特許第6117628号(P6117628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117628
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】制御装置および牽引車ならびに制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 53/08 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   B62D53/08 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-124039(P2013-124039)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-240254(P2014-240254A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−331972(JP,A)
【文献】 特開平6−144303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 53/06 − 53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車に被牽引車を連結する際に、被牽引車の連結部と結合されるカプラを有し、前記牽引車の直進進行方向に沿って前記カプラの位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結牽引装置を備えた連結車の制御装置において、
前記牽引車に前記被牽引車が連結された状態で、
前記牽引車の車軸にかかる軸重が所定の値を超えているか否かを判定し、前記軸重が所定の値を超えているときには、前記被牽引車を走行不能に制御し、前記軸重が所定の値以下であるときには、前記カプラの現在の位置における前記牽引車と前記被牽引車との間の相対位置関係が前記被牽引車の車種毎に定められる所定の条件を満たしているか否かを判定し、前記所定の条件が満たされているときには、前記牽引車および前記被牽引車を共に走行可能に制御し、前記所定の条件が満たされていないときには、前記牽引車を車速制限付で走行可能に制御すると共に前記被牽引車を走行可能に制御する制御手段を有する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の制御装置において、
前記所定の条件が満たされていないときには、前記所定の条件を示す個々の項目毎に、個々の条件が満たされているか否かを表示する表示手段を有する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の制御装置を有することを特徴とする牽引車。
【請求項4】
牽引車に被牽引車を連結する際に、被牽引車の連結部が結合されるカプラを有し、前記牽引車の直進進行方向に沿って前記カプラの位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結牽引装置を備えた連結車の制御装置が実行する制御方法において、
前記牽引車に前記被牽引車が連結された状態で、
前記牽引車の車軸にかかる軸重が所定の値を超えているか否かを判定し、前記軸重が所定の値を超えているときには、前記被牽引車を走行不能に制御し、前記軸重が所定の値以下であるときには、前記カプラの現在の位置における前記牽引車と前記被牽引車との間の相対位置関係が前記被牽引車の車種毎に定められる所定の条件を満たしているか否かを判定し、前記所定の条件が満たされているときには、前記牽引車および前記被牽引車を共に走行可能に制御し、前記所定の条件が満たされていないときには、前記牽引車を車速制限付で走行可能に制御すると共に前記被牽引車を走行可能に制御する制御ステップを有する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
請求項4記載の制御方法において、
前記所定の条件が満たされていないときには、前記所定の条件を示す個々の項目毎に、個々の条件が満たされているか否かを表示する表示ステップを有する、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および牽引車ならびに制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牽引車のカプラに被牽引車の連結部としてのキングピンが挿入(すなわち、結合)されて牽引車と被牽引車とが連結される。このとき、牽引車上のカプラの位置を牽引車の直進進行方向(すなわち、前後方向)に沿って変更可能なスライド型連結牽引装置を備えた牽引車がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなスライド型連結牽引装置を利用することにより、1つの牽引車が牽引することができる被牽引車の構造の制限に対する自由度が大きくなる。したがって、1つの牽引車に多種類の被牽引車を繋ぎ替えて牽引することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−162663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したスライド型連結牽引装置は、被牽引車の車種毎にカプラの位置が様々に決められている。牽引車の運転手または運転助手は、被牽引車の車種毎に決められているカプラの位置を被牽引車の車種に合わせて設定する必要がある。このとき、誤って被牽引車の車種に適合しないカプラの位置が設定されると、牽引車が旋回する際に、被牽引車の前方の角が牽引車の運転室の後部に当る、または、牽引車がピッチングする際のピッチング許容範囲が狭くなる、等の不都合が生じる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、多種類の被牽引車に対して適切なカプラ位置を設定することができる制御装置および牽引車ならびに制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の観点は、制御装置としての観点である。本発明は、牽引車に被牽引車を連結する際に、被牽引車の連結部が結合されるカプラを有し、牽引車の直進進行方向に沿ってカプラの位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結牽引装置を備えた連結車の制御装置において、牽引車に被牽引車が連結された状態で、牽引車の車軸にかかる軸重が所定の値を超えているか否かを判定し、軸重が所定の値を超えているときには、被牽引車を走行不能に制御し、軸重が所定の値以下であるときには、カプラの現在の位置における牽引車と被牽引車との間の相対位置関係が被牽引車の車種毎に定められる所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件が満たされているときには、牽引車および被牽引車を共に走行可能に制御し、所定の条件が満たされていないときには、牽引車を車速制限付で走行可能に制御すると共に被牽引車を走行可能に制御する制御手段を有するものである。
【0008】
さらに、本発明の制御装置は、所定の条件が満たされていないときには、所定の条件を示す個々の項目毎に、個々の条件が満たされているか否かを表示する表示手段を有することができる。
【0009】
本発明の第二の観点は、本発明の制御装置を有することを特徴とする牽引車である。
【0010】
本発明の第三の観点は、制御方法としての観点である。本発明は、牽引車に被牽引車を連結する際に、被牽引車の連結部が結合されるカプラを有し、牽引車の直進進行方向に沿ってカプラの位置を変更可能な位置調整手段を有するスライド型連結牽引装置を備えた連結車の制御装置が実行する制御方法において、牽引車に被牽引車が連結された状態で、牽引車の車軸にかかる軸重が所定の値を超えているか否かを判定し、軸重が所定の値を超えているときには、被牽引車を走行不能に制御し、軸重が所定の値以下であるときには、カプラの現在の位置における牽引車と被牽引車との間の相対位置関係が被牽引車の車種毎に定められる所定の条件を満たしているか否かを判定し、所定の条件が満たされているときには、牽引車および被牽引車を共に走行可能に制御し、所定の条件が満たされていないときには、牽引車を車速制限付で走行可能に制御すると共に被牽引車を走行可能に制御する制御ステップを有するものである。
【0011】
さらに、本発明の制御方法は、所定の条件が満たされていないときには、所定の条件を示す個々の項目毎に、個々の条件が満たされているか否かを表示する表示ステップを有することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多種類の被牽引車に対して適切なカプラ位置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る連結車の全体構成図である。
図2図1の牽引車の全体構成図である。
図3図2の制御装置および表示部のブロック構成図である。
図4図3の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図5図3の表示部のうちモニタ部の表示例を示す図である。
図6図3の表示部のうちモニタ部の図5とは異なる表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る連結車1は、図1に示すように、牽引車2と被牽引車3が連結されている。牽引車2に被牽引車3を連結する際に、被牽引車3の連結部としてのキングピン(不図示)が挿入されるカプラ4を有する。
【0015】
カプラ4は、図2に示すように、牽引車2の直進進行方向に沿う方向(図中、左右方向で、以下では前後方向という。)に沿って位置を変更可能な位置調整機構5の上に設置される。カプラ4は、少なくとも牽引車2のピッチング方向に所定の角度の範囲内で自由に動くように位置調整機構5上に設置される。カプラ4および位置調整機構5は、図2の上部の破線枠内に抜き出して図示するように、スライド型連結牽引装置6を構成する。なお、図2の上部の破線枠内のスライド型連結牽引装置6は、上部構造を説明するために、90度だけ転換した形で、その上面構造図を示す。スライド型連結牽引装置6によれば、カプラ4の位置が変更可能であるので、被牽引車3の様々な車種に対応が可能である。
【0016】
スライド型連結牽引装置6は、図2の上部の破線枠内の上面構造図に示すように、平面的な位置調整機構5の上に設けられた一対のレール7に沿って、カプラ4が牽引車2の前後方向に、所定の範囲でスライドできるように構成されている。カプラ4は、図外の被牽引車3の連結部としてのキングピンが挿入される。そして、カプラ4には、そのスライド位置を固定するための機構が設けられている。これはカプラ4側に設けられた一対のロック部8が空気圧シリンダ9によりその外方向に突出し、前後方向の適当な位置でレール7の凸凹に嵌合する機構に形成されている。
【0017】
空気圧シリンダ9は、図2の上部の破線枠内の上面構造図でみると、カプラ4の裏面に配置されている。これは上から見えない位置にあるので、本来破線で描くところであるが、図2では説明を分かり易くするためにこれを破線ではなく実線により描いてある。この空気圧シリンダ9には、不図示のエアーバルブを介して不図示のエアタンクから空気圧が送られる。空気圧シリンダ9に空気圧が送られると、ロック部8がレール7から外れ、カプラ4は、レール7に沿ってスライドが可能になる。一方、空気圧シリンダ9の空気圧がなくなると図外のスプリング力により、ロック部8は、レール7に噛み合い、カプラ4は、レール7上に固定される。なお、スライド型連結牽引装置6は、一般的に広く知られているものであり、図2に例示したもの以外の構造であってもよい。
【0018】
ホース12は、牽引車2に連結される被牽引車3にブレーキ用空気圧を送るための管路である。ホース12は牽引車2と被牽引車3との相互位置の変化があっても、その接続に支障を来たさないように十分な長さが設けてある。このブレーキ用空気圧はエアーバルブ13により制御される。ホース12と平行して、あるいはホース12に巻きつけられて、複数の電気信号線が牽引車2と被牽引車3との間に接続される。この電気信号線には、従来から利用されている被牽引車3のテール・ランプや方向指示ランプの回路のための信号のほか、各種の信号が伝送される。
【0019】
牽引車2は、制御装置14と制御装置14の出力情報を表示する表示部15とを有する。制御装置14と表示部15を図3を参照しながら説明する。制御装置14は、図3に示すように、車種別カプラ位置記憶部16を有する。車種別カプラ位置記憶部16は、被牽引車3の車種別に、カプラ4の適正な位置の情報を記憶する。なお、車種別カプラ位置記憶部16への情報の記憶は、牽引車2の製造メーカ側で、牽引車2の出荷前に行ってもよいし、牽引車2の出荷後に、牽引車2を購入したユーザ側で行ってもよい。
【0020】
表示部15は、画像情報が表示されるモニタ部15aと、警報ブザー15bと、警報ランプ15cとを有する。モニタ部15aは、牽引車2に被牽引車3が連結されたときに、未だ、被牽引車3の車種情報が未入力である場合に「トレーラ不明」と画像情報を表示する。または、モニタ部15aは、牽引車2に被牽引車3が連結されて車種情報が入力されたが、その車種情報が車種別カプラ位置記憶部16に記憶されていない場合に「トレーラ不明」と画像情報を表示する。さらに、モニタ部15aは、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角のそれぞれについて、適正な値の範囲内であるか否かを画像情報として表示する。なお、画像情報の表示の具体例については後述する。
【0021】
警報ブザー15bは、牽引車2に被牽引車3が連結されたことによる牽引車2の車軸にかかる軸重が適正値でない場合に鳴動する。たとえば、牽引車2の前後輪の車軸にかかる軸重の総和が規定値を超えている場合、あるいは、牽引車2の前後輪の車軸にかかる軸重の総和は規定値を超えていなくても牽引車2の前輪または後輪のいずれか一方に軸重が偏り、前輪または後輪にかかる軸重が規定値を超えている場合は、牽引車2の車軸にかかる軸重が適正値でないとして鳴動する。
【0022】
警報ランプ15cは、牽引車2に被牽引車3が連結されたときに、未だ、被牽引車3の車種情報が未入力である場合に点滅する。または、警報ランプ15cは、牽引車2に被牽引車3が連結されて車種情報が入力されたが、その車種情報が車種別カプラ位置記憶部16に記憶されていない場合に点滅する。さらに、警報ランプ15cは、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角のいずれかが適正な値の範囲外である場合に点滅する。
【0023】
被牽引車3の車種に適合する位置にカプラ4が位置すると、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角が適正な値の範囲内になる。一方、被牽引車3の車種に不適合な位置にカプラ4が位置すると、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角のいずれかまたは全てが適正な値の範囲外になる。
【0024】
ここで、用語の説明として、被牽引車3の前回り半径とは、被牽引車3の牽引車2に連結される側を前と定義したとき、カプラ4の中心から被牽引車3の前の角までの距離を半径とする水平面上の円の半径を前回り半径という。また、被牽引車3の前の反対側を後ろと定義したとき、カプラ4の中心から被牽引車3の後ろの角までの距離を半径とする水平面上の円の半径を裾回り半径という。また、直進状態にあるときに、牽引車2の前部から被牽引車3の後部までの距離を連結全長という。また、直進状態にあり、被牽引車3は水平を保ったままの状態で牽引車2がピッチングを起した際に、被牽引車3の前部の下縁が牽引車2に接触しない限界の角度をピッチング角という。
【0025】
ここで、前回り半径については、連結車1が旋回する際の舵角の最大値に影響を及ぼす。すなわち、前回り半径が不適切であると、連結車1に通常許容される最大の舵角となる以前に、被牽引車3の前の角が牽引車2に接触してしまい、通常許容される最大の舵角での旋回操作が出来なくなる。よって、前回り半径については、適正であることが特に重要である。同様に、ピッチング角については、牽引車2のピッチング角の最大値に影響を及ぼす。すなわち、ピッチング角が不適切であると、連結車1に通常許容される最大のピッチング角となる以前に、被牽引車3の前部の下縁が牽引車2に接触してしまい、通常許容される最大のピッチング角での走行が出来なくなる。よって、ピッチング角については、適正であることが特に重要である。
【0026】
そこで、制御装置14は、牽引車2に被牽引車3が連結されると、まず、牽引車2の前後輪の車軸にかかる軸重をそれぞれ検出し、いずれの車軸の軸重も適正値である場合、つぎに、連結された被牽引車3の車種に対してカプラ4の位置が適性であるか否かを上述した被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角についてそれぞれ判定する。
【0027】
たとえば、被牽引車3の車種情報によって、被牽引車3のキングピンの位置(すなわち、カプラ4の位置)を中心とする前回り半径および裾回り半径が判明する。この前回り半径と予めわかっている牽引車2のカプラ4の位置から運転室の後部外壁までの距離とをデータ上で比較することで、前回り半径に対するカプラ4の位置の正当性が確認できる。また、同時に、ピッチング角に対するカプラ4の位置の正当性についても確認できる。さらに、裾回り半径に対するカプラ4の位置の正当性についても確認できる。
【0028】
また、被牽引車3の車種情報によって、被牽引車3の全長が判明する。この被牽引車3の全長と予めわかっている牽引車2の全長およびカプラ4の位置から連結全長の正当性が確認できる。
【0029】
なお、被牽引車3の車種情報については、連結車1の運転手などが制御装置14にキーボード(不図示)などにより入力する。このとき表示部15には、被牽引車3の車種情報が入力されていない時点では、たとえば「トレーラ不明」などと表示される。また、被牽引車3の車種情報が入力されたが、入力された車種情報が車種別カプラ位置記憶部16に予め記憶されている情報と一致しないときにも表示部15には、「トレーラ不明」と表示される。
【0030】
このとき、不適正であれば、どこが不適正であるのかを報知するために、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角の各項目についてそれぞれ表示する。さらに、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角のいずれかが不適正であっても牽引車2の車軸にかかる軸重が適正値である場合には、制御装置14は、要求に応じて車速制限付きでの走行を可能に制御する。これにより公道での通常走行はできないものの運輸会社の敷地内等における駐車位置の変更は可能になる。
【0031】
次に、制御装置14の動作を図4のフローチャートを参照しながら説明する。図4のフローチャートにおけるSTARTの条件は、牽引車2に被牽引車3が連結を完了したという条件である。なお、図4のSTARTからENDまでのフローは、1周期分であり、フローがENDまで進んだときに、STARTの条件が満たされていれば、フローは、再び実行される。
【0032】
ステップS1において、制御装置14に対し、車種情報が入力され、制御装置14がカプラ4の位置情報を取得すると、フローは、ステップS2に進む。なお、車種情報の入力は、運転者等の作業者が制御装置14に接続されたキーボードなどによって行う。また、カプラ4の位置情報は、たとえば、位置調整機構5に取り付けられた不図示のセンサによって、制御装置14に伝達される。
【0033】
ステップS2において、制御装置14は、牽引車2に被牽引車3が連結されたことによる牽引車2の車軸にかかる軸重が適正値であるか否かを判定する。ステップS2において、軸重が適正であると判定されると、フローは、ステップS3に進む。一方、ステップS2において、軸重が不適正であると判定されると、フローは、ステップS5に進む。なお、上述の牽引車2の車軸にかかる軸重の情報については、たとえば、牽引車2がエアサスペンションを搭載している場合、牽引車2に被牽引車3を連結する以前と以後におけるエアサスペンションの空気圧の変化を検出することにより取得することができる。
【0034】
ステップS3において、制御装置14は、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角の全項目が適正な値の範囲内にあるか否かを判定する。ステップS3において、上述の全項目が適正な値の範囲内にあると判定されると、フローは、ステップS4に進む。一方、ステップS3において、上述のいずれかが適正な値の範囲外であると判定されると、フローは、ステップS7に進む。
【0035】
ステップS4において、制御装置14は、通常走行可能制御指示として、不図示のエンジンECU(Electric Control Unit)およびブレーキECUに、通常どおりに走行可能となるように制御指示を行って1周期分のフローを終了する(END)。
【0036】
ステップS5において、制御装置14は、走行不能制御指示として、被牽引車3の車輪にロックをかける。具体的には、制御装置14は、牽引車2のブレーキECUに対し、被牽引車3の車輪のブレーキを利かせるように指示を出す。ブレーキECUは、この指示を受け付けると、牽引車2側にある不図示のエアタンク内の空気圧を、ホース12を介して被牽引車3のブレーキアクチュエータ(不図示)に供給する。ステップS5において、処理が完了すると、フローは、ステップS6に進む。
【0037】
ステップS6において、制御装置14は、警報ブザー15bを鳴動させると共に、警報ランプ15cを点灯させて、フローは、1周期分の処理を終了する(END)。
【0038】
ステップS7において、制御装置14は、走行不能制御指示として、ブレーキECUに対し、被牽引車3の車輪のロックを指示する。ステップS7において、処理が完了すると、フローは、ステップS8に進む。
【0039】
ステップS8において、制御装置14は、警報ランプ15cを点滅させると共に、モニタ部15aに画像情報を表示する。このとき、モニタ部15aは、被牽引車3の前回り半径、裾回り半径、連結全長、およびピッチング角のそれぞれについて、適正な値の範囲外である項目を表示する。この他に、モニタ部15aは、入力された車種情報が車種別カプラ位置記憶部16に記憶されていない場合に「トレーラ不明」と画像情報を表示する。ステップS8において、処理が完了すると、フローは、ステップS9に進む。
【0040】
ステップS9において、制御装置14は、不図示の緊急移動モードスイッチがON状態であるか否かを判定する。ステップS8において、緊急移動モードスイッチがON状態であると判定されると、フローは、ステップS10に進む。一方、ステップS9において、緊急移動モードスイッチがOFF状態であると判定されると、フローは、1周期分の処理を終了する(END)。
【0041】
ステップS10において、制御装置14は、車速制限付走行可能制御指示として、エンジンECUに対し、エンジン回転速度に上限を設けた走行可能制御指示を行う。ステップS10において、処理が完了すると、フローは、ステップS11に進む。
【0042】
ステップS11において、制御装置14は、走行可能制御指示として、ブレーキECUに対して被牽引車3の車輪のロックを解除する指示を行う。ステップS11において、処理が完了すると1周期分のフローを終了する(END)。
【0043】
これにより、牽引車2の車軸の軸重が適正値を超えているときには、被牽引車3の車輪をロックすることで、誤って連結車1を走行させることを防ぐことができる。たとえば、牽引車2の前後輪の車軸にかかる軸重の総和が規定値を超えている場合、あるいは、牽引車2の前後輪の車軸にかかる軸重の総和は規定値を超えていなくても牽引車2の前輪または後輪のいずれか一方に軸重が偏り、前輪または後輪にかかる軸重が規定値を超えている場合は、被牽引車3の車輪をロックする。
【0044】
その一方で、牽引車2の車軸の軸重が適正値であれば、牽引車2と被牽引車3との位置関係に問題があっても車速制限付きながら連結車1の走行を可能とする。これによれば、カプラ4の位置調整を、連結車1を適切な場所に移動させてから行うことができる。
【0045】
また、項目別に適正値であるか否かを表示することができる。これによれば、たとえば、前回り半径およびピッチング角がNGであるが、連結全長がOKである場合、カプラ4をさらに後退させる余裕があることがわかる。反対に、前回り半径およびピッチング角がOKであるが、連結全長がNGである場合、カプラ4をさらに前進させる余裕があることがわかる。このようにして、カプラ4の位置を被牽引車3の車種毎に適切な位置に設定することができる。
【0046】
なお、上述のフローのステップS2において、「No」と判定された場合には、運転者等の作業者は、位置調整機構5の再調整を実行する。一般的に、牽引車2の後輪に被牽引車3の荷重が偏り過ぎていることが原因で、牽引車2の後輪にかかる軸重が適正値を超えている場合が多い。そこで、作業者は、カプラ4の位置を牽引車2の前方(すなわち運転室方向)に移動させる。これにより、牽引車2の後輪に偏っていた軸重が前輪にも分配される。これによれば、牽引車2の車軸にかかる軸重を前後輪で均等化し、車軸にかかる軸重を適正値とすることができる。この際、被牽引車3の車輪についてはロックされているが、牽引車2は通常走行可能なので、位置調整機構5のロック部8を解除し、牽引車2を前後方向に微動させることで、カプラ4の位置を変更することができる。
【0047】
また、上述のフローのステップS3において、「No」と判定された場合にも、ステップS2において、「No」と判定された場合と同様に、運転者等の作業者は、位置調整機構5の再調整を実行する。さらに、ステップS3において、「No」と判定された場合には、ステップS2においては「Yes」と判定されている。したがって、直進走行やピッチングの小さい路面での走行については問題がない。そこで、ステップS3において、「No」と判定された場合には、車速制限付で走行を可能にしている。これによれば、連結車1の移動が可能になるので、たとえば、別の場所に連結車1を移動させて位置調整機構5の再調整を行うことができる。
【0048】
モニタ部15aの表示例を図5および図6を参照しながら説明する。図5の例は、「トレーラ不明」と画像情報が表示された例である。たとえば、「トレーラ不明」の文字色は、赤色や黄色等の目立つ色とし、文字を点滅させてもよい。
【0049】
図6の例は、「前回り半径」、「裾回り半径」、「連結全長」、「ピッチング角」のそれぞれの項目について、「OK」または「NG」が画面の右側に表示される例である。図6の例の他にも、たとえば、「OK」、「NG」と直接表示するのではなく、各項目について「OK」の場合と「NG」の場合とで、それぞれ文字色を変えてもよい。あるいは、各項目について「NG」の場合は、文字を点滅させるなどとしてもよい。さらに、各項目について「NG」の場合は、文字色をかえつつ点滅させるなどとしてもよい。
【0050】
なお、表示部15の表示例は、その他にも様々に変更してよい。たとえば、モニタ部15aが警報ランプ15cに相当する画像情報を表示するようにして、警報ランプ15cを省略してもよい。あるいは、モニタ部15aがスピーカを有するタイプであれば、警報ブザー15bを省略し、警報ブザー15bの機能をモニタ部15aのスピーカによって代行することができる。これによれば、表示部15をモニタ部15aのみとすることができる。
【0051】
また、制御装置14と表示部15との間を無線通信によって接続してもよい。これによれば、連結車1から離れた場所で、表示部15の表示を確認することができる。
【0052】
また、表示部15に不図示の車種情報の入力機能(キーボード等)を備えるようにしてもよい。
【0053】
また、車種情報の入力は、運転者等の作業者が手動で行うのではなく、被牽引車3に貼付されたバーコードまたはQRコードもしくはICタグ等の読み取りによって行うようにしてもよい。この場合、制御装置14の側にバーコードまたはQRコードもしくはICタグ等の読み取り機能を備えることとする。
【0054】
また、制御装置14は、情報処理装置が予めインストールされている所定のプログラムを実行することによって実現することができる。このような情報処理装置は、たとえば、メモリ、CPU(Central Processing Unit)、入出力ポートなどを有する。情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、情報処理装置には、制御装置14の機能が実現される。なお、CPUの代わりにASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてもよい。
【0055】
また、上述の所定のプログラムは、制御装置14の出荷前に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、制御装置14の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、プログラムの一部が、制御装置14の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。制御装置14の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されるプログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0056】
また、上述の所定のプログラムは、情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0057】
このように、情報処理装置とプログラムによって制御装置14を実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
【0058】
なお、情報処理装置が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…連結車、2…牽引車、3…被牽引車、4…カプラ、5…位置調整機構(位置調整手段)、6…スライド型連結牽引装置、14…制御装置、15…表示部(表示手段)
図1
図2
図3
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図5
図6