特許第6117622号(P6117622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117622
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】エレベータ制動装置の診断装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20170410BHJP
   B66B 11/08 20060101ALI20170410BHJP
   F16D 49/16 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B11/08 G
   F16D49/16 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-119908(P2013-119908)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-237501(P2014-237501A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城賀本 光弘
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】大西 友治
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−208511(JP,A)
【文献】 特開2011−46493(JP,A)
【文献】 特開平6−191758(JP,A)
【文献】 特表2014−532607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 11/08
F16D 49/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置からコイル電流が供給される電磁コイルと、この電磁コイルへの前記コイル電流の供給に応じて駆動するプランジャとを備え、前記電磁コイルに前記コイル電流が供給されて前記プランジャが駆動することにより巻上機に連結された回転ドラムに対する制動力を開放し、前記電磁コイルへの前記コイル電流の供給が遮断されることにより前記回転ドラムに対する制動力を発生させるエレベータ制動装置の異常診断を行うエレベータ制動
装置の診断装置において、
前記プランジャの変位量を検出する変位検出器と、
前記電源装置から所定時間の間、前記コイル電流を流すように制御する制御部と、
前記変位検出器で検出した前記プランジャの変位量を記憶するデータ記憶部とを備えるとともに、
記コイル電流が流れ始めてから前記変位検出器で検出され、前記データ記憶部に記憶された所定時間毎の前記プランジャの変位量に基づいて、前記プランジャの変位量の平均値を演算し、前記コイル電流が流れ終わってから遡ったデータである前記データ記憶部に記憶されている所定時間毎のプランジャの変位量と前記平均値の差をそれぞれ求め、前記差が所定範囲から外れた個数が、予め設定され異常を生じていると見做される所定個数以上の場合には、前記エレベータ制動装置は異常と診断する特性評価処理部を備えたことを特徴とするエレベータ制動装置の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに備えられる巻上機に連結された回転ドラムを制動するエレベータの制動装置の異常診断を行うエレベータ制動装置の診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なエレベータは、主ロープを介して乗かごを駆動する巻上機と、この巻上機に連結された回転ドラムと、この回転ドラムを制動する制動装置が備えられている。エレベータ制動装置は安全上、非常に重要な装置である。このためエレベータ制動装置の状態が異常であるか否かを診断することも重要なこととなっている。従来、このようなエレベータ制動装置の異常診断を行う診断装置が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された従来技術は、エレベータ制動装置の駆動部となるプランジャの変位量を検出し、検出された変位量と期待値とを比較して、エレベータ制動装置の特性評価、すなわち制動装置の異常の有無を診断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−208511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プランジャの変位量の検出に際し、エレベータ制動装置の周囲温度の違い、エレベータ制動装置を制動させる圧縮ばねのばね定数のばらつき、電磁コイルの電磁吸引力のばらつきなどの様々な検出条件が検出時期に応じて一般に変化しやすい。したがって、ばらつきを生じやすい変位量の検出値を前述のように単に比較することによって制動装置の異常の有無を診断する従来技術にあっては、診断結果に大きな誤差が生じてしまう懸念がある。
【0005】
本発明は、前述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、エレベータ制動装置の高精度の診断を実現させることができるエレベータ制動装置の診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベータ制動装置の診断装置は、電源装置からコイル電流が供給される電磁コイルと、この電磁コイルへの前記コイル電流の供給に応じて駆動するプランジャとを備え、前記電磁コイルに前記コイル電流が供給されて前記プランジャが駆動することにより巻上機に連結された回転ドラムに対する制動力を開放し、前記電磁コイルへの前記コイル電流の供給が遮断されることにより前記回転ドラムに対する制動力を発生させるエレベータ制動装置の異常診断を行うエレベータ制動装置の診断装置において、前記プランジャの変位量を検出する変位検出器と、前記電源装置から所定時間の間、前記コイル電流を流すように制御する制御部と、前記変位検出器で検出した前記プランジャの変位量を記憶するデータ記憶部とを備えるとともに、前記コイル電流が流れ始めてから前記変位検出器で検出され、前記データ記憶部に記憶された所定時間毎の前記プランジャの変位量に基づいて、前記プランジャの変位量の平均値を演算し、前記コイル電流が流れ終わってから遡ったデータである前記データ記憶部に記憶されている所定時間毎のプランジャの変位量と前記平均値の差をそれぞれ求め、前記差が所定範囲から外れた個数が、予め設定され異常を生じていると見做される所定個数以上の場合には、前記エレベータ制動装置は異常と診断する特性評価処理部を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るエレベータ制動装置の診断装置は、特性評価処理部において、同条件で得られた平均値に基づいて、エレベータ制動装置の異常の有無を診断するので、エレベータ制動装置の周囲温度、圧縮ばねのばね定数のばらつき、電磁コイルの電磁吸引力のばらつきなどの様々の検出条件の影響が消去された状態でエレベータ制動装置の異常の有無を診断することができる。これにより本発明は、診断結果の誤差を小さく抑えることができ、エレベータ制動装置の高精度の診断を実現させることができ、従来に比べて高い信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るエレベータ制動装置の診断装置の一実施形態を示す全体構成図である。
図2】本実施形態の診断対象のエレベータ制動装置に備えられるマグネットケースの断面図である。
図3図2に示すマグネットケース内に収容される電磁コイルに供給されるコイル電流とプランジャの変位量の関係を示す特性図である。
図4】電流供給終了直前のプランジャの動作特性の要部拡大図である。
図5】本実施形態に備えられるマイクロコンピュータの特性評価処理部で実行される特性評価のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るエレベータ制動装置の診断装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本発明に係るエレベータ制動装置の診断装置の一実施形態を示す全体構成図、図2は本実施形態の診断対象のエレベータ制動装置に備えられるマグネットケースの断面図である。
【0011】
本発明に係る診断対象のエレベータ制動装置は、図1に示すように、主ロープを介して乗かごを駆動する図示しない巻上機に支軸12Aを介して連結され、支軸12Aを中心に回転する回転ドラム12を制動するものである。回転ドラム12の両側に配置された主レバー7A,7Bは、マシンビーム20にピン21A,21Bでそれぞれ連結され、これらのピン21A,21Bを中心に回転ドラム12に近づく方向に、また回転ドラム12から離れる方向に回動可能となっている。
【0012】
図1に示すように、主レバー7A,7Bの上部には、ロッド9がマグネットケース8を貫通するように取り付けてある。このロッド9に装着された圧縮ばね10によって、主レバー7Aと主レバー7Bとが互いに狭められる。これにより、主レバー7Aに取り付けたブレーキシュー11Aと、主レバー7Bに取り付けたブレーキシュー11Bは回転ドラム12に押し付けられ、回転ドラム12を制動する。制動力の調整は、圧縮ばね10の締め付け距離を調整することにより行う。
【0013】
図2に示すように、マグネットケース8内には、プランジャ6Aとプランジャ6Bが互いに対向して、またそれぞれ近づく方向に、あるいは離れる方向に移動可能に配置してある。
【0014】
プランジャ6Aには、ロッド14Aとロッド14Bを取り付けてある。これらのロッド14Aとロッド14Bは、プランジャ6Bを貫通するように配置してある。ロッド14A及びロッド14Bの端部にはばねを介してプレート15を取り付けてある。このプレート15は、主レバー7Bに締結したボルト16Bによって押圧されている。
【0015】
プランジャ6Bには、ロッド13を取り付けてある。このロッド13はプランジャ6Aを貫通するように配置してある。このロッド13は主レバー7Bに締結したボルト16Aによって押圧されている。
【0016】
図2に示すように、マグネットケース8内には、プランジャ6A,6Bを囲むように、電源装置1とコイル配線3で接続された電磁コイル5を配置してある。この電磁コイル5に、所定値以上の電流が通電されると、プランジャ6Aはプランジャ6B側に引き寄せられ、ロッド14A,14Bを介してプレート15によってボルト16Bが押圧される。これにより、主レバー7B及びブレーキシュー11Bが回転ドラム12から離れる。また、前述のように電磁コイル5に所定値以上の電流が通電されたときに、プランジャ6Bはプランジャ6A側に引き寄せられ、ロッド13によってボルト16Aが押圧される。これにより、主レバー7A及びブレーキシュー11Aが回転ドラム12から離れる方向に回動する。これらの動作によって、エレベータ制動装置の制動力が開放された状態となる。
【0017】
電磁コイル5への電流が遮断されると、プランジャ6Aとプランジャ6Bの引き寄せあう力が消滅する。このとき、ロッド9に装着された圧縮ばね10によって、主レバー7Aと主レバー7Bが互いに狭められるように回動する。これにより、ブレーキレバー7Aのブレーキシュー11A、及びブレーキレバー7Bのブレーキシュー11Bのそれぞれが回転ドラム12に押圧される。これらの動作によって、エレベータ制動装置が制動状態となる。
【0018】
前述した主レバー7Bの回転ドラム12方向への回動に伴い、ボルト16Bによってプレート15が押圧され、ロッド14A,14Bの移動に伴ってプランジャ6Aがプランジャ6Bから離れる方向に移動する。また、前述した主レバー7Aの回転ドラム12方向への回動に伴い、ボルト16Aによってボルト13が押圧され、このボルト13の移動に伴ってプランジャ6Bがプランジャ6Aから離れる方向に移動する。
【0019】
本実施形態に係る診断装置は、図1に示すように、プランジャ6Aの変位量δを検出する変位検出器4と、マイクロコンピュータ2とを備えている。
【0020】
マイクロコンピュータ2は、電源装置1から所定時間の間、前述の電磁コイル5にコイル電流を流すように制御する制御部2aと、変位検出器4で検出したプランジャ6Aの変位量δを所定時間毎に記憶するデータ記憶部2bとを備えている。
【0021】
また、マイクロコンピュータ2は、コイル電流が流れ始めてから変位検出器4で検出され、データ記憶部2bに記憶された所定時間毎のプランジャ6Aの変位量δ(t)に基づいて、前記プランジャ6Aの変位量δ(t)の平均値Xを演算し、コイル電流が流れ終わってから遡ったデータであるデータ記憶部2bに記憶されている所定時間毎のプランジャ6Aの変位量δ(t)と平均値Xの差〔δ(t)−X〕をそれぞれ求め、その差〔δ(t)−X〕が所定範囲から外れた個数が、予め設定された異常を生じていると見做される
定個数m以上のときには、エレベータ制動装置は「異常」と診断する特性評価処理部2cを備えている。
【0022】
なお、同図1に示すように、マイクロコンピュータ2の制御部2aは電源装置1に接続され、データ記憶部2bは変位検出器4に接続されている。
【0023】
図3図2に示すマグネットケース内に収容される電磁コイルに供給されるコイル電流とプランジャの変位量の関係を示す特性図である。
【0024】
この図3において、Iは時間tに対するコイル電流の変化を示し、δはプランジャ6Aの時間tに対する変化量を示している。コイル電流Iが同図3に示すように流れると、プランジャ6Aの変位量δは、同図3に示すようにコイル電流Iに対応した形態で変化する。
【0025】
図4は電流供給終了直前のプランジャの動作特性の要部拡大図である。この図4は、図3に示す特性のうちの電流供給終了直前のプランジャ6Aの変位量δを拡大して示している。
【0026】
この図4中、t1,t2,t3,t4等は、変位検出器4がプランジャ6Aの変位を検出する時間である。図3では、プランジャ6Aの変位量δが電流供給前と同じ値となっているように見えるが、実際は変位検出器4の振れやプランジャ6Aの偏摩耗、固渋等により電流供給前とは微少量の異なる変位を生じている。
【0027】
図5は本実施形態に備えられるマイクロコンピュータの特性評価処理部で実行される特性評価のフローチャートである。
【0028】
以下、この図5に基づいてマイクロコンピュータ2のデータ記憶部2aに記憶されているデータについて説明する。変位検出器4はdt秒毎にプランジャ6Aの変位量δを検出し、データ記憶部2bに送信する。すなわち、データ記憶部2bは、dt秒毎にプランジャ6Aの変位量δを記憶する処理を行う。
【0029】
マイクロコンピュータ2の特性評価処理部2cは、手順S1に示すように、データ記憶部2bに記憶されたプランジャ6Aの変位量δに基づいて、所定時間毎のプランジャ6Aの変位量δ(t)の平均値Xを算出し、この平均値Xを0位置とする。
【0030】
次に、特性評価処理部2cは、プランジャ6Aの変位量δ(t)の検出終了時から遡ったデータであるデータ記憶部2bに記憶されている所定時間毎のプランジャ6Aの変位量δ(t)と平均値Xの差〔δ(t)−X〕を求める。
【0031】
次に、手順S2に示すように、所定時間毎のプランジャ6Aの変位量δ(t)と平均値Xとの差の〔δ(t)−X〕が所定範囲Yから外れた個数を求め、その個数が所定個数m未満であるときには、手順S3に移り、当該エレベータ制動装置は正常と診断する。また、手順S2における判断で所定範囲Yから外れた個数が所定個数m以上であるときには、手順S4に移り、当該エレベータ制御装置は異常と診断する。なお、図4においては、変位量δ(t3)と平均値Xとの差〔δ(t3)−X〕が所定範囲Yから外れたものと判断される。
【0032】
前述のように本実施形態は、マイクロコンピュータ2の特性評価処理部2cにおいて、同じ検出条件で得られている平均値Xに基づいて、エレベータ制動装置の異常の有無を診断するので、エレベータ制動装置の周辺の温度、圧縮ばね10のばね定数のばらつき、電磁コイル5の電磁吸引力のばらつきなどの種々の検出条件の影響が消去された状態でエレベータ制動装置の異常の有無を診断することができる。これにより本実施形態は、診断結果の誤差を小さく抑えることができ、エレベータ制動装置の高精度の診断を実現させることができ、高い信頼性を確保することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 電源装置
2 マイクロコンピュータ
2a 制御部
2b データ記憶部
2c 特性評価処理部
4 変位検出器
5 電磁コイル
6A プランジャ
6B プランジャ
7A 主レバー
7B 主レバー
11A ブレーキシュー
11B ブレーキシュー
12 回転ドラム
図1
図2
図3
図4
図5