(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した走査によってパターン描画処理が進められると、複数の光学ヘッドのうち、一部の光学ヘッドについては、オートフォーカス機構による上記距離の変動の検出位置が、基板の外側あるいは基板の端部となってしまう場合がある。基板の端部は、レジストがラミネートされていなかったり、あるいは、段差や穴などが形成されていたりすることで、上記距離の計測には不向きである場合が多い。このため、オートフォーカス機構が正常に機能させることができない場合があった。このため、基板端付近の帯状領域については、描画精度が低下してしまう虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、基板端部の帯状領域におけるパターンの描画精度を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、感光体が形成された基板に光を照射して前記基板にパターンを描画する描画装置であって、各々が帯状の描画光を出射する、副走査方向に並べられた複数の光学ヘッドと、前記基板に対して、前記複数の光学ヘッドを、前記副走査方向および前記副走査方向に直交する主走査方向に相対的に移動させることによって、基板を前記描画光で走査する走査機構と、前記複数の光学ヘッドの各々に設けられており、前記光学ヘッドおよび前記基板の間の離間距離の変動を検出する検出器によって検出された前記離間距離の変動に合わせて前記光学ヘッドの前記描画光の焦点位置を調整する、複数のオートフォーカス機構とを備えており、前記複数の光学ヘッドのうち、少なくとも一部の光学ヘッドの前記オートフォーカス機構が、前記描画光の中央位置から前記副走査方向とは反対の方向にずれた基板上の位置を、前記離間距離の変動の検出位置とする。
【0009】
また、第2の態様は、第1の態様に係る描画装置において、前記一部の光学ヘッドには、前記副走査方向に向かって最も外側に配置されている前記光学ヘッドが含まれている。
【0010】
また、第3の態様は、第1または第2の態様に係る描画装置において、前記
複数の光学ヘッドは、前記検出位置が、前記描画光の中央位置に対して、前記副走査方向またはその反対の方向にずれた位置にそれぞれ設定されるように、前記検出器を取り付ける取付機構、を備えている。
【0011】
また、第4の態様は、第1から第3までの態様のいずれか1態様に係る描画装置において、前記一部の光学ヘッドのうち、基板の前記副走査方向端部にある端部帯状領域を描画する前記光学ヘッドの前記オートフォーカス機構は、前記端部帯状領域を描画する際、直前の主走査時に得た前記離間距離の変動の検出結果に基づいて、前記焦点位置を調整する。
【0012】
また、第5の態様は、第1から第4までの態様のいずれか1態様に係る描画装置において、前記走査機構および前記オートフォーカス機構を制御する制御部、をさらに備えており、前記制御部は、前記一部の光学ヘッドのうち、基板の前記副走査方向端部にある端部帯状領域を描画する前記光学ヘッドの前記オートフォーカス機構の検出位置が、基板における既定の有効領域に含まれるように、前記光学ヘッドを前記副走査方向に沿って相対移動させ、その後、前記主走査方向に相対移動させつつ、前記オートフォーカス機構に前記離間距離の変動の検出を行わせる。
【0013】
また、第6の態様は、感光体が形成された基板に光を照射して前記基板にパターンを描画する描画方法であって、(a)副走査方向に並べられた複数の光学ヘッドのそれぞれから、帯状の描画光を出射する工程と、(b)前記(a)工程において、前記基板に対して、前記複数の光学ヘッドを、前記副走査方向および前記副走査方向に直交する主走査方向に相対的に移動させることによって、基板を前記描画光で走査する工程と、(c)前記(b)工程において、前記光学ヘッドおよび前記基板の間の離間距離の変動を検出器によって検出し、検出された前記離間距離の変動に合わせて前記光学ヘッドの前記描画光の焦点を調整する工程とを含み、前記(c)工程において、前記複数の光学ヘッドのうち、少なくとも一部の光学ヘッドについては、前記描画光の中央位置から前記副走査方向とは反対の方向にずれた基板上の位置において、前記離間距離の変動が検出される。
【0014】
また、第7の態様は、第6の態様に係る描画方法において、前記一部の光学ヘッドには、前記副走査方向に向かって最も外側に配置されている前記光学ヘッドが含まれている。
【0015】
また、第8の態様は、第6または第7の態様に係る描画方法において、前記
複数の光学ヘッドは、前記検出位置が、前記描画光の中央位置に対して、前記副走査方向またはその反対の方向にずれた位置にそれぞれ設定されるように、前記検出器を取り付ける取付機構、を備えている。
【0016】
また、第9の態様は、第6から第8までの態様のいずれか1態様に係る描画方法において、前記(c)工程において、前記一部の光学ヘッドのうち、基板の前記副走査方向端部にある端部帯状領域を描画する前記光学ヘッドについては、前記端部帯状領域を描画する際、直前の主走査で得た前記離間距離の変動の検出結果に基づいて、前記焦点位置が調整される。
【0017】
また、第10の態様は、第6から第9までの態様のいずれか1態様に係る描画方法において、前記(c)工程は、(c-1)前記一部の光学ヘッドのうち、基板の前記副走査方向端部にある端部帯状領域を描画する前記光学ヘッドについての前記検出位置が、基板における既定の有効領域に含まれるように、前記光学ヘッドを前記副走査方向に沿って相対移動させる工程と、(c-2)前記(c-1)工程の後、前記光学ヘッド33を前記主走査方向に相対移動させつつ、前記離間距離の変動を検出する工程とを含む。
【発明の効果】
【0018】
第1から第10の態様によると、少なくとも一部の光学ヘッドについての、離間距離の変動を検出する検出位置を、描画光の中央位置に対して、副走査方向とは反対の方向にずらすことができる。これにより、基板の端部帯状領域を描画するときに、検出位置を検出に有効な領域に設定できる可能性を高めることができる。これによって、端部帯状領域の描画精度を高めることができる。
【0019】
また、第2および第7の態様によると、端部帯状領域を描画する光学ヘッドについての検出位置を、描画光の中央に対して副走査方向とは反対の方向にシフトとさせることができる。これによって、端部帯状領域の描画精度を高めることができる。
【0020】
また、第3および第8の態様によると、検出器の取り付け方を変更するだけで、各光学ヘッドについての検出位置のシフト方向を決めることができる。このような部品の共通化によって、部品管理がしやすくなり、また、装置コストの低減化を図ることができる。
【0021】
また、第4および第9の態様によると、端部帯状領域を描画する際に、光学ヘッドの検出位置が、検出に有効な領域から外れる場合であっても、直前の検出結果を利用して、描画光の焦点位置の調整が行われる。このため、端部帯状領域に対して良好にパターン描画を行うことができる。
【0022】
また、第5および第10の態様によると、パターン描画に先立って、検出位置が検出に有効な有効領域に設定されるように、光学ヘッドが移動されて、その後、離間距離の変動が検出される。これにより、端部帯状領域のパターン描画時に、検出位置が既定の有効領域から外れていたとしても、予め取得された離間距離の変動に基づき、有効に描画光の焦点位置を調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、図面においては、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0025】
<1.装置構成>
図1は、実施形態に係る描画装置100の概略を示す斜視図である。また、
図2は、描画装置100の概略を示す平面図である。さらに
図3は、描画装置100のバス配線図である。
図1において、図示および説明の都合上、Z軸方向が鉛直方向を表し、XY平面が水平面を表すものとして定義するが、それらは位置関係を把握するために便宜上定義するものであって、以下に説明する各方向を限定するものではない。以下の各図についても同様である。また、
図2においては、説明の都合上、架橋構造体11および光学ヘッド33が二点鎖線によって図示されている。
【0026】
描画装置100は、プリント基板を製造する工程において、プリント基板(以下、単に「基板」という。)90の上面に形成された感光材料(レジスト)の層(感光体)にデバイス形成のためのパターンを描画する装置である。
図1および
図2に示されるように、描画装置100は、主に架台1、移動プレート群2、露光部3、および制御部5を備えている。
【0027】
○架台1
架台1は、略直方体状の外形を有しており、その上面の略水平な領域には、架橋構造体11や移動プレート群2が備えられる。架橋構造体11は、移動プレート群2の上方に略水平に掛け渡されるようにして架台1上に固定されている。
図1に示すように、架台1は、移動プレート群2と架橋構造体11とを一体的に支持する。
【0028】
○移動プレート群2
移動プレート群2は、主に、基板90をその上面の略水平な領域に保持する基板保持プレート21と、基板保持プレート21を下方から支持する支持プレート22と、支持プレート22を下方から支持するベースプレート23と、ベースプレート23を下方から支持する基台24と、基板保持プレート21をZ軸回りに回動させる回動機構211と、支持プレート22をX軸方向に移動させるための副走査機構221と、ベースプレート23をY軸方向に移動させるための主走査機構231とを備える。
【0029】
基板保持プレート21は、図示を省略しているが、その上面に複数の吸着孔が分散して設けられている。これらの吸着孔は、真空ポンプに接続されており、当該真空ポンプを動作することによって、基板および基板保持プレート21間の雰囲気を排気することができる。これにより、基板90を基板保持プレート21の上面に吸着保持することができる。
【0030】
図2に示すように、回動機構211は、基板保持プレート21の(−Y)側端部に取り付けられた移動子と、支持プレート22の上面に設けられた固定子とにより構成されるリニアモータ211aを有する。また、回動機構211は、基板保持プレート21の中央部下面側と支持プレート22との間に、回動軸211bを有する。リニアモータ211aを動作させることによって、固定子に沿って移動子がX軸方向に移動し、基板保持プレート21が支持プレート22上の回動軸211bを中心として所定角度の領域内で回動する。
【0031】
副走査機構221は、支持プレート22の下面に取り付けられた移動子と、ベースプレート23の上面に設けられた固定子とにより構成されるリニアモータ221aを有する。また、副走査機構221は、支持プレート22とベースプレート23との間に、X軸方向に延びる一対のガイド部221bを有する。リニアモータ221aを動作させることによって、支持プレート22がベースプレート23上のガイド部221bに沿ってX軸方向に移動する。
【0032】
主走査機構231は、ベースプレート23の下面に取り付けられた移動子と、基台24上に設けられた固定子とにより構成されるリニアモータ231aを有する。また、主走査機構231は、ベースプレート23と架台1との間に、Y軸方向に延びる一対のガイド部231bを有する。リニアモータ231aを動作させることによって、ベースプレート23が基台24上のガイド部231bに沿ってY軸方向移動する。したがって、基板保持プレート21に基板90を保持した状態で主走査機構231を動作させることによって、基板90をY軸方向に沿って移動させることができる。なお、これら移動機構は、後述の制御部5により、その動作が制御される。
【0033】
なお、回動機構211、副走査機構221および主走査機構231の駆動については、上述のリニアモータ211a,221a,231aを利用したものに限定されない。例えば、回動機構211および副走査機構221については、サーボモータおよびボールネジ駆動を利用したものであってもよい。また、基板90を移動させる代わりに、露光部3を移動させる移動機構を設けてもよい。さらに、基板90および露光部3の双方を移動させるようにしてもよい。また、図示を省略するが、例えば、基板保持プレート21をZ軸方向に昇降させることによって、基板90を上下に昇降させる昇降機構を設けてもよい。
【0034】
○露光部3
図1に戻って、露光部3は、LED光源部31、照明光学系32および光学ヘッド33で構成される光学ユニットを複数台(ここでは、5台)備えている。なお、
図1では、図示が省略されているが、各光学ヘッド33に対して、LED光源部31および照明光学系32がそれぞれ設けられている。LED光源部31は、制御部5から送られる所要の駆動信号に基づいて、所要波長のレーザ光を出射する光源装置である。LED光源部31から出射された光ビームは、ロッドインテグレーター、レンズおよびミラーなどで構成される照明光学系32を介して、光学ヘッド33へ導かれる。
【0035】
各光学ヘッド33は、照明光学系32から出射される光線を、基板90の上面に照射するものである。各光学ヘッド33は、X軸方向に沿って架橋構造体11の側面上部に等ピッチで配設されている。
【0036】
図4は、露光部3の概略を示す斜視図である。また、
図5は、光学ヘッド33の概略を示す側面図である。なお、
図4において、光変調部4および投影光学系332は、各光学ヘッド33の内部の所定位置に配置されている。LED光源部31から出射された光ビームは、照明光学系32にて矩形状に成形される。そして、照明光学系32を通過した光ビームは、光変調部4へと導かれ、光変調部4の変調動作有効領域に照射される。
【0037】
光変調部4へ照射された光ビームは、制御部5の制御に基づいて空間的に変調され、投影光学系332へと入射する。投影光学系332は、入射してきた光を所要の倍率に変倍して、主走査方向へ移動する基板90上へ導く。
【0038】
○光変調部4
光変調部4は、電気的な制御によって入射光を空間変調させて、パターンの描画に寄与させる必要光と、パターンの描画に寄与させない不要光とを、互いに異なる方向に反射させる、デジタルミラーデバイス(DMD)を備えている。DMDは、例えば1辺約10μmの正方形の微小ミラーが、1920×1080個マトリクス状に配列された空間変調素子である。各々のミラーがメモリセルに書き込まれたデータに従って、正方形の対角を軸として、所要角度で傾くように構成されている。制御部5からのリセット信号によって、各々のミラーは、一斉に駆動される。
【0039】
DMDに表示されたパターンは、投影光学系332によって、基板90の露光面上に投影される。また、DMDに表示されるパターンは、後述するように、主走査機構231による基板保持プレート21の移動に伴って、主走査機構231のエンコーダー信号を元に作られるリセットパルスによって連続的に書き換えられる。これによって、描画光が基板90の露光面上に照射され、ストライプ状の像が形成される。
【0040】
図5は、描画処理が行われている基板90を示す平面図である。描画処理は、制御部5の制御下で主走査機構231および副走査機構221が基板保持プレート21に載置された基板90を、複数台の光学ヘッド33に対して相対的に移動させつつ、複数の光学ヘッド33のそれぞれから基板90の上面に空間変調された光を照射することによって行われる。
【0041】
なお、以下の説明では、基板90上において、互いに直交するx軸方向およびy軸方向を定義する。この基板90上に定義されるxy座標系は、主走査機構231による基板90の移動に伴って、XYZ座標系のY軸方向に沿って移動する。また、xy座標系は、副走査機構221による基板90の移動に伴って、XYZ座標系のX軸方向に沿って移動する。
【0042】
また、主走査機構231によって、基板90が移動したときの、基板90から見た光学ヘッド33の移動方向を主走査方向とする。また、副走査機構231によって、基板90を移動させたときの、基板90から見た光学ヘッド33の移動方向を副走査方向とする。
図5に示される例では、主走査方向は、+y方向(矢印AR11)および−y方向(矢印AR13)となっており、副走査方向は、+x方向(矢印AR12)となっている。
【0043】
まず、主走査機構231によって、基板保持プレート21が−Y方向に移動させることによって、基板90を光学ヘッドに対して相対的に移動させる(主走査)。これを基板90から見ると、複数の光学ヘッド33が、矢印AR11で示されるように、+y方向に相対的に移動したことになる。この主走査が行われる間、各光学ヘッド33は、パターンデータ541に応じて変調された断面矩形状の描画光を、基板90に連続的に照射する。すなわち、基板90の露光面に光が投影される。各光学ヘッド33が主走査方向(+y方向)に沿って基板90を1回横断すると、各描画光に対応した描画領域33Rが基板90上を通過することによって、帯状領域R1にパターンが描画されることなる。この帯状領域R1は、主走査方向に延びており、副走査方向に沿う幅が、描画光の幅(ストライプ幅)に相当する領域である。ここでは、5台の光学ヘッド33が、同時に基板90上を横断するため、1回の主走査により同時の5本の帯状領域R1のそれぞれに、パターンが描画されることになる。
【0044】
1回の主走査が終了すると、副走査機構221によって、基板保持プレート21が+X方向に、既定の距離だけ移動させることによって、基板90を光学ヘッド33に対して相対的に移動させる(副走査)。これを基板90からみると、矢印AR12で示されるように、複数の光学ヘッド33が、副走査方向(+x方向)に、既定の距離分だけ移動することになる。
【0045】
副走査が終了すると、再び主走査が行われる。すなわち、主走査機構231によって、基板保持プレート21が+Y方向に移動させることによって、基板90を複数の光学ヘッド33に対して相対的に移動させる。これを基板90から見ると、各光学ヘッド33は、−y方向に移動することによって、矢印AR13で示されるように、基板90上における、直前の主走査で描画された帯状領域R1に隣接する領域を横断することとなる。この主走査においても、各光学ヘッド33は、パターンデータ541に応じて変調された描画光を、基板90に向けて連続的に照射する。これによって、先の主走査で描画された帯状領域R1に隣接する帯状領域R2に、パターンが描画される。
【0046】
以後、上記と同様に、主走査と副走査とが繰り返して行われ、基板90上の描画対象領域の全域にパターンが描画されると、描画処理が終了する。
図5に示される例では、2回の副走査を挟んだ3回の主走査によって、各光学ヘッド33が帯状領域R1,R2,R3を横断し、これによって、描画対象領域の全域にパターンが形成される。
【0047】
○制御部5
図3に示されるように、制御部5は、CPU51、読取専用のROM52、主にCPU51の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAM53および不揮発性の記録媒体であるメモリ54を備えている。また、制御部5は、表示部56、操作部57、回動機構211、副走査機構221、主走査機構231、LED光源部31(詳細には、光源ドライバ)、光変調部4およびオートフォーカス機構6といった描画装置100の各構成と接続されており、これら各構成の動作の制御を行う。
【0048】
CPU51は、ROM52内に格納されているプログラム55を読み取りつつ実行することにより、RAM53またはメモリ54に記憶されている各種データについての演算を行う。
【0049】
メモリ54は、基板90上に描画すべきパターンについてのパターンデータ541を記憶する。パターンデータ541は、例えば、CADソフトなどによって作成されたベクトル形式のデータを、ラスター形式のデータに展開した画像データである。制御部5は、このパターンデータ541に基づき、光変調部4を制御することによって、光学ヘッド33から出射する光ビームを変調する。なお、描画装置100では、主走査機構231のリニアモータ231aから送られてくるリニアスケール信号に基づいて、変調のリセットパルスが生成される。このリセットパルスに基づいて動作する変調部4によって、基板4の位置に応じて変調された描画光が、各描画ヘッド33から出射される。
【0050】
なお、本実施の形態では、パターンデータ541は、単一の画像(基板90全面に形成すべきパターンが表現された画像)についてのデータとしてもよいが、例えば、単一画像についてのパターンデータ541から、光学ヘッド33のそれぞれが描画を担当する部分についての画像データを、光学ヘッド33毎に個別に生成する構成としてもよい。
【0051】
表示部56は、一般的な液晶ディスプレイなどで構成され、制御部5の制御によりオペレータに対して各種データを表示する。また、操作部57は、各種ボタンやキー、マウス、タッチパネル等から構成され、描画装置100に対して指示を入力するために、オペレータにより操作される。
【0052】
○オートフォーカス機構6
図6は、光学ヘッド33の概略を示す側面図である。
図6に示されるように、各光学ヘッド33には、オートフォーカス機構6がそれぞれ設けられている。オートフォーカス機構6は、光学ヘッド33および基板90(詳細には、露光面)の間の離間距離L1の変動を検出するための検出器61を備えている。オートフォーカス機構6は、検出器61によって検出された離間距離L1の変動に合わせて、光学ヘッド33の描画光の焦点を調整する。
【0053】
検出器61は、レーザ光を基板90に照射する照射部611と、基板90を反射したレーザ光を受光する受光部613とで構成されている。照射部611は、基板90の表面に対する法線方向(ここでは、Z軸方向)に対して所定の角度だけ傾斜した軸に沿って基板90の上面に入射させ、スポット状に照射する。以下の説明では、このレーザ光が照射される基板90上の位置を、検出位置71とする。受光部613は、例えばZ軸方向に延びるラインセンサーで構成されている。該ラインセンサー上におけるレーザ光の入射位置によって、基板90の上面の変動が検出されることとなる。検出器61は、光学ヘッド33の投影光学系332の筐体外周面に設けられている取付機構62を介して、光学ヘッド33に対して固定される。
【0054】
また、オートフォーカス機構6は、検出器61によって検出された変動量に応じて、投影光学系332のレンズをZ軸方向に上下させる昇降機構63を備えている。検出器61が検出した変動量を制御部5または不図示の専用の演算回路などに渡され、所要のプログラムに従った演算処理が行われる。これによって、昇降機構63によるレンズの昇降量が決定される。
【0055】
図7は、露光部3の概略を示す正面図である。
図7では、5台の光学ヘッド33を識別するために、副走査方向(+x方向)向かって順に、符号「33」に符号「a」〜「e」を付記している。例えば副走査方向とは反対の方向(−x方向)に向かって最も外側に配置された光学ヘッド33は、光学ヘッド33aであり、副走査方向に向かって最も外側に配置されている光学ヘッド33は、光学ヘッド33eとなる。
【0056】
また、各光学ヘッド33が備える各オートフォーカス機構6の検出位置71についても、上記と同様に、符号「71」に符号「a」〜「e」をそれぞれ付記している。例えば、光学ヘッド33aのオートフォーカス機構6の検出位置71は、検出71aとしている。
【0057】
さらに、各光学ヘッド33が出射する描画光の副走査方向における中央位置CPについても、上記と同様に、符号「CP」に符号「a」〜「e」をそれぞれ付記している。例えば、光学ヘッド33aの描画光の中央位置CPは、中央位置CPaとなる。
【0058】
本実施形態では、各オートフォーカス機構6の検出位置71は、対応する光学ヘッド33の描画光の中央位置CPに対して、副走査方向(+x方向)またはその反対の方向(−x方向)にずれた位置とされている。より詳細には、光学ヘッド33aについては、その検出位置71aが、中央位置CPaよりも、副走査方向(+x方向)に既定の距離分ずれた位置に設定されている。これに対して、その他の光学ヘッド33b〜33eについては、それぞれの検出位置71b〜71eが、中央位置CPb〜CPeに対して、それぞれ副走査方向とは反対の方向(−x方向)に既定の距離分ずれた位置に設定されている。
【0059】
中央位置CPに対する検出位置71のシフト方向は、光学ヘッド33に対する、検出器61の取付方向によって決定される。つまり、
図6に示されるように、取付機構62によって、実線で示されるように、照射部611が−Y側に、受光部613が+Y側に配置されるように検出器61が固定される。この状態では、検出位置71は、描画光の中央位置CPに対して、副走査方向とは反対の方向(−x方向)にシフトされた状態となる。また、検出器61を180度回転させて取付機構62に取り付けることで、照射部611が+Y側に、受光部613が−Y側に配置された状態で、検出器61を光学ヘッド33に対して固定することもできる。この状態では、検出位置71は、描画光の中央位置CPに対して、副走査方向(+x方向)にシフトされた状態となる。このような取付機構62を設けることによって、検出器61の取付方向を変えるだけで、検出位置71のシフト方向を変更することができる。このように、部品を共通化することによって、部品点数を減らすことができる。したがって、部品管理がしやすくなり、また装置コストの低減化を図ることができる。
【0060】
図5に示されるように、基板90の副走査方向の幅によっては、基板90上の副走査方向端部の帯状領域(以下、端部帯状領域R11と称する。)が、対応する光学ヘッドの描画領域33Rよりも狭くなる場合がある。このような場合、オートフォーカス機構6の検出位置71の設定位置によっては、描画対象領域から外れた位置に設定される虞がある。基板90の端部付近には、段差などが存在する場合があり、描画対象領域外でオートフォーカス機構6を機能させると、描画精度が著しく低下する虞がある。
【0061】
本実施形態では、光学ヘッド33b〜33eに備えられた、各オートフォーカス機構6の検出位置71b〜71eを、描画光の中央位置CPb〜CPeに対して、副走査方向とは反対の方向にシフトさせた位置に設定されている。つまり、各光学ヘッド33におけるオートフォーカス機構6の検出位置71が、基板90の内側に向かう方向にシフトされている。このため、検出位置71が、基板90の端部付近の端部帯状領域R11において、描画対象領域上に設定される可能性を高めることができる。この点について、
図8〜
図10を参照しつつ、数学的に考察する。
【0062】
図8は、基板90に対して複数の光学ヘッド33が主走査する位置を概念的に示す図である。
図8に示されるように、基板90の副走査方向の幅をWb、描画光の幅(ストライプ幅)をSW、隣り合う光学ヘッド33,33の間隔をHとすると、基板90の副走査方向端部の端部帯状領域R11を描画する光学ヘッド33は、INT関数を用いた以下の式によって決定される。
【0063】
N=int(Wb/H)+1・・・(式1)
【0064】
ここで、Nは光学ヘッド33の番号を意味しており、ヘッド番号「1」〜「5」は、それぞれ、光学ヘッド33a〜33eに対応している。
【0065】
また、端部帯状領域R11が描画されるときの、主走査の回数(ストライプ番号S)は、以下の式で算出される。
【0066】
S=(Wb−(N−1)×H)/SW+1・・・(式2)
【0067】
また、端部帯状領域R11の描画を行う光学ヘッド33が出射する描画光の端部(副走査方向とは反対の方向の端部)から、基板90の副走査方向端部まで幅pは、以下の式で算出される。
【0068】
p=Wb−(N−1)×H−(S−1)×SW・・・(式3)
【0069】
図9および
図10は、端部帯状領域R11を描画する光学ヘッド33を示す概略平面図である。
図9および
図10においては、描画光の副走査方向とは反対の方向(−x側)の端部から、検出位置71までの距離をaとしている。また、基板90の端部から一定幅(q)の領域は、例えば、レジストがラミネートされていなかったり、あるいは、段差や穴などが形成されていたりすることで、検出器61による離間距離L1の測定に不適切である領域(不適領域)とする。
図9は、p−q≦aを満たす状態を示す図であり、
図10は、p−q>aを満たす状態を示す図である。
【0070】
図9に示されるように、p−q≦aを満たす場合、検出位置71が離間距離L1の測定に不適領域に含まれてしまう。この場合、検出器61の基板90の表面の位置を正確に特定すると、不必要な焦点の調整が行われることによって、描画光の焦点がずれてしまう虞がある。これに対して、
図10に示されるように、p−q>aを満たす場合には、検出位置71が不適領域よりも、基板90の内側に含まれることとなる。したがって、適切な焦点の調整が行われることによって、パターンを高精度に描画することができる。
【0071】
以上のことから、aが小さいほど、検出位置71が基板90上の離間距離L1に適した位置に設定される可能性が高くなり、その結果、高精度なパターンの描画が可能となる。なお、aを「0」とした場合(すなわち、検出位置71が、描画光の内側端部の位置に設定された場合)、常に、
図9に示される状態となり、検出位置71が不適領域に含まれる可能性が、理論上無くなる。しかしながら、検出位置71が、副走査方向に平行な方向に関して、描画光の偏った位置に設定されると、1つの矩形状の描画光の中において、検出位置71から遠ざかった描画光の部分の露光精度が低下してしまうというバラツキの問題も発生しうる。このため、高精度な描画を実現する観点からは、検出位置71を、副走査方向に関して、描画光の中央位置CPにできるだけ近くに設定することが望ましいといえる。
【0072】
<検出位置71が不適領域に属する場合の対処>
光学ヘッド33が、端部帯状領域R11を描画する際に、オートフォーカス機構6の検出位置71が、
図9に示されるように、不適領域に含まれてしまう場合(すなわち、p−q≦aを満たす場合)、当該光学ヘッド33が実行した直前の主走査で得た離間距離L1の変動の検出結果を利用することも有効である。なぜなら、端部帯状領域R11とそれに隣接する帯状領域R1とは、その高さの変動が似ていることが予想されるからである。このように直前の主走査における検出結果を利用したオートフォーカス処理としては、例えば、以下に説明するようないくつかの態様を例として挙げることができる。
【0073】
図11〜
図13は、端部帯状領域R11を描画する光学ヘッド33の検出器61によって検出された、離間距離L1の変動量を示す図である。なお、
図11〜
図13においては、横軸が基板90のy軸方向における位置を示しており、縦軸が離間距離L1の変動量を示している。また、破線で示されるグラフ81は、端部帯状領域R11を描画する直前の主走査時において検出された、離間距離L1の変動を示している。また実線で示されるグラフ83は、端部帯状領域R11を描画するために決定された、離間距離L1の仮想的な変動を示している。
【0074】
まず、第1のオートフォーカス処理では、
図11に示されるように、端部帯状領域R11を描画する際の、離間距離L1の変動量が、直前の主走査において最後に検出された変動量とされる。このため、第1のオートフォーカス処理では、描画光の焦点位置が、直前の主走査時に最後に変動量を検出したときの、描画光の焦点位置に固定されることとなる。この場合、特段の演算処理が不要になるというメリットがある。また、直前の主走査時に検出された変動量のデータを全て保持しておく必要がない、というメリットもある。
【0075】
また、第2のオートフォーカス処理では、
図12に示されるように、端部帯状領域R11を描画する際の、離間距離L1の変動量が、直前の主走査において検出された変動量の平均値とされる。
【0076】
また、第3のオートフォーカス処理では、
図13に示される様に、端部帯状領域R11を描画する際の離間距離L1の変動量が、直前の主走査において、副走査方向に関して同位置のときに検出された変動量とされる。この態様の場合、オートフォーカス処理が、基板90の主走査方向の位置に応じて実行されることになるため、高精度の描画を実現できる可能性が高い、というメリットがある。
【0077】
上記
図11〜
図13で説明した例は、いずれも、端部帯状領域R11を対象とした主走査に先だって、別の主走査が行われている。しかしながら、基板90の幅(詳細には、描画対象領域の幅)によっては、直前の主走査がない場合、すなわち、1回目の主走査で、端部帯状領域R11にパターンを描画する場合も想定される。このような場合には、描画を開始するに先立って、プリフォーカス処理が行われる。
【0078】
プリフォーカス処理では、1回目の主走査で端部帯状領域R11を描画することとなった光学ヘッド33に備えられている検出器61の検出位置71が、有効領域VRに含まれるように、基板90を副走査方向とは反対の方向に移動させる。そして、その検出位置71が有効領域VR内に含まれた状態で、基板90を主走査方向に移動させ、基板90の端部帯状領域R11の各位置における離間距離L1の変動が、検出器61が検出され、記憶部(RAMなどの一時的に情報を記憶するものも含む。)に保存される。そして、パターン描画処理においては、予めプリフォーカス処理時に取得した変動量のデータが記憶部から読み出され、端部帯状領域R11を描画する光学ヘッド33についてのオートフォーカス処理に利用される。
【0079】
図14は、端部帯状領域R11を描画する光学ヘッド33を示す概略平面図である。また
図15は、基板90のうち、副走査方向とは反対の方向の端部にある帯状領域R1を描画する光学ヘッド33を示す概略平面図である。
【0080】
図14に示されるように、プリフォーカス処理時には、基板90が−X方向に移動する。これを基板90から見ると、光学ヘッド33が、副走査方向とは反対の方向に、移動量Mx分だけ相対的に移動することとなる。この移動量Mxは、有効領域VRの余裕(r)を考慮して、以下の式で表される。
【0082】
なお、基板90が−X方向に移動することによって、基板90のうち、副走査方向とは反対の方向の端部にある帯状領域R1を描画する光学ヘッド33に備えられた検出器61の検出位置71は、基板90の端部に近づくこととなる。この帯状領域R1を描画する光学ヘッド33については、プリフォーカス処理を実行する必要はない。なぜなら、プリフォーカス処理を行わなくても、帯状領域R1の描画を行う際に、有効領域VR内で離間距離の変動を検出できるからである。しかしながら、この光学ヘッド33についても、プリフォーカス処理を実行する場合には、基板90を−X方向に移動させたときに、光学ヘッド33に備えられた検出器61の検出位置71を、有効領域VRに含める必要がある。このためには、
図15に示されるように、以下の条件式を満足する必要がある。
【0083】
SW−a>a−p+2q+2r・・・(式5)
a<SW/2−q−r・・・(式6)
【0084】
図16は、プリフォーカス処理によって得られた、基板90の表面高さの変動のグラフ85を示す図である。
図16に示される様に、基板90の表面高さの変動が検出されると、制御部5またはオートフォーカス機構6に設けられた演算機構によって、最も出現頻度が高かった変動量が取得される。そして、光学ヘッド33の焦点位置が、該変動量に対応した位置に固定された状態で、主走査が行われ、端部帯状領域R11におけるパターンの描画が行われる。もちろん、
図11〜
図13で説明したように、端部帯状領域R11を描画する際の離間距離L1の変動量を、プリフォーカス処理で最後に得た変動量、プリフォーカス処理時に得た変動量の平均値、もしくは、プリフォーカス処理時に得た対応位置の変動量に設定するようにしてもよい。
【0085】
<2.パターン描画処理の流れ>
次に、描画装置100における、パターン描画処理の流れについて簡単に説明する。
図17は、パターン描画処理の流れを示す図である。
【0086】
まず、描画処理に先立って、プリフォーカス処理が行われる(
図17:ステップS1)。そしてプリフォーカス処理が完了すると、端部帯状領域R11を描画するときの、オートフォーカス機構6の動作内容が決定される(
図17:ステップS2)。具体的には、(1)どの光学ヘッド33が端部帯状領域R11の描画を実行するのか、および、(2)端部帯状領域R11の描画が、何回目の主走査で行われるか、が特定される。そして、(3)その描画を担当する光学ヘッド33のオートフォーカス機構6の検出位置71が、予め設定された有効領域VRに含まれるか否か、が特定される。検出位置71が有効領域VRに含まれる場合は、離間距離L1の変動を問題なく測定できるため、通常のオートフォーカス処理の動作が選択される。一方、検出位置71が有効領域VR外の不適領域に含まれる場合は、上述したように、直前の主走査時に得た離間距離L1の変動の検出結果を利用したオートフォーカス処理が選択される。
【0087】
端部帯状領域R11におけるオートフォーカス機構6の動作が決定されると、パターン描画処理が実行される(
図17:ステップS3)。このステップS3においては、最初の主走査は、ステップS1のプリフォーカス処理で得られた結果を用いて、オートフォーカス処理が実施される。また、端部帯状領域R11については、オートフォーカス機構6が、ステップS2にて決定された動作を行うように、制御される。以上のようにして基板90の描画対象領域に対して、パターンの描画が行われる。
【0088】
以上、この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。