特許第6117526号(P6117526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6117526-印刷方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117526
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   B41M5/00 100
   B41M5/00 120
   B41M5/00 114
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-256890(P2012-256890)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-104593(P2014-104593A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】古旗 朝隆
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−207500(JP,A)
【文献】 特開2011−190342(JP,A)
【文献】 特開2000−162855(JP,A)
【文献】 特開2012−201105(JP,A)
【文献】 特開2010−280828(JP,A)
【文献】 特開2008−069231(JP,A)
【文献】 特表2010−518249(JP,A)
【文献】 特開2009−215506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M5/00,5/50−5/52
B41M1/00−3/18
B41M7/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物上にインクジェット印刷装置を用いてソルベントUVインク層を形成する形成工程と、
上記ソルベントUVインク層を加熱することで上記ソルベントUVインク層内の有機溶媒を揮発させ、上記ソルベントUVインク層の粘着性が維持されるように乾燥させる乾燥工程と、
乾燥した上記ソルベントUVインク層に、加飾材料を付着させる、又は、金属薄膜、粉末を含有するシート、及び小片状の物質を含有するシートからなる群から選ばれる少なくとも1つの加飾層を付着させる加飾工程と、
上記加飾工程にて加飾された上記ソルベントUVインク層に紫外線を照射して硬化させる硬化工程と
を包含し、
上記加飾材料は、蒔絵材料であることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
上記乾燥工程において、
40℃以上、60℃以下の温度で上記ソルベントUVインク層を予備加熱し、
予備加熱した上記ソルベントUVインク層を、35℃以上、55℃以下の温度で本加熱し、
本加熱した上記ソルベントUVインク層を、40℃以上、60℃以下の温度で後加熱する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
上記形成工程において、
UV硬化型樹脂と、ケトン類、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、グリコール類、グリコールエーテルアセテート類、グリコールエーテル類、エステル類、及び、ピロリドン類からなる群より選択される有機溶媒とを含むソルベントUVインクにより、ソルベントUVインク層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
上記ソルベントUVインクは、インク組成物全体に対して、50重量%以上、99重量%以下の上記有機溶媒を含むことを特徴とする請求項3に記載の印刷方法。
【請求項5】
上記印刷対象物は、布帛であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
織物、編物等の布帛上に図柄層を形成する方法として、特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1に記載の方法においては、繊維基材上に、顔料を含む紫外線硬化型樹脂からなる図柄層を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−12777号公報(2010年1月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、紫外線硬化型インクを用いて、布帛上に図柄層を形成するため、図柄層を形成した布帛の洗濯堅牢性が低く、洗濯することによって図柄層が劣化する場合がある。
【0005】
また、布帛上に塗布された紫外線硬化型インクを加飾する場合、インクの滲みを防止するために、加飾前に紫外線硬化型インクを仮硬化して粘度を上げてから加飾する必要がある。しかしながら、滲みを防止可能であり、かつ、加飾に必要な粘着性が維持された粘度になるように、紫外線硬化型インクの硬化を制御することは困難である。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗濯堅牢性に優れた印刷物、及び、当該印刷物を得るための印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る印刷方法は、印刷対象物上にソルベントUVインク層を形成する形成工程と、上記ソルベントUVインク層を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した上記ソルベントUVインク層上に、加飾材料を付着させる又は当該加飾材料を含む加飾層を形成する加飾工程と、加飾した上記ソルベントUVインク層に紫外線を照射して硬化させる硬化工程とを包含することを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、印刷対象物上に形成したソルベントUVインク層を、乾燥させた後に加飾する。ソルベントUVインク層を乾燥させることによって、ソルベントUVインク層に含まれる有機溶媒が揮発し、粘度が高くなる。したがって、ソルベントUVインク層の滲みを効果的に防止することができる。
【0009】
そして、加飾工程において、乾燥したソルベントUVインク層を加飾する。乾燥したソルベントUVインク層は粘度が高くなっているが、硬化していないため、粘着性が維持されている。したがって、加飾工程において、加飾材料又は当該加飾材料を含む加飾層を、ソルベントUVインク層に好適に付着させることができる。つまり、ソルベントUVインク層上に加飾層を付着させるために、別途プライマー等を用いる必要がない。
【0010】
最後に、加飾後のソルベントUVインク層に紫外線を照射して、ソルベントUVインク層を硬化させて、目的とする印刷物を得る。このようにして得られた印刷物は、洗濯堅牢性に優れているため、複数回洗濯しても印刷した図柄や加飾層が劣化しない。したがって、特に、高い洗濯堅牢性が求められるTシャツ等の衣類を印刷する場合に、好適な印刷方法である。
【0011】
本発明に係る印刷方法は、上記乾燥工程において、40℃以上、60℃以下の温度で上記ソルベントUVインク層を予備加熱し、予備加熱した上記ソルベントUVインク層を、35℃以上、55℃以下の温度で本加熱し、本加熱した上記ソルベントUVインク層を、40℃以上、60℃以下の温度で後加熱することが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、乾燥工程においてソルベントUVインク層を加熱することにより乾燥させる。このとき、40℃以上、60℃以下の温度での予備加熱、35℃以上、55℃以下の温度での本加熱、及び、40℃以上、60℃以下の温度での後加熱のように、加熱温度を変化させて、ソルベントUVインク層を加熱する。
【0013】
これにより、ソルベントUVインク層を、滲みを防止しつつ、加飾に必要な粘着性が維持された粘度になるように、好適に乾燥させることができる。
【0014】
本発明に係る印刷方法は、上記形成工程において、UV硬化型樹脂と、ケトン類、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、グリコール類、グリコールエーテルアセテート類、グリコールエーテル類、エステル類、及び、ピロリドン類からなる群より選択される有機溶媒とを含むソルベントUVインクにより、ソルベントUVインク層を形成することが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、ソルベントUVインク層を、UV硬化型樹脂と、ケトン類、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、グリコール類、グリコールエーテルアセテート類、グリコールエーテル類、エステル類、及び、ピロリドン類からなる群より選択される有機溶媒とを含むソルベントUVインクにより形成するので、硬化前の乾燥させたソルベントUVインク層において、滲みを効果的に防止しつつ、加飾に必要な粘着性を好適に維持することが可能である。
【0016】
本発明に係る印刷方法において、上記ソルベントUVインクは、インク組成物全体に対して、50重量%以上、99重量%以下の上記有機溶媒を含むことが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、ソルベントUVインク層を、インク組成物全体に対して、50重量%以上、99重量%以下の有機溶媒を含むソルベントUVインクにより形成するので、硬化前の乾燥させたソルベントUVインク層において、滲みを効果的に防止しつつ、加飾に必要な粘着性を好適に維持することが可能である。
【0018】
本発明に係る印刷方法において、上記印刷対象物は、布帛であることが好ましい。これにより、洗濯堅牢性に優れた布帛の印刷物を得ることが可能である。したがって、高い洗濯堅牢性が求められるTシャツ等の衣類等の印刷に好適である。
【0019】
本発明に係る印刷物は、印刷対象物上に形成されたソルベントUVインク層を備え、上記ソルベントUVインク層上に、加飾材料を付着させる又は当該加飾材料を含む加飾層が形成されていることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、ソルベントUVインクにより所望の形状に形成されたソルベントUVインク層を備え、当該ソルベントUVインク層が加飾材料により加飾されているので、滲みが少なく、洗濯堅牢性に優れ、かつ、好適に加飾されている。したがって、精巧で商品価値の高い印刷物を提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、印刷対象物上に形成したソルベントUVインク層を乾燥させてから加飾した後、紫外線を照射して硬化させるので、洗濯堅牢性に優れた印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷方法の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0024】
〔印刷方法〕
本発明の一実施形態に係る印刷方法は、印刷対象物上にソルベントUVインク層を形成する形成工程と、上記ソルベントUVインク層を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した上記ソルベントUVインク層上に、加飾材料を付着させる又は当該加飾材料を含む加飾層を形成する加飾工程と、加飾した上記ソルベントUVインク層に紫外線を照射して硬化させる硬化工程とを包含する。
【0025】
印刷方法の一実施形態について、図1を参照して以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷方法の概要を示す模式図である。
【0026】
(形成工程)
図1中(a)に示すように、形成工程においては、印刷対象物1上にソルベントUVインク層2を形成する。ソルベントUVインク層2は、印刷対象物1上にソルベントUVインクを所望の形状で塗布することによって形成することができる。印刷対象物1へのソルベントUVインクの塗布は、例えば、インクジェット印刷装置を用いて行うことができる。
【0027】
<ソルベントUVインク>
ソルベントUVインクは、UV硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂)と有機溶媒とを含むインクであり、UV硬化型樹脂が有機溶媒中に溶解したものである。ソルベントUVインクは、さらに、顔料、光重合開始剤、及び、増感剤を含んでいてもよい。
【0028】
≪UV硬化型樹脂≫
ソルベントUVインクに含まれるUV硬化型樹脂は、重合を開始して硬化するモノマー、オリゴマー、又は、ポリマーであり得る。このようなモノマー、オリゴマー、又は、ポリマーとしては、従来公知の市販品を好適に利用できる。
【0029】
紫外線が照射されることによって重合を開始して硬化するモノマー、オリゴマー、又は、ポリマーとしては、例えば、カチオン重合型、ラジカル重合型、又は、これらの混合物が挙げられる。これらの紫外線硬化型樹脂は、単独で使用することも、2種以上を混合して使用することもできる。
【0030】
ソルベントUVインクに含まれる、紫外線が照射されることによって重合を開始して硬化するモノマー、オリゴマー、又は、ポリマーの含有量は、インク組成物全体に対して、3重量%以上、90重量%以下であることが好ましく、5重量%以上、30重量%以下であることがより好ましい。ソルベントUVインクに上記範囲でUV硬化型樹脂を含有させることによって、紫外線照射により好適に硬化させることができる。
【0031】
≪有機溶媒≫
ソルベントUVインクに含まれる有機溶媒としては、UV硬化型樹脂を溶解するものであり、ソルベントUVインクを加熱等により乾燥させることによって揮発するものであればよい。このような有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ケトン類、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、グリコール類、グリコールエーテルアセテート類、グリコールエーテル類、エステル類、及び、ピロリドン類が挙げられる。
【0032】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、及び、2−ヘプタノン等が挙げられる。アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキシルアルコール、イソヘプチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール、及び、3−メトキシブタノール等が挙げられる。
【0033】
エーテル類としては、例えば、セロソルブ及びブチルセロソルブ等が挙げられる。炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン、テレピン油、リモネン、工業用揮発油、テトラヒドロナフタレン、及び、デカヒドロナフタレン等が挙げられる。グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
グリコールエーテルアセテート類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及び、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0035】
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及び、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0036】
エステル類としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオ−ルモノイソブチレート、トリエチレングリコールジ(2−エチルブチレート)、プロピレンカーボネート、乳酸エチル、乳酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、二塩基酸エステルDBE、及び、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等が挙げられる。ピロリドン類としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドンが挙げられる。
【0037】
上述した各有機溶媒は、使用する浸透防止剤の溶解性、インクの吐出安定性、及び、目的とする媒体上におけるインクの乾燥性を考慮して、1種を単独で用いてもよく、沸点の異なる2種類以上の溶媒を任意で組み合わせて用いてもよい。ソルベントUVインクに含まれる有機溶媒の含有量は、インク組成物全体に対して、50重量%以上、99重量%以下であることがより好ましい。
【0038】
≪顔料≫
ソルベントUVインクに含有させることができる顔料としては、公知の顔料が挙げられるが、ブラック顔料として、例えば、カーボンブラックが挙げられ、カラー顔料としては、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、複素環式イエロー、キナクリドン、(チオ)インジゴイド等が挙げられる。これらの顔料は、単独でインクに含有させてもよいし、2種以上を混合してインクに含有させてもよい。ソルベントUVインクをクリアインクとする場合には、インク中に顔料を含有させなくてもよい。ソルベントUVインクに含まれる顔料の含有量は、インク組成物全体に対して、3重量%以上、5重量%以下程度であることが好ましい。
【0039】
≪光重合開始剤≫
ソルベントUVインクに含有させることができる光重合開始剤としては、紫外線が照射されることによって、UV硬化型樹脂の重合を効率よく開始させるものであればよく、公知の光重合開始剤を用いることができる。このような光重合開始剤として、例えば、アルキルフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独でインクに含有させてもよいし、2種以上を混合してインクに含有させてもよい。
【0040】
≪増感剤≫
ソルベントUVインクに含有させることができる増感剤としては、光重合開始剤の紫外線による反応を効率よく開始させることが可能なものであればよく、公知の増感剤を用いることができる。このような増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン類が挙げられる。これらの増感剤は、単独でインクに含有させてもよいし、2種以上を混合してインクに含有させてもよい。
【0041】
≪その他の添加剤≫
ソルベントUVインクは、上述した添加剤以外にも、必要に応じて、希釈剤、消泡剤、顔料分散剤、スリップ剤、レベリング剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。ソルベントUVインクに含まれる光重合開始剤とその他の添加剤との総含有量は、インク組成物全体に対して、10重量%程度であることが好ましい。
【0042】
<印刷対象物1>
形成工程において、ソルベントUVインク層2を形成する対象となる印刷対象物としては、種々の印刷対象物を使用可能であるが、特に布帛を用いることが好ましい。布帛は、織物、編物、不織布等の繊維基材であり、Tシャツ等の衣類を形成する素材である。本実施形態に係る印刷方法によれば、洗濯堅牢性に優れた布帛の印刷物を得ることが可能であるので、より高い洗濯堅牢性が求められるTシャツ等の衣類等も、印刷対象物として好適である。
【0043】
(乾燥工程)
図1中(b)に示すように、乾燥工程においては、印刷対象物1上に形成されたソルベントUVインク層2を乾燥させる。乾燥工程においては、例えば、ソルベントUVインク層2を加熱することで、ソルベントUVインク層2内の有機溶媒を揮発させ、乾燥させる。図1中(b)においては、ソルベントUVインク層2側から直接ソルベントUVインク層2を加熱するように示されているが、これに限定されず、印刷対象物1側から、印刷対象物1を介してソルベントUVインク層2を加熱してもよい。
【0044】
乾燥工程においては、40℃以上、60℃以下の温度でソルベントUVインク層2を予備加熱し、予備加熱したソルベントUVインク層2を、35℃以上、55℃以下の温度で本加熱し、本加熱したソルベントUVインク層2を、40℃以上、60℃以下の温度で後加熱してもよい。また、乾燥工程において、予備加熱温度を60℃、本加熱温度を55℃、後加熱温度を60℃にすることがより好ましい。このように、加熱温度を変化させて、ソルベントUVインク層2を加熱して乾燥させることによって、ソルベントUVインク層2を、滲みを防止しつつ、後の加飾工程における加飾に必要な粘着性が維持された粘度になるように、好適に乾燥させることができる。
【0045】
乾燥工程における乾燥時間は、例えば、ソルベントUVインク層2が所望の粘度となるような乾燥時間を適宜設定することができる。
【0046】
乾燥工程において、ソルベントUVインク層2を乾燥させることによって、ソルベントUVインク層2の粘度が高くなるため、印刷対象物1上におけるソルベントUVインク層2の滲みを効果的に防止することができる上に、後の加飾工程における加飾材料による加飾を好適に行うことが可能な粘度を維持することができる。
【0047】
(加飾工程)
図1中(c)に示すように、加飾工程においては、乾燥したソルベントUVインク層2上に、加飾材料を付着させる又は当該加飾材料を含む加飾層3を形成する。すなわち、加飾工程においては、乾燥したソルベントUVインク層2を加飾材料により加飾する。乾燥したソルベントUVインク層2は粘度が高くなっているが、硬化していないため、粘着性が維持されている。したがって、別途プライマー等を用いることなく、ソルベントUVインク層2を加飾することができる。
【0048】
加飾材料としては、ソルベントUVインク層2上に蒔いてソルベントUVインク層2に付着させることができる公知の蒔絵材料を使用可能であり、例えば、顔料、金属粉末、ビーズ、宝石粒(パール等)、毛糸等のような、粉末又は小片状の物質が挙げられる。加飾材料を含む加飾層3は、例えば、金箔のような金属薄膜であってもよく、他の粉末又は小片状の物質を含有するシートであってもよい。
【0049】
加飾工程において、ソルベントUVインク層2を加飾材料により加飾することによって、より商品価値の高い印刷物を得ることができる。
【0050】
(硬化工程)
図1中(d)に示すように、硬化工程においては、加飾層3により加飾したソルベントUVインク層2に紫外線(UV)を照射して硬化させる。これにより目的とする印刷物を得ることができる。このようにして得られた印刷物は、洗濯堅牢性に優れているため、複数回洗濯しても印刷した図柄や加飾層が劣化しない。したがって、特に、高い洗濯堅牢性が求められるTシャツ等の衣類を印刷する場合に、好適な印刷方法である。
【0051】
ソルベントUVインク層2に紫外線を照射する方法としては、LED、メタルハライドランプ等から紫外線を照射するような、公知の方法を使用することができる。ソルベントUVインク層2に照射する紫外線の波長は、ソルベントUVインク層2を好適に硬化させることが可能な波長であれば特に限定されない。
【0052】
図1中(d)においては、加飾層3側からソルベントUVインク層2に紫外線を照射するように示されているが、これに限定されず、印刷対象物1として紫外線透過性のものを用いる場合には、印刷対象物1側から、印刷対象物1を介してソルベントUVインク層2に紫外線を照射してもよい。
【0053】
硬化工程後の印刷物において、加飾層3を、さらに、ウレタン樹脂等を用いてコーティング又はドーミングすることによって、加飾層3の耐候性及び光沢性を向上させてもよい。
【0054】
このように、本発明の一実施形態に係る印刷方法によれば、滲みが少なく、好適に加飾された、洗濯堅牢性に優れた印刷物を得ることができる。
【0055】
〔印刷物〕
本発明の一実施形態に係る印刷物は、印刷対象物上に形成されたソルベントUVインク層を備え、上記ソルベントUVインク層上に加飾材料が付着している、又は、上記ソルベントUVインク層上に加飾材料を含む加飾層が形成されている。
【0056】
すなわち、本発明に係る印刷物の一実施形態は、上述した本発明に係る印刷方法により得られるものであるため、本発明に係る印刷物の一実施形態の説明は、上述した本発明に係る印刷方法の説明に準じる。
【0057】
〔付記事項〕
印刷方法は、印刷対象物1上にソルベントUVインク層2を形成する形成工程と、上記ソルベントUVインク層2を乾燥させる乾燥工程と、乾燥した上記ソルベントUVインク層2上に、加飾材料を付着させる又は当該加飾材料を含む加飾層3を形成する加飾工程と、加飾した上記ソルベントUVインク層2に紫外線を照射して硬化させる硬化工程とを包含する。
【0058】
上記の構成によれば、印刷対象物1上に形成したソルベントUVインク層2を、乾燥させた後に加飾する。ソルベントUVインク層2を乾燥させることによって、ソルベントUVインク層2に含まれる有機溶媒が揮発し、粘度が高くなる。したがって、ソルベントUVインク層2の滲みを効果的に防止することができる。
【0059】
そして、加飾工程において、乾燥したソルベントUVインク層2を加飾する。乾燥したソルベントUVインク層2は粘度が高くなっているが、硬化していないため、粘着性が維持されている。したがって、加飾工程において、加飾材料又は当該加飾材料を含む加飾層3を、ソルベントUVインク層2に好適に付着させることができる。つまり、ソルベントUVインク層2上に加飾層を付着させるために、別途プライマー等を用いる必要がない。
【0060】
最後に、加飾後のソルベントUVインク層2に紫外線を照射して、ソルベントUVインク層2を硬化させて、目的とする印刷物を得る。このようにして得られた印刷物は、洗濯堅牢性に優れているため、複数回洗濯しても印刷した図柄や加飾層が劣化しない。したがって、特に、高い洗濯堅牢性が求められるTシャツ等の衣類を印刷する場合に、好適な印刷方法である。
【0061】
印刷方法は、上記乾燥工程において、40℃以上、60℃以下の温度で上記ソルベントUVインク層2を予備加熱し、予備加熱した上記ソルベントUVインク層を、35℃以上、55℃以下の温度で本加熱し、本加熱した上記ソルベントUVインク層を、40℃以上、60℃以下の温度で後加熱する。
【0062】
上記の構成によれば、乾燥工程においてソルベントUVインク層2を加熱することにより乾燥させる。このとき、40℃以上、60℃以下の温度での予備加熱、35℃以上、55℃以下の温度での本加熱、及び、40℃以上、60℃以下の温度での後加熱のように、加熱温度を変化させて、ソルベントUVインク層2を加熱する。
【0063】
これにより、ソルベントUVインク層2を、滲みを防止しつつ、加飾に必要な粘着性が維持された粘度になるように、好適に乾燥させることができる。
【0064】
印刷方法は、上記形成工程において、UV硬化型樹脂と、ケトン類、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、グリコール類、グリコールエーテルアセテート類、グリコールエーテル類、エステル類、及び、ピロリドン類からなる群より選択される有機溶媒とを含むソルベントUVインクにより、ソルベントUVインク層2を形成する。
【0065】
上記の構成によれば、ソルベントUVインク層2を、UV硬化型樹脂と、ケトン類、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、グリコール類、グリコールエーテルアセテート類、グリコールエーテル類、エステル類、及び、ピロリドン類からなる群より選択される有機溶媒とを含むソルベントUVインクにより形成するので、硬化前の乾燥させたソルベントUVインク層2において、滲みを効果的に防止しつつ、加飾に必要な粘着性を好適に維持することが可能である。
【0066】
印刷方法において、上記ソルベントUVインクは、インク組成物全体に対して、50重量%以上、99重量%以下の上記有機溶媒を含む。
【0067】
上記の構成によれば、ソルベントUVインク層2を、インク組成物全体に対して、50重量%以上、99重量%以下の有機溶媒を含むソルベントUVインクにより形成するので、硬化前の乾燥させたソルベントUVインク層2において、滲みを効果的に防止しつつ、加飾に必要な粘着性を好適に維持することが可能である。
【0068】
印刷方法において、上記印刷対象物1は、布帛である。これにより、洗濯堅牢性に優れた布帛の印刷物を得ることが可能である。したがって、高い洗濯堅牢性が求められるTシャツ等の衣類等の印刷に好適である。
【0069】
印刷物は、印刷対象物1上に形成されたソルベントUVインク層2を備え、上記ソルベントUVインク層2上に、加飾材料を付着させる又は当該加飾材料を含む加飾層3が形成されている。
【0070】
上記の構成によれば、ソルベントUVインクにより所望の形状に形成されたソルベントUVインク層2を備え、当該ソルベントUVインク層2が加飾材料により加飾されているので、滲みが少なく、洗濯堅牢性に優れ、かつ、好適に加飾されている。したがって、精巧で商品価値の高い印刷物を提供することができる。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、印刷技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 印刷対象物
2 ソルベントUVインク層
3 加飾層
図1