(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117519
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】回転体の配線装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/00 20060101AFI20170410BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20170410BHJP
G01M 1/16 20060101ALI20170410BHJP
G01M 99/00 20110101ALN20170410BHJP
【FI】
G01L1/00 D
G01L5/00 Z
G01M1/16
!G01M99/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-245329(P2012-245329)
(22)【出願日】2012年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-95554(P2014-95554A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】新井 眞
(72)【発明者】
【氏名】大山 宏治
【審査官】
岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
実開平6−11094(JP,U)
【文献】
特開平8−210929(JP,A)
【文献】
特開平8−313370(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0145242(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00− 1/26
G01L 5/00− 5/28
G01M 1/00− 1/38
G01M13/00−13/04
G01M99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被組立部材と該被組立部材が固定される回転軸とからなる回転体の表面に、前記被組立部材と前記回転軸とにわたって配され、複数の単線を撚ってなる配線と、
前記被組立部材の表面の前記配線を前記被組立部材の表面上に接着する第一接着部と、
前記第一接着部と間隔をあけて配置されて、前記回転軸の表面の前記配線を前記回転軸の表面上に接着する第二接着部と、
前記回転体の表面に一端が固定され、他端が前記回転体の表面から離間する第一脚部及び第二脚部と、前記第一脚部と前記第二脚部とを接続する接続部とを有するガイドブリッジと、を備え、
前記配線は、前記ガイドブリッジに螺旋状に巻き付けられていることを特徴とする回転体の配線装置。
【請求項2】
前記ガイドブリッジは、金属管を曲げ加工することによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回転体の配線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の配線装置に係り、特に蒸気タービン等の回転機械において、回転体を構成するタービン翼の振動応力等の計測に用いられる回転体の配線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンやガスタービン等のタービン翼(動翼)といった高速回転体の振動応力などの計測方法として、FMテレメータやスリップリングによる振動応力計測が実施されている。この計測法では、測定対象である回転体に直接歪ゲージを貼り付け、歪ゲージのリード線をテレメータ送信機もしくは、スリップリング端子に配線接続した後、受信器や歪増幅器により、計測している。そして、受信機や歪増幅器の出力信号数点をレコーダにて同時計測して振動データを取得、分析している(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、
図5を参照して、一例として蒸気タービンの回転体2を構成するタービン翼5の応力を測定する方法に用いられる配線装置100ついて説明する。蒸気タービンにおいては、複数のディスク4を軸方向で結合して回転軸を形成し、各々のディスク4に対して被組立部材であるタービン翼5を固定して、中心軸回りに回転する回転体2を構成している。
【0004】
歪ゲージ10のリード線12はタービン翼5から、タービン翼5とディスク4の間のディスク嵌合部9を介してディスク4側まで配線されており、高温用の接着剤13を用いてワイヤリングされている。リード線12は単線であり、接着剤13は、タービン翼5からディスク4まで一体に施工されている。
【0005】
上述した構成において、歪ゲージ・テレメータ送信機・送信アンテナ・バッテリーなど回転体に取り付ける各部品の構造や取り付け施工法に一つでも不備が生じた場合、計測が出来なくなることはもちろん部品が破損、飛散した場合、タービン製品へ危害を与えることになる。従って、現状の計測法では、タービン翼など直接、機械製品にこれらの計測用部品を取り付ける必要があるため、設計や施工に関しては部品の構造・材料・施工法などについて細心の注意を払う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−210929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の回転体の配線装置においては、ディスク嵌合部9や、その他のガタ部において、ガタ防止用のシムを挿入した場合においても、タービン翼5とディスク4との間で微小変位が生じており、ワイヤリングの損傷による配線不良が生じている。
【0008】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、被組立部材であるタービン翼と、回転軸との間で微小変位が生じた場合においても、ワイヤリングの損傷による配線不良を防止することができる回転体の配線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の回転体の配線装置は、被組立部材と該被組立部材が固定される回転軸とからなる回転体の表面に、前記被組立部材と前記回転軸とにわたって配され、複数の単線を撚ってなる配線と、前記被組立部材の表面の前記配線を前記被組立部材の表面上に接着する第一接着部と、前記第一接着部と間隔をあけて配置されて、前記回転軸の表面の前記配線を前記回転軸の表面上に接着する第二接着部と、
前記回転体の表面に一端が固定され、他端が前記回転体の表面から離間する第一脚部及び第二脚部と、前記第一脚部と前記第二脚部とを接続する接続部とを有するガイドブリッジと、を備え、前記配線は、前記ガイドブリッジに螺旋状に巻き付けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、接着剤が、被組立部材から回転軸まで一体に施工されておらず、第一接着部と第二接着部とが間隔をあけて配置されていることにより、被組立部材と回転軸との間に滑りやガタに起因する微小変位が生じた場合においても、接着剤が割れることを防止することができる。
また、配線が複数の単線を撚ってなる撚り線であることによって、より微小変位に対応可能な構造となっている。
【0012】
上記構成によれば、回転体の表面の凹凸部が形成されている部位にガイドブリッジを設置し、ガイドブリッジに配線を固定する構成としたことによって、凹凸部の表面処理が十分にできなかったり、配線の仮止め施工が困難な場合であっても、配線を確実に固定することができる。
【0013】
上記回転体の配線装置において、前記ガイドブリッジは、金属管を曲げ加工することによって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着剤が、被組立部材から回転軸まで一体に施工されておらず、第一接着部と第二接着部とが間隔をあけて配置されていることにより、被組立部材と回転軸との間に滑りやガタに起因する微小変位が生じた場合においても、接着剤が割れることを防止することができる。
また、配線が複数の単線を撚ってなる撚り線であることによって、より微小変位に対応可能な構造となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態の回転体の配線装置の概略構成図である。
【
図3】本発明の第二実施形態の回転体の配線装置の(a)平面概略構成図であり、(b)側面概略構成図である。
【
図4】本発明の第二実施形態のガイドブリッジの別形態を示す図である。
【
図5】従来の回転体の配線装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一実施形態)
図1に示すように、本実施形態の回転体の配線装置1は、蒸気タービン等の回転機械のタービン翼5の振動応力等を計測する計測装置に用いられるものである。
【0017】
回転機械の一例である蒸気タービンは、複数のディスク4を軸方向で結合してロータ部3(回転軸)を形成し、各々のディスク4に対して被組立部材としてタービン翼5を固定して、中心軸回りに回転する回転体2を構成している。
【0018】
具体的には、ディスク4の周縁には翼溝7が形成されており、タービン翼5のクリスマスツリー形状に形成された翼根8が嵌合され一体化されている。翼溝7と翼根8との隙間には、適宜シムが挿入され、可能な限りガタが排除されている。タービン翼5には歪ゲージ10(ストレインゲージ)が取り付けられている。
【0019】
歪ゲージ10は、タービン翼5の表面に発生する微小変化であるひずみを、電気信号として検出するセンサであり、本体部11と、本体部11より延在する一対のリード線12(配線)から構成されている。
【0020】
図2に示すように、リード線12は、少なくとも2本の単線が撚り合わされた構造の所謂、撚り線である。本実施形態のリード線12は、直径0.08mmの7本の単線を撚り合わせることによって形成されている。
【0021】
リード線12は、リード端子14に接続されており、リード端子14は、第二のリード線15を介してリード端末部16に接続されている。リード端末部16は、第三のリード線17を介してテレメータ送信機18に接続されており、歪ゲージ10で検出された検出データは、テレメータ送信機18から無線情報(電波等)となって、静止側のテレメータ受信機19へ伝送される。
【0022】
歪ゲージ10の本体部11及びタービン翼5の表面上のリード線12は、第一接着部13aによってタービン翼5の表面上に接着されている。第一接着部13aは、接着剤を塗布することによって形成された塊であって、タービン翼5の表面上における、歪ゲージ10の本体部11とリード線12の一部を含む範囲に塗布された接着剤によって形成されている。
【0023】
また、ディスク4上のリード線12は、第二接着部13bによってディスク4上に接着されている。第二接着部13bは、接着剤を塗布することによって形成された接着剤の塊であって、ディスク4の表面上における、リード線12の一部を含む範囲に塗布された接着剤によって形成されている。
【0024】
第一接着部13aと第二接着部13bとは、ディスク嵌合部9を介して離間している。即ち、第一接着部13aと第二接着部13bとは、間隔をあけて配置されており、この間隔にディスク嵌合部9が配置されている。換言すれば、接着剤は分割施工されており、ディスク嵌合部9には接着剤は塗布されていない。
【0025】
接着剤は、例えば、使用温度範囲が−30℃〜300℃の、常温硬化型の高温用接着剤を使用することが好ましい。高温用接着剤としては、例えば、主成分がポリエステルの二液混合型の接着剤を採用することができる。
【0026】
上記実施形態によれば、接着剤が、タービン翼5からディスク4まで一体に施工されておらず、ディスク嵌合部9を境に分割されて施工されている。これにより、タービン翼5とディスク4との間に滑りやガタに起因する微小変位が生じた場合においても、接着剤が割れることを防止することができる。
また、リード線12が撚り線であることによって、より微小変位に対応可能な構造となっている。
【0027】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る回転体の配線装置1について図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、上述した第一実施形態との相違点を中心に述べ、同様の部分についてはその説明を省略する。
【0028】
図3(a)、図3(b)に示すように、本実施形態のディスク4上のリード線12は、その一部がガイドブリッジ21を介してディスク4上に固定されている。なお、
図2において、リード線12は1本で示されているが、
図1と同様に、歪ゲージ10の本体部11からは一対のリード線12が伸びているものとする。
【0029】
ディスク4上には、漏洩蒸気をシールするラビリンスシール22(シールフィン)が設けられている。即ち、リード線12が施工されるディスク4の表面は平坦ではなく、複数の突条が、リード線12を遮るように形成されている。また、軸方向に接続されるディスク4同士の間(段間部23)は、凹状の溝となっており、段間部23はリード線12を横切るように配置されている。
【0030】
ガイドブリッジ21は、これら、ラビリンスシール22や段間部23を跨ぐように配置されている。ガイドブリッジ21は、金属管の一部を曲げ加工することによって形成されている。金属管としては、例えば直径1,0mm〜1.6mmのSUS(ステンレス鋼)チューブを採用することができる。
【0031】
具体的には、ガイドブリッジ21は、ディスク4の表面に固定される第一脚部25及び第二脚部26と、第一脚部25と第二脚部26とを接続する接続部27とから構成されているが、これらは、一本の金属管を曲げることによって形成される。
【0032】
第一脚部25は、接続部27とは反対側の一端がディスク4の表面に固定されるとともに、接続部27と接続される他端がディスク4の表面から離間するように形成されている。第二脚部26も、第一脚部25と同様に、接続部27とは反対側の一端がディスク4の表面に固定されるとともに、接続部27と接続される他端がディスク4の表面から離間するように形成されている。
【0033】
ガイドブリッジ21の一例として、ラビリンスシール22を迂回するためのガイドブリッジ21Aを
図3を参照して説明する。ガイドブリッジ21Aの第一脚部25及び第二脚部26は、一端が湾曲されてディスク4上に固定されているとともに、他端がラビリンスシール22の高さを越えるように湾曲されている。第一脚部25及び第二脚部26は、ディスク4の平面部に箔板28を点溶接(スポット溶接)することによって固定されている。また、リード線12は、ガイドブリッジ21に螺旋状に巻き付けられた上で、接着剤によって固定されている。
【0034】
ガイドブリッジ21の他の例として、段間部23を迂回するためのガイドブリッジ21Bを
図3を参照して説明する。ガイドブリッジ21Bの第一脚部25及び第二脚部26は、一端が湾曲されてディスク4上に固定されており、接続部27は、段間部23を越えるように第一脚部25と第二脚部26を接続している。また、接続部27は、ガイドブリッジ21の強度を向上させる目的でクランク状に曲げが追加されている。
【0035】
上記実施形態によれば、凹凸部である段間部23やラビリンスシール22が連続する部位にガイドブリッジ21を設置し、ガイドブリッジ21にリード線12を固定する構成としたことによって、凹凸部の表面処理が十分にできなかったり、リード線12の仮止め施工が困難な場合であっても、リード線12を確実に固定することができる。即ち、凹凸部を表面処理するためのペーパー掛けが困難な場合や、凹凸部にリード線12を密着させにくい場合においても、リード線12を確実に固定することができる。
【0036】
なお、ガイドブリッジ21は、
図3に示したような形状に限ることはなく、
図4に示すような形状としてもよい。即ち、第一脚部25及び第二脚部26は湾曲させる必要はなく、接続部27には、複数の曲がり部を形成してもよい。複数の曲がり部を形成することにより、ガイドブリッジ21の強度を向上させることができ、リード線12の固定をより確実にすることができる。
【0037】
また、上記実施形態においては、歪ゲージ10を用いた例で説明したが、熱電対など他のセンサを用いた配線装置にも本発明の回転体の配線装置1を適用することができる。
また、上記実施形態においては、蒸気タービンのタービン翼5とディスク4とから構成される回転体を用いた例で説明したが、勿論これに限られるものではなく、本発明は、他の回転機械の回転体、例えば遠心圧縮機のインペラと回転軸に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 回転体の配線装置
2 回転体
3 ロータ部(回転軸)
4 ディスク
5 タービン翼(被組立部材)
9 ディスク嵌合部
10 歪ゲージ
11 本体部
12 リード線(配線)
21 ガイドブリッジ
22 ラビリンスシール
23 段間部
25 第一脚部
26 第二脚部
27 接続部