特許第6117560号(P6117560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117560
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】避難誘導システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20170410BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G08B27/00 A
   G08B17/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-20979(P2013-20979)
(22)【出願日】2013年2月6日
(65)【公開番号】特開2014-153787(P2014-153787A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】 白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−342849(JP,A)
【文献】 実開昭49−070779(JP,U)
【文献】 特開平05−002693(JP,A)
【文献】 特開昭60−230293(JP,A)
【文献】 特開2012−048022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B1/00−17/00
19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難場所に至る経路に、当該経路と交差する方向に指向方向を設定して指向性スピーカを所定間隔で配置し、非常時に、放送装置により前記避難場所へ誘導する所定の避難誘導放送を前記指向性スピーカから出力させる避難誘導システムに於いて、
前記放送装置は、前記指向性スピーカの放送視聴可能な防護範囲を、避難者が避難場所に対応した所定の移動速度で通過した場合の通過時間に、少なくとも2周期が入るように所定の放送周期を設定し、当該放送周期毎に前記指向性スピーカから所定の放送フレーズの避難誘導放送を繰り返し出力することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
請求項1記載の避難誘導システムに於いて前記指向性スピーカの放送視聴可能な防護範囲を、隣接する指向性スピーカの防護範囲に続くように設定するか、又は隣接する指向性スピーカの防護範囲に間を空けて続くように設定することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項3】
請求項1記載の避難誘導システムに於いて、前記指向性スピーカを避難場所へ向かう廊下部分に所定間隔で設置した場合、前記放送装置は、前記指向性スピーカの防護範囲を、前記避難者が所定の廊下移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて前記放送周期を設定することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項4】
請求項1記載の避難誘導システムに於いて、前記指向性スピーカを避難場所へ向かう階段部分の各階毎に設置した場合、前記放送装置は、避難方向が階段下り方向の場合は、前記指向性スピーカの防護範囲を、前記避難者が所定の階段下り移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて前記放送周期を設定し、一方、避難方向が階段上り方向の場合は、前記指向性スピーカの防護範囲を、前記避難者が所定の階段上り移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて前記放送周期を設定することを特徴とする避難誘導システム。
【請求項5】
請求項1記載の避難誘導システムに於いて、前記避難誘導放送の放送フレーズは、所定時間の空白フレーズと所定時間の音声フレーズを組み合わせたことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項6】
請求項1記載の避難誘導システムに於いて、前記放送装置は、非常放送設備から女声による感知器発報放送を示す放送移報信号を受信した場合、前記指向性スピーカから男声による前記避難誘導放送を出力し、前記非常放送設備から男声による火災放送を示す放送移報信号を受信した場合、前記指向性スピーカから女声による前記避難誘導放送を出力することを特徴とする避難誘導システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難誘導放送により避難者を安全な避難口等に避難誘導する避難誘導システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災報知設備と共に設置される一般的な避難誘導装置としては、常時点灯して避難を誘導する消防法で決められた誘導灯の他に、非常放送設備や光走行式避難誘導システムが知られている。
【0003】
非常放送設備は、自動火災報知設備と連動し、火災が発生した場合に、建物内の廊下などに設置したスピーカから避難誘導のガイダンスを含む一斉非常放送を流し、速やかな避難を促すようにしている。
【0004】
また光走行式避難誘導システムは、通路の床面あるいは壁面下部に連続的に光源を配列して逐次点滅を行い、あたかも光が走行しているように視認させて、その光の進む方向に沿って避難すれば避難口に至ることができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−310629号公報
【特許文献2】特開2002−253688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の非常放送設備は、無指向性のスピーカを使用し、館内一斉に非常放送として避難誘導を行うために大音量で流しており、場所によっては最短距離にある避難口へのガイダンス機能が十分に果たせない恐れもある。
【0007】
また光走行式避難誘導システムにあっては、通路の床面に配列した光源を逐次点滅して、光が走行しているように視認させているが、見る位置や人によっては単に点滅しているとしか見えないこともあり、避難口の方向を示していることが、火災の発生により混乱した中では十分に把握されない問題がある。光源の避難誘導システムを認識している人は良いが、初めて利用する人には避難誘導システムが活かされない可能性もある。また火災時に発生する煙の層によって光源を見失う可能性もある。
【0008】
この問題を解決するため、本願出願人にあっては、指向性スピーカを、避難口などの避難場所に至る経路(通路)に、当該経路を横切る方向に指向方向を設定して配置し、火災等の非常発生時に、放送装置により避難場所へ誘導する避難誘導放送を指向性スピーカから出力させ、指向性スピーカの前を通過する際に、避難口などの避難場所へ誘導する放送を聞き、例えば現在位置から避難口までの距離を知り、非常発生により混乱した状況にあっても、避難場所が確認できることで、落ち着いた避難行動を可能とする避難誘導システムを提案している。
【0009】
ところで、このような避難口などの避難場所に至る経路に指向性スピーカを所定間隔で配置して、避難場所へ誘導する避難誘導放送を出力する場合、例えば「避難口まで あと10メートルです」、「避難口まで あと5メートルです」といった設置場所に応じた放送フレーズの避難誘導放送を繰り返し出力するが、指向性スピーカからの放送を視聴可能な防護範囲を通過している間に、避難誘導放送の放送フレーズが始めから終わりまで行われれば、その内容を明快に聞き取ることができる。しかし、避難者が通過するタイミングや移動速度によっては、放送フレーズの一部しか聞き取れない場合もあり、避難誘導放送を聞き取るために移動速度を落としたり、立ち止まったりすることも想定され、迅速な避難行動を損なう恐れもある。
【0010】
本発明は、所定間隔で配置した指向性スピーカの前を通過して避難口へ向かう場合に、各スピーカからの避難口までの距離を示す避難誘導放送を避難者が移動しながら連続して明瞭且つ確実に聞き取り可能とする避難誘導システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(避難誘導システム)
本発明は避難場所に至る経路に、当該経路と交差する方向に指向方向を設定して指向性スピーカを所定間隔で配置し、非常時に、放送装置により避難場所へ誘導する所定の避難誘導放送を指向性スピーカから出力させる避難誘導システムに於いて、
放送装置は、指向性スピーカの放送視聴可能な防護範囲を、避難者が避難場所に対応した所定の移動速度で通過した場合の通過時間に、少なくとも2周期が入るように所定の放送周期を設定し、当該放送周期毎に指向性スピーカから所定の放送フレーズの避難誘導放送を繰り返し出力することを特徴とする。
【0012】
(スピーカ防護範囲の連続性)
避難誘導システムは、指向性スピーカの放送視聴可能な防護範囲を、隣接する指向性スピーカの防護範囲に続くように設定するか、又は隣接する指向性スピーカの防護範囲に間を空けて続くように設定する。
【0013】
(廊下部分)
指向性スピーカを避難場所へ向かう廊下部分に所定間隔で設置した場合、放送装置は、指向性スピーカの防護範囲を、避難者が所定の廊下移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて放送周期を設定する。
【0014】
(階段部分)
指向性スピーカを避難場所へ向かう階段部分の各階毎に設置した場合、放送装置は、避難方向が階段下り方向の場合は、指向性スピーカの防護範囲を、避難者が所定の階段下り移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて前記放送周期を設定し、一方、避難方向が階段上り方向の場合は、指向性スピーカの防護範囲を、避難者が所定の階段上り移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて放送周期を設定する。
【0015】
(空白フレーズと音声フレーズ)
避難誘導放送の放送フレーズは、所定時間の空白フレーズと所定時間の音声フレーズを組み合わせる。
【0016】
(非常放送設備との連携)
放送装置は、非常放送設備から女声による感知器発報放送を示す放送移報信号を受信した場合、指向性スピーカから男声による避難誘導放送を出力し、非常放送設備から男声による火災放送を示す放送移報信号を受信した場合、指向性スピーカから女声による避難誘導放送を出力する。
【発明の効果】
【0017】
(基本的な効果)
本発明の避難誘導システムによれば、指向性スピーカの放送視聴可能な防護範囲を、避難者が避難場所に対応した所定の移動速度で通過した場合の通過時間に、少なくとも2周期が入るように所定の放送周期を設定し、当該放送周期毎に指向性スピーカから所定の放送フレーズの避難誘導放送を繰り返し出力するようにしたため、避難者は所定の移動速度以下の速度で避難する場合には、各指向性スピーカを中心とした前後の放送視聴可能な防護範囲を通過している間に、避難誘導放送の放送フレーズを始めから終わりまで完全に聞き取ることができ、避難誘導放送を聞き取るために速度を落としたり、立ち止まったりする必要はなく、避難誘導放送により例えば現在位置から避難口までの距離を知り、非常発生により混乱した状況にあっても、避難場所までの距離が確認できることで、落ち着いた避難行動を可能とし、更に、避難空間に煙層などがあって視界が悪い場合でも、避難誘導放送を聞くことで迅速且つ適切な避難行動を可能とする。
【0018】
また、放送装置は、避難者が防護範囲を通過する通過時間に、少なくとも2周期が入るように放送周期を設定し、この放送周期毎に避難誘導放送の放送フレーズを繰り返すため、避難者が指向性スピーカの防護範囲に入ったタイミングと放送フレーズの開始タイミングが一致した場合は、防護範囲を通過する間に、避難誘導放送の放送フレーズを始めから終わりまで2回聞くことができ、放送フレーズの開始タイミングが防護範囲を避難者が通過中となった場合は、少なくとも避難誘導放送の放送フレーズを始めから終わりまで1回分を完全に聞き取ることができる。
【0019】
(スピーカ防護範囲の連続性)
また、指向性スピーカの放送視聴可能な防護範囲を、隣接する指向性スピーカの放送視聴範囲に続くように設定した場合には、連続する各指向性スピーカの防護範囲を避難口に向かって通過するごとに、例えば「避難口まで あと10メートルです」、「避難口まで あと5メートルです」というように、連続して避難場所までの距離を示す避難誘導放送を聞くことができ、特に、煙などで視界が効かない場合や、目の不自由な避難者の避難行動に役立つ。
【0020】
また、指向性スピーカを離して配置している場合には、指向性スピーカの放送視聴可能な防護範囲を、隣接する指向性スピーカの放送視聴範囲に間を空けて続くように設定するが、この場合にも、間を置いて連続する各指向性スピーカの防護範囲を避難口に向かって通過する毎に、避難場所までの距離を示す避難誘導放送を、間を置いて連続的に聞くことができ、同様に、煙などで視界が効かない場合や、目の不自由な避難者の避難行動に役立つ。
【0021】
(建物の避難部分の避難誘導放送による効果)
指向性スピーカを避難場所へ向かう廊下部分に所定間隔で設置した場合、放送装置は、指向性スピーカの防護範囲を、避難者が所定の廊下移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて放送周期を設定し、また、指向性スピーカを避難場所へ向かう階段部分の各階毎に設置した場合、放送装置は、避難方向が階段下り方向の場合は、指向性スピーカの防護範囲を、避難者が所定の階段下り移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて放送周期を設定し、一方、避難方向が階段上り方向の場合は、指向性スピーカの防護範囲を、避難者が所定の階段上り移動速度で通過した場合の通過時間に基づいて放送周期を設定するようにしたため、建物の廊下部分や階段部分といった異なる場所における避難者の移動速度の相違を考慮した適切な放送周期に基づく避難誘導放送を行うことができる。
【0022】
(空白フレーズと音声フレーズによる効果)
避難誘導放送の放送フレーズとして、所定時間の空白フレーズと所定時間の音声フレーズを組み合わせたため、放送周期毎に放送フレーズを出力することで、放送フレーズが連続しても、その間に空白フレーズが入ることで、空白フレーズに続く音声フレーズによる放送内容を明瞭に聞き取ることができる。
【0023】
(避難誘導放送による効果)
また放送装置は、指向性スピーカから避難場所までの距離を示す避難誘導放送を繰り返し出力するため、避難口へ向かう通路に所定間隔で指向性スピーカを配置しておくことで、指向性スピーカの前を通過する際に、避難口までの距離を知って確認できると共に、残り距離がわかることで、避難口に近づいていることが確認でき、避難者に安心感を与え、落ち着いた避難行動を可能とする。
【0024】
また、放送装置は、廊下部分に設置した指向性スピーカからの避難誘導放送に、「避難口」又は「避難階段」の言葉を必ず含ませることで、避難口又は避難階段の近くに到達しつつあることを避難者に明快に理解させることができる。
【0025】
また、放送装置は、非常階段に設置した指向性スピーカからの避難誘導放送に、「避難階」の言葉を必ず含ませることで、避難口の近くに到達したことを避難者に明快に理解させることができる。
【0026】
(非常放送設備との連携)
放送装置は、非常放送設備から女声による感知器発報放送を示す放送移報信号を受信した場合、指向性スピーカから男声による避難誘導放送を出力し、非常放送設備から男声による火災放送を示す放送移報信号を受信した場合、指向性スピーカから女声による避難誘導放送を出力するようにしたため、非常放送設備から女声による感知器発報放送が行われている場合は、指向性スピーカから男声による避難誘導放送が行われ、また非常放送設備から男声による感知器発報放送が行われている場合は、指向性スピーカから女声による避難誘導放送が行われ、非常放送設備により感知器発報放送または火災放送が行われていても、避難者は指向性スピーカからの避難誘導放送を明瞭に聞き分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による避難誘導システムの概略構成を示した説明図
図2】センタ側に設置する放送制御装置の概略構成を示したブロック図
図3】指向性スピーカ毎に設置する放送再生装置の概略構成を示したブロック図
図4】廊下部分に指向性スピーカを設置した場合の避難誘導放送制御の例を示した説明図
図5図4の廊下部分に指向性スピーカを設置した場合の放送周期の設定に必要な情報を示した説明図
図6図4の廊下部分に指向性スピーカを設置した場合の避難者の歩行時間、廊下の水平距離、指向性スピーカの防護範囲、避難誘導放送の放送フレーズの関係を示した説明図
図7】階段部分に指向性スピーカを設置した場合の避難誘導放送制御の例を示した説明図
図8図4の階段部分に指向性スピーカを設置した場合の放送周期の設定に必要な情報を示した説明図
図9図6の階段部分に指向性スピーカを設置した場合の避難者の歩行時間、階段の水平距離、階段の垂直距離、指向性スピーカの防護範囲、避難誘導放送の放送フレーズの関係を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0028】
[避難誘導システムの構成]
図1は本発明による避難誘導システムの概略構成を示した説明図である。図1において、本発明の避難誘導システムは、放送制御装置10、放送再生装置12、指向性スピーカ14で構成する。なお、請求項の放送装置は、放送制御装置10と放送再生装置12で構成している。
【0029】
放送制御装置10は防災センタなどに設置する。放送制御装置10には伝送路15により自動火災報知設備16の受信機などと接続し、火災信号を受信する。また、放送制御装置10は伝送路101により非常放送設備100と接続し、放送移報信号を受信する。
【0030】
放送制御装置10からは伝送路11が引き出され、伝送路11に避難誘導対象となる例えばビルの各階の避難経路となる廊下部分又は階段部分に配置した複数の放送再生装置12を接続し、通信接続により信号を送受信可能としている。放送再生装置12は固有のアドレスを設定している。また放送再生装置12には指向性スピーカ14を接続する。指向性スピーカ14は避難経路となる通路に沿って所定の間隔で配置し、その指向方向を、通路を横切る方向に設定している。
【0031】
放送再生装置12は、指向性スピーカ14の放送視聴可能な防護範囲を、避難場所に応じた所定の移動速度で避難者が通過した場合の通過時間に少なくとも2周期が入るように所定の放送周期を予め設定しており、放送制御装置10から避難誘導放送を開始する制御指示を受けた場合、設定した放送周期毎に、指向性スピーカ14から所定の放送フレーズとなる避難誘導放送を繰り返し出力する。
【0032】
ここで、避難誘導放送の放送フレーズとは、避難口までの距離を示す内容の放送文であり、指向性スピーカを廊下部分に設置した場合は、例えば「避難口まで あと10メートルです」とし、また指向性スピーカを階段部分に設置した場合は、例えば「ここは4階です 避難階は1階です」とする。なお、以下の説明では、放送フレーズを単にフレーズとして説明する場合がある。
【0033】
[指向性スピーカの構成]
指向性スピーカ14は、音響振動を平面波として出力する平面波スピーカであり、スピーカ本体の厚みが10ミリメートル程度のフラットパネルスピーカとして知られている。平面波スピーカは例えばフラットな振動板の背後に複数のボイスコイルを配置して音響信号により駆動することで、振動板を平行移動し、平面波振動を発生して前方へ向けて高い指向性により音を伝播する。
【0034】
このような平面波スピーカを用いた指向性スピーカ14を避難経路となる通路を横切る方向に、その指向方向を向けて配置して避難誘導放送を出力することで、指向性スピーカ14の前を横切る場合に、その放送内容を明瞭に聞くことができる。
【0035】
ここで、指向性スピーカ14から出力される避難誘導放送の視聴可能範囲を、避難誘導放送の防護範囲といい、この防護範囲は指向性スピーカ14の鳴動範囲により決まる。指向性スピーカ14を避難経路となる通路に沿って所定の間隔で配置する場合には、それぞれの防護範囲が大きく重ならないように配置することで、隣接している指向性スピーカからの音は、相互に聞こえることはなく、通過する防護範囲の指向性スピーカ14からの放送のみを明瞭に聞きとることができる。
【0036】
また指向性スピーカ14の高い指向性により、避難行動に伴い騒音が高くなっている状況でも、騒音に影響されることなく、明瞭に放送内容を聞きとることができる。
【0037】
[放送制御装置の構成]
図2はセンタ側に配置する放送制御装置概略構成を示したブロック図である。
【0038】
図2において、放送制御装置10は、制御部18、操作部19、表示部20、マイク21、及び通信部22を備え、図示しない予備電源付きの電源部から直流電源の供給を受けて動作する。制御部18は、CPU、メモリ、各種の入出力ポート等をそなえたコンピュータ装置を使用する。
【0039】
通信部22は伝送路15を介して図1に示した自動火災報知設備16と通信接続し、火災発生日時や場所を示す火災信号を受信する。また、通信部22は伝送路101を介して図1に示した非常放送設備100と通信接続し、女声か男声かを示す非常放送移報信号を受信する。更に、通信部22は伝送路11を介して図1に示した複数の放送再生装置12に通信接続してその間で信号を送受信する。
【0040】
制御部18は、自動火災報知設備16から火災信号の受信を検知した場合、または操作部19による放送開始操作の受け付けを検知した場合、放送再生装置12の全アドレスを指定を意味する共通アドレス、放送開始コマンドを含む制御信号を送信する制御を行い、放送再生装置12に予め登録している音声データを読み出して所定の放送周期毎に避難誘導放送信号を再生し、指向性スピーカ14から避難誘導放送を繰り返し出力させる。
【0041】
また、放送制御装置10の制御部18は、非常放送設備100からの放送移報信号に基づき次の連携制御を行う。
【0042】
非常放送設備100においては、その技術基準により、火災感知器が発報した場合又はこれに準ずる情報を入手した場合に行う感知器発報放送は女声によるものとしている。感知器発報放送の内容としては、例えば「ただいま 2階の火災感知器が作動しました 係員が確認しておりますので 次の放送にご注意ください」とする。
【0043】
また、非常放送設備100の技術基準では、火災の発生が確認された場合又はこれに準ずる情報を入手した場合に行う火災放送は男声によるものとしている。火災放送の内容としては、例えば「火事です 火事です 2階で火災が発生しました 落ち着いて避難してください」とする。実際の感知器発報放送および火災放送においては、それぞれの放送内容を、シグナル音やスイープ音と組み合わせて放送する。
【0044】
このような非常放送設備100による感知器発報放送および火災放送は、本発明の避難誘導システムの指向性スピーカ14を配置した避難誘導対象となる例えばビルの各階の避難経路となる廊下や階段に対しても行われ、指向性スピーカ14からの避難誘導放送と重複し、避難誘導放送が聞き分けづらくなる場合がある。
【0045】
そこで、制御部18は、例えば操作部19による放送開始操作の受け付けを検知したときに、非常放送設備100から伝送路101により女声による感知器発報放送を示す放送移報信号を受信していた場合、放送再生装置12の全アドレス指定を意味する共通アドレス、放送開始コマンド、男声を指定する男声コマンドを含む制御信号を送信する制御を行い、放送再生装置12に予め登録している男声の音声データを読み出して避難誘導放送信号を所定の放送周期毎に再生し、指向性スピーカ14からの男声の避難誘導放送を出力させる。
【0046】
また、放送制御装置10は、避難誘導放送中に、非常放送設備100が感知器発報放送から火災放送に切り替わり、伝送路101を介して男声による火災放送を示す放送移報信号を受信した場合、放送再生装置12の全アドレス指定を意味する共通アドレス、放送開始コマンド、女声を指定する女声コマンドを含む制御信号を送信する制御を行い、放送再生装置12に予め登録している女声の音声データを読み出して避難誘導放送信号を所定の放送周期毎に再生し、指向性スピーカ14からの女声の避難誘導放送を出力させる。
【0047】
このため、非常放送設備100から女声による感知器発報放送が行われている場合は、指向性スピーカ14から男声による避難誘導放送が行われ、また非常放送設備100から男声による火災放送が行われている場合は、指向性スピーカ14から女声による避難誘導放送が行われ、避難者は指向性スピーカ14からの避難誘導放送を明瞭に聞き分けることができる。ここで、男声の周波数帯域は500Hz付近となり、一方、女声の周波数帯域は例えば800Hz付近となり、周波数的にも両者を明瞭に聞き分けることができる。
【0048】
なお、以下にあっては、男声の避難誘導放送と女声の避難誘導放送は区別せず、単に避難誘導放送として説明する。
【0049】
また、制御部18は、自動火災報知設備16から火災復旧信号の受信を検知した場合、又は操作部19による放送停止操作を検知した場合、放送再生装置12の共通アドレスを含む放送終了制御信号を送信する制御を行い、放送再生装置12による避難誘導放送の指向性スピーカ14からの再生出力を停止させる。
【0050】
[放送再生装置の構成]
(機能構成の概略)
図3は避難経路の一例となる廊下部分又は階段部分に配置する放送再生装置の概略構成を示したブロック図である。図3において、放送再生装置12は、再生制御部24、通信部26、音声記憶部28、再生増幅部30を備え、図示しない予備電源(バッテリー)付きの電源部からの直流電源の供給を受けて動作する。再生制御部24はCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路またはワイヤードロジック回路等を使用する。
【0051】
通信部26は、再生制御部24の指示を受け、センタ側に配置した放送制御装置10との間で信号を送受信する。音声記憶部28には、対応する指向性スピーカ14の設置場所に対応した避難誘導放送における所定の放送フレーズの音声データ(男声と女声の音声データ)を予め記憶している。
【0052】
この音声データは、例えば指向性スピーカ14を廊下部分に設置した場合、避難口までの距離を示す内容の放送フレーズに対応した音声データとなる。この場合の放送フレーズの音声データは例えば「「避難口まで あとXXメートルです」とする。ここで、「XX」は、指向性スピーカ14の設置位置から避難先となる避難口までの距離であり、スピーカ設置位置に対応した固有の距離を予め設定している。
【0053】
また、廊下部分に設置した指向性スピーカ14から出力する避難誘導放送の放送フレーズには、「避難口」又は「避難階段」との言葉を必ず含むようにし、避難者に避難口又は避難階段の近くに到達しつつあることを明快に理解させることができるようにする。
【0054】
また、指向性スピーカ14を階段部分に設置した場合避難誘導放送における所定の放送フレーズの音声データは、避難階の途中まで階は「ここはYY階です 避難階はZZ階です」とし、避難階は「ここは避難階です」とする。ここで、「YY」は、指向性スピーカ14の設置階の数値、「ZZ」は避難階の数値であり、スピーカ設置位置に対応した固有の数値を予め設定している。
【0055】
また、階段部分に設置した指向性スピーカ14から出力する避難誘導放送の放送フレーズには、「避難階」の言葉を必ず含むようにし、避難者が避難口の近くに到達したことを理解できるようにする。
【0056】
また、階段部分に指向性スピーカ14を設けて避難誘導放送を行う場合、上下に隣接する階に使用する放送フレーズは、主な周波数成分を変えるか、或いは、母音が同じ発音となる隣接する階については、何れか一方または両方の階を示す放送フレーズの中の「ここはYY階です」の部分は出力しないようにする。
【0057】
例えば「ここは1階です」と「ここは2階です」の場合、「1階」と「2階」の母音は「―いー」階と発音が類似している。そこで、階を示す放送フレーズの部分は、例えば偶数階だけとし、避難者が明瞭に聞き分けることができるようにする。即ち、偶数階の放送フレーズは「ここはYY階です 避難階はZZ階です」とし、奇数階の放送フレーズは「避難階はZZ階です」とする。
【0058】
再生増幅部30は、再生制御部24により音声記憶部28の音声データから生成した避難誘導放送信号を入力して増幅し、指向性スピーカ14から出力させる。
【0059】
再生制御部24は例えばCPUによるプログラムの実行で実現する機能である。再生制御部24は、指向性スピーカ14の放送視聴可能な防護範囲を、避難者が避難場所に対応した所定の移動速度で通過した場合の通過時間に、少なくとも2周期が入るように所定の放送周期Tを予め設定しており、通信部26を介して放送制御装置10からの放送開始制御信号の有効受信を検知した場合、予め設定した放送周期T毎に指向性スピーカ14から所定の放送フレーズの避難誘導放送を繰り返し出力する制御を行う。ここで、放送フレーズの時間は、放送周期Tと同じ時間とする。
【0060】
なお、「制御信号の有効受信」とは、受信した信号に含まれる共通アドレスを認識するか、または受信した信号に含まれる宛先アドレスがメモリに予め登録した自己アドレスに一致することを認識し、更に、信号内容としても異常が無いことを認識したことを意味する。以下、このような有効受信を含め、単に受信ということがある。
【0061】
(廊下部分の避難誘導放送制御)
図4は、廊下部分に指向性スピーカを設置した場合を示した説明図である。図4に示すように、避難口34に向かう廊下32に指向性スピーカ14−4〜14−1を配置した場合、再生制御部24は、所定間隔Lで配置した指向性スピーカ14−4〜14−1の防護範囲36−4〜36−1を、矢印Aで示す避難方向に向けて所定の廊下移動速度で避難者が移動した場合の通過時間に、少なくとも2周期が入るように所定の放送周期Tを予め設定しており、放送制御装置10からの放送開始制御信号の有効受信を検知した場合、放送周期T毎に、指向性スピーカ14−4〜14−1から避難誘導放送の放送フレーズを繰り返し出力する制御を行う。この放送フレーズの時間は、放送周期Tと同じ時間であり、この放送フレーズの時間を、所定時間の空白フレーズと所定時間の音声フレーズに分けたフレーズ構成とする。
【0062】
また、指向性スピーカ14−1〜14−1の間隔Lは、各スピーカによる放送視聴可能な防護範囲36−4〜36−1が、隣接するスピーカの防護範囲に接するか又は一部重複して続くように設定している。
【0063】
図5は、図4の廊下部分に指向性スピーカを配置した場合の放送周期の設定に必要なパラメータを示した説明図であり、図5(A)に種別に応じた歩行速度を示し、図5(B)に廊下の指向性スピーカ設置条件を示し、図5(C)に廊下の放送周期と計算条件を示し、更に図5(D)に廊下用避難誘導放送のフレーズ構成を示している。
【0064】
図5(C)の廊下歩行速度は、図5(A)から1.3[m/秒]を選択し、防護範囲通過長は図5(B)の鳴動半径に基づき、その2倍の鳴動直径となる6.0[m]を設定し、防護範囲の通過時間を次式で算出する。
(防護範囲通過時間)=(防護範囲通過長)/(廊下歩行速度)=4.8[秒]
放送周期Tは、防護範囲の通過時間4.8[秒]に、少なくとも2周期が入るように設定することから、通過時間の半分の2.4[秒]以下の時間であり、図5(C)では最大放送周期として2.4[秒]を示し、実際の設定放送周期も最大放送周期と同じ2.4[秒]を設定している。
【0065】
このように放送周期2.4[秒]が決まると、図5(D)のように、放送フレーズの時間も放送周期と同じ2.4[秒]とする。そして、放送フレーズの時間に対し、音声フレーズに例えば1.8[秒]を割り当て、空白フレーズに残りの0.6[秒]を割り当てている。なお、放送フレーズの中に割り当てた音声フレーズは例えば1.8[秒]と短いことから、音声フレーズの内容は、避難場所までの距離を理解可能な範囲で、できるだけ短い簡潔な表現とする。
【0066】
図6は、図4の廊下部分に指向性スピーカを設置した場合の避難誘導放送制御における避難者の歩行時間、廊下の水平距離、指向性スピーカの防護範囲、避難誘導放送の放送フレーズの関係を示した説明図である。
【0067】
図6にあっては、避難口を起点に歩行時間と歩行距離を示し、これに対応して指向性スピーカ14−1,14−2の防護範囲36−1,36−2を示し、防護範囲36−1,36−2については、避難誘導放送の放送フレーズを第1フレーズ38−21,38−11と第2フレーズ38−22,38−12に分けて示し、更に各フレーズ38−11〜38−22については、音声フレーズと空白フレーズを識別表示している。
【0068】
図6において、避難方向Aで示すように、避難口へ向かう避難者が例えば指向性スピーカ14−2の防護範囲36−2に入ると、歩行速度が放送周期の設定に使用した1.3[m/秒]の場合、4.8秒かかって防護範囲36−2を通過する。このとき避難者が防護範囲36−2に入ったタイミングで避難誘導放送の放送フレーズ「避難口まで あと12メートルです」となる第1フレーズ38−21の出力を開始したとすると、避難者は指向性スピーカ14−2に達する移動時間2.4[秒]の間に、避難誘導放送の第1フレーズ38−21を、始めから終わりまで完全に聞くことができる。続いて避難者は、防護範囲36−2の残り距離を通過する2.4[秒]の間に避難誘導放送の第2フレーズ38−22を、始めから終わりまで完全に聞くことができる。
【0069】
即ち、防護範囲36−2への進入と放送フレーズの開始タイミングが一致すると、避難者は防護範囲36−2を通過している間に、避難誘導放送の放送フレーズを2回続けて聞くことができる。
【0070】
一方、避難者が防護範囲36−2を通過中の任意のタイミングで避難誘導放送が開始された場合、最初の放送フレーズは途中から聞くことになるが、次の放送フレーズは始めから終わりまで完全に聞くことができ、3回目の放送フレーズは途中で聞こえなくなる。
【0071】
指向性スピーカ14−2の防護領域36−2を通過した避難者は、続いて隣接する指向性スピーカ14−1の防護範囲36−1に入るが、この場合にも、指向性スピーカ14−1による避難誘導放送の放送フレーズ「避難口まで あと6メートルです」を、少なくとも1回は始めから終わりまで完全に聞くことができる。
【0072】
また避難者は防護範囲36−2で聞いた「避難口まで あと12メートルです」に続いて防護範囲36−1に入ると「避難口まで あと6メートルです」を聞くこととなり、避難口へ向かいながら、略途切れることなく避難口へ近づいていることを示す避難誘導放送の放送フレーズを連続して聞くことができる。
【0073】
このように避難者は、避難口へ向かって移動しながら、避難口までの距離を示す避難誘導放送の放送フレーズを順番に聞くことで、火災発生に伴い混乱した状況の中にあっても、落ち着いた避難行動が可能となり、迅速且つ安全に避難することを可能とする。また、煙により視界が遮られた場合や、目の不自由な避難者であっても、音声による避難誘導であることから、避難口までの距離を知ることで、迅速且つ安全な避難行動が可能となる。
【0074】
(階段部分の避難誘導放送制御)
図7は、階段部分に指向性スピーカを設置した場合を示した説明図である。図7にあっては、建物の1〜3階に対応した階段部分40に指向性スピーカ14−1〜14−3を設置している。この例では、1階に避難口44を設けていることから、階段の下り方向が避難方向Aとなる。
【0075】
ここで、階段で結ぶ各階の高さをHとすると、指向性スピーカ14−1〜14−3の設置間隔もHとなり、また指向性スピーカ14−1〜14−3は、各階を結ぶ階段中央の踊場に対応した位置に配置していることから、上下に位置する階からH/2の距離となる位置に配置している。このため1階当りの階段の垂直方向の移動距離はHであり、またスピーカ位置までの垂直方向の移動距離はH/2となる。また、階段の水平方向の移動距離はWであり、階段の勾配を定義する垂直比は、(垂直距離H)/(水平距離W)で与えられ、本実施形態では垂直比を0.5とした場合を例にとっている。
【0076】
再生制御部24は、図7に示すように、避難口44に向かう階段部分40に指向性スピーカ14−1〜14−3を配置した場合、高さ方向に所定間隔Hで配置した指向性スピーカ14−1〜14−3の防護範囲42−1〜42−3を、下り避難方向に向けて所定の階段下り移動速度で避難者が移動した場合の通過時間に、少なくとも2周期が入るように所定の放送周期Tを予め設定しており、放送制御装置10からの放送開始制御信号の有効受信を検知した場合、放送周期T毎に、指向性スピーカ14−1〜14−3から避難誘導放送の放送フレーズを繰り返し出力する制御を行う。この放送フレーズの時間は、放送周期Tと同じ時間であり、この放送フレーズの時間を所定時間の空白フレーズと所定時間の音声フレーズに分けたフレーズ構成とする。
【0077】
また、指向性スピーカ14−1〜14−1の間隔Hは、各スピーカによる放送視聴可能な防護範囲42−1〜42−3が、隣接するスピーカの防護範囲に接するか又は一部重複して続くように設定している。
【0078】
図8は、図7の階段部分に指向性スピーカを配置した場合の放送周期の設定に必要なパラメータを示した説明図であり、図8(A)に種別に応じた歩行速度を示し、図8(B)に階段下りの指向性スピーカ設置条件を示し、図8(C)に階段下りの放送周期と計算条件を示し、更に図8(D)に階段下り用避難誘導放送のフレーズ構成を示している。
【0079】
図8(C)の廊下歩行速度は、図8(A)から階段下りの歩行速度である0.8[m/秒]を選択し、防護範囲通過長として1階分の水平方向の移動距離6.0[m]を近似的に設定している。なお、1階分の水平移動距離6.0[m]、1階分の垂直移動距離3.0[m]及び垂直比0.5に基づいて算出した、1階分の勾配方向の移動距離6.7[m]を防護範囲通過長に設定して放送周期を求めても良い。
【0080】
この階段下りの歩行速度と防護範囲通過長から次式により防護範囲の通過時間を算出する。
(防護範囲通過時間)=(防護範囲通過長)/(廊下歩行速度)=7.5[秒]
放送周期Tは、防護範囲の通過時間7.5[秒]に、少なくとも2周期が入るように設定することから、通過時間の半分の3.75[秒]以下の時間であり、図8(C)では最大放送周期として3.75[秒]を示し、実際の設定放送周期はそれより短い3.0[秒]を設定している。
【0081】
このように放送周期3.0[秒]が決まると、図5(D)のように、放送フレーズの時間も放送周期と同じ3.0[秒]とする。そして、放送フレーズの時間に対し、音声フレーズに例えば2.1[秒]を割り当て、空白フレーズに残りの0.9[秒]を割り当てている。なお、放送フレーズの中に割り当てた音声フレーズは例えば2.1[秒]と短いことから、音声フレーズの内容は、避難場所までの距離を理解可能な範囲で、できるだけ短い簡潔な表現とする。
【0082】
図9は、図7の廊下部分に指向性スピーカを設置した場合の避難誘導放送制御における避難者の歩行時間、階段の水平距離、階段の垂直距離、指向性スピーカの防護範囲、避難誘導放送の放送フレーズの関係を示した説明図である。
【0083】
図9にあっては、最上階のフロアを起点に歩行時間と歩行距離を示し、これに対応して指向性スピーカ14−1,14−2の防護範囲42−1,42−2を示している。なお、指向性スピーカ14−2は、指向性スピーカ14−1から垂直距離で6m下に位置するが、図示の範囲から外れることから図示していない。
【0084】
指向性スピーカ14−1,14−2の防護範囲42−1,42−2については、避難誘導放送の放送フレーズを第1フレーズ46−21,46−11と第2フレーズ46−22,46−12に分けて示し、更に各フレーズ46−11〜46−22については、音声フレーズと空白フレーズを識別表示している。
【0085】
図9において、例えば避難方向Aに示すように、最上階フロアから階段を下って非常口44へ避難する避難者が、例えば指向性スピーカ14−1の防護範囲42−1に入ると、その階段を下る歩行速度が設定した0.8[m/秒]の場合、6.0[秒]かかって防護範囲42−1を通過する。このとき避難者が防護範囲42−1に入ったタイミングで、「ここは3階です 避難階は1階です」とする避難誘導放送の第1フレーズ46−11を開始したとすると、避難者は指向性スピーカ14−1の位置に達する前の移動時間3.0[秒]の間に、避難誘導放送の1フレーズ46−11を、始めから終わりまで完全に聞くことができる。
【0086】
続いて避難者は、防護範囲42−1の残り距離を通過する3.0[秒]の間に避難誘導放送の第2フレーズ42−12を、始めから終わりまで完全に聞くことができる。更に、避難者は、防護範囲42−1の出るまでの間に、再び避難誘導放送の第1フレーズ46−11を途中まで聞くことができる。
【0087】
このように防護範囲42−1への避難者の進入と放送フレーズの開始タイミングが一致すると、避難者は防護範囲42−1を通過している間に、最初と次の放送フレーズの2回を完全に聞くことができ、最後の放送フレーズは途中まで聞くことができる。
【0088】
一方、避難者が防護範囲42−1を通過中の任意のタイミングで避難誘導放送が開始された場合、1.5[秒]以内のタイミングずれであれば、最初の放送フレーズは途中から聞くことができ、2番目と3番目の放送フレーズは完全に聞くことができ、最後の放送フレーズは途中まで聞くことができる。更に、1.5[秒]を超えるタイミングずれであれば、最初の放送フレーズは途中から聞くことができ、次の放送フレーズは完全に聞くことができ、最後の放送フレーズは途中まで聞くことかできる。
【0089】
この結果、どのようなタイミングであっても、防護範囲42−1を通過する避難者は、避難誘導放送の少なくとも1回は、放送フレームは始めから終わりまで完全に聞くことができる。
【0090】
続いて、指向性スピーカ14−1の防護領域42−1を通過した避難者は、下の階の指向性スピーカ14−2(図示なし)の防護範囲42−2に入るが、この場合にも、指向性スピーカ14−2による避難誘導放送の放送フレーズ「ここは2階です 避難階は1階です」を、少なくとも1回は、始めから終わりまで完全に聞くことができる。
【0091】
また避難者は防護範囲42−1で聞いた「ここは3階です 避難階は1階です」に続いて防護範囲42−2に入ると「ここは2階です 避難階は1階です」を聞くこととなり、避難口へ向かいながら、略途切れることなく避難口へ近づいていることを示す避難誘導放送を連続して聞くことができる。
【0092】
このように避難者は、避難口へ向かって階段を下りながら、階数により避難口までの距離を示す避難誘導放送を聞くことで、火災発生に伴い混乱した状況の中にあっても、落ち着いた避難行動が可能となり、迅速且つ安全に避難することを可能とする。また、煙により視界が遮られた場合や、目の不自由な避難者であっても、音声による避難誘導であることから、避難口までの距離を知ることで、迅速且つ安全な避難行動が可能となる。
【0093】
[本発明の変形例]
(避難階段上りの避難誘導放送制御)
上記の実施形態は、避難階を1階とし、階段を下る場合の避難誘導制御を例にとっているが、屋上が避難階となる場合には、放送周期の設定に使用する歩行速度を、階段上り歩行速度として0.6[m/秒]を選択し、階段を下る場合と同様に、階段上り走行速度と水平通過距離から防護範囲の通過時間を求め、この通過時間に少なくとも2周期が入るように放送周期を設定し、この放送周期毎に避難誘導放送の放送フレーズを出力することで、指向性スピーカを配置した防護範囲の階段を避難階となる屋上へ向かう場合にも、避難誘導放送により避難階が近づいていることを聞きながら、慌てることなく安全に避難できる。
【0094】
(指向性スピーカの配置間隔)
また、上記の実施形態にあっては、例えば避難経路となる廊下部分に、指向性スピーカの防護範囲を、間を空けずに連続するように設定しているが、指向性スピーカの配置間隔を例えば10m間隔というように広げると、指向性スピーカの防護範囲は、間を空けて連続するようになる。このような場合であっても、防護範囲の通過長と避難者の移動速度に基づいて設定した放送周期毎に、指向性スピーカから避難誘導放送の放送フレーズを繰り返し出力することで、避難場所に向かう避難者は、指向性スピーカの間の中間点で放送が一時的に聞こえなくはなるが、間を置いた指向性スピーカの防護範囲を通過する毎に、そこから避難場所までの距離を示す避難誘導放送の放送フレーズを、少なくとも1回は完全に聞くことができる。
【0095】
(反対方向への避難の抑止)
また上記の実施形態では、指向性スピーカを単独で設置しているが、指向性スピーカに表示灯を組み合わせて表示灯兼用指向性スピーカとし、例えば避難口の方向を表示し、これにより避難方向を誤ることを防止可能とする。
【0096】
(誘導灯)
また、避難口に設置している誘導灯にスピーカを設け、自動火災報知設備と連動して音声と光点点滅で避難方向を知らせるようにしている場合については、この誘導灯のスピーカを、指向性スピーカとしても良い。この場合、誘導灯の指向性スピーカからは例えば「避難口はこちらです」といった音声メッセージを、シグナル音やスイープ音と組み合わせて繰り返し出力する。
【0097】
(火災以外の避難誘導)
上記の実施形態は、火災が発生した場合の避難誘導放送を例にとるものであったが、これ以外に地震などの非常災害が発生した場合の避難誘導放送についても同様に適用できる。
【0098】
(建物以外の用途)
また避難誘導システムはビルや集合住宅などの建物に限定されず、多くの人の出入りする適宜の施設や場所に適用できる。
【0099】
(その他)
避難誘導放送は、火災発生場所に応じて、避難する優先度が高い区域の指向性スピーカからのみ避難誘導放送を行い、火災の拡大状況に応じて避難誘導放送を行う地区を変化させるようにしてもよい。
【0100】
また、避難誘導放送に合わせて、非常時に使用する消火器、消火栓や発信機の防災機器の付近あるいは機器と一体に指向性スピーカを設置して、避難誘導放送、防災機器の設置位置を示す放送や防災機器の使用方法を放送するようにしてもよい。
【0101】
また本発明はその目的と利点を損なうことにない適宜の変形を含み、また上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0102】
10:放送制御装置
12:放送再生装置
14,14−1〜14−6,14−11〜14−46:指向性スピーカ
16:自動火災報知設備
18:制御部
19:操作部
20:表示部
21:マイク
22,26:通信部
24:再生制御部
28:音声記憶部
30:再生増幅部
32:廊下
34,44:避難口
36,42:防護範囲
40:階段部分
100:非常放送設備

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9