(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117514
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】サークル用ドア構造
(51)【国際特許分類】
A47D 13/06 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
A47D13/06
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-239499(P2012-239499)
(22)【出願日】2012年10月30日
(65)【公開番号】特開2014-87490(P2014-87490A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107066
【氏名又は名称】株式会社リッチェル
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】大倉 秀教
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−021376(JP,A)
【文献】
特開2003−339486(JP,A)
【文献】
特開2000−245582(JP,A)
【文献】
特開2006−061207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視で略U字形状のドア枠と、当該略U字形状の内側に取り付けたドアを備え、
前記ドアは左右方向一方の側部をドア枠に対して回動自在にヒンジ部にてヒンジ連結してあり、
他方の開放端側の側部であって上部側に下方に向けて突出付勢したロックピンを有し、
前記ドア枠は前記ロックピンを受け入れるロック孔を有し、
前記ロック孔は左右方向に長い長孔に形成することで、前記ロックピンが長孔の左右端部に当接し、それ以上前記ドア枠が変形するのを防止してあり、
前記ロックピンは前記ドアの開放端側の上部側をドア枠側に向けて突出させた突出部から下方に向けて突出付勢してあり、
前記ロック孔はドア枠側に、前記突出部に対応させて設けた凹部又は段差部に形成し、
前記ドアのヒンジ部はドアが所定の範囲で上下動するのを許容するとともに当該ドアが下方に向けて付勢力fの大きさで付勢され、前記付勢力fは大人が前記ドアを持ち上げることができるが、ペット及び幼児には前記ドアを持ち上げることができない値であることを特徴とするサークル用ドア構造。
【請求項2】
前記ドア枠はブロー成形体であることを特徴とする請求項1記載のサークル用ドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネル体で周囲を囲繞して、その中でペットを飼育したり、遊ばせたりするペットサークルや、その中を幼児の遊び場とするベビーサークルに関し、特にサークルの出入口として設けたドアの構造に係る。
【背景技術】
【0002】
パネル体でサークルを形成したペットサークルやベビーサークルにおいては、サークルの内外に出入りするドアが設けられている。
この種のドアは、ペットが自由に出入りできないように、あるいは幼児がうっかりサークルの外に出ないようにロック機構が設けられている。
これまでに公知のドアロック機構としては、特許文献1に開示するようにドアの開放端部に上下に平行な支持片を固定し、この上下の支持片に軸孔を形成し、この軸孔に沿って昇降自在の縦錠軸を設けることで、ドアの取り付けた枠側の係合孔にこの縦錠軸を押し込むものがある。
しかし、このようなロック構造では縦錠軸を昇降操作するのが大変である。
そこで、例えば
図12に示すようにドア112の開放端からドア枠111のロック孔122に向けて左右方向に突没するロックピン121を設け、ドアを開く際には操作ボタン123にてロックピン121を没入操作するものが考えられる。
しかし、近年、ペットサークルにあっては屋外にて使用する場合が増えており、内部が中空となり軽く雨水にも強いブロー成形による樹脂製が提案されている(特許文献2)。
ポリエチレン樹脂等を用いたブロー成形体は軽く、安価に製造できるものの、撓みや変形が生じやすい問題がある。
従って、ブロー成形のような樹脂製の正面視で略U字形状のドア枠にあっては、
図12に示すように略U字形状の上部が左右外側方向に撓みや変形が生じやすい。
特にペットが大型犬のように大きい場合には、犬がドア枠に足を掛けた力で撓み、ロックが外れる恐れもあった。
ドア枠の上部が左右方向に広がると、
図12(b)に示したように水平方向に突出したロックピン121がドア枠側のロック孔122に届かなくなり、ロックが外れたり、ロックそのものができないといったロック機能が働かなくなる恐れがあった。
また、ロックピンのストロークを長くしようとするとロック部が大きくなり、操作性が悪化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭57−124563号公報
【特許文献2】特開2000−245582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、サークルの出入口に設けたドアにおいて、ドア枠の変形に対して安定したロック機能が得られるサークル用ドア構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るサークル用ドア構造は、正面視で略U字形状のドア枠と、当該略U字形状の内側に取り付けたドアを備え、前記ドアは左右方向一方の側部をドア枠に対して回動自在にヒンジ連結してあり、他方の開放端側の側部であって上部側に下方に向けて突出付勢したロックピンを有し、前記ドア枠は前記ロックピンを受け入れるロック孔を有することを特徴とする。
本明細書で左右方向とは、ドアに向かって左右方向を表現する。
【0006】
ドア枠を略U字形状に成形すると上部が開口しているので、左右方向に変形しやすい。
ここで、略U字形状とはドアの取付側と、このドアの開放端側に設けた両方の立上げ部の底部間を左右方向の連結部で、連結した構造をいう。
ドア枠の上記取付側立上げ部と開放端側立上げ部とが底部寄りの連結部で連結されたものであれば、これらが必ずしも一体的に製作されている必要はない。
ドア枠をこのような略U字形状に構成すると、上部の開口部が左右に開く方向に撓みや変形が生じやすい。
特に樹脂材料のような可撓性のある材料で成形すると、ペットの押圧力によっても撓みやすく、例えばブロー成形によると中空で大型のドア枠が得られるものの、撓みや変形が生じやすい。
そこで、ドア枠の左右方向の撓みや変形の影響が受けにくいように、ロックピンを上下方向(垂直方向)に突没させるとともに上方が開口したロック孔にこのロックピンを係脱させたものである。
また、ここで前記ロック孔は左右方向に長い長孔に形成してもよい。
ロックピンを下方に向けて突出付勢したので、これに対応するロック孔は上方に向けた開口部を有する。
このようなロック孔はドア開放端側立上部を内側方向に突設した突出部を設けることで形成してもよいが、この突出部が通行時に支障をきたす恐れがある。
そこで、ドア枠側をへこませた方がよい。
この場合にドア枠に設けたロック孔を左右方向に長い長孔に形成すると、ドア枠立上げ部が左右方向に変形しても長孔にてロックピンの係合位置ズレを吸収できる。
【0007】
本発明において、ドアのロックを解除するのに操作レバー等でロックピンを上方に没入させてもよいが、ドアのヒンジ連結部にてドアが所定の範囲を上下動するのを許容させてあると、ドアを少し持ち上げるだけでロックピンがロック孔から外れ、そのままドアを開くことができる。
この場合に、大人は持ち上げられるが、ペットや幼児がドアを持ち上げないようにドアを下方向に付勢してあってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るサークルのドア構造にあっては、ロックピンとロック孔との係脱方向を上下方向に設けたので、ドア枠の左右方向の撓みや変形の影響が少ない。
ロック孔を左右方向に長い長孔にすると、ドア枠が左右方向に変形してもロックピンとの相対的ズレを吸収しやすくなる。
また、ドア枠の立上げ部の変形方向とロックピンの係合方向とが直交しているからロックピンが長孔の左右方向内側の端部に当接し、さらにそれ以上変形するのを防止する。
これによりロック部を従来より大きくすることなく従来と同様の操作性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明に係るサークルのドア構造の正面図を示す。(b)はドアを紙面奥側に開いた状態を示す。
【
図2】ドア構造を上から見た図を示し、(a)はドアが閉じた状態、(b)はドアが開いた状態を示す。(c)はドアのロック状態の平面図、(d)はドアが少し開いた状態のロック部の平面図を示す。
【
図3】(a)はドアがドア枠にロックされた状態を示し、(b)はドアを少し持ち上げロックを解除した状態を示す。
【
図4】(a),(b)はロックされた状態からドアを少し持ち上げる動きを示し、(c),(d)はドアを閉じる方向の動きを示す。
【
図5】ドア枠が左右方向に撓みあるいは変形した場合のロック部の状態を示す。(a)はドア全体を示し、(b),(c)はロック部の部分拡大図を示す。
【
図6】ヒンジ部にドアを下方に向けて付勢するスプリングを設けた例を示し、(a)は全体図、(b)はヒンジ部の拡大図を示す。
【
図7】サークルの例を示し、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【
図8】パネル体の連結部の構造例と(a),(b),(c)はその連結手順を示す。
【
図9】連結具の拡大図及び(a),(b),(c)はその連結手順を示す。
【
図10】連結具の連結角度の調整例を(a)〜(d)に示す。
【
図12】従来のドアのロック構造例を示し、(a)は全体、(b)はロック部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るサークルのドア構造例を以下図面に基づいて説明する。
図1(a)にドア構造の正面図、(b)にドアを90度に開いた状態を示す。
図2はドア構造を上から見た平面図を示す。
図1,2に示した実施例は、正面視で略U字形状のドア枠11とその内側にドア12を取り付けた例になっているとともに、ドア枠11,ドア12ともにブロー成形にて製作した例である。
ドア枠11は中空形状になっていて、ドア12の一方の側部をヒンジ部40で連結するための取付側立上部11aとドアの開放端側に位置する開放端側立上部11cとを底部寄りの連結部11bにて一体成形により連結した構造になっている。
ドア枠11の取付側立上部11aには、上下方向の孔からなる軸受部42,42を上下2ヶ所に設け、この軸受部に挿入され回動する回動ピン41,41をドア12側に設け、これらを上下方向に回動軸が形成されるようにヒンジ部40を形成した。
また、回動ピン41はドア枠側の軸受部42に沿って上下動するのを許容している。
このようにドアの上下動を許容するものであれば、ヒンジ構造に制限はない。
ドア12は、内部が中空のブロー成形であるとともに、上部にはドア12を上方に持ち上げやすいように左右方向のスリット12aと、その下側に上下方向のスリット12bを数本設けた例になっている。
ドア12の開放端とドア枠11の開放端側立上部11cとの間は、上部にロック部20を有し、ドアの開放端側の底部とドア枠11の連結部11bとの間にサブロック部30を有する。
ロック部20は
図3,4に示すように次のような構造になっている。
ドア12は開放端側の上部をドア枠の開放端側立上部11cに向けて突出させるように突出部12cを形成し、この突出部12cから下方に向けてロックピン21を突出させてあり、付勢手段の例としてスプリング21aにより突出方向に付勢してあるとともに上下方向に突没する。
一方、ドア枠の開放端側立上部11には、ドア12の突出部に対応した凹部形状としての切欠き部11dを形成し、この切欠き部11dの上面に左右方向長孔のロック孔22を有する。
長孔の長さLは、
図2に示すようにドア枠等の撓みや変形量を考慮して定める。
このように、ドア枠の開放端側立上部に切欠き部11dを設けたので、ドア立上部から左右方向内側への出張り(突出部)がなくドアを開けて通行しやすい。
【0011】
底部側に設けたサブロック30もドア12の開放端の底部から、下方に向け突出するようにスプリング31aで付勢されたサブロックピン31を有し、ドア枠の連結部11bに上方が開口したサブロック孔32を有する。
【0012】
これにより、
図3,4に示すようにドア12を開ける際には、ドア12を少し持ち上げ、ロックピン21がロック孔22から抜け、サブロックピン31がサブロック孔32から抜けた状態でドアを開く。
逆にドア12を閉じる場合には、
図2,4に示すようにロック孔22及びサブロック孔32の前後方向に上方に向かって厚みが薄くなる方向の傾斜面22a,32aを設けたので、この傾斜面22a,32aに沿ってロックピン21,サブロックピン32が押し込まれるのでドアが閉じ、ロックピン21及びサブロックピン31がロック孔22,サブロック孔32に突出保持され、ロック状態が保持される。
ロック孔22が左右方向に長い長孔になっているので、
図5に示すようにドア枠11の左右方向の撓み、変形を吸収する。
また、ドア側のロックピン21がドア枠側のロック孔22に係合した状態でドア枠が左右方向外側に変形しようとしても、ロックピン21が長孔の内側端部に当接し、さらなる変形を防止する。
【0013】
図6は回動ピン41にドア12が下方に引張られるように付勢手段の例としてスプリング41aにて付勢した例を示す。
これにより、ドア12が不本意に持ち上がるのを防止する。
付勢力fの大きさはペットや幼児にはドアを持ち上げられないが、大人はドアを持ち上げることができる程度の力である。
【0014】
本発明に係るドア構造はサークルの出入口に設けるのが好適である。
なお、ペットや幼児の移動を規制するパネル体に設けることも可能である。
図7は6枚のパネル体1を用いて平面視で長方形のサークルを形成した例を示し、
図11に8枚のパネル体1にてサークルを形成した例を示し、サークルの形状に限定はない。
パネル体間の連結構造に制限はない。
図7〜10に示した例は
図9に拡大図を示すように一方のパネル体1のコーナー部の上部に形成した嵌合部1cに連結具3を嵌着し、他方のパネル体1の嵌合部1cに連結具2を嵌着し、2つの連結具同士を
図9(c)に示すように相互に嵌着することで連結し、連結ピン4にて固定した例である。
本実施例では
図10に示すように一方の連結具3に連結角度を規制する複数の溝3a,3b,3cを形成し、この溝に嵌入するリブ2aを他方の連結具2に設けた例になっている。
また、本実施例では連結ピン4の先端部に係合片4aを設けるとともに、パネル体1に係止部材5を嵌着等にて取り付け固定し、連結具2,3の挿入孔2b,3d及びこの係止部材5に設けた係止部1dまで連結ピン4の係合片4aを挿入し回転係止させる例になっている。
また、この係止部材5はパネル体1に一体的に形成してもよい。
【符号の説明】
【0015】
11 ドア枠
12 ドア
20 ロック部
21 ロックピン
22 ロック孔
30 サブロック部
31 サブロックピン
32 サブロック孔
40 ヒンジ部
41 回動ピン
42 軸受部