(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出部は、前記エネルギーの分析結果から得られる前記電子のエネルギーとスペクトル強度の関係に基づいて、欠陥の深さ位置を検出することを特徴とする、請求項1に記載の電子線検査装置。
前記エネルギー分析部は、放出された前記電子のパスエネルギーを走査することで前記電子のエネルギーとスペクトル強度との関係を示す特性を取得し、取得した前記特性に基づいて前記電子のエネルギーを分析することを特徴とする、請求項1に記載の電子線検査装置。
前記検出部は、前記特性において前記スペクトル強度にピークが生じる位置での前記電子のエネルギーに基づいて、前記深さ位置を検出することを特徴とする、請求項3に記載の電子線検査装置。
前記検出部は、分析した前記電子のエネルギーに基づいて、前記試料に生じた欠陥の前記深さ位置を検出することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の電子線検査装置。
前記深さ位置を検出するステップは、前記エネルギーの分析結果から得られる前記電子のエネルギーとスペクトル強度の関係に基づいて、欠陥の深さ位置を検出することを特徴とする、請求項10に記載の電子線検査方法。
前記エネルギーを分析するステップは、放出された前記電子のパスエネルギーを走査することで前記電子のエネルギーとスペクトル強度との関係を示す特性を取得し、取得した前記特性に基づいて前記電子のエネルギーを分析することを特徴とする、請求項10に記載の電子線検査方法。
前記深さ位置を検出するステップは、前記特性において前記スペクトル強度にピークが生じる位置での前記電子のエネルギーに基づいて、前記深さ位置を検出することを特徴とする、請求項12に記載の電子線検査方法。
前記深さ位置を検出するステップは、分析した前記電子のエネルギーに基づいて、前記試料に生じた欠陥の前記深さ位置を検出することを特徴とする、請求項10〜14のいずれかに記載の電子線検査方法。
前記電子線を照射するステップは、前記試料に設けられた深溝の幅以上の大きさのビームで前記電子線を照射することを特徴とする、請求項15に記載の電子線検査方法。
前記電子線を照射する電子線照射部が1の電子線カラムに設けられ、複数の前記電子線カラムを使用することを特徴とする、請求項10〜17のいずれかに記載の電子線検査方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載された技術は、いずれも試料の欠陥を検出するものであるが、欠陥の試料表面からの深さ方向の位置を検出することは全く想定していなかった。また、特許文献3に記載された技術も、ある領域内における欠陥の有無および面方向の欠陥の位置を検出するものであり、欠陥の深さ方向の位置を検出することは想定していなかった。このため、上記従来の技術では、試料表面の特定の部位の深さ方向の位置を検出することは困難である。
【0007】
また、近時においては、V−NAND等の3次元構造(立体構造)のトランジスタが出現し、半導体基板上に形成されるコンタクトホールのアスペクト比が増大している。このため、コンタクトホール内の欠陥を検出するため、半導体基板の深さ方向の位置を高精度に検出する要請が高まっている。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、試料の特定の部位の深さ方向の位置を検出することが可能な、新規かつ改良された電子線検査装置及び電子線検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、試料に電子線を照射する電子線照射部と、前記電子線の照射方向に電界を生じさせる電界発生部と、前記電子線の照射によって前記試料から放出され、前記電界によって加速された電子のエネルギーを分析するエネルギー分析部と、前記エネルギーの分析結果に基づいて、前記電子が放出された部位において、前記電子線の照射方向の深さ位置を検出する検出部と、を備える電子線検査装置が提供される。
【0010】
上記構成によれば、電子線の照射によって試料から放出された電子は電界によって加速され、電子のエネルギーは、電子が放出された試料深さ方向の位置、つまり電子線の照射方向における位置で異なることになる。従って、放出された電子のエネルギーを分析することで、電子が放出された部位において、電子線の照射方向の深さ位置を検出することが可能となる。
【0011】
前記検出部は、前記エネルギーの分析結果から得られる前記電子のエネルギーとスペクトル強度の関係に基づいて、欠陥の深さ位置を検出する。この構成によれば、試料から放出された電子は電界によって加速されるため、エネルギーの分析結果から得られる前記電子のエネルギーとスペクトル強度の関係は放出された部位の深さ位置に応じて異なることになる。従って、エネルギーの分析結果から得られる電子のエネルギーとスペクトル強度の関係に基づいて、欠陥の深さ位置を検出することが可能となる。
【0012】
前記エネルギー分析部は、放出された前記電子のパスエネルギーを走査することで前記電子のエネルギーとスペクトル強度との関係を示す特性を取得し、取得した前記特性に基づいて前記電子のエネルギーを分析する。この構成によれば、放出された電子のパスエネルギーを走査することで電子のエネルギーとスペクトル強度との関係を示す特性が得られるため、取得した特性に基づいて電子のエネルギーを分析することが可能となる。
【0013】
また、前記検出部は、前記特性において前記スペクトル強度にピークが生じる位置での前記電子のエネルギーに基づいて、前記深さ位置を検出する。この構成によれば、スペクトル強度にピークが生じる位置での電子のエネルギーを基準となる値と比較することによって、深さ位置を検出することが可能となる。
【0014】
また、前記電子のエネルギーと前記深さ位置との相関関係を予め記憶する記憶部を備え、前記検出部は、前記記憶部に記憶された前記相関関係に基づいて、前記深さ位置を検出する。この構成によれば、電子のエネルギーと深さ位置との相関関係が予め記憶されるため、この相関関係に基づいて深さ位置を検出することが可能となる。
【0015】
また、前記検出部は、分析した前記電子のエネルギーに基づいて、前記試料に生じた欠陥の前記深さ位置を検出する。この構成によれば、試料に生じた欠陥の深さ位置を検出することが可能となる。
【0016】
また、前記電子線照射部は、前記試料に設けられた深溝の幅以上の大きさのビームで前記電子線を照射する。この構成によれば、深溝内の欠陥の深さ位置を確実に検出することが可能となる。
【0017】
また、前記欠陥の座標を取得する座標取得部を備え、前記検出部は、前記座標取得部が取得した座標の前記欠陥について、前記深さ位置を検出する。この構成によれば、座標が取得された欠陥について、深さ位置を検出することができ、欠陥の座標と深さ位置を対応付けすることが可能となる。
【0018】
また、前記電子線照射部が1の電子線カラムに設けられ、複数の前記電子線カラムを備える。この構成によれば、欠陥をより高速に検出することが可能となる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、試料に電子線を照射するステップと、前記電子線の照射方向に電界を生じさせるステップと、前記電子線の照射によって前記試料から放出され、前記電界によって加速された電子のエネルギーを分析するステップと、前記エネルギーの分析結果に基づいて、前記電子が放出された部位において、前記電子線の照射方向の深さ位置を検出するステップと、を備える電子線検査方法が提供される。
【0020】
上記構成によれば、電子線の照射によって試料から放出された電子は電界によって加速され、電子のエネルギーは、電子が放出された位置、つまり電子線の照射方向における位置で異なることになる。従って、放出された電子のエネルギーを分析することで、電子が放出された部位において、電子線の照射方向の深さ位置を検出することが可能となる。
【0021】
前記検出するステップは、前記エネルギーの分析結果から得られる前記電子のエネルギーとスペクトル強度の関係に基づいて、欠陥の深さ位置を検出する。この構成によれば、試料から放出された電子は電界によって加速されるため、エネルギーの分析結果から得られる前記電子のエネルギーとスペクトル強度の関係は放出された部位の深さ位置に応じて異なることになる。従って、エネルギーの分析結果から得られる電子のエネルギーとスペクトル強度の関係に基づいて、欠陥の深さ位置を検出することが可能となる。
【0022】
前記エネルギーを分析するステップは、放出された前記電子のパスエネルギーを走査することで前記電子のエネルギーとスペクトル強度との関係を示す特性を取得し、取得した前記特性に基づいて前記電子のエネルギーを分析する。この構成によれば、放出された電子のパスエネルギーを走査することで電子のエネルギーとスペクトル強度との関係を示す特性が得られるため、取得した特性に基づいて電子のエネルギーを分析することが可能となる。
【0023】
また、前記深さ位置を検出するステップは、前記特性において前記スペクトル強度にピークが生じる位置での前記電子のエネルギーに基づいて、前記深さ位置を検出する。この構成によれば、スペクトル強度にピークが生じる位置での電子のエネルギーを基準値と比較することによって、深さ位置を検出することが可能となる。
【0024】
また、前記電子のエネルギーと前記深さ位置との相関関係を予め記憶するステップを備え、前記深さ位置を検出するステップは、記憶された前記相関関係に基づいて、前記深さ位置を検出する。この構成によれば、電子のエネルギーと深さ位置との相関関係が予め記憶されるため、この相関関係に基づいて深さ位置を検出することが可能となる。
【0025】
また、前記深さ位置を検出するステップは、分析した前記電子のエネルギーに基づいて、前記試料に生じた欠陥の前記深さ位置を検出する。この構成によれば、試料に生じた欠陥の深さ位置を検出することが可能となる。
【0026】
また、前記電子線を照射するステップは、前記試料に設けられた深溝の幅以上の大きさのビームで前記電子線を照射する。この構成によれば、深溝内の欠陥の深さ位置を確実に検出することが可能となる。
【0027】
また、前記欠陥の座標を取得するステップを備え、前記深さ位置を検出するステップは、取得した前記座標の前記欠陥について、前記深さ位置を検出する。この構成によれば、座標が取得された欠陥について、深さ位置を検出することができ、欠陥の座標と深さ位置を対応付けすることが可能となる。
【0028】
また、前記電子線を照射する電子線照射部が1の電子線カラムに設けられ、複数の前記電子線カラムを使用する。この構成によれば、欠陥をより高速に検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、試料の特定の部位の深さ方向の位置を検出することが可能な電子線検査装置及び電子線検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子線検査装置1000の全体構成を示す模式図である概要図である。電子線検査装置1000は、チャンバーユニット100と、このチャンバーユニット100内に収容される1つの電子線カラム200と、電子線カラム200に接続される制御電源300と、制御電源300に接続されるコンピュータ400とを備えている。
【0033】
チャンバーユニット100は、第1チャンバー(ウェハチャンバー)102、第2チャンバー(中間室チャンバー)104、および第3チャンバー(電子銃室チャンバー)106とから構成されている。第1チャンバー102、第2チャンバー104,第3チャンバー106は、互いに異なる真空度に設定可能な独立した空間を成し、かつ、互いに隣接して配されている。第1チャンバー102、第2チャンバー104、および第3チャンバー106は、それぞれ内部を所定の真空度にするための真空ポンプ108、110、112が接続されている。電子線カラム200は、これら第1〜第3チャンバー102,104,106を貫通するように配置される。電子線カラム200の構成は後ほど詳述する。
【0034】
第1チャンバー102には、ウェハ(試料)Wを載置するためのステージ500が配置されている。このステージ500の一面に、被検査物であるウェハ(試料)Wが載置される。ステージ500は、ウェハWの主面に沿って任意の方向に移動可能に形成され、検査時には、ウェハWを所定の方向に沿って所定の移動速度で移動させる。電子線カラム200がウェハW上の欠陥を検出すると、ステージ500の位置に基づいて欠陥の水平方向の座標が検出される。
【0035】
制御電源300は、電子線カラム200に対して入力されるスキャン電圧を入力する。制御電源300は、電子線カラム200に対して割り当てられるように配置されている。制御電源300から出力される信号として、例えば、高安定な電圧、電流に加え、高電圧電流、高周波電流などが挙げられる。また、それぞれの制御電源300には、補正機構が更に備えられていることが好ましい。この補正機構は、例えば、制御電源300から出力される信号、例えば高周波電圧の位相ずれの補正、走査信号の待機時間の補正、フィルターなど制御電流回路の切り替えなどを行う。
【0036】
コンピュータ400は、それぞれの電子線カラム200に対する制御命令を入力し、また、ウェハWに電子線を照射して得られる、配線パターンの形状を反映した二次電子線の出力信号(二次電子線)に基づいて、配線パターンの画像を形成する。なお、この画像形成による欠陥の検出を、通常の欠陥検出モードによる欠陥検出と称することとする。
【0037】
また、コンピュータ400は、二次電子線の出力信号に基づいて、欠陥の深さを検出する。このため、コンピュータ400は、エネルギー分析部402、検出部404、記憶部406、座標取得部408を備えている。コンピュータ400のこれらの構成要素は、ハードウェア(回路)、又は、CPUなどの中央演算処理装置とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成されることができる。
【0038】
図2は、電子線カラムの長手方向に沿った断面を示す概略構成図である。
電子線カラム200は、外形形状が細長い略筒状の外装体202を備える。外装体202は、例えば金属の筒で構成されており、機械的に中心軸が確保された構造である。外装体202には、外装体202の内部を真空排気するためのガス抜き穴(図示略)が複数設けられている。ガス抜き穴によって、電子線eが通過する領域の真空度を高めることができる。
【0039】
電子線カラム200の外装体202内部には、複数の電子線光学要素が収容されている。即ち、外装体202の上から順に、電子銃204、コンデンサレンズ206、電子線絞り機構208、光軸調整機構210、ブランキング電極212、バルブ215、エネルギー分析器214、ビームスプリッター216、スキャン電極218、および対物レンズ220などが、外装体202の内部に備えられている。コンデンサレンズ206、電子線絞り機構208、光軸調整機構210、ブランキング電極212、ビームスプリッター216、スキャン電極218、および対物レンズ220などの各構成要素は、中心軸を中心として同心状に配置されている。
【0040】
電子銃204は、例えば、ショットキー型、熱電界放出型電子銃が用いられる。電子銃204に加速電圧を調整して印加することにより、電子線(電子ビーム)eが放出される。コンデンサレンズ206、電子線絞り機構208は、電子銃204から放出された電子線eを集光し、所望の電流となるように調節する。光軸調整機構210は、ビームの非点補正、光軸上のビーム位置、試料上でのビーム照射位置を調整する。
【0041】
エネルギー分析器214は、電子線eがウェハWに照射され、ウェハWの面に応じて放出された二次電子、オージェ電子、又は反射電子である二次電子線rを検出し、放出された電子のエネルギーを分析する。なお、二次電子線rは、電子線eの照射によって発生した二次電子、オージェ電子、反射電子を含むものとする。エネルギー分析器214のエネルギー分解能は、例えば1eV以下とする。ビームスプリッター216は、放出された二次電子線rを光軸から分離し、エネルギー分析器214へ導入する。
【0042】
エネルギー分析器214が検出した検出信号は、電子線カラム200の外部に取り出される。取り出されたエネルギー分析器214の検出信号は、例えば、プリアンプで増幅されAD変換器によりデジタルデータとされ、コンピュータ400に入力される。エネルギー分析器214、及びビームスプリッター216の詳細は後述する。
【0043】
スキャン電極218は、外部から高周波の制御信号(電気信号)、例えば0〜400Vの高周波電流を導入(印加)することにより、電子線eを偏向させる。スキャン電極218に任意の制御信号を印加することで電子線eが偏向し、ウェハWの主面上で任意の方向に沿って電子線eを走査させることができる。こうした高周波の制御信号は、電子線カラム200の外部からスキャン電極218に導入される。対物レンズ220は、スキャン電極118によって偏向された電子線eをウェハWの主面上で集束させる。
【0044】
このような構成により、電子銃202から放出された電子線eはウェハWの主面上を走査され、回路パターンの形状、組成、帯電状況等を反映した二次電子、オージェ電子、又は反射電子である二次電子線rがエネルギー分析器214によって検出される。検出された二次電子線rの検出信号を、例えばプリアンプやAD変換器を介してコンピュータ400で処理することにより、ウェハWの主面上に形成された回路パターン、欠陥の画像を得ることができ、通常の欠陥検出モードによりウェハW上の欠陥を検出することができる。更に、詳細は後述するが、本実施形態においては、欠陥の深さを検出することもできる。
【0045】
これら電子線カラム200内の電子線光学要素や、ステージ500は、チャンバーユニット100を構成する各チャンバーのうち、それぞれ必要とされる真空度に応じたチャンバーに収容される。即ち、電子線eを放出するために最も高い真空度を必要とする電子銃204やコンデンサレンズ206は、内部が最も高い真空度に設定される第3チャンバー106に配置される。また、電子線絞り機構208、光軸調整機構210、ブランキング電極212は、第3チャンバー106に次いで真空度の高い第2チャンバー104に配置される。そして、エネルギー分析器214、ビームスプリッター216、スキャン電極218、対物レンズ220、およびウェハWを載置するステージ500は、比較的真空度の低い第1チャンバー102に配置される。これによって、全ての電子線光学要素やステージ500、ウェハWを、電子線eを放出するため必要なレベルの高真空環境にする必要がなく、構成をより簡素にすることができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る欠陥の深さ検出について説明する。本実施形態において、試料としてのウェハWの表面にはシリコン酸化膜などの酸化膜が形成され、酸化膜にはコンタクトホール等の深溝構造が形成されている。本実施形態の電子線検査装置1000においては、酸化膜に形成されたコンタクトホール等の深溝構造を有するウェハW(試料)に対して、ウェハWと対物レンズ220の先端の間に電界を印加する。この電界は、ウェハWの酸化膜に形成された深溝構造に電位勾配を生じさせる。または、ウェハWに一定の正の電荷を帯電させて電位勾配を生じさせても良い。
【0047】
電子線eの照射によってウェハWから放出された二次電子線rは、物質特有のエネルギーを有する。酸化膜内の深溝構造の異なる位置(深さ)にある欠陥は、電位勾配により異なるエネルギー差を持つことになるので、放出された電子のエネルギーを分析することで、欠陥の深さを検出することができる。なお、反射電子は入射時と放出時でエネルギーが補償されるため、エネルギー差を持たず、深さ検出に使用することはできない。
【0048】
以下、本実施形態の電子線検査装置1000で行われる深さ検出法について詳細に説明する。先ず、試料のウェハWとしては、一例として、コンタクトホール等の深穴構造、深溝構造が形成された絶縁体部分を表面に有する半導体ウェハを用いる。なお、試料は半導体ウェハに限定されるものではなく、液晶基板、OLED基板等であっても良い。特に、本実施形態は、絶縁体の厚みが100nm以上の試料に適用して好適である。
【0049】
図3は、電子線カラム200の先端部分と試料Wを示す模式図である。
図3に示すように、試料のウェハWには、表面に絶縁膜(シリコン酸化膜SiO
2)10が形成され、絶縁膜10には深穴としてのコンタクトホールCが設けられている。一例として、コンタクトホールCの深さは500nmとする。
【0050】
図3に示すように、電子線検査装置1000は、試料のウェハWと対物レンズ220との間に所定の電圧を印加して電界を発生させる電界発生部1002を有する。試料のウェハWは、対物レンズ220に対して負の電圧が印加され、この結果、電子線の照射方向(コンタクトホールCの深さ方向)に電界Eが発生する。
図3に示す例では、計算の結果、コンタクトホールCの深さ方向に4kV/mmの電界が生じるように電圧が印加され、コンタクトホールCの底と絶縁膜10の表面との間のエネルギー差dEが0.8eVであった。また、
図3に示すように、試料のウェハWの表面と対物レンズ220との間には電界Efが発生する。電界Eは、誘電率εと絶縁膜10の厚さより計算される。
【0051】
コンピュータ400には、エネルギー分析器214により検出された2次電子のスペクトル強度を表す信号Isと、エネルギーフィルタ230の調整電圧VGが入力される。コンピュータ400は、事前に入力された試料の材質、絶縁膜10の厚みとワーキンギングディスタンス(対物レンズ220の先端からウェハWまでの距離)、試料電圧、帯電量から、コンタクトホールC内の深さ位置における電位分布ならびに放出される二次電子線rのエネルギー差を算出する。
【0052】
図3に示すように、コンタクトホールC内の異なる深さ位置に欠陥P,Q,Rが存在するものとする。欠陥P,Q,Rには、電子線eが照射され、欠陥の位置で二次電子線rが発生する。二次電子線rは、電界Eによって加速されて、電子線カラム200のエネルギー分析器214によって検出される。
【0053】
この際、欠陥P,Q,Rのそれぞれで発生した二次電子は、欠陥P,Q,Rのそれぞれから対物レンズ220までの距離が異なるため、電界Eによって異なるエネルギー増加を受けることになる。コンタクトホールC内の最も深い位置にある欠陥Pで発生した二次電子線rは、電界Eによって加速される距離が最も長いため、最も大きなエネルギーを有することになる。一方、コンタクトホールC内の最も浅い位置にある欠陥Rで発生した二次電子線rは、電界Eによって加速される距離が短いため、最も小さいエネルギーを有することになる。従って、このエネルギーの差に基づいて、コンタクトホールC内の欠陥の深さ位置を検出することが可能となる。
【0054】
図4A〜
図4Dは、コンタクトホールC内での欠陥の深さ位置を変化させた場合に、それぞれの欠陥で発生した二次電子線rの軌道の計算結果(シミュレーション結果)を示す模式図である。ここで、
図4AはコンタクトホールCの底で発生した二次電子線rの軌道を、
図4BはコンタクトホールCの深さの中間よりもやや浅い位置で発生した二次電子線rの軌道を、
図4CはコンタクトホールC内の絶縁膜10表面に近い深さ位置で発生した二次電子線rの軌道を、
図4Dは絶縁膜表面の位置で発生した二次電子線rの軌道を、それぞれ示している。
図4Aに示すように、コンタクトホールRの底で二次電子線rが発生した場合、加速された二次電子はコンタクトホール側壁に衝突するために比較的細いビームとなって電子線カラム200側へ進み、この場合に二次電子線rのエネルギーは最も高くなる。一方、
図4Dに示すように、試料表面の位置で二次電子線rが発生した場合、加速されたビームは欠陥から放射状に広がり、この場合に二次電子線rのエネルギーは最も低くなる。
【0055】
図5は、欠陥P,Q,Rのそれぞれで発生した二次電子について、エネルギー分析器214で検出される二次電子線rのエネルギー(縦軸)とスペクトルの強さ(横軸)を示す特性図である。また、
図6は、
図5との比較のため、欠陥P,Q,Rのそれぞれの位置での電子線eのエネルギー(縦軸)とスペクトルの強さ(横軸)を示す特性図である。
図5及び
図6において、欠陥P,Q,Rのそれぞれの特性の横軸方向の値は本来同様であるが、欠陥P,Q,Rによるそれぞれの特性の比較を容易にするため、各特性を横軸方向にずらして表示している。
【0056】
図5及び
図6に示すように、エネルギーとスペクトル強度の関係を示す特性には、2次電子(Secondary Electron)のピーク、オージェ電子(Auger Electron)のピーク、反射電子(Back Scattered Electron)のピークの3つが存在する。
図6に示すように、欠陥P,Q,Rのそれぞれの位置の特性では、欠陥P,Q,Rのそれぞれで各ピーク(2次電子、オージェ電子)のエネルギーは同一である。
【0057】
一方、
図5に示すように、エネルギー分析器214で検出される特性では、欠陥Pで発生した二次電子線rのエネルギーは
図6の欠陥Pの位置のエネルギーよりもVs+dEだけ大きくなっている。これは、電界Eによって二次電子rが加速されて、二次電子線rのエネルギーが増加するためである。dEは、電界Eと試料絶縁体部の誘電率、厚みから算出可能である。
【0058】
また、
図5に示すように、エネルギー分析器214で検出される特性では、欠陥Rで発生した二次電子線rのエネルギーは
図6の欠陥RのエネルギーよりもVsだけ大きくなっている。すなわち、
図5に示す特性において、欠陥Rで発生した二次電子線rのエネルギーは欠陥Pで発生した二次電子のエネルギーよりもdEだけ小さくなっている。これは、上述のように、欠陥Pで発生した2次電子の方が欠陥Rで発生した二次電子よりも電界Eによって加速される距離が長いことに起因している。なお、上述した計算例ではコンタクトホールCの底と絶縁膜10表面とのエネルギー差は0.8eVであり、欠陥PはコンタクトホールCの底に位置し、欠陥Rは絶縁膜10の表面に位置しているため、dEの値は0.8eVに相当する。
【0059】
従って、二次電子のピークの位置、オージェ電子のピークの位置でのエネルギーを欠陥Pと欠陥Rの特性で比較すると、欠陥Pの方が欠陥RよりもエネルギーがdEだけ高くなっている。従って、欠陥の深さとエネルギー分析器214で検出されるピークの位置との関係を予め取得しておくことで、エネルギー分析器214で検出されるピーク位置に基づいて欠陥の深さを検出することが可能である。
【0060】
図7は、欠陥の深さ位置(横軸)とエネルギーの変化量(縦軸)との関係を示す特性図である。ここでは、絶縁膜10として550nmの厚みのシリコン酸化膜(SiO
2)に4kV/mmの電界を印加した場合の特性を示している。
図7に示すように、ウェハWの表面(絶縁膜10の表面)とコンタクトホールCの底とでは0.8eV程度のエネルギー差があり、欠陥の深さに比例してエネルギーが増加していることが判る。従って、二次電子のピーク位置、二次電子の立ち上がりの位置、オージェ電子のピークの位置を測定することで、欠陥の深さ位置を検出することが可能である。
【0061】
一例として、SiO
2に対するオージェスペクトルのピーク位置は、Si(LVV)では92eV付近、Si(kLL)では1730eV付近、O(KLL)では500eV付近である。このため、
図6に示すように、オージェスペクトルのピーク位置は、50eV〜2000eVとなる。従って、二次電子のピーク位置、二次電子の立ち上がりの位置、オージェ電子のピークの位置を測定し、電界Eを印加していない場合のピーク位置と比較することにより、欠陥の深さを検出することができる。
【0062】
図5に示す特性は、エネルギー分析器214によって検出される。
図8は、エネルギー分析器214の構成の一例を示す模式図である。
図8に示すように、エネルギー分析器214は、エネルギーフィルタ(リターディンググリッド)230と検出器232とから構成される。
図8に示すように、欠陥P,Q,Rで発生した二次電子は、最初にビームスプリッター216へ入射し、エネルギーフィルタ230を通過して検出器232に入射する。ビームスプリッター216は、磁場を
図8の縦方向(紙面垂直方向)に印加し、電場を磁場と直交する方向(水平方向)に印加する。そして、ビームスプリッター216は、磁場と電場を最適に調整することにより、電子銃204から出射した電子線eを曲げることなく試料に到達させるとともに、発生した二次電子線rを電子線カラム200の中心軸から外れる方向に曲げて検出器232に到達させる。なお、検出器232としては、半導体検出器、シンチレター+光電子増倍管(ホトマル)、電子増倍管(チャンネルトロン)、マイクロチャンネルプレート等を用いることができる。いずれも、入力した電子を増幅し、電流信号として出力する。また、これらの検出器をアレー上に複数ならべることで並列化し、より高速でエネルギーを分析することも可能である。電流信号は、検出器232の後段のプリアンプで電圧化と増幅を行い、AD変換器によりデジタル化され、コンピュータ400へ送られる。
【0063】
エネルギーフィルタ230は、二次電子線rに負の電位VGを印加し、二次電子線rのエネルギーに応じて検出器232へ入射させる機能を有する。エネルギーフィルタ230によってこの負の電位VGを調整することで、通過する二次電子のエネルギー(パスエネルギー)が調整され、得られた曲線を微分することで、
図5に示すようなエネルギーとスペクトル強度との関係を示す特性が取得される。
【0064】
図9は、エネルギーフィルタ230と検出器232の構成を示す模式図である。
図9に示すように、エネルギーフィルタ230は、水平方向に延在する4つのグリッド状(格子状)の電極230a,230b,230c,230dから構成される。中央の2つの電極230b,230cには負の電位VG(調整電圧)が印加され、上端及び下端に位置する電極230a,230dは接地電位(GND)とされる。
【0065】
また、検出器232は、入射した二次電子線rにより生じる電流Isを検出し、この電流Isは二次電子のスペクトル強度(
図5の横軸に相当)を表す。そして、調整電圧VGを変化させながら電流Isを検出し、縦軸にVGを、横軸にIsをプロットすると、
図5に示す特性を得ることができる。
図9に示すように、中心にはグランドに接地された筒234が設置されるため、一次ビームがVGの変化に影響されずにエネルギーフィルタ230を通過することが可能となる。なお、エネルギーウインドウは、一度に検出されるエネルギーの範囲であり、電極230b,230c間の電位差VGとエネルギー分析器の形状、寸法で決まる値である。エネルギーウインドウは一定であり、パスエネルギーを走査することで、エネルギースペクトルが得られる。一例として、エネルギースペクトルを高分解で取得したい場合はエネルギーウインドウを小さく設定する。また、エネルギースペクトルを高速で得たい場合には、エネルギーウインドウを大きく設定する。
【0066】
図10は、エネルギー分析器214の別の構成例を示す模式図である。
図10に示す例では、エネルギー分析器214は、同心状の対向する2つの半球面から構成される通路240と検出器242とから構成される。ビームスプリッター216によって分離された二次電子線rは、通路240内に導入される。通路240の2つの半球面には、内球面にVGが、外球面にVG+dVが印加される。検出器242はスリットを有し、入射した二次電子線rによる信号Isを検出し、この電流Isは二次電子のスペクトル強度(
図5の横軸に相当)を表す。従って、
図10に示すエネルギー分析器214においても、調整電圧VGを変化させながら電流Isを検出し、縦軸にVGを、横軸にIsをプロットすると、
図5に示す特性を得ることができる。また、半球面の電位差dVとエネルギー分析器214の形状(半径、角度、後方のスリット幅)により、二次電子のエネルギーウインドウ(エネルギー幅)が決まるため、dVによりエネルギーウインドウを調整可能である。エネルギーを高分解で取得したい場合はエネルギーウインドウを小さく設定する。またエネルギースペクトルを高速に取得したい場合には、エネルギーウインドウを大きく設定する。このように、エネルギーフィルタ230は、エネルギー差から検出するエネルギーウインドウを設定する機能を有する。エネルギーウインドウは、例えばエネルギー差の1/10以下に設定する。
【0067】
図11は、エネルギー分析器214の更に別の構成例を示す模式図である。
図11に示す例では、エネルギー分析器214は、セクターマグネット250と検出器252とから構成される。ビームスプリッター216によって分離された二次電子線rは、セクターマグネット250内に導入される。セクターマグネット250は、二次電子線rを挟んで
図11の紙面と直交する方向にN極とS極が配置された電磁石から構成される。検出器252は、入射した二次電子による電流Isを検出し、この電流Isは二次電子のスペクトル強度(
図5の横軸に相当)を表す。
図11に示すエネルギー分析器214においても、セクターマグネット250の調整電流により決まるパスエネルギーVGを変化させながら電流Isを検出し、縦軸にVGを、横軸にIsをプロットすると、
図5に示す特性を得ることができる。
【0068】
以上のようにして取得された
図5の特性に基づいて、欠陥の深さ位置が検出される。具体的には、コンピュータ400のエネルギー分析部402は、電流Isと調整電圧VGの入力を受けて
図5に示す特性を取得する。そして、検出部404は、エネルギー分析部402が取得した
図5に示す特性に基づいて、欠陥の深さ位置を検出する。また、コンピュータ400の記憶部406には、予め取得された、欠陥の深さと
図5の特性のピークにおけるエネルギーとの関係(
図7の特性)が記憶されている。
【0069】
また、コンピュータ400の座標取得部408は、通常の欠陥検出モードにより欠陥が検出された場合に、ステージ500の位置から試料の面方向における欠陥の座標を取得する。また、座標取得部408は、他の装置が検出した欠陥の座標を当該他の装置から取得しても良い。
【0070】
図12は、電子線カラムの長手方向に沿った断面を示す概略構成図であって、磁場レンズを用いた電子線カラム200の構成を示す模式図である。
図2に示す電子線カラム200は静電レンズを用いているが、
図12に示す構成のように磁場レンズを用いることもできる。
図12に示す構成例では、
図2のコンデンサレンズ206の代わりに磁場レンズを用いたコンデンサレンズ270が配置され、
図2のブランキング電極212の代わりに磁場レンズを用いたコンデンサレンズ272が配置されている。また、
図12に示す構成例では、
図2の対物レンズ220の代わりに磁場レンズを用いた対物レンズ274が配置されている。このように、磁場レンズを用いて電子線カラム200を構成することも可能である。
【0071】
次に、
図13のフローチャートに基づいて、電子線装置1000による欠陥検査の処理について説明する。先ず、ステップS10では、欠陥の位置に関する情報を取得する。ここでは、電子線装置100が通常の欠陥検出モードによってウェハW上の欠陥を検出する。これにより、ステージ500の位置に基づいて、コンタクトホールCにゴミなどが付着して形成された欠陥の位置(座標)が取得される。なお、ここでは、電子線装置1000の通常の欠陥検出モードによって欠陥の位置を検出するが、他の装置が欠陥を検出し、この装置から欠陥の位置(座標)を取得するようにしても良い。
【0072】
次のステップS12では、電子線カラム200を通常の欠陥検出モードで検出した欠陥の位置に移動させ、欠陥を観察した後、通常の欠陥検出モードから欠陥の深さを検出する深さ検出モードへ切り換えを行う。次のステップS14では、対物レンズと試料の間に深さ検出用の電界を発生させる。なお、ステップS10の欠陥検出モードにおいても、電界を発生させている。次のステップS15では、深さ検出モードにおいて、電子線eのビームをコンタクトホールCへスポット照射する。若しくは、ビームをコンタクトホールCの直径以上の一定のサイズでコンタクトホールCへ照射する。
【0073】
次のステップS16では、ビームの照射により欠陥で発生した二次電子線rのエネルギーを分析する。この際、上述したようにエネルギー分析器214のパスエネルギー(調整電圧VG)を走査することで、
図5に示すようなエネルギーとスペクトルの信号強度の関係を示す特性を取得する。そして、取得した特性に基づいて欠陥で発生した二次電子線rのエネルギーを分析する。
【0074】
次のステップS18では、取得した
図5の特性から、二次電子線rのスペクトルのピークの位置(二次電子のピーク、オージェ電子のピーク)、スペクトルの立ち上がりの位置(0V付近)を検出する。次のステップS20では、事前に規定厚みの絶縁体に対して欠陥の深さとエネルギーとの関係を測定したデータベースを参照し、ステップS18で検出したピークの位置でのエネルギーに基づいて欠陥の深さを検出する。また、事前に入力された試料の絶縁膜10の厚みとワーキングディスタンス(対物レンズ220の先端からウェハWまでの距離)、試料電圧、帯電量から、コンタクトホールC内の欠陥の深さ位置における電位分布、ならびに放出される電子のエネルギー差を算出してもよい。
【0075】
次のステップS22では、通常の欠陥検出モードで検出した欠陥に対し、深さ検出モードで検出した深さを関連付ける。次のステップS24では、次の欠陥に移動し、同様の手順で深さを検出する。
【0076】
図14は、チャンバーユニット100内に複数の電子線カラム200を収容した実施形態を示す模式図である。このように、チャンバーユニット100内に複数の電子線カラム200を収容することもできる。チャンバーユニット100内に電子線カラム200が複数配置される場合は制御電源300も複数設けられ、制御電源300は、1つの電子線カラム200に対して1つの制御電源300が割り当てられるように配置される。チャンバーユニット100内に複数の電子線カラム200を収容した場合は、複数の電子線カラム200によりウェハWのより広い範囲で欠陥を検出することができ、欠陥を迅速に検出することができる。
【0077】
以上説明したように本実施形態によれば、電子線カラム200の先端と試料(ウェハW)との間に電界Eを印加し、試料への電子線eの照射によって発生した二次電子線rを電界Eによって加速させることにより、試料における欠陥の深さ位置に応じて二次電子線rのエネルギーに差分を生じさせることができる。従って、欠陥で発生した二次電子線rのエネルギーのピーク位置を比較することで、欠陥の深さを検出することが可能となる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。