り返しても装飾層8に傷やかすれが発生し難い。特にパチンコ機1の遊戯盤2として採用した場合には、該遊戯盤2表面のパチンコ玉の接触に対する耐久性能は、パチンコ玉を80万発以上打ち出した場合の耐久性能を得ることが出来た。
【0049】
また、装飾シート4に設けた導電層10により携帯電話機の電磁波やパチンコ玉に帯電した静電気をシールドして遊戯機となるパチンコ機1の誤作動を防止することが出来る。また、導電層10を遊戯盤2に容易に設けることが出来た。
【0050】
また、装飾シート4の装飾層8の外側に透明または半透明の導電層10を設けたことで透明または半透明の導電層10を介して装飾層8に施された装飾を視認することが出来る。透明または半透明な導電層10は、保護層7と装飾層8との間、或いは、接着層9と装飾層8との間に設けることが好ましい。また、導電層10に必要なアンカー層を設けることでも良い。
【0051】
導電層10の導電材料としては、酸化インジウムに錫を添加した化合物からなり、導電性を持ちながら高い透明度を有しているITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウム錫)をスパッタリングや蒸着により設けることが出来る。また、錫層を付着させたり、ATO(Antimony trioxide, Sb
2O
3;アンチモンドープト酸化錫)、ITO、銀等の金属粒子を塗布しても良い。
【実施例1】
【0052】
図4に示す熱転写用のシート体Aを
図2(a)に示す層構成で作成した。PET(Polyethylene terephthalate;ポリエチレンテレフタレート)フィルムの一例として、帝人デュポンフィルム株式会社製の「テイジンテトロンフィルムG2(商品名)」からなる基材フィルム5上に、DIC社製「TD01(商品名)」からなる離型層6を形成し、その上に大日精化工業株式会社製の「TMR850メジウム(商品名)」と日本精鑞株式会社製の「ParaffinWax155(商品名)」からなる保護層7、東洋インキ株式会社製の「N800LPGT(商品名)」からなる装飾層8、三菱レイヨン株式会社製の「ダイヤナールBR(商品名)」からなる接着層9を順次積層して作成した。
【0053】
その後、
図4に示すヒータ16により200℃〜240℃の温度に加熱されたゴムロール17を用いた熱転写により遊戯盤2の合成樹脂からなる下地材3に転写して接着し、熱転写後、基材フィルム5を離型層6を介して剥がして保護層7が遊戯盤2の表面になるよう作成した。このとき保護層7の表面(離型層6側)に滑り剤粒子11aが並び、滑り層11と保護層7を兼ねた層が形成された。また、熱転写時に接着層9が熱溶融して下地材3に接着された。
【0054】
尚、本実施形態の装飾シート4の表面に設けた滑り層11の水の接触角度θは74度、滑り抵抗は17Nであった。
【0055】
[比較例1]
前記実施例1と同様に離型層6を形成し、その上にワックスを抜いた大日精化工業株式会社製の「TMR850メジウム(商品名)」のみを形成したシート体Aを作成し、前記実施例1と同様に、
図4に示すヒータ16により200℃〜240℃の温度に加熱されたゴムロール17を用いて熱転写により遊戯盤2の合成樹脂からなる下地材3に転写して接着し、熱転写後、基材フィルム5を離型層6を介して剥がして保護層7が遊戯盤2の表面になるよう作成した。
【0056】
尚、本比較例の装飾シート4の表面に設けた保護層7の水の接触角度θは58度、滑り抵抗は25Nであった。
【実施例2】
【0057】
上記比較例1で熱転写した保護層7の表面に無溶剤型のシリコーンをスプレーで吹きつけ滑り層11を形成し、ウェスで伸ばすとともに、余分なシリコーンを拭き取った。
【0058】
尚、本実施形態の装飾シート4の表面に設けた滑り層11の水の接触角度θは89度、滑り抵抗は12Nであった。
【0059】
前記、実施例1、2及び比較例1の3種類の遊戯盤2をパチンコ台として採用し、実際にパチンコ玉を打ち出して耐久性能試験を実施したところ、実施例1、2では、パチンコ玉の打ち出し回数で80万発以上の耐久性が有った。比較例1ではパチンコ玉の打ち出し回数で80万発程度で遊戯盤2の表面が削れ、装飾層8の絵柄も削れてしまった。
【0060】
尚、上記実施形態では、保護層7としてハードコートを使用しているがこれに限るものではない。また、
図2(d)に示すように、接着層9と装飾層8との間に導電層10を設けても良い。
【0061】
また、
図5及び
図6に示すように、金型18a,18b内にシート体Aを装填した後、合成樹脂20を注入してシート体Aを溶融した合成樹脂20で包んで固化させ、一体化した複合製品を作るインサートモールド(IMF)成型などでは、PETフィルムに直接、導電層10を設けて装飾シート4に設けることでも良い。
【0062】
尚、前記実施形態では、パチンコ機1の遊戯盤2に適用した場合の一例について説明したが、遊戯盤2上を滑走する滑走体の他の例として、サッカーボールや野球ボウル等が遊戯盤2上を滑走するサッカーゲーム盤や野球ゲーム盤等にも広く適用出来る。