特許第6117579号(P6117579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6117579-浸漬ノズル 図000007
  • 6117579-浸漬ノズル 図000008
  • 6117579-浸漬ノズル 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117579
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】浸漬ノズル
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/10 20060101AFI20170410BHJP
   B22D 41/50 20060101ALI20170410BHJP
   B22D 41/58 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   B22D11/10 330E
   B22D11/10 330C
   B22D11/10 360A
   B22D41/50 520
   B22D41/58
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-56898(P2013-56898)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180688(P2014-180688A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】714003416
【氏名又は名称】日新製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 譲二
(72)【発明者】
【氏名】山口 太
(72)【発明者】
【氏名】立川 孝一
(72)【発明者】
【氏名】大武 淳一
【審査官】 荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−018562(JP,A)
【文献】 実開昭53−160412(JP,U)
【文献】 特開昭49−026125(JP,A)
【文献】 特開昭54−008117(JP,A)
【文献】 特開2004−106021(JP,A)
【文献】 特開2004−344900(JP,A)
【文献】 太田裕己ら,超清浄軸受鋼の取鍋精錬時におけるCaO含有介在物の挙動,R&D 神戸製鋼技報,株式会社神戸製鋼所 技術開発本部,2011年 4月,Vol.61, No.1,pp.98-101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00−11/10
B22D 41/00−41/58
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鋼の吐出孔を鋳型長辺に平行な方向の左右対称に2ヶ所有し、溶鋼吐出方向に直角な吐出孔断面の単位面積当たりの溶鋼吐出速度が12.7kg/(min・cm)〜20.4kg/(min・cm、通鋼量が0.5〜0.8t/minであり、1〜3NL/minの流量で不活性ガスが吹き込まれている溶鋼を、長辺が1000mm〜1500mm、短辺が180〜220mmの鋳型へ注入する鋼の連続鋳造用の浸漬ノズルであって
前記吐出孔の内壁面が溶鋼吐出方向に平行であり、かつこの内壁面によって形成される導出部の長さが25mm〜45mmであり、
溶鋼吐出角度が下向きに0°〜15°である浸漬ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼の連続鋳造においてタンデッシュから鋳型に溶鋼を注入するために使用される浸漬ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造操業においては、鋳片の品質を確保すると共に安全かつ円滑な操業を維持するため、鋳型内の溶鋼流動の適正化し、偏流を防止すると共に鋳型内における溶鋼面流動を確保することが重要である。特に、鋳型短辺近くでの上昇流及び鋳型全体の溶鋼表面付近に必要な溶鋼流(反転流)を安定的に形成させることが重要である。
【0003】
従来、鋳型内の溶鋼流動の適正化を図るための浸漬ノズルとして、特許文献1の浸漬ノズルが知られている。この特許文献1の浸漬ノズルは、長辺が2000mm以上かつ短辺が150mm以下の鋳型に、通鋼量が1.8〜4.5
t/min以下の溶鋼を注入するために使用されるもので、その吐出孔の内壁面によって形成される導出部の長さを45mm以上とすることで、吐出孔から流出する時点の溶鋼流をできるだけ拡散させず直線的に形成させ、これによって鋳型短辺近くでの上昇流及び鋳型全体の溶鋼表面付近に必要な溶鋼流を安定的に形成させようとするものである。
【0004】
しかしながら、本発明者らが特許文献1の浸漬ノズルを使用して、不活性ガスが吹き込まれている溶鋼を通鋼量が0.5〜0.8t/minという低鋳造速度にて、長辺が1000mm〜1500mmの鋳型に注入する試験を行ったところ、特許文献1の教えに反し、鋳型短辺近くでの上昇流及び鋳型全体の溶鋼表面付近に必要な溶鋼流を安定的に形成させることができないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5044379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、不活性ガスが吹き込まれている溶鋼を低鋳造速度で注入する際に、鋳型短辺近くでの上昇流及び鋳型全体の溶鋼表面付近に必要な溶鋼流を安定的に形成させることができる浸漬ノズルを提供することにある。ひいては、鋳片品質を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、溶鋼の吐出孔を鋳型長辺に平行な方向の左右対称に2ヶ所有し、溶鋼吐出方向に直角な吐出孔断面の単位面積当たりの溶鋼吐出速度が12.7kg/(min・cm)〜20.4kg/(min・cm、通鋼量が0.5〜0.8t/minであり、1〜3NL/minの流量で不活性ガスが吹き込まれている溶鋼を、長辺が1000mm〜1500mm、短辺が180〜220mmの鋳型へ注入する鋼の連続鋳造用の浸漬ノズルであって、前記吐出孔の内壁面が溶鋼吐出方向に平行であり、かつこの内壁面によって形成される導出部の長さが25mm〜45mmであり、溶鋼吐出角度が下向きに0°〜15°である浸漬ノズルが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浸漬ノズルの吐出孔を上記のように構成したことで、不活性ガスが吹き込まれている溶鋼を低鋳造速度で注入する際に、鋳型短辺近くでの上昇流及び鋳型全体の溶鋼表面付近に必要な溶鋼流を安定的に形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による浸漬ノズルの使用状態を示す断面図である。
図2】鋳型内の溶鋼流動の適正例を示すイメージ図である。
図3】鋳型内の溶鋼流動の不適正例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による浸漬ノズルの使用状態を示す断面図である。浸漬ノズル10は上端に設けられた溶鋼の導入部11から溶鋼が下方に通過する上下縦方向にパイプ状の直胴部12と、この直胴部12の下部に設けられ、溶鋼を直胴部12の側面から横方向に吐出する左右対称となる一対の吐出孔13とを有する。溶鋼は吐出孔13から鋳型短辺21に向けて鋳型長辺に平行な方向に吐出される。すなわち、吐出孔13は鋳型長辺に平行な方向の左右対称に2ヶ所設けられている。
【0011】
吐出孔13の内壁面の形状は溶鋼吐出方向S(吐出孔13の中心軸の長手方向)に平行な直線状であり、この内壁面によって導出部が形成されている。本発明では、この導出部の長さLを25mm〜45mmとする。この導出部の長さはいずれの位置でも25mm〜45mmであることが必要である。
【0012】
また本発明では、溶鋼吐出角度θは下向きに0°〜15°とする。すなわち、吐出孔13の中心軸が水平となす角度θが、下向きで0°〜15°である。
【0013】
浸漬ノズル10の上方には不活性ガスを吹き込む上ノズル30が配置されており、この上ノズル30から不活性ガスが1〜3NL/minの流量で溶鋼内に吹き込まれる。本発明の浸漬ノズル10は、この不活性ガスが吹き込まれている溶鋼を長辺が1000mm〜1500mmの鋳型20へ注入し、このとき溶鋼吐出方向Sに直角な吐出孔断面の単位面積当たりの溶鋼吐出速度は12.7kg/(min・cm)〜20.4kg/(min・cm)とする。なお、鋳型短辺の長さは技術常識の範囲内で決定され、例えば180mm〜220mmの範囲内である。
【0014】
以下、本発明の浸漬ノズルの効果を検証するために行った水モデル実験の結果を示す。
【0015】
水モデル実験において想定した実操業の諸条件は次のとおりである。
鋳型サイズ;1500mm×200mm
スループット;0.5、0.8 ton/min
【0016】
上記実操業の諸条件に対応して設定した水モデル実験の諸条件は次のとおりである。
鋳型サイズ;1500mm×200mm
スループット;69、111 L/min
【0017】
なお、以下の各実験例における溶鋼吐出速度12.7kg/(min・cm)及び20.4kg/(min・cm)は通鋼量に換算するとそれぞれ0.5t/min及び0.8t/minに相当する。また、不活性ガスの吹き込み量は2NL/minとし、鋳型短辺の長さは200mmとした。本発明者らは、不活性ガスの吹き込み量及び鋳型短辺の長さについては、それぞれ1〜3NL/min及び180mm〜220mmの範囲内では溶鋼流動に差がないことを確認している。
【0018】
[実験例1]
実験例1は吐出孔の導出部の長さLを変化させた実験例である。その結果を表1に示す。なお、表1において溶鋼吐出角度θは、水平に対して下向きをマイナス、上向きをプラスとして表示している。後述する各表においても同様である。
【0019】
【表1】
【0020】
合否判定は、反転流速が5(m/s)以上であるか否かにより行った。この反転流速とは、図2に示すように鋳型内の溶鋼表面付近に生じる反転流の流速のことで、本発明者らはこの反転流速が5(m/s)以上であると実操業において適正な溶鋼流動が得られることを確認している。この図2は鋳型内の溶鋼流動の適正例を示すイメージ図である。一方、図3は鋳型内の溶鋼流動の不適正例を示すイメージ図である。図3では反転流が得られていない。なお、表1において反転流速は図2に示す方向をプラスとし、その反対方向をマイナスとして表示している。後述する各表においても同様である。
【0021】
表1より、吐出孔の導出部の長さLが25mm〜45mmの範囲で適正な溶鋼流動が得られることがわかる。この導出部の長さLの適正範囲は、上記特許文献1の教えに反するもので当業者の予想に反する結果である。
【0022】
[実験例2]
実験例2は表1の各実施例について本発明の範囲内で溶鋼吐出速度及び鋳型長辺の長さを変化させた実験例である。その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】
【0024】
表2に示すように、いずれの実施例でも適正な溶鋼流動が得られることがわかる。
【0025】
[実験例3]
実験例3は溶鋼吐出角度θを変化させた実験例である。その結果を表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
表3より、溶鋼吐出角度θが下向きに0°〜15°の範囲で適正な溶鋼流動が得られることがわかる。
【0028】
[実験例4]
実験例4は本発明の範囲内で、吐出孔の導出部の長さL、溶鋼吐出角度θ、溶鋼吐出速度及び鋳型長辺の長さを変化させた実験例である。その結果を表4及び表5に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
表4及び表5に示すように、いずれの実施例でも適正な溶鋼流動が得られることがわかる。
【0032】
以上より、溶鋼吐出速度が12.7kg/(min・cm)〜20.4kg/(min・cm)であり、1〜3NL/minの流量で不活性ガスが吹き込まれている溶鋼を、長辺が1000mm〜1500mmの鋳型へ注入する場合、浸漬ノズルの吐出孔の導出部の長さLを25mm〜45mm、かつ溶鋼吐出角度を下向きに0°〜15°とすることで、適正な溶鋼流動が得られることがわかる。
【実施例】
【0033】
実施例として上記表1の実施例3の形状による浸漬ノズル、及び比較例として上記表1の比較例1の形状において溶鋼吐出角度θを上向き5°に変更した浸漬ノズルをそれぞれ実操業に供した。この実操業における鋳型サイズは長辺1500mm、短辺200mmであり、不活性ガスの吹き込み量は2NL/minとし、溶鋼吐出速度は12.7kg/(min・cm)及び20.4kg12.7kg/(min・cm)の2パターンとした。
【0034】
実操業の結果、実施例では比較例に比べ、鋳型内の溶鋼流動形態を要因とする鋳片の品質不良発生率が約50%減少し、本発明により適正な溶鋼流動が顕著に得られること、及び、この鋳型内溶鋼流動の改善により顕著に鋳片品質を改善することができることが確認された。
【符号の説明】
【0035】
10 浸漬ノズル
11 導入部
12 直胴部
13 吐出孔
20 鋳型
21 鋳型短辺
30 上ノズル
図1
図2
図3