特許第6117517号(P6117517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117517フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117517
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20060101AFI20170410BHJP
   G03B 9/40 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G03B9/36 A
   G03B9/40
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-241981(P2012-241981)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-92620(P2014-92620A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100135622
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 挙人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕士
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 満
(72)【発明者】
【氏名】村田 実功
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 慎
【審査官】 辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−218979(JP,A)
【文献】 特開平09−281548(JP,A)
【文献】 特開2004−012526(JP,A)
【文献】 特開平09−244099(JP,A)
【文献】 特開平05−134291(JP,A)
【文献】 特開2002−014388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
G03B 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ開口を有して前記開口を通過する光軸方向に並んだ第1、第2、第3基板と、
前記第1、第2基板間に配置され前記開口を開閉可能な第1幕と、
前記第2、第3基板間に配置され前記開口を開閉可能な第2幕と、
前記第2、第3基板間に配置され前記第2幕に連結され、合成樹脂製であり、それぞれ異なる支点で回転可能に支持された第1及び第2アームと、
前記第1アームに連結して前記第1アームを駆動する駆動部材と、
前記光軸方向から見て前記第1アームの作動領域内、又は前記第2幕が前記開口を開いた開状態で前記第1アームに近く前記第2アームから離れた位置、に設けられ、前記第1基板側に設けられ前記第2基板を支持する支持部材と、を備え、
前記第1基板の内周縁には、前記光軸方向から見て前記第1アームの作動領域内、又は前記開状態で前記第1アームに近く前記第2アームから離れた位置に、前記3基板側から前記支持部材との間で前記第2基板を受ける受け部が設けられている、フォーカルプレーンシャッタ。
【請求項2】
それぞれ開口を有して前記開口を通過する光軸方向に並んだ第1、第2、第3基板と、
前記第1、第2基板間に配置され前記開口を開閉可能な第1幕と、
前記第2、第3基板間に配置され前記開口を開閉可能な第2幕と、
前記第2、第3基板間に配置され前記第2幕に連結され、合成樹脂製であり、それぞれ異なる支点で回転可能に支持された第1及び第2アームと、
前記第1アームに連結して前記第1アームを駆動する駆動部材と、
前記光軸方向から見て前記第1アームの作動領域内、又は前記第2幕が前記開口を開いた開状態で前記第1アームに近く前記第2アームから離れた位置、に設けられ、前記第1基板側に設けられ前記第2基板を支持する支持部材と、を備え、
前記第1基板は、前記光軸方向から見て前記第1及び第2アームの作動領域内に設けられ前記第2基板を支持する支持突起を備えている、フォーカルプレーンシャッタ。
【請求項3】
前記支持部材の少なくとも一部は、前記開状態で前記光軸方向から見て、前記第1アームに重なっている、請求項1又は2のフォーカルプレーンシャッタ。
【請求項4】
前記支持部材は、弾性を有している、請求項1乃至3の何れかのフォーカルプレーンシャッタ。
【請求項5】
前記支持突起は、前記光軸方向から見て前記第1アームの作動領域内に設けられている、請求項2のフォーカルプレーンシャッタ。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのフォーカルプレーンシャッタを備えた光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカルプレーンシャッタ及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのアームにより幕を駆動するフォーカルプレーンシャッタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−179167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャッタスピードの向上を図るために2つのアームを合成樹脂製にして軽量化することが考えられる。この場合、アームの剛性が低下するため、幕が開口を閉じた状態から開いた状態に移動して停止した際に、アームが光軸方向にばたつくおそれがある。これによりアームが破損するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、アームのばたつきが抑制されたフォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、それぞれ開口を有して前記開口を通過する光軸方向に並んだ第1、第2、第3基板と、前記第1、第2基板間に配置され前記開口を開閉可能な第1幕と、前記第2、第3基板間に配置され前記開口を開閉可能な第2幕と、前記第2、第3基板間に配置され前記第2幕に連結され、合成樹脂製であり、それぞれ異なる支点で回転可能に支持された第1及び第2アームと、前記第1アームに連結して前記第1アームを駆動する駆動部材と、前記光軸方向から見て前記第1アームの作動領域内、又は前記第2幕が前記開口を開いた開状態で前記第1アームに近く前記第2アームから離れた位置、に設けられ、前記第1基板側に設けられ前記第2基板を支持する支持部材と、を備えたフォーカルプレーンシャッタによって達成できる。上記位置に支持部材を設けることにより、第2基板を介して第1アームの光軸方向のばたつきを抑制できる。
【0007】
上記目的は、上記のフォーカルプレーンシャッタを備えた光学機器によっても達成できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アームのばたつきが抑制されたフォーカルプレーンシャッタ及びそれを備えた光学機器を提供できる。
を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施例のフォーカルプレーンシャッタの内部構成を示した正面図である。
図2図2は、フォーカルプレーンシャッタの外観斜視図である。
図3図3は、支持部材周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施例のフォーカルプレーンシャッタ1の内部構成を示した正面図である。図2は、フォーカルプレーンシャッタ1の外観斜視図である。フォーカルプレーンシャッタ1は、ディジタルカメラやスチールカメラ等の光学機器に採用される。フォーカルプレーンシャッタ1は、基板10、先幕20A、後幕20B、アーム31a、32a、31b、32b、駆動部材40a、40b、出力部材50a、50b、ロータ72a、72b等を有している。尚、図1においては、ロータ72a、72bや出力部材50a、50bは省略してある。基板10は、開口11を有している。先幕20A、後幕20Bは、開口11を開閉する。ロータ72aは、先幕20Aを駆動するためのアクチュエータに含まれ、ロータ72bは、後幕20Bを駆動するためのアクチュエータに含まれる。アクチュエータは、それぞれコイルが巻回されたステータを含むが、図1、2においては省略してある。
【0011】
先幕20Aは、複数の羽根21a〜23aから構成され、後幕20Bも同様に複数の羽根から構成される。先幕20A、後幕20Bは、それぞれ、複数の羽根が重なった重畳状態、複数の羽根が展開した展開状態に移行可能である。これら複数の羽根は、重畳状態では開口11から退避して開口11を全開状態にし、展開状態では開口11を閉鎖して開口11を全閉状態にする。図1、2では、先幕20Aが展開して開口11を閉鎖し、後幕20Bは開口11から退避した状態を示している。
【0012】
先幕20Aはアーム31a、32aに連結されている。後幕20Bは、アーム31b、32bに連結されている。図1に示すように、アーム31a、32a、31b、32bは、それぞれ基板10に設けられた軸14a、15a、14b、15bに回転可能に支持されている。
【0013】
駆動部材40a、40bは、それぞれアーム31a、31bを駆動する。駆動部材40a、40bには、それぞれアーム31a、31bに連結された駆動ピン43a、43bが設けられている。基板10には、駆動ピン43a、43bの移動をそれぞれ逃がすための逃げ孔13a、13bが設けられている。駆動部材40a、40bについては、詳しくは後述する。ロータ72a、72bには、それぞれ出力部材50a、50bが固定されている。ロータ72a、72bがそれぞれ回転することにより、出力部材50a、50bが回転し、駆動部材40a、40bが回転し、先幕20A、後幕20Bが駆動する。出力部材50a、50b、駆動部材40a、40bの各回転軸心の位置は異なっている。
【0014】
出力部材50a、50b、駆動部材40a、40bには、それぞれにギア部55a、55b、45a、45bが形成されている。ギア部55a、45a同士が噛合い、ギア部55b、45b同士が噛合うことにより、出力部材50a、50bの回転に伴ってそれぞれ駆動部材40a、40bが回転する。アーム31a、31bには、それぞれ部分的に補強部材31A、31Bが貼り付けられている。アーム31a、31b、補強部材31A、31Bは合成樹脂製でありそれぞれ薄板状である。
【0015】
図2に示すように、基板10には、逃げ孔13aの一端の近傍に位置決め部19aが形成されている。同様に、逃げ孔13bの一端の近傍に位置決め部19bが形成さている。逃げ孔13a、13bの他端には、それぞれ、駆動部材40a、40bを緩衝するゴムGa、Gbが設けられている。尚、基板10には、上述した不図示のアクチュエータを保持するホルダが組み付けられる。
【0016】
図1に示すように、基板10には、支持部材GSが固定されている。支持部材GSは、基板10とは別体である。また、基板10には複数の支持突起1s〜4sが設けられている。支持部材GS、支持突起1s〜4sについては後述する。また、図1においては、アーム31b、32bのそれぞれの作動領域R1、R2を点線で示している。
【0017】
図3は、支持部材GS周辺の断面図である。尚、図3は、図1における、支持部材GS、駆動ピン43b、軸14bを通過した線分による断面図である。図3に示すように、フォーカルプレーンシャッタ1は、基板10の他に、基板10A、10Bが設けられている。基板10〜10Bは、光軸方向に順に並んでいる。即ち、基板10、10Bの間に基板10Aが設けられている。基板10に設けられた開口11と同様に、基板10A、10Bもそれぞれ開口が設けられている。基板10、10Aの間に、先幕20Aやアーム31a、32aが配置され、基板10A、10Bの間に後幕20B、アーム31b、32bが配置されている。基板10Aは、先幕20Aと後幕20Bの干渉や、アーム31a、31b同士の干渉などを防いでいる。基板10は第1基板の一例であり、基板10Aは第2基板の一例であり、基板10Bは、第3基板の一例である。先幕20Aは、第1幕の一例であり、後幕20Bは第2幕の一例である。
【0018】
基板10上に組み付けられるホルダ80には、不図示のアクチュエータが保持される。アクチュエータは、ロータ72a、ステータ、コイルを含む。ホルダ80が基板10上に組みつけられる。ホルダ80の軸84bに駆動部材40bの支持孔42bが回転可能に嵌合している。これにより、駆動部材40bは回転可能に支持される。駆動ピン43bは、所定方向に延びており、基板10A、10B間に配置されたアーム31bに連結されている。上述したようにアーム31bは後幕20Bに連結されている。アーム31bは、第1アームの一例である。駆動ピン43bには連結されておらず後幕20Bに連結されているアーム32bは、第2アームの一例である。尚、基板10Aにも駆動ピン43bを逃すための逃げ孔が設けられており、基板10Bにも逃げ孔13bBが設けられている。
【0019】
支持部材GSは、基板10の、基板10Aと対向する面に固定され、基板10側から基板10Aを支持している。支持部材GSは、ゴム製である。詳細には、支持部材GSは、気泡が形成された発砲ゴムであるが、支持部材GSはこれに限定されない。例えば支持部材GSは、弾性を有していない合成樹脂製のものであってもよく、また弾性を有したゴム、板バネ、コイルスプリング等であってもよい。支持部材GSは、基板10に一体に形成されているものであってもよい。基板10の内周縁には、その内周縁から内側に受け部18が突出している。受け部18は基板10B側から基板10Aを支持している。換言すれば、受け部18は、第3基板である、基板10B側から支持部材GSとの間で第2基板である、基板10Aを受けている。ここで、支持部材GSは、受け部18の近傍に固定されており、支持部材GSと受け部18との間で基板10Aの端部を挟んでいる。また、上述した基板10に形成された支持突起1s〜4sも、基板10側から基板10Aを支持する。
【0020】
次に、支持部材GSの位置について説明する。図1に示すように、支持部材GSは、後幕20Bが開口11を開いた開状態において、アーム31bに近くアーム32bから遠い位置に形成されている。即ち、アーム31b近傍に形成されている。
【0021】
例えば、後幕20Bが開口11を閉じた状態から、ロータ72bにより出力部材50b、駆動部材40bが回転する。これにより、駆動部材40bの駆動ピン43bが逃げ孔13b内を移動して位置決め部19bに当接する。この際に、駆動部材40bには衝撃が加わり、これによってアーム31bが光軸方向にばたつくおそれがある。アーム31bが光軸方向にばたつくと、アーム31bに負荷がかかり破損するおそれがある。特に、アーム31bには駆動ピン43bが係合しているため、アーム31bはアーム32bよりも面積が大きく形成されている。また、アーム31bには補強部材31Bも貼り付けされている。従って、アーム31bはアーム32bよりも重く形成されている。これにより、アーム31bがばたつきやすくなっている。また、開口11を開いた開状態では後幕20Bの各羽根は重畳状態となる。これにより、より後幕20Bが光軸方向にばたつきやすくなり、アーム31bもばたつきやすくなる。
【0022】
本実施例では、後幕20Bが開状態でのアーム31bの近傍に支持部材GSを設けられている。支持部材GSが基板10Aを押えることにより、基板10Aによってアーム31bのばたつきが抑制される。これによりアーム31bの破損を防止できる。また、支持部材GSは弾性を有しているため、アーム31bからの衝撃を吸収できる。また、図1に示すように支持部材GSは光軸方向から見てアーム31bに重なっている。このため、より効果的にアーム31bのばたつきを抑制でき衝撃を吸収できる。
【0023】
また、受け部18は、支持部材GSと同様に、後幕20Bが開口11を開いた開状態において、アーム31bに近くアーム32bから遠い位置に形成されている。即ち、アーム31b近傍に形成されている。光軸方向から見て後幕20Bが開状態でのアーム31bの近傍に設けられているため、受け部18と支持部材GSとの間で基板10Aを安定して保持することができる。これにより、アーム31bのばたつきを抑制できる。
【0024】
また、アーム31bのばたつきが抑制されることにより、アーム32bのばたつきも抑制できる。これにより、アーム32bについても破損が防止される。
【0025】
尚、支持部材GSは、光軸方向から見た場合にアーム31bの作動領域R1内に設けてもよい。また、開状態でアーム31bよりもアーム32bに近い位置に支持部材GSが設けられていてもよい。
【0026】
図1に示すように、基板10に一体に形成され基板10Aを支持する支持突起3s、4sは、光軸方向から見てアーム31bの作動領域R1内に設けられている。これにより、支持部材GSと共に、アーム31bの光軸方向のばたつきを効果的に押えることができる。尚、支持突起は、作動領域R1内のみならず作動領域R2内に設けてもよい。これにより、アーム32bの光軸方向のばたつきをも抑制できる。
【0027】
尚、支持突起1s、2sは、開状態での後幕20と光軸方向で重なる位置に形成されている。これにより、基板10Aを介して後幕20の光軸方向でのばたつきを抑制している。
【0028】
このように、アーム31bのばたつきを抑制することにより、後幕20Bのばたつきも抑制できる。これにより、フォーカルプレーンシャッタ1の作動音を小さくすることができる。
【0029】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0030】
本実施例ではアクチュエータを用いて先幕20A、後幕20Bを駆動するがこのような構成に限定されない。例えば、電磁石とバネの作用により、駆動部材を介して幕を駆動するものであってもよい。また、本実施例では後幕20Bを駆動するアーム31bのばたつきを抑制するためにアーム31b側の基板10に支持部材GSを設けた。しかしながら、先幕20Aを駆動するアーム31aのばたつきを抑制するためにアーム31a側の基板10Bにこのような支持部材を設けてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 フォーカルプレーンシャッタ
10、10A、10B 基板(第1〜第3基板)
11 開口
18 受け部
20A 先幕(第1幕)
20B 後幕(第2幕)
31b アーム(第1アーム)
32b アーム(第2アーム)
40b 駆動部材
43b 駆動ピン
R1、R2 作動領域
GS 支持部材
1s〜4s 支持突起

図1
図2
図3