特許第6117670号(P6117670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太平洋工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6117670-タイヤバルブ 図000002
  • 特許6117670-タイヤバルブ 図000003
  • 特許6117670-タイヤバルブ 図000004
  • 特許6117670-タイヤバルブ 図000005
  • 特許6117670-タイヤバルブ 図000006
  • 特許6117670-タイヤバルブ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117670
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】タイヤバルブ
(51)【国際特許分類】
   B60C 29/02 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   B60C29/02
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-210308(P2013-210308)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2015-74281(P2015-74281A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅彦
【審査官】 岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02836217(US,A)
【文献】 実開昭59−136304(JP,U)
【文献】 特開2012−047686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のバルブステムと、
前記バルブステムの外周に設けられるとともに弾性部材からなる胴体部と、を備え、車両用ホイールに設けられた装着孔に前記胴体部が挿入されて前記車両用ホイールに装着されるタイヤバルブであって、
前記胴体部において、前記装着孔の内面から該装着孔の中央に向けた延長線上にある部分には、前記胴体部を補強するカラーが設けられ
前記カラーは、メッシュ状の材料からなることを特徴とするタイヤバルブ。
【請求項2】
前記車両用ホイールに装着されるタイヤ内に設けられるとともに、前記タイヤ内の状態を検出するセンサユニットと一体化されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブステムの外周に弾性部材からなる胴体部を設けたタイヤバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のタイヤバルブを備えたタイヤバルブユニットとしては、例えば、特許文献1に記載のタイヤバルブユニットが知られている。
図6に示すように、特許文献1に記載のタイヤバルブユニット100は、筒状のタイヤバルブ101と、タイヤバルブ101の一端に設けられるタイヤセンサ102とを備えている。タイヤバルブ101は、筒状のバルブステム103と、バルブステム103を囲繞する筒状弾性部材104とを備えている。タイヤバルブユニット100は、車両用ホイール105の挿入孔106に、タイヤバルブ101の筒状弾性部材104が挿入されることで車両用ホイール105に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0024539号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用ホイール105が回転すると、タイヤバルブ101には遠心力が作用する。特に、タイヤバルブ101にタイヤセンサ102が設けられている場合には、タイヤセンサ102に作用する遠心力によって、タイヤバルブ101に加わる荷重が大きくなる。遠心力は、挿入孔106の内面に受け止められる。このため、筒状弾性部材104において、挿入孔106の内面に支持される部位には、応力が集中する。その結果、筒状弾性部材104に破断や変形などが生じてしまい、タイヤセンサ102が車両用ホイール105に接触したり、挿入孔106と筒状弾性部材104との間の気密性が低下して、タイヤ内の空気漏れの原因となる。
【0005】
本発明の目的は、バルブステムの外周に設けられるとともに弾性部材からなる胴体部の破断や変形を抑制することができるタイヤバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するタイヤバルブは、筒状のバルブステムと、前記バルブステムの外周に設けられるとともに弾性部材からなる胴体部と、を備え、車両用ホイールに設けられた装着孔に前記胴体部が挿入されて前記車両用ホイールに装着されるタイヤバルブであって、前記胴体部において、前記装着孔の内面から該装着孔の中央に向けた延長線上にある部分には、前記胴体部を補強するカラーが設けられ、前記カラーは、メッシュ状の材料からなることを要旨とする。
【0007】
これによれば、車両用ホイールの回転に伴いタイヤバルブに遠心力が作用し、胴体部に対し、遠心力が作用する方向(以下、遠心力方向)への荷重が加わると、この荷重は、胴体部を介して装着孔の内面に加わる。すると、胴体部において、装着孔の内面と対向する部分には応力が発生する。この応力はカラーによって受け止められるため、胴体部の破断や変形を抑制することができる。
【0008】
イヤバルブを装着孔に挿入するときに、カラーが変形しやすい。タイヤバルブを車両用ホイールに取り付けるときには、胴体部を装着孔に圧入する。この際、カラーが変形しやすいため、カラーによって圧入が阻害されることが抑制される。また、メッシュ状の材料を用いているため、カラーが破断しにくい。
【0009】
上記タイヤバルブについて、前記車両用ホイールに装着されるタイヤ内に設けられるとともに、前記タイヤ内の状態を検出するセンサユニットと一体化されることが好ましい。
これによれば、タイヤバルブに遠心力が作用するのと同時に、センサユニットにも遠心力が作用する。このため、胴体部に発生する応力が大きい。このように、胴体部に発生する応力が大きい場合でも、カラーを設けることで、胴体部の破断や変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バルブステムの外周に設けられるとともに弾性部材からなる胴体部の破断や変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のタイヤバルブユニットのリムへの装着状態を示す斜視図。
図2】実施形態のタイヤバルブユニットを示す断面図。
図3】実施形態のタイヤバルブユニットを示す分解斜視図。
図4】実施形態のタイヤバルブを示す図2の4−4線断面図。
図5】変形例のタイヤバルブを示す断面図。
図6】従来技術を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、タイヤバルブの一実施形態について説明する。
図1及び図2に示すように、タイヤバルブユニット10は、車両用ホイールHのリム11に装着されるタイヤバルブ20と、このタイヤバルブ20に一体化されるとともに、車両用ホイールHに装着されたタイヤ12内に配置されるセンサユニット40とから構成されている。車両用ホイールHには、タイヤバルブ20が挿入される装着孔13が形成されている。
【0013】
タイヤバルブ20は、金属材料により円筒状に形成されたバルブステム21の外周面に弾性部材としてのゴムからなる胴体部31が装着されて形成されている。バルブステム21内には導入路22が形成されている。バルブステム21の先端側にはバルブ機構23が内蔵されるとともに、バルブステム21の先端にはキャップ24が装着されている。
【0014】
図3に示すように、バルブステム21は、基端(キャップ24が設けられた端部とは反対側の端部)に胴体部31から突出する突出部25を有している。突出部25の外周面には、平坦面26が形成され、この平坦面26は突出部25の軸方向及び周方向の一部に沿って平坦に延びている。
【0015】
図2及び図4に示すように、胴体部31は、筒状をなしている。タイヤバルブ20において、胴体部31のセンサユニット40側(基端側)の外周面には装着凹部32が全周に亘って形成されている。胴体部31のセンサユニット40側では、胴体部31の内周面がバルブステム21の外周面から離間しており、胴体部31の内周面は、バルブステム21の外周面に対し同心円状をなしている。そして、胴体部31のセンサユニット40側の内周面には、円筒状のカラー33が一体化され、カラー33の外周面と胴体部31の内周面は密着している。また、カラー33の内径は、バルブステム21におけるカラー33の内周面と対向する部分の外径よりも大きい。このため、カラー33の内周面とバルブステム21の外周面との間には、全周に亘って空間部35が形成されている。カラー33は、胴体部31の内周面において、胴体部31の基端から装着凹部32と対向する位置に至るまで延びている。カラー33は、メッシュ状(網目状)の材料からなるカラー33であり、例えば、金属の線材を編み込んだ材料から形成されている。
【0016】
そして、タイヤバルブ20は、装着凹部32が、リム11における装着孔13の内面13a(内周面)に密接した状態で装着孔13に嵌合されることでリム11に装着されている。カラー33は、装着孔13の内面13aから装着孔13の中央Cに向けた延長線L上に設けられている。換言すれば、カラー33は、胴体部31を介して装着孔13の内面13aと対向している。タイヤバルブ20は、平坦面26が車両用ホイールHの径方向外側を向くようにセンサユニット40に取り付けられている。
【0017】
図3に示すように、センサユニット40は、タイヤ12内の状態(例えば、タイヤ12内の温度、空気圧など)を検出するセンサ41を収容するケース42を有している。ケース42には、突出部25が挿入される挿入孔43が設けられている。挿入孔43の形状は、突出部25の形状に対応している。すなわち、挿入孔43は、内周面の一部に平坦面44を有しており、タイヤバルブ20は、突出部25の平坦面26とケース42の平坦面44が対向した状態で挿入孔43に挿入される。そして、図示しないネジなどで、タイヤバルブ20をケース42に固定することで、タイヤバルブ20とセンサユニット40が一体化されている。
【0018】
次に、本実施形態のタイヤバルブ20の作用について説明する。
車両の走行に伴い、車両用ホイールHが回転すると、タイヤバルブユニット10には、遠心力が作用する。この遠心力によって、タイヤバルブ20には、遠心力方向(車両用ホイールHの径方向外側)に向けた荷重が加わる。タイヤバルブ20には、タイヤバルブ20自身に作用する遠心力による荷重に加えセンサユニット40に作用する遠心力による荷重が加わる。
【0019】
タイヤバルブ20に荷重が加わると、この荷重は、胴体部31における装着孔13の内面13aに向けて加わり、胴体部31における装着孔13の内面13aと対向する部分に応力が発生する。したがって、胴体部31において、装着孔13の内面13aと対向する部分に応力が集中する。詳細にいえば、装着孔13の内面13aにおける車両用ホイールHの径方向外側(遠心力方向)の部分と対向する胴体部31の部分に応力が集中する。
【0020】
本実施形態では、胴体部31を挟んで装着孔13の内面13aから装着孔13の中央Cに向けた延長線L上にある部分にカラー33を設けて、バルブステム21から胴体部31に加わる荷重の一部を、カラー33によって受けることができる。
【0021】
タイヤバルブ20を車両用ホイールHに取り付けるときには、タイヤバルブ20を装着孔13に挿入する。このとき、胴体部31と装着孔13の内面13aとの間の気密性を確保するために、胴体部31が装着孔13に圧入される。
【0022】
したがって、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)胴体部31の内周面において、装着孔13の内面13aから装着孔13の中央Cに向けた延長線L上にある部分にカラー33を設けている。このため、胴体部31において、タイヤバルブユニット10に作用する遠心力によって生じる応力を受ける部分を補強し、胴体部31が破断や変形することを抑制することができる。このため、センサユニット40が車両用ホイールHに接触したり、装着孔13と胴体部31との間の気密性が低下することが抑制される。
【0023】
(2)カラー33はメッシュ状の材料から形成されている。メッシュ状の材料を用いることで、装着孔13にタイヤバルブ20を挿入するときに、カラー33を用いても胴体部31が変形しやすく、タイヤバルブ20を装着孔13に挿入しやすい。また、メッシュ状の材料を用いているため、カラー33が破断しにくい。
【0024】
(3)胴体部31の内周面にカラー33を設けているため、バルブステム21が遠心力によって傾くと、カラー33が変形することで、バルブステム21から加わる荷重を吸収することができる。このため、バルブステム21が傾いたときに、胴体部31に荷重が加わりにくく、胴体部31の破断や変形をより抑制することができる。
【0025】
(4)タイヤバルブ20には、センサユニット40が一体化されている。センサユニット40の遠心力は、バルブステム21に荷重として加わる。このため、胴体部31に加わる荷重が大きい場合でも装着孔13と対向する位置にカラー33を設けることで、胴体部31の破断や変形を抑制する効果がより顕著に発揮される。
【0026】
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
図5に示すように、カラー50は周方向の一部からカラー50の軸方向全体に延びる開口部51を有していてもよい。カラー50は、断面形状がC字状をなしている。カラー50は、例えば樹脂などからなる。カラー50は、開口部51が、遠心力方向(車両用ホイールHの径方向外側)とは異なる方向に開口するように設けられている。なお、突出部25の平坦面26が遠心力方向を向くようにタイヤバルブユニット10を車両用ホイールHに取り付けるため、カラー50をタイヤバルブ20に設けるときには、開口部51が平坦面26とは異なる方向に開口するようにカラー50を設ければよい。タイヤバルブ20を装着孔13に取り付けるときに、開口部51が変形を許容する領域となり、カラー33は開口部51が小さくなるように変形する。このため、カラー50の形状は維持され、カラーとしての機能を損ないにくい。また、開口部51を遠心力方向とは異なる方向に開口させることで、遠心力によって加わる荷重をカラー50によって受けることができる。上記したように、カラーの形状は、装着孔13の内面13aの全面と対向している形状(筒状)に限られず、装着孔13の内面13aの一部と対向している形状であってもよい。
【0027】
○ 胴体部31の内周面にカラー33を配置したが、胴体部31にカラー33をインサート成形してもよい。これらの場合であっても、カラー33によって胴体部31が補強されるため、胴体部31の破断や変形を抑制することができる。
【0028】
○ センサユニット40は、タイヤバルブ20に一体化されていなくてもよい。
○ 弾性部材として、ゴム以外を用いてもよい。例えば、樹脂などを用いてもよい。
○ カラー33は、バルブステム21の外周面と密着していてもよく、空間部35が設けられていなくてもよい。
【0029】
次に、上記実施形態及び別例から把握することのできる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記カラーは、前記胴体部の内周面に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタイヤバルブ。
【0030】
(ロ)前記カラーは、少なくとも前記装着孔の内面における遠心力が作用する方向の面と対向することを特徴とする請求項1又は請求項2及び技術的思想(イ)のうちいずれか一項に記載のタイヤバルブ。
【符号の説明】
【0031】
H…車両用ホイール、12…タイヤ、13…装着孔、13a…内面、20…タイヤバルブ、21…バルブステム、31…胴体部、33…カラー、40…センサユニット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6