特許第6117624号(P6117624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117624
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】硬化性組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20170410BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20170410BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C08F2/44 B
   C08F20/10
   C08F299/02
【請求項の数】12
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-120186(P2013-120186)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-12826(P2014-12826A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-130127(P2012-130127)
(32)【優先日】2012年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】三ノ上 渓子
(72)【発明者】
【氏名】南 聡史
(72)【発明者】
【氏名】安田 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 太一
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−269854(JP,A)
【文献】 特開2009−298995(JP,A)
【文献】 特開2010−070640(JP,A)
【文献】 特開2010−248358(JP,A)
【文献】 特開2012−233142(JP,A)
【文献】 フルオレン誘導体による酸化ジルコニウムナノ粒子の分散とその物性,高分子学会予稿集,2011年,60巻1号,1456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00 − 20/70
C08L 33/00 − 33/26
C08F 2/00 − 2/60
C08G 77/00 − 77/62
C08F 283/01
C08F 290/00 − 290/14
C08F 299/00 − 299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1)で表される化合物を含む(メタ)アクリル系化合物(A)で構成された硬化性成分と、下記式(B1)で表されるフルオレン化合物(B)とを含み、かつ無機系微粒子を含まない硬化性組成物。
【化1】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rは置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。)
【化2】
{式中、Xは、式:−OCO−CHR11−CH−S−X4a−(式中、R11は水素原子又はメチル基、X4aはアルキレン基を示す。)で表される基であり、R、RおよびRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、基−OR[式中、Rは、炭化水素基又は基−[(RO)−R10](式中、Rは炭化水素基、R10は炭化水素基、aは1以上の整数を示す)を示す]又は炭化水素基を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。ただし、R、RおよびRのうち少なくとも1つは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORである。}
【請求項2】
硬化性成分が、さらに、単官能性の硬化性化合物を含む請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
硬化性成分が、さらに、芳香族(メタ)アクリレートおよび硫黄含有(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種の単官能の硬化性化合物を含む請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
単官能の硬化性化合物の割合が、(メタ)アクリル系化合物(A)100重量部に対して、10〜600重量部である請求項又は記載の硬化性組成物。
【請求項5】
フルオレン化合物(B)の屈折率が、25℃、589nmにおいて1.55以上である請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
フルオレン化合物(B)の割合が、硬化性成分100重量部に対して、0.1〜30重量部である請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項7】
フルオレン化合物(B)中に含まれる加水分解縮合性基1個あたりの分子量が、硬化性成分およびフルオレン化合物(B)の総量に対して500〜10000である請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項8】
硬化性成分の屈折率(25℃、589nm)をn1、硬化性組成物の屈折率(25℃、589nm)をn2とするとき、式[(n1−n2)/n1]×100(%)で表される屈折率の減少率が0.5%以下である請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の硬化性組成物に活性エネルギーを付与して硬化させる硬化物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
【請求項11】
透明無機材料で構成された基材とこの基材上に形成された請求項10記載の硬化物とで構成された積層体。
【請求項12】
下記式(A1)で表される化合物を含む(メタ)アクリル系化合物(A)で構成された硬化性成分を含む硬化性組成物に、下記式(B1)で表されるフルオレン化合物を添加又は混合し、前記硬化性組成物が硬化した硬化物の基材に対する密着性を向上又は改善する方法。
【化3】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rは置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。)
【化4】
{式中、Xは連結基、R、RおよびRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、基−OR[式中、Rは、炭化水素基又は基−[(RO)−R10](式中、Rは炭化水素基、R10は炭化水素基、aは1以上の整数を示す)を示す]又は炭化水素基を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。ただし、R、RおよびRのうち少なくとも1つは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORである。}
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解縮合性基を有するフルオレン化合物を含む硬化性組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱又は光硬化性樹脂などの硬化性成分は、用途に応じて種々の基材上に硬化物を形成する。そのため、このような硬化性成分又は硬化物には、基板に対する密着性が要求されるが、硬化性成分と基材との組み合わせによっては、密着性が十分でない場合がある。例えば、(メタ)アクリル系化合物の硬化物などは、光学材料用途として汎用され、光透過性の高い基材[例えば、無機基材(ガラスなど)、有機基材(ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルローストリアセテートなど)など]上に形成されるが、一般的に、ガラスなどの基板に対する密着性が低い。
【0003】
このような密着性を改善するため、種々の技術が開発されつつある。例えば、特開2009−167244号公報(特許文献1)には、特定のラジカル重合性化合物(例えば、ジ(メタ)アクリル酸ポリエトキシレーテッド水添ビスフェノールAなど)を含む活性エネルギー線硬化性ガラス接着用組成物の密着性を向上させるための成分として、シランカップリング剤(γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなど)を使用できることが記載されている。
【0004】
しかし、このようなシランカップリング剤では、組み合わせる(メタ)アクリル系化合物の種類によっては、屈折率などの特性を著しく低下させる虞がある。また、十分な相溶性や保存安定性を担保できずにハンドリング性を損なったり、良好な硬化物が得られない場合がある。また、硬度、光学的特性(屈折率など)などの物性についても不十分であり、ブリードアウトにより外観を損なう虞もある。
【0005】
一方、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、眼鏡レンズ、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどの光学材料用途などとして、高い屈折率や耐熱性を有し、ハードコート性又は耐擦傷性を有する材料として、フルオレン骨格(特に、9,9−ビスアリールフルオレン骨格)を有する重合性化合物(例えば、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなど)を含む硬化性組成物が提案されている。
【0006】
しかし、このようなフルオレン骨格を有する重合性化合物を含む硬化性組成物もまた、通常、基材に対する密着性が充分でなく、高い密着性で基材上に硬化物(硬化膜)を形成できない場合が多い。
【0007】
なお、特開2007−91870号公報(特許文献2)には、フルオレン骨格を有する特定の多官能性(メタ)アクリレートと、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物(例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)と、光酸発生剤とで構成された重合性組成物や、さらに、重合性基を有しない加水分解縮合性有機ケイ素化合物(例えば、フェニルトリメトキシシランなど)を含む重合性組成物が開示されている。この文献では、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物については、多官能性(メタ)アクリレートと重合させるとともに加水分解縮合(ゾルゲル反応)させてハイブリッド硬化膜を得ることを想定し、重合性基を有しない加水分解縮合性有機ケイ素化合物については、重合性基を有する加水分解縮合性有機ケイ素化合物とともに加水分解縮合(ゾルゲル反応)させることを想定しており、いずれの成分も密着性を向上させるための成分として用いることを想定していない。また、これらの成分を用いると、フルオレン骨格を有する特定の多官能性(メタ)アクリレート由来の光学的特性(屈折率など)を低下させる虞がある。さらに、硬化収縮も生じやすい。
【0008】
なお、特開2009−256293号公報(特許文献3)および特開2009−269854号公報(特許文献4)には、9,9−ビスアリールフルオレン骨格と加水分解縮合性ケイ素含有基(アルコキシ基など)とを有する特定のフルオレン化合物が開示されている。
【0009】
これらの文献において、フルオレン化合物は、チタンアルコキシド類などと組み合わせたゾルゲル反応により、有機無機ハイブリッド物を得るための成分(すなわち、チタンアルコキシド類などに対する修飾剤)として使用することを想定しており、特許文献2と同様に、基板に対する密着性を向上させる成分として使用することを想定していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−167244号公報(特許請求の範囲、段落[0020]、実施例)
【特許文献2】特開2007−91870号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2009−256293号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開2009−269854号公報(特許請求の範囲、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、基材(特に、ガラス基材などの無機基材)に対する硬化物の密着性を向上又は改善できる硬化性組成物、およびその硬化物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、高屈折率などの優れた特性を損なうことなく、基材に対する密着性を向上又は改善できる硬化性組成物、およびその硬化物を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、保存安定性に優れ、硬化収縮のない硬化物を形成できる硬化性組成物およびその硬化物を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、硬化物の基材に対する密着性を向上又は改善するための添加剤およびこの添加剤を用いて基材に対する密着性を向上又は改善する方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、保存安定性や硬化性成分との相溶性を損なうことなく、硬化物の基材に対する密着性を向上又は改善するための添加剤およびこの添加剤を用いて基材に対する密着性を向上又は改善する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、加水分解縮合性基を有するフルオレン化合物が、多官能性の硬化性化合物(例えば、多官能性の(メタ)アクリル系化合物)で構成された硬化性成分を含む硬化性組成物(又はその硬化物)の基材に対する密着性を向上又は改善できること、また、このようなフルオレン化合物は、硬化性成分に対する相溶性に優れ、良好な硬化物を形成できること、さらに、硬化性成分と組み合わせても、保存安定性を損なうことがなく、高屈折率などの優れた特性を高いレベルで維持しつつ(又は硬化性成分の種類によっては、屈折率などの特性を向上又は改善でき)、硬化物を形成できることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明の硬化性組成物は、多官能性の硬化性化合物(A)で構成された硬化性成分(硬化性樹脂、硬化性樹脂成分)と、加水分解縮合性基を有するフルオレン化合物(B)とを含む。前記硬化性化合物(A)は、(メタ)アクリル系化合物などのラジカル重合性化合物であってもよい。また、前記硬化性化合物(A)は、フルオレン骨格を有する化合物であってもよい。
【0018】
代表的には、硬化性化合物(A)は、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物を含む(メタ)アクリル系化合物であってもよい。このような硬化性組成物において、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物は、下記式(A1)で表される化合物[例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類など]であってもよい。
【0019】
【化1】
【0020】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rは置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。)
前記硬化性成分は、さらに、単官能性の硬化性化合物(例えば、芳香族(メタ)アクリレートおよび硫黄含有(メタ)アクリレートから選択された少なくとも1種の単官能の硬化性化合物)を含んでいてもよい。このような硬化性組成物において、単官能の硬化性化合物の割合は、多官能性の硬化性化合物(A)100重量部に対して、例えば、10〜600重量部程度であってもよい。
【0021】
本発明の硬化性組成物において、フルオレン化合物(B)は、例えば、下記式(B1)で表される化合物であってもよい。
【0022】
【化2】
【0023】
{式中、Xは連結基、R、RおよびRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、基−OR[式中、Rは、炭化水素基又は基−[(RO)−R10](式中、Rは炭化水素基、R10は炭化水素基、aは1以上の整数を示す)を示す]又は炭化水素基を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。ただし、R、RおよびRのうち少なくとも1つは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORである。}
上記式(B1)において、Xは、硫黄原子を含む基(連結基)であってもよい。代表的には、式(B1)において、Xが、下記式で表される基であってもよい。
【0024】
−OCO−CHR11−CH−S−X4a
(式中、R11は水素原子又はメチル基、X4aはアルキレン基を示す。)
前記フルオレン化合物(B)の屈折率は、25℃、589nmにおいて1.55以上であってもよい。
【0025】
本発明の硬化性組成物において、フルオレン化合物(B)の割合は、硬化性成分100重量部に対して、例えば、0.1〜30重量部程度であってもよい。また、フルオレン化合物(B)中に含まれる加水分解縮合性基1個あたりの分子量が、硬化性成分およびフルオレン化合物(B)の総量に対して500〜10000程度であってもよい。
【0026】
本発明の硬化性組成物では、硬化性成分に対してフルオレン化合物(B)を組み合わせても屈折率の低下を極力抑えることができ、例えば、硬化性成分の屈折率(25℃、589nm)をn1、硬化性組成物の屈折率(25℃、589nm)をn2とするとき、式[(n1−n2)/n1]×100(%)で表される屈折率の減少率が0.5%以下であってもよい。
【0027】
本発明には、前記硬化性組成物に活性エネルギーを付与して硬化させる硬化物の製造方法が含まれる。また、本発明には、前記硬化性組成物が硬化した硬化物(又は前記製造方法により得られる硬化物)も含まれる。このような硬化物は、基材上に形成されてもよい。そのため、本発明には、基材[特に、ガラスなどの透明無機材料で構成された基材(透明基材、透明無機基材)]とこの基材上に形成された前記硬化物とで構成された積層体も含む。
【0028】
そのため、本発明には、多官能性の硬化性化合物(A)で構成された硬化性成分を含む硬化物の基材(特に、ガラスなどの無機基材)に対する密着性を向上又は改善するための添加剤(密着性改善剤)であって、加水分解縮合性基を有するフルオレン化合物(B)で構成された添加剤を含む。また、多官能性の硬化性化合物(A)で構成された硬化性成分を含む硬化性組成物に、前記添加剤を添加又は混合し、前記硬化性組成物が硬化した硬化物の基材に対する密着性を向上又は改善する方法も含む。
【発明の効果】
【0029】
本発明の硬化性組成物では、基材(特に、ガラス基材などの無機基材)に対する硬化物の密着性を向上又は改善できる。しかも、高屈折率などの優れた特性(例えば、光学的特性)を損なうことがなく、高いレベルで硬化性組成物又は硬化物の優れた特性を維持又は保持でき、硬化性成分の種類によっては、屈折率などの特性を向上又は改善することもできる。特に、硬化物とガラス基材などとは、通常、屈折率の差が大きいが、本発明では、このような屈折率差を比較的小さくすることができる。そのため、干渉縞が低減された硬化物(硬化物が表面に形成された基材)も効率よく得ることができる。また、フルオレン化合物(B)は、基材の種類によっては(例えば、ガラス基材などにおいては)、その親和性により基材表面に移行しやすくなる場合があるが、このような移行を伴っても、硬化性成分の種類によっては、硬化性化合物(A)とフルオレン化合物(B)との屈折率差が比較的小さいため、硬化物全体における屈折率の広がり(バラツキ、分布)を高いレベルで抑制できる。
【0030】
また、本発明の硬化性組成物は、保存安定性に優れており、ハンドリング性も良好である。しかも、このような硬化性組成物では、硬化収縮を抑制(又は防止)できる。さらに、本発明の添加剤(密着性向上剤又は密着性改善剤)は、上記のように、硬化物の基材に対する密着性を向上又は改善するための添加剤として有用である。特に、このような添加剤は、保存安定性や硬化性成分との相溶性を損なうことなく、硬化物の基材に対する密着性を向上又は改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物(樹脂組成物)は、多官能性の硬化性化合物(A)で構成された硬化性成分(硬化性樹脂、硬化性樹脂成分)と、加水分解縮合性基を有するフルオレン化合物(B)とを少なくとも含む。
【0032】
(硬化性化合物(A))
多官能性の硬化性化合物(A)としては、熱又は光硬化性樹脂(熱又は光硬化性化合物)、例えば、ラジカル重合性樹脂[又はラジカル重合性化合物、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリル系化合物((メタ)アクリル系樹脂)など]、縮合系樹脂[又は縮合系化合物、例えば、フェノール樹脂、アミノ樹脂(尿素樹脂、メラミン樹脂など)、フラン樹脂、エポキシ樹脂(エポキシ化合物)、エピスルフィド樹脂(エピスルフィド化合物)、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂など]などが挙げられる。硬化性化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0033】
好ましい硬化性化合物(A)には、ラジカル重合性化合物(重合性不飽和結合含有化合物)、特に、(メタ)アクリル系化合物が含まれる。本発明では、(メタ)アクリル系化合物のような基材(特に、ガラス基材など)に対する密着性に乏しい硬化性成分であっても、基材に対する密着性を向上できる。
【0034】
(メタ)アクリル系化合物(多官能性の(メタ)アクリル系化合物)としては、例えば、多官能性(メタ)アクリレート、例えば、二官能性(メタ)アクリレート{例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのC2−10アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートなど]、ビスフェノールA(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)のジ(メタ)アクリレート、橋架け環式(メタ)アクリレート(例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなど)、アルカントリ乃至ヘキサオールジ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートなどのC3−10アルカントリ乃至ヘキサオールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレートなど]など}、三官能以上の(メタ)アクリレート{例えば、多価アルコール(又はそのC2−3アルキレンオキシド付加体)の(メタ)アクリレート、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのポリオールトリ乃至ヘキサ(メタ)アクリレート}、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、(ポリ)エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。また、(メタ)アクリル系化合物には、後述のようにフルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物も含まれる。
【0035】
(メタ)アクリル系化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0036】
また、好ましい硬化性化合物(A)には、フルオレン骨格を有する硬化性化合物も含まれる。このようなフルオレン骨格を有する硬化性化合物は、フルオレン化合物(B)との親和性(又は相溶性)に優れており、良好な硬化物を得やすい。また、共通してフルオレン骨格を有することにより、硬化性化合物(A)に対してフルオレン化合物(B)を組み合わせても、屈折率などの特性(光学的特性など)を高いレベルで保持しやすい。
【0037】
フルオレン骨格を有する硬化性化合物としては、前記例示の熱又は光硬化性樹脂、例えば、(メタ)アクリル系化合物(後述の式(A1)で表される化合物など)、エポキシ化合物{後述の式(A1)において、(メタ)アクリロイル基(−CO−CR=CH)がグリシジル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−グリシジルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス[ジ又はトリ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9−ビス[3,4−ジ(グリシジルオキシ)フェニル]フルオレンなど]、9,9−ビス(グリシジルオキシナフチル)フルオレン[9,9−ビス(6−グリシジルオキシ−2−ナフチル)フルオレンなど]、9,9−ビス(グリシジルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−グリシジルオキシエトキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(グリシジルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]など}などが挙げられる。フルオレン骨格を有する硬化性化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0038】
これらの硬化性化合物の中でも、特に、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物が好ましい。
【0039】
フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物[又は2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するフルオレン化合物]は、(メタ)アクリロイル基(又は(メタ)アクリロイルオキシ基)とともに、フルオレン骨格を有している。
【0040】
このようなフルオレン骨格としては、フルオレン(9位に置換基がないフルオレン骨格)、9−置換フルオレン(例えば、9−アルキルフルオレン、9−モノアリールフルオレン、9,9−ビスアリールフルオレンなどの9位に炭化水素基を有するフルオレンなど)などが挙げられる。代表的なフルオレン骨格は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格である。なお、フルオレン骨格は、フルオレンやフルオレンの9位に置換する置換基に、置換基を有していてもよい。
【0041】
(メタ)アクリロイル基(又は(メタ)アクリロイル基を含む基)の置換位置(結合位置)は、特に限定されず、フルオレン骨格そのものであってもよく、フルオレンの9位に位置する置換基に結合していてもよい。
【0042】
代表的なフルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物には、2以上の重合性不飽和結合(特に(メタ)アクリロイル基)を有する9,9−ビスアリールフルオレン類、例えば、下記式(A1)で表される化合物などが含まれる。
【0043】
【化3】
【0044】
(式中、環Zは芳香族炭化水素環、Rは置換基を示し、Rはアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは置換基を示し、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、nは0以上の整数、pは1以上の整数である。)
上記式(A1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式アレーン(又は縮合多環式芳香族炭化水素)環などが挙げられる。縮合多環式アレーン(又は縮合多環式芳香族炭化水素)環としては、例えば、縮合二環式アレーン環(例えば、インデン環、ナフタレン環などのC8−20縮合二環式アレーン環)、縮合三環式アレーン環(例えば、アントラセン環など)などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。なお、2つの環Zは、同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0045】
代表的な環Zは、ベンゼン環、ナフタレン環である。
【0046】
前記式(A1)において、基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]などの非反応性置換基が挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されない。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0047】
前記式(A1)において、基Rで表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0048】
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)mは、用途や所望の性能に応じて、例えば、0〜25(例えば、0〜20)程度の範囲から選択でき、通常、0〜18(例えば、0〜15)、好ましくは0〜12(例えば、0〜10)、さらに好ましくは0〜8(例えば、0〜7)、特に1以上であってもよい。なお、2つのmは、同一又は異なっていてもよい。
【0049】
また、式(A1)において、2つのmの合計は、例えば、0〜30(例えば、0〜25)、好ましくは0〜20(例えば、0〜18)、さらに好ましくは0〜16(例えば、0〜14)であってもよく、特に2以上であってもよい。
【0050】
なお、式(A1)において、2つのmの合計により、種々の特性(硬化物における硬さや粘度、屈折率など)が変化する。そのため、所望の特性に応じて、2つのmの合計を調整してもよい。例えば、式(A1)において、2つのmの合計を比較的小さく(例えば、2〜6、好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜4、特に2〜3程度に)してもよい。このように2つのmの合計を小さくすると、高屈折率、高耐熱性で硬質の硬化物を得やすい。
【0051】
一方、式(A1)において、2つのmの合計を比較的大きく[例えば、6以上(例えば、6.5〜20)、好ましくは7〜18(例えば、7〜16)、さらに好ましくは8〜14(例えば、8.5〜12)、特に9〜12(例えば、9.5〜11.5)程度に]してもよい。このように2つのmの合計を大きくすると、比較的高い屈折率や耐熱性を有しつつ、軟質の又は柔軟性を有する硬化物を得やすい。
【0052】
なお、式(A1)で表される化合物は、mの値が同一の化合物の集合体であってもよく、mの値が異なる化合物の集合体であってもよい。後者の場合、mの値および2つのmの合計は、平均値(相加平均又は算術平均)である。
【0053】
前記式(A1)において、基Rを含む基((メタ)アクリロイル基含有基などということがある)の置換数pは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数pは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、(メタ)アクリロイル基含有基の置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、(メタ)アクリロイル基含有基は、環Zがベンゼン環であるとき、ベンゼン環の2〜6位の適当な位置(特に、少なくとも4位)に置換していてもよく、環Zが縮合多環式炭化水素環であるとき、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換していてもよい。
【0054】
環Zに置換する置換基Rとしては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0055】
好ましい基Rとしては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。特に、Rは、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などであるのが好ましい。
【0056】
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0057】
代表的なフルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物(又は前記式(A1)で表される化合物)には、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアリール)フルオレン類、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類が含まれる。
【0058】
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アルキル−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(ポリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[2,4−ジ((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4−ジ((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4,5−トリ((メタ)アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリ(メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)フルオレン類(前記式(A1)において環Zがベンゼン環、mが0である化合物);9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシナフチル)]フルオレン、9,9−ビス[1−(5−(メタ)アクリロイルオキシナフチル)]フルオレンなど]などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシナフチル)フルオレン類(前記式(A1)において環Zがナフタレン環、mが0である化合物)などが挙げられる。
【0059】
9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類としては、前記9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアリール)フルオレン類に対応し、式(1)においてmが1以上である化合物、例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)フルオレンなどの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシジアルコキシフェニル)フルオレン(例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなど]などの9,9−ビス{[2−(2−(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)C2−4アルコキシ]フェニル}フルオレン)、9,9−ビス(アルキル−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス(アリール−(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル)フルオレン[9,9−ビス(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−8アリール(メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレンなど]、9,9−ビス[ジ又はトリ((メタ)アクリロイルオキシアルコキシ)フェニル]フルオレン[例えば、9,9−ビス[2,4−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4−ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3,4,5−トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス[ジ又はトリ((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシ)フェニル]フルオレン]などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(A1)において環Zがベンゼン環、mが1以上である化合物);9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシアルコキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレンなど]などの9,9−ビス((メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類(前記式(A1)において環Zがナフタレン環、mが1以上である化合物)などが挙げられる。
【0060】
フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0061】
なお、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物は、市販品を利用してもよく、慣用の方法により合成したものを用いてもよい。
【0062】
また、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物と、他の(メタ)アクリル系化合物(フルオレン骨格を有しない(メタ)アクリル系化合物、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物以外の(メタ)アクリル系化合物)とを組み合わせてもよい。組み合わせる場合、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物と他の(メタ)アクリル系化合物との割合は、前者/後者(モル比)=99.9/0.1〜1/99、好ましくは99.5/0.5〜10/90(例えば、99/1〜30/70)、さらに好ましくは99/1〜40/60(例えば、98/2〜50/50)、特に95/5〜60/40(例えば、90/10〜70/30)程度であってもよく、95/5〜10/90(例えば、90/10〜15/85、好ましくは85/15〜20/80、さらに好ましくは80/20〜25/75程度)であってもよい。
【0063】
(単官能性の硬化性化合物)
硬化性成分は、少なくとも多官能性の硬化性化合物で構成すればよく、さらに、非多官能性の硬化性化合物、すなわち、単官能性の硬化性化合物を含んでいてもよい。なお、単官能性の硬化性化合物は、例えば、硬化性や硬さ、粘度の調整などを目的として使用できる。
【0064】
単官能性の硬化性化合物としては、前記多官能性の硬化性化合物に対応する単官能性化合物、例えば、単官能性のラジカル重合性化合物、単官能性エポキシ化合物(例えば、2−エチルへキシルグリシジルエーテルなどのアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテルなどのアリールグリシジルエーテル類などのグリシジルエーテル類;オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド、4−ビニルシクロヘキセンモノオキサイドなどのアルケンオキシド類など)などが含まれる。単官能性の硬化性化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0065】
特に、多官能性の硬化性化合物として、ラジカル重合性化合物(特に、(メタ)アクリル系化合物)を使用する場合、単官能性のラジカル重合性化合物を好適に使用できる。単官能性のラジカル重合性化合物(単官能性モノマー)としては、(メタ)アクリルモノマー((メタ)アクリル系化合物)、非(メタ)アクリルモノマー[例えば、スチレン系モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)、ビニルエステル系モノマー(例えば、酢酸ビニルなど)、N−ビニルピロリドンなど]に大別できる。単官能性モノマーは、通常、(メタ)アクリルモノマーを少なくとも含んでいてもよい。
【0066】
なお、単官能性モノマーとして、(メタ)アクリルモノマーと非(メタ)アクリル系モノマーを使用する場合、単官能性モノマー全体に対する非(メタ)アクリル系モノマーの割合は、30重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に5重量%以下であってもよい。
【0067】
単官能性(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのN,N−ジC1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど)などの他、(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリレート)などが含まれる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、脂肪族(メタ)アクリレート(脂肪族骨格を有する(メタ)アクリレート)、芳香族(メタ)アクリレート(芳香族骨格を有する(メタ)アクリレート)、硫黄含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0068】
単官能性の脂肪族(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1−20アルキル(メタ)アクリレートなど]、脂環式(メタ)アクリレート{例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C5−8シクロアルキル;ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸多環式シクロアルキル]、橋架け環式(メタ)アクリレート[例えば、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなど]など}、ハロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのハロC1−10アルキル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート)、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのC1−10アルコキシC1−10アルキル(メタ)アクリレート)、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[例えば、ジ乃至テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシC2−6アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートなど]、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート{例えば、2−ヒドロキシ−3−アルコキシプロピル(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシ−3−ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−ペンタデシルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2−ヒドロキシ−3−C2−20アルコキシプロピル(メタ)アクリレート]など}、1分子中に3個以上のヒドロキシル基を有する脂肪族ポリオールのモノ(メタ)アクリレート{例えば、脂肪族トリオールモノ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカントリオールモノ(メタ)アクリレート(例えば、C3−10アルカントリオールモノ(メタ)アクリレート)など]など}、アミノアルキル(メタ)アクリレート[例えば、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのN−置換アミノアルキル(メタ)アクリレートなど]、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0069】
単官能性の芳香族(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリール(メタ)アクリレート(例えば、フェニル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリール(メタ)アクリレート)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールC1−4アルキル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールオキシC1−10アルキル(メタ)アクリレート)、アリールアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−(o−フェニルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールC6−10アリールオキシC1−10アルキル(メタ)アクリレート)、アリールオキシ(ポリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC2−4アルキル(メタ)アクリレート]、アルキルアリールオキシ(ポリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、ノニルフェノキシ(ポリ)エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのC4−20アルキルC6−10アリールオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC2−4アルキル(メタ)アクリレート]、アリールアリールオキシ(ポリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、フェニルフェノキシ(ポリ)エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールC6−10アリールオキシ(ポリ)C2−4アルコキシC2−4アルキル(メタ)アクリレート]、ビスフェノール類又はそのアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのC2−4アルキレンオキサイド付加物(例えば、2〜10個程度のアルキレンオキサイドが付加した付加物)、以下同じ)のモノ(メタ)アクリレート、芳香族エポキシ(メタ)アクリレート{例えば、2−ヒドロキシ−3−アリールオキシプロピル(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2−ヒドロキシ−3−C6−10アリールオキシプロピル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシ−3−(2−フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどの2−ヒドロキシ−3−(C6−10アリールC6−10アリール)オキシプロピル(メタ)アクリレート]など}、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレート{例えば、9−(メタ)アクリロイルオキシフルオレン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−9−アルキルフルオレン、9−(メタ)アクリロイルオキシ−9−アリールフルオレンなどの9−(メタ)アクリロイルオキシフルオレン類;9−(メタ)アクリロイルオキシメチルフルオレンなどの9−(メタ)アクリロイルオキシメチルフルオレン類;9−(メタ)アクリロイルオキシフェニル−9−フェニルフルオレン[例えば、9−(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)−9−フェニルフルオレンなど]、9−(アルキル−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)−9−フェニルフルオレン[例えば、9−(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−メチルフェニル)−9−フェニルフルオレン、9−(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)−9−フェニルフルオレンなどの9−(モノ又はジC1−4アルキル−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)−9−フェニルフルオレン]、9−(アリール−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)−9−フェニルフルオレン[例えば、9−(4−(メタ)アクリロイルオキシ−3−フェニルフェニル)−9−フェニルフルオレンなどの9−(モノ又はジC6−10アリール−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)−9−フェニルフルオレン]などの9−(メタ)アクリロイルオキシフェニル−9−フェニルフルオレン類;9−(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル−9−フェニルフルオレン[例えば、9−(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル)−9−フェニルフルオレンなどの9−(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)C2−4アルコキシフェニル−9−フェニルフルオレンなど]などの9−(メタ)アクリロイルオキシ(ポリ)アルコキシフェニル−9−フェニルフルオレン類}、後述のアリールチオ(メタ)アクリレート、アラルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0070】
硫黄含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキルチオ(メタ)アクリレート(例えば、メチルチオ(メタ)アクリレートなどのC1−10アルキルチオ(メタ)アクリレート)、アリールチオ(メタ)アクリレート(例えば、フェニルチオ(メタ)アクリレート、トリルチオ(メタ)アクリレート、2−ナフチルチオ(メタ)アクリレート、クロロフェニルチオ(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールチオ(メタ)アクリレートなど)、アラルキルチオ(メタ)アクリレート(例えば、ベンジルチオ(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールC1−4アルキルチオ(メタ)アクリレートなど)、アリールチオアルキル(メタ)アクリレート(例えば、フェニルチオエチル(メタ)アクリレートなどのC6−10アリールチオC2−10アルキル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。なお、アリールチオ(メタ)アクリレート、アラルキルチオ(メタ)アクリレート、アリールチオアルキル(メタ)アクリレートは、芳香族(メタ)アクリレートにも分類できる。
【0071】
単官能性モノマーは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0072】
これらの単官能性モノマーのうち、単官能性(メタ)アクリレートが好ましく、単官能性(メタ)アクリレートの中でも、用途に応じて使い分けてもよい。例えば、単官能性モノマーのうち、ハンドリング性向上などの観点からは、脂肪族(メタ)アクリレート[特に、分岐アルキル(メタ)アクリレート(特に、イソアミル(メタ)アクリレートなどの分岐C3−10アルキル(メタ)アクリレート、好ましくは分岐C3−6アルキル(メタ)アクリレート)、脂環式(メタ)アクリレートなど]などを好適に使用できる。また、高屈折率などの光学的特性と優れたハンドリング性とをバランスよく両立させるという観点からは、芳香族(メタ)アクリレートや硫黄含有(メタ)アクリレートなどを好適に用いることができる。
【0073】
単官能性モノマーの粘度は、特に限定されず、25℃において、200mPa・s以下程度の範囲から選択してもよく、例えば、100mPa・s以下(例えば、0.01〜100mPa・s)、好ましくは50mPa・s以下(例えば、0.1〜50mPa・s)、さらに好ましくは30mPa・s以下(例えば、0.3〜30mPa・s)であってもよく、特に20mPa・s以下[例えば、0.01〜20mPa・s、好ましくは0.05〜10mPa・s、さらに好ましくは0.1〜5mPa・s(例えば、0.5〜3mPa・s)]であってもよい。
【0074】
また、単官能性モノマーの屈折率は、25℃、589nmにおいて、例えば、1.4以上であってもよく、例えば、1.4〜1.65、好ましくは1.41〜1.62、さらに好ましくは1.42〜1.6程度であってもよい。特に、単官能性モノマーの屈折率は、1.5以上であってもよく、例えば、1.5〜1.65、好ましくは1.51〜1.62、さらに好ましくは1.515〜1.6程度であってもよく、特に1.53以上(例えば、1.54〜1.6、好ましくは1.55〜1.59程度)であってもよい。
【0075】
単官能性の硬化性化合物を使用する場合、単官能性の硬化性化合物の割合は、多官能性の硬化性化合物(A)100モルに対して、例えば、1〜1000モル(例えば、3〜800モル)、好ましくは5〜700モル(例えば、8〜600モル)、さらに好ましくは10〜500モル(例えば、15〜300モル)、特に20〜250モル(例えば、30〜200モル)程度であってもよい。また、単官能性の硬化性化合物の割合は、多官能性の硬化性化合物(A)100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部(例えば、3〜900重量部)、好ましくは5〜800重量部(例えば、8〜700重量部)、さらに好ましくは10〜600重量部(例えば、15〜500重量部)、特に20〜400重量部(例えば、30〜300重量部)程度であってもよい。
【0076】
なお、硬化性成分が、多官能性の硬化性化合物としてフルオレン骨格を有する化合物(例えば、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリル系化合物)を含む場合、硬化性成分全体に対するフルオレン骨格を有する化合物の割合は、例えば、10モル%以上(例えば、15〜100モル%)、好ましくは20モル%以上(例えば、25〜100モル%)、さらに好ましくは30モル%以上(例えば、35〜100モル%)、特に40モル%以上(例えば、45〜100モル%)であってもよい。また、硬化性成分全体に対するフルオレン骨格を有する化合物の割合は、例えば、15重量%以上(例えば、20〜100重量%)、好ましくは25重量%以上(例えば、30〜100重量%)、さらに好ましくは35重量%以上(例えば、40〜100重量%)、特に45重量%以上(例えば、50〜100重量%)であってもよい。
【0077】
(フルオレン化合物(B))
フルオレン化合物(B)において、加水分解縮合性基としては、水素原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子(塩素原子など)、ヒドロキシル基などが挙げられる。加水文化縮合性基は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。加水分解縮合性基は、通常、金属原子(例えば、ケイ素、ジルコニウム、チタンなど)に直接結合している場合が多い。なお、フルオレン化合物(B)は、少なくとも1つ[通常2以上(例えば、2〜20、好ましくは3〜15、さらに好ましくは4〜12)]の加水分解縮合性基を有していればよい。
【0078】
フルオレン化合物(B)は、加水分解縮合性基とともに、フルオレン骨格を有している。すなわち、フルオレン化合物(B)は、加水分解縮合性基(又は加水分解縮合性基を含む基)がフルオレン骨格に結合(又は置換)した化合物である。
【0079】
このようなフルオレン骨格としては、フルオレン(9位に置換基がないフルオレン骨格)、9−置換フルオレン(例えば、9−アルキルフルオレン、9−モノアリールフルオレン、9,9−ビスアリールフルオレンなどの9位に炭化水素基を有するフルオレンなど)などが挙げられる。代表的なフルオレン骨格は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格である。なお、フルオレン骨格は、フルオレンやフルオレンの9位に置換する置換基に、置換基を有していてもよい。
【0080】
フルオレン骨格に対する加水分解縮合性基(又は加水分解縮合性基を含む基)の置換位置(結合位置)は、特に限定されず、フルオレン骨格そのものであってもよく、フルオレンの9位に位置する置換基に結合していてもよい。
【0081】
代表的なフルオレン化合物(B)には、2以上の加水分解縮合性基(例えば、アルコキシ基など)を有する9,9−ビスアリールフルオレン類、例えば、下記式(B1)で表される化合物などが含まれる。
【0082】
【化4】
【0083】
{式中、Xは連結基、R、RおよびRは、同一又は異なって、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、基−OR[式中、Rは、炭化水素基又は基−[(RO)−R10](式中、Rは炭化水素基、R10は炭化水素基、aは1以上の整数を示す)を示す]又は炭化水素基を示し、Z、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。ただし、R、RおよびRのうち少なくとも1つは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORである。}
式(B1)において、芳香族炭化水素環Zとしては、前記式(A1)の項で例示の環(ベンゼン環、ナフタレン環など)が挙げられる。2つの環Zは、同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。
【0084】
式(B1)において、置換基Rとしては、前記式(A1)の項で例示の基(アルキル基など)が挙げられる。なお、kが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、フルオレンを構成する2つのベンゼン環に置換する基Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、フルオレンを構成するベンゼン環に対する基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されず、好ましい置換数kは0〜1、特に0である。なお、フルオレンを構成する2つのベンゼン環において、置換数kは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0085】
前記式(B1)において、アルキレン基Rとしては、前記式(A1)の項で例示の基(エチレン基、プロピレン基などのC2−4アルキレン基)が挙げられる。なお、mが2以上であるとき、アルキレン基は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であっても、異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0086】
式(B1)において、オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)mおよび2つの合計もまた、前記式(A1)の項で例示の範囲から選択できる。特に、mおよび2つの合計は、比較的小さい値{例えば、mが6以下[例えば、0〜6(例えば、1〜6)、好ましくは0〜4(例えば、1〜4)、さらに好ましくは0〜3(例えば、1〜3)、特に0〜2(例えば、1〜2)]、2つのmの合計が12以下[例えば、0〜12(例えば、2〜12)、好ましくは0〜8(例えば、2〜8)、さらに好ましくは0〜6(例えば、2〜6)、特に0〜4(例えば、2〜4)]など}であってもよい。mや2つのmの合計を小さくすると、少量で効率よく密着性を改善でき、屈折率なども高いレベルで保持しやすい。
【0087】
前記式(B1)において、連結基Xは、直接結合であってもよいが、通常、ヘテロ原子(窒素原子、酸素原子、硫黄原子など)を含む基であってもよい。代表的には、連結基Xは、例えば、エーテル基(−O−)(又は酸素原子)、チオエーテル基(−S−)(又は硫黄原子)、およびイミノ基(−NH−)から選択された少なくとも1種の基を含むであってもよい。
【0088】
代表的には、前記式(B1)で表される化合物は、下記式(B1−1)で表される化合物[すなわち、前記式(B1)において、連結基Xが、基−[X−X−X−X]−で表される基である化合物]であってもよい。
【0089】
【化5】
【0090】
(式中、Xは、エーテル結合含有基、チオエーテル結合含有基、又はイミノ結合含有基を示し、Xは直接結合、又はヒドロキシル基を有していてもよいアルキレン基を示し、Xは直接結合、酸素原子、硫黄原子又はイミノ基を示し、Xは直接結合又はアルキレン基を示す。Z、R、R、R、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
上記式(B1−1)において、Xで表されるエーテル結合含有基としては、例えば、酸素原子(又はエーテル基、−O−)、エステル基(−OCO−又は−COO−)などが挙げられる。また、Xで表されるチオエーテル結合含有基としては、硫黄原子(又はチオエーテル基、−S−)、チオエステル基(−SCO−又は−COS−)などが挙げられる。また、Xで表されるイミノ結合含有基としては、イミノ基(−NH−)、アミド基(−CONH−又は−NHCO−)、ウレタン基(−OCONH−又は−NHCOO−)、チオウレタン基(−SCONH−又は−NHCOS−)、尿素基(−NHCONH−)などが挙げられる。
【0091】
また、前記式(B1−1)において、Xで表されるヒドロキシル基を有していてもよいアルキレン基としては、例えば、アルキレン基[アルキリデン基を含む。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基(又は1,3−プロパンジイル基)、テトラメチレン基(1,4−ブタンジイル基)、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などのC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基など]、ヒドロキシアルキレン基[ヒドロキシアルキリデン基を含む、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイル基(−CH−CH(OH)−CH−)、2−ヒドロキシ−2,3−ブタンジイル基(−CH−CH(OH)−CH(CH)−)などのヒドロキシC2−10アルキレン基、好ましくはヒドロキシC2−6アルキレン基、さらに好ましくはヒドロキシC2−4アルキレン基など]などが含まれる。
【0092】
さらに、前記式(B1−1)において、Xで表されるアルキレン基としては、前記Xで表されるアルキレン基と同様の基、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基(又は1,3−プロパンジイル基)などのC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基などが含まれる。
【0093】
これらのX〜Xは、それぞれ、異なる環Zに対して同一又は異なっていてもよく、通常、同一であってもよい。
【0094】
前記式(B1−1)において、代表的なX〜Xの組み合わせを以下に示す。
【0095】
(1)Xがエーテル結合含有基である組み合わせ:
(1A)Xが酸素原子であり、X〜Xがいずれも直接結合である組み合わせ
(1B)Xが酸素原子であり、XおよびXがいずれも直接結合であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(1C)Xが酸素原子であり、Xがヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、Xが酸素原子であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(1D)Xがエステル基(−OCO−)であり、Xがヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、Xが酸素原子であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(1E)Xがエステル基であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)であり、Xが硫黄原子(−S−)であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ。
【0096】
(2)Xがチオエーテル結合含有基である組み合わせ:
(2A)Xが硫黄原子であり、X〜Xがいずれも直接結合である組み合わせ
(2B)Xが硫黄原子であり、XおよびXがいずれも直接結合であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(2C)Xが硫黄原子であり、Xがヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、Xが酸素原子であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(2D)Xがチオエステル基(−OCS−又は−SCO−)であり、XおよびXがいずれも直接結合であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ。
【0097】
(3)Xがイミノ結合含有基である組み合わせ:
(3A)Xがイミノ基(−NH−)であり、Xがヒドロキシアルキレン基(例えば、ヒドロキシC2−6アルキレン基)であり、Xが酸素原子であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3B)Xがアミド基(−NHCO−)であり、XおよびXがいずれも直接結合であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3C)Xがアミド基であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)であり、Xがイミノ基であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3D)Xがウレタン基(−OCONH−)であり、XおよびXがいずれも直接結合であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ
(3E)Xが尿素基であり、XおよびXがいずれも直接結合であり、Xがアルキレン基(例えば、C2−6アルキレン基)である組み合わせ。
【0098】
これらのなかでも、屈折率や粘度などの点から、式(B1)において、Xが硫黄原子を含む基(連結基)である化合物[例えば、式(B1−1)において、X〜Xの組み合わせが、(1A)、(2A)、(2B)、(2C)又は(2D)である化合物など]が含まれる。特に、本発明では、下記式(B1−2)で表される化合物[すなわち、式(B1)においてX(又は式(B1−1)においてX〜X)が基−OCO−CHR11−CH−S−X4a−である化合物]を好適に使用してもよい。
【0099】
【化6】
【0100】
(式中、R11は水素原子又はメチル基、X4aはアルキレン基、Yは−SiRを示し、Z、R、R、R、R、R、R、k、m、n、pは前記と同じ。)
上記式(B1−2)において、アルキレン基X4aとしては、前記Xの項で例示のアルキレン基[例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基(又は1,3−プロパンジイル基)などのC1−10アルキレン基、好ましくはC2−6アルキレン基、さらに好ましくはC2−4アルキレン基など]が挙げられる。
【0101】
前記式(B1)(又は(B1−1)又は(B1−2))において、R、RおよびRの少なくとも1つは、加水分解縮合性基、すなわち、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、基−OR[式中、Rは、炭化水素基又は基−[(RO)−R10](式中、Rは炭化水素基(二価の炭化水素基)、R10は炭化水素基、aは1以上の整数を示す)である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子、臭素原子などが挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、塩素原子又は臭素原子が好ましく、特に塩素原子が好ましい。
【0102】
また、基−ORにおいて、炭化水素基RおよびR10としては、例えば、飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−6アルキル基、さらに好ましくはC1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基など)など]、不飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基などのC2−6アルケニル基、好ましくはC2−4アルケニル基など)など]、芳香族炭化水素基[例えば、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基、好ましくはフェニル基など)、アラルキル基(ベンジル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)など]などが挙げられる。これらの炭化水素基Rのうち、アルキル基などが好ましく、特に低級アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1−4アルキル基、特にC1−2アルキル基)が好ましい。また、基Rとしては、これらの炭化水素基(一価の炭化水素基)に対応する二価の炭化水素基、例えば、飽和脂肪族炭化水素基[例えば、アルキレン基(例えば、エチレン基、プロピレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基)など]などが挙げられる。また、aは、例えば、1〜4、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1であってもよい。好ましい基−O−[(RO)−R10]には、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基などのC1−4アルコキシC2−4アルコキシ基(特に、C1−2アルコキシエトキシ基)などが含まれる。
【0103】
また、R、RおよびRにおいて、炭化水素基としては、上記と同様の炭化水素基などが挙げられる。これらの炭化水素基のうち、アルキル基、アリール基などが好ましく、特に、アルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基など)などが好ましい。
【0104】
なお、前記のように、R、RおよびRのうち、少なくとも1つは、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORである。このような基は、ケイ素原子に直接結合し、前記式(B1)で表される化合物に重合性(加水分解縮合性)又は反応性を付与する点で重要である。これらのうち、R、RおよびRの少なくとも1つは、塩素原子、アルコキシ基(すなわち、Rがアルキル基である基、例えば、メトキシ基、エトキシ基などのC1−4アルコキシ基など)、又はアリールオキシ基(すなわち、Rがアリール基である基、例えば、フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基など)であるのが好ましく、特にアルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基、好ましくはC1−2アルコキシ基)であるのが好ましい。
【0105】
前記式(B1)(式(B1−1)および式(B1−2))において、代表的な基−SiRとしては、例えば、ジアルキルアルコキシシリル基(例えば、ジメチルメトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基などのジC1−4アルキル−C1−4アルコキシシリル基)、ジアリールアルコキシシリル基(例えば、ジフェニルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基などのジC6−10アリール−C1−4アルコキシシリル基)、アルキルアリールアルコキシシリル基(例えば、メチルフェニルメトキシシリル基などのC1−4アルキル−C6−10アリール−C1−4アルコキシシリル基)などのR、RおよびRのうち1つが、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORであるシリル基;アルキルジアルコキシシリル基(例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基などのC1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシリル基)、アリールジアルコキシシリル基(例えば、フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基などのC6−10アリール−ジC1−4アルコキシシリル基)などのR、RおよびRのうち2つが、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORであるシリル基;トリアルコキシシリル基(例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリメシリル基、エチルジエトキシシリル基などのトリC1−4アルコキシシリル基)、ジアルコキシアリールオキシシリル基(例えば、ジメトキシフェノキシシリル基などのジC1−4アルコキシ−C6−10アリールオキシシリル基)、トリアリールオキシシリル基(例えば、トリフェノキシシリル基などのトリC6−10アリールオキシシリル基)、トリハロシリル基(例えば、トリクロロシリル基など)などのR、RおよびRの全てが、水素原子、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、又は基−ORであるシリル基などが含まれる。
【0106】
これらのなかでも、R、RおよびRのうち少なくとも1つがアルコキシ基であるシリル基、例えば、ジアルキルアルコキシシリル基(例えば、ジC1−4アルキル−C1−4アルコキシシリル基、特にジC1−4アルキル−C1−2アルコキシシリル基)、アルキルジアルコキシシリル基(例えば、C1−4アルキル−ジC1−4アルコキシシリル基、特にC1−4アルキル−ジC1−2アルコキシシリル基)、トリアルコキシシリル基(例えば、トリC1−4アルコキシシリル基、特にトリC1−2アルコキシシリル基)が好ましく、特にトリアルコキシシリル基が好ましい。
【0107】
前記式(B1)において、基−SiRを含む基(加水分解縮合性ケイ素含有基などということがある)の置換数pは、1以上であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数pは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。なお、加水分解縮合性基の置換位置は、前記式(A1)における(メタ)アクリロイル基と同様の置換位置と同様である。
【0108】
式(B1)において、環Zに置換する置換基Rとしては、前記式(A1)の項で例示の基{アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]など}が挙げられ、好ましい態様なども同様である。
【0109】
なお、同一の環Zにおいて、nが複数(2以上)である場合、基Rは互いに異なっていてもよく、同一であってもよい。また、2つの環Zにおいて、基Rは同一であってもよく、異なっていてもよい。また、好ましい置換数nは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数nは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0110】
フルオレン化合物(B)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0111】
フルオレン化合物(B)の加水分解縮合性基(例えば、アルコキシ基など)1個あたりの分子量は、50〜2000(例えば、55〜1500)程度の範囲から選択でき、例えば、60〜1000(例えば、65〜800)、さらに好ましくは70〜500(例えば、75〜400)、特に80〜300(例えば、90〜250)、通常100〜220(例えば、110〜200)程度であってもよい。
【0112】
フルオレン化合物(B)の屈折率は、25℃、589nmにおいて、1.45以上(例えば、1.47〜1.75)程度の範囲から選択でき、例えば、1.5以上(例えば、1.52〜1.7)、好ましくは1.53以上(例えば、1.535〜1.68)、さらに好ましくは1.54以上(例えば、1.545〜1.66)、通常1.53〜1.65(例えば、例えば、1.54〜1.63)程度であってもよい。
【0113】
硬化性成分とフルオレン化合物(B)との屈折率差(又は差の絶対値)は、25℃、589nmにおいて、0.20以下(例えば、0.01〜0.18)、好ましくは0.15以下(例えば、0.02〜0.14)、さらに好ましくは0.10以下(例えば、0.03〜0.09)程度であってもよい。特に、硬化性化合物(A)を、フルオレン骨格を有する硬化性化合物(例えば、前記式(A1)で表される化合物)で構成する場合、硬化性成分とフルオレン化合物(B)との屈折率差(又は差の絶対値)は、25℃、589nmにおいて、0.10以下(例えば、0.01〜0.095)、好ましくは0.09以下(例えば、0.015〜0.085)、さらに好ましくは0.08以下(例えば、0.02〜0.075)、特に0.07以下(例えば、0.03〜0.07)程度であってもよい。
【0114】
なお、フルオレン化合物(B)は、市販品を利用してもよく、慣用の方法(特開2009−256293号公報に記載の方法、特開2009−269854号公報に記載の方法など)により合成したものを用いてもよい。例えば、前記式(B1−2)で表される化合物は、下記式(b1)で表される化合物と、下記式(b2)で表される化合物とを反応(マイケル付加型の反応又はエンチオール反応)させることにより得ることができる。
【0115】
【化7】
【0116】
(式中、Z、R、R、R、R、R、R、R11、k、m、n、p、X4aは前記と同じ。)
本発明の硬化性組成物において、フルオレン化合物(B)の割合は、硬化性成分100重量部に対して、0.01〜50重量部(例えば、0.05〜40重量部)程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜30重量部(例えば、0.15〜25重量部)、好ましくは0.2〜20重量部、さらに好ましくは0.3〜15重量部(例えば、0.5〜12重量部)、通常0.1〜15重量部程度であってもよい。特に、本発明では、フルオレン骨格を有する化合物(B)の割合を少量[例えば、硬化性成分100重量部に対して、フルオレン化合物(B)15重量部以下(例えば、0.05〜13重量部)、好ましくは10重量部以下(例えば、0.1〜8重量部)、さらに好ましくは7重量部以下(例えば、0.3〜6重量部)、特に5重量部以下(例えば、1〜4重量部)]とすることも可能である。
【0117】
また、本発明の硬化性組成物において、フルオレン化合物(B)に含まれる加水分解縮合性基(アルコキシ基など)1個あたりの分子量が、硬化性成分およびフルオレン化合物(B)の総量に対して、200〜30000(例えば、250〜25000)、好ましくは300〜20000(例えば、350〜18000)、さらに好ましくは400〜15000(例えば、450〜12000)、特に500〜10000であってもよく、通常400〜8000(例えば、600〜6000)程度となるようにフルオレン化合物(B)の割合を調整してもよい。
【0118】
さらに、本発明の硬化性組成物において、硬化性化合物(A)がフルオレン骨格を有する化合物を含む場合、硬化性化合物(A)としてのフルオレン骨格を有する化合物およびフルオレン化合物(B)の割合は、硬化性成分およびフルオレン化合物(B)全体に対して、例えば、15モル%以上(例えば、20〜100モル%)、好ましくは25モル%以上(例えば、30〜100モル%)、さらに好ましくは35モル%以上(例えば、40〜100モル%)、特に45モル%以上(例えば、50〜100モル%)であってもよい。また、硬化性成分全体に対するフルオレン骨格を有する化合物の割合は、例えば、20重量%以上(例えば、25〜100重量%)、好ましくは30重量%以上(例えば、35〜100重量%)、さらに好ましくは40重量%以上(例えば、45〜100重量%)、特に50重量%以上(例えば、55〜100重量%)であってもよい。
【0119】
(重合開始剤、硬化剤)
硬化性組成物は、硬化性成分の種類(硬化の形態)に応じて、さらに、硬化剤、硬化促進剤、重合開始剤などを含んでいてもよい。例えば、硬化性組成物が、エポキシ化合物などで構成されている場合には、汎用のエポキシ樹脂用の硬化剤や硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0120】
特に、硬化性成分が、ラジカル重合性化合物で構成されている場合、硬化性組成物は、必要に応じて、重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含んでいてもよい。このような重合開始剤は熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)であってもよく光重合開始剤(光ラジカル発生剤)であってもよい。好ましい重合開始剤は光重合開始剤である。
【0121】
光重合開始剤又は光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン類(ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類など);アセトフェノン類(アセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−フェニル−2−ヒドロキシ−アセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなど);プロピオフェノン類(p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなど);ブチリルフェノン類[1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オンなど];アミノアセトフェノン類[2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジエチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルホリノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ジメチルアミノ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタン−1−オンなど];ケタール類(アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなど);チオキサンテン類(チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテンなど);アントラキノン類(2−エチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノンなど);(チオ)キサントン類(チオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなど);アクリジン類(1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタンなど);トリアジン類(2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジンなど);スルフィド類(ベンジルジフェニルサルファイドなど);アシルホスフィンオキサイド類(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドなど);チタノセン系光重合開始剤;オキシムエステル類などが例示できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0122】
なお、光重合開始剤は、市販品、例えば、商品名「イルガキュア」「ダロキュア」(チバ・ジャパン(株)製)、商品名「サイラキュア」(ユニオンカーバイド社製)などとして入手できる。
【0123】
熱重合開始剤としては、ジアルキルパーオキサイド類(ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなど)、ジアシルパーオキサイド類[ジアルカノイルパーオキサイド(ラウロイルパーオキサイドなど)、ジアロイルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルトルイルパーオキサイド、トルイルパーオキサイドなど)など]、過酸エステル類[過酢酸t−ブチル、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの過カルボン酸アルキルエステルなど]、ケトンパーオキサイド類、パーオキシカーボネート類、パーオキシケタール類などの有機過酸化物;アゾニトリル化合物[2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)など]、アゾアミド化合物{2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}など}、アゾアミジン化合物{2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩など}、アゾアルカン化合物[2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)など]、オキシム骨格を有するアゾ化合物[2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドオキシム)など]などのアゾ化合物などが含まれる。熱重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0124】
重合開始剤(特に光重合性開始剤)の割合は、硬化性成分100重量部に対して、例えば、0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは0.7〜10重量部(例えば、1〜7重量部)程度であってもよい。
【0125】
なお、光重合開始剤は、光増感剤と組み合わせてもよい。光増感剤としては、慣用の成分、例えば、第3級アミン類[例えば、トリアルキルアミン、トリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸アミルなどのジアルキルアミノ安息香酸アルキルエステル、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーズケトン)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンなどのビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノンなど]、トリフェニルホスフィンなどのフォスフィン類、N,N−ジメチルトルイジンなどのトルイジン類、9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンなどのアントラセン類などが挙げられる。光増感剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0126】
光増感剤の使用量は、前記光重合開始剤100重量部に対して、例えば、0.1〜150重量部、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは5〜75重量部(特に10〜50重量部)程度であってもよい。
【0127】
(他の成分)
本発明の硬化性組成物は、さらに、加水分解縮合反応を促進するための触媒(加水分解縮合触媒、例えば、酸触媒、塩基触媒の他、光酸発生剤など)、慣用の添加剤[例えば、顔料、着色剤、増粘剤、増感剤、消泡剤、レベリング剤、塗布性改良剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、耐光安定剤、光安定剤など)、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、充填剤、帯電防止剤など]などの他の成分を含んでいてもよい。これらの他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0128】
なお、硬化性組成物は、実害のない範囲であれば、フルオレン化合物(B)以外の加水分解縮合性化合物(例えば、汎用のシランカップリング剤など)を含んでいてもよいが、本発明では、このような他の加水分解縮合性化合物を実質的に含んでいないのが好ましい。
【0129】
このような本発明の硬化性組成物は、各成分を混合することにより調製できる。
【0130】
[硬化物]
本発明の硬化性組成物(樹脂組成物)は、活性エネルギー(活性エネルギー線)を付与することにより容易に硬化する。そのため、本発明の硬化性組成物は、活性エネルギーとして、熱エネルギー及び/又は光エネルギー(特に、光エネルギー)を利用して硬化物を形成するのに有用である。本発明の硬化性組成物のうち、硬化性成分がラジカル重合成分である場合には、光硬化性に優れている場合が多く、少なくとも光エネルギーを付与(光照射)することにより硬化させてもよい。なお、フルオレン化合物(B)は、空気中の水分などにより加水分解縮合するようであり、基材の種類によっては、基材表面に存在する官能基とも反応するようである。また、フルオレン化合物(B)と基材との親和性が比較的高い場合(例えば、ガラス基材などの無機基材など)、フルオレン化合物(B)は基材の表面付近又は基材との界面付近に移行しやすくなる場合がある。本発明では、このような場合であっても、フルオレン化合物(B)との基材との屈折率差が比較的小さい(さらには、硬化性化合物(A)とフルオレン化合物(B)との屈折率差が比較的小さく、フルオレン化合物(B)の割合が小さい)ため、硬化物全体における屈折率の広がり(バラツキ)を抑えることができる。
【0131】
硬化物は三次元構造を有していてもよく、特に、硬化膜であってもよい。また、硬化膜は膜パターン(特に薄膜パターン)であってもよい。硬化膜は、樹脂組成物を基材上(又は基板上)に塗布し、必要により乾燥した後、加熱又は活性光線を露光することにより形成でき、膜パターンは、基材又は基板に形成した塗膜を活性光線で選択的に露光し、生成した潜像パターンを現像することにより形成できる。
【0132】
基材又は基板の材質は、用途に応じて選択でき、無機材料[例えば、金属(アルミニウム、銅など)、セラミック(酸化ジルコニウム、酸化チタンなど)、透明無機材料(ガラス、石英、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなど)など]、有機材料{例えば、樹脂[例えば、環状オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、アクリロニトリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロースエステル(トリアセチルセルロースなど)など]、木材など}などであってもよい。特に、本発明の硬化性組成物は、無機基材(無機材料で形成された基材)であっても、密着性に優れているため、無機基材に好適に形成してもよい。
【0133】
また、本発明の硬化性組成物は、高屈折率で透明性も高いため、光学用途に適しており、これらの基材のうち、透明基材又は透明フィルムの上にコーティングすることにより、透明基材又は透明フィルム{例えば、透明無機基材(例えば、ガラス基材又はガラス基板など)、透明有機基材[例えば、環状オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(ポリメタクリル酸メチルなど)、アクリロニトリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロースエステル(トリアセチルセルロースなど)などで形成された基材又はフィルムなど]など}との積層体として利用してもよい。特に、ガラス基材(ガラスで形成された基材)のような透明無機基材上に硬化物を形成すると、高い密着性で、基材と硬化物との屈折率差を比較的小さい積層体を効率よく得ることができる。
【0134】
基材の厚みは、用途に応じて選択でき、特に限定されないが、フィルム状又は板状の基材の厚みは、例えば、1μm〜10mm(例えば、5〜7000μm)、好ましくは10〜5000μm、さらに好ましくは30〜3000μm(例えば、50〜1000μm)程度であってもよい。
【0135】
塗布方法は特に制限されず、例えば、フローコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法などであってもよい。
【0136】
硬化性組成物は、塗布した後、乾燥(例えば、40〜150℃程度で乾燥)してもよい。塗膜の厚みは、用途によって異なるが、0.01〜1000μm程度の範囲から選択でき、例えば、1〜500μm、好ましくは5〜400μm、さらに好ましくは10〜300μm程度であってもよい。
【0137】
なお、硬化性組成物は、通常、常温で液状又は固体(又は高粘性の液状)であるが、固体状の硬化性組成物は、加熱により溶融させたり、溶媒に溶解させることにより、塗膜を形成することができる。
【0138】
加熱により塗膜を硬化させる場合、加熱温度は、例えば、60〜200℃(例えば、80〜180℃)、好ましくは100〜150℃程度であってもよい。なお、硬化性成分をラジカル重合性成分で構成する場合には、加熱することなく、活性光線の照射によって硬化物を得ることもできる。
【0139】
露光工程での露光は用途に応じて全面露光してもよく、フォトマスクなどを利用して選択的に露光してパターン状の潜像を形成してもよい。露光には、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線などが利用でき、通常、紫外線である場合が多い。光源としては、例えば、紫外線の場合は、ディープ(Deep)UVランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm程度の範囲から選択でき、75〜5000mJ/cm、さらに好ましくは100〜3000mJ/cm(例えば、100〜2000mJ/cm)程度であってもよい。
【0140】
なお、必要により露光前、露光とともに又は露光後に加熱処理(アフターキュア又はポストベークなど)してもよい。加熱温度は、例えば、60〜200℃、好ましくは65〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。
【0141】
パターン状の潜像を形成した場合、潜像パターンを現像することにより、顕像化された塗膜パターンを形成できる。現像剤としては、水、アルカリ水溶液(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)、酸性水溶液、親水性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、セロソルブ類、セロソルブアセテート類など)や、これらの混合液などが使用できる。現像は、浸漬、洗い流し、噴射又はスプレー現像などを利用して行うことができる。
【0142】
上記のようにして、硬化物(硬化膜など)が得られる。このような硬化物は、種々の特性において優れている。特に、本発明では、硬化性成分をフルオレン骨格を有する化合物で構成することなどにより、優れた光学的特性(高屈折率、高透明性など)、高耐熱性などを有する硬化物を効率よく得ることができる。例えば、本発明の硬化性組成物(又は硬化物)の屈折率は、25℃、589nmにおいて、1.50以上(例えば、1.51〜1.75)程度の範囲から選択でき、1.52以上(例えば、1.525〜1.7)、好ましくは1.53以上(例えば、1.535〜1.68)、さらに好ましくは1.54以上(例えば、1.545〜1.65)、特に1.55以上(例えば、1.555〜1.64)程度あってもよい。特に、本発明では、硬化性組成物(又は硬化物)の25℃、589nmにおける屈折率を、1.56以上(例えば、1.57〜1.7)、好ましくは1.58以上(例えば、1.59〜1.68)、さらに好ましくは1.6以上(例えば、1.605〜1.65)とすることもできる。
【0143】
本発明では、後述のように、硬化性成分とフルオレン化合物(B)とを組み合わせることで、屈折率の低下を極力抑制することができ、硬化性成分の種類によっては、屈折率をより一層大きくすることもできる。例えば、本発明の硬化性組成物を構成する硬化性成分(又はその硬化物)の屈折率(25℃、589nm)をn1、硬化性組成物(又はその硬化物)の屈折率(25℃、589nm)をn2とするとき、n1−n2(又はその絶対値)で表される屈折率差を、0.02以下(例えば、0〜0.015)、好ましくは0.01以下(例えば、0.0001〜0.08)、さらに好ましくは0.07以下(例えば、0.0003〜0.06)、特に0.05以下(例えば、0.0005〜0.03)とすることもできる。
【0144】
また、式[(n1−n2)/n1]×100(%)で表される屈折率の減少率(又はその絶対値)は、例えば、0.5%以下(例えば、0〜0.45%)、好ましくは0.4%以下(例えば、0.01〜0.35%)、さらに好ましくは0.3%以下(例えば、0.02〜0.25)、特に0.2%以下(例えば、0.03〜0.15%)とすることもできる。
【0145】
本発明の硬化物のガラス転移温度は、特に限定されず、例えば、50〜300℃、好ましくは70〜280℃、さらに好ましくは80〜250℃程度であってもよい。特に、本発明では、耐熱性に優れた硬化物を得ることもでき、このような硬化物のガラス転移温度(Tg)は、例えば、150℃以上(例えば、155〜300℃)、好ましくは160℃以上(例えば、165〜280℃)、さらに好ましくは170℃以上(例えば、175〜270℃)、特に180℃以上(例えば、185〜260℃)程度であってもよく、通常160〜290℃(例えば、165〜280℃、好ましくは170〜270℃、さらに好ましくは175〜260℃)程度であってもよい。
【0146】
上記のように、本発明の硬化物では、硬化性成分(特に、フルオレン骨格を有する硬化性化合物)とフルオレン化合物(B)とを組み合わせることにより、優れた特性を維持又は付与しつつ、基材(特に、ガラスなどの透明無機基材)に対する密着性を向上又は改善できる。換言すれば、フルオレン化合物(B)は、前記硬化性成分を含む硬化物の基材に対する密着性を向上又は改善する添加剤として作用又は機能するということができる。そのため、本発明には、このような添加剤およびこの添加剤を用いて、基材に対する密着性を向上又は改善する方法も含むものとする。
【実施例】
【0147】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例において、用いた各種成分(およびその略称)は、以下の通りである。
【0148】
BPEFA:9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製)
BPF−11EOA:9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン1モルに対して、11モルのエチレンオキサイドが付加した付加物のジアクリレート{前記式(A1)において、オキシアルキレン基の合計(m+m)が11である化合物、合成例2で合成したもの}
BNFPOA:9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレンのプロピレンオキシド付加物のジアクリレート{9,9−ビス[6−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンを主成分とするジアクリレート、特開2009−173648号公報の実施例2と同様の方法にて合成したもの}
BREFA:9,9−ビス[2,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(合成例1で合成したもの)
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製、商品名「M305」)
POA:フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学(株)製、「ライトアクリレート PO−A」)
BzA:ベンジルアクリレート(日立化成工業(株)製「FA−BZA」、屈折率(25℃、589nm)1.515)
OPP:o−フェニルフェノールモノエトキシアクリレート[又は2−(o−フェニルフェノキシ)エチルアクリレート、日本化薬(株)製、粘度(25℃)163mPa・s、屈折率(25℃、589nm)1.577]
BPEF−MS:下記式で表される加水分解縮合性基を有するフルオレン化合物(分子量939.29、特開2009−269854号公報の実施例1と同様にして合成したもの。25℃、589nmにおける屈折率1.55)
【0149】
【化8】
【0150】
反応性シロキサンA:EVONIC INDUSTRIES製、「Dynasylan 1146」(アミノ/アルキル基含有オリゴマー状反応性シロキサン)
反応性シロキサンB:EVONIC INDUSTRIES製、「Dynasylan 6490」(ビニル基含有オリゴマー状反応性シロキサン)
反応性シロキサンC:EVONIC INDUSTRIES製、「Dynasylan 6598」(ビニル/アルキル基含有オリゴマー状反応性シロキサン)
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:EVONIC INDUSTRIES製、「Dynasylan MEMO」
開始剤(光重合開始剤):チバ・ジャパン(株)製「IRGACURE 184」。
【0151】
(合成例1)
9−フルオレノン36g(約0.2モル)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン159g(約0.8モル)、β−メルカプトプロピオン酸0.7ml、および1,4−ジオキサン60gを反応器に入れ、60℃の加熱状態で98%硫酸5mlを滴下した。反応終了後、トルエン200mlおよび水100mlを加えて抽出した。同操作を3回行うことによって、余剰の硫酸を除去した。溶媒濃縮後、トルエン中での再結晶を繰り返し、目的物[すなわち、9,9−ビス[2,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン]を得た。なお、得られた化合物を高速液体クロマトグラフィーにて分析したところ、純度は98%であった。
【0152】
得られた化合物40g(0.06モル)、アクリル酸43g(0.6モル)、パラトルエンスルホン酸水溶液1g、メトキノン0.01g及びトルエン100mLをディーンシュタークトラップを取り付けた反応器に入れ、トルエン還流下に5時間エステル化反応を行った。エステル化反応中に生成した水は、ディーンシュタークトラップにより除去し、9,9−ビス[2,4−ジ(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BREFA)を得た。
【0153】
(合成例2)
また、BPF−11EOAは、次のようにして合成した。特開2001−139651号公報の実施例1と同様の方法にて、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)1モルに対してエチレンオキシド(EO)10モルを使用して反応させ、生成物を得た。得られた生成物の水酸基価から、BPEF1モルに対して、EOが11.0モル付加した化合物、すなわち、9,9−(4−ヒドロキシ)フェニルフルオレン(BPF)1モルに対して、5.0モルのEOが付加した化合物(以下、BPF−11EOという。)であることがわかった。
【0154】
そして、得られたBPF−11EOを用いて、合成例1と同様にしてアクリレート化を行い、BPF−11EOAを得た。
【0155】
(実施例1〜11および比較例1〜10)
表に示す成分を表に示す割合(重量部)で60℃に加温した振騰機においてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中で十分に混合し、樹脂組成物(硬化性組成物)を調製した。なお、樹脂組成物は、表に示す成分を50重量%の割合で含むPGMEA溶液とした。調製した樹脂組成物を各種基板[ガラス基板(松浪硝子工業製「イーグルXG」、厚み500μm)、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡製「A4300」、厚み100μm)]の片面に塗布し、高圧水銀灯で積算光量500mJ/cmの紫外線を照射し、さらに、80℃で30分加熱(ポストベーク)し、硬化物(厚み約20μm)を得た。なお、実施例において、塗布後および硬化後、ブリードアウトは確認されなかった。
【0156】
なお、実施例9では、硬化性化合物(A)として、BPEFA60重量部およびPETA62重量部を用いた(BPEFA/PETA(モル比)=35/65)。
【0157】
得られた樹脂組成物および硬化物の各種特性を測定又は評価した。
【0158】
(相溶性・保存安定性)
調製した樹脂組成物を常温で一週間静置した後の状態を目視観察し、以下の基準で樹脂組成物の相溶性(保存安定性)を評価した。
【0159】
○:調製直後と比べて変化がない
×:沈殿又はゲル化している。
【0160】
(屈折率)
多波長アッベ屈折計(アタゴ製、DR−M2<循環式恒温水槽60−C3使用>)を用い、温度25℃を保持し、589nmでの硬化性組成物の屈折率を測定した。
【0161】
(粘度)
25℃における硬化性組成物の粘度(PGMEAで希釈する前の粘度)を、TV−22形粘度計(コーンプレートタイプ、東機産業(株)製「TVE−22L」)を用い、測定粘度に応じたオプションロータ(01:1゜34×R24、07:3゜×R7.7)にて、1〜20rpm(粘度によって選択)で測定した。
【0162】
(ガラス基板に対する密着性)
硬化物の密着性を以下の基準で評価した。
【0163】
○:硬化膜を碁盤目にカットした後、硬化膜がガラス基板から剥れない
×:硬化膜を碁盤目にカットした後、硬化膜がガラス基板から剥れる。
【0164】
(硬化収縮)
以下の基準で硬化収縮の有無を評価した。
【0165】
○:硬化膜の面積が、硬化前後で変わらない
×:硬化膜の面積が、硬化前後で大きく変わる。
【0166】
結果を表に示す。
【0167】
【表1】
【0168】
【表2】
【0169】
(実施例12)
実施例1において、BPEFA100重量部に代えて、BREFA100重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。樹脂組成物において、相溶性・保存安定性は、実施例1と同様に良好(評価○)であった。また、樹脂組成物の屈折率は1.557、屈折率減少量は0.000であった。
【0170】
(実施例13)
実施例1において、BPEFA100重量部に代えて、BNFPOA100重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。樹脂組成物において、相溶性・保存安定性は、実施例1と同様に良好(評価○)であった。また、樹脂組成物の屈折率は1.606、屈折率減少量は−0.001であった。
【産業上の利用可能性】
【0171】
本発明の硬化性組成物は、例えば、インク材料、発光材料(例えば、有機EL用発光材料など)、有機半導体、黒鉛化前駆体、ガス分離膜(例えば、COガス分離膜など)、OCA(光学粘着層)、接着剤、コート剤(例えば、LED(発光ダイオード)用素子のコート剤などの光学用オーバーコート剤又はハードコート剤など)、レンズ[ピックアップレンズ(例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)用ピックアップレンズなど)、マイクロレンズ(例えば、液晶プロジェクター用マイクロレンズなど)、眼鏡レンズなど]、偏光膜(例えば、液晶ディスプレイ用偏光膜など)、複合シート、輝度向上フィルム、プリズムシート、反射防止フィルム(又は反射防止膜、例えば、表示デバイス用反射防止フィルムなど)、タッチパネル用フィルム、フレキシブル基板用フィルム、ディスプレイ用フィルム[例えば、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、VFD(真空蛍光ディスプレイ)、SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、FED(電界放出ディスプレイ)、NED(ナノ・エミッシブ・ディスプレイ)、ブラウン管、電子ペーパーなどのディスプレイ(特に薄型ディスプレイ)用フィルム(保護フィルムなど)など]、カラーフィルタ[例えば、レンズフィルター、ディスプレイ用カラーフィルタなど]、液晶表示装置用レジスト[例えば、TFTアレイエッチング用フォトレジスト、顔料分散型フォトレジスト、保護膜など]、層間絶縁膜、ソルダーレジスト、燃料電池用膜、光ファイバー、光導波路、ホログラムなどに好適に使用できる。特に、本発明の硬化性組成物は、高い屈折率を有するため、光学材料用途に好適に利用できる。このような光学材料の形状としては、例えば、フィルム又はシート状、板状、レンズ状、管状などが挙げられる。