(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117552
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】生活習慣病判定支援装置および生活習慣病判定支援システム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20170410BHJP
A61B 5/00 20060101ALN20170410BHJP
A61B 5/145 20060101ALN20170410BHJP
【FI】
G01N33/50 G
!A61B5/00 N
!A61B5/14 310
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-288643(P2012-288643)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130096(P2014-130096A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591167430
【氏名又は名称】株式会社KRI
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰久
【審査官】
三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−122788(JP,A)
【文献】
特開2000−009727(JP,A)
【文献】
特開2000−074914(JP,A)
【文献】
特開2002−172105(JP,A)
【文献】
特開2009−136456(JP,A)
【文献】
特表2003−524187(JP,A)
【文献】
特開平09−005322(JP,A)
【文献】
特表2008−512687(JP,A)
【文献】
特表2013−520665(JP,A)
【文献】
姫野亜紀裕,ステロイドホルモンと脂質代謝−最近の進歩と臨床の新展開−8.肥満症における唾液中コルチゾール濃度モニタリングの意義について−脂質代謝異常との関連も含めて−,Lipid,2012年 1月20日,Vol.23 No.1,Page.67-73
【文献】
Marchetti P,Salivary insulin concentrations in type 2 (non-insulin-dependent) diabetic patients and obese non-diabetic subjects: relationship to changes in plasma insulin levels after an oral glucose load,Diabetologia,1986年,Vol.29 No.10,Page.695-698
【文献】
並木達也,ヒト唾液に分泌される尿酸の動態解明,衛生薬学・環境トキシコロジー講演要旨集,2002年,Vol.2002,Page.70
【文献】
稲葉大輔,メタボリックシンドロームと唾液中歯周病マーカーレベルの関連性,臨床病理,2007年,Vol.55 補冊,Page.162 O-063
【文献】
MAMALI Irene,Measurement of salivary resistin, visfatin and adiponectin levels,Peptides,2012年 1月,Vol.33 No.1,Page.120-124
【文献】
YAMAGUCHI Masaki,Salivary Sensors for Quantification of Stress Response Biomarker,電気化学および工業物理化学,2011年,Vol.79 No.6,Page.442-446
【文献】
TOWNSEND S,Salivary Analysis of Drugs-Potential and Difficulties,Anal Lett,2008年,Vol.41 No.4/6,Page.925-948
【文献】
岩本喜久生,TDMへの唾液試料乗りよう その有用性と問題点,TDM研究,1994年 1月,Vol.11 No.1,page.4-6
【文献】
血液中及び唾液中コルチゾール・コルチゾン測定の臨床的意義に関する検討−肥満を伴う2型糖尿病男性患者の分析から−,「メタボリックシンドローム」 Journal of Metabolic Syndorome,2008年 4月30日,Vol.4 No.1,Page.18-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/50
A61B 5/00
A61B 5/145
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
唾液中のアミラーゼを測定して得られた第一唾液データを取得するデータ取得部と、
唾液中のアミラーゼと、血液を測定して得られたトリグリセライドとの間の相関関係に関する第一相関データを予め格納している相関データ格納部と、
前記データ取得部で取得した前記第一唾液データと、前記相関データ格納部に格納されている前記第一相関データに基づいて、生活習慣病を判定する判定部と、
前記判定部で判定された生活習慣病を前記第一唾液データと関連づけて保存する管理部と、
前記管理部で保存されているデータを情報処理装置へ出力する出力部とを有する、生活習慣病判定支援装置。
【請求項2】
前記相関データ格納部は、唾液中のIgAと唾液のpHとの間の相関関係に関する第二相関データおよび/または唾液中のIgAと唾液中のアミラーゼとの間の相関関係に関する第三相関データを、さらに予め格納しており、
前記判定部は、前記第一唾液データと、前記第一相関データと、前記第二相関データおよび/または前記第三相関データに基づいて、生活習慣病を判定する、請求項1に記載の生活習慣病判定支援装置。
【請求項3】
前記相関データ格納部は、唾液中のIgAと血液中の尿酸との相関関係に関する第四相関データをさらに格納し、
前記唾液中のIgAと血液中の尿酸の相関関係において、
唾液のpHが平均よりも高い値である高群で、平均よりも低い値である低群より高い相関関係を有し、
唾液中のアミラーゼが平均よりも低い値である低群で、平均よりも高い値である高群より高い相関関係を有し、
唾液中の酸化還元電位が平均よりも低い値である低群で、平均よりも高い値である高群より高い相関関係を有し、および/または、
血液中の血糖値が平均よりも低い値である低群で、平均よりも高い値である高群より高い相関関係を有する、請求項1または2に記載の生活習慣病判定支援装置。
【請求項4】
前記出力部が、無線方式でデータを情報処理装置へ出力する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生活習慣病判定支援装置。
【請求項5】
前記データ取得部が、唾液測定器からの出力データを直接取得するように、当該唾液測定器と電気的に接続可能な入力インターフェースを有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生活習慣病判定支援装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の生活習慣病判定支援装置と、
前記生活習慣病判定支援装置を構成する出力部との間で無線方式でデータを送受信するスマートフォンまたはタブレット端末とを有する生活習慣病判定支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液検査および血液検査の相関結果に基づいて、生活習慣病の判定を支援する支援装置および支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、体液(血液、尿、唾液など)の酸化還元電位を測定し、病気や痛みの度合いを数値化し、健康値と疾病値の数値ゾーンを示して、被験者の健康と酸化還元電位値の健康目安を示すことが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、脂溶性ビタミンなどの生体内移行を唾液から測定することが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
また、血液と唾液中のそれぞれのヒト脳型プロスタグランジンD合成酵素の濃度を測定し、虚血性疾患の検出をすることが知られている(特許文献3参照)。
【0005】
また、従来の唾液検査の問題点として、日内変動、日間変動、個人差が大きいと考えられている。また、口腔内病変の影響も受けることがあり、血液検査のように唾液検査のデータのみでは基準が決めにくいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−207037
【特許文献2】WO2005−085843
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1から3は唾液と血液中の同じ成分を測定しており、同じ成分同士での相関を見ているにすぎず、唾液中の成分と異なる血液の成分とを測定しておいて、それらの相関を求めるものではない。
【0008】
また、近年、家庭内において、生活習慣病の予防として日々の体調を判定したり、体調管理をするなどの簡単な支援が要望されている。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、簡便な唾液検査と血液検査の相関関係に基づいて生活習慣病などを簡便に判定し、体調管理を簡単に支援する生活習慣病判定支援装置および支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下の本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明の生活習慣病判定支援装置は、唾液中の成分または物性を測定して得られた、1種または2種以上の成分または物性の唾液データを取得するデータ取得部と、唾液中に含まれる1種または2種以上の成分または物性と、血液を測定して得られた1種または2種以上の成分との間の相関関係に関する相関データを予め格納している相関データ格納部と、前記データ取得部で取得した唾液データと、前記相関データ格納部に格納されている前記相関データに基づいて、生活習慣病を判定する判定部と、前記判定部で判定された生活習慣病を前記唾液データと関連づけて保存する管理部と、前記管理部で保存されているデータを情報処理装置へ出力する出力部とを有する。
【0011】
この構成によって、簡便な唾液検査と血液検査の相関関係に基づいて生活習慣病などを簡便に判定し、体調管理を簡単に支援することができる。
【0012】
上記本発明の一実施形態として、前記相関データは、唾液中の成分または物性の内1種または2種以上と、血液を測定して得られた成分の内1種または2種以上との相関関係から得られたデータである。相関データを求める手法として、回帰分析、多変量解析などが挙げられる。多変量解析は、例えば、重回帰分析、主成分分析、独立成分分析、因子分析、クラスター分析、構造方程式モデリング(共分散構造分析の一種)が挙げられる。相関係数として、ピアソンの相関係数、スピアマンの順位相関係数、ケンドールの順位相関係数が例示される。例えば、唾液データの1種成分と、血液の1種成分とから相関データを求めてもよく、唾液データの2種以上成分と、血液の1種成分あるいは2種以上成分とから相関データを求めてもよく、唾液データの1種成分と、血液の2種以上成分とから相関データを求めてもよい。
【0013】
上記本発明の一実施形態として、前記出力部が、無線方式でデータを情報処理装置へ出力する。
【0014】
上記本発明の一実施形態として、前記データ取得部が、唾液測定器からの出力データを直接取得するように、当該唾液測定器と電気的に接続可能な入力インターフェースを有する。
【0015】
また、他の発明の生活習慣病判定支援システムは、上記の生活習慣病判定支援装置と、前記生活習慣病判定支援装置を構成する出力部との間で無線方式でデータを送受信するスマートフォンまたはタブレット端末とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1の生活習慣病判定支援装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
本実施形態1の生活習慣病判定支援装置2について、
図1を用いて説明するが、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0018】
生活習慣病判定支援装置2は、例えば、コンピュータ、専用回路、ファームウエアを備えた装置で構成できる。相関データ格納部、管理部は、例えば、記憶媒体(各種メディア)、コンピュータのHDDなどで構成してもよい。判定部は、例えば、コンピュータのCPU、メモリなどのハードウエア構成およびソフトウエアプログラムとの組合構成、専用回路、ファームウエアなどで構成してもよい。
【0019】
データ取得部21は、唾液中の成分または物性を唾液測定器で測定して得られた、1種または2種以上の成分または物性の唾液データを取得する。データ取得部21は、唾液測定器1からの出力データを直接取得するように、当該唾液測定器と電気的に接続可能な入力インターフェースを有する。
【0020】
唾液測定器1としては、例えば、pH測定器、アミラーゼ測定器、粘度計、唾液量測定器、IgA測定器、酸化還元電位測定器、コルチゾール測定器、クロモグラニンA測定器などが挙げられる。唾液測定器は、上記各種測定器の内2種以上が一体となったデバイス、測定キットとして構成されていてもよい。
【0021】
また、別実施形態として、データ取得部21は、タッチパネルなどの手入力によって唾液データを取得してもよく、音声認識手段によって唾液データを取得してもよく、無線通信で取得してもよい。
【0022】
相関データ格納部221は、唾液中に含まれる1種または2種以上の成分または物性と、血液を測定して得られた1種または2種以上の成分との間の相関関係に関する相関データを予め格納している。
【0023】
唾液中の成分または物性(唾液の検査成分)は、例えば、pH,アミラーゼ、IgA、酸化還元電位、唾液自体の粘度、唾液量、コルチゾール、クロモグラニンA(CgA)などが挙げられる。
【0024】
血液を測定して得られた成分(血液の検査成分)は、例えば、血糖値、血圧、尿酸値、HDLコレステロール、トリグリセライドなどが挙げられる。
【0025】
相関データは、例えば、唾液のアミラーゼと血液のトリグリセライド、唾液のIgAと血液の尿酸、唾液のpHと血液のトリグリセライド、唾液のアミラーゼと血圧が挙げられる。相関データ格納部221に格納されている相関データの一例としては、唾液の各成分の数値に対する生活習慣病の種類、その程度(重篤度)(例えば、正常、予備軍、精密検査必要、経過観察、生活習慣病の可能性が低、中、高など)などの判定結果を有する。また、相関データには、測定者個人の唾液特性が考慮されている方が望ましい。(唾液は個人差が大きいため)さらに、相関データには、血液に関する各種データが生活習慣病に関連付けられて含まれていてもよい。唾液と血液との相関関係については、後述する。
【0026】
また、相関データは、唾液の成分(または物性)同士の相関関係のデータを含み、例えば、IgAとpH、IgAとアミラーゼなどの相関関係のデータが挙げられる。
【0027】
判定部22は、データ取得部21で取得した唾液データと、相関データ格納部221に格納されている相関データに基づいて、生活習慣病を判定する。判定部22は、予め設定されている相関データと唾液データとから生活習慣病を判定する。
【0028】
判定部22は、例えば、回帰分析における回帰線(相関データの一種)と唾液データとを比較し、重篤度を判定する。唾液データ(例えば、アミラーゼ)が回帰線(アミラーゼとトリグリセライドとの相関データ)から10%未満の範囲に入っていれば、「生活習慣病(例えば高脂血症)の可能性が高い」と判定し、唾液データが回帰線から10%以上20%未満の範囲内に入っていれば、「生活習慣病(例えば高脂血症)の可能性が中程度」と判定し、唾液データが回帰線から20%以上30%未満の範囲内に入っていれば、「生活習慣病(例えば高脂血症)の可能性が低い」と判定するように構成できる。また、判定部22は、他の判定手法を取ることもできる。
【0029】
管理部222は、管理データを保存する。管理データは、少なくとも判定部22で判定された生活習慣病を前記唾液データとが関連づけられている。また、管理部222は、管理データとして、ユーザ情報(氏名、年齢、性別、病歴など)と、唾液データ(検査日、データ取得日、検査値など)、判定結果(生活習慣病とその程度、ストレスとその程度)などを関連付けて保存することが好ましい。
【0030】
(食事、運動、休養の管理・支援)
高脂血症に関して、異常値(正常値以外)判定がなされた場合には、その程度に応じて、動物性脂肪の摂取量(減らす方向)、コレステロール食品の摂取量(減らす方向)、食物繊維を摂取量(増やす方向)、ビタミンの摂取量(増やす方向)などの食事に関するアドバイスや支援をおこなう。痛風に関して、異常値(正常値以外)判定がなされた場合には、その程度に応じて、水分摂取量(増やす方向)、塩分摂取量(減らす方向)、アルコール摂取量(減らす方向)などの食事に関するアドバイスや支援をおこなう。運動、休養についても、それぞれの異常値の程度に応じて、アドバイスや支援をおこなう。
【0031】
管理部222は、判定結果に応じて、上記食事、運動、休養などのアドバイス(あるいは支援内容)も管理データとして含んでいる。これによって、後述する出力部23によって管理データが情報処理装置へ出力されて、ユーザが確認できるようになる。ユーザは、判定結果と上記アドバイス・支援を簡便に確認できる。
【0032】
出力部23は、管理部222で保存されている管理データを(外部の)情報処理装置3へ出力する。出力部23が、無線方式でデータを情報処理装置3へ出力することが好ましい。無線方式としては、例えば、短距離通信、Bluetooth(商標登録)などが挙げられる。また、有線方式の場合には、専用回線、USB通信、RS−232C等が挙げられる。
【0033】
(実施形態2)
生活習慣病判定支援システムは、実施形態1の生活習慣病判定支援装置と、生活習慣病判定支援装置を構成する出力部との間で無線方式でデータを送受信するスマートフォンまたはタブレット端末とを有する。スマートフォンなどには、専用アプリケーションを予めインストールしておき、その専用アプリケーションを起動させて、自動的に生活習慣病判定支援装置と通信し、管理データを受信するように構成できる。受信した管理データは、表示画面に表示される。スマートフォンまたはタブレット端末を利用することで、家庭内で生活習慣病やストレスなど管理、判定支援を簡便に行えるため好ましい。
【0034】
本実施形態1,2では、pHまたはアミラーゼから高脂血症を判定できる。また、pHとアミラーゼに基づいて同じ高脂血症を判定できるが、いずれか一方の指標でのみ高脂血症が判定された場合には、低いレベルで高脂血症性であると判定され、両指標で高脂血症が判定された場合には、高いレベルで高脂血症性であると判定することができる。すなわち、異なる2指標を用いて段階的に判定をすることができる。
【0035】
また、IgAから通風が判定でき、アミラーゼから高血圧であるか否かを判定できる。
【0036】
また、pHとIgAあるいはアミラーゼとIgAの相関関係から、pHまたはアミラーゼに基づいて通風を判定できる。また、pHまたはアミラーゼに基づいて(IgAとの相関関係を介して)同じ痛風が判定できるが、いずれか一方の指標でのみ通風が判定された場合には、低いレベルで通風であると判定され、両指標で痛風が判定された場合には、高いレベルで通風であると判定することができる。これによればIgAの測定をすることなく、通風を判定できる。
【0037】
また、pHとIgAあるいはアミラーゼとIgAの相関関係から、IgAからも高脂血症を判定できる。すなわち、3指標に基づいて高脂血症を判定することができる。
【0038】
以上本実施形態1,2によれば、血液検査によらず、唾液に関する測定結果と、予め求められている血液と唾液との相関関係から、生活習慣病を簡単に判定できる。
【0039】
以上実施形態1,2では、生活習慣病の判定について説明したが、本発明はこれに制限されず、例えば、唾液自体の粘度、コルチゾールまたはクロモグラニンA(CgA)と血液成分(血圧を含む)との相関データと唾液データとを比較してストレス判定を行うこともできる。
【0040】
<唾液と血液の相関関係の構築>
まず、唾液と血液の相関関係を構築する。本発明は、以下で求められる相関データ(相関関係、相関係数)に限定されない。唾液提供者から健康診断データ、問診データを得た。血液サンプルと各種測定値は、健康診断の測定値を利用する。唾液の採取方法は以下の通りである。まず、昼食後に歯磨きをし、その後2時間後の15時に唾液サンプルを採取する。これを、5日間連続で行う。
【0041】
(唾液検査)
採取した唾液サンプルの測定を行う。pH測定は、各種pH測定器を用いることができ、例えば堀場製作所製の「Twin pH」が挙げられる。また、アミラーゼ測定は、各種アミラーゼ測定器を用いることができ、例えば二プロ製「唾液アミラーゼモニター」が挙げられる。IgA測定は、ELISA法による唾液中に含まれる抗体あるいは抗原の濃度を定量検出する。ELISA法は一般的な手法である。唾液サンプルは、上記採取方法で24名から5日間採取する。極端に外れたデータは用いないものとできる。表1に5日間唾液サンプルの平均pH、平均アミラーゼ値、平均IgA値を示す。空欄は唾液サンプル量が少なく測定できなかったためである。
【0043】
(唾液検査結果と血液検査結果との相関関係)
まず、唾液サンプル全体(5日間平均値)についてピアソン相関係数の検定を行う。2変量の間の関連度合いを測る指標である相関係数を求め、相関係数の有意性を検定する。つまり、母相関係数ρ=0を検定することで帰無仮説:「2変量の間に相関はない」を検定する。また、母相関係数ρの100(1−α)%信頼区間を表示し、ρの信頼区間に0が含まれないとき、ρ≒0を意味し、すなわち検定は有意であり、2変量の間に相関があるとみることができる。ここでは、具体的には相関関係の結果と判定は、相関係数を算出し、P値を算出し、信頼区間を算出する。P値において危険率5%以内であれば相関有意性があると判定する。
【0044】
表2に有意な相関関係が認められた、pHとトリグリセライド、アミラーゼと血圧(上の値)、アミラーゼとトリグリセライド、IgAと尿酸の各データを示す。
【0046】
表2に示すとおり、pHとトリグリセライドは有意な正の相関が認められ、アミラーゼと血圧(上の値)は有意な負の相関が認められ、アミラーゼとトリグリセライドは有意な負の相関が認められ、IgAと尿酸は有意な負の相関が認められる。それぞれの唾液のデータは5日間の平均値を用いている。
【0047】
(唾液検査項目間の相関関係)
表3に相関関係が認められた、IgAとpH、IgAとアミラーゼの各データを示す。
【0049】
表3に示すとおり、IgAとpHは明確な負の相関が認められ、IgAとアミラーゼも明確な正の相関が認められる。
【0050】
(他の測定値を考慮したIgAと尿酸の相関関係)
次に、IgAと尿酸値について、下記抽出サンプル群での相関関係を表4に示す。
【0052】
表4は、pHが高群の人のIgAと尿酸値の相関、アミラーゼが低群の人のIgAと尿酸値の相関、酸化還元電位が低群の人のIgAと尿酸値の相関、血糖値が低群の人のIgAと尿酸値の相関を示している。それぞれの指標の全データの平均値を境に高群と低群とに分けた。pHの高群において、IgAと尿酸との相関係数が「−0.866」と絶対値が1に近づき、その高群において低群よりも高い相関が認められた。また、アミラーゼの低群において、IgAと尿酸との相関係数が「−0.941」と絶対値が1に近づき、その低群において高群よりも高い相関が認められた。また、血液サンプル全体の血糖値の平均値を境に高群と低群とに分け、血糖値の
低群において、IgAと尿酸との相関係数が「−0.843」と絶対値が1に近づき、その
低群において
高群よりも高い相関が認められた。また、唾液サンプル全体の酸化還元電位の平均値を境に高群と低群とに分け、酸化還元電位の低群において、IgAと尿酸との相関係数が「−0.979」と絶対値が1に近づき、その低群において高群よりも高い相関が認められた。なお、酸化還元電位は、塩化銀電極(基準極)と白金電極(作用極)による電気化学測定法によって測定される。
【符号の説明】
【0053】
1 唾液測定器
2 生活習慣病判定支援装置2
21 データ取得部
22 判定部
23 出力部
221 相関データ格納部
222 管理部
3 情報処理装置