(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117610
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】排水処理用配管
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20060101AFI20170410BHJP
B01J 49/07 20170101ALI20170410BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20170410BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
C02F1/42 A
B01J49/00 112
C02F1/42 C
G21F9/12 501B
G21F9/12 511A
G21F9/28 521A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-102651(P2013-102651)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-223563(P2014-223563A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】南 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文則
(72)【発明者】
【氏名】山本 和範
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 伸晃
【審査官】
小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−233556(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3049144(JP,U)
【文献】
特開2014−028728(JP,A)
【文献】
特開2005−61605(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/085390(WO,A1)
【文献】
特開2008−51331(JP,A)
【文献】
特開2005−195169(JP,A)
【文献】
特開平8−224544(JP,A)
【文献】
特開平8−144358(JP,A)
【文献】
特開平8−224543(JP,A)
【文献】
特表2008−536105(JP,A)
【文献】
上原元樹ほか,ジオポリマー硬化体のイオン交換特性,鉄道総研報告,日本,2011年10月 1日,Vol.25、No.10,第45頁〜第50頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00−1/78
E03F 3/00−3/06
F16L 9/00−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内を流下する排水中から除去対象物質を除去するための排水処理用配管において、
前記管路の内面に、ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されており、内周面に円周方向の凹凸部を有する円筒状のジオポリマー組成物を配設したことを特徴とする排水処理用配管。
【請求項2】
前記ジオポリマー組成物は、内周面の長手方向に連続する凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の排水処理用配管。
【請求項3】
前記ジオポリマー組成物は、管路内から抜き取り可能であり、ジオポリマー組成物を抜き取った状態で、新たなジオポリマー組成物を配設することを特徴とする請求項1又は2に記載の排水処理用配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
排水処理用配管に関するものであり、例えば、鋼管やFRP管等からなる管路の内面にポーラス形状を呈する無機物質
であって、イオン交換性能を有するジオポリマー組成物を配置して、当該無機物質により排水中に含まれる重金属、放射性物質、懸濁物を除去することが可能な
排水処理用配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排水中に含まれる重金属、放射性物質、懸濁物を除去する方法として、例えば以下の方法が知られている。
【0003】
第1の方法は、微生物を濾材に固定し、濾材に付着固定された微生物を利用して汚濁成分を処理する方法である(活性汚泥法(接触酸化式))。第2の方法は、微細な懸濁物質や溶解性の汚濁物質を化学薬品(凝集剤)の添加により凝集させ、この凝集物を沈殿させることにより除去する方法である(凝集沈殿法)。第3の方法は、活性炭が有する微細空隙表面を利用して排水中の溶解性低濃度有機物を吸着して除去する方法である(活性炭吸着法)。第4の方法は、砂等の濾過層中に排水を浸透流下させることにより懸濁物質を濾過層内に抑留させ、清澄水を得る方法である(濾過法)。
【0004】
例えば、凝集剤沈殿方法として、処理原水中の重金属イオン含有量の変動に応じて添加量を制御する排水処理システムおよびそれを用いた排水処理方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、処理原水の流量を計測する原水流量計と、無機凝集剤と中和剤を添加して処理原水を処理する1次反応槽と、得られたスラリーに酸化剤を添加して処理する酸化槽と、酸化された処理原水に中和剤を添加して反応させる2次反応槽と、中和されたスラリーが導入される凝集槽へ高分子凝集剤を添加する添加量調節装置と、スラリー中の澱物を沈降させる澱物沈降槽、および高分子凝集剤の添加量を演算するプラント監視制御装置(DCS)とを備えている。そして、プラント監視制御装置(DCS)が、中和剤使用量と澱物発生量の関係に基づき、処理原水流量と中和剤添加速度のデータを用いて高分子凝集剤の添加量を演算し、添加量調整装置に送信するようになっている。
【0005】
また、活性汚泥法や凝集沈殿法を補助するための方法として、マイクロナノバブルやナノバブルが有する微生物活性化作用や、マイクロナノバブルやナノバブルが有するフリーラジカル起因の酸化作用による有機物および汚濁物の酸化による水処理方法ナノバブルを用いる技術が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載された技術は、流入水泡レベル感知部が被処理水の水面に生じた泡の高さにより検出した被処理水の有機フッ素化合物濃度に応じて、複数台のナノバブル発生機のうちから、運転するナノバブル発生機の台数を制御するようになっている。
【0006】
また、凝集沈殿法として、多様な有害成分の処理に対応可能な排水処理装置が提案されている(特許文献3参照)。特許文献3に記載された技術は、鉄、アルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウム、コバルト、カリウム、マグネシウムの酸化物と、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウムの酸化物から選ばれる少なくとも1種を含む多孔質セラミックからなる第一のセラミック粒体と、水酸アパタイトを含む多孔質セラミックからなる第二のセラミック粒体を多孔質セラミック板の上に載せ、その下に防錆膜に覆われてなる永久磁石を配置した排水処理装置を構成し、処理の対象となる排水に、塩素又は次亜塩素酸塩を添加して処理する技術である。この方法では、第一のセラミック粒体の触媒作用などにより有機物などが分解され、第二のセラミック粒体により重金属イオンなどを排水から除去できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−94647号公報
【特許文献2】特開2009−255011号公報
【特許文献3】特開2009−166018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来の技術は、いずれも有害対象物質を除去し、排水を一定基準まで浄化することを目的としている。しかし、例えば、凝集沈殿法では、凝集効果は排水中の汚濁物質の種類と濃度、共存成分の種類と濃度、排水のpHや温度の影響を受ける。
【0009】
したがって、凝集剤の種類や添加量、最適なpH、撹拌条件等を事前に確認する必要があり、運転に際しても労力を要する。さらに、汎用性を高めた場合(対象物質を幅広く設定した場合)には、処理装置や手順が複雑化し、設備や維持管理に多大なコストを要する結果を招いている。さらに、処理設備の設置に際しても、処理設備を任意の場所に設ける場合が多く、処理設備に至るまでの原水の取水路および処理水の排水路を設ける必要がある。
【0010】
また、近年、除去対象物質として、極低レベルもしくは放射性廃棄物でない廃棄物(NR(Non Radioactive Waste))程度の放射性物質を含んだ排水があり、河川水などを利用する農業従事者を中心に、簡便かつ安価で、より安心な水の確保が求められている。このような問題は、凝集沈殿法だけではなく、他の除去対象物質除去技術においても同様である。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、簡便な構造でありながら、排水中に含まれる重金属、放射性物質、懸濁物等の除去対象物質を効果的に除去することが可能であり、特に、ポーラス形状を呈する無機物質
であって、イオン交換性能を有するジオポリマー組成物を用いることにより、除去対象物質の除去に際して、吸着法、イオン交換性能、濾過法の効果を組み合わせた相乗効果を奏することが可能な排水処理用配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の
排水処理用配管は、上述した課題を解決するために提案されたもので、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明の排水処理用配管は、管路内を流下する排水中から除去対象物質を除去するための排水処理用配管
において、管路の内面に
ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されており、内周面に円周方向の凹凸部を有する円筒状のジオポリマー組成物を配設したことを特徴とするものである。ここで、
ジオポリマー組成物は、内周面の長手方向に連続する凹部を有することが好ましく、また、管路内から抜き取り可能であり、ジオポリマー組成物を抜き取った状態で、新たなジオポリマー組成物を配設することが好ましい。
【0013】
本発明の排水処理用配管
を製造するには、管路の内部に、流動性を有し、硬化後にポーラス形状を呈する
無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物の材料を投入して、管路内に投入した
ジオポリマー組成物の材料内に、連続した螺旋翼を有する貫入治具を挿入
し、貫入治具を回転させて、螺旋翼により
ジオポリマー組成物の材料を管路の内面に伸展させることにより、内周面に凹凸形状を有するとともに、ポーラス形状を呈する無機物質
であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を配設する。
【0014】
また、本発明の排水処理用配管
を再生するには、管路の内面にポーラス形状を呈する
無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を配設し、管路内に排水を流下させて無機物質により除去対象物質を除去した後に、管路の内面に配設した
ジオポリマー組成物を取り除き、管路の内面に新たにポーラス形状を呈する
無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を配設する。
【0015】
また、本発明の排水処理用配管を再生するには、管路の内面にポーラス形状を呈する無機物質を配設
し、管路内に排水を流下させて除去対象物質を除去した後に、管路の内面に配設したポーラス形状を呈する無機物質
であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物に対して洗浄、酸処理等の再生処理を施すことにより、除去対象物質の除去性能を回復させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の
排水処理用配管によれば、管路(鋼管やFRP管等)の内壁に、ポーラス形状を呈する無機物質
であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を配設し、この管路を連通接続することにより、任意の排水経路(流下経路)を簡便に構築することが可能となる。
【0017】
また、管路内で排水を流下する過程において、ポーラス形状を呈する無機物質
であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物と排水が接触することにより、排水中に含まれる重金属物質(Pb
2+)や放射性物質(Cs
+)、あるいは懸濁物(SS)に付着(吸着)した各イオンの除去を行うことができる。このように、ポーラス形状を呈する無機物質
であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を用いているので、除去対象物質を除去する際に、吸着法、イオン交換性能、濾過法の効果を組み合わせた相乗効果を奏することができる。
【0018】
また、連続した螺旋翼を有する貫入治具を用いて、管路内に
ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を配設する
ことにより、無機物質の内周面に凹凸形状を形成した排水処理用配管を容易に製造することができる。さらに、
ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物の内周面に凹凸形状が形成されるので、排水処理用配管を流下する排水と
ジオポリマー組成物との接触面積が増加し、除去対象物質の除去性能を向上させることができる。
【0019】
また、有害物質が付着(吸着)した
ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物のみを除去することで、管路の維持管理に伴い発生する廃棄物の減溶化を図ることができる。また、
ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を酸処理等により浄化および再利用することで、よリ一層の廃棄物の発生を抑えることができる。なお、
ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を除去した後の管路をリサイクルして、改めて
ポーラス形状を呈する無機物質であって、イオン交換性能が付与されたジオポリマー組成物を配設することにより、製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る排水処理用配管を示す斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る排水処理用配管の製造方法(1)を示す斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係る排水処理用配管の製造方法(2)を示す斜視図。
【
図4】本発明の実施形態に係る排水処理用配管の断面形状を示す横断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る排水処理用配管から無機物質を抜き取る方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明に係る排水処理用配管、その製造方法及び再生方法の実施形態を説明する。
図1〜
図5は本発明の実施形態に係る排水処理用配管及びその再生方法を説明するもので、
図1は排水処理用配管を示す斜視図、
図2及び
図3は排水処理用配管の製造方法を示す斜視図、
図4は排水処理用配管の断面形状を示す横断面図、
図5は排水処理用配管から無機物質を抜き取る方法を示す説明図である。
【0022】
<排水処理用配管の概要>
本発明の実施形態に係る排水処理用配管は、例えば、河川水を農業用水として利用する際に用いるもので、河川水(排水)中に含まれる重金属、放射性物質、懸濁物等の除去対象物質を除去するために使用することができる。具体的には、排水経路となる管路の内面にポーラス形状を呈する無機物質(特に、イオン交換性能を有する無機物質)を配設することにより、排水が管路内を流下する過程で、排水中に含まれる重金属、放射性物質、懸濁物等の除去対象物質の除去に際して、吸着法、イオン交換性能、濾過法の効果を組み合わせた相乗効果を奏することが可能となる。なお、以下の説明において、管継ぎ手(ジョイント)を用いて接続することにより、一連の管路を構成する管状の部材を配管部材と称して説明を行う。
【0023】
<排水処理用配管の具体的構成>
本発明の実施形態に係る排水処理用配管は、
図1に示すように、鋼管やFRP管等からなる配管部材10の内面に、ポーラス形状を呈する無機物質20(特に、イオン交換性能を有する無機物質20)を円筒状に配設して形成する。鋼管やFRP管等は、直管状の配管部材10であり、例えば、3m程度の長さを有している。なお、配管部材10の内径や長さは、排水処理用配管を設置する環境、排水の流量等に応じて適宜変更して実施することができる。
【0024】
後に詳述するが、配管部材10の内面にポーラス形状を呈する無機物質20を容易に配設するために、配管部材10は直管状であることが好ましく、複数の配管部材10を管継ぎ手(図示せず)により接続することにより、所望の長さの管路を形成することができる。また、屈曲が必要な箇所では、直管状の配管部材10と、所望の曲率を有する配管部材10を管継ぎ手(ジョイント)により接続することにより、管路を屈曲させることができる。
【0025】
<ジオポリマー組成物>
本発明の実施形態で、配管部材(管路)10内に配設するイオン交換性能を有する無機物質20は、ジオポリマー組成物とすることが好ましい。以下、配管部材(管路)10内に配設する無機物質20として、ジオポリマー組成物を例にとって説明を行う。このジオポリマー組成物は、例えば、活性フィラーと、アルカリ活性剤と、骨材とを原料として得られる組成物であり、活性フィラーをアルカリ活性剤溶液で活性化し、重合固化させることにより硬化体を作製する。すなわち、活性フィラーから溶出したアルミニウム等の金属が水ガラス成分を含む水と接触すると、珪酸錯体(SiO
4)が架橋されてポリマー化することにより、硬化体を得ることができる。
【0026】
<活性フィラー>
本発明の実施形態で使用する活性フィラーは、フライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥、カオリンのうちの少なくとも1種類である。これらの活性フィラーのうち、フライアッシュ、高炉スラグ、下水焼却汚泥は、ガラス成分を含む産業副産物であり、これらを再利用することにより環境負荷を低減することができる。
【0027】
フライアッシュは、石炭火力発電所において燃焼副産物として排出される石炭灰であり、シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)を主成分としている。高炉スラグは、銑鉄製造工程で発生する産業副産物であり、石灰(CaO)及びシリカ(SiO
2)を主成分とし、アルミナ(Al
2O
3)やマグネシア(MgO)を含んでいる。下水焼却汚泥は、下水処理において発生する汚泥を焼却したもので、シリカ(SiO
2)及びアルミナ(Al
2O
3)を主成分とし、リン酸(P
2O
5)を含んでいる。カオリン(Al
2Si
2O
5(OH)
4)は、天然に産出する珪酸塩鉱物の1種である。
【0028】
<アルカリ活性剤>
アルカリ活性剤としては、例えば、水ガラス(珪酸ナトリウム溶液又は珪酸カリウム溶液)、水酸化カリウム(KOH)溶液、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液、メタ珪酸ナトリウム粉体等を用いることができる。
【0029】
<骨材>
骨材としては、一般的なコンクリートやモルタルに使用されているものを用いることができる。
【0030】
<排水処理用配管の製造方法(1)>
以下、本発明の排水処理用配管の製造方法について説明する。本発明の排水処理用配管を製造する第1の方法は、
図2に示すように、配管部材10の内部に、流動性を有する無機物質材料(ジオポリマー組成物(無機物質20))を投入して、貫入治具50を用いて配管部材10の内面にジオポリマー組成物(無機物質20)を配設する方法である。貫入治具50は、
図2に示すように、操作部51から延設した軸部52と、軸部52の外周面に設けた螺旋翼53を有している。軸部52及び螺旋翼53の外径は、配管部材10の内面に配設するジオポリマー組成物(無機物質20)の内径に合わせて適宜設定することができる。また、ジオポリマー組成物(無機物質20)内に貫入治具50を容易に挿入できるように、貫入治具50の先端部を先細り状のテーパーネジ形状とすることが好ましい。
【0031】
具体的には、
図2に示すように、まず初めに、配管部材10の内部に、適宜分量のジオポリマー組成物(無機物質20)を投入する(a)。このジオポリマー組成物(無機物質20)は、硬化前の流動性を有する状態のものである。なお、ジオポリマー組成物(無機物質20)の投入量は、配管部材10の内面に円筒状のジオポリマー組成物(無機物質20)を形成するのに必要十分な量とする。
【0032】
続いて、配管部材10の内部に投入したジオポリマー組成物(無機物質20)が硬化する前に、ジオポリマー組成物(無機物質20)の内部に貫入治具50を挿入する(b)。そして、操作部51を操作して貫入治具50を回転させることにより、螺旋翼53によりジオポリマー組成物(無機物質20)を配管部材10の内面に伸展させる(c)。ジオポリマー組成物(無機物質20)が硬化すると、配管部材10の内面に沿って、内周面に凹凸部22を有するとともに、ポーラス形状を呈する無機物質を配設することができる(d)。なお、第1の製造方法において、配管部材10の支持方向は、略鉛直状であってもよいし、略水平状であってもよい。
【0033】
<排水処理用配管の製造方法(2)>
本発明の排水処理用配管を製造する第2の方法は、
図3に示すように、鋼管やFRP管等の配管部材10を略鉛直状に支持し、配管部材10の内部に円柱状又は円筒状の型枠30を挿入し、配管部材10の内面と型枠30の外面との隙間に、ジオポリマー組成物(無機物質20)を充填する方法である。そして、ジオポリマー組成物(無機物質20)が硬化した後に、配管部材10の内部から型枠30を抜き取ることにより、配管部材10の内面にジオポリマー組成物(無機物質20)を配設することができる。この際、型枠30部材の外径を適宜設定することにより、配管部材10の内面に、所望の厚さのジオポリマー組成物(無機物質20)の層を形成することができる。また、配管部材10の内部に型枠30を設置する際に、位置決め部材やスペーサー等を使用すれば、配管部材10の略中央に型枠30を設置することができる。
【0034】
また、図示しないが、型枠30の外面に対して、長手方向に連続する凸部(突条)を設けてもよい。凸部(突条)の形状は、どのようなものであってもよいが、例えば、断面三角形、断面四角形、断面半円形等とすることができる。このように型枠30の外面に凸部(突条)を形成することにより、
図4に示すように、ジオポリマー組成物(無機物質20)を円筒状(a)とするだけではなく、ジオポリマー組成物(無機物質20)の内面に、断面三角形(b)、断面四角形(c)、断面半円形(d)等の凹部21を形成することができる。これにより、排水処理用配管を流下する排水とジオポリマー組成物(無機物質20)との接触面積を増加させることができる。また、型枠30の外面に連続した凹部を設けることにより、ジオポリマー組成物(無機物質20)の内面に、凸部を形成することができる。
【0035】
<排水処理用配管の再生方法>
所定期間、排水処理用配管により排水を流下させると、ジオポリマー組成物(無機物質20)に除去対象物質が濾過、吸着等により蓄積され、除去対象物質の除去性能が低下する。そこで、所定期間が経過した後、排水処理用配管内のジオポリマー組成物(無機物質20)を抜き取り、新たなジオポリマー組成物(無機物質20)を配設することが好ましい。これにより、効果的に除去対象物質の除去を行うことができるとともに、管路の維持管理に伴い発生する廃棄物の減溶化を図ることができる。
【0036】
配管部材10から既設のジオポリマー組成物(無機物質20)を取り除くには、管継ぎ手(図示せず)により連結した配管部材10を取り外した後に、
図5に示すように、各配管部材10を略鉛直状に支持し、配管部材10の内部に抜取部材40を挿入すればよい。なお、配管部材10を略水平に支持して、ジオポリマー組成物(無機物質20)を取り除いてもよい。この場合、型枠を用いて配管部材10の内部に新たなジオポリマー組成物(無機物質20)を配設する場合には、配管部材10の設置位置変更の手間を省くために、配管部材10を略鉛直状に支持することが好ましい。
【0037】
ジオポリマー組成物の抜き取り装置は、図示しないが、シンウォールチューブ内から試料を抜き取るための試料抜取器と同様の構成を有する機器を用いることができる。例えば、配管部材10の内部に挿入可能な内径を有する抜取部材40を、配管部材10の内部に押し込むことにより、配管部材10の内部に配設下ジオポリマー組成物(無機物質20)を抜き取ることができる。抜取部材40の駆動装置としては、油圧式ジャッキ、電動式ジャッキ、エアージャッキ等、どのような装置を用いてもよい。
【0038】
<無機物質の酸処理>
また、所定期間が経過した後、排水処理用配管内のジオポリマー組成物(無機物質20)に対して洗浄、酸処理等の再生処理を施し、ジオポリマー組成物(無機物質20)に付着(吸着)した除去対象物質を除去して、除去対象物質の除去性能を回復させてもよい。
【0039】
ジオポリマー組成物(無機物質20)の交換時期や酸処理は、排水処理用配管を設置する環境、排水中に含まれる重金属、放射性物質、懸濁物等の除去対象物質の種類や濃度等に応じて、適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 配管部材
20 無機物質
21 凹部
22 凹凸部
30 型枠
40 抜取部材
50 貫入治具
51 操作部
52 軸部
53 螺旋翼