【文献】
薬事日報 [online],2007年,[retrieved on 2016-5-17], Retrieved from the Internet <http://www.yakuji.co.jp/entry2304.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において「髄膜腫」とは、脳を包む髄膜(軟膜、くも膜、硬膜)から発生した腫瘍の総称を示し、良性髄膜腫、異形性髄膜腫及び退形成髄膜腫を含む。腫瘍が巨大になった場合には、頭蓋内腔全体の圧力が上昇して頭痛、吐き気などが見られる。樹立化された髄膜腫細胞株が複数報告されており、IOMM−Lee[ニューロサージェリー(Neurosurgery)、第27(3)巻、第389−395頁(1990)]、HKBMM[ヒューマンセル(Hum.Cell)、第17(4)号、第211−217頁(2004)]が例示される。
【0014】
本明細書において「WT1」とは、前記の通りWilms腫瘍の原因遺伝子の1つとして単離された遺伝子がコードするタンパク質である。アミノ酸配列はNCBI RefSeq:NP_000369.3に、塩基配列はNCBI RefSeq:NM_000378.4に記載される。WT1のアミノ酸配列を配列番号14に示す。細胞におけるWT1の発現は、例えば特許文献1に記載される方法で定量することができる。
【0015】
本明細書において「T細胞」とは、Tリンパ球とも呼ばれ、免疫応答に関与するリンパ球のうち胸腺に由来する細胞を意味する。T細胞には、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、制御性T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、α鎖とβ鎖のTCRを発現するαβT細胞、γ鎖とδ鎖のTCRを発現するγδT細胞が含まれる。「T細胞を含有する細胞集団」としては、血液(末梢血、臍帯血など)、骨髄液の他、これらより採取、単離、精製、誘導された末梢血単核細胞(PBMC)、血球系細胞、造血幹細胞、臍帯血単核球などを含む細胞集団が例示される。また、T細胞を含有する血球系細胞由来の種々の細胞集団を本発明に使用できる。これらの細胞は抗CD3抗体やIL−2などのサイトカインにより生体内(イン・ビボ)や生体外(エクス・ビボ)で活性化されていても良い。これらの細胞は生体から採取されたもの、あるいは生体外での培養を経て得られたものをそのまま又は凍結保存したもののいずれも使用することができる。
【0016】
本明細書において「TCR」とは、細胞表面に提示された抗原−MHC分子(主要組織適合遺伝子複合体)を認識するT細胞の細胞表面に存在するレセプターである。TCRは、α鎖とβ鎖からなるヘテロダイマー、γ鎖とδ鎖からなるヘテロダイマーが知られているが、本発明においていずれも好適に使用できる。
【0017】
本明細書において「キメラ抗原レセプター(CAR)」とは、抗原に結合する細胞外ドメイン、前記細胞外ドメインとは異なるポリペプチドに由来する膜貫通ドメイン及び少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質をいう。「キメラ受容体」、「T−body」、「キメラ免疫受容体(CIR)」と呼ばれることがある。「抗原に結合する細胞外ドメイン」は、ある抗原に結合することができる任意のオリゴ又はポリペプチドを示し、「細胞内ドメイン」は細胞内で生物学的プロセスの活性化又は阻害をもたらすシグナルを伝達するドメインとして機能することが知られている任意のオリゴ又はポリペプチドを意味する。
【0018】
本発明の髄膜腫治療用医薬組成物はWT1発現細胞に対して細胞傷害性を発揮する物質、又はWT1発現細胞に対する細胞傷害性を誘導する活性を有する物質を有効成分として含有する。WT1発現細胞に対して細胞傷害性を発揮する物質は、例えば「WT1発現細胞特異的細胞傷害活性を有する細胞」及び「WT1発現細胞を特異的に認識する抗体」からなる群より選択される物質である。WT1発現細胞に対する細胞傷害性を誘導する活性を有する物質は、例えば、「WT1」、「WT1由来ペプチド」、「WT1由来ペプチドを提示する細胞」、「WT1発現細胞を特異的に認識するレセプター」及び「WT1発現細胞を特異的に認識するレセプターをコードする核酸」からなる群より選択される物質である。以下に各物質について詳細に記載する。
【0019】
(1)WT1を特異的に認識するレセプターをコードする核酸
本発明の一つの態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1発現細胞を特異的に認識するレセプターをコードする核酸を有効成分として含有する。当該レセプターとしては、例えば、TCRやCARが例示される。したがって、本発明のさらなる態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1発現細胞を特異的に認識するTCR又はCARをコードする核酸を有効成分として含有する。
本発明の一つの態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1発現細胞を特異的に認識するTCRをコードする核酸を有効成分として含有する。ここで、「WT1発現細胞を特異的に認識するTCR」はWT1由来のペプチドとMHCとの複合体に結合する能力を有するTCRを意味する。当該TCRをコードする核酸は、生体中に存在するT細胞を含有する細胞集団からWT1発現細胞を特異的に認識するT細胞を選別し、このT細胞から調製することができる。例えば、哺乳動物からT細胞を含有する細胞集団(例えばPBMC)を採取して、WT1又はWT1由来ペプチド存在下でこれらの細胞集団を刺激しながら培養する。この細胞集団から、WT1発現細胞に対する特異性と、CD8やCD4等の細胞表面抗原を指標として単離したCTLやヘルパーT細胞、ナイーブT細胞から公知の方法でWT1発現細胞を特異的に認識するTCRをコードする核酸を調製することができる。T細胞を含有する細胞集団の採取は、例えばWT1陽性の腫瘍のような疾患を有する生体から実施することが好ましい。例えば、HLA−A2402拘束性のCTLクローンTAK−1[ブラッド(Blood)、第95巻、第286−293頁(2000)]は、Vα20/J33/CαのTCRα鎖遺伝子及びVβ5.1/J2.1/Cβ2のTCRβ鎖遺伝子を有している。T細胞のWT1発現細胞特異性は、例えば、クロム放出アッセイ又は増殖アッセイを利用して、溶解性や増殖性を陰性コントロールと比較して測定することができる。また、サイトカインの産生を測定してT細胞のWT1発現細胞特異性を評価することができる。
【0020】
WT1発現細胞を特異的に認識するTCRを発現する細胞から抽出したDNAを鋳型として、TCRの定常領域の核酸配列を基にTCR遺伝子を増幅し、クローニングすることができる。また、常法により細胞からRNAを抽出してcDNAを合成し、これを鋳型としてTCRα鎖及びβ鎖の定常領域をそれぞれコードする核酸に相補的なアンチセンスプライマーを用いて5’−ラピッド アンプリフィケーション オブ cDNA エンド(RACE)を行うことにより調製することができる。5’−RACEは公知の方法により行えばよく、例えばSMART PCR cDNA Synthesis Kit(クロンテック社製)のような市販のキットを用いて行うことができる。前記手法により増幅されたDNAをプラスミドベクターに組み込み、大腸菌を形質転換する。形質転換体からプラスミドを調製し、挿入されたDNAの塩基配列を決定する。得られた塩基配列と既知のTCRα鎖又はβ鎖の遺伝子の配列を比較することにより、5’−RACEにより増幅された、TCR遺伝子とは無関係のDNAを除外することができる。
【0021】
WT1発現細胞を特異的に認識するTCRをコードする核酸をT細胞に導入する場合に、当該T細胞が本来発現する内在性のTCRα鎖及びTCRβ鎖の発現をsiRNAによって抑制することにより、WT1発現細胞を認識するTCRを高い比率で発現するT細胞を得る方法が知られている(国際公開第2008/153029号パンフレット)。前記の核酸を当該方法に適用する場合、その塩基配列を、内在性のTCRα鎖及びTCRβ鎖の発現を抑えるsiRNAが作用するRNAに対応する塩基配列とは異なる配列(コドン変換型配列)とすることにより、WT1発現細胞を特異的に認識するTCRを高い比率で発現するT細胞を得ることができる。前記の塩基配列は、天然から取得されたTCRをコードする核酸へのサイレント変異の導入や、人為的に設計した核酸を化学的に合成することで作製することができる。
【0022】
本発明の別の態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1発現細胞を特異的に認識するCARをコードする核酸を有効成分として含有する。当該核酸は、WT1に結合する細胞外ドメイン、前記細胞外ドメインとは異なるポリペプチドに由来する膜貫通ドメイン及び少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質をコードする核酸である。CARについては、 カレント オピニオン イン イムノロジー(Current Opinion in Immunology)、第21巻、第215−223頁(2009)に総説されている。
【0023】
WT1に結合する細胞外ドメインは、WT1に結合することができるオリゴ又はポリペプチドを含むドメインである。このドメインは、WT1と結合し、相互作用することによりCARに特異性を付与する。CARに使用可能な細胞外ドメインとしては、抗WT1抗体(H鎖及びL鎖)、TCRの可変領域(TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ)に由来するものが例示される。これらのタンパク質全体を使用するのが有効なこともあるが、例えば、抗体Fabフラグメント又は抗体可変領域[H鎖のV領域(VH)及びL鎖のV領域(VL)]を使用することができる。特に単鎖抗体(scFv)が好適に使用できる。
【0024】
CARの細胞内ドメインは、同一分子内に存在する細胞外ドメインがWT1と結合(相互作用)した際に、細胞内にシグナルを伝達することが可能な分子である。CARの細胞内ドメインは、CD3ζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来する一次細胞質シグナル伝達配列を含む細胞内ドメインが例示される。また、例えば、CD2、CD4、CD5、CD8α、CD8β、CD28、CD137、CD134、ICOS、GITR及びCD154に由来する二次細胞質シグナル伝達配列を含む細胞内ドメインが例示される。
【0025】
CARの膜貫通ドメインは、例えば、T細胞受容体のα、β鎖、CD3ζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154、GITRの膜貫通ドメインを使用することができる。また、人為的に設計した配列でもよい。
【0026】
WT1発現細胞を特異的に認識したTCR又はCARは、その細胞内ドメインを介して細胞内にシグナルを伝達して細胞を刺激する。刺激を受けた細胞はサイトカイン等を産生し、WT1発現細胞に対し細胞傷害性を発揮し、又は他の免疫細胞の細胞傷害性を誘導することができる。このTCR又はCARをコードする核酸は、生体より得られた核酸を増幅することにより得られた核酸及びこれらの核酸を連結した核酸を使用してもよいし、同じ配列を有する核酸を化学合成して使用してもよい。更に、前記の核酸と同じアミノ酸配列をコードする、前記核酸とは異なる塩基配列の核酸を作製して使用することもできる。前記核酸とは異なる塩基配列の核酸の設計の際には、細胞におけるコドンの使用頻度やその他の目的に基づいて使用するコドンを選択することが可能である。
【0027】
WT1発現細胞を特異的に認識するTCR又はCARをコードする核酸は、適当なプロモーターの制御下に発現されるように別の核酸と連結することができる。プロモーターとしては構成的に発現を促進するもの、薬剤等(例えば、テトラサイクリン又はドキソルビシン)により誘導されるもの等のいずれも用いることができる。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、Xistプロモーター、β−アクチンプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター等の哺乳類由来プロモーター、SV40初期プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーター、各種レトロウイルスのLTRプロモーター等のウイルス由来プロモーターを使用することができる。また、核酸の効率のよい転写を達成するために、プロモーター又は転写開始部位と協同する他の調節要素、例えば、エンハンサー配列又はターミネーター配列を含む核酸を連結してもよい。また、更に核酸の発現を確認するためのマーカーとなりうる遺伝子(例えば薬剤耐性遺伝子、レポーター酵素をコードする遺伝子、又は蛍光タンパク質をコードする遺伝子等)を組み込んでもよい。なお、TCRα鎖ポリペプチドをコードする核酸とTCRβ鎖ポリペプチドをコードする核酸はそれぞれ別のプロモーターにより転写、翻訳されてもよく、内部リボソームエントリー部位(IRES)又は自己消化性2Aペプチドを使用して一つのプロモーターで転写、翻訳されてもよい。
また、WT1を特異的に認識するTCR又はCARをコードする核酸は、ウイルスベクター粒子中に含有されていてもよい。ウイルスベクターとしては、例えば、レトロウイルスベクター(オンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シュードタイプベクターを包含する)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、シミアンウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はセンダイウイルスベクター、エプスタイン−バーウイルス(EBV)ベクター、単純疱疹ウイルス(HSV)ベクターなどのウイルスベクターが使用できる。上記ウイルスベクターとしては、感染した細胞中で自己複製できないように複製能を欠損させたものが好適である。常法により、WT1を特異的に認識するTCR又はCARをコードする核酸を適当なウイルスベクター中に挿入することによって、該核酸をウイルスベクター粒子中に含有させることができる。
【0028】
本発明は、WT1発現細胞を特異的に認識するTCR又はCARをコードする核酸を有効成分として、薬学的に許容できる賦形剤と共に含む髄膜腫治療用医薬組成物を提供する。適している賦形剤は、当業者にはよく知られており、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(例えば、0.01Mリン酸塩、0.138M NaCl、0.0027M KCl、pH7.4)、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩を含有する水溶液、生理食塩液、グリコール又はエタノールなどの溶液及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を含む。湿潤剤又は乳化剤などの補助剤、及びpH緩衝剤も使用することができる。薬学的に許容できる賦形剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、N.J.1991)に記載される。組成物は、非経口投与、例えば、注射又は注入に適した公知の形態とすることができる。更に、懸濁化剤、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤補助剤、保存中の有効期限を延ばすために保存剤を使用することができる。組成物は、使用前に適切な無菌の液体により再構成するための乾燥形態であってもよい。微粒子仲介投与用には、顕微鏡サイズの金粒子などの粒子上にDNAをコーティングすることができる。有効成分が核酸である場合の投与量としては、例えば、1回につき体重1kgあたり該核酸が0.001mg〜10mgの範囲で投与される。例えば、ヒト患者に投与する場合、体重60kgの患者に対し0.001〜50mgの範囲で投与される。有効成分がウイルスベクター粒子である場合の投与量は、体重60kgの対象に対して、1回につき、例えばウイルスの力価として約1×10
3pfu〜1×10
15pfuの範囲で投与される。
【0029】
(2)WT1特異的細胞傷害活性を有する細胞
本発明の別の態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物はWT1発現細胞特異的細胞傷害活性を有する細胞を有効成分として含有する。当該細胞は、例えば、WT1発現細胞を特異的に認識するTCR又はCARを発現する細胞である。このような細胞は前記(1)に記載するように生体からWT1を特異的に認識する細胞を採取すること、又は前記(1)に記載するWT1を特異的に認識するTCRもしくはCARをコードする核酸を細胞に導入すること、WT1由来ペプチドを提示する抗原提示細胞によりT細胞又はその前駆細胞を刺激すること、等の方法により調製することができる。これらの細胞は、TCR又はCARを介してWT1発現細胞と結合することにより細胞内にシグナルが伝達され活性化される。TCR又はCARを発現する細胞の活性化は、宿主細胞の種類や細胞内ドメインにより異なるが、例えば、サイトカインの放出、細胞増殖率の向上、細胞表面分子の変化等を指標として確認することができる。例えば、活性化された細胞からの細胞傷害性のサイトカイン(腫瘍壊死因子、リンホトキシンなど)の放出は、WT1を発現する髄膜腫細胞の破壊をもたらす。また、サイトカイン放出や細胞表面分子の変化により、他の免疫細胞、例えば、B細胞、樹状細胞、NK細胞、マクロファージ等を刺激する。従って、本発明の組成物は養子免疫療法において有用である。
【0030】
前記細胞を調製するためのTCR又はCARをコードする核酸の導入は、ヒト生体外(ex vivo)で実施される。核酸を導入する細胞は、哺乳動物、例えばヒト由来の細胞又はサル、マウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌ等の非ヒト哺乳動物由来の細胞が使用できる。また、細胞の種類としては、例えば、血液(末梢血、臍帯血など)、骨髄などの体液、組織又は器官より採取、単離、精製、誘導された細胞を使用することができる。PBMC、免疫細胞[樹状細胞、B細胞、造血幹細胞、マクロファージ、単球又はNK細胞、血球系細胞(好中球、好塩基球、単球)]、造血幹細胞、臍帯血単核球、線維芽細胞、前駆脂肪細胞、肝細胞、血球細胞、皮膚角化細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、脂肪幹細胞、各種がん細胞株又は神経幹細胞を使用することができる。本発明においては、特にT細胞、T細胞の前駆細胞(造血幹細胞、リンパ球前駆細胞等)又はこれらを含有する細胞集団の使用が好ましい。T細胞には、CD8陽性T細胞、又はCD4陽性T細胞、制御性T細胞、細胞傷害性T細胞、腫瘍浸潤リンパ球が含まれる。T細胞及びT細胞の前駆細胞を含有する細胞集団には、PBMCが含まれる。前記の細胞は生体より採取されたもの、それを拡大培養したもの又は細胞株として樹立されたもののどちらでもよい。核酸を導入した細胞又は当該細胞より分化させた細胞を生体に移植することが望まれる場合には、その生体自身又は同種の生体から採取された細胞に核酸を導入することが好ましい。
【0031】
WT1発現細胞を特異的に認識するTCR又はCARをコードする核酸をベクターに挿入して、このベクターを細胞に導入することができる。例えば、レトロウイルスベクター(オンコレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シュードタイプベクターを包含する)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、シミアンウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター又はセンダイウイルスベクター、エプスタイン−バーウイルス(EBV)ベクター、単純疱疹ウイルス(HSV)ベクターなどのウイルスベクターが使用できる。上記ウイルスベクターとしては、感染した細胞中で自己複製できないように複製能を欠損させたものが好適である。
WT1発現細胞を特異的に認識するTCRをコードする核酸をT細胞に導入する場合、前記(1)に記載するように、当該T細胞が本来発現する内在性のTCRα鎖及びTCRβ鎖の発現をsiRNAによって抑制することにより、WT1発現細胞を認識するTCRを高い比率で発現するT細胞を得ることができる。
【0032】
また、リポソーム及び国際公開第96/10038号パンフレット、国際公開第97/18185号パンフレット、国際公開第97/25329号パンフレット、国際公開第97/30170号パンフレット及び国際公開第97/31934号パンフレットに記載されている陽イオン脂質などの縮合剤との併用により、本発明に非ウイルスベクターも使用することができる。更に、リン酸カルシウム形質移入、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、パーティクルボンバードメントにより細胞に本発明の核酸を導入することができる。
【0033】
例えばレトロウイルスベクターを使用する場合、ベクターが有しているLTR配列及びパッケージングシグナル配列に基づいて適切なパッケージング細胞を選択し、これを使用してレトロウイルス粒子を調製して実施することができる。例えばPG13(ATCC CRL−10686)、PA317(ATCC CRL−9078)、GP+E−86やGP+envAm−12(米国特許第5278056号公報)、Psi−Crip[米国科学アカデミー紀要、第85巻、第6460−6464頁(1988)]のパッケージング細胞が例示される。また、トランスフェクション効率の高い293細胞や293T細胞を用いてレトロウイルス粒子を作製することもできる。多くの種類のレトロウイルスを基に製造されたレトロウイルスベクター及び当該ベクターのパッケージングに使用可能なパッケージング細胞は、各社より広く市販されている。
【0034】
WT1発現細胞に特異的な細胞傷害活性を有する細胞は、対象に投与する前に適切な培地及び/又は刺激分子を使用して培養及び/又は刺激を行ってもよい。刺激分子にはサイトカイン類、適当なタンパク質、その他の成分が含まれる。サイトカイン類としては、例えばIL−2、IL−7、IL−12、IL−15、IFN−γ等が例示され、好適には、IL−2を含有する培地が使用される。IL−2の培地中の濃度としては、特に限定はないが、例えば、好適には0.01〜1×10
5U/mL、より好適には1〜1×10
4U/mLである。また、適当なタンパク質としては、例えばCD3リガンド、CD28リガンド、抗IL−4抗体が例示される。また、この他、レクチン等のリンパ球刺激因子を添加することもできる。更に、培地中に血清や血漿を添加してもよい。これらの培地中への添加量は特に限定はないが、0容量%〜20容量%が例示され、また培養段階に応じて使用する血清や血漿の量を変更することができる。例えば、血清又は血漿濃度を段階的に減らして使用することもできる。なお、血清又は血漿の由来としては、自己(培養する細胞と由来が同じであることを意味する)もしくは非自己(培養する細胞と由来が異なることを意味する)のいずれでも良いが、好適には安全性の観点から自己由来のものが使用される。
【0035】
細胞の培養に使用される細胞培養用器材としては、特に限定はないが、例えば、シャーレ、フラスコ、バッグ、大型培養槽、バイオリアクター等を使用することができる。なお、バッグとしては、細胞培養用CO
2ガス透過性バッグを使用することができる。また、工業的に大量の細胞集団を製造する場合には、大型培養槽を使用することができる。また、培養は開放系、閉鎖系のいずれでも実施することができるが、好適には得られる細胞集団の安全性の観点から閉鎖系で培養を行うことが好ましい。
【0036】
本発明において、WT1発現細胞に特異的な細胞傷害活性を有する細胞を有効成分として含有する医薬組成物は、非経口的に対象に投与して用いる。非経口的な投与方法としては、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、及び皮下投与などの方法が包含される。抗腫瘍作用を高めるため、髄膜腫又は近傍の組織、例えば皮下に投与することもできる。また、投与量は、対象の状態、体重、年齢等応じて適宜選択されるが、通常、細胞数として、体重60kgの対象に対し、1回当り、10
7〜10
9細胞程度、好ましくは、5×10
7〜5×10
8細胞程度投与される。本発明の医薬組成物は、1回又は複数回にわたって投与することができる。本発明の医薬組成物は、非経口投与に適した公知の形態、例えば、注射又は注入剤とすることができる。本発明の医薬組成物は、適宜、薬理学的に許容できる賦形剤を含んでいてもよい。薬理学的に許容できる賦形剤としては、前記(1)に記載のものが挙げられる。本発明の医薬組成物は、また、細胞を安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含んでもよい。培地としては、特に限定するものではないが、RPMI、AIM−V、X−VIVO10などの培地が一般的に挙げられる。
【0037】
(3)WT1を特異的に認識するレセプター
本発明の別の態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1発現細胞を特異的に認識するレセプターを有効成分として含有する。当該レセプターは、例えばTCRやCARが例示される。当該TCR又はCARは、前記(1)の核酸や(2)の細胞を利用して製造することができる。したがって、本発明のさらなる態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1発現細胞を特異的に認識するTCR又はCARを有効成分として含有する。
【0038】
前記のレセプターを有効成分として含有する医薬組成物の投与経路は、経口投与でも非経口投与でもよいが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。抗腫瘍作用を高めるため、髄膜腫又は近傍の皮下に投与することもできる。投与量は、治療に有効な量であればよく、腫瘍の大きさや症状等に応じて適宜選択されるが、通常、対象に対し1日当りのポリペプチド有効量として体重60kgの対象に対し0.0001μg〜1000μg、好ましくは0.001μg〜1000μgであり、1回又は数回に分けて投与することができる。好ましくは、数回に分け、数日ないし数月おきに投与する。
前記のレセプターを有効成分として含有する医薬組成物は、適宜、薬理学的に許容できる賦形剤、湿潤剤又は乳化剤などの補助剤、pH緩衝剤、懸濁化剤、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤補助剤を含有していてもよい。薬理学的に許容できる賦形剤としては、前記(1)に記載のものが挙げられる。本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤、粉末剤、液剤などの経口投与形態、または注射剤、注入剤などの非経口投与形態であってもよい。また、使用前に適切な無菌の液体により再構成するための乾燥形態であってもよい。
【0039】
(4)WT1及びWT1由来ペプチド
本発明の別の態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1又はWT1由来ペプチドを有効成分として含有する。本発明には、遺伝的に改変されていない生物によって発現される天然のWT1又は遺伝子組換え技術により調製された組換えWT1が使用できる。更に、WT1の改変体を使用することができる。改変体は、そのタンパク質の免疫原性が保持されるように、1つ以上、好ましくは10以下のアミノ酸の置換、欠失、付加及び/又は挿入において天然のタンパク質と異なるポリペプチドである。例えば、WT1改変体は、免疫原性部分内の1〜3アミノ酸残基が置換され、その結果、抗原特異的抗血清及び/又はT細胞株との反応が、天然のタンパク質に比べて向上している。特に、MHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスI分子又はMHCクラスII分子との結合性が向上することが好ましい。WT1又はWT1由来ペプチドは抗原提示細胞に取り込まれ、その後、細胞内分解を受けて生じた個々のWT1由来ペプチドがMHC分子と結合して複合体を形成し、当該複合体が抗原提示細胞表面に高密度に提示される。この複合体に特異的なCTLが増殖し、WT1発現細胞に対する細胞傷害性が誘導される。
【0040】
WT1由来ペプチドは、WT1の免疫原性部分を含むペプチドで、少なくとも9アミノ酸のWT1由来の配列を含む任意の長さである。例えば、9〜400アミノ酸、好ましくは9〜200アミノ酸、より好ましくは9〜50アミノ酸、特に好ましくは9〜25アミノ酸である。WT1由来ペプチドはTCRによって認識され特異的に結合するペプチドで、MHCクラスI分子又はMHCクラスII分子に結合する。これらの分子とWT1由来ペプチドとの結合は、当該分野で公知の任意のアッセイを使用して検出可能で、例えば、ペプチドがMHCクラスIに結合する能力は、
125Iで標識されたβ2ミクログロブリン(β2m)のMHCクラスI/β2m/ペプチドヘテロ三量体複合体への取り込みを促進する能力をモニターすることや、ペプチド競合アッセイによって評価することができる。例えばWT1由来ペプチドとして、ヒトWT1(配列番号14)のアミノ酸番号6〜22、アミノ酸番号117〜139、アミノ酸番号244〜262、アミノ酸番号244〜252、アミノ酸番号235〜243、アミノ酸番号136〜144、アミノ酸番号225〜233、アミノ酸番号10〜18、アミノ酸番号126〜134、アミノ酸番号37〜45、アミノ酸番号37〜46のペプチドが使用できる。
【0041】
WT1又はWT1由来ペプチドは、そのN末端にシグナル配列や固体支持体への結合を増強するためのリンカー配列を結合させることができる。例えば、FLAG、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc−mycの断片、VSV−GPの断片、p18HIVの断片、T7−tag、HSV−tag、E−tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α−tubulinの断片、B−tag、Protein Cの断片、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、イムノグロブリン定常領域(Fc)、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等の公知のペプチドを結合させることができる。このようにして作製された融合タンパク質を適切なプロテアーゼで処理し、目的のペプチドを回収することにより、タンパク質又はペプチドを調製してもよい。
【0042】
WT1又はWT1由来ペプチドは、それらをコードする核酸から調製することができる。例えば、組換えWT1又はWT1由来ペプチドをコードする核酸を含む任意の発現ベクターを用いて形質転換した適切な宿主細胞により調製することができる。適切な宿主細胞としては、原核生物細胞、酵母細胞及び高等真核生物細胞を使用することができる。例えば、大腸菌、酵母細胞又は哺乳動物細胞(例えば、COSもしくはCHO)を使用することができる。天然に発現しているWT1や、宿主細胞により製造されたWT1又はWT1由来ペプチドは、フィルターを使用して濃縮され、適切な精製マトリクス(例えば、アフィニティーマトリクス又はイオン交換樹脂)を使用して精製してもよい。
【0043】
WT1又はWT1由来ペプチドは、そのアミノ酸配列に基づいて合成して得ることができる。ペプチドの合成は、通常のペプチドの化学的合成に用いられる方法に準じて行うことが可能である。通常用いられる合成方法は、例えば、ペプチド シンセサイズ(Peptide Synthesis)、Interscience出版、(1966)、ザ プロテインズ(The Proteins)、第2巻、Academic Press Inc.出版(1976)、ペプチド合成、丸善(株)出版(1975)、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)出版(1985)、国際公開第WO99/67288号パンフレット等に記載されている。
【0044】
WT1又はWT1由来ペプチドを有効成分とする髄膜腫治療用医薬組成物は、細胞性免疫が効果的に成立するように薬理学的に許容可能なキャリア又は賦形剤を含むことができる。更に、タンパク質やペプチドを輸送するためのデリバリーシステムを利用することができる。例えば、アジュバント又はリポソームなどの非特異的免疫応答エンハンサーを利用することができ、WT1又はWT1由来ペプチドに対するT細胞応答のレベルを増強することができる。アジュバントとしては、文献[クリニカル マイクロバイオロジカル レビュー(Clin.Microbiol.Rev.)、第7巻、第277−289頁(1994)]に記載のものなどが利用可能であり、具体的には、菌体由来成分、サイトカイン、植物由来成分、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リソレシチン、プルロニックポリオールのような界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、又は油乳濁液(エマルジョン製剤)などを挙げることができる。また、本発明の医薬組成物は、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、リピッドを結合させた製剤などにすることもできる。
【0045】
WT1又はWT1由来ペプチドを有効成分として含有する髄膜腫治療用医薬組成物の投与方法としては、経口投与、皮内投与、皮下投与、静脈注射などが利用でき、全身投与、髄膜腫又は近傍の組織、例えば皮下に局所投与しても良い。本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤、粉末剤、液剤などの経口投与形態、または注射剤、注入剤などの非経口投与形態であってもよい。また、使用前に適切な無菌の液体により再構成するための乾燥形態であってもよい。タンパク質又はペプチドの投与量は、対象の年齢、体重、投与方法等により適宜調整することができるが、通常体重60kgの対象に対し0.001mg〜1000mg、好ましくは0.01mg〜100mg、より好ましくは0.1mg〜10mgであり、1回又は数回に分けて投与することができる。好ましくは、数回に分け、数日ないし数月おきに投与する。当業者であれば、適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、本発明の組成物は、徐放性処方物(投与後に有効成分の緩やかな放出をもたらす、カプセル又はスポンジのような処方物)の一部として投与され得る。このような処方物は、周知の技術を使用して調製することができ、例えば、経口、直腸、皮下又は所望の標的部位の埋め込みによって投与され得る。
【0046】
(5)WT1由来ペプチドを提示する細胞
本発明の別の態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1由来ペプチドを提示する細胞(抗原提示細胞)を有効成分として含有する。当該抗原提示細胞は、前記(4)に記載するペプチドとMHC分子(HLA抗原)との複合体が提示された抗原提示細胞であれば良い。このような抗原提示細胞は、生体から抗原提示能を有する細胞を単離し、この細胞にWT1又はWT1由来ペプチドを体外でパルスするか、又はWT1又はWT1由来ペプチドを発現するベクターを細胞内に導入して細胞表面に提示させることにより作製することができる。ここで「抗原提示能を有する細胞」とは、WT1由来ペプチドを提示可能なMHC分子を細胞表面に発現している細胞(マクロファージ、B細胞等)であれば特に限定されないが、抗原提示能が高いとされている樹状細胞が特に好ましい。樹状細胞を用いる場合は、例えば、生体の末梢血からフィコール法によりリンパ球を分離し、次いで非付着細胞を除去し、付着細胞をGM−CSF及びIL−4存在下で培養して樹状細胞を誘導して、当該樹状細胞をペプチドと共に培養してパルスすることにより、抗原提示細胞を調製することができる。抗原提示細胞は、T細胞を含有する細胞集団から前記(2)に記載するWT1を特異的に認識するTCRを発現する細胞を誘導するのに有用である。
【0047】
本発明において、WT1由来ペプチドを提示する細胞を有効成分として含有する医薬組成物は、非経口的に対象に投与して用いる。本発明の医薬組成物は、非経口投与に適した公知の形態、例えば、注射又は注入剤とすることができる。本発明の医薬組成物は、適宜、薬理学的に許容できる賦形剤を含んでいてもよい。薬理学的に許容できる賦形剤としては、前記(1)に記載のものが挙げられる。本発明の医薬組成物は、抗原提示細胞を安定に維持するために、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、培地等を含むことが好ましい。培地としては、特に限定するものではないが、RPMI、AIM−V、X−VIVO10などの培地が一般的に挙げられる。非経口的な投与方法としては、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、及び皮下投与などの方法が包含される。抗腫瘍作用を高めるため、髄膜腫又は近傍の組織、例えば皮下に投与することもできる。更に、免疫賦活剤、免疫調整剤などと共に投与することができる。また、投与量は、対象の状態、体重、年齢等応じて適宜選択されるが、通常、細胞数として、体重60kgの対象に対し、1回当り10
7〜10
9細胞程度、好ましくは、5×10
7〜5×10
8細胞程度投与される。抗原提示細胞を生体に投与することにより、生体内で効率良くWT1特異的CTLが活性化され、髄膜腫細胞に対して細胞性免疫が誘導される。
【0048】
(6)WT1を特異的に認識する抗体
本発明の別の態様において、本発明の髄膜腫治療用医薬組成物は、WT1を特異的に認識する抗体又はその抗体の抗原認識部位を含むポリペプチドを有効成分として含有する。これらの抗体やポリペプチドはポリクローナル抗体由来であってもよく、モノクローナル抗体由来でもよい。これらの抗体やポリペプチドは髄膜腫細胞の表面上に存在するWT1と特異的に結合し、髄膜腫細胞に対する細胞性免疫を誘導する。
【0049】
WT1を特異的に認識する抗体は、当業者に公知の技術により調製することができる。例えば、前記(4)に記載するWT1やWT1由来ペプチドを抗原として、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ又はヤギ等の哺乳動物に注射して免疫を誘導する。特に比較的短いペプチドに対しては、キャリアタンパク質[例えば、ウシ血清アルブミン又はKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)]に結合させてもよい。免疫は動物の皮下、筋肉内あるいは腹腔内に1回に20〜200μgの抗原−アジュバント混合物を投与することにより行われる。免疫された哺乳動物から定期的に採血し、抗血清から、例えば適切な固形支持体と結合されたポリペプチドを使用するアフィニティークロマトグラフィーによってWT1に対して特異的なポリクローナル抗体が精製される。
【0050】
WT1を特異的に認識するモノクローナル抗体は、いわゆる細胞融合法によって作製されたハイブリドーマを使用して製造される。前記ハイブリドーマは、抗WT1抗体産生細胞の集団と骨髄腫細胞とを融合させてハイブリドーマを形成させ、該ハイブリドーマをクローン化し、WT1を認識する抗体を産生するクローンを選択することによって樹立される。クローン化されたハイブリドーマからのモノクローナル抗体の調製は公知の方法、例えば実験動物腹腔内でのハイブリドーマの増殖及び腹水からのモノクローナル抗体精製手法を利用することで達成できる。さらに、こうして得られた動物由来のモノクローナル抗体をヒト化する手法も公知である。
【0051】
抗体の抗原認識部位を含むポリペプチドとして、抗体にペプシン、パパイン等のタンパク質分解酵素を作用させ、抗体のFc部分を除去して得られる、F(ab’)
2、Fab’、Fab等のフラグメントを使用することができる。更に、得られたモノクローナル抗体を基に、遺伝子工学的に製造される組換え抗体や、定常領域を他の抗体の定常領域に置換したキメラ抗体、二重特異性抗体(二価抗体)、scFv、Fab
3、Diabody、Triabody、Tetrabody、Minibody、Bis−scFv、(scFv)
2−Fc、intact−IgGも使用することができる。これらのポリペプチドは、ネイチャー バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、第23巻、第9号、第1126−1136頁(2005)に詳述される。
更に、抗体の抗原認識部位は、前記(1)に記載するCARの細胞外ドメインとして使用することができる。
【0052】
WT1を特異的に認識する抗体又はその抗体の抗原認識部位を含むポリペプチドを含有する医薬組成物は、必要に応じて、ポリペプチドに対して不活性な適当な薬学的に許容される担体、媒体等と混和して製剤化することができる。担体又は媒体としては、例えば、滅菌水や生理食塩水、安定剤、賦形剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、緩衝剤(リン酸、クエン酸、他の有機酸等)、防腐剤、界面活性剤(PEG、Tween等)、キレート剤(EDTA等)、結合剤等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等の蛋白質、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン及びリシン等のアミノ酸、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物、マンニトールやソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよい。注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO−50)等と併用してもよい。
【0053】
また、必要に応じ本発明の抗体又はその抗原認識部位を含むポリペプチドをマイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入しても良く、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる。更に、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、本発明の医薬組成物に適用し得る。
【0054】
WT1を特異的に認識する抗体又はその抗体の抗原認識部位を含むポリペプチドを含有する医薬組成物の投与量は、剤型の種類、投与方法、対象の年齢や体重、患者の症状、疾患の種類や進行の程度等を考慮して、最終的には医師の判断により適宜決定されるものであるが、一般に、体重60kgの対象に対し1日当たり、0.1〜2000mgを1〜数回に分けて投与することができる。より好ましくは1〜1000mg/日、更により好ましくは50〜500mg/日、最も好ましくは100〜300mg/日である。これらの投与量は対象の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。投与期間も、対象の治癒経過等に応じて適宜決定することが好ましい。
【0055】
また、WT1を特異的に認識する抗体又はその抗体の抗原認識部位を含むポリペプチドをコードする核酸を遺伝子治療用ベクターに組み込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。これらの核酸の投与方法としては、nakedプラスミドによる直接投与の他、リポソーム等にパッケージングするか、前記(2)に記載するウイルスベクターを使用して細胞に導入する、又は、コロイド金粒子等のビーズ担体に被覆して投与することができる。なお、これらの核酸の投与方法、投与量、同時に投与可能な賦形剤等は、前記(1)のWT1を特異的に認識するレセプターをコードする核酸と同様である。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
また、本明細書に記載の操作のうち、基本的な操作については2001年、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー発行、T.マニアティス(T.Maniatis)ら編集、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル第3版(Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3rd ed.)に記載の方法によった。
【0057】
実施例1 髄膜腫におけるWT1の発現
インフォームドコンセントを得て髄膜腫患者から採取された髄膜腫細胞29サンプルと、悪性髄膜腫細胞株であるHKBMM細胞、Ktelmgl細胞、IOMM−Lee細胞を用意した。各細胞よりキット(アンビオン社製)を用いてRNAを抽出した。続いて、抽出したそれぞれのRNAから、Transcriptor First Strand cDNA Synthesisキット(ロシュ社製)を使用してcDNAを調製した。同様に、正常脳RNAサンプルとして、Human Total RNA Master PanelII(クロンテック社製)からもcDNAを調製した。調製したcDNAは−20℃のフリーザー内で保存した。
【0058】
LightCycler(登録商標)480 Probe Master(ロシュ社製)を使用してWT1遺伝子の発現を定量した。各cDNA並びに最終濃度0.5μMのプライマー(配列番号15及び16)、0.2μMのプローブ(配列番号17)含む反応溶液20μLを調製し、LightCycler(登録商標)480 systemによりPCRを行った。インターナルコントロールとしてUniversal ProbeLibrary Human GAPD Gene Assay(ロシュ社製)を使用し、比較Ct法(ΔΔCt法)により相対的なWT1発現量を比較した。正常脳でのWT1の発現量を1とした時の各サンプルでのWT1発現量の相対値を
図1に示す。
図1中、縦軸はWT1の正常脳の発現に対する相対値、横軸はサンプル番号及び髄膜腫細胞株名を示す。
図1の通り、患者より採取された髄膜腫細胞及び髄膜腫由来の細胞株では、正常脳での発現と比較して、WT1遺伝子の発現量が数倍から数十倍上昇していることが分かった。
【0059】
実施例2 WT1−TCRα及びβ遺伝子の作製
An Jら、インターナショナル ジャーナル オブ ヘマトロジー(Int.J Hematol.)、第93巻、第176−185頁(2011)の記載に従い、腫瘍抗原WT1の235−243のペプチドを認識するHLA−A2402拘束性のTCRのα鎖遺伝子(Vα20/J33/Cα)及びTCRβ鎖遺伝子(Vβ5.1/J2.1/Cβ2)を含む核酸断片をそれぞれ調製した。次に、こうして得られたTCRα鎖遺伝子の、配列番号3、6で示されるC領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列(それぞれ配列番号1、4)を、それぞれ配列番号2、5の塩基配列に変換した。こうして野生型TCR遺伝子と同じアミノ酸配列をコードするが、C領域をコードする部分の塩基配列が異なるコドン変換型のWT1−TCRのα鎖遺伝子を作製した。同様に、TCRβ鎖遺伝子の、配列番号9、12で示されるC領域のアミノ酸配列をコードする塩基配列(それぞれ配列番号7、10)を、それぞれ配列番号8、11の塩基配列に変換したコドン変換型のWT1−TCRのβ鎖遺伝子を作製した。以上の塩基配列変換の詳細を表1に示す。また、配列番号13に示す人工遺伝子を合成した。この人工遺伝子は、ステム−ループ構造を形成する4種類の一本鎖RNAを転写する。これらの一本鎖RNAは細胞内でそれぞれ配列番号1、4、7、10の塩基配列を標的とする、野生型TCRα鎖及び野生型TCRβ鎖遺伝子の発現を抑制するsiRNAを生成する。野生型とコドン変換型の塩基配列がコードするアミノ酸配列は共通であるが、コドン変換型TCRの塩基配列には変異が導入されているので、配列番号13記載のDNAより転写される二本鎖siRNAによりコドン変換型TCRの発現は抑制されない。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例3 WT1−TCR発現レトロウイルスベクターの作製
pMSCVneo(Clontech社製)を鋳型に、制限酵素XhoIの認識配列が付加されたプライマーと制限酵素EcoRIの認識配列が付加されたプライマーを用いてPCRを行い、MSCVの3’LTR部位を増幅してXhoIとEcoRIで切断した。切断したDNA断片をpMTベクター[ジーン セラピー(Gene Ther)、第11巻、第94−99頁(2004)に記載されているpMTベクター]のXhoI−EcoRIサイトにクローニングし、pMSを作製した。次にpDON−5ベクター(タカラバイオ社製)を制限酵素MluIとNotIで切断して、ヒトEF1αの非翻訳領域を切り出し、pMSベクターのMluI−NotIサイトにクローニングし、pMS3を得た。
【0062】
実施例2で調製したコドン変換型のWT1−TCRのα鎖遺伝子を含む核酸断片と、siRNAを生成する人工遺伝子を含む核酸断片をpMS3のApaI−NotIサイトにクローニングしてpMS3−WT1−A−siを得た。
また、Mouse Genomic DNA(タカラバイオ社製)を鋳型に、制限酵素MluI、NotI及びBglIIの認識配列が付加されたプライマーと制限酵素XhoI、NotI及びBamHIの認識配列が付加されたプライマーを用いてPCRを行った。得られたPGKプロモーター配列を含む増幅DNA断片をNotIとBamHIで切断した核酸断片を調製した。
最後に、実施例2で調製したコドン変換型のWT1−TCRのβ鎖遺伝子を含む核酸断片と、PGKプロモーター配列を含む核酸断片をpMS3−WT1−A−siのNotI−XhoIサイトにクローニングして、プラスミドベクターpMS3−WT1−siTCRを得た。pMS3−WT1−siTCRのLTR間の構造を
図2に示す。
【0063】
実施例4 WT1−TCR発現レトロウイルス溶液の作製及びヒトPBMCへの感染
実施例3で調製したpMS3−WT1−siTCRにより大腸菌JM109を形質転換し、形質転換体を得た。この形質転換体の保持するプラスミドDNAをQIAGEN Plasmid Midi Kit(キアゲン社製)を用いて精製し、トランスフェクション用DNAとして以下の操作に供した。
調製したpMS3−WT1−siTCRを293T細胞にトランスフェクトした。この操作にはRetorovirus Packaging Kit Eco(タカラバイオ社製)をその製品プロトコールに従って使用した。得られた形質導入細胞よりエコトロピックウイルスを含有する上清液を獲得し、0.45μmフィルター(Milex HV、ミリポア社製)にてろ過した。この上清を用いて、ポリブレンを使用する方法によりPG13細胞(ATCC CRL−10686)にエコトロピックウイルスを感染させた。得られた細胞を培養して培養液上清を回収し、この上清を0.45μmフィルターによりろ過して得られたWT1−TCR発現レトロウイルス溶液をMS3−WT1−siTCRとした。
インフォームドコンセントの得られたヒト末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)に、MS3−WT1−siTCRを、レトロネクチン(登録商標、タカラバイオ社製)を用いた標準的な方法で2回感染させてWT1−TCR導入細胞を作製し細胞を回収した。
【0064】
実施例5 細胞内サイトカイン測定
実施例4で調製したWT1−TCR導入細胞について、T細胞表現型及び細胞内IFN−γ合成を、同時フローサイトメトリー評価法により測定した。まず、実施例4で調製したWT1−TCR導入細胞をRPMI−1640培養液(SIGMA社製)中に1×10
6細胞/mLの濃度で懸濁した。この懸濁液を24穴細胞培養プレート(FALCON社製)に0.5mL/ウェルで播種し、ここに1×10
6細胞/mLの濃度で懸濁したHLA−A0207髄膜腫細胞株であるKtelmgl細胞又はHLA−A2402髄膜腫細胞株であるIOMM−Lee細胞をそれぞれ0.5mL/ウェルで添加した。対照として、WT1−TCR導入細胞に代えてウイルスを感染させていないPBMC(WT1−TCR非導入細胞)を使用し、同様の操作を行った。これらのプレートを37℃、5%CO
2インキュベータ内で培養した(培養0時間目)。培養1時間後、各ウェルにBD GolgiStop(BD PharMingen社製)を加えた後、更に培養を継続した。培養8時間後に細胞を回収し、FACS緩衝液(1%FCS及び0.1%NaN
3を含むリン酸緩衝食塩水)で2度洗浄した。洗浄後の細胞にイソチオシアン酸フルオレッセイン(FITC)結合抗CD8抗体(BD PharMingen社製)及びアロフィコシアニン(APC)結合抗IFN−γ抗体(BD PharMingen社製)を添加して氷上で30分間染色し、続いてCytofix/Cytoperm キット(BD PharMingen社製)を用いて細胞内サイトカイン染色を行った。これらをフローサイトメーター(BD FACScantoII、BD Biosciences社製)で分析した。その結果を
図3に示す。
図3中、(a)はKtelmgl細胞とWT1−TCR非導入細胞(NGMC)、(b)はKtelmgl細胞とWT1−TCR導入細胞(GMC)、(c)はIOMM−Lee細胞とWT1−TCR非導入細胞、(d)はIOMM−Lee細胞とWT1−TCR導入細胞をそれぞれ共培養した結果であり、縦軸はIFN−γ量、横軸はCD8量を示す。
図3−(d)に示す通り、IOMM−Lee細胞とWT1−TCR導入細胞との共培養により、CD8陽性であるT細胞においてIFN−γの細胞内発現が認められた。一方、
図3−(a)〜(c)の組合せの共培養では、IFN−γの細胞内発現が認められなかった。このことから、WT1−TCR導入細胞がHLA−A2402陽性の髄膜腫細胞に特異的にIFN−γを生成することが示された。
【0065】
実施例6 WT1−TCR導入細胞の髄膜腫細胞に対する細胞傷害活性
髄膜腫細胞株Ktelmgl細胞又はIOMM−Lee細胞をウシ胎仔血清(FCS)不含RPMI1640培地で3回洗浄し、1×10
6細胞を1mLの10%FCS含有RPMI1640培地にそれぞれ懸濁した。これらの細胞懸濁液に、10μLのDMSOに懸濁した2.5mM Calcein−AM(同仁化学研究所社製)溶液を添加し、37℃で1時間標識した。得られた髄膜腫細胞株を標的細胞として、細胞傷害活性の測定に使用した。
【0066】
実施例4で調製したWT1−TCR導入細胞又はWT1−TCR非導入細胞(エフェクター細胞)と、前記の標識した標的細胞とその20倍量の非標識細胞からなるKtelmgl細胞又はIOMM−Lee細胞の標的細胞を、50:1、25:1、12:1、6:1、3:1、1:1となるように10%FCS含有RPMI1640培地にそれぞれ懸濁し、その100μLを96穴V底プレートのウェルに入れた。37℃で5時間反応させた後、遠心分離により上清を回収し、蛍光プレートリーダーにて上清の蛍光強度を測定(ex:485、em:538nm)した。蛍光強度の測定値から、次の式により特異的細胞傷害活性を計算した:
【0067】
細胞傷害活性(%)=[サンプル(蛍光強度)−自然放出(蛍光強度)]/[完全放出(蛍光強度)−自然放出(蛍光強度)]×100
【0068】
上記の式において、自然放出とはエフェクター細胞を加えないウェルにおける蛍光強度であり、標的細胞からの自然遊離量を示す。また、完全放出とは、Triton X−100を標的細胞に加えて破壊した時の蛍光強度を示す。
【0069】
この結果を
図4に示す。横軸はエフェクター細胞数/標的細胞数比(E/T ratio)を、縦軸は細胞傷害活性(%)を示す。WT1−TCR導入細胞はHLA−A2402陽性髄膜腫細胞株であるIOMM−Lee細胞に対して細胞傷害活性を示し、HLA−A0207髄膜腫細胞株であるKtelmgl細胞に対して細胞傷害活性を示さなかった。また、非導入細胞はIOMM−Lee細胞及びKtelmgl細胞に対して細胞傷害活性を示さなかった。以上の結果から、WT1を特異的に認識するTCRは、そのHLA拘束性に従った髄膜腫細胞に対する特異的細胞傷害活性を、PBMCに付与することが明らかになった。
【0070】
実施例7 WT1−TCR導入細胞の髄膜腫モデルマウスに対する治療効果
緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するIOMM−Lee細胞を調製するために、pRetroQ−AcGFP−C1 Vector(クロンテック社製)を使用してGFP遺伝子をIOMM−Lee細胞に導入し、IOMM−Lee−GFP細胞を調製した。
NOD.Cg−Prkdcscid Il2rgtmlSug/Jic(NOG)マウス(公益財団法人 実験動物中央研究所製)の頭蓋底にIOMM−Lee−GFP細胞を移植して悪性頭蓋底髄膜腫マウスモデルを作成し、腫瘍径が2〜5mmに達した後(移植後約5日)に、実施例4で調製したWT1−TCR導入細胞及び非導入細胞を使用して治療を開始した。各細胞5×10
7細胞/匹をマウス10匹の尾静脈に投与した。
【0071】
IOMM−Lee−GFP細胞移植後12日目に、マウス頭部を10%中性緩衝ホルマリン(和光純薬社製)で48時間固定した。腫瘍サイズを蛍光領域から算出した。算出した腫瘍サイズを
図5に示す。
図5に示す通り、WT1−TCR導入細胞の投与は悪性頭蓋底髄膜腫マウスモデルの腫瘍の増殖を抑制することが示された。
また、ホルマリンで固定したマウス頭部をDecalcifying Solution B(和光純薬社製)で96時間脱灰し、パラフィンに包埋して5μmの連続薄切標本を作製した。この薄切標本に対し、抗ヒトCD8抗体(MBL社製)、Vector M.O.M.Immunodetection Kit(Vector Laboratories社製)を使用して免疫組織化学染色を行った。正常組織(口腔粘膜及び粘膜下軟組織)に浸潤したCD8陽性細胞及び腫瘍に浸潤したCD8陽性細胞を顕微鏡を用いて計測した。その結果を
図6に示す。
図6に示す通り、WT1−TCR導入細胞投与群及び非導入細胞投与群で正常組織に浸潤したCD8陽性細胞に違いは見られなかった。対照的に、腫瘍細胞に浸潤したCD8陽性細胞は、WT1−TCR導入細胞投与群の方が非導入細胞投与群より多かった。
さらに、各マウスの生存率をIOMM−Lee−GFP細胞移植後28日目まで追跡した。その結果を
図7に示す。横軸は移植後の日数を、縦軸は生存率を示す。
図7に示す通り、WT1−TCR導入細胞の投与は悪性頭蓋底髄膜腫マウスモデルにおいて生存期間を延長することが示された。
【配列表フリーテキスト】
【0073】
SEQ ID NO:1: A part of wild type TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:2: A part of codon modified TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:3: A part of TCR alpha chain amino acid sequence
SEQ ID NO:4: A part of wild type TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:5: A part of codon modified TCR alpha chain coding sequence
SEQ ID NO:6: A part of TCR alpha chain amino acid sequence
SEQ ID NO:7: A part of wild type TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:8: A part of codon modified TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:9: A part of TCR beta chain amino acid sequence
SEQ ID NO:10: A part of wild type TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:11: A part of codon modified TCR beta chain coding sequence
SEQ ID NO:12: A part of TCR beta chain amino acid sequence
SEQ ID NO:13: siRNA generating sequence for wild type TCR genes
SEQ ID NO:15: WT1 forward primer
SEQ ID NO:16: WT1 reverse primer
SEQ ID NO:17: WT1 probe