(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1貼付壁の基端部には、第1貼付壁の表面から突出する第1凸部が形成され、前記第2貼付壁の基端部には、第2貼付壁の表面から突出する第2凸部が形成されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の入隅材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について図面を参照しつつ説明する。
なお、本明細書において、第1、第2という序数詞を用語に付加する場合があるが、この序数詞は、用語を区別するために用いられているものであって、順序や優劣などの特別な意味を有さない。
本明細書において、「PPP〜QQQ」という記載は、「PPP以上QQQ以下」を意味する。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の入隅材は、建築物の入隅部における第1構造面と第2構造面に跨がって取り付けられる建築用部材である。
図1及び
図2において、入隅材10は、全体として一方向に延びる長尺状である。前記長尺状は、一方向における長さが他方向(一方向と直交する方向)における長さよりも十分に長い形状をいう。前記長尺状の入隅材10は、例えば、その一方向における長さが50cm以上であり、好ましくは100cm以上である。長尺状の入隅材10は、施工に際して適切な長さに切断して使用される。
前記入隅材10は、外壁3と、建築物の入隅部の第1構造面に貼り付けられる第1貼付壁1と、入隅部の第2構造面に貼り付けられる第2貼付壁2と、を有する可撓性の本体を有し、前記本体の内部には、支持脚4が設けられている。第1貼付壁1の先端部11と支持脚4との間、及び、第2貼付壁2の先端部12と支持脚4との間に、それぞれ溝51,52が設けられている。
なお、入隅材10は一方向に延びる長尺状であるため、前記外壁3、第1貼付壁1、第2貼付壁2、支持脚4及び溝51,52も同様に、それぞれ一方向に延びている。従って、前記入隅材10は、長手方向の何れの箇所で切断しても同じ断面形状であり、その断面形状は、
図2に示す平面形状と同じである。
【0012】
前記本体は、可撓性を有する材料から形成されている。ここで、可撓性は、作業者の人力で容易に湾曲させることができる程度に柔軟な性質をいう。前記本体が可撓性を有することによって、前記本体を長手方向に撓ませつつ、
図2の矢印X又はY方向に曲げ、入隅材10を入隅部に沿わせることができ、事前に加熱加工等の処理を行わなくとも入隅材10を入隅部に密着させて取り付けることができる。好ましくは、前記本体は、矢印X又はY方向に湾曲させた後、力を解除すると元の状態にほぼ復帰する弾性を有する。前記本体がこのような弾性を有することによって、矢印X又はY方向の形状が安定するので、入隅材10を入隅部に接着する作業が容易になる。
例えば、前記本体の硬度は、40〜90であり、好ましくは、45〜85であり、より好ましくは50〜80である。前記硬度が小さすぎると、入隅材10を取り扱い難くなり、硬度が大きすぎると、入隅部の角度に応じて入隅材10が変形し難くなるおそれがある。ただし、前記硬度は、JIS K 6253に準じて、デュロメータタイプAによって測定される値をいう。
【0013】
前記本体は、可撓性を有していればその材質は特に限定されない。例えば、前記本体は、エラストマー、ゴムなどを用いて形成される。
前記エラストマーとしては、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0014】
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン−ポリブチレン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)などのスチレン−ブタジエン系共重合体;ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)などのスチレン−イソプレン共重合体;ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)(SEP)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレン(SEEPS)などのスチレン−プロピレン系共重合体;などが挙げられる。前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとして、市販品を用いてもよく、その市販品としては、例えば、(株)クラレ製の商品名「セプトン」、三菱化学(株)製の商品名「ラバロン」などが挙げられる。
【0015】
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体などが挙げられる。前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとして、市販品を用いてもよく、その市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の商品名「サーモラン」、三井化学(株)製の商品名「ミラストマー」などが挙げられる。
【0016】
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントがポリエチレンテレフタレート、プリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレートなどから選ばれる少なくとも1種からなり、且つ、ソフトセグメントが脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリエーテルから選ばれる少なくとも1種からなるものなどが挙げられる。前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、市販品を用いてもよく、その市販品としては、例えば、東レ(株)製の商品名「ハイトレル」、東洋紡(株)製の商品名「ペルプレン」などが挙げられる。
【0017】
前記ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントが高分子量ポリ塩化ビニルからなり、且つ、ソフトセグメントが可塑化ポリ塩化ビニル(可塑剤で可塑化されたPVC)からなるもの;ハードセグメントが部分架橋又は分岐構造を導入したポリ塩化ビニルからなり、且つ、ソフトセグメントが可塑化ポリ塩化ビニルからなるもの;などが挙げられる。
【0018】
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、トリレンジイソシアネート−ポリエステル系ポリオール共重合体、トリレンジイソシアネート−ポリエーテル系ポリオール共重合体、トリレンジイソシアネート−カプロラクトン系ポリオール共重合体、トリレンジイソシアネート−ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート−ポリエステル系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート−ポリエーテル系ポリオール共重合体などが挙げられる。前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとして、市販品を用いてもよく、その市販品としては、例えば、日本ミラクトラン(株)製の商品名「ミラクトラン」などが挙げられる。
【0019】
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、ハードセグメントがナイロン12などのポリアミドからなり、且つ、ソフトセグメントがポリエーテルからなるものなどが挙げられる。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとして、市販品を用いてもよく、その市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の商品などが挙げられる。
前記ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などが挙げられる。
本実施形態では、支持脚4は、本体と一体的に形成されている。従って、支持脚4も本体と同じ材料から形成され、本体と同様な可撓性を有する。
前記長尺状の入隅材10は、前記エラストマーなどを耐圧金型から押し出し成形することにより得ることができる。
【0020】
前記第1貼付壁1は、前記外壁3の第1側端部31から延設されており、外壁3に対して鋭角状に延びている。前記第2貼付壁2は、前記外壁3の第2側端部32から延設されており、外壁3に対して鋭角状に延設されている。
第1貼付壁1と第2貼付壁2は、互いの先端部11,21が向かい合うように延設されているが、第1貼付壁1の先端部11と第2貼付壁2の先端部21は、離反されている。前記第1貼付壁1の先端部11と第2貼付壁2の先端部21との間に、溝51,52を介在させて支持脚4が設けられている。
具体的には、外壁3の表面は、内側へと凹んだ円弧面とされている。外壁3の幅W3は、特に限定されないが、例えば、8mm〜30mmであり、好ましくは、10mm〜25mmである。前記外壁3の幅W3は、
図2の平面図で見て、外壁3の第1側端部31と第2側端部32を結んだ直線長さである。なお、第1貼付壁1及び第2貼付壁2の表面から第1凸部71及び第2凸部72(これらの詳細は後述する)が突設されている本実施形態にあっては、前記外壁3の第1側端部31は、外壁3の表面と第1貼付壁1の仮想延長面とが交差する部分で、外壁3の第2側端部32は、外壁3の表面と第2貼付壁2の仮想延長面とが交差する部分に相当する。
【0021】
第1貼付壁1の基端部は、外壁3の第1側端部31に一体化されている。第1貼付壁1は、その表面が外壁3の表面に対して鋭角を成すように、前記第1側端部31から延設されている。延設端である第1貼付壁1の先端部11は、支持脚4とは独立した自由端部とされている。第2貼付壁2の基端部は、外壁3の第2側端部32に一体化されている。第2貼付壁2は、その表面が外壁3の表面に対して鋭角を成すように、第2側端部32から延設されている。延設端である第2貼付壁2の先端部21は、支持脚4とは独立した自由端部とされている。前記鋭角は、第1貼付壁1の表面又は第2貼付壁2の表面と外壁3の表面との成す角が鋭角という意味である。なお、本実施形態のように、外壁3の表面が円弧面である場合には、鋭角の基準となる外壁3の表面は、外壁3の第1側端部31と第2側端部32を含む平面を意味するものとする。前記鋭角は、好ましくは、40度〜50度であり、より好ましくは、42.5度〜47.5度であり、特に好ましくは、ほぼ45度である。
【0022】
第1貼付壁1の表面及び第2貼付壁2の表面は、いずれも平坦状である。前記第1貼付壁1及び第2貼付壁2は、第1貼付壁1の仮想延長面と第2貼付壁2の仮想延長面との成す角αが80度〜100度となるように設けられている。好ましくは、前記第1貼付壁1の仮想延長面と第2貼付壁2の仮想延長面との成す角αが、85度〜95度、より好ましくは、ほぼ90度となるように、前記第1貼付壁1及び第2貼付壁2が設けられている。前記第1貼付壁1の仮想延長面は、第1貼付壁1の表面を含む平面を、第2貼付壁2の仮想延長面は、第2貼付壁2の表面を含む平面をそれぞれ意味する。
【0023】
第1貼付壁1の先端部11と支持脚4との間には、溝51(以下、これらの間の溝を第1溝という)が設けられ、第2貼付壁2の先端部21と支持脚4との間には、溝52(以下、これらの間の溝を第2溝という)が設けられている。この第1溝51及び第2溝52は、外壁3の方向に延在している。前記第1溝51は、外壁3の方向に延びる2つの向かい合う内壁面51a,51bによって形成されている。本実施形態では、2つの内壁面51a,51bは、外壁3に向かうに従って互いに近づくように形成されている。前記第2溝52は、外壁3の方向に延びる2つの向かい合う内壁面52a,52bによって形成されている。本実施形態では、2つの内壁面52a,52bは、外壁3に向かうに従って互いに近づくように形成されている。なお、前記内壁面51b及び内壁面52bは、軸部41を形成する壁面でもある。第1溝51及び第2溝52を設けることにより、前記本体が曲がり易くなるので、入隅材10を入隅部に沿わせて密着させて取り付ける作業が容易になる。また、第1溝51及び第2溝52が本体の左右に配置されているので、本体の左右において各々独立して本体を曲げることができ、左右不均一な入隅部にも本発明の入隅材10を良好に取り付けることができる。
【0024】
第1溝51及び第2溝52の開口幅W51,W52は、特に限定されないが、それぞれ独立して、例えば、1mm〜5mmであり、好ましくは、2mm〜4mmである。前記溝51,52の開口幅W51,W52が小さすぎると入隅材10を曲げ難くなり、他方、前記溝51,52の開口幅W51,52が大きすぎると、相対的に第1貼付壁1及び第2貼付壁2の面積が小さくなり、入隅材10の取付け安定性が悪くなるおそれがある。ただし、前記第1溝51の開口幅W51は、第1貼付壁1の先端部11と支持脚4の第1面421の端部との間の長さであり、前記第2溝52の開口幅W52は、第2貼付壁2の先端部21と支持脚4の第2面422の端部との間の長さである。
【0025】
支持脚4は、第1貼付壁1と第2貼付壁2の向かい合った先端部11,21間に配置され、本体の中央部から外壁3の表面とは反対側に突設されている。
支持脚4は、本体に繋がる軸部41と、軸部41の先端に設けられた接地部42と、からなる。支持脚4の軸部41は、外壁3の幅方向中央部に対応して配置され、外壁3の表面に対して略直交するように延設されている。好ましくは、軸部41の軸芯Lが外壁3の幅方向中央点に一致するように軸部41が設けられている。接地部42は、軸部41よりも幅広とされ、平面視略台形状に形成されている。接地部42の表面は、第1貼付壁1の仮想延長面上に存在する第1面421と、第2貼付壁2の仮想延長面上に存在する第2面422と、第1面421と第2面422の間に存在し、且つ両面421,422に対して鈍角を成す第3面423と、を有する。第1面421、第2面422及び第3面423は、平坦状とされている。前記支持脚4は、入隅材10を入隅部に取り付ける際に、入隅部に第1面421及び第2面422を当接させることができ、入隅材10の位置合わせをより正確に行うことが可能となる。
【0026】
支持脚4の接地部42の幅W42は、特に限定されないが、例えば、1mm〜3mmであり、好ましくは、1.5mm〜2.5mmである。前記接地部42の幅W42が小さすぎると、施工時に入隅材10を入隅部に押し付けた際に、接地部42が変形して入隅材10の装着位置がずれるおそれがあり、他方、前記接地部42の幅W42が大きすぎると、相対的に第1貼付壁1及び第2貼付壁2の面積が小さくなり、入隅材10の取付け安定性が悪くなるおそれがある。
また、支持脚4の軸部41の幅W41は、特に限定されないが、例えば、0.8mm〜3mmであり、好ましくは、1mm〜2.5mmである。前記軸部41の幅W41が小さすぎると、施工時に入隅材10を入隅部に押し付けた際に、軸部41が折れ曲がり入隅材10の取付け位置がずれるおそれがあり、他方、前記軸部41の幅W41が大きすぎると、相対的に溝51,52が狭くなり、入隅材10を曲げ難くなるおそれがある。ただし、前記接地部42の幅W42及び軸部41の幅W41は、軸部41の軸芯方向から接地部42及び軸部41を見たときの幅である。図示例では、前記接地部42の幅W42及び軸部41の幅W41は、軸芯方向で均等である。もっとも、接地部42及び軸部41は、軸芯方向において幅が異なっている部分を有してもよく、そのような部分を有する接地部42及び軸部41の前記幅W42及び幅W41は、最も小さい幅を意味するものとする。
【0027】
さらに、前記第1貼付壁1の基端部には、第1貼付壁1の表面から突出する第1凸部71が形成されている。また、前記第2貼付壁2の基端部には、第2貼付壁2の表面から突出する第2凸部72が形成されている。第1凸部71と第2凸部72を設けることにより、第1貼付壁1と第2貼付壁2に接着剤を塗布又は粘着テープを貼り付けて入隅材10を入隅部に取り付けた際に、外壁3の第1側端部31と第1構造面との間隙及び外壁3の第2側端部32と第2構造面との間隙を塞ぐことができる。よって、第1凸部71と第2凸部72は、接着剤や粘着テープの端部を隠蔽し、施工後の美観を向上させる効果を有する。
【0028】
前記第1凸部71は、第1貼付壁1の表面に対して鈍角を成して延びる第1辺と、外壁3の第1側端部31から第1貼付壁1の表面の延長面に対して略直交しつつ弧状に延びる第2辺と、から形作られた略三角形の部分である。第1凸部71の頂部は、第1辺と第2辺とが接合された部分である。同様に、前記第2凸部72は、第2貼付壁2の表面に対して鈍角を成して延びる第1辺と、外壁3の第2側端部32から第2貼付壁2の表面の延長面に対して略直交しつつ弧状に延びる第2辺と、から形作られた略三角形の部分である。第2凸部72の頂部は、第1辺と第2辺とが接合された部分である。第1凸部71及び第2凸部72の頂部は、円弧状でもよいが、角張った形状が好ましく、特に図示例のように尖った鋭角状に形成されていることがより好ましい。これらの頂部を角張った形状とすることにより、第1凸部71及び第2凸部72が第1構造面及び第2構造面に沿いやすくなり、接着剤や粘着テープの端部を隠蔽する作用が高くなる。特に、これらの頂部を尖った鋭角状とすることにより、貼付壁1,2に対する凸部71,72の占める面積割合を比較的小さくしても高い隠蔽性を確保でき、第1貼付壁1及び第2貼付壁2の接着面積を相対的に大きくすることができる。
前記第1凸部71及び第2凸部72の各突出高さH71,H72は、特に限定されないが、それぞれ独立して、例えば、0.1mm〜2mmであり、好ましくは0.3mm〜1.5mmである。第1凸部71及び第2凸部72の各突出高さH71,H72が小さすぎると、接着剤又は粘着テープを用いて入隅材10を入隅部に取り付けた際に、接着剤や粘着テープの端部を隠蔽する作用が低下するおそれがある。他方、第1凸部71及び第2凸部72の各突出高さH71,H72が大きすぎると、入隅材10を入隅部に取り付ける際、第1貼付壁1及び第2貼付壁2が第1構造面及び第2構造面に密着し難くなるおそれがある。
なお、図示例では、入隅材10の形状は、幅方向中央部で対称形とされている。
【0029】
上記構成からなる入隅材10は、可撓性を有し且つ溝51,52を有するため、
図2の矢印Xで示すように、第1貼付壁1の基端部と第2貼付壁2の基端部が外壁3の表面側に出るように第1貼付壁1及び第2貼付壁2を曲げること、及び、
図2の矢印Yで示すように、第1貼付壁1の基端部と第2貼付壁2の基端部が外壁3の表面とは反対側に出るように第1貼付壁1及び第2貼付壁2を曲げることができる。前記矢印X方向に第1貼付壁1及び第2貼付壁2を曲げると、第1貼付壁1の仮想延長面と第2貼付壁2の仮想延長面との成す角αが小さくなるので、鋭角を成している入隅部に第1貼付壁1の表面及び第2貼付壁2の表面を沿わせることができる。前記矢印Y方向に第1貼付壁1及び第2貼付壁2を曲げると、第1貼付壁1の仮想延長面と第2貼付壁2の仮想延長面との成す角αが大きくなるので、鈍角を成している入隅部に第1貼付壁1の表面及び第2貼付壁2の表面を沿わせることができる。
さらに、直角な部分、鋭角な部分及び鈍角な部分が無秩序に存在している入隅部であっても、入隅材10を部分的に、矢印X方向、或いは、矢印Y方向に適宜曲げることによって、入隅部全体に隙間なく入隅材10を沿わせることも可能となる。
【0030】
本発明の入隅材10は、建築物の入隅部に取り付けて使用される。
具体的には、入隅材10は、建築物の入隅部における第1構造面と第2構造面に跨がって取り付けられる。前記第1構造面と第2構造面は、略直角状に交わる壁面と壁面、壁面と床面、又は壁面と天井面などが挙げられる。本発明の入隅材10は、その第1貼付壁1及び第2貼付壁2が第1構造面及び第2構造面に沿って密着し、入隅部に対する封止性に優れ、入隅部全体に隅間無く沿わせることもできる上、支持脚4によって正確な位置合わせと高い密着性を確保できることから、浴室、キッチン、洗面室、トイレなどの防水性が求められる入隅部に好適に用いることができる。特に、高い防水性が求められる浴室の入隅部に、本発明の入隅材10を非常に好適に使用することができる。
前記入隅材10は、支持脚4を入隅部の角部に当てつつ、第1貼付壁1を第1構造面に貼り付け且つ第2貼付壁2を第2構造面に貼り付けることにより、入隅部に取り付けることができる。
第1貼付壁1及び第2貼付壁2の各構造面への貼り付け方法は、特に限定されないが、代表的には、接着剤若しくは粘着テープ又は接着剤及び粘着テープの双方を用いた接着が挙げられる。
【0031】
図3は、粘着テープ98を用いて入隅材10を入隅部9に貼り付けた建築物の要部を示す参考平面図である。
図3において、網掛け線を付した部分は、粘着テープ98を示す。
図3において、入隅部9は、例えば、角部93において略直角に交わる2つの壁面91,92から構成されている。この壁面91,92には、必要に応じて、化粧シート材、壁紙、化粧ボードなどの表装材94,95が取付けられていてもよい。図示のように、壁面91に表装材94が貼り付けられている場合、この表装材94の表面が第1構造面に相当し、壁面92に表装材95が貼り付けられている場合、この表装材95の表面が第2構造面に相当し、表装材94の表面と表装材95の表面の交点が角部に相当する。
入隅材10の第1貼付壁1の表面及び支持脚4の第1面421には、両面に粘着剤が設けられた粘着テープ98が貼り付けられ、この粘着テープ98を介して、第1貼付壁1及び支持脚4が第1構造面に接着されている。同様に、入隅材10の第2貼付壁2の表面及び支持脚4の第2面422には、両面に粘着剤が設けられた粘着テープ98が貼り付けられ、この粘着テープ98を介して、第2貼付壁2及び支持脚4が第2構造面に接着されている。前記第1凸部71及び第2凸部72の突出高さが、粘着テープ98の厚みよりも大きい場合、第1凸部71及び第2凸部72が、第1構造面及び第2構造面に押圧され、変形しつつ第1構造面及び第2構造面に密着する。このため、外壁3の第1側端部31と第1構造面との間及び外壁3の第2側端部32と第2構造面との間に間隙が生じなくなり、入隅材10を用いて入隅部9を良好に封止することができる。このとき、第1凸部71及び第2凸部72が、角張った形状の場合、その頂部に向かうほど押圧により変形しやすいため、第1凸部71及び第2凸部72が第1構造面及び第2構造面に確実に密着するようになる。このため、前記第1凸部71及び第2凸部72の突出高さが、粘着テープ98の厚みよりも大きい場合でも、第1構造面及び第2構造面に第1凸部71及び第2凸部72を確実に密着させることができる。
【0032】
ところで、入隅部9は、必ずしも直角とは限らず、第1構造面と第2構造面の成す角が90度よりも大きい角度(例えば、90度を超え95度以下のような鈍角)又は小さい角度(例えば、85度以上90度未満のような鋭角)となっていることがある。このような鈍角又は鋭角となった部分は、入隅部の長手方向全体に亘っていることもあり、或いは、入隅部の長手方向の一部分に存在していることもある。
この点、本発明の入隅材10は、第1貼付壁1及び第2貼付壁2の各先端部11,21が独立し、且つ、支持脚4との間にそれぞれ溝51,52が形成されているので、上述のように、入隅材10を、上記矢印X方向及び矢印Y方向に容易に曲げることができる。このため、鋭角又は鈍角を成す部分を有する入隅部9に対しても、第1貼付壁1及び第2貼付壁2を沿わせて入隅材10を貼り付けることができる。
【0033】
さらに、第1貼付壁1と第2貼付壁2の間には、支持脚4が突設されているので、入隅部に対する入隅材10の位置合わせも容易に行える。詳しくは、入隅材は、その外壁の中央部が入隅部の角部に向かい合うように位置合わせして取り付けると、入隅材が幅方向の何れかに偏った状態とならず、入隅材の施工後の外観が良好となる。しかし、可撓性の入隅材は、入隅部に押し付けた際に変形し、位置ずれを起こすおそれがある。この点、本発明の入隅材10は、外壁3の表面とは反対側に突出した支持脚4が設けられているので、支持脚4を入隅部の角部に当てつつ外壁3の表面を前記角部側に押圧することにより、入隅材10の位置決めを行うことができる。特に、軸部4が外壁3の表面に対して略直交するように延びているので、外壁3の表面を入隅部の角部側へ押圧した際に、支持脚4が折れ曲がり難く、前記位置決めを確実に行える。
前記曲げによる第1貼付壁1及び第2貼付壁2の第1構造面及び第2構造面への貼り付けが容易で且つ位置決めが容易に行える本発明の入隅材10は、熟練者でなくても入隅部に安定的に取り付けることができる。
【0034】
また、本発明の入隅材10は、第1貼付壁1及び第2貼付壁2の面積が比較的大きいので、入隅部に対する貼り付け面積が大きい。特に、前記入隅材10は、支持脚4の第1面421及び第2面422にも粘着テープを貼ることができるので、前記貼り付け面積をより大きくすることも可能である。
さらに、入隅材10の外壁3と入隅部の角部の間には、支持脚4が存在するので、施工後に入隅材10が凹んだり、撓んだりし難く、施工構造がより強固となる。
このように本発明の入隅材10は、容易に且つ安定的に入隅部に取り付けることができ、施工後には高い強度を維持できる。
【0035】
図4は、接着剤99を用いて入隅材10を入隅部に貼り付けた建築物の要部を示す参考平面図である。
図4において、無数のドットを付した部分は、接着剤99を示す。
接着剤99を用いて入隅材10を貼り付ける場合にも、粘着テープ98で貼り付ける場合と同様に、第1凸部71及び第2凸部72が変形することにより、前記間隙が生じず、また、入隅材10を入隅部9に容易に且つ安定的に取り付けることができる。さらに、接着剤99を用いて入隅材10を取り付けた場合には、
図4に示すように、接着剤99が溝51,52に入り込むので、硬化後の接着剤99のアンカー効果により、入隅材10を入隅部9に強固に固定できる。特に、本実施形態においては、支持脚4の第1面421が第1溝51に且つ第2面422が第2溝52に、それぞれ突出するように構成されており、第1溝51及び第2溝52は、開口幅よりも内部が幅広い構造となっている。かかる構造により、第1溝51及び第2溝52に流入した接着剤が固化すると、より高いアンカー効果を発揮する。
【0036】
本発明の入隅材は、上記第1実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で様々に変更できる。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記第1実施形態と同様な構成及び効果並びに使用方法については説明を省略し、用語及び符号をそのまま援用する。
【0037】
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、支持脚4の接地部42は平面視略台形状に形成されているが、これに限定されず、例えば、
図5に示すように、接地部42が平面視略円形状又は楕円形状に形成されていてもよい。このように接地部42が曲面状に形成されていると、いびつな形状の入隅部に対しても、前記支持脚4の曲面の何れかで接点を持たせることが可能となるので、入隅材10の位置決めが容易になる。
また、
図6に示すように、接地部42が平面視横長の略長方形状に形成されていてもよい。なお、前記横長の略長方形状は、軸部41の軸芯と直交する方向が長い略長方形状である。接地部42を前記のような形状とすることによって、接着剤を用いて固定する場合のアンカー効果が増し、より強固に入隅材10を固定することが可能となる。
さらに、上記第1実施形態では、支持脚4の接地部42は、軸部41よりも幅広に形成されているが、これに限定されず、例えば、
図7に示すように、接地部42が軸部41と同幅に形成されていてもよいし、或いは、特に図示しないが、接地部42が軸部よりも幅狭に形成されていてもよい。軸部41を前記のような形状とすることによって、接着剤が溝51,52に流入しやすくなるので、高粘度の接着剤を使用することもできる。なお、
図7で示す例では、接地部42が曲面状に形成されているので、
図5と同様に、いびつな形状の入隅部に対する入隅材10の位置決めが容易になる。
【0038】
[第3実施形態]
上記第1実施形態では、支持脚4は本体と一体的に形成されているが、例えば、
図8に示すように、支持脚4が本体とは別個の部材で形成されていてもよい。別個の支持脚4の本体への固定手段は、特に限定されず、例えば、図示したように、支持脚4の軸部41の先端に鉤部41aを形成し、且つ外壁3の表面とは反対側の本体内に嵌合凹部3aを形成し、両者を凹凸嵌合して支持脚4を本体に固定することが挙げられる。その他、図示しないが、前記凹凸嵌合と併用して又は単独で、接着剤を用いて支持脚4を本体に接着してもよい。
支持脚4を別部材で形成する場合、支持脚4は、本体と同程度の可撓性を有する材料から形成されていてもよいが、本体よりも可撓性が小さい材料又は実質的に可撓性を有さない材料から形成されていることが好ましい。前記可撓性が小さい材料又は実質的に可撓性を有さない材料としては、金属、硬度の高い樹脂などが挙げられる。可撓性の小さい又は可撓性を有さない支持脚4を用いることにより、入隅材10の長手方向における直線性を維持し易くなり、入隅部に対する位置決め精度が向上する。加えて、入隅材10を入隅部の角部側へ押圧した際に、支持脚4の軸部41が曲がり難くなり、入隅材10の位置決めを確実に行うことができる。
【0039】
[第4実施形態]
上記第1実施形態では、外壁3の表面が内側へと凹んだ円弧面とされているが、例えば、
図9に示すように、外壁3の表面が、外側へと膨らんだ円弧面とされていてもよい。また、
図10に示すように、外壁3の表面が、平坦面とされていてもよい。外壁3の表面の形状は、各実施形態に示した構成に限られず、例えば、入隅部の意匠性を考慮して、適宜な形状に変更できる。
【0040】
[第5実施形態]
上記第1実施形態では、第1凸部71及び第2凸部72が、第1貼付壁1及び第2貼付壁2の表面に対して鈍角を成して延びる第1辺と略直交状に延びる第2辺とから構成されているが、例えば、
図11に示すように、第1凸部71及び第2凸部72が、第1貼付壁1及び第2貼付壁2の表面に対して鋭角を成しつつ突出していてもよい。この場合、第1凸部71及び第2凸部72の各頂部は、内側に向かって突出している。本実施形態の入隅材10によれば、第1凸部71及び第2凸部72によって形成されるC字状の懐部711,721に、粘着テープの一方の側縁を差し込むことができ、粘着テープの端部を隠蔽する効果を高めることができる。
また、本発明の入隅材10は、
図12に示すように、第1凸部及び第2凸部が形成されておらず、第1貼付壁1及び第2貼付壁2が平坦状に形成されていてもよい。かかる入隅材10は、その形状が比較的単純であるため、より容易に製造することが可能となり、製造コストを抑えることができる。また、
図12に示すように、第1貼付壁1の仮想延長面と第2貼付壁2の仮想延長面との成す角が鈍角となるように、第1貼付壁1及び第2貼付壁2が形成されていてもよい。このように第1壁面1及び第2壁面2を形成することにより、簡易に粘着テープの端部を隠蔽することができる。
【0041】
[第6実施形態]
上記第1実施形態では、第1溝51及び第2溝52は、外壁3に向かうに従って互いに近づく2つの内壁面51a,51b,52a,52bによって形成されているが、これに限定されず、例えば、
図13に示すように、第1溝51が、平行な2つの内壁面51a,51bから形成され、第2溝52が、平行な2つの内壁面52a,52bから形成されていてもよい。或いは、
図14に示すように、第1溝51が、外壁3に向かうに従って遠ざかる2つの内壁面51a,51bから形成され、第2溝52が、外壁3に向かうに従って遠ざかる2つの内壁面52a,52bから形成されていてもよい。このように内壁面51a,51b,52a,52bを平行又は外壁3に向かうに従って遠ざかるように形成することにより、接着剤が第1溝51及び第2溝52に入り込み易くなるので、特に粘度の高い接着剤を用いる際には有効である。
さらに、
図13に示すように、第1溝51の底壁面51c及び第2溝52の底壁面52cが、外壁3の表面側に膨らんだ円弧面状とされていてもよいし、或いは、
図15に示すように、第1溝51の底壁面51c及び第2溝52の底壁面52cが、外壁3の表面とは反対側に膨らんだ円弧面状とされていてもよい。このように底壁面51c,52cを円弧面状とすることにより、第1溝51及び第2溝52が安定な形状となり、屈曲に対する強度が高くなる。
【0042】
[第7実施形態]
上記第1実施形態では、第1貼付壁1側に1つの溝51が形成され、且つ、第2貼付壁2側に1つの溝52が形成されているが、これに限定されず、第1貼付壁1側に複数の溝が形成され、且つ、第2貼付壁2側に複数の溝が形成されていてもよい。例えば、
図16に示す例では、第1貼付壁1側に2つの溝53,54が形成され、且つ、第2貼付壁2側に2つの溝55,56が形成されている。このように複数の溝を形成することにより、入隅材10を矢印X方向及び矢印Y方向に曲げやすくなり、第1貼付壁1と第2貼付壁2の成す角αを鋭角又は鈍角にさせて様々な入隅部に施工し易い入隅材10を提供できる。さらに、接着剤を用いて入隅材10を固定する場合には、複数の溝のそれぞれがアンカー効果を奏するので、より強固に入隅材10を固定することが可能となる。加えて、接着剤を多く塗布した場合でも、その接着剤が複数の溝に入り込むので、接着剤が入隅材10の第1側端部31又は第2側端部32から外部へはみ出すことを抑制できる。もっとも、溝の数を多くし過ぎると、相対的に第1貼付壁1及び第2貼付壁2の面積が小さくなるので、溝は、第1貼付壁1側及び第2貼付壁2側のそれぞれに対し、1つ又は2つ形成されることが好ましい。
【0043】
[第8実施形態]
また、
図17に示すように、外壁3の表面に、所望の層8が設けられていてもよい。前記所望の層8としては、意匠印刷を施した化粧層、防かび層、防汚層などが挙げられる。なお、特に図示しないが、第1貼付壁1の表面、第2貼付壁2の表面又は本体の表面全体に、前記防かび層や防汚層などの所望の層8が設けられていてもよい。所望の層8を設けることによって、本体の材質や色を変更することなく、様々な意匠を有する入隅材10を提供できる。