特許第6117533号(P6117533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117533
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   F24C3/12 E
   F24C3/12 G
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-261010(P2012-261010)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-105961(P2014-105961A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美紀
(72)【発明者】
【氏名】阿南 華織
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−172727(JP,A)
【文献】 特開平11−287444(JP,A)
【文献】 特開平11−123140(JP,A)
【文献】 特開平11−014062(JP,A)
【文献】 特開2006−343006(JP,A)
【文献】 特開平06−129646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C3/00−3/14
F24C7/00
F24C7/04−7/06
H05B6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理容器を加熱する加熱手段と、前記調理容器の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出される検出温度に基づいて、前記加熱手段を制御する制御手段とを備える加熱調理器であって、
煮込み調理モードが設定される調理モード設定手段を備え、
前記制御手段は、前記煮込み調理モードが設定されると、前記検出温度が平衡状態となる平衡温度を検出した後は、前記検出温度が、前記平衡温度よりも低い第2設定温度まで下降すると、前記加熱手段の加熱力を強めの加熱力に、前記検出温度が、前記平衡温度よりも低く、かつ、前記第2の設定温度よりも高い第1設定温度まで上昇すると、前記加熱手段の加熱力を、加熱状態の加熱力である弱めの加熱力に、切替え制御するものであり、
前記調理モード設定手段は、前記煮込み調理モードによる調理時間が設定されるタイマ設定部を有し、
前記制御手段は、前記タイマ設定部に設定される調理時間を計測するタイマ計測部を有すると共に、前記検出温度に基づいて、前記調理容器内の加熱対象物が沸騰状態となる沸騰温度を検出した時点で、前記タイマ計測部による前記調理時間の計測を開始する、
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記温度検出手段は、前記調理容器の底部の温度を検出するものであり、
前記制御手段は、前記平衡温度を検出する迄は、前記加熱手段の加熱力を、第1の加熱力に制御する一方、前記平衡温度を検出した後は、前記第1の加熱力よりも弱い第2の加熱力に切替え、前記検出温度が、前記第2設定温度まで下降すると、前記第2の加熱力よりも強く、かつ前記第1の加熱力と同じか弱い第3の加熱力に切替え、前記検出温度が、前記第1設定温度まで上昇すると、前記第2の加熱力に切替え、以後は、前記検出温度が、第2設定温度まで下降、又は、第1設定温度まで上昇する度に、前記第3の加熱力、又は、第2の加熱力に切換え制御する、
請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記調理モード設定手段は、前記第1,第2設定温度を変更設定する変更設定部を有する、
請求項1または2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記煮込み調理モードが設定されて、前記平衡温度を検出した後に、前記加熱手段による加熱が継続されているにも拘らず、前記検出温度が、前記第2設定温度よりも低い所定温度まで下降したときには、前記平衡温度を再検出して、前記第1,第2設定温度を再設定する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関し、更に詳しくは、煮込み調理に好適な加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鍋等の調理容器に入れた調理物の過熱による焦げ付きや発火を防止するために、調理容器の温度を温度センサにより検出し、検出温度に基づいて加熱手段による加熱を自動的に停止させたり、あるいは、調理容器の検出温度に基づいて、調理物の沸騰状態を検出すると共に、加熱手段による加熱量と調理物及び調理容器の放熱量とが平衡する平衡状態を検出し、それらに基づいて、水調理物と油調理物とを判別し、水調理物の焦げ付きを防止するようにした加熱調理器も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−129644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
煮込み調理、例えば「おでん」や「肉じゃが」等の煮込み調理では、調理容器である鍋の材質や調理する材料等によって、煮汁が沸騰するまでに必要な熱量は相違するために、火力と加熱時間、すなわち、加熱量を一概に固定することはできない。
【0005】
このため、従来の加熱調理器では、上述のように調理物の過熱による焦げ付きや発火を防止する機能は備えているものの、煮込み調理を行う場合には、使用者が傍らで監視しながら、調理容器内の調理物の煮汁が沸騰するまでは強めの火力で加熱し、沸騰すると、吹き零れないように、火力を手動で調節しながら調理物を煮込む必要がある。
【0006】
このように従来の加熱調理器では、煮込み調理の場合には、使用者が、吹き零れないように傍らで監視しながら、手動で火力を調節しなければならず、手間がかかり、また、使用者の経験または勘によって火力を調節するために、適切な火力が得にくいという欠点がある。
【0007】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、調理容器の材質によらず、自動で煮込み調理ができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では次のように構成している。
【0009】
(1)本発明は、調理容器を加熱する加熱手段と、前記調理容器の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段によって検出される検出温度に基づいて、前記加熱手段を制御する制御手段とを備える加熱調理器であって、煮込み調理モードが設定される調理モード設定手段を備え、前記制御手段は、前記煮込み調理モードが設定されると、前記検出温度が平衡状態となる平衡温度を検出した後は、前記検出温度が、前記平衡温度よりも低い第2設定温度まで下降すると、前記加熱手段の加熱力を強めの加熱力に、前記検出温度が、前記平衡温度よりも低く、かつ、前記第2の設定温度よりも高い第1設定温度まで上昇すると、前記加熱手段の加熱力を、加熱状態の加熱力である弱めの加熱力に、切替え制御するものであり、前記調理モード設定手段は、前記煮込み調理モードによる調理時間が設定されるタイマ設定部を有し、前記制御手段は、前記タイマ設定部に設定される調理時間を計測するタイマ計測部を有すると共に、前記検出温度に基づいて、前記調理容器内の加熱対象物が沸騰状態となる沸騰温度を検出した時点で、前記タイマ計測部による前記調理時間の計測を開始する。
【0010】
本発明では、調理容器の材質が異なっても、加熱される調理容器の検出温度が、平衡状態となる平衡温度では、調理容器内の加熱対象物の温度が略同じ温度となることに着目し、煮込み調理モードが設定されると、平衡温度を検出した後は、調理容器の検出温度が、平衡温度よりも低い第2設定温度まで下降すると、加熱手段の加熱力を強めの加熱力に、平衡温度よりも低く、かつ、第2設定温度よりも高い第1設定温度まで上昇すると、加熱手段の加熱力を弱めの加熱力に、切替え制御するので、調理容器の温度は、平衡温度より低い第1,第2設定温度に基づく温度範囲に制御されることになる。
【0011】
これによって、調理容器内の加熱対象物が吹き零れることなく、軽い沸騰状態を維持しながら加熱することができ、従来のように、使用者が吹き零れないように監視しながら加熱力を手動で調節する必要がなく、煮込み調理を自動で行うことができる。
また、煮込み調理モードの調理時間をタイマ設定部で設定すると、実質的に煮込みが開始される時点である、調理容器内の加熱対象物が沸騰状態となる沸騰温度の検出時点を起点としてタイマ計測を開始することができる。
【0012】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記温度検出手段は、前記調理容器の底部の温度を検出するものであり、前記制御手段は、前記平衡温度を検出する迄は、前記加熱手段の加熱力を、第1の加熱力に制御する一方、前記平衡温度を検出した後は、前記第1の加熱力よりも弱い第2の加熱力に切替え、前記検出温度が、前記第2設定温度まで下降すると、前記第2の加熱力よりも強く、かつ前記第1の加熱力と同じか弱い第3の加熱力に切替え、前記検出温度が、前記第1設定温度まで上昇すると、前記第2の加熱力に切替え、以後は、前記検出温度が、第2設定温度まで下降、又は、第1設定温度まで上昇する度に、前記第3の加熱力、又は、第2の加熱力に切換え制御する。
【0013】
この実施態様によると、平衡温度が検出された後は、加熱手段による加熱力が、第2の加熱力と第3の加熱力とに切替え制御されて、調理容器の底部の検出温度が、平衡温度よりも低い第1,第2設定温度に基づく温度範囲に制御されることになり、調理容器内の加熱対象物が吹き零れることなく、軽い沸騰状態を維持しながら加熱することができる。
【0016】
)本発明の他の実施態様では、前記調理モード設定手段は、前記第1,第2設定温度を変更設定する変更設定部を有する。
【0017】
この実施態様によると、変更設定部によって、第1,第2設定温度を変更設定できるので、例えば、煮込み調理の種類や調理容器内の加熱対象物の量の多少に応じて第1,第2設定温度を変更設定し、これによって、調理容器の検出温度を、第1,第2設定温度に基づく適切な温度範囲に制御することができる。
【0018】
)本発明の更に他の実施態様では、前記制御手段は、前記煮込み調理モードが設定されて、前記平衡温度を検出した後に、前記加熱手段による加熱が継続されているにも拘らず、前記検出温度が、前記第2設定温度よりも低い所定温度まで下降したときには、前記平衡温度を再検出して、前記第1,第2設定温度を再設定する。
【0019】
煮込み調理モードの途中で、調理容器へ加熱対象物を追加投入したような場合には、調理容器の検出温度が下降するが、この実施態様によると、加熱対象物が多量に追加投入されて、調理容器の検出温度が、前記第2設定温度よりも低い所定温度まで下降したときには、平衡温度を再検出して第1,第2設定温度が再設定されるので、調理容器の温度が、加熱対象物の追加投入に応じて再設定された第1,第2設定温度に基づく適切な温度範囲に制御されることになる。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、煮込み調理モードが設定されると、平衡温度を検出し、調理容器の検出温度が、この平衡温度よりも低い第1,第2設定温度に基づく温度範囲に制御されるので、調理容器の材質によらず、加熱対象物が、調理容器から吹き零れることなく、軽く沸騰状態を維持するように加熱することができ、従来のように、使用者が吹き零れしないように監視しながら加熱力を手動で調節する必要がなく、煮込み調理を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る加熱調理器の斜視図である。
図2図1の加熱調理器の燃料供給路の説明図である。
図3】ガスコンロ用調理設定入力部の正面図である。
図4】材質の異なる鍋を加熱した場合の各鍋の温度変化及び各鍋内の水温の変化を示す図である。
図5】本発明の一実施形態の加熱調理器による煮込み調理モードの火力及び鍋の温度変化を示す図である。
図6】煮込み調理モードの途中で加熱対象物を追加投入した場合の図5に対応する図である。
図7】煮込み調理モードの途中で加熱対象物を追加投入した場合の他の例を示す図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0023】
この実施形態では、加熱調理器として、グリル付きガスコンロに適用して説明する。
【0024】
この実施形態のグリル付きガスコンロAは、図1に示すように、コンロ本体1の上部に、最大火力の異なるコンロバーナからなる3つのガスコンロ部2a〜2cを備え、コンロ本体1の左右中央には、グリルバーナ(図示せず)を内装すると共に、グリル扉3aを前方に備えるグリル皿(図示せず)を前面から出し入れ可能に装着したグリル3を備えている。
【0025】
このグリル付きガスコンロAは、図示しないキッチンキャビネットに落とし込み装着されるビルトインタイプである。
【0026】
コンロ本体1の上部は、天板4で覆われると共に、コンロ奥端の上面にグリル3の燃焼排ガスを排出するためのグリル排気口5が設けられている。
【0027】
この実施形態では、天板4の手前側の左右に配設したガスコンロ部2a,2bの一方(左側)が、標準火力のガスコンロ部2aとなっており、他方(右側)が、高火力のガスコンロ部2bとなっている。また、奥側の中央部に配設したガスコンロ部2cが、小火力のガスコンロ部2cとなっている。各ガスコンロ部2a〜2cには、調理容器、例えば鍋の底部の温度を検出するサーミスタからなる温度センサ7a〜7cがそれぞれ装備されていると共に、対応する五徳6a〜6cがそれぞれ載置されている。
【0028】
各ガスコンロ部2a〜2cには、図示していないが、コンロバーナに点火する点火装置としての点火プラグと、コンロバーナの着火を検出する着火検出装置としての熱電対とが設けられ、グリル3にも同様に、グリルバーナに点火する点火装置としての点火プラグと、グリルバーナの着火を検出する着火検出装置としての熱電対が設けられる。点火プラグは、後述する加熱状態調節部12a〜12cにおける点火操作によってマイクロコンピュータからなる制御部11(図2参照)により点火動作が行われ、熱電対において検出された着火(点火)情報は制御部11に認識されて、制御部11により点火プラグでの点火処理を終了する。
【0029】
各コンロバーナ及びグリルバーナには、図2に示すように、都市ガス等のガス燃料を供給する燃料供給路8からそれぞれ分岐する分岐供給路8aが接続されている。なお、この図2では、ガスコンロ部2aのコンロバーナのみを代表的に示している。燃料供給路8には、電磁弁9が設けられると共に、各分岐供給路8aには、ガス燃料の供給量の調節を行うためステッピングモータにより駆動されて弁体の開度位置の微調整が可能な流量制御弁10と、前記弁体の開度位置を検出する位置センサ(図示せず)が設けられている。電磁弁9及び流量制御弁10は、制御部11によって制御され、位置センサにおける検出情報は、制御部11によって認識・処理される。また、流量制御弁10は、対応するコンロバーナ又はグリルバーナが使用されない時には、流量を零にして遮断状態となるように切り換えられる。
【0030】
図1に示すように、コンロ本体1の前面の左右上部には、各ガスコンロ部2a〜2cのコンロバーナの点火、消火、火力調節の操作をそれぞれ行うための3つの加熱状態調節部12a〜12cが設けられている。この実施形態では、前面の左側に、標準火力のガスコンロ部2aの加熱状態調節部12aを配設し、前面の右側に、高火力のガスコンロ部2bの加熱状態調節部12b及び小火力のガスコンロ部2cの加熱状態調節部12cを配設している。
【0031】
また、前面の右側上部には、制御部11をはじめ電磁弁9や流量制御弁10、入力部や加熱状態調節部12a〜12c等の各部への通電の入切を行う自動復帰型で押し釦式の電源スイッチ13が設けられている。
【0032】
上記各加熱状態調節部12a〜12cは、前後方向に移動自在な押釦により構成され、ガスコンロ部2a〜2cの使用に当たっては、押釦よりなる加熱状態調節部12a〜12cを押圧して点火操作をすることで、後退していた加熱状態調節部12a〜12cが前方に突出して器具栓がONとなり、流出するガス燃料にスパーク放電がなされてガスコンロ部2a〜2cのコンロバーナに点火される。
【0033】
この押釦よりなる加熱状態調節部12a〜12cが前方に突出した状態で加熱状態調節部12a〜12cを指で摘んで回動操作すると、前記回動角度がロータリーエンコーダにより検出されて制御部11に認識され、前記回動角度に応じた開度位置となるようにステッピングモータにより流量制御弁10の弁体が駆動されてガス流量が制御されて、ガスコンロ部2a〜2cの火力が、「1」〜「5」の5段階で制御できるようになっている。一方、消火にあたっては、前方に突出している加熱状態調節部12a〜12cを後方に押圧操作することで器具栓がOFFとなってガスコンロ部2a〜2cのコンロバーナが消火される。
【0034】
コンロ本体1の前面の左右の下部には、操作パネル14,15が収納自在に設けられている。右側の操作パネル15には、グリル3に関する操作を行うためのグリル用調理設定入力部16が設けられ、この操作パネル15がグリル側操作パネルとなり、左側の操作パネル14には、標準火力のガスコンロ部2aによる調理設定の入力を行うためのガスコンロ用調理設定入力部17が設けられ、この操作パネル14がコンロ側操作パネルとなっている。
【0035】
図3には、ガスコンロ用調理設定入力部17を示している。標準火力のガスコンロ部2aによる調理設定の入力を行うためのガスコンロ用調理設定入力部17は、ガスコンロ部2aによる調理時間を設定するためのタイマースイッチ18、揚げ物、炊飯、湯沸し、煮込みの自動調理のメニューをそれぞれ設定するための各メニュースイッチ19〜22、及び、前記各スイッチ18〜22を操作して設定した各入力を取り消すための取消しスイッチ23等を備えている。
【0036】
タイマ設定部としてのタイマースイッチ18の「+」スイッチ18a,「−」スイッチ18bを押すことにより、1分単位で1分〜120分迄のタイマ時間を設定することができ、設定されるタイマ時間が、表示部18cに表示される。タイマ時間が設定されない場合は、初期設定値として、60分が表示される。また、設定された調理モードの実行中は、表示部18cには、残り時間が1分となるまでは1分の時間経過と共にデクリメントされた分単位の残時間が、表示され、残り時間が1分未満になると、残り時間が30秒なるまでは、「1分」の値が表示され、残り時間が30秒以下になると、ブザーで報知すると共に、1秒単位で1秒の時間経過と共にデクリメントされた秒単位の残時間が、表示され、残り時間が0になると「0」が10回点滅し、ガスコンロ部2aが消火し、設定された調理モードは終了する。
【0037】
なお、タイマ時間が設定された調理モードの実行中に、タイマースイッチ18の「+」スイッチ18a又は「−」スイッチ18bを押すことにより、タイマ時間の設定の変更ができ、設定可能な最大時間は120分迄であり、ガスコンロ部2aの連続使用可能時間は120分迄としている。
【0038】
上記自動調理のメニュースイッチ19〜22の内、揚げ物用のメニュースイッチ19を押すことで揚げものを自動調理で行う揚げ物モードとすることができ、この揚げ物用のメニュースイッチ19を何回押すかによって、200℃、180℃、160℃といった複数種類の揚げ物の調理の中から目的とする温度の揚げ物調理を設定することができる。また、炊飯用のメニュースイッチ20を押すことで炊飯を自動調理で行う炊飯モードとすることができ、この炊飯用のメニュースイッチ20を何回押すかによって、ご飯、おかゆといった複数種類の炊飯の調理の中から目的とする炊飯の調理を設定することができる。また、湯沸し用のメニュースイッチ21を押すことで湯沸しを自動調理で行う湯沸しモードとすることができ、この湯沸し用のメニュースイッチ21を何回押すかによって、自動消火、5分保温といった湯沸し後にすぐ消火するか、あるいは一定時間保温するかといった湯沸しを選択して設定することができる。
【0039】
更に、この実施形態では、煮込み用のメニュースイッチ22を押すことで煮込みを自動調理で行う煮込み調理モードとすることができ、この煮込み用のメニュースイッチ22を押す度に、煮込み火力が、「標準」(おでんやロールキャベツ等)→「強め」(肉じゃがや筑前煮、量が多い時等)→「弱め」(味噌汁や量が少ない時等)と、サイクリックに切替わり、所望の煮込み火力を設定することができる。この「標準」、「強め」、「弱め」を選択して設定することによって、後述のように、火力を切替え制御するための第1,第2設定温度を変更設定することができる。
【0040】
煮込み用のメニュースイッチ22及びタイマースイッチ18によって、煮込み調理モードを設定する調理モード設定手段が構成される。
【0041】
ガスコンロ用調理設定入力部17において、標準火力のガスコンロ部2aによる調理の設定入力が行われると、制御部11により予め設定された制御内容に基づいて、ガスコンロ部2aにおける火力調整、調理時間等が制御される。この場合、鍋の底部の温度を温度センサ7aにより検出して、該温度センサ7aで検出した鍋の底部の温度を、制御部11に入力してフィードバック制御により火力調整を行うようになっている。また、制御部11は、タイマースイッチ18によって設定されるタイマ時間を計測するタイマ計測部としての機能を有する。
【0042】
各ガスコンロ部2a〜2cの使用に当たっては、手動により加熱を行う場合には、コンロ本体1の前面に露出している加熱状態調節部12a〜12cを直接指で操作して制御部11に指令を与えて点火、火力調整、消火を行うと共に、標準火力のガスコンロ部2aで自動調理を行う場合には、後述のように、主として制御部11によりガス流量及び火力が調整される。
【0043】
また、自動調理の終了、タイマ機能、あるいは、安全装置により異常が検知されることで、自動消火される場合があり、この場合には点火・消火操作部は器具栓をONとする状態であっても安全弁により燃料ガスが遮断されて消火される。
【0044】
この実施形態では、調理容器である鍋の材質によらず、上記煮込み用のメニュースイッチ22を押圧操作して煮込み調理モードを設定したときには、自動で煮込み調理を行えるようにするものであるが、ここで、鍋の材質の相違による鍋の温度及び鍋内の加熱対象物の温度の変化について説明する。
【0045】
図4は、熱伝動率が低く、熱容量が大きいステンレス(SUS)製の多層鍋と、熱伝動率が高く、熱容量が小さいアルミ製の鍋とに、加熱対象物としての水をそれぞれ同量入れてガスコンロ部によって加熱したときの各鍋の底部の温度と、各鍋内の水温の変化を示す図であり、横軸が時間(秒)を、縦軸が温度(℃)をそれぞれ示している。各鍋の底部の温度は、ガスコンロ部に設けられているサーミスタからなる温度センサによって検出し、鍋の水温は、鍋に取付けた温度センサによって検出した。
【0046】
この図4において、太い実線LSUSはステンレス製の多層鍋の底部の温度を、細い実線LAlはアルミ製の鍋の底部の温度をそれぞれ示し、太い破線LWSUSはステンレス製の多層鍋内の水温を、細い破線LWAlはアルミ製の鍋内の水温をそれぞれ示している。
【0047】
加熱を開始すると、各鍋の底部の温度LSUS,LAl及び各鍋内の水温LWSUS,LWAlは、上昇し、アルミ製の鍋の底部の温度LAlに基づいて、後述のようにして、鍋内の水が沸騰状態となったことが検出される。この沸騰状態が検出された時点におけるアルミ製の鍋の底部の温度を沸騰温度TBAlとして示している。次に、ステンレス製の多層鍋の底部の温度LSUSに基づいて、同様にして沸騰状態が検出され、その時点のステンレス製の多層鍋の底部の温度を沸騰温度TBSUSとして示している。
【0048】
更に、加熱を続けると、各鍋の底部LSUS,LAlの温度は安定し、先ず、アルミ製の鍋の底部の温度LAlに基づいて、後述のようにして平衡状態となったことが検出され、次に、ステンレス製の多層鍋の底部の温度LSUSに基づいて、同様にして平衡状態となったことが検出され、それぞれ各検出時点における各鍋の底部の温度LAl,LSUSが、平衡温度TαAl,TαSUSとして示されている。
【0049】
なお、平衡状態を検出した後は、後述する、本実施形態の煮込み調理モードと同様の火力の切替え制御を行っている。
【0050】
この図4に示すように、各鍋の底部の温度LSUS,LAlは、相違しており、沸騰状態を検出した時点の沸騰温度TBAl,TBSUS、及び、平衡状態を検出した時点の平衡温度TαAl,TαSUSも相違している。この例では、ステンレス製の多層鍋の平衡温度TαSUSは、110℃であり、アルミ製の鍋の平衡温度TαAlは、102℃である。
【0051】
このように各鍋の底部の温度LSUS,LAlは、相違しているのに対して、破線で示される各鍋の水温LWSUS,LWAlは、昇温中は相違しているものの、平衡状態を検出した平衡温度TαAl,TαSUS付近では、略一致して100℃となっている。すなわち、ステンレス製の多層鍋及びアルミ製の鍋のいずれの鍋も、その底部の温度LSUS,LAlに基づいて、平衡状態を検出した平衡温度TαSUS,TαAlの時点では、水温は、略同じ100℃となっている。
【0052】
そこで、この実施形態では、後述のように、鍋の底部の温度に基づいて、平衡状態を検出した後には、吹き零れを防止しつつ、軽い沸騰状態を維持するために、平衡状態を検出した時点の温度である平衡温度よりもやや低い第1,第2設定温度に基づいて、加熱を切替え制御し、鍋の底部の温度が、第1,第2設定温度に基づく温度範囲に制御するものである。
【0053】
具体的には、平衡状態を検出した後には、火力を弱め、鍋の底部の温度が、平衡温度よりも低い第2設定温度まで下降すると、火力を強め、鍋の底部の温度が、第2設定温度よりも高く、かつ、平衡温度よりも低い第1設定温度まで上昇すると、再び火力を弱め、鍋の底部の温度が、第2設定温度まで下降すると、再び火力を強め、以下、第1,第2設定温度になる度に、火力を、弱め又は強めに切替え制御し、これによって、鍋の底部の温度を、平衡温度よりも低い第1,第2設定温度に基づく温度範囲に制御するものである。
【0054】
この図4の例では、平衡温度TαAl,TαSUSが検出されると、その平衡温度TαAl,TαSUSよりも3℃低い温度を第1設定温度とし、この第1設定温度よりも1℃低い温度を第2設定温度としている。
【0055】
したがって、平衡温度TαSUSが、110℃であるステンレス製の多層鍋の場合は、107℃(=110−3)を第1設定温度、106℃(=107−1)を第2設定温度としており、ステンレス製の鍋の底部の温度LSUSが、106℃まで下降すると、火力を強め、鍋の底部の温度LSUSが、107℃まで上昇すると、火力を弱め、以下、106℃,107℃になる度に、火力を、強め、または、弱めに切替え制御し、これによって、鍋の底部の温度LSUSが、平衡温度110℃より低い第1,第2設定温度107℃,106℃に基づく温度範囲に制御される。
【0056】
同様に、平衡温度TαAlが、102℃であるアルミ製の鍋の場合は、99℃(=102−3)を第1設定温度、98℃(=99−1)を第2設定温度としており、アルミ製の鍋の底部の温度LAlが、98℃まで下降すると、火力を強め、鍋の底部の温度LAlが、99℃まで上昇すると、火力を弱め、以下、98℃,99℃になる度に、火力を、強め又は弱めに切替え制御し、これによって、鍋の底部の温度LAlが、平衡温度102℃より低い第1,第2設定温度99℃,98℃に基づく温度範囲に制御される。
【0057】
このように各鍋の底部の温度LSUS,LAlに基づいて、平衡状態を検出した後は、それぞれ各平衡温度TαSUS,TαAlに基づく第1,第2設定温度によって加熱が制御されるので、平衡温度TαSUS,TαAlを検出した後は、各鍋の底部の温度LSUS,LAlが、平衡温度よりも低い温度範囲に制御されることになる。これによって、図4に示すように、各鍋の水温LWSUS,LWAlは、約900秒を経過した頃から略98℃に維持されることが分かる。
【0058】
上記第1設定温度は、吹き零れを防止する上では、平衡温度より低い方がよいが、あまり低いと、煮込むことができなくなるので、平衡温度と第1設定温度との温度差は、例えば、7℃以内、好ましくは5℃以内、より好ましくは3℃以内である。また、第1設定温度と第2設定温度との温度差は、例えば、5℃以内、好ましくは3℃以内、より好ましくは1℃以内である。ただし、上記温度は、鍋種及び調理内容によって変更されるべきものである。
【0059】
以下、この実施形態の煮込み調理モードの制御について、図5に基づいて、説明する。
【0060】
図5は、煮込み調理モードが設定されて、加熱が開始された後の鍋の底部の検出温度の変化及び火力を示すものであり、横軸が時間を、縦軸が温度を示している。また、鍋内の水温変化のイメージを細い実線で併せて示している。
【0061】
先ず、煮込み調理モードが開始されると、温度センサ7aで検出される鍋の底部の検出温度が、制御開始温度、例えば80℃になるまでは、最初に使用者が加熱状態調節部12aを回動操作して設定した設定火力で加熱を行う。鍋の底部の検出温度が、80℃になると、使用者によって設定された設定火力を、制御用の火力である第1の火力に切替える。この第1の火力は、上述の5段階の火力「1」〜「5」の内、中程度の火力である火力「3」としている。
【0062】
この第1の火力である火力「3」による加熱を継続し、鍋の底部の検出温度に基づいて、鍋内の加熱対象物が沸騰状態となったことが検出されると、その検出時点t1から上述のタイマースイッチ18で設定されるタイマ時間の計測を開始する。沸騰状態を検出したときの鍋の底部の検出温度を、沸騰温度TBとして示している。
【0063】
この実施形態では、沸騰状態の検出は、温度センサ7aによる鍋の底部の検出温度が、所定温度、例えば1℃上昇するのに要する時間を計測し、その計測した時間が、所定時間、例えば40秒を超えた時に沸騰状態として検出するようにしている。
【0064】
沸騰状態が検出された後、更に、火力「3」での加熱を継続し、鍋の底部の検出温度に基づいて、検出温度が安定する平衡状態が検出されると、その検出時点t2で第1の火力である火力「3」を、火力の弱い第2の火力に切替える。この第2の火力は、上述の5段階の火力「1」〜「5」の内、最も弱い火力である火力「1」としている。
【0065】
この実施形態では、平衡状態の検出は、一定の判定期間毎、例えば30秒毎に、その30秒の判定期間の終了時点の鍋の底部の検出温度Teから開始時点の鍋の底部の検出温度Tbを差し引いた温度差ΔT(=Te−Tb)が、所定温度範囲、例えば−2℃以上であって+2℃以下の温度範囲(−2℃≦ΔT≦+2℃)となったときに、平衡状態を検出したとして、その判定期間の終了時点の鍋の底部の検出温度Teを平衡温度Tαとしている。
【0066】
この平衡状態の検出は、鍋の底部の検出温度が、上記制御開始温度である80℃になった時点から開始され、例えば30秒毎に平衡状態になったか否かが判定される。
【0067】
なお、この平衡温度Tαは、判定期間の終了時点の鍋の底部の検出温度Teに代えて、判定期間の開始時点の鍋の底部の検出温度Tbとしてもよい。特に、平衡温度の検出後に温度が略平坦となってからの検出温度は、風や供給ガス圧の変動など外乱の影響を受け、上昇や下降を繰り返すことから、判定期間の終了時点の検出温度Teを平衡温度Tαとしても開始時点の検出温度Tbを平衡温度Tαとしてもよい。
【0068】
平衡状態を検出した時点t2で火力を、火力「3」から火力「1」へ弱めることによって、図5に示すように、鍋の底部の検出温度が下降し、平衡温度Tαよりも低い第2設定温度T2まで下降すると、その時点t3で火力「1」を、この火力「1」よりも強く、かつ、火力「3」と同じか弱い第3の火力に切替える。この実施形態では、この第3の火力は、上述の第1の火力と同じ火力「3」としている。
【0069】
このように第2設定温度T2になると、火力「3」に切替えて火力を強くするので、図5に示すように、鍋の底部の検出温度が再び上昇する。鍋の底部の検出温度が、平衡温度Tαよりも低く、かつ、第2設定温度T2よりも高い第1設定温度T1になると、その時点t4で火力「3」を、弱い火力「1」に再び切替える。
【0070】
以後は、同様にして、鍋の底部の検出温度が第2設定温度T2まで下降したら再び火力を火力「3」に切替え、第1設定温度T1まで上昇したら再び火力を火力「1」に切替え、鍋の底部の検出温度が、平衡温度Tαよりも低い第1,第2設定温度T1,T2に基づく温度範囲に制御される。
【0071】
なお、火力を切替えた直後には、鍋の底部の検出温度が、第1設定温度T1を上回るオーバーシュートや第2設定温度T2を下回るアンダーシュートが生じるので、前記温度範囲は、第1,第2設定温度T1,T2を上下限とする温度範囲よりはやや広くなっている。
【0072】
このように鍋の底部の検出温度が、平衡温度Tαよりも低い第1,第2設定温度T1,T2に基づく温度範囲に制御されている間に、沸騰温度の検出時点t1から計測を開始したタイマ時間が、設定したタイマ時間になると、すなわち、タイムアップすると、ブザーによって報知し、ガスコンロ部2aは自動消火して煮込み調理モードを終了する。使用者は、加熱状態調節部12aを押し込んで器具栓をOFFにし、電源スイッチ13を押して電源を切る。
【0073】
この実施形態では、平衡温度Tαよりもa℃低い第1設定温度T1(=Tα−a)、及び、この第1設定温度T1よりもb℃低い第2設定温度T2(T2=T1−b)を、上述の煮込み用のメニュースイッチ22の操作によって選択することができ、煮込み火力を「強め」、「標準」、「弱め」のいずれを選択するかに応じて次のように設定される。
【0074】
すなわち、「強め」が選択された場合には、例えば、a℃=1℃、b℃=1℃とし、「標準」が選択された場合には、例えば、a℃=3℃、b℃=1℃とし、「弱め」が選択された場合には、例えば、a℃=5℃、b℃=1℃とする。
【0075】
例えば、平衡温度Tαが、例えば105℃であるとすると、「強め」が選択された場合には、第1設定温度T1は、104℃(=105−1)となり、第2設定温度T2は、103℃(=104−1)となる。この場合、鍋の底部の検出温度が、104℃になると、火力「3」を火力「1」に切替え、103℃になると、火力「1」を火力「3」に切替え、以下、同様にして、第1設定温度104℃または第2設定温度103℃になる度に火力が切替えられ、鍋の底部の検出温度が、平衡温度105℃より低い第1,第2設定温度104℃,103℃に基づく温度範囲に制御される。
【0076】
また、「標準」が選択された場合には、第1設定温度T1は、102℃(=105−3)となり、第2設定温度T2は、101℃(=102−1)となる。この場合、鍋の底部の検出温度が、102℃になると、火力「3」を火力「1」に切替え、101℃になると、火力「1」を火力「3」に切替え、以下、同様にして、第1設定温度102℃または第2設定温度101℃になる度に火力が切替えられ、鍋の底部の検出温度が、平衡温度105℃より低い第1,第2設定温度102℃,101℃に基づく温度範囲に制御される。
【0077】
更に、「弱め」が選択された場合には、第1設定温度T1は、100℃(=105−5)となり、第2設定温度T2は、99℃(=100−1)となる。この場合、鍋の底部の検出温度が、100℃になると、火力「3」を火力「1」に切替え、99℃になると、火力「1」を火力「3」に切替え、以下、同様にして、第1設定温度100℃または第2設定温度99℃になる度に火力が切替えられ、鍋の底部の検出温度が、平衡温度105℃より低い第1,第2設定温度100℃,99℃に基づく温度範囲に制御される。
【0078】
なお、図5では、「標準」が選択された場合の例を示している。
【0079】
上述のように、鍋の底部の検出温度に基づいて、平衡状態が検出される平衡温度Tαでは、鍋の材質によらず、鍋内の加熱対象物は、略100℃程度の温度となっているので、平衡状態を検出した後は、鍋の底部の検出温度を、平衡温度Tαより低い第1,第2設定温度に基づく温度範囲に制御することによって、鍋内の加熱対象物は、吹き零れることなく、軽い沸騰状態に維持されてクツクツと煮込まれることになり、従来のように、使用者が、吹き零れしないように監視しながら火力を手動で調節する必要がなく、煮込み調理を自動で行うことができる。
【0080】
なお、煮込み調理モードの実行中に、使用者が、加熱状態調節部12aを押し込んで、ガスコンロ部2aを消火するか、電源スイッチ13を押して電源を切るか、あるいは、鍋の底部の検出温度が、焦げ付きを防止する安全機能として設定しているハイカット温度、例えば、150℃を超えた場合にも、ガスコンロ部2aは自動消火して煮込み調理モードは中止される。
【0081】
煮込み調理モードの実行中に、加熱対象物、例えば、具材、調味料や水を鍋に追加投入すると、鍋の底部の検出温度が下降するが、この実施形態では、鍋の検出温度が、所定温度であるリセット温度、例えば、70℃まで下降するか否かによって、制御を異ならせている。
【0082】
すなわち、煮込み調理モード実行中に、鍋に具材や調味料を追加投入し、鍋の検出温度が下降しても、リセット温度である70℃まで下降しないときには、上述のようにして設定した第1,第2設定温度T1,T2による加熱制御を継続する。
【0083】
例えば、味噌汁を作ろうとする場合は、煮込み用のメニュースイッチ22を押して煮込み調理モードを設定すると共に、「弱め」の煮込み火力を設定し、加熱状態調節部12aを押し操作して、ガスコンロ部2aを点火する。これによって、煮込み調理モードによる制御が開始され、平衡状態が検出されると、その検出時点の温度を平衡温度Tαとし、この平衡温度Tαに基づいて、上述のように設定される第1,第2設定温度T1,T2によって加熱を制御する。調理途中で、鍋の中に野菜などの具材や味噌を追加投入したとしても、図6に示すように、鍋の底部の検出温度が70℃以下に下がらない場合は、その調理終了迄、一旦設定した、第1,第2設定温度T1,T2による加熱の制御を継続する。
【0084】
一方、煮込み調理モード実行中に、鍋に水や多量の具材を追加して、鍋の底部の検出温度が、リセット温度である70℃以下に下降した場合には、一旦設定した第1,第2設定温度による加熱の制御をクリアし、再度、平衡状態を検出し、その検出時点の平衡温度に基づいて、第1,第2設定温度を再設定し、再設定した第1,第2設定温度による加熱の制御を改めて実行する。
【0085】
例えば、クリームシチューを作ろうとする場合は、じゃが芋や玉ねぎや、人参などの野菜を大きめに切り、鶏ガラスープか、水と調味料(コンソメキューブ等)と共に鍋に入れる。次、煮込み用のメニュースイッチ22を押して、煮込み調理モードを設定すると共に、「強め」の煮込み火力を設定し、加熱状態調節部12aを押し操作して、ガスコンロ部2aを点火する。これによって、煮込み調理モードによる制御が開始され、図7に示すように、平衡状態が検出されると、その検出時点t2の温度を平衡温度Tαとし、設定された第1,第2設定温度T1,T2による加熱の制御が実行される。
【0086】
煮込み調理モードの途中で、鍋の中に、クリームソース(バター、小麦粉、牛乳で作成)を追加し、鍋の底部の検出温度が、リセット温度である70℃以下に下降した場合には、一旦設定した第1,第2設定温度T1,T2による加熱の制御は一旦クリアされ、再度、鍋の底部の検出温度が、制御開始温度である80℃になるまで、使用者が加熱状態調節部12aを回動操作して設定した設定火力で、加熱し、その後、検出温度が80℃に到達すると、上述のように火力「3」に切替えられ、再度、平衡状態が検出され、平衡状態を検出した時点t7の鍋の底部の検出温度を平衡温度Tα´として第1,第2設定温度T1´,T2´を再設定し、再設定した第1,第2設定温度T1´,T2´による加熱の制御を実行する。
【0087】
また、タイマ時間が設定されている場合には、鍋の底部の検出温度が、リセット温度である70℃以下に下降すると、その時点t5でタイマ時間の計測もクリアされ、再度、沸騰温度TB´を検出し、その検出時点t6から改めて設定されているタイマ時間の計測を開始する。
【0088】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、標準火力のガスコンロ部2aに適用して説明したが、高火力のガスコンロ部2bや小火力のガスコンロ部2cに適用することもできる。
【0089】
上述の実施形態では、火力を5段階にしたが、5段階に限らず、任意であり、また、火力の切替えも火力「1」と火力「3」に限らない。
【0090】
沸騰状態及び平衡状態の検出は、上述の実施形態に限らず、他の方法で検出してもよい。
【0091】
上記実施形態では、ガスバーナによって調理容器を加熱したが、ガスバーナに限定されるものではなく、電気ヒータ、IHヒータ等を用いるなどの種々の加熱調理器に適用可能である。
【0092】
また、加熱調理器は必ずしもビルトインタイプに限られるものではなく、卓上型の加熱調理器であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
2a〜2c ガスコンロ部
3 グリル
7a〜7c 温度センサ
11 制御部
12a〜12c 加熱状態調節部
17 ガスコンロ用調理設定入力部
18 タイマースイッチ
22 煮込み調理用メニュースイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7