特許第6117534号(P6117534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117534
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】多気筒内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/14 20160101AFI20170410BHJP
   F02M 26/13 20160101ALI20170410BHJP
   F01N 13/10 20100101ALI20170410BHJP
   F01P 3/02 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   F02M26/14
   F02M26/13
   F01N13/10
   F01P3/02 F
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-262946(P2012-262946)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-109205(P2014-109205A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】頼實 浩一
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−006818(JP,A)
【文献】 特開2012−047143(JP,A)
【文献】 特開2008−057360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/00−74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有するシリンダブロックに重なるシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの側面に重ね固定された排気マニホールドとを有しており、前記シリンダヘッドの一側面に、前記複数の気筒に対応した複数の排気ポートが気筒の並び方向に開口している一方、前記排気マニホールドは、前記各排気ポートに連通する複数の枝管と、隣り合った枝管に繋がると共に前記への一側面に重なったフランジとを有している構成であって、
前記排気マニホールドとシリンダヘッドとの合わせ面の箇所のうち前記枝管の群の上側の部位に、前記排気マニホールドの各枝管から上向きに延びるEGR枝通路と、各EGR枝通路が連通して前記各排気ポート及び枝管の並び方向に沿って延びるEGR集合通路とが、前記排気マニホールドのフランジに溝を設けることによって形成されており、更に、前記シリンダヘッドの内部に、前記EGR集合通路に沿って延びる冷却水通路を設けている、
多気筒内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、排気ガスを吸気系に還流させるEGR装置を備えた多気筒内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
EGR装置に関する1つの要請としてコンパクト化がある。この点については、本願出願人が特許文献1に開示したように、EGR通路をシリンダヘッドに設けることが行われている。また、EGR装置の他の要請としてEGRガスの冷却の問題があり、この点について特許文献2には、EGRクーラとして機能するアダプタをシリンダヘッドと排気マニホールドとの間に介在させて、アダプタで冷却された排気ガスの一部をEGRガスとして取り出すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−43096号公報
【特許文献2】特開2011−236849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1はシリンダヘッドをEGR通路として利用するものであるため、その目的のとおりコンパクト化を実現できる利点があるが、1つの排気ポートからしかEGRガスを取り出していないため、大量のEGRガスを必要とする場合に、応答性が悪くなる可能性が懸念される。
【0005】
他方、特許文献2はアダプタとは別にEGR通路となる配管が必要であるため、コンパクト化には貢献しない。また、排気ガスを冷却することはできるが、特別な部品としてのアダプタを必要とするため、コストが嵩む問題が新たに発生する。また、排気ガスの浄化に使用される触媒は排気ガスが高温であるほど効果を発揮するが、特許文献2ではアダプタによって排気ガスの全体が冷却されるため、排気ガスの浄化効率が低下するおそれも懸念される。
【0006】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、内燃機関の構成要素を利用してEGR通路を形成するという思想は特許文献1を踏襲しつつ、EGRガス量の増大や冷却性能アップという要請にも的確に応えることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の内燃機関は、複数の気筒を有するシリンダブロックに重なるシリンダヘッドと、前記シリンダヘッドの側面に重ね固定された排気マニホールドとを有しており、前記シリンダヘッドの一側面に、前記複数の気筒に対応した複数の排気ポートが気筒の並び方向に開口している一方、前記排気マニホールドは、前記各排気ポートに連通する複数の枝管と、隣り合った枝管に繋がると共に前記への一側面に重なったフランジとを有している、という基本構成である。
【0008】
そして、前記排気マニホールドとシリンダヘッドとの合わせ面の箇所のうち前記枝管の群の上側の部位に、前記排気マニホールドの各枝管から上向きに延びるEGR枝通路と、各EGR枝通路が連通して前記各排気ポート及び枝管の並び方向に沿って延びるEGR集合通路とが、前記排気マニホールドのフランジに溝を設けることによって形成されており、更に、前記シリンダヘッドの内部に、前記EGR集合通路に沿って延びる冷却水通路を設けている。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、EGR通路は排気マニホールドとシリンダヘッドとの合わせ面に形成したものであるため、特許文献1と同様にコンパクト化の要請に的確に応えることができる。また、EGRガスは各排気ポートから取り出すものであるため、EGRガスの増大要請に対しても的確に対応できる。
【0011】
更に、シリンダヘッドにはEGR集合通路に沿って延びる冷却水通路が形成されていて、この冷却水通路でEGRガスを冷却できるため、EGRクーラを使用することなくEGRガスを的確に冷却することが可能になる。
【0012】
更に、本願発明では冷却水通路で冷却されるのはEGRガスのみであり、排気ポートから排気通路に排出された排気ガスは冷却されていないため、浄化装置の触媒をしっかりと機能させて高い排気ガス浄化性能を確保することができる。
また、排気マニホールドに溝状に形成することでEGR枝通路及びEGR集合通路を設けると、それらEGR枝通路及びEGR集合通路の外面の面積が大きくなるため、放熱性を向上できる利点がある。また、外向き突出した溝条がリブ効果を発揮することで排気マニホールドの剛性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】内燃機関の大まかに表示した平面図である。
図2図1のII-II 視側面図である。
図3】(A)は図2のA−A視断面図、(B)は図2のB−B視断面図、(C)は図2のC−C視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1).第1実施形態
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1〜3に示す第1実施形態を説明する。内燃機関の基本構成は従来から知られているものであり、図1,2のとおり、内燃機関は、主要要素してシリンダブロック1と、これにガスケットを介して重ね固定されたシリンダヘッド2とを有している。
【0015】
本実施形態の内燃機関は3気筒であり、シリンダブロック1にはピストン(図示せず)が往復動する3つのシリンダボア3を有している一方、シリンダヘッド2には、シリンダボア3に向けて開口した凹所4が形成されており、各凹所4には、吸気ポート5の一対ずつの出口5aと排気ポート6の一対ずつの入口6aとが開口している。吸気ポート5と排気ポート6とは、気筒例方向(クランク軸の軸線方向)に長い中心線7を挟んだ両側に対称状に配置されている。
【0016】
各排気ポート6は2つの入口6aを1つの出口6bに集合させた形態であり、出口6bはシリンダヘッド2の一側面2aに開口している。一方、各吸気ポート5は1つの入口5bから分岐した2つの出口5aを有する形態であり、入口5bはシリンダヘッド2の他側面2bに開口している。シリンダヘッド2の他側面2bには、3つの枝部9aとこれが集まった集合部(図示せず)とを有する吸気マニホールド9が固定されている。
【0017】
シリンダヘッド2の一側面2aには、排気マニホールド8が固定されている。排気マニホールド8は3つの排気ポート6に連通した3つの枝管路10と、これらが集まった集合管路11とを有している。集合管路11の先端は下向きになっており、その先端に触媒式浄化装置12が接続されている。図示していないが、浄化装置12の終端には排気通路(排気管)が接続されている。
【0018】
図2に示すように、排気マニホールド8は隣り合った枝管10に繋がったフランジ13を有している。フランジ13は枝管10の群の上下両側に張り出しており、枝管10の並び方向に沿って一連に長く延びている。フランジ13は、ボルト14でシリンダヘッド2に固定されている。
【0019】
そして、排気マニホールド8の上側のフランジ13に、各枝管10に連通して上向きに向かうEGR枝通路15と、各EGR枝通路15が連通した1本のEGR集合通路16とを形成している。これらEGR枝通路15とEGR集合通路16とは、排気マニホールド8のフランジ13に外向き膨出部(リブ)を形成して、この外向き膨出部によって形成された溝をシリンダヘッド2で塞ぐことで形成されている。従って、正確には、EGR枝通路15とEGR集合通路16とは、排気マニホールド8とシリンダヘッド2とによって構成されている。
【0020】
EGR集合通路16は、枝管10の並び方向(気筒列方向)に長く延びてから先端部は下向きに方向を変えており、下向き部(上下長手部)16aの先端(下端)は、シリンダヘッド2に形成したEGR内部通路17に連通している。EGR内部通路17は気筒列を横切る方向に長い形態であり、シリンダヘッド2の他側面2bに開口している。シリンダヘッド2の他側面2bには、EGR内部通路17に連通したEGRバルブ18(図1参照)を固定している。
【0021】
EGRガスは、EGR内部通路17、EGRバルブ18を通って吸気系(例えばサージタンク、吸気マニホールド9の集合部、或いは吸気マニホールド9における各枝部9aなど)に導入され、最終的に吸気ポート5から気筒に還流する。
【0022】
シリンダヘッド2の内部には冷却水通路が縦横に走っているが、EGR集合通路16のための冷却水通路として、図3に示すように、シリンダヘッド2には、EGR集合通路16のうち横長の部分に沿って長く延びる第1冷却水通路19と、EGR集合通路16のうち下向き部16aの箇所に位置した第2冷却水通路20とを設けている。図示してないが、シリンダヘッド2は、EGR内部通路17に近接した冷却水通路も備えている。
【0023】
以上のとおり、本実施形態では、複数の排気ポート6の各々からEGRガスが取り出されるため、EGRガスの増大要請にも的確に対応できる。また、各排気ポート6からEGRガスが均等に取り出されることにより、排気ガスの流れを乱れなくスムースなものにすることができる。
【0024】
また、内燃機関に必須の要素としての排気マニホールド8を利用してEGR枝通路15とEGR集合通路16とを形成したものであるため、別部材としてのアダプタを使用したものに比べて大幅にコンパクト化できると共に、コストアップも抑制できる。図示していないが、排気マニホールド8とシリンダヘッド2との間には、シール材(ガケスット)を介在させるのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本願発明は実際に内燃機関に適用できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0030】
2 シリンダヘッド
6 排気ポート
8 排気マニホールド
10 枝管
11 集合管
12 浄化装置
15 EGR枝通路
16 EGR集合通路
17 EGR内部通路
18 EGRバルブ
19 冷却水通路
図1
図2
図3