(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記化合物群として、イッテルビウム及び/又はエルビウムの酢酸化合物、及び/又は、イッテルビウム及び/又はエルビウムの硫酸化合物が選択される、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
希土類の酢酸化合物、希土類の硫酸化合物、及び希土類の硝酸化合物から成る化合物群から選択された少なくとも1種の化合物、正極活物質、バインダー、導電剤、及び有機溶剤を含む正極スラリーを調製する第1の工程と、
この正極スラリーを正極集電体に塗布、乾燥することにより、正極集電体の表面に正極合剤層を形成する第2の工程と、
上記第1の工程で、希土類の酢酸化合物、希土類の硫酸化合物、及び希土類の硝酸化合物から成る化合物群から選択された少なくとも1種の化合物を有機溶剤に溶解させる工程と、
を有する非水電解質二次電池用正極の製造方法。
上記第1の工程で、希土類の酢酸化合物、希土類の硫酸化合物、及び希土類の硝酸化合物から成る化合物群から選択された少なくとも1種の化合物を有機溶剤に溶解したものを正極活物質と混合し、その後、導電剤及びバインダーを混合する、請求項3に記載の非水電解質二次電池用正極の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノートパソコン、PDA等の移動情報端末の小型・軽量化が急速に進展しており、その駆動電源としての電池にはさらなる高容量化が要求されている。充放電に伴い、リチウムイオンが正、負極間を移動することにより充放電を行うリチウムイオン電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるので、上記のような移動情報端末の駆動電源として広く利用されている。
【0003】
ここで、上記移動情報端末は、動画再生機能、ゲーム機能といった機能の充実に伴って、更に消費電力が高まる傾向にあり、更なる高容量化が強く望まれるところである。上記非水電解質二次電池を高容量化する方策としては、活物質の容量を高くする方法や、単位体積当りの活物質の充填量を増やすといった方法の他、電池の充電電圧を高くするという方法がある。しかしながら、電池の充電電圧を高くした場合、電解液が分解されやすくなるという問題があり、特に、高温で充放電サイクルを繰り返すと、放電容量が低下するといった問題を生じる。
【0004】
このような観点から、下記のような技術が提案されている。
(1)硝酸アルミニウムの塩を水に溶解したものを用いて、正極活物質の表面にアルミニウムの水酸化物をコーティングしたものを用いる。これにより、電池のサイクル特性を向上できる旨記載されている(下記特許文献1参照)。
【0005】
また、電池の過充電時の安全性を高めることを目的として、下記のような技術が提案されている。
(2)正極に炭酸ランタンや炭酸エルビウムを含むものを用いることによって、過充電時にガス発生をし易くし、これによってCIDの作動を促進する(下記特許文献2参照)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、正極集電体と、この正極集電体の少なくとも一方の面に形成された正極合剤層とを有し、上記正極合剤層には、正極活物質と、バインダーと、導電剤と、
イッテルビウム及び/又はエルビウムの酢酸化合物、
イッテルビウム及び/又はエルビウムの硝酸化合物、及び
イッテルビウム及び/又はエルビウムの硫酸化合物から成る化合物群から選択される少なくとも1種の化合物と、が含まれていることを特徴とする。上記構成であれば、充電状態の電池を高温に曝した場合であっても、電解液の分解や正極活物質の劣化を抑制することができるので、サイクルを繰り返しても、放電性能が低下するのを抑制できる。この理由としては、上記希土類化合物が正極内に存在していれば、希土類化合物の一部は、電解液の酸化分解を促進する正極活物質や導電剤の表面に存在し、これらの表面を覆うことになる。したがって、正極活物質や導電剤の表面において、電解液との接触面積が小さくなり、しかも、電解液の分解反応を活性化している正極活物質に含まれる遷移金属の影響を抑制できる(即ち、正極活物質や導電剤の触媒性が低下する)。この結果、正極活物質や導電剤の表面における電解液の酸化分解反応が抑制される、という理由によるものと考えられる。
【0012】
上記化合物として
イッテルビウム及び/又はエルビウムの酢酸化合物及び/又は
イッテルビウム及び/又はエルビウムの硫酸化合物が選択されることが望ましい。 希土類の酢
酸化合物及び希土類の硫酸化合物は、希土類の硝酸化合物に比べて腐食し難い。したがって、正極の製造装置に腐食防止のための措置を施すことが不要となるので、正極の製造コストを低減できる。尚、有機溶剤への溶解性が高いという理由により、希土類の酢酸化合物が特に好ましい。
【0013】
上記希土類が、イッテルビウム及び/又はエルビウムであることが望ましい
のは、イッテルビウムやエルビウムは、有機溶剤へ溶解し易いからである。
【0014】
希土類の希土類の酢酸化合物、希土類の硫酸化合物、及び希土類の硝酸化合物から成る化合物群から選択された少なくとも1種の化合物、正極活物質、バインダー、導電剤、及び有機溶剤を含む正極スラリーを調製する第1の工程と、この正極スラリーを正極集電体に塗布、乾燥することにより、正極集電体の表面に正極合剤層を形成する第2の工程と、
上記第1の工程で、希土類の酢酸化合物、希土類の硫酸化合物、及び希土類の硝酸化合物から成る化合物群から選択された少なくとも1種の化合物を有機溶剤に溶解させる工程と、を有することを特徴とする。
本発明者は、希土類化合物が有機溶剤に溶解することを見出した。そこで、有機溶剤を含む正極スラリーを調製する第1の工程において、当該スラリーに希土類化合物を添加すれば、希土類化合物の少なくとも一部は有機溶剤に溶解した状態で存在し、正極スラリーを塗布した後に乾燥して有機溶剤を除去すると、希土類化合物として析出する。このように、単に、正極スラリーに希土類化合物を添加するだけで良いので、製造プロセスの煩雑化に起因する製造コストの高騰を防止できる。
正極スラリーを調製する際、正極活物質、バインダー、及び導電剤と共に希土類化合物を添加しても良いが、これでは、希土類化合物が有機溶剤に十分に溶解しない場合もある。そこで、希土類化合物を有機溶剤に溶解させるような工程を別途設けていれば、希土類化合物の溶解度が上がるので、正極を作製した際に、希土類化合物の分散性が向上する。したがって、電解液の酸化分解反応を抑制するという効果が一層発揮される。
【0015】
尚、第1の工程において有機溶剤に溶解させた希土類化合物は、第2の工程で有機溶剤を除去した際に、そのままの状態で析出する(例えば、希土類の酢酸化合物を添加したときには、希土類の酢酸化合物として析出する)。即ち、希土類化合物を水溶液に溶解させた後水分を除去する場合の如く、希土類の水酸化物として析出するのではない。
また、希土類化合物としては、例えば、硝酸エルビウム、酢酸エルビウム、酢酸イッテルビウムやその水和物を用いることができる。水和物を用いる場合には、水和物のまま添加してもよく、水和物を予め120℃前後で真空乾燥したものを添加しても良い。
【0017】
上記第1の工程で、希土類の酢酸化合物、希土類の硫酸化合物、及び希土類の硝酸化合物から成る化合物群から選択された少なくとも1種の化合物を有機溶剤に溶解したものを正極活物質と混合し、その後、導電剤及びバインダーを混合することが望ましい。
有機溶剤に希土類化合物を混合するのは、正極活物質に導電剤やバインダーを混合する前でも、後でも良い。但し、導電剤やバインダーを混合する前に、有機溶剤に希土類化合物を溶解させた溶液と正極活物質とを混合した方が、正極活物質の表面に希土類化合物が均一に析出(固着)し易くなるので、より効果的に電解液と正極活物質との反応を抑制することができる。
尚、正極活物質の表面のみならず導電剤の表面にも希土類化合物を均一に析出させるには、希土類化合物を有機溶剤に溶解したものを、正極活物質及び導電剤と混合し、その後、バインダーを混合すれば良い。
【0018】
上記化合物群として希土類の酢酸化合物及び/又は希土類の硫酸化合物が選択されることが望ましい。
これは、上述した理由と同様の理由である。
【0019】
上記有機溶剤としてNメチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略することがある)を用いることが望ましい。
NMPは安価で、希土類化合物が溶解し易いだけではなく、バインダーも溶解し易いため、スラリー調製用の溶媒として用い易いからである。
ここで、有機溶剤としてNMPを用いる場合には、バインダーとしては、NMPに溶解するものを用いることが好ましく、PVdF(ポリフッ化ビニリデン)等が例示される。
【0020】
尚、希土類化合物は完全に有機溶剤に溶解している必要はなく、希土類化合物の一部が有機溶剤に溶解していない状態で正極活物質と混合してもよい。但し、有機溶剤に希土類化合物が十分に溶解された溶液と正極活物質とを混合した方が、正極活物質の表面に希土類化合物が均一に析出(固着)し易くなるので、より効果的に電解液と正極活物質との反応を抑制することができる。このようなことを考慮すれば、希土類化合物としては、有機溶剤への溶解度が高いものを用いるのが好ましい。尚、上述の如く、有機溶剤に希土類化合物が十分に溶解された溶液と正極活物質との混合は、導電剤やバインダーを混合する前に実施するのが一層効果的である。
【0021】
また、導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長炭素などを用いることができ、正極活物質と混合する際には、あらかじめ、上記バインダーを含むNMP溶液に分散させておいてもよい。
更に、導電剤はあらかじめ正極活物質の表面にコーティングもしくは固着させておいてもよい。正極活物質の表面にコーティングもしくは固着させる方法としては、糖類を溶解したものを正極活物質にコートし、熱処理により炭素化する方法や、導電剤と正極活物質とを機械的に混合して被覆する方法などが挙げられる。
【0022】
但し、有機溶剤としてはNMPに限定するものではなく、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸メチル等のエステル系溶剤、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤等であっても良い。
上述した正極と、負極と、非水電解質とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
【0023】
(その他の事項)
(1)本発明に用いる正極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル−コバルト−マンガン酸リチウム、ニッケル−コバルト−アルミニウム酸リチウム、ニッケル−コバルト酸リチウム、ニッケル−マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、コバルトマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属の酸化物、鉄、マンガンなどを含むオリビン型の遷移金属酸化物(LiMPO
4で表され、MはFe、Mn、Co、Niから選択される)等、公知の正極を用いることができる。
【0024】
(2)正極に含まれる希土類化合物の量は、希土類元素換算で、正極活物質の量に対して、0.01質量%以上0.5質量%未満であることが好ましい。0.01質量未満の場合、希土類化合物の量が過少なため、希土類化合物の添加効果が十分に発揮されないことがある一方、0.5質量%を超えると、正極活物質の表面が充放電反応に直接関与はし難い希土類化合物で過剰に覆われて、放電性能が低下する恐れがある。
【0025】
(3)上記正極活物質は、Al、Mg、Ti、Zr等の物質を固溶していたり、粒界に含まれていても良い。また、正極活物質の表面には、希土類化合物の他、Al、Mg、Ti、Zr等の化合物も固着していても良い。これらの化合物が固着されていても、電解液と正極活物質との接触を抑制できるからである。
【0026】
(4)本発明に用いる非水電解質の溶媒は限定するものではなく、非水電解質二次電池に従来から用いられてきた溶媒を使用することができる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネートや、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステルを含む化合物や、プロパンスルトン等のスルホン基を含む化合物や、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン等のエーテルを含む化合物や、ブチロニトリル、バレロニトリル、n−ヘプタンニトリル、スクシノニトリル、グルタルニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル等のニトリルを含む化合物や、ジメチルホルムアミド等のアミドを含む化合物等を用いることができる。特に、これらのHの一部がFにより置換されている溶媒が好ましく用いられる。また、これらを単独又は複数組み合わせて使用することができ、特に環状カーボネートと鎖状カーボネートとを組み合わせた溶媒や、さらにこれらに少量のニトリルを含む化合物やエーテルを含む化合物が組み合わされた溶媒が好ましい。
【0028】
(5)本発明に用いる負極としては、従来から用いられてきた負極を用いることができ、特に、リチウムを吸蔵放出可能な炭素材料、あるいはリチウムと合金化できる金属又はその金属を含む合金化合物が挙げられる。
炭素材料としては、天然黒鉛や難黒鉛化性炭素、人造黒鉛等のグラファイト類、コークス類等を用いることができ、合金化合物としては、リチウムと合金可能な金属を少なくとも1種類含むものが挙げられる。特に、リチウムと合金形成可能な元素としてはケイ素やスズであることが好ましく、これらが酸素と結合した、酸化ケイ素や酸化スズ等も用いることもできる。また、上記炭素材料とケイ素やスズの化合物とを混合したものを用いることができる。
上記の他、エネルギー密度は低下するものの、負極材料としてはチタン酸リチウム等の金属リチウムに対する充放電の電位が、炭素材料等より高いものも用いることができる。
【0029】
(6)正極とセパレータとの界面、又は、負極とセパレータとの界面には、従来から用いられてきた無機物のフィラーからなる層を形成することができる。フィラーとしても、従来から用いられてきたチタン、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム等を単独もしくは複数用いた酸化物やリン酸化合物、またその表面が水酸化物等で処理されているものを用いることができる。
上記フィラー層の形成は、正極、負極、或いはセパレータに、フィラー含有スラリーを直接塗布して形成する方法や、フィラーで形成したシートを、正極、負極、或いはセパレータに貼り付ける方法等を用いることができる。
【0030】
(7)本発明に用いるセパレータとしては、従来から用いられてきたセパレータを用いることができる。具体的には、ポリエチレンからなるセパレータのみならず、ポリエチレン層の表面にポリプロピレンからなる層が形成されたものや、ポリエチレンのセパレータの表面にアラミド系の樹脂等の樹脂が塗布されたものを用いても良い。
【実施例】
【0031】
以下、この発明に係る非水電解質二次電池用正極及び電池を、以下に説明する。尚、この発明における非水電解質二次電池用正極及び電池は、下記の実施例に限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0032】
(実施例1)
〔正極の作製〕
[酢酸エルビウム−NMP溶液の作製]
酢酸エルビウム4水和物[Er(CH
3COO)
3・4H
2O]0.86gを、40gのNMP(Nメチル−2−ピロリドン)溶液に溶解したものを作製した。
【0033】
[正極スラリーの調製]
正極活物質として、AlとMgとがそれぞれ0.1モル%固溶したコバルト酸リチウムを用い、当該正極活物質500gに上記酢酸エルビウムが溶解したNMP溶液を混合した。次に、このNMP溶液に、導電剤としてのカーボンブラック(アセチレンブラック)粉末(平均粒径:40nm)と、結着剤(バインダー)としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合して分散させ、正極スラリーを調製した(第1の工程)。この際、正極活物質と、導電剤と、バインダーとの割合は、質量比で95:2.5:2.5となるようにした。
次いで、上記正極スラリーを、アルミニウム箔から成る正極集電体の両面に塗布し、120℃で乾燥した(第2の工程)。これにより、正極集電体の両面に形成された正極合剤層中に、酢酸エルビウムが含有されることになる。しかる後、これを圧延ローラにより圧延することにより、正極を作製した。尚、当該正極において、正極活物質に対する酢酸エルビウムの割合は、エルビウム換算で、0.07質量%であった。
【0034】
〔負極の作製〕
先ず、負極活物質としての人造黒鉛と、分散剤としてのCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)と、結着剤としてのSBR(スチレン−ブタジエンゴム)とを98:1:1の質量比で水溶液中において混合し、負極スラリーを調製した。次に、この負極スラリーを銅箔から成る負極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥させ、圧延ローラで圧延することにより、負極集電体の両面に負極合剤層が形成された負極を得た。尚、この負極における負極活物質の充填密度は1.70g/cm
3であった。
【0035】
〔非水電解液の調製〕
エチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とを、3:7の体積比で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.0モル/リットルの割合で溶解させて、非水電解液を調製した。
【0036】
〔電池の作製〕
上記正負極それぞれにリード端子を取り付け、これら両極間にセパレータを配置して渦巻き状に巻回した後、巻き芯を引き抜いて渦巻状の電極体を作製し、更にこの電極体を押し潰して、扁平型の電極体を得た。次に、この扁平型の電極体と上記非水電解液とを、アルミニウムラミネート製の外装体内に配置し、
図1及び
図2に示される構造を有する扁平型の非水電解質二次電池を作製した。尚、当該二次電池のサイズは、3.6mm×35mm×62mmであり、また、当該二次電池を4.40Vまで充電し、2.75Vまで放電したときの放電容量は750mAhであった。
【0037】
ここで、
図1及び
図2に示すように、上記非水電解液二次電池11の具体的な構造は、正極1と負極2とがセパレータ3を介して対向配置されており、これら正負両極1、2とセパレータ3とから成る扁平型の電極体には非水電解液が含浸されている。上記正極1と負極2とには、それぞれ、正極集電タブ4と負極集電タブ5とに接続され、二次電池としての充放電が可能な構造となっている。尚、電極体は、周縁同士がヒートシールされた閉口部7を備えるアルミラミネート外装体6の収納空間内に配置されている。
以上のようにして作製した電池を、以下、電池A1と称する。
【0038】
(実施例2)
正極スラリー調製の際、コバルト酸リチウムと導電剤とバインダーとを混練した後に、酢酸エルビウム4水和物(以下、単に、酢酸エルビウムと称することがある)が溶解したNMP溶液を混合したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。なお、正極活物質に対する酢酸エルビウムの割合は、エルビウム換算で、0.07質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A2と称する。
【0039】
(実施例3)
正極作製時に、酢酸エルビウムに代えて酢酸イッテルビウム4水和物(以下、単に、酢酸イッテルビウムと称することがある)0.87gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。なお、正極活物質に対する酢酸イッテルビウムの割合は、イッテルビウム換算で、0.07質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A3と称する。
【0040】
(実施例4)
正極作製時に、酢酸エルビウムに代えて、硝酸エルビウム5水和物(以下、単に、硝酸エルビウムと称することがある)0.93gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。なお、正極活物質に対する硝酸エルビウムの割合は、エルビウム換算で、0.07質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A4と称する。
【0041】
(実施例5)
正極作製時に、酢酸エルビウムに代えて、硫酸エルビウム8水和物(以下、単に、硫酸エルビウムと称することがある)0.78gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。なお、正極活物質に対する硫酸エルビウムの割合は、エルビウム換算で、0.04質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A5と称する。
【0042】
(実施例6)
正極作製時に、酢酸エルビウムに代えて、硫酸エルビウム8水和物0.78gと酢酸エルビウム4水和物0.86gとを用いたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。なお、正極活物質に対する硫酸エルビウムと酢酸エルビウムとの割合は、エルビウム換算で、それぞれ0.04質量%、0.07質量%であった。
このようにして作製した電池を、以下、電池A6と称する。
【0043】
(比較例)
正極作製時に、酢酸エルビウムを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
このようにして作製した電池を、以下、電池Zと称する。
【0044】
(実験1)
上記の電池A1〜A6、Zについて、下記条件にて充放電し、45℃サイクル特性を調べたので、その結果を表1に示す。
【0045】
〔1サイクル目の充放電条件〕
・1サイクル目の充電条件
1.0It(750mA)の電流で電池電圧が4.40Vとなるまで定電流充電を行い、更に、4.40Vの電圧で電流値が37.5mAとなるまで定電圧充電を行った。
・1サイクル目の放電条件
1.0It(750mA)の電流で電池電圧が2.75Vとなるまで定電流放電を行った。
・休止
上記充電と放電との間の休止間隔は10分間とした。
【0046】
〔45℃サイクル試験時の条件〕
45℃の恒温槽に、電池を1時間保持した後、上記の条件で充放電サイクル試験を1回行って、放電容量Q1(1サイクル目の放電容量Q1)を測定した後、さらに45℃にて充放電サイクルを行って各サイクルでの放電容量Q2を求めた。そして、放電容量Q1に対する放電容量Q2の割合が60%となったときのサイクル数を求めた。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から明らかなように、正極に酢酸エルビウムや酢酸イッテルビウムといった希土類の酢酸化合物を含むものを用いた電池A1〜A3、硝酸エルビウムのような希土類の硝酸化合物含むものを用いた電池A4、硫酸エルビウムのような希土類の硫酸化合物を含むものを用いた電池A5の電池、及び、硫酸エルビウムのような希土類の硫酸化合物と酢酸エルビウムのような希土類の酢酸化合物とを含むものを用いた電池A6は、いずれも正極に希土類の酢酸化合物、希土類の硝酸化合物、及び希土類の硫酸化合物等を含まない電池Zと比べて、高温でのサイクル特性が大幅に向上していることが認められる。この理由としては、希土類の酢酸化合物、希土類の硝酸化合物、及び希土類の硫酸化合物が正極活物質や導電剤の表面に存在することにより、電解液と正極活物質や導電剤との副反応が抑制されるためと考えられる。
【0049】
尚、電池A1と電池A2とを比較すると、酢酸エルビウムが溶解したNMP溶液に正極活物質を混合した後、導電剤とバインダーとを混合して分散させた電池A1は、正極活物質と導電剤とバインダーとを混練した後に、酢酸エルビウムが溶解したNMP溶液を混合した電池A2に比べて、サイクル特性がより向上していることが認められる。この理由としては、酢酸エルビウムが溶解したNMP溶液に、予め正極活物質を混合させる方が、正極活物質表面に酢酸エルビウムが均一に析出し易いためと推測される。
【0050】
また、正極に硫酸エルビウムと酢酸エルビウムとを含む電池A6は、正極に硫酸エルビウムのみを含む電池A5や正極に酢酸エルビウムのみを含む電池A1よりも、高温でのサイクル特性が向上している。これは、電池A6では、希土類の硫酸化合物と希土類の酢酸化合物とを共に用いることの相乗効果や、希土類化合物の添加量が増大したことによる効果等が発揮されたことによるものと考えられる。
【0051】
(実験2)
正極活物質の表面等に析出した物質は正極スラリー調製時に添加した物質と同様の物質であることを確認すべく、以下に示す実験を行った。尚、遷移金属を含む正極活物質はアルカリ性であることから、正極活物質の代替物質として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた。
具体的には、酢酸エルビウム4水和物をNMPに溶解した溶液に、固形の水酸化ナトリウムを混合しても析出物はなかった。したがって、酢酸エルビウム4水和物の水分と正極活物質に含まれる固形アルカリ分とが反応して水酸化物が生成することはなく、この結果、乾燥時(NMPの除去時)には、酢酸エルビウムが正極活物質の表面等にそのまま生成する。但し、固形の水酸化ナトリウムの代わりに、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、エルビウムの水酸化物が生成する。したがって、酢酸エルビウム4水和物を水に溶解した溶液を用いた場合には、水酸化エルビウムが正極活物質の表面等に生成することになる。