(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
データセンタにおけるIT装置(情報装置)やICT装置(情報通信装置)が収納されるフロア内の温度分布等の温度環境を詳細にモニタリングするため、室内に複数の温度センサ(マルチ温度センサ)を設置したソリューションが増えてきている。これらの温度センサで測定された温度情報を、温度環境のモニタリングだけに用いるのではなく、別途設置されている空調システムの制御に用いる方法が提案されている。具体的には、空調システムにおける空調機群の出力制御に対して上述の温度情報をフィードバックする制御を行い、ICT装置等の冷却空気を取り込む吸込部の近傍に対して、きめ細やかな空調制御を行うことを目指す方法が提案されている。
【0003】
具体的には、室内を複数のゾーンに区分けして空調を行う空調システムにおいて、室内に温度センサが設けられていない箇所も含めて適切な空調のゾーニング制御を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、複数の温度センサによって得られる室内の各温度センサの温度とその位置に基づいて空調機器を制御することで、室内を適切な温度に制御することができる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらには、空調機が設備されたゾーン内の所望の位置に温度センサを配置し、1つの空調機ごとに順番に、その設定温度を所定の時間、所定の温度だけ変化させ、センサ温度の変化情報を収集し、この温度変化情報を基に温度センサが配置された位置における各空調機の影響度を求める技術も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。このようにすることにより温度センサが配置された位置に対するそれぞれの空調機の影響度を定量的に計測できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、フロア内に設置された複数の温度センサから出力された測定信号を用いて複数の空調機の出力(冷房能力)を制御する場合には、温度センサと制御される空調機との関連付けが求められる。この関連付けがなされていないと、空調機の効率を高める制御が難しくなるという問題があった。
【0007】
しかしながら近年のデータセンタにおける運用では、ICT装置の追加配置や、配置位置の変更などが頻繁に行われる。この場合、追加配置や配置変更のたびに温度センサと空調機との関連付けを更新する必要がある。その結果、上述の関連付けを用いた制御は行われず、複数の温度センサはフロア内の温度分布の可視化や温度環境の監視等のみを目的として設置されるに留まっているという問題があった。
【0008】
また、ICT装置が収納されるラックが将来設置される位置を図面情報として予め準備しておき、ICT装置の追加配置や、配置位置の変更に対応する方法も考えられる。しかしながら、幅の異なるラックが混在するため、ラックが将来設置される位置を決定することは難しく、実際の対応が困難であるという問題があった。
【0009】
上述の特許文献1に記載の技術は、単一の室内を複数のゾーンに区分けするために、センサが設置されていないゾーンのゾーニングの適切化を目的としたものであるため、ICT装置における高温障害の発生を回避しつつ、消費エネルギの低減を図るのが難しいという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の技術は、空調機の風向き変化と風温変化によってセンサ位置を定義するものであり、稼働中のデータセンタにおいては変化させることが困難なため、ICT装置における高温障害の発生を回避しつつ、消費エネルギの低減を図るのが難しいという問題があった。
【0011】
特許文献3に記載の技術は、ICT装置やセンサの増設時において関連付けが困難であるため、ICT装置における高温障害の発生を回避しつつ、消費エネルギの低減を図るのが難しいという問題があった。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、温度調整の信頼性を確保するとともに、消費電力の削減を図ることができる空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の空調システムは、複数の演算装置が収納される所定区画内の空気を冷却する空調機を複数備えた空冷式冷却部と、前記複数の空調機における冷房能力を制御する制御部と、が設けられ、前記空調機は、前記演算装置を収納するとともに並んで配置された複数のラックの間であるホットアイルおよびコールドアイルのうち、該コールドアイルに冷却された空気を吹き出す位置に配置され、前記制御部は、入力された前記演算装置に関する温度情報に基づいて温度が所定の上方閾値以上である前記演算装置を特定し、特定された演算装置が収納された前記ラックに最も近い前記空調機を選択し、当該空調機の冷房能力を高める制御を行うことを特徴とすることを特徴とする。
【0014】
本発明の空調システムによれば、演算装置と比較して位置情報の変動が少ないラックと空調機との距離に基づいて冷房能力を制御する空調機を選択することにより、演算装置の増設や移動があっても、冷房能力を制御する空調機の選択が行いやすくなるとともに、誤った空調機が選択されにくくなる。
【0015】
つまり、演算装置と空調機との距離に基づいて冷房能力を制御する空調機を選択する場合には、演算装置の増設や配置位置が移動されるたびにその演算装置と空調機との位置関係を更新する必要があり、当該更新がなされていないと適切な空調機が選択できない可能性があった。これに対して演算装置が収納されるラックは、その配置予定列が所定空間の構築時から変更されることが少ない。ラックの列と空調機との間の距離に基づいて冷房能力を制御する空調機を選択すれば、所定空間の構築時にラックの列と空調機との距離を予め定義することは容易となる。特に、所定空間が二重床式の部屋である場合には、ラックの間の通路面を所定空間の構築時に決定するため、ラックの列と空調機との距離を予め定義することは更に容易となる。そのため、演算装置の増設等に容易に対応でき、かつ、増設等された演算装置に応じて適切な空調機の選択を行いやすくなる。なお、演算装置に関する温度情報としては、演算装置に用いられている電子機器の温度や、演算装置内部の温度や、演算装置が収納されるラックの周辺温度などを例示することができる。
【0016】
上記発明において前記制御部は、前記選択した空調機の冷房能力を高める制御を行った後、前記特定された演算装置の温度が前記所定の上方閾値以上であると判定された場合には、前記選択された空調機の冷房能力を更に高める制御を行うことが好ましい。
【0017】
このように選択した空調機の冷房能力を高める制御を行っても、演算装置が十分に冷却されず、その温度が所定の上方閾値以上である場合には、さらに選択された空調機の冷房能力を高めるため、温度調整の信頼性を確保しやすくなる。言い換えると、最初の冷房能力を高める制御によって冷却された空気が特定された演算装置の周辺に供給されてもなお、特定された演算装置の温度が所定の上方閾値未満に下がらない場合には、さらに選択された空調機の冷却能力を高めることにより、特定された演算装置の温度を下げる制御が行われる。これにより、演算装置に対する温度調整の信頼性を確保しやすくなる。
【0018】
上記発明において前記制御部は、選択した前記空調機の冷房能力に関する設定値と所定の冷房閾値とを比較し、当該冷房能力に関する設定値が前記所定の冷房閾値を超えている場合には、前記選択した空調機の次に前記特定された演算装置が収納された前記ラックに近い空調機を選択し、当該空調機の冷房能力を高める制御を行うことが好ましい。
【0019】
このように選択した空調機における冷房能力の余裕が少ない場合には、特定された演算装置が収納されたラックに次に近い空調機を選択して、当該空調機の冷房能力を高める制御を行うことにより、温度調整の信頼性をさらに確保しやすくなる。つまり、選択した空調機に冷房能力の余裕が少ないと、冷房能力を高める制御を行っても特定した演算装置を十分に冷やすことができないおそれがある。そのため、選択した空調機に冷房能力の余裕が少ない場合には、次に近い空調機の冷房能力を高める制御を行うことで、温度調整の信頼性を確保することができる。
【0020】
上記発明において前記制御部は、前記選択された空調機の冷房能力を高める制御を行った後、前記入力された温度情報に基づいて温度が所定の下方閾値以下である前記演算装置を特定し、前記冷却能力が高められた空調機を除き、前記特定された演算装置が収納された前記ラックに最も近い空調機を選択し、当該選択された空調機の冷房能力を弱める制御を行うことが好ましい。
【0021】
このように選択された空調機の冷能能力を高めたことにより、温度が所定の下方閾値以下になる演算装置が発生した場合には、選択された空調機とは別の空調機であって、温度が所定の下方閾値以下になる演算装置が収納されたラックに最も近い空調機を選択し、当該空調機の冷房能力を弱める制御を行うことにより、温度調整の信頼性を確保するとともに、消費電力の削減を図ることができる。
【0022】
つまり、温度が所定の上限閾値以上の演算装置に対して空調機の冷房能力を高める制御を行った結果、他の演算装置を冷やしすぎることになる場合には、他の演算装置を冷やす他の空調機の冷房能力を弱めることにより、空調システム全体としての消費電力の削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の空調システムによれば、演算装置と比較して位置情報の変動が少ないラックと空調機との距離に基づいて冷房能力を制御する空調機を選択することにより、温度調整の信頼性を確保するとともに、消費電力の削減を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態に係る空調システムについて、
図1から
図6を参照しながら説明する。
本実施形態では、データセンタの空調に本発明に係る空調システム1を用いた例に適用して説明する。
図1に示すように、データセンタにはIT(情報技術)装置やICT(情報通信技術)装置を構成する多数のサーバやコンピュータなどの演算装置60が、フロア(所定区画)F内にコールドアイルCおよびホットアイルHを形成するように配置されたラック65に収納されている。空調システム1は、これらの演算装置60から発生する大量の熱を処理するために用いられる。
【0026】
空調システム1には、演算装置60を冷却する空冷式冷却装置(空冷式冷却部)30と、空冷式冷却装置30を制御するコントロール部(冷却制御部)40と、が主に設けられている。
【0027】
空冷式冷却装置30はフロアFの室内空気を冷却し、冷却された室内空気を介して演算装置60を冷却するものである。空冷式冷却装置30には、冷凍サイクルを構成するフロアF内に配置されたベース空調機である空調機31と、フロアF外に配置された室外機(図示せず)と、が主に設けられている。空調機31には、冷凍サイクルを循環する冷媒が室内空気の熱を奪うことにより蒸発する蒸発器32と、フロアFから室内空気を吸い込むとともに、冷却後の室内空気をフロアFの床下空間FUへ吹出すブロア33と、が主に設けられている。
【0028】
ここでフロアFは床下空間FUが設けられた二重床構造を有している。床下空間FUに供給された冷却された室内空気は、コールドアイルCの床面からフロアFの室内空間FRへ吹出している。コールドアイルCに供給された室内空気は、演算装置60に設けられたファン61によってその内部に導かれ、CPU(中央演算ユニット)などの熱を発生する電子部品を冷却する。冷却後の室内空気は、演算装置60からホットアイルHへ吹出し、再び空調機31に吸い込まれる。
【0029】
コントロール部40は、空調システム1を統合的に制御するものであり、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するマイクロコンピュータである。ROM等に記憶されている制御プログラムは、CPUを空冷式冷却装置30の制御に必要な演算を行う演算部41として機能させるものであり、ROM等を記憶部42として機能させるものである。なお、コントロール部40による空調システム1の制御の詳細については後述する。
【0030】
コントロール部40には、
図2に示すように、演算装置温度センサ51、ラック温度センサ52から測定信号(演算装置に関する温度情報)が入力され、空調機31から設定温度の下限値などの設定情報が入力されている。その一方で、コントロール部40からは、空調機31へ冷房能力を制御する制御信号が出力されている。
【0031】
演算装置温度センサ51は演算装置60に設けられた温度センサであり、演算装置60の筺体内部の温度や、CPU等の発熱する電子部品など、演算装置60の温度を測定する際にセンサが配置される任意の場所に配置されるものである。
【0032】
なお、演算装置60の温度を測定する演算装置温度センサ51は、演算装置60に従来から設けられているセンサを用いてもよいし、新たに設けられたセンサを用いてもよく、特に限定するものではない。
【0033】
ラック温度センサ52はラック65に設けられた温度センサであり、配置位置の周辺におけるフロアFの室内空気の温度を測定するセンサである。演算装置温度センサ51や、ラック温度センサ52で測定された温度の信号は、具体的にはSNMP(Simple Network Managment Protocol)や、BACnet(Building Automation and Control Networking Protocol)等のプロトコル変換を経由して警報が取得されている。
【0034】
次に、上記の構成からなる空調システム1における制御について、
図3および
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
演算装置60におけるデータ処理(言い換えると演算処理)が開始されると空調システム1の運転も開始される。つまり、空冷式冷却装置30によるフロアF内の室内空気の冷却が開始される。上述のように空調システム1の運転が開始されるとコントロール部40の演算部41は、
図3に示すように、各部で測定された温度が上方閾値を超えているか否かを判定する処理を行う(S11)。具体的には、演算装置温度センサ51およびラック温度センサ52から入力された測定信号に基づいて、これらセンサが配置された位置における温度が、一部でも上方閾値を超えたか否かを判定する。
【0035】
図5(a)では、図中の左下の演算装置60Wに配置された演算装置温度センサ51における温度が上方閾値を超えた例、言い換えると温度が逸脱しているが示されている。なお、図においてハッチングの色が濃くなるに伴いセンサに測定される温度が高いことを示している。
【0036】
S11の判定において各部温度が上方閾値未満であると判定された場合(NOの場合)には、演算部41は、S11に戻り上述の判定処理を繰り返し行う。
その一方でS11の判定において各部温度が上方閾値を超えていると判定された場合(YESの場合)、温度が上方閾値を超えたセンサに係るラック65からの距離が最も短い空調機31(以下「1位の空調機31」と表記する。)を選定する処理を行う(S12)。具体的には複数のラック65が並ぶ方向の距離が最も短い1位の空調機31を選定する処理を行う。
【0037】
図5(a)の例で説明すると、演算装置60Wが収納されているラック65から、ラック65が並ぶ方向(図の左右方向)で最も近い空調機31である左端の空調機31が1位の空調機31として選定される。なお、空調機31に記載されている数字は上述のラック65からの距離の近い順を示す数字である。
【0038】
1位の空調機31が選択されると、演算部41は1位の空調機31における設定温度の下限値(冷房能力に関する設定値)が所定の冷房閾値を超えているか否かを判定する処理を行う(S13)。言い換えると1位の空調機31における冷房能力に余裕があるか否かを判定する処理を行う。ここで所定の冷房閾値は、予め定められた設定温度の最低閾値、空冷式冷却装置30における冷凍サイクルを駆動する圧縮機の駆動周波数の最大値、空調機31に供給される冷水の流量を制御する二方弁の開度最大閾値、冷房能力の最大閾値、ファンの回転周波数の最大閾値、他の空調機31の運転可能性を支配する部の閾値などを用いることができる。また、所定の冷房閾値は記憶部42に予め記憶されている。
【0039】
S13の判定で設定温度の下限値が所定の冷房閾値を超えていない、言い換えると、冷房能力に余裕があると判定された場合(NOの場合)、コントロール部40は、1位の空調機31に対して設定温度を下げる制御信号を出力する処理を行う(S14)。例えば、1位の空調機31における設定温度がT1℃であった場合、T1−X℃に変更する制御信号を出力する処理を行う。
【0040】
これにより1位の空調機31から吹出される室内空気の温度は制御前と比較して低くなり、温度が上方閾値を超えていると判定されたセンサの周囲における室内空気温度を低くすることができる。その結果、例えば
図5(b)に示すように、演算装置60Wの温度を上方閾値未満にすることができる。
【0041】
その後演算部41は、上述の各部の温度が上方閾値を超えている状態が解消されたか否かを判定する処理を行う(S15)。具体的には、S11の判定において温度が上方閾値を超えていたセンサにおいて、再び同様の判定を行い温度が上方閾値以下になったか否かを判定する処理が行われる。S15の判定で全ての各部温度が上方閾値以下になっていないと判定された場合(NOの場合)、演算部41は、再び1位の空調機31における設定温度の下限値が所定の冷房閾値を超えているか否かを判定する処理を行う(S16)。
【0042】
S16の判定で設定温度下限値が所定の冷房閾値を超えていないと判定された場合(NOの場合)、コントロール部40は、1位の空調機31に対して、更に、設定温度を下げる制御信号を出力する処理を行う(S17)。これにより、温度が上方閾値を超えていると判定されたセンサの周囲における室内空気温度をさらに低くすることができる。
【0043】
その後演算部41は、上述の各部の温度が上方閾値を超えている状態が解消されたか否かを判定する処理を再び行う(S18)。具体的には、S16の判定において温度が上方閾値を超えていたセンサにおいて、再び同様の判定を行い温度が上方閾値以下になったか否かを判定する処理が行われる。
【0044】
S18の判定で全ての各部温度が上方閾値以下になっていないと判定された場合(NOの場合)、または、S13またはS16の判定で設定温度の下限値が所定の冷房閾値を超えている、言い換えると、1位の空調機31における冷房能力に余裕がないと判定された場合(YESの場合)、演算部41は1位の空調機31の次に、温度が上方閾値を超えたセンサに係るラック65からの距離が短い空調機31(以下「2位の空調機31」と表記する。)を選定する処理を行う(S19)。
【0045】
その後演算部41は、
図4に示すように、2位の空調機31おける設定温度の下限値が所定の冷房閾値を超えているか否かを判定する処理を行う(S20)。言い換えると、2位の空調機31における冷房能力に余裕があるか否かを判定する。
【0046】
S20の判定で冷房能力が所定の冷房閾値を超えていないと判定された場合(NOの場合)、コントロール部40は2位の空調機31に対して設定温度を下げる制御信号を出力する処理を行う(S21)。これにより2位の空調機31から吹出される室内空気の温度は制御前と比較して低くなり、温度が上方閾値を超えていると判定されたセンサの周囲における室内空気温度を低くすることができる。
【0047】
その後演算部41は、上述の各部の温度が上方閾値を超えている状態が解消されたか否かを判定する処理を改めて行う(S22)。具体的には、S11の判定において温度が上方閾値を超えていたセンサにおいて、再び同様の判定を行い温度が上方閾値以下になったか否かを判定する処理が行われる。
【0048】
S22の判定で各部温度が上方閾値を超えている状態が解消されていないと判定された場合(NOの場合)、または、S20の判定で2位の空調機31おける設定温度の下限値が所定の冷房閾値を超えていると判定された場合(YESの場合)、演算部41はS19に戻り上述の処理を繰り返し行う。この時、演算部41は2位の空調機31の次に、温度が上方閾値を超えたセンサに係るラック65からの距離が短い空調機31(以下「3位の空調機31」と表記する。)を選定する処理を行う。言い換えると、S19に戻り次に設定温度を下げる空調機31を選定する処理を行う。
【0049】
S22の判定で各部温度が上方閾値を超えている状態が解消されたと判定された場合(YESの場合)、S15またはS18の判定で各部温度が上方閾値を超えている状態が解消されたと判定された場合(YESの場合)、各部で測定された温度が下方閾値未満であるか否かを判定する処理を行う(S23)。具体的には、演算装置温度センサ51およびラック温度センサ52から入力された測定信号に基づいて、これらセンサが配置された位置において、全てが冷却されすぎか(過冷却が)否か、または、平均値が下方閾値未満か否かを判定する処理を行う。
【0050】
各部温度が上方閾値を超えている状態が解消された状態を示しているのが
図6(a)である。ここでは、左端のラック65に収納された演算装置60において温度が下方閾値未満にまで低下している状態が示されている。
【0051】
各部温度が下方閾値未満であると判定された場合(YESの場合)、演算部41は、設定温度を下げる制御を行っていない空調機31(1位の空調機31や、2位の空調機31など)のうちで、温度が下方閾値未満と判定されたセンサに係るラック65からの距離が最も短い空調機31(例えば2位の空調機31または3位の空調機31)を選択する制御を行う(S24)。
【0052】
コントロール部40は、S24で選択した空調機31に対して設定温度を上げる制御信号を出力する処理を行う(S25)。例えば、選択した空調機31における設定温度がT1℃であった場合、T1+X℃に変更する制御信号を出力する処理を行う。
【0053】
これにより当該選択された空調機31から吹出される室内空気の温度は制御前と比較して高くなり、温度が下方閾値未満と判定されたセンサの周囲における室内空気温度を高くすることができる。
図6(b)は、左端のラック65に収納された演算装置60において温度が上昇している状態が示されている。その後コントロール部40はS23に戻り、上述の処理を繰り返し行う。
【0054】
さらに、上述のS23からS25までの処理は、ラック65を単位とする演算装置温度センサ51およびラック温度センサ52のセンサ群、または、予め設定した所定の演算装置温度センサ51およびラック温度センサ52のセンサ群により測定された値が定常状態に達する都度、行われる。ここで定常状態とは、測定値の変化量が一定期間、所定の変化量を超えない状態のことである。このように処理を行うことにより、制御との時間差によって温度が上昇しすぎる箇所の発生を抑制することができる。
【0055】
その一方でS23の判定で各部温度が下方閾値以上であると判定された場合(NOの場合)、コントロール部40はS11に戻り上述の処理を繰り返し行う。
上記の構成の空調システム1によれば、演算装置60と比較して位置情報の変動が少ないラック65と空調機31との距離に基づいて冷房能力を制御する空調機31を選択することにより、演算装置60の増設や移動があっても、冷房能力を制御する空調機31の選択が行いやすくなるとともに、誤った空調機31が選択されにくくなる。そのため、本実施形態の空調システム1は、温度調整の信頼性を確保しやすくなるとともに、消費電力の削減を図りやすくなる。
【0056】
つまり、演算装置60と空調機31との距離に基づいて冷房能力を制御する空調機31を選択する場合には、演算装置60の増設や配置位置が移動されるたびにその演算装置60と空調機31との位置関係を更新する必要があり、当該更新がなされていないと適切な空調機31が選択できない可能性があった。これに対して演算装置60が収納されるラック65は、その配置予定列がフロアFの構築時から変更されることが少ない。ラック65の列と空調機31との間の距離に基づいて冷房能力を制御する空調機31を選択すれば、フロアFの構築時にラック65の列と空調機31との距離を予め定義することは容易となる。特に、フロアFが二重床式の部屋である場合には、ラック65の間の通路面をフロアFの構築時に決定するため、ラック65の列と空調機31との距離を予め定義することは更に容易となる。そのため、演算装置60の増設等に容易に対応でき、かつ、増設等された演算装置60に応じて適切な空調機31の選択を行いやすくなる。
【0057】
選択した空調機31(例えば1位の空調機31)の冷房能力を高める制御を行っても、演算装置60が十分に冷却されず、その温度が所定の上方閾値以上である場合には、さらに選択された空調機31(例えば1位の空調機31)の冷房能力を高めるため、温度調整の信頼性を確保しやすくなる。言い換えると、最初の冷房能力を高める制御によって冷却された空気が演算装置60Wの周辺に供給されてもなお、演算装置60Wの温度が所定の上方閾値未満に下がらない場合には、さらに選択された空調機31(例えば1位の空調機31)の冷却能力を高めることにより、演算装置60Wの温度を下げる制御が行われる。そのため、演算装置60に対する温度調整の信頼性を確保しやすくなる。
【0058】
選択した空調機31(例えば1位の空調機31)における冷房能力の余裕が少ない場合には、演算装置60Wが収納されたラック65に次に近い空調機31(例えば2位の空調機31)を選択して、当該空調機31(例えば2位の空調機31)の冷房能力を高める制御を行うことにより、温度調整の信頼性をさらに確保しやすくなる。つまり、選択した空調機31(例えば1位の空調機31)に冷房能力の余裕が少ないと、冷房能力を高める制御を行っても演算装置60Wを十分に冷やすことができないおそれがある。そのため、選択した空調機31(例えば1位の空調機31)に冷房能力の余裕が少ない場合には、次に近い空調機31(例えば2位の空調機31)の冷房能力を高める制御を行うことで、温度調整の信頼性を確保することができる。
【0059】
選択された空調機31(例えば1位の空調機31)の冷能能力を高めたことにより、温度が所定の下方閾値以下になる演算装置60が発生した場合には、選択された空調機31(例えば1位の空調機31)とは別の空調機31であって、温度が所定の下方閾値以下になる演算装置60が収納されたラック65に最も近い空調機31を選択し、当該空調機31の冷房能力を弱める制御を行うことにより、温度調整の信頼性を確保するとともに、消費電力の削減を図ることができる。
【0060】
つまり、温度が所定の上限閾値以上の演算装置60Wに対して空調機31(例えば1位の空調機31)の冷房能力を高める制御を行った結果、他の演算装置60を冷やしすぎることになる場合には、他の演算装置60を冷やす他の空調機31の冷房能力を弱めることにより、空調システム1全体としての消費電力の削減を図ることができる。
【0061】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記の実施の形態においては、本発明に係る空調システムをデータセンタに用いる例に適用して説明したが、用いる対象はデータセンタに限られるものではなく、他の設備に適用できるものである。