(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117513
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】流動農地シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20170410BHJP
G06Q 10/04 20120101ALI20170410BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/04
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-238558(P2012-238558)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-89544(P2014-89544A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(72)【発明者】
【氏名】三枝 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山形 典子
(72)【発明者】
【氏名】西口 修
【審査官】
松野 広一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−208711(JP,A)
【文献】
特開2002−269299(JP,A)
【文献】
特開2002−230136(JP,A)
【文献】
東良太,過疎農山村の将来予測とその地域活性化に向けた利用−別府市内成地区を事例に−,地理情報システム学会講演論文集,日本,2009年10月15日,第18巻,第461−466頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
G06F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各耕作者の年齢情報、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報、耕作している区画情報を含む基礎情報を記録した記録部と、
判定時を取得する判定時取得手段と、
前記年齢情報に基づいて、前記判定時における各耕作者の年齢を算出し、当該年齢が所定年齢以上であるかどうかを判断する年齢判断手段と、
前記各耕作者についての、前記年齢判断手段の判断結果と、後継者の有無情報と、規模拡大意向の有無情報とに基づいて、前記各耕作者が有する区画が流動農地であるか否かを予測し記録する流動農地予測手段と、
流動農地予測手段によって流動農地とされた区画と、流動農地でないとされた区画とを区別可能にして出力する流動農地出力手段と、
を備えた流動農地シミュレーション装置。
【請求項2】
請求項1記載の流動農地シミュレーション装置において、
前記基礎情報には、各区画によって区分された農地地図データが含まれており、
前記流動農地出力手段は、流動農地予測手段によって流動農地とされた区画と、流動農地でないとされた区画とを区別可能にして農地地図を出力することを特徴とする流動農地シミュレーション装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の流動農地シミュレーション装置において、
前記流動農地予測手段は、判定年度において耕作者が所定年齢以上であり、前記後継者の有無情報が後継者がないことを示しており、前記規模拡大意向の有無情報が規模拡大意向が無いことを示している場合に、当該耕作者の有する各区画を流動農地であると判断することを特徴とする流動農地シミュレーション装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の流動農地シミュレーション装置において、 前記耕作者についての、前記年齢判断手段の判断結果と、後継者の有無情報と、規模拡大意向の有無情報とに基づいて、前記流動農地であると予測された区画を耕作する可能性のある耕作者を抽出する候補者抽出手段を、さらに備えた流動農地シミュレーション装置。
【請求項5】
請求項4記載の流動農地シミュレーション装置において、
対象とする流動農地について、当該流動農地と借り手候補の所有する各区画との距離に基づいて、候補者の中から推奨候補者を抽出する推奨候補者抽出手段を、さらに備えた流動農地シミュレーション装置。
【請求項6】
請求項4記載の流動農地シミュレーション装置において、
対象とする流動農地について、当該流動農地と候補者の所有する各区画が、同一の地理的共同体に属するか否かに基づいて、前記候補者の中から推奨候補者を抽出する推奨候補者抽出手段を、さらに備えた流動農地シミュレーション装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の流動農地シミュレーション装置において、 前記流動農地予測手段によって流動農地と予測された区画が、判定時に流動農地になっているか否かに基づいて、前記流動農地予測手段における予測の際の、前記年齢判断手段の判断結果、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報のいずれかの重要度を変化させることを特徴とする流動農地シミュレーション装置。
【請求項8】
請求項4記載の流動農地シミュレーション装置において、
前記流動農地の判定年度以降における耕作者が誰であるかに基づいて、前記候補者抽出手段における抽出の際の前記年齢判断手段の判断結果、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報のいずれかの重要度を変化させることを特徴とする流動農地シミュレーション装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の流動農地シミュレーション装置において、 当該流動農地シミュレーション装置は、サーバ装置として構成され、
ユーザは、当該サーバ装置にインターネットを介して接続された端末装置からアクセスして使用することを特徴とする流動農地シミュレーション装置。
【請求項10】
各耕作者の年齢情報、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報、耕作している区画情報を含む基礎情報を記録した記録部を有するコンピュータを流動農地シミュレーション装置として機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、
判定年度を取得する判定年度取得手段と、
前記年齢情報に基づいて、前記判定年度における各耕作者の年齢を算出し、当該年齢が所定年齢以上であるかどうかを判断する年齢判断手段と、
前記各耕作者についての、前記年齢判断手段の判断結果と、後継者の有無情報と、規模拡大意向の有無情報とに基づいて、前記各耕作者が有する区画が流動農地であるか否かを予測し記録する流動農地予測手段と、
流動農地予測手段によって流動農地とされた区画と、流動農地でないとされた区画とを区別可能にして出力する流動農地出力手段として機能させるための流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項11】
請求項10記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、
前記基礎情報には、前記各区画によって区分された農地地図データが含まれており、
前記流動農地出力手段は、流動農地予測手段によって流動農地とされた区画と、流動農地でないとされた区画とを区別可能にして農地地図を出力することを特徴とする流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項12】
請求項10または11記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、
前記流動農地予測手段は、前記判定年度において耕作者が所定年齢以上であり、前記後継者の有無情報が後継者がないことを示しており、前記規模拡大意向の有無情報が規模拡大意向が無いことを示している場合に、当該耕作者の有する各区画を流動農地であると判断することを特徴とする流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項13】
請求項10から12までのいずれか1項に記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、前記コンピュータを、さらに
前記耕作者についての、前記年齢判断手段の判断結果と、後継者の有無情報と、規模拡大意向の有無情報とに基づいて、前記流動農地であると予測された区画を耕作する可能性のある耕作者を抽出する候補者抽出手段として機能させるための流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項14】
請求項13記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、前記コンピュータを、さらに
対象とする流動農地について、当該流動農地と前記候補者の所有する各区画との距離に基づいて、候補者の中から推奨候補者を抽出する推奨候補者抽出手段として機能させるための流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項15】
請求項13記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、前記コンピュータを、さらに
対象とする流動農地について、当該流動農地と前記候補者の所有する各区画が、同一の地理的共同体に属するか否かに基づいて、候補者の中から推奨候補者を抽出する推奨候補者抽出手段として機能させるための流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項16】
請求項10から15までのいずれか1項に記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、
前記流動農地予測手段によって流動農地と予測された区画が、判定時に流動農地になっているか否かに基づいて、前記流動農地予測手段における予測の際の、前記年齢判断手段の判断結果、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報のいずれかの重要度を変化させることを特徴とする流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項17】
請求項13記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、
前記流動農地の判定年度以降における耕作者が誰であるかに基づいて、前記候補者抽出手段における抽出の際の前記年齢判断手段の判断結果、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報のいずれかの重要度を変化させることを特徴とする流動農地シミュレーションプログラム。
【請求項18】
請求項10から17までのいずれか1項に記載の流動農地シミュレーションプログラムにおいて、
前記流動農地シミュレーション装置は、サーバ装置として構成され、
ユーザは、当該サーバ装置にインターネットを介して接続された端末装置からアクセスして使用することを特徴とする流動農地シミュレーションプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、離農可能性のある農地をシミュレーションする流動農地シミュレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農地の転作や減反などにかかわる情報をコンピュータによって管理し、計画的・合理的な遂行を支援するためのシステムが提案されている。特許文献1には、各農地の属性情報を記録しておき、地図上でクリックすることにより、容易にその属性情報を見ることのできる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−269299
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、転作や減反のための計画を作成するための支援を得ることができるものの、近年問題となっている農業を辞めてしまう離農に対する対応策を作成するためには用いることができない。
【0005】
そこで、この発明では、離農によって流動化するであろう農地を予め予測し、あるいはその借り手を見いだすことのできる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)(10)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、各耕作者の年齢情報、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報、耕作している区画情報を含む基礎情報を記録した記録部と、判定時を取得する判定時取得手段と、前記年齢情報に基づいて、前記判定時における各耕作者の年齢を算出し、当該年齢が所定年齢以上であるかどうかを判断する年齢判断手段と、前記各耕作者についての、前記年齢判断手段の判断結果と、後継者の有無情報と、規模拡大意向の有無情報とに基づいて、前記各耕作者が有する区画が流動農地であるか否かを予測し記録する流動農地予測手段と、流動農地予測手段によって流動農地とされた区画と、流動農地でないとされた区画とを区別可能にして出力する流動農地出力手段とを備えている。
【0007】
したがって、将来の判定時における流動農地の予測を適切に行うことができる。
【0008】
(2)(11)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、基礎情報には、各区画によって区分された農地地図データが含まれており、流動農地出力手段は、流動農地予測手段によって流動農地とされた区画と、流動農地でないとされた区画とを区別可能にして農地地図を出力することを特徴としている。
【0009】
したがって、将来の判定時における流動農地を農地地図上で確認することができる。
【0010】
(3)(12)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、流動農地予測手段は
、判定年度において耕作者が所定年齢以上であり、前記後継者の有無情報が後継者がないことを示しており、前記規模拡大意向の有無情報が規模拡大意向が無いことを示している場合に、当該耕作者の有する各区画を流動農地であると判断することを特徴としている。
【0011】
したがって、規模拡大意向および後継者有無に基づいて、流動農地の予測を行うことができる。
【0012】
(4)(13)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、耕作者についての、前記年齢判断手段の判断結果と、後継者の有無情報と、規模拡大意向の有無情報とに基づいて、前記流動農地であると予測された区画を耕作する可能性のある耕作者を抽出する候補者抽出手段を、さらに備えたことを特徴としている。
【0013】
したがって、予測した流動農地について、代わって耕作を行う可能性の有る耕作者候補を抽出することができる。
【0014】
(5)(14)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、対象とする流動農地について、当該流動農地
と借り手候補の所有する各区画との距離に基づいて、候補者の中から推奨候補者を抽出する推奨候補者抽出手段をさらに備えたことを特徴としている。
【0015】
したがって、予測した流動農地と耕作者候補の耕作する区画との距離に基づいて、推奨耕作者候補を抽出することができる。
【0016】
(6)(15)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、対象とする流動農地について、当該流動農地と前記候補者の所有する各区画が、同一の地理的共同体に属するか否かに基づいて
、候補者の中から推奨候補者を抽出する推奨候補者抽出手段をさらに備えたことを特徴としている。
【0017】
したがって、予測した流動農地の耕作者と、耕作者候補が同一の地理的共同体に属するかどうかによって、推奨耕作者候補を抽出することができる。
【0018】
(7)(16)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、流動農地予測手段によって流動農地と予測された区画が、判定時に流動農地になっているか否かに基づいて、前記流動農地予測手段における予測の際の、前記年齢判断手段の判断結果、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報のいずれかの重要度を変化させることを特徴としている。
【0019】
したがって、流動農地の予測制度を高めることができる。
【0020】
(8)(17)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、流動農地の判定年度以降における耕作者が誰であるかに基づいて、前記候補者抽出手段における抽出の際の前記年齢判断手段の判断結果、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報のいずれかの重要度を変化させることを特徴としている。
【0021】
したがって、候補者候補の抽出精度を高めることができる。
【0022】
(9)(18)この発明に係る流動農地シミュレーション装置は、流動農地シミュレーション装置は、サーバ装置として構成され、ユーザは、当該サーバ装置にインターネットを介して接続された端末装置からアクセスして使用することを特徴としている。
【0023】
したがって、ユーザは端末装置から流動農地シミュレーションを利用することができる。
【0024】
「判定時取得手段」は、実施形態においては、ステップS12がこれに対応する。
【0025】
「年齢判断手段」は、実施形態においては、ステップS13、S14がこれに対応する。
【0026】
「流動農地予測手段」は、実施形態においては、ステップS15〜S17がこれに対応する。
【0027】
「流動農地出力手段」は、実施形態においては、ステップS18がこれに対応する。
【0028】
「地理的共同体」とは、地理的に近接しておりその住民が共同体意識を有するような地理的単位をいう。実施形態においては、地区、集落がこれに該当する。
【0029】
「プログラム」とは、CPUにより直接実行可能なプログラムだけでなく、ソース形式のプログラム、圧縮処理がされたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む概念である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】この発明の一実施形態による流動農地シミュレーション装置の機能ブロック図である。
【
図2】流動農地シミュレーション装置をサーバ装置Sとして構築した場合のシステム構成である。
【
図5a】流動農地予測処理のフローチャートである。
【
図5b】流動農地予測処理のフローチャートである。
【
図9】流動農地予測の際に表示される耕作者一覧である。
【
図10a】耕作者候補抽出処理のフローチャートである。
【
図10b】耕作者候補抽出処理のフローチャートである。
【
図11】耕作者候補の抽出を説明するための図である。
【
図13】流動農地と耕作者候補の圃場を示す図である。
【
図14】耕作者候補を抽出するために二以上の要素を考慮する場合のウエイトテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.機能ブロック図
図1に、この発明の一実施形態による流動農地シミュレーション装置の機能ブロック図を示す。記録部2は、耕作者の年齢情報、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報、当該耕作者が耕作している区画情報を含む基礎情報を記録している。判定時取得手段4は、判定を行う時点を取得する。この判定時は、予め記録されておいるものを取得してもよいし、外部から取り込むようにしてもよい。
【0032】
年齢判断手段6は、前記基礎情報中の年齢情報に基づいて、取得した判定時における各耕作者の年齢を算出する。さらに、年齢判断手段6は、判定時における各耕作者の年齢が所定年齢以上であるかどうかを判断する。
【0033】
流動農地予測手段8は、前記各区画の耕作者についての、前記年齢判断手段の判断結果と、後継者の有無情報と、規模拡大意向の有無情報とに基づいて、前記各区画が流動農地であるか否かを予測する。さらに、流動農地出力手段10は、流動農地予測手段によって流動農地とされた区画と、流動農地でないとされた区画とを区別可能にして出力する。
【0034】
2.ハードウエア構成
図2に、流動農地シミュレーション装置をサーバ装置として構成した場合の全体図を示す。サーバ装置Sは、インターネットに接続されている。端末装置T1、T2・・・は、インターネットを介してサーバ装置Sにアクセスすることができる。
【0035】
図3に、サーバ装置Sのハードウエア構成を示す。CPU20には、メモリ22、DVD−ROMドライブ24、ハードディスク26、通信回路28が接続されている。ハードディスク26には、オペレーティングシステム(OS)32、流動農地シミュレーションプログラム34、農地DB36、耕作者DB38が記録されている。通信回路28は、インターネットに接続するためのものである。
【0036】
流動農地シミュレーションプログラム34は、OS32と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、DVD−ROM30に記録されていたものを、DVD−ROMドライブ24を介して、ハードディスク26にインストールしたものである。
【0037】
図4に、端末装置T1のハードウエア構成を示す。CPU50には、メモリ52、ディスプレイ54、キーボード/マウス56、DVD−ROMドライブ58、ハードディスク60、通信回路62が接続されている。ハードディスク60には、オペレーティングシステム(OS)64、ブラウザプログラム66が記録されている。通信回路62は、インターネットに接続するためのものである。
【0038】
ブラウザプログラム66は、OS64と協働してその機能を発揮するものである。これらプログラムは、DVD−ROM68に記録されていたものを、DVD−ROMドライブ58を介して、ハードディスク60にインストールしたものである。なお、他の端末装置T2・・・についても同様のハードウエア構成である。
【0039】
3.流動農地シミュレーション処理
(1)流動農地予測処理
図5a、
図5bに、流動農地予測処理における、端末装置T1のブラウザプログラム66およびサーバ装置Sの流動農地シミュレーションプログラム34のフローチャートを示す。
【0040】
端末装置T1のブラウザプログラム66(以下、端末装置T1と省略することがある)は、サーバ装置Sにアクセスし、座標などにより対象地域を指定して流動農地予測を要求する(ステップS1)。これを受けて、サーバ装置Sの流動農地シミュレーションプログラム34(以下、サーバ装置Sと省略することがある)は、流動農地予測のために必要な判定時を入力するための画面を送信する(ステップS11)。
【0041】
端末装置T1は、この入力画面をディスプレイ54において表示する。ユーザは、この画面を参照しながら、キーボード/マウス56を用いて判定時および判定年齢を入力する。たとえば、今年が2012年であり5年後の流動農地を予測するのであれば、判定時を2017年4月1日などと入力する。また、判定の基礎として用いる判定年齢を入力する。ここでは、判定年齢として65歳を入力したものとして説明を進める。端末装置T1は、入力された判定時をサーバ装置Sに送信する(ステップS2)。
【0042】
サーバ装置Sは、判定時および判定年齢を受信し(ステップS12)メモリ22に記録する。次に、サーバ装置Sは、各耕作者の基礎情報から生年月日を取得する。
【0043】
図6に、ハードディスク26に記録された耕作者DBの例を示す。IDの欄には、各耕作者を特定するための耕作者IDが記録されている。名前の欄には、各耕作者の名前が記録されている。生年月日の欄には、耕作者の生年月日が記録されている。この実施形態では、西暦4桁、月2桁、日2桁によって示している。
【0044】
地区コードの欄には、その耕作者の居住する地区を示すコードが記録されている。集落コードの欄には、その耕作者の居住する集落を示すコードが記録されている。なお、この実施形態において集落は、数戸から構成される小単位のグループである。地区は、数個の集落から構成されるグループである。
【0045】
後継者の有無の欄は、当該耕作者に後継者があるかどうかを示すものである。「1」は後継者無しを示し、「2」は後継者有りを示す。規模拡大意向の欄は、当該耕作者に耕作規模を拡大する意向があるかどうかを示すものである。「1」は拡大意向無しを示し、「2」は拡大意向有りを示す。
【0046】
サーバ装置Sは、耕作者DBから各耕作者の生年月日を取得する。さらに、取得した各耕作者の生年月日に基づいて、判定時における各耕作者の年齢を算出する(ステップS13)。判定時が5年後であれば、各耕作者の現在の年齢ではなく、5年後の年齢を算出することになる。
【0047】
このように、サーバ装置Sは、各耕作者の判定時における年齢を算出した後、当該年齢が65歳(判定年齢)以上となる耕作者を抽出する(ステップS14)。
図6の例であれば、2017年4月1日を判定時とした場合、耕作者ID「0003」「0004」「0005」「0006」が抽出されることになる。
【0048】
次に、サーバ装置Sは、抽出した耕作者のうち、後継者無しの者を抽出する(ステップS15)。
図6の例であれば、耕作者ID「0004」「0005」「0006」が抽出されることになる。さらに、サーバ装置Sは、抽出した耕作者のうち、規模拡大意向無しの者を抽出する(ステップS16)。
図6の例であれば、耕作者ID「0006」が抽出されることになる。
【0049】
次に、サーバ装置Sは、ハードディスク26の農地DB36を参照して、抽出した耕作者の耕作する農地を取得する。
【0050】
図7に、農地DB36の例を示す。圃場IDは、各圃場を特定するためのIDである。なお、この実施形態では、農地の畦畔や作付の境界によって区分された区画を圃場としている。また、この実施形態では、圃場IDによって各圃場をユニークに特定するため、年度、町村コード、耕作者ID、耕作者IDごとの通し番号、枝番号を組み合わせて、圃場IDを構成するようにしている。
【0051】
作物IDは、当該圃場において作付されている作物を示すIDである。たとえば、「01」であれば大豆、「02」であれば米・・・というように割り当てられている。土壌情報は、当該圃場の土壌に関する情報である。面積は、当該圃場の面積である。地図情報には、当該圃場の形状と位置を示す情報が含まれている。
【0052】
上記においては、耕作者ID「0006」が抽出されているので、この耕作者の圃場を農地DBから特定し、予想される流動農地とする(ステップS17)。続いて、サーバ装置Sは、農地DBから指定された範囲の圃場IDの地図情報を読み出して、農地地図を生成する。この時、ステップS17において予想した流動農地は、異なる色を付すようにしている(ステップS18)。サーバ装置Sは、このようにして生成した農地地図を端末装置T1に送信する。なお、この際、サーバ装置Sは、各圃場の耕作者などの情報もあわせて送信する。
【0053】
端末装置T1は、農地地図を受信し、ディスプレイ54において表示する(ステップS3)。あるいは、プリンタ(図示せず)にて印刷する。
【0054】
図8に、このようにして表示された農地地図の例を示す。図において、斜線の付された圃場が予測された流動農地である。端末装置T1のユーザが、キーボード/マウス56を操作し、マウスカーソル100を、農地地図上の予測流動農地にあわせると、
図9に示すように、これに対応する圃場の情報を太枠にして表示する。
【0055】
図8、
図9の例であれば、カーソル100の置かれた予測流動農地は、耕作者が田中次郎であり、作物が米であり、面積は96平方メートル、泥炭土であることがわかる。なお、流動農地以外の圃場についても、カーソル100を置くことにより、詳細情報を表示することができる。
【0056】
端末装置T1を使用するユーザは、このようにして判定時において予想される流動農地とその詳細を知ることができる。
【0057】
(2)耕作者候補抽出処理
次に、予想された流動農地について、たとえば、当該流動農地を借りるなどして、現在の耕作者に代わって耕作を行う可能性のある者の候補(耕作者候補)を抽出する処理を説明する。
図10a、
図10bは、耕作者候補抽出処理における、端末装置T1のブラウザプログラム66およびサーバ装置Sの流動農地シミュレーションプログラム34のフローチャートである。
【0058】
ユーザは、端末装置T1を操作して、サーバ装置Sにアクセスし、候補者候補抽出処理を要求する(ステップS21)。この時、ユーザは、いずれの予想流動農地について、候補者抽出処理を行うかを指定する。したがって、候補者候補抽出処理は、流動農地予測処理を実行した後に行うのが通常である。
【0059】
これを受けて、サーバ装置Sは、ハードディスク26に記録された耕作者DB38を参照して、以下の処理を各耕作者について行う。まず、最初の耕作者について、当該耕作者が規模拡大意向を有しているかどうかを判断する(ステップS31)。規模拡大意向を有していなければ、耕作者候補としては適さないので、ステップS36に進み、次の耕作者を対象として、ステップS31以下を繰り返す。
【0060】
当該耕作者が規模拡大意向を有していれば、判定時における年齢が65歳(判定年齢)以上であるかどうかを判断する(ステップS32)。65歳(判定年齢)未満であれば、当該耕作者を耕作者候補として抽出する(ステップS35)。65歳(判定年齢)以上であれば、当該耕作者に後継者があるかどうかを判断する(ステップS33)。後継者がなければ、耕作者候補としては適さないので、ステップS36に進み、次の耕作者を対象として、ステップS31以下を繰り返す。後継者があれば、当該耕作者を耕作者候補として抽出する(ステップS34)。
【0061】
次に、サーバ装置Sは、全ての耕作者について処理したかどうかを判断する(ステップS36)。未処理の耕作者があれば、次の耕作者を対象として(ステップS37)、ステップS31以下を繰り返し実行する。全ての耕作者についての処理が完了すれば、耕作者候補のリストが完成することになる。
【0062】
次に、サーバ装置Sは、農地DB36を参照して、抽出された耕作者候補が耕作している圃場を抽出する。さらに、これら圃場のうちで、対象としている流動農地に最も近い圃場の耕作者を、推奨候補者として抽出する(ステップS38)。たとえば、
図11に示すように、対象となる流動農地に最も近い(たとえば、両圃場の最も近接した位置の間の距離に基づいて判断する)耕作者候補の圃場が、耕作者Aによって耕作されている場合には、耕作者候補Aが推奨候補者Aとして抽出されることになる。
【0063】
続いて、サーバ装置Sは、対象となる流動農地、耕作者候補の圃場、推奨耕作者候補の圃場を、それぞれ色分けして農地地図を生成する。これを、端末装置T1に送信する(ステップS39)。この時、サーバ装置Sは、各圃場の情報もあわせて送信する。
【0064】
端末装置T1は、この農地地図を受信し、ディスプレイ54に表示する(ステップS22)。あるいは、プリンタ(図示せず)に出力する。また、端末装置T1のユーザの選択により、耕作者候補、推奨耕作者候補の一覧を表示することもできる。耕作者候補一覧表示の例を、
図12に示す。
【0065】
端末装置T1のユーザは、キーボード/マウス56を操作して、耕作者候補のいずれかを選択することにより、当該耕作者候補の圃場の詳細を表示することができる。たとえば、ユーザによって耕作者候補の1行目の夕立太郎が選択されると、端末装置T1は、
図13に示すような農地地図をディスプレイ54に表示する。
【0066】
図13において、流動農地200とともに、選択された耕作者候補の耕作する圃場が、作物ごとに色分けされて表示されている。ユーザは、この図を見て、流動農地200に最も近い圃場202は、異なる作物が植え付けられていることを認識することができる。また、同じ作物が植え付けられている圃場204は、少し離れていることがわかる。
【0067】
以上のようにして、ユーザは、流動農地に対する各耕作者候補の耕作可能性を判断することができる。
【0068】
4.その他の実施形態
(1)上記実施形態においては、生成した農地地図および関連データを端末装置T1に送信し、端末装置T1の側のブラウザプログラム66にてローカルに表示処理を行っている。しかし、ユーザが所定の耕作者や圃場を選択するごとに、サーバ装置Sにアクセスして情報を取得し、表示するようにしてもよい。
【0069】
(2)上記実施形態では、推奨耕作者候補として、流動農地から最も近い距離にある圃場を耕作する耕作者候補を抽出するようにしている。しかし、両圃場の直線距離ではなく、道路などにより移動に必要とされる距離に基づいて、判断するようにしてもよい。
【0070】
また、上記距離に代えて、あるいは加えて、流動農地を耕作する耕作者と同一の地区(または集落)に居住する耕作者候補を、推奨耕作者候補として抽出するようにしてもよい。圃場が同じ地区にあるという場合よりも、耕作者が同じ地区にあるという場合の方が、圃場の貸し借りがスムースに進む可能性が高いからである。
【0071】
(3)また、流動農地に作付けされている作物と同じもしくは類似する作物を作付けしている圃場を有する耕作者候補を、推奨耕作者候補としてもよい。
【0072】
(4)また、流動農地の土壌情報に適応した作物をテーブルなどに記録しておき、当該作物と同じもしくは類似する作物を作付けしている耕作者候補を、推奨耕作者候補としてもよい。
【0073】
(5)また、各耕作者の経営状況(耕作による収益など)をテーブルなどに記録しておき、経営状況の良い(所定値より収益の高い)耕作者候補を、推奨耕作者候補としてもよい。
【0074】
(6)上記推奨耕作者候補の各抽出手法は、二以上を組み合わせて(たとえば、距離を主たる抽出要素として、作物が同じかどうかを従たる抽出要素として)抽出を行うようにしてもよい。この際、組み合わせて使用する各抽出要素に重み付けをして抽出するようにしてもよい。
【0075】
たとえば、流動農地と圃場との距離に応じて
図14Aに示すようなテーブルに基づいてポイントを決定する。また、
図14Bに示すようなテーブルに基づいて流動農地の作物と圃場の作物との組合せに基づくポイントを決定する。そして、距離のウエイトを2、作物のウエイトを1として、両ポイントを合計する。たとえば、流動農地と対象圃場との距離が50mであり、流動農地の作物が小麦、圃場の作物が大豆である場合には、50ポイント×2+20ポイント=120ポイントが、当該圃場に対して付与される。これを全ての圃場に対して行い、所定のポイントを超える圃場の耕作者を耕作者候補として抽出することができる。
【0076】
さらに、実際に流動農地を元の耕作者に代わって耕作する耕作者(引継ぎ耕作者)が判明した時点で、これをサーバ装置Sに記録し、これに基づいて、上記ウエイトを変更するようにしてもよい。実際の引継ぎ耕作者が出た場合には、当該引継ぎ耕作者の圃場のポイントが高くなるように、上記ウエイトを修正する。このようにして、次回からの耕作者候補の選定精度を高めることができる。
【0077】
(7)上記説明したウエイト付けおよびその修正は、流動農地の予測においても同様に用いることができる。この際、流動農地の予測が当たったものと、あたらなかったものとを集計し、予測が当たったものに共通する要素(年齢、後継者の有無情報、規模拡大意向の有無情報など)について、ウエイトを高くするようにすればよい。
【0078】
(8)上記実施形態では、ユーザが判定年齢をその都度入力するようにしている。しかし、ユーザが予め判定年齢を設定しておき、これが変更されない限り設定された判定年齢を用いるようにしてもよい。
【0079】
(9)上記実施形態では、流動農地シミュレーション装置をサーバ装置Sとして、端末装置T1、T2・・・からアクセスするようにしている。しかし、コンピュータ単体(スタンドアローン)で、流動農地シミュレーション装置を実現するようにしてもよい。この場合、
図5a、
図5bのステップS1、S2、S3や、
図10a、
図10bのステップS21、S22も含めて、コンピュータ単体で実行することになる。