特許第6117773号(P6117773)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117773音響出射およびサンプル保存に適合した、液体サンプルを保持し移動させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117773
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】音響出射およびサンプル保存に適合した、液体サンプルを保持し移動させるための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20170410BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20170410BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G01N35/02 A
   G01N35/10 A
   G01N1/00 101H
   G01N1/00 101K
【請求項の数】13
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-508599(P2014-508599)
(86)(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公表番号】特表2014-513300(P2014-513300A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】US2012035449
(87)【国際公開番号】WO2012149314
(87)【国際公開日】20121101
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/479,985
(32)【優先日】2011年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507301040
【氏名又は名称】ラブサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】エルソン,リチャード,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】オレクノ,ジョセフ,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】クイメリス,ロバート,ジー.
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−221470(JP,A)
【文献】 特表2008−519280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体サンプルを保持し移動させるための方法であって、
注入口を介して液体サンプルをサンプル容器に移動させる工程と、
上記サンプル容器へ1以上のフロートを配置する工程と、
上記液体サンプルを複数の成分に階層化する工程と、
排出口を介して上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程と、を含み、
上記注入口および排出口は異なる位置にあり、
上記1以上のフロートのそれぞれのフロートは、上記複数の成分の内の1以上の成分に対応する濃度と関連付けられていることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記サンプル容器における長軸に沿った側面を、長軸の方向が水平方向となる横向きに配置する工程と、
少なくとも上記側面を介して上記サンプル容器と音響発生器とを音響結合させる工程と、
上記音響発生器により音響ビームを発生させる工程と、
上記音響ビームを上記液体サンプル中の焦点へ合焦させる工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
上記排出口を介して上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程は、上記側面の反対側の上記排出口を介して上記1以上の液滴を音響出射させる工程を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
上記サンプル容器を少なくとも揺動または回転させることによって、上記液体サンプルから1以上の気泡を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
音響により上記液体サンプル中の1以上の気泡を検出する工程と、
上記液体サンプルから上記1以上の気泡を除去する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
上記1以上のフロートのそれぞれのフロートが上記複数の成分の内の1以上の成分を選択された収集領域に保持した状態で、上記サンプル容器を、長軸の方向が鉛直方向となる縦向きから長軸の方向が水平方向となる横向きに変える工程をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項7】
上記1以上のフロートうち少なくとも1つのフロートの位置を音響的に決定する工程をさらに含み、
上記排出口を介して上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程は、上記1以上のフロートのうち少なくとも1つのフロートに対応する上記1以上の成分の少なくとも1つの液滴を音響出射させる工程を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
1以上の化学反応を起こし、上記液体サンプルにおける1以上の検体の劣化または分解を低減させるために、上記液体サンプルに1以上の物質を添加することにより上記サンプル容器を修飾する工程をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
上記サンプル容器を修飾する工程は、上記液体サンプルの1以上のサンプル成分をトラップまたは不活性化する工程を含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
上記サンプル容器を修飾する工程において、上記1以上の出射された液滴へ上記1以上の物質のいずれも放出しないことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項11】
上記サンプル容器における長軸に沿った側面を、長軸の方向が水平方向となる横向きに配置する工程と、
上記サンプル容器内にある上記1以上のフロートの各々の1以上の位置を決定する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項12】
上記1以上のフロートの各々の1以上の位置を決定する工程は、上記1以上のフロートを音響的に検出する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも上記側面を介して上記サンプル容器と音響発生器とを音響結合させる工程と、
上記1以上の位置のうち1つの位置と関連付けられた情報に少なくとも基づき、上記音響発生器を上記1以上のフロートのうち少なくとも1つのフロートに位置合わせする工程と、
上記音響発生器により音響ビームを発生させる工程と、
上記液体サンプル内の上記1以上のフロートのうち1つのフロートに対応する焦点に上記音響ビームを合焦させる工程と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
1.関連出願の相互参照
本願は、同一出願人による、2011年4月28日に出願された米国仮出願61/479,985号の優先権を主張し、本願において、ここでの参照のために導入される。
【0002】
2.本発明の背景
本発明はサンプルの取り扱いに関する。特に、本発明のある実施形態では、音響出射および分析に適合したサンプル容器ならびその方法を記載している。例示として本発明は生体サンプルに適用されているが、サンプル容器内の液体サンプルの保存などその適用範囲はずっと広いものであることが認識されるだろう。
【0003】
個々のサンプル保持器に収容された生体サンプル(例えば、ヒト血液サンプル)を取り出して、当該生体サンプルに対して反応を行うために適切な1以上のウェルプレートまたは他のオブジェクトに(例えば、試験片上に)移動させることが望まれることがある。通常、多種多様な試験に供するため、1つの生体サンプル(例えば、1つのヒト血液サンプル)を多数の下流容器で分配する。また、多くの生体サンプルは、分離可能な複数の成分を含み、それらの成分は分離可能成分として試験に供することが好ましい。例えば、チューブ内の血液サンプルは一般に、遠心分離にかけ、プラズマが上層、赤血球が下層、他の血液成分が中間層に位置するよう、複数の層に階層化される。さらに、多くの生体サンプルは保存中に劣化するため、生体サンプルを保存するための環境をつくるようにサンプル保持器を適合させることが望ましい。
【0004】
生体サンプルの取り扱いに関して考慮すべき重要事項としては、1つの抽出サンプル(例えば、1回の採血)から多数の測定を可能にすること、サンプルの移動に際して廃棄物を生じさせないこと、移動に適量の流体、微粒子、細胞を供し、少ない量で当該移動を成し遂げるという課題を克服すること、少量のサンプルを一貫して供給することにより様々な種類の診断を可能にすること、実験室の安全性を高めるため、手動ピペット操作およびそれに伴う廃棄物ならびにチップ、鋭利部、細管および針との相互作用を取り除くこと、高品質・少量サンプル移動を成し遂げるのに実験技術者に必要な訓練を低減すること、および/または、血液の採取・保存に、また移動の起点として、同じ容器を用いることなどが挙げられる。
【0005】
生体サンプルの移動を行うための方法として音響出射が昔から知られている。例えば、音響出射の一般的な設備では、圧電変換器が制御装置により選ばれた波形により駆動され、それに応じて音響エネルギーを発生する。音響エネルギーは大抵、音響レンズによりフォーカスされ、音響結合媒体(例えば、水)を通って、流体を含む貯蔵器に結合される。フォーカスされたエネルギーが、貯蔵器中の流体内でありその流体の遊離面の近くに焦点を有する場合、液滴が出射され得る。液滴の大きさや速度は、上述の選ばれた波形により制御することができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、上記変換器は、流体の遊離面に対して略垂直である1以上の方向(例えば、「z方向」)に移動可能である。当該移動は、制御装置による制御下で行うことができる。高スループット用途の音響装置の中には、貯蔵器に対する変換器の位置の能動的制御に頼り、マイクロプレートの多数のウェルに対処するものもある。大抵、変換器の位置を調整する際は、モーション制御装置へモーションコマンドを送り、それにより1以上の方向への(例えば、1以上の軸に沿った)移動を開始する。例えば、水平面(例えば、「x方向」および/または「y方向」)への移動は、選択された貯蔵器に対して変換器を一列に並べ、垂直方向(例えば、「z方向」)への移動を貯蔵器の検査と液滴移動のフォーカスとの両方に用いる。別の例では、液滴射出に適切なフォーカスを実現するための変換器の位置決めは、音響検査から収集されたデータに対応するものであってもよい。さらに、米国特許第6,938,995号および第7,900,505号が本明細書において参照として援用される。移動が完了すれば、変換器および貯蔵器が処理の次の工程に適切な位置にあることを、制御装置がシステムに通知してもよい。いくつかの文脈では、1つのサンプル内の分離された選択領域の音響出射を行うことが望ましく、このような出射は水平面における変換器の移動によって促してもよい。さらに、米国特許第6,666,541号が本明細書において参照として援用される。
【0007】
単なる流体の移動以外にも、フォーカスされた音響エネルギーは、近年では、生細胞などの生体物質に関する用途に用いられている。例えば、フォーカスされた音響放射が細胞を操作しソートするのに用いられている。米国公開特許公報第2002/0064808号および第2002/0064809号ならびに米国特許第6,893,836号および第6,849,423号が本明細書において参照として援用される。別の例では、サンプル収集のための容器も広く用いられる。従来の容器(例えば、サンプルの抽出および/または保存に用いられる容器)は通常、音響移動の使用に適したものになっていない。
【0008】
さらに、サンプル容器内のサンプルの分離方法が周知である。例えば、血液サンプルは通常、遠心分離にかけ複数の層に成分を分離する。大抵このような分離は、分析のために特定の成分にアクセスするために行われる。別の例では、通常の血液サンプルの層は、上層から下層に向かって、血漿、血小板、非顆粒球(例えば、リンパ球や単球)、顆粒球(例えば、好塩基球や好酸球や好中球)、および赤血球(例えば、網状赤血球や赤血球)を含む。
【0009】
さらに、サンプル容器内のサンプルの均質性を改善する方法も周知である。例えば、一般的に、血液サンプルを手動で(例えば20回)反転させ、当該サンプルを撹拌し細胞を再懸濁させる。別の例では、サンプルの取り扱いの自動システムは、同様の機能を、サンプル容器をロッキングおよび/または回転させることによって、行うことができる。
【0010】
さらに、サンプルの劣化を防ぐ方法が周知である。血液サンプルは大抵、サンプルを保存するために内部にすでに試薬を有している容器に集められる。例えば、金属イオンの強力なキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が、溶液中のメタロプロテアーゼの活性を除去または低減するために添加される。これはその活性がペプチドバイオマーカーを劣化させ得るからである。さらに、EDTAは、カルシウムイオンに結合し凝固カスケードが起こるのを防ぐことによって血液サンプルの凝固を防止する、あるいは低減することもできる。別の例では、血液サンプル中のグルコースの劣化を止めるためにフッ化ナトリウムがサンプル容器(例えば、採血チューブ)に添加される。さらに別の例では、これらの添加物(例えば、EDTA、フッ化ナトリウム)は、容器の内面に、液体、乾固残渣、および/または非共有コーティング(例えば、スプレーコーティング)としてサンプル容器に存在する。
【0011】
これらの添加物は大抵、サンプルが容器内に入った後、血液サンプルと一体化し、下流のアッセイにマイナスの影響を有し得る。よって、血液サンプルは大抵、下流の分析の各々と適合する特定の添加物を含有する複数のサンプル容器(例えば、チューブ)に収集される。
【0012】
さらに、添加物を有するサンプル容器(例えば、採血チューブ)では大抵、容器に血液サンプルを満たすと、容器の部分的または完全な反転により血液サンプルと添加物とを混合することが求められる。反転またはセミ反転による混合の効果は大抵、血液サンプルの量およびサンプル容器のサイズが小さくなるにつれて劇的に減少する。効果のロスは、容器の動きが容器表面に対するサンプルの接着力に打ち勝つほど強くない、または重力に対する容器の向きの変化が容器表面に対するサンプルの接着力に打ち勝つほど強くないためであり得る。効果の低下は、特定の生物学的マーカーの防腐剤としての添加物の役割の遅延につながり得る。
【0013】
研究者は、血液サンプル中の内因性酵素(例えば、プロテアーゼ、ペプチダーゼ)が血液サンプルの重要なバイオマーカーであるペプチドおよびタンパク成分を劣化させ破壊させ得ることも明らかにしている。よって、種々のプロテアーゼを阻害し得る添加物を添加した採血チューブが導入されている。
【0014】
よって、組み合わせることで生体サンプルの取り扱いを大幅に簡素化し、小型化に対応可能な音響出射システムおよびサンプル容器のニーズがある。
【0015】
3.発明の概要
本発明はサンプルの取り扱いに関する。特に、本発明のある実施形態では、音響出射および分析に適合したサンプル容器ならびにその方法を記載している。例示として本発明は生体サンプルに適用されているが、サンプル容器内の液体サンプルの保存などその適用範囲はずっと広いものであると認識されるだろう。
【0016】
ある実施形態によれば、液体サンプルを保持し移動させるためのサンプル容器は、液体サンプルがサンプル容器に入るように構成された注入口と、上記液体サンプルの1以上の液滴のそれぞれが、1以上の音響出射のそれぞれによって、サンプル容器から排出されるように構成された排出口とを備える。上記注入口および排出口は異なる位置にある。
【0017】
別の実施形態によれば、液体サンプルを保持し移動させるための方法は、注入口を介し液体サンプルをサンプル容器に移動させる工程と、排出口を介し上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程とを含む。上記注入口および排出口は異なる位置にある。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、液体サンプルを保持する方法は、液体サンプルをサンプル容器に移動させる工程と、上記サンプル容器の1以上の内面に、1以上の物質を添加する工程と、上記サンプル容器の上記1以上の内面上の上記1以上の物質に、上記液体サンプルの1以上の成分を結合させる工程とを含む。
【0019】
実施形態によるが1以上の利点が得られる。これらの利点や本発明の様々な目的、特徴および優れた点は以下に示す詳細な説明と添付の図面を参照すれば完全に理解できるだろう。
【0020】
4.図面の簡単な説明
図1(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係る音響出射および分析に適合したサンプル容器を示す概略図である。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る音響出射および/または分析のための音響発生器とともにサンプル容器を示す概略図である。
【0022】
図3は、本発明の実施形態に係る音響出射および分析に適合したサンプル容器およびサンプル容器の断面を示す概略図である。
【0023】
図4(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係る音響発生器によりサンプル容器から出射されている液体サンプルの1以上の液滴を示す概略図である。
【0024】
図5(A)及び(B)は、本発明の別の実施形態に係るサンプル容器を音響出射および/または分析のための音響発生器と共に示す概略図である。
【0025】
図6は、本発明のある実施形態に係る、サンプル容器中のフロートを用いた液体サンプルの成分の分離および音響出射のための1以上の成分の選択を示す概略図である。
【0026】
図7(A)は、本発明の実施形態に係るサンプル容器において用いられるフロートの断面を示す概略図である。
【0027】
図7(B)は、本発明の別の実施形態に係るサンプル容器において用いられるフロートの別の断面を示す概略図である。
【0028】
図8は、本発明の実施形態に係る音響発生器によりサンプル容器から標的へ出射されている液体サンプルの1以上の液滴を示す概略図である。
【0029】
図9は、本発明のある実施形態に係るサンプル容器の1以上の内面および/または容器の内部と一体化している1以上の他の部品に対する表面処理の様々な組み合わせを示す概略図である。
【0030】
5.発明の詳細な説明
本発明はサンプルの取り扱いに関する。特に、本発明のある実施形態では、音響出射および分析に適合したサンプル容器ならびにその方法を記載している。例示として本発明は生体サンプルに適用されているが、サンプル容器内の液体サンプルの保存などその適用範囲はより広いものであると認識されるだろう。
【0031】
本発明の様々な実施形態に関して、溶媒、物質および/または装置構造は変化し得るものであり、本発明は特定の溶媒、物質および/または装置構造に限定されるものでないことを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を記述することのみを目的としたもので、限定的な意図はないことも理解されたい。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、単数で記載されていても、文脈により別に明記していなければ、単数と複数の両方が含まれる。例えば、「流体」と記載されていれば、1つの流体だけでなく複数の流体も含まれる。別の例では、「温度」と記載されていれば、1つの温度だけでなく複数の温度も含まれる。
【0033】
ある実施形態によれば、値の範囲が記載されている場合、その範囲の上限と下限の間の各値およびその記載された範囲の他の記載されたまたは間にある値が開示に含まれることが意図されている。例えば、1μmから8μmまでの範囲が記載される場合、1μm以上8μm以下の値の範囲だけでなく、少なくとも2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、および7μmも開示されることが意図されている。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、流体がサンプル容器に存在し略水平な(例えば、地球の重力の方向に略垂直な)遊離面を有する音響出射の構成に関して、「水平」または「垂直」が言及されることがある。
【0035】
上述のように、組み合わせることにより、音響出射および/または音響分析を用いて生体サンプルを処理する全ライフサイクル(例えば、生体サンプルを収集、移動、保存、および/または分析)を簡素化することができる音響出射システムおよびサンプル容器のニーズがある。
【0036】
例えば、従来の収集容器(例えば、サンプルの抽出および/または保存に用いられる容器)は通常、音響移動の用途に適したものとはなっていない。大抵、これらの従来の容器は、形状がチューブ状であり、ピペットによるチューブからの完全な移動を容易にするために底が丸くなっている。容器の表面が湾曲していると、音響ビームが変化してしまい、ビーム(の軸)を容器に合わせること、容器内の流体を分析すること、音響出射を可能にするためビームをサンプル表面にフォーカスさせることに対してさらなる挑戦をもたらす。また、従来の容器は通常、液滴が容器から出射されるようなサンプルの遊離面への音響ビームの均一な伝搬を容易にするように製作またはラベルがされていない。例えば、ある従来の容器は、チューブの底部の中央(例えば、製造時にプラスチックを型に入れる部分)における先端の開口部と真反対側に小さいこぶ状物または成形人工物を有するように成形された略円筒状のチューブである。そのような小さいこぶ状物または成形人工物は、この位置に入射する音の均一性を乱し得る。別の例では、従来のチューブの中には、湾曲した外壁に加えて、音を散乱させ得る繊維からなる紙でできた外部ラベルまたは音響エネルギーの均一な移動を妨害し得る空隙を含む粘着層を有するものもある。
【0037】
そのため、いくつかの実施形態によれば、特に、容器外から容器内のサンプルの表面への均一で効率的な音響伝搬に対応できる1以上の音響経路を提供するサンプル容器のニーズがある。例えば、1以上の音響経路は、上記表面から、開口する、開口可能な排出口へ向けて出射される液滴と一直線上にある。別の例では、1以上の音響経路は、散乱物体および/または非合焦物体(例えば、気泡)がない、および/または表面粗さおよび/または減衰が低い。
【0038】
図1(A)および(B)は、本発明の実施形態に係る音響出射および分析に適合したサンプル容器を示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0039】
図1(A)に示すように、サンプル容器100(例えば、チューブ)は、液体サンプル(例えば、生体サンプル)がサンプル容器に入るための注入口110を備える。ある実施形態では、注入口110は、液体サンプルの抽出装置(例えば、ランス)と関連および/または一体化している。例えば、注入口110と当該抽出装置は分離可能である。別の実施形態では、注入口110は、液体サンプルの抽出装置(例えば、ランス)と関連および/または一体化していない。
【0040】
ある実施形態によれば、注入口110を頂点に直立および/または縦向きに配置されたサンプル容器100内に液体サンプルは格納される。例えば、液体サンプルの1以上の液滴は、頂点の注入口110を通ってサンプル容器から音響出射される。米国公開特許公報第2009/0019956号および第2011/0181663号が本明細書において参照として援用される。
【0041】
別の実施形態によれば、図1(B)に示すように、注入口110は液体サンプルがサンプル容器100に入った後にキャップ120に置き換えられるため、キャップ120はサンプル容器100の一部となり、サンプル容器100は注入口110を備えなくなる。例えば、キャップ120を用いて、液体サンプルは、横置きおよび/または横向きに配置されたサンプル容器100に収容される。
【0042】
図2は、本発明の実施形態に係る音響出射および/または分析のための音響発生器とともにサンプル容器100を示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0043】
図2に示すように、音響発生器210(例えば、音響変換器)がサンプル容器100の下に位置している。例えば、サンプル容器100は横向きに配置され、排出口220を備えている。別の例では、液体サンプル(例えば、生体サンプル)の液滴がサンプル容器100から射出される排出口220の反対側に音響発生器210は位置している。
【0044】
ある実施形態では、液体サンプルは、サンプル容器100内であり、音響結合物質240の上、サンプル容器100の底面230上に位置している。例えば、音響結合物質240は、底面230と音響発生器210との間に配置されている。別の例では、底面230は平坦である。さらに別の例では、底面230は、底面230の異なる位置の間で音響的に均一である。さらに別の例では、排出口220は、サンプル容器100の側面としても機能する底面230と反対側にある。
【0045】
別の実施形態では、排出口220は開口している(例えば、封をされていない)、あるいは、閉じている(例えば、封をされている)。例えば、排出口220は、サンプル容器100内の液体サンプルの保存のために閉じている。別の例では、排出口220は、液体サンプルの液滴のサンプル容器100からの出射のために開口している。
【0046】
ある実施形態によれば、排出口220は、栓、外的な止め輪、および/または接着シールの手動の取り付けまたは取り外しなどの1以上の機械的方法により密封または開封される。別の実施形態によれば、排出口220は、栓、外的な止め輪、および/または接着シールの自動化された動きなどの1以上の電気機械的な方法により密封または開封される。例えば、電気機械的な方法は、ロボットおよび/またはソレノイドを用いるものである。さらに別の実施形態によれば、排出口220は、電気信号により作動される1以上の物質などのサンプル容器100と一体化した1以上の物質により自動的に開かれたり閉じられたりする。例えば、排出口200は、電気活性ポリマーにより形成される1以上の開口を有している。
【0047】
図3は、本発明の実施形態に係る音響出射および分析に適合したサンプル容器100およびサンプル容器100の断面を示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0048】
上述のように、サンプル容器100は、例えば、排出口220および底面230を備えている。図3に示すように、サンプル容器100の断面300は、サンプル容器100の軸340に垂直な面390に沿った断面である。ある実施形態では、断面300は、排出口部320および底部330を備えている。例えば、排出口部320は、排出口220の断面である。別の例では、底部330は、底面230の断面である。
【0049】
図2に戻ると、ある実施形態によれば、音響結合物質240は音響結合媒体(例えば、結合流体)を含む。別の実施形態では、音響結合媒体とサンプル容器240との間に可撓膜も存在する。例えば、そのような膜は、気泡をトラップすることなく、サンプル容器100の底面230に貼り付けられる。
【0050】
ある実施形態では、結合膜はヒドロゲル状物質および/またはコンタクトレンズに類似した他の物質などの「湿性」物質から構成されている。例えば、コンタクトレンズのような「湿性」物質は、音響発生器210により生成される音響エネルギーの合焦を可能にする。別の例では、「湿性」物質は、(例えば、音響ビームの形をとる)音響エネルギーの焦点距離を大きくするデフォーカス物質として機能する。
【0051】
別の実施形態では、結合膜は穿孔処理されている。例えば、穿孔処理された膜は、音響発生器210により生成される音響エネルギーの波長に対して小さい穴を有している。別の例では、穿孔処理された膜は、音響発生器210により生成される音響エネルギーの伝播をゆがめないように音響発生器210の中心に対して対称に並んだ穴を有している。さらに別の実施形態では、音響エネルギーの合焦は、1以上の別々の部材(例えば、「湿性」膜および/または音響発生器210と一体化したレンズ)により行われる。
【0052】
上で簡潔に述べたように、音響発生器210(例えば、音響変換器)からサンプル保持器100内の流体メニスカスへの音響経路は実質的に気泡を含んでいないことが望ましい。例えば、気泡は(例えば、音響ビームの形をとる)音響エネルギーを散乱させ得るので、(音響ビーム)に対して小さな気泡は音響波長程度のものと比べると問題が少ないとはいえ、全ての気泡を取り除くのが望ましい。別の例では、音響発生器210とサンプル容器100との間の気泡を取り除くのに役立つ構成は、音響発生器210の周りから発生しサンプル容器100へ向かって流れる気泡がない水を有することである。さらに別の例では、サンプル容器100内の音響経路における気泡の除去も役立つ。ある実施形態によれば、サンプル容器100内の液体サンプルに気泡が存在する可能性を低減させるために1以上の方法を用いることができる。例えば、そのような方法としては遠心分離が挙げられる。別の例では、そのような方法として、サンプル容器100の内面を(例えばサンプル容器を回転、揺動および/または反転させることによって)液体サンプルにより濡れやすくすることが挙げられる。別の実施形態によれば、液体サンプル内で気泡を音響的に検出し、液体サンプルから取り除く。
【0053】
図4(A)および(B)は、本発明の実施形態に係る音響発生器210によりサンプル容器100から出射されている液体サンプルの1以上の液滴を示す概略図である。これらの図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0054】
図4(A)および(B)に示すように、サンプル容器100(例えば、サンプルチューブ)は、横向きに配置される。ある実施形態では、音響発生器210により生成された音響ビーム410が音響結合物質240を通ってサンプル容器100に入射し、サンプル容器100内の液体サンプル420のメニスカス近くにフォーカスする。別の実施形態では、排出口220が開いている(例えば、封をされていない)場合、液体サンプル420の1以上の液滴430が音響ビーム410により排出口220を通ってサンプル保持器100から出射される。
【0055】
図4(A)に示すように、液体サンプル420は、サンプル容器100内の、サンプル容器100の外面部としても機能する底面230上に位置している。ある実施形態では、サンプル容器100は別の外面部450も有しており、外面部450は、底面230と共に、少なくとも1つの断面においてサンプル容器100の外面をなしている。例えば、排出口220は外面部450に設けられた排出口である。別の例では、底面230は平坦である。さらに別の例では、音響結合物質240は底面230と音響発生器210との間に配置されている。
【0056】
図4(B)に示すように、液体サンプル420がサンプル容器100内の底面230上に位置しているとしても、底面230はサンプル容器100の外面部として機能しない。例えば、底面230は平坦である。別の例では、底面230は外面部440により覆われている。ある実施形態によれば、音響結合物質240は、外面部440と音響発生器210との間に配置されている。別の実施形態によれば、サンプル容器100は少なくとも1つの断面において円形の外面を有している。例えば、円形の外面は、外面部440および外面部450を含む。別の例では、排出口220は、外面部450に設けられた排出口である。
【0057】
上述したように、またここでさらに強調されるように、図2、3、4(A)および4(B)は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。例えば、外面部440および450は、露出しないように、別の外面により覆われる。別の例では、別の外面が回転して排出口220を閉めたり(例えば、密封したり)開けたり(例えば、開封したり)することもできる。
【0058】
図5(A)および(B)は、本発明の別の実施形態に係る音響出射および/または分析のための音響発生器210と共にサンプル容器100を示す概略図である。これらの図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0059】
図5(A)に示すように、音響発生器210(例えば、音響変換器)はサンプル容器100の下に位置している。例えば、サンプル容器100は、横向きに配置され、排出口220を備えている。別の例では、音響発生器210は、排出口220の反対側に配置され、排出口220からは、それが開いている(例えば、封をされていない)場合は、液体サンプル420(例えば、生体サンプル)の1以上の液滴430がサンプル容器100から射出される。
【0060】
ある実施形態によれば、液体サンプル420がサンプル容器100内の底面230上に位置していたとしても、底面230はサンプル容器100の内面部である。例えば、底面230は平坦である。別の例では、底面230は表面部540に覆われている。さらに別の例では、表面部540と別の表面部550が少なくとも1つの断面において円形の表面を形成している。さらに別の例では、排出口220は表面部550に設けられた排出口である。
【0061】
別の実施形態によれば、表面部540および550は、外面510に覆われている。例えば、音響結合物質240は、外面510と音響発生器210との間に配置されている。別の例では、外面510は回転することによって、図5(A)に示すように排出口220を開き(例えば、開封し)、図5(B)に示すように排出口220を閉じる(例えば、密封する)。
【0062】
ある実施形態では、サンプル保持器100は、一体的な開封/密封方法(例えば、図5(A)に示すような開状態、および図5(B)に示すような閉状態)を用いる。例えば、外側の部分(例えば、外面510)に対する内側の部分(例えば、表面部540および550)の回転により、シーリング材が開口(例えば、排出口220)と接触し、それによりサンプル容器100が開状態から閉状態に変化する。
【0063】
別の実施形態では、図5(A)および(B)に示すように、外側の部分(例えば、外面510)に囲まれる容積および内側の部分(例えば、表面部540および550)に囲まれる容積は互いの10%以内である。さらに別の実施形態では、外側の部分(例えば、外面510)を手動または自動で扱いしやすくするために選択し、内側の部分(例えば、表面部540および550)を囲まれる総容積を減らすように設計し、内側の部分に囲まれる容積および外側の部分に囲まれる容積の違いが80%を超えるようにすることが望ましい。さらに別の実施形態では、内側の部分(例えば、表面部540および550)に囲まれる容積をさらに減らすため、内側の部分は(例えば、サンプル容器100の軸340に沿って)外側の部分の全長にわたって延びていない。例えば、内側の部分(例えば、表面部540および550)は、サンプル容器100の軸340に沿って、外側の部分(例えば、外面510)の10%しか延びていない。
【0064】
図2に戻ると、ある実施形態によれば、音響発生器210はサンプル容器100に対して相対的に移動し、液体サンプル(例えば、液体サンプル420)の1以上の液滴をサンプル容器100から射出する別の領域を選択する。例えば、別の領域は、液体サンプル420の階層化による層などのサンプル容器100中の液体サンプル420の別の成分の位置に相当する。
【0065】
図6は、本発明のある実施形態に係るサンプル容器100中のフロートを用いた液体サンプル420の成分の分離および音響出射のための1以上の成分の選択を示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0066】
例えば、液体サンプル420(例えば、ヒト血液サンプル)の特定の成分が、フロート710(例えば、液体サンプル420内の選択された1以上の成分と同様の比重を有するフロート)の存在下で凝離(segregation)により分離される。別の例では、フロート710は1以上の収集領域720(例えば、1以上の凹領域)を備えている。さらに別の例では、フロート710は、グラスなどの少なくとも1以上の物質からなる。さらに別の例では、フロート710は、ポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、および/またはCOC)などの少なくとも1以上の物質からなる。
【0067】
図6に示すように、1以上の成分の選択は、音響発生器210(例えば、音響変換器)を水平面(例えば、「x方向」および/または「y方向」)に移動させることによって行われる。また、図6に示すように、音響エネルギーの合焦(例えば、音響ビーム410の合焦)は、音響発生器210(例えば、音響変換器)を垂直方向(例えば、「z方向」)に動かすことで行われる。
【0068】
いくつかの実施形態によれば、血液の遠心分離などの、液体サンプル420の成分を分離し、階層化する1以上の方法が、液体サンプル420の1以上の成分を音響エネルギーによりサンプル保持器100から移動させるために用いることができる。ある実施形態によれば、遠心分離は、血液成分を分離し、有病率が低い成分の領域をフロート710の収集領域720(例えば、同様の比重を有するフロートの凹領域)内に隔離させるために用いられる。
【0069】
ある実施形態では、サンプル容器100内の1以上のフロートの存在は、液体サンプル420の特定の成分の分離を促進し、音響移動を促すために設けられる。例えば、複数のフロートが存在する場合、フロート710は一致する密度の物質と層をなすので、フロート710の密度は抽出される液体サンプル420の成分に対応するように選択される。別の例では、成分の場所と同様にフロート710の位置も、これらの成分物質の音響特性(例えば、インピーダンスおよび/または音響減衰)の違いの音響測定および検出により決定される。米国特許第6,938,995号および第7,784,331号が本明細書において参照として援用される。
【0070】
別の実施形態では、フロート710の周りの同じまたは同様の密度の流体(例えば、1以上の成分物質)からフロート710を音響的に区別可能とするようにフロート材を選択することが好ましい。例えば、音響インピーダンスは密度と音速との積であるから、フロート材は周りの流体と同じ密度であるが異なるサウンドスピードで選択されるため、フロート710と周りの流体との間での音響インピーダンスのミスマッチがある。
【0071】
図7(A)は、本発明の実施形態に係るサンプル容器100において用いられるフロート710の断面を示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0072】
図7(A)に示すように、フロート710(例えば、「自由浮動性」フロート)の断面は、サンプル容器100の軸340に垂直な面における断面である。例えば、「自由浮動性」フロート710では、液体サンプル420の各成分への層への分離により、フロート710と同様の比重を有する1以上の成分が収集される。ある実施形態では、フロート710により、1以上の成分の収集領域720は容器壁(例えば、表面部450および/または表面部550)の近くに位置する。別の実施形態では、収集領域720は、サンプル容器100からの液滴の音響出射に対応するべきものである。例えば、音響発生器210が水平面(例えば、「x方向」および/または「y方向」)に動いても、収集領域は、均一である音響経路に対応する。別の例では、収集領域は、フロート710の平坦部を横切る音響経路に対応する。さらに別の例では、そのような音響経路を通って、音響エネルギー(例えば、音響ビーム410)が、1以上の液滴430が排出口220へ向けて軌道を描いて射出される収集領域における1以上の成分の遊離面付近の焦点に合焦される。
【0073】
ある実施形態によれば、サンプル保持器100内に複数の「自由浮動性」フロート710が存在してもよく、各フロート710は、液体サンプル420の1以上の成分の異なる集まりを捉えるように異なる比重を有する。別の実施形態によれば、サンプル容器100が縦向きから横向きに動く場合、収集領域720内に液体サンプル420の1以上の成分の集まりを保持することが望ましい。
【0074】
例えば、フロート710内の凹部が、階層化の際に収集される1以上の成分を保持する収集領域720として用いられる。別の例では、図7(A)に示すように、フロート710の断面がサンプルの収集および保持に用いられる凹部を有していても、フロート710の 断面はサンプル容器100の断面にほぼ一致する。他の例では、フロート710が縦向きから横向きへの遷移において1以上の成分を保持できれば、フロート710の他の形状でも十分であり、その形状はフロートを液滴の音響出射に好適なものとする特徴を持つのが好ましい。
【0075】
さらに別の例では、1以上の成分を収集するためのフロート710の凹領域は、異なる量を収集するようになっている。さらに別の例では、フロート710の収集領域720の形状は断面において変わり得るが、収集領域720は、サンプル容器100が縦向きの場合に液体サンプル420の動きを妨げる、および/または、液体サンプル420の階層化を防ぐように構成されていてはいけない。
【0076】
図7(B)は、本発明の別の実施形態に係るサンプル容器100において用いられるフロート710の別の断面を示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0077】
図7(B)に示すように、フロート710は複数の収集領域720を備える。例えば、複数の収集領域720は同じ形状および/または同じ寸法を有する。別の例では、複数の収集領域は異なる形状および/または異なる寸法を有する。
【0078】
図8は、本発明の実施形態に係る音響発生器210によりサンプル容器100から標的へ出射されている液体サンプルの1以上の液滴を示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0079】
図8に示すように、サンプル容器100(例えば、サンプルチューブ)は横向きに配置されている。ある実施形態では、音響発生器210により生成された音響ビーム(例えば、音響ビーム410)は、音響結合物質240を通ってサンプル容器100に入り、サンプル容器100内の液体サンプル420のメニスカス近くに合焦する。別の実施形態では、液体サンプル420の1以上の液滴430は音響ビームによりサンプル保持器100から排出口220を通って、サンプル保持器100の排出口220の上に位置する標的810に向かって出射される。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、液体サンプル420の液滴430のサンプル容器100からの行き先は、サンプル容器100の排出口220に近接した標的ホルダにより保持される種々の標的810であってよい。例えば、標的ホルダは、標的810をクリップでまたは別の方法で一時的に取り付けることができる装置である。別の例では、標的ホルダは、x方向および/またはy方向への標的810の移動のためのガイドを備え、および/または、x−y全面自動移動システム(例えば、「x−yステージ」)を備える。さらに別の例では、標的810は、貯蔵器(例えば、チューブおよび/またはウェルプレートのウェル)または別のサンプル容器である。さらに別の例では、標的810は、診断用レシーバ(例えば、マイクロ流体素子、アレイ、試験片、ろ紙、および/または乾燥血液スポット(DBS)システム)である。
【0081】
ある実施形態によれば、液体サンプル420の液滴のある音響出射に続いて、同じサンプル容器100から標的810の別の位置(例えば、異なる試験を行うアリコートを保持する同じウェルプレートにおける別のウェル、および/または、異なる種類の試験に好適な異なる試験片)に出射することが望ましい。例えば、標的810は、その後、制御装置の制御下で自動的にまたはユーザーにより手動で、任意に標的ホルダ上のマーキングや留め具を用いて動かされる。いくつかの実施形態によれば、1以上の液滴430の1以上の音響出射があるサンプル容器100から行われた後、異なるサンプル容器100から同じ標的810または異なる標的への出射動作を繰り返すのが望ましい。例えば、サンプル容器100をサンプル保持器から単に取り外し、新たなサンプル容器100から出射処理を繰り返すことができる。
【0082】
様々な種類のサンプル容器100を用いることができるが、本発明のある実施形態によれば、サンプル収集チューブが好ましい。ある実施形態では、「マイクロチューブ」(例えば、1.3mL)と呼ばれる種類のチューブが用いられる。別の実施形態では、サンプル容器100のサイズは10mL、1mL,300μL、100μL、10μLまたは1μLである。いくつかの実施形態によれば、音響出射処理において用いられる液滴サイズをサンプル容器100に従って設定することが好ましい。例えば、1mLサンプル容器の液滴サイズは、1μL以上である。別の例では、100μLサンプル容器の液滴サイズは、10nL、1nL、または10pLである。
【0083】
ある実施形態によれば、サンプル収集チューブは、1以上の平坦な底面および/または1以上の平坦な側面を有している。別の実施形態によれば、側面の中心での不完全性または不均一性を回避し、サンプル収集チューブを形成した型にプラスチックを入れる部分であるゲートから底面での不完全性または不均一性を回避することが望ましい。
【0084】
ある実施形態では、サンプル容器100として用いられるサンプル収集チューブは、1以上の平坦な底面を有している。例えば、平坦な底面は、成形処理による欠陥(例えば、ゲート)を有していない。 別の例では、サンプル収集チューブが縦向きの場合、平坦な底面は、長軸(例えば、軸340)に沿ったサンプル容器100からの液体サンプルの液滴の移動(例えば、液体サンプル420の液滴の出射)を容易にすることができる。別の実施形態では、サンプル容器100として用いられるサンプル収集チューブは、1以上の平坦な側面を有している。例えば、サンプル収集チューブは横向きに配置され、音響エネルギー(例えば、音響ビーム410)を、サンプル容器100の側面を介して照射し、液体サンプル(例えば、液体サンプル420)の液滴を対向する排出口(例えば、排出口220)に向けて出射する。別の例では、サンプル収集チューブが横向きの場合、音響発生器(例えば、音響発生器210)から液体メニスカスへの音響経路は、音響発生器が水平面(例えば、「x方向」および/または「y方向」)に動いたとしても、比較的均一であり、音響経路は、気泡や不規則な表面形状により妨げられない。さらに別の実施形態では、サンプル容器100として用いられるサンプル収集チューブは、1以上の平坦な底面と1以上の平坦な側面の両方を有している。例えば、サンプル容器100が縦向きおよび横向きの場合、サンプル容器100を液滴の出射に用いることができる。
【0085】
上述したように、またここでさらに強調されるように、図2、4(A)、4(B)、5(A)、6および8は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。例えば、音響発生器210は、音響合焦サブシステムを備える音響出射システムの一部である。別の例では、音響合焦サブシステムは、固定焦点距離または可変焦点距離を有する。ある実施形態によれば、コスト削減が重要な場合に、固定焦点距離を有する合焦サブシステムが用いられる。別の実施形態によれば、合焦サブシステムは1以上の球状音響レンズおよび/または1以上のフレネルレンズを備える。
【0086】
ある実施形態では、比較的高い焦点距離を有することにはいくつかの利点がある。例えば、その一つは、縦向きのサンプル容器100に見られるように高アスペクト比の流体層からの出射のためのf/4レンズによるものである。別の実施形態では、小さいFナンバーレンズを用いた比較的低い焦点距離の方が、横向きのサンプル容器100からの液滴出射により好適である。音響エネルギーの周波数に関して、いくつかの実施形態によれば、出射される液滴の量が約2.5nLから5μLまたは100nLから1μLの範囲である場合、そのような出射に用いられる対応する音響周波数は線形チャープ波形において約1MHzから15MHzの範囲である。ある実施形態によれば、サンプル容器100が小さい場合および/または流体層が非常に薄い場合、液滴は小さい方が望ましく、サイズが1nL未満または100pL未満の液滴がより高い音響周波数を用いて出射される。
【0087】
さらに、ある実施形態によれば、制御装置が音響発生器210に結合され、音響出射および/または分析に用いられる。例えば、制御装置は、ソフトウェアおよび/またはファームウェアを実行するコンピュータおよび/または同様のマイクロプロセッサベースのシステムを備える。別の例では、制御装置はさらに、デジタル信号処理(DSP)のアルゴリズムを実行するように特に設計され、および/または、そのようなアルゴリズムの実行のために特定の利点を有している1以上のマイクロプロセッサを備える。さらに別の例では、そのような制御装置は、他のラボラトリーオートメーション機器および/またはコンピュータと通信するために、通信ハードウェア(例えば、ネットワークインターフェース)および対応するソフトウェアも備える。さらに別の例では、制御装置は、1以上の画面(例えば、1以上のLCD画面)および/または1以上の入力装置(例えば、ジョイスティック、キーボード、および/または画面に対するタッチ機能の形で)も備える。さらに別の例では、音響出射システムは、例えばサンプル容器や標的を輸送できる自動取扱機器を有するまたは接続される。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、出射動作に関わる1以上のサンプル容器(例えば、1以上のサンプル容器100)および/または1以上の標的(例えば、1以上の標的810)は、バーコードなどの機械で読み取り可能なマーキングでマークされる。例えば、制御装置は、適切なセンサーを用いてこれらのマーキングを読み取り、1以上のサンプル容器および/または1以上の標的の識別情報を記録するために、マーキングをデータベースなどに入力する。別の例では、1以上の液滴(例えば、液体サンプル420の1以上の液滴430)が特定の容器(例えば、サンプル容器100)から特定の標的(例えば、標的810)へ出射された事実が、コンソールにおいてタイピングすることで、または別個のバーコードリーダーを用いて記録される。
【0089】
ある実施形態によれば、出射される液体サンプル(例えば、生体サンプル)が生体細胞を含む状況においては混合が望まれる。例えば、血液サンプルに関しては、細胞がサンプル容器100の底に沈んでしまっているかもしれないため、音響発生器210により生成された音響エネルギーを用いて細胞をバルク流体に移動させることができる。別の例では、サンプル容器100に対する音響ビーム(例えば、音響ビーム410)の相対移動が、サンプルの混合を改善するために用いられる。ある実施形態では、そのような相対移動は、サンプル容器100を(例えば、音響フォーカスサブシステムの一部としての)音響レンズに近づけながら、流体においてビーム410を上方に掃射すること、および/またはビームのフォーカスをサンプル容器100の中心から逸らす横方向の相対移動を含む。別の実施形態では、混合のために、サンプル容器100の外縁に沿って沈んだ細胞に運動量を与えることが有効である。
【0090】
いくつかの実施形態によれば、液滴出射のための音響ビーム(例えば、音響ビーム410)の適切なエネルギーレベルは実験的に決定される。米国特許第7,717,544号が本明細書において参照として援用される。ある実施形態では、そのような適切なエネルギーレベルの決定は、次の処理の内のいくつかまたは全てを含む。
【0091】
a)過去のデータから、液滴を出射するのに十分ではないと合理的に考えられる比較的低いエネルギーレベルでの縮小波形(scaled-back waveform)を得る。
【0092】
b)音響発生器(例えば、音響発生器210)に縮小波形を生成させ、生成された波形を流体(例えば、液体サンプル420)の表面のやや下の位置に合焦させる。
【0093】
c)その後(例えば、その数百マイクロ秒後)、流体の表面に質問パルスを送る。例えば、質問パルスは短い(例えば、1または2サイクルしか持続しない)および/または音響変換器(例えば、音響発生器210として用いられる)の中心周波数でのパルスである。別の例では、質問パルスは、流体(例えば、液体サンプル420)の表面を著しくさらにかき乱さないように十分低いパワーを有する。
【0094】
d)任意に、送受信機により感知される他の入力からエコーをフィルタリングまたは他の方法で分離することにより質問パルスからエコーを分離する。
【0095】
e)エコーをフーリエ変換アルゴリズム(例えば、高速フーリエ変換)にかける。例えば、フーリエ変換アルゴリズムは、離散または連続変数の複素指数関数を用いてサンプルデータの離散または連続畳み込みを行うまたは概算する工程を含む技術により算出できる結果に到達する任意のアルゴリズムである。別の例では、フーリエ変換アルゴリズムは、離散型フーリエ変換(DFT)を含む。
【0096】
図1(A)、1(B)、2、3、4(A)、4(B)、5(A)、5(B)、6、7(A)、7(B)および/または8に示すように、サンプル容器100は、1以上の内面(例えば、1以上の内壁)および/または容器100の内部と一体化している他の構成要素を備え、そのような内面および/または構成要素は、液体サンプルがサンプル容器100に入った後、液体サンプル(例えば、液体サンプル420)と直接接触することができる。例えば、1以上の内面および/または容器100の内部と一体化している他の構成要素は、1以上の化学物質および/または1以上の生体物質の付着を促進するように変形され、そのような1以上の化学物質および/または1以上の生体物質は、液体サンプル(例えば、液体サンプル420)の1以上の成分を劣化から守るために用いられる。
【0097】
図9は、本発明のある実施形態に係るサンプル容器100の1以上の内面および/または容器100の内部と一体化している1以上の他の部品に対する表面処理の様々な組み合わせを示す概略図である。この図は単なる例示であり、請求項の範囲を必要以上に限定するものではない。当業者は多くのバリエーション、代替、変形例を認識するだろう。
【0098】
例えば、図9では、全てのリガンドが1以上のアミノ基を介して連結されているが、当該連結は1以上のスルフヒドリル基および/またはヒドラジン、アルデヒド、カルボン酸、ジエノフィル、ジエン、および/またはアルキンによっても行うことができる。当業者であれば、他のバリエーション、代替、変形例とともにこれらのリガンド連結の代替を認識するだろう。別の例では、図9に示す記号「●」はリガンドを表す。
【0099】
さらに別の例では、サンプル容器100の内部と一体化している1以上の構成要素は、注入口110および/またはキャップ120を含む。さらに別の例では、図9における表面および/または他の構成要素は、ポリプロピレンとは異なる少なくとも1以上の物質からなる。ある実施形態では、1以上の物質にはガラスが含まれる。別の実施形態では、1以上の物質には、ポリプロピレンとは異なるポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、および/またはCOC)が含まれる。
【0100】
図9に示すように、ある実施形態によれば、サンプル容器100の1以上の内部のポリプロピレンの表面および/または容器100の内部と一体化している他のポリプロピレンの構成要素は、工程1、2、3、4および/または5の内の1以上によりまず変形される。
【0101】
工程1:活性アルコールによるプラズマ処理を行う。例えば、好適なヒドロキシルドネーター(例えば、アリルアルコールまたは他の反応性アルコール)の存在下で、サンプル容器100の1以上の内部のポリプロピレンの表面をプラズマで処理し、共有結合したヒドロキシル基の付加により特徴付けられる1以上の対応する表面を生成する。
【0102】
工程2:いくつかのオキソおよびカルボキシ部分の存在下または非存在下で化学的酸化を行う。例えば、サンプル容器100の1以上の内部のポリプロピレンの表面を強酸化剤(例えば、過硫酸塩または他の酸化化合物)による処理により化学的に酸化し、ヒドロキシル、アルデヒド、ケトン、および/またはカルボン酸基の存在により修飾された1以上の対応する表面を形成する。
【0103】
工程3:活性アミンによるプラズマ処理を行う。例えば、活性アミンドネーター(例えば、アリルアミンまたは他の反応性アミン)の存在下でサンプル容器100の1以上の内部のポリプロピレンの表面をプラズマで処理し、共有結合したアミン部分を当該表面に形成する。
【0104】
工程4:(アルミナ、シリカなどの)原子層成長法を行う。例えば、サンプル容器100の1以上の内部のポリプロピレンの表面を原子層成長法により化学修飾し、液体サンプル(例えば、液体サンプル420)に露出される表面に1以上の酸化物(例えば、シリカまたはアルミナ)のコーティング薄層を配置する。別の例では、1以上の酸化物のコーティング薄層は、さらなる誘導体化のためのシリルアルコールまたはアルミニウムヒドロキシル基を付与する。
【0105】
工程5:N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)修飾を用いてまたは用いずに、親水性ポリマーの光架橋を行う。例えば、さらに別の実施形態によれば、サンプル容器100の1以上の内部のポリプロピレンの表面をアミン反応性親水性ポリマーに光架橋する。別の例では、このような界面化学は、共有結合固定化のため、1以上のタンパク分子、ペプチド、または他のアミンを持つ分子のコーティング層を必要とする。さらに別の例では、界面化学は、N−オキシスクシンイミド(NHSエステル)またはエポキシドを必要とする。さらに別の例では、反応基を用いた光架橋親水性ポリマーの堆積が行われる。
【0106】
図9にも示すように、いくつかの実施形態によれば、サンプル容器100内部の1以上のポリプロピレンの表面および/または容器100の内部と一体化している他のポリプロピレンの構成要素を処理1、2、3,4および/または5によってまず修飾した後、サンプル容器100内部の1以上のポリプロピレンの表面および/または容器100の内部と一体化している他のポリプロピレンの構成要素は処理6,7および/または8の内の1以上によりさらに修飾される。
【0107】
工程6:シリル化を行う。例えば、シリル化処理により、露出したアミンおよび/またはエポキシ基を有する1以上の内面が生じる。別の例では、シリル化処理により、露出したヒドラジン、アルデヒド、カルボン酸、ジエノフィル、ジエン、アルキン、硫化物および/または他の化学的部分を有する1以上の内面が生じ、化学物質間に共有結合を形成する。
【0108】
工程7:1以上のホモ二官能性リンカー(例えば、1以上のアミノ活性ホモ二官能性リンカー)を用いる。例えば、1以上のホモ二官能性リンカーは、遊離アミンおよび/または他の化学的活性部分と連結するために特に選択される。別の例では、表面の結合部分が1以上のリガンドの結合部分と異なる場合、1以上のヘテロ二官能性リンカーが1以上のホモ二官能性リンカーの代わりに用いられる。
【0109】
工程8:1以上のリガンドを付加する。例えば、これらのリガンドは、液体サンプル中の内因性分解酵素と活発に結合するか、あるいは、内因性分解酵素の活性を阻害する。別の例では、これらのリガンドは、サンプル容器の1以上の内面の1以上の特性に影響することによって、液体サンプル中の物質の非特異性結合にも影響を与える。
【0110】
ある実施形態では、活性アミンを用いプラズマにより処理された1以上の内面は、過剰のホモ二官能性アミン反応性リンカーとさらに反応することができる。例えば、このリンカーには、p−フェニレンジイソチオシアネート、ビス(ポリエチレングリコールビス[イミダゾイルカルボニル])、ビス[2−(N−スクシンイミジル−オキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、4,4’−ジイソチオシアネートスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ピメリミド酸ジメチル、エチレングリコール−ビス(コハク酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、セバシン酸ビス(N−スクシンイミジル)エステル、スベリン酸ビス(N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、スルホジスクシンイミジル酒石酸塩、ジスクシンイミジル酒石酸塩、ビス(スクシンイミジル)ペンタ(エチレングリコール)(BS5)、ビス(スクシンイミジル)ノナ(エチレングリコール)(BS9)および/またはスベリン酸ビス(3−スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルが含まれるが、これらに限定されるものではない。別の例では、1以上の内面上の化学反応は、カルボジイミド(例えば、N,N’ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび/またはN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド)が付加される場合、歩留りにおいて加速または改善される。さらに別の例では、改変された1以上の内面上の1級アミンが、アミノ含有リガンドの付加により表面がさらに修飾されるように誘導体化される。
【0111】
別の実施形態では、活性アミンを用いプラズマにより処理された1以上の内面は、1以上のグルタルアルデヒドネットワークの形成のための前駆体の段階として、グルタルアルデヒドを用いてさらに処理を行う。
【0112】
さらに別の実施形態では、活性アルコールを用いてプラズマにより処理された1以上の内面は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)および/または関連(アミノアルキル)(トリアルコキシル)シラン(例えば、4−アミノブチルトリエトキシシラン(ABTES)および/または11−アミノウンデシルトリエトキシシラン)でシリル化される。例えば、そのようなシリル化処理により、誘導体化された内面に加水分解安定性が付与される。別の例では、表面に連結した遊離アミン基は、1級アミンを有するリガンドへ結合するのに備えて、ホモ二官能性試薬で処理される。さらに別の実施形態では、活性アルコールを用いプラズマにより処理された1以上の内面は、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランや5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシランなどの1以上の試薬でシリル化される。例えば、そのようなシリル化された内面は、求核試薬と反応しリガンドと共有結合を形成することができるエポキシ部分により変性される。さらに別の実施形態では、活性アルコールを用いプラズマにより処理された1以上の内面は、11−(スクシンイミドイルオキシ)ウンデシルジメチルエトキシシランでシリル化される。例えば、そのようなシリル化された内面は、リガンドの1級アミンと反応し共有結合を形成することができる。別の例では、この1級アミンとの反応は、カルボジイミド(例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドやN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド)を付加すれば、加速されるか、歩留まりが改善される。
【0113】
上記のとおり、ある実施形態によれば、サンプル容器100に関して、1以上の内面を、アミン反応性リンカーが露出され、リガンドの遊離アミンに連結できるように改変している。ある実施形態では、遊離アミンは、分子フッ化4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニル(AEBSF)上の官能基であり、シリル化された1以上の内面をAEBSFで処理することにより、当該1以上の内面にセリン・プロテアーゼの既知の自殺型阻害剤を連結することができる。
【0114】
別の実施形態では、誘導体化された1以上の内面は、リガンドの第1級アミノ基や、プロテアーゼブロメラインおよび他のスルフヒドリルプロテアーゼの既知の不可逆阻害剤であるN−アルファ−トシル−L−リジンクロロメチルケトン(TLCK)に連結される。例えば、活性化された1以上の内面をTLCKで処理することにより、阻害剤を固定することができるが、溶液中のプロテアーゼがアクセスできる活性クロロメチルケトン部位は残る。
【0115】
さらに別の実施形態では、活性化された1以上の内面は、リガンド血清α−抗トリプシン(例えば、A1AT)と反応する。例えば、A1ATは、トリプシン、キモトリプシンおよび他のプロテアーゼに強固に結合するため、液体サンプルからそれらを効果的に除去し、ペプチドバイオマーカーへのそれらの劣化効果を取り除くことができる52kDaタンパク質である。
【0116】
さらに別の実施形態では、ライマメ(すなわち、Phaseolus lunatus)、牛の膵臓、鶏卵白および/または大豆(すなわち、Gycine max)から分離されたリガンドトリプシン阻害剤タンパク質のアミノ基は、表面の活性化された基を介して、1以上の内面に連結される。例えば、これら全てのタンパク質が、A1ATでみられるのと同様に、トリプシンおよび関連タンパク質に結合することができる。
【0117】
さらに別の実施形態では、リガンドは、天然に存在する、および/または付加された遊離アミノ基および/または他の官能部分を有する、アプタマー、抗体、抗体フラグメントおよび/または疑似抗体を含む(ただしこれらに限定されない)親和性試薬である。例えば、官能部分は、活性化された1以上の内面にそれらを共有結合させるために用いることができる。別の例では、セリン、スルフヒドリルおよび/またはメタロプロテイナーゼへの高い親和性のためアプタマーが特に選択され、アプタマーは、液体サンプル中のそれらのプロテイナーゼの有効濃度を低減させるために1以上の内面に結合される。
【0118】
さらに別の実施形態では、アミノ反応性の1以上の内面は、リガンド2−アミノメチル−18−クラウン−6(1,4,7,11,13,16−ヘキサオキサシクロロオクタデカン−2−イルメタンアミン)と反応する。例えば、この構造の18−クラウン−6部分は、カルシウムおよび/または他の多価カチオンを非常に強固に結合するものである。別の例では、この構造を1以上の内面に結合することにより、溶液からカルシウムを除去し、メタロプロテアーゼの活性を阻害することができる。
【0119】
さらに別の実施形態では、アミノ反応性の1以上の内面と反応することができるリガンドは、カルシウム、および/または、N−アルファ−N−アルファ−ビス(カルボキシメチル)−L−リジン((2S)−6−アミノ−2−[ビス(カルボキシメチル)アミノ]ヘキサン酸)、アミノベンジル−EDTA、1,8−ジアミノ−3,6,10,13,16,19−ヘキサアザビシクロ[6.6.6]−エイコサン、5−S−(4−アミノベンジル)−1−オキサ−4,7,10−トリアザシクロドデカン−4,7,10−トリス(酢酸)、S−2−(4−アミノベンジル)−1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸、3,6,9,15−テトラアザビシクロ[9.3.1]−ペンタデカ−1(15),11,13−トリエン−4−(S)−(4−アミノベンジル)−3,6,9−三酢酸、2−(4−アミノベンジル)−ジエチレントリアミンペンタ(t−ブチルアセタート)、および/または2−(4−アミノベンジル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸を含む(ただしこれらに限定されない)他の多価カチオンの他の1級アミン含有キレート剤の1つである。
【0120】
別の実施形態によれば、1以上の内面の有効表面面積は、1以上の表面の形状への1以上の物理的変形により増大される。例えば、物理的変形には、フィン、粗面、および/または細孔を加えることが含まれる。別の例では、物理的変形には、サンプルの量を大きく変えない1以上の化学処理により結合部位の数を増加させることが含まれる。上記のとおり、いくつかの実施形態によれば、サンプル容器100に関して、上記リガンドまたは最終的に1以上の内面に結合されるリガンドは、液体サンプルに内因性の物質であり液体サンプルの他の成分を劣化させる1以上の物質に結合するはずである。例えば、不可逆性プロテアーゼ阻害剤(例えば、TLCKおよび/またはAEBSF)は、血液中のプロテアーゼに結合し、それらの生物活性を停止させるので、血液サンプル中のプロテインおよび/またはペプチドの濃度や完全性を維持するのを助けることができ、これらのプロテインおよび/またはペプチドは生物学的マーカーまたは生物学的機能の決定因子として機能することができる。別の例では、金属キレート剤(例えば、2−アミノエチル−18−クラウン−6)が1以上の内面に結合されている場合、カルシウムなどのカチオンが溶液から枯渇する。そのような枯渇は、メタロプロテアーゼの活性を低減または妨げることができ、血液サンプルが凝固する傾向を低減することもできる。ある実施形態によれば、上記したような例の両方において、分析のためにサンプル容器100から移動される液体サンプルのアリコートは、固定化阻害剤を含まない。例えば、液体サンプルのアリコートは、フリープロテアーゼ阻害剤および/または金属キレート剤の存在により影響を受け得る特定の試験の使用を妨げ得る汚染を受けない。さらに別の実施形態では、ホモ二官能性リンカーアームは、ポリ(N−ヒドロキシスクシンイミドメタクリレート)などのホモ多官能性リンカーアームおよび/またはヘテロ多官能性リンカーアームと置き換えることができる。例えば、ホモ多官能性リンカーがデンドリマー世代成長によって拡大され、1以上の内面に対する1つの付着点に液体サンプル中の物質の複数の結合部位を付与する。別の例では、そのようなホモ二官能性リンカーアームのホモ多官能性リンカーアームによる置換により、二官能性リンカーによるよりも、高密度のリガンドを1以上の内面に結合させることができる。さらに別の例では、そのようなホモ二官能性リンカーアームのホモ多官能性リンカーアームによる置換により、分岐および/または多部位リンカーにより与えられる結合部位の数が二官能性リンカーのものを超えるため、より多くの所定の物質を液体サンプルから除去することができる。
【0121】
別の実施形態によれば、サンプル容器内の液体サンプルを収集する方法を記載している。例えば、サンプル容器は、液体サンプルの保持、また任意にサンプルの各成分への分離を可能にするように適合される。別の例では、サンプル容器(例えば、サンプル容器100)はさらに、分離された成分によりよい音響経路またはアクセスを提供する別の位置(例えば、排出口220)からだけでなく、サンプル容器に液体サンプルを導入する注入口110からの液滴の音響出射に適合される。
【0122】
別の実施形態によれば、サンプル容器(例えば、サンプル容器100)は、音響出射器(例えば、音響発生器210)へのアクセスを提供するように適合される。例えば、音響出射器は、サンプル容器へ向けて1以上の質問パルスを送る。この質問パルスに基づき、制御装置は、サンプル容器の位置、サンプル容器のパーツ、サンプル容器内の液体サンプルの性質、および/または液体サンプル内の分離された成分の特性および/または位置を判定することができる。別の例では、液滴が出射され得る液体サンプルまたはサンプル成分の遊離面付近に音響エネルギーの合焦位置を置くために、音響出射器の位置をそのような判定された情報に基づき調節することができる。さらに別の例では、任意に、閉じているまたは開いているサンプル容器100内により均質なサンプルを形成するために、生体サンプルの成分を混合するための音響エネルギーを照射するように音響出射器を配置することができる。
【0123】
さらに別の実施形態によれば、サンプル容器に導入された液体サンプルの劣化速度を低減するために、1以上の処理された内面および/またはサンプル容器の内部と一体化している他の処理された構成要素(例えば、サンプル容器100の注入口110および/またはキャップ120)を提供することにより、サンプル容器(例えば、サンプル容器100)は液体サンプル(例えば、液体サンプル420)を保存するように適合される。例えば、液体サンプルにおいて、サンプルの劣化につながる物質が1以上の内面の1以上の処理により固定化および/または不活性化されるため、そのような処理により所望の分析試験のための液体サンプルの組成を維持することができる。別の例では、1以上の内面の1以上の処理は、液体サンプルの容器の1以上の内面との接触により開始され、当該処理はサンプル容器からの液滴の音響出射とも両立する。さらに別の例では、上記処理は、サンプル容器(例えば、サンプル容器100)から出射されたいかなる液滴(例えば、1以上の液滴430)も汚染せず、そのような処理は、サンプル容器中に配置することができる様々な量の液体サンプルに関してほぼ同じ保存効果を提供するのに十分豊富に起こる。
【0124】
生体サンプルの取り扱いにおいて本発明の様々な実施形態では様々な応用がある。ある実施形態では、細胞を含有する多くの患者サンプルが細胞培養物に接種するために用いられ、バクテリアおよび/またはウイルスなどの1以上の病原性物質の存在を調べるために用いられる。例えば、細胞を増殖させた固体または半固体の培地層によって覆われた内面を有する1以上のサンプル容器(例えば、サンプル容器100)に所望の種類の細胞を接種する。別の例では、細胞を培養に適した条件に供した後、当該細胞は出射された液滴(例えば、1以上の液滴430)内の懸濁液としてサンプル容器から除去され、任意に濃縮される。さらに別の例では、その後必要に応じて、特定のウイルス物質が細胞から抽出される。
【0125】
別の実施形態によれば、液体サンプルを保持し移動させるためのサンプル容器は、液体サンプルがサンプル容器に入るように構成された注入口と、上記液体サンプルの1以上の液滴が、各々1以上の音響出射によって、サンプル容器から排出されるように構成された排出口とを備える。上記注入口および排出口は異なる位置にある。例えば、上記サンプル容器は、少なくとも図1(A)、1(B)、2、3、4(A)、4(B)、5(A)、5(B),6、7(A)、7(B)および/または8に従って実施される。
【0126】
別の例では、上記サンプル容器は、上記サンプル容器と音響発生器との間に音響結合を生じさせ、上記液体サンプル内の焦点に音響ビームを合焦させるよう構成された側面をさらに備える。さらに別の例では、上記サンプル容器は、上記側面が横向きに置かれている場合に、上記1以上の液滴の上記排出口を通った上記1以上の音響出射を可能とするようにさらに構成される。さらに別の例では、上記排出口は上記側面の反対側にある。さらに別の例では、上記排出口は、キャップ、隔壁 、摺動部材、捻回部材、接着剤、および電気的に作動する部材からなる群から選ばれた少なくとも1つにより制御される。
【0127】
さらに別の例では、上記サンプル容器は、上記液体サンプルの1以上の成分に対応する1以上の濃度に関連付けられた1以上のフロートをさらに備える。さらに別の例では、上記1以上のフロートは、音響的に均一である。さらに別の例では、上記1以上のフロートは、各々、上記液体サンプルの1以上の成分のものとは異なる1以上の音響インピーダンス値に関連付けられている。さらに別の例では、上記サンプル容器は、1以上の化学反応を起こし、上記液体サンプルにおける1以上の検体の劣化または分解を低減させるために、上記液体サンプルに1以上の物質を添加することにより修飾されるようにさらに構成される。さらに別の例では、上記サンプル容器は、上記1以上の化学反応により、上記液体サンプルの1以上の成分をトラップまたは不活性化するようにさらに構成される。さらに別の例では、上記サンプル容器は、上記1以上の出射された液滴への、上記1以上の物質のいずれかの放出を防ぐようにさらに構成される。
【0128】
さらに別の実施形態によれば、液体サンプルを保持し移動させるための方法は、注入口を介し液体サンプルをサンプル容器に移動させる工程と、排出口を介し上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程とを含む。上記注入口および排出口は異なる位置にある。例えば、上記方法は、少なくとも図1(A)、1(B)、2、3、4(A)、4(B)、5(A)、5(B),6、7(A)、7(B)および/または8に従って実施される。
【0129】
別の例では、上記方法は、上記サンプル容器の側面を横向きに配置する工程と、少なくとも上記側面を介して上記サンプル容器と音響発生器とを音響結合させる工程と、上記音響発生器により音響ビームを発生させる工程と、上記音響ビームを上記液体サンプル中の焦点へ合焦させる工程とをさらに含む。さらに別の例では、上記排出口を介し上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程は、上記側面の反対側の上記排出口を介して上記1以上の液滴を音響出射させる工程を含む。さらに別の例では、上記方法は、上記サンプル容器を少なくとも揺動または回転させることによって上記液体サンプルから1以上の気泡を除去する工程をさらに含む。さらに別の例では、上記方法は、音響により 上記液体サンプル中の1以上の気泡を検出する工程と、上記液体サンプルから上記1以上の気泡を除去する工程とをさらに含む。
【0130】
さらに別の例では、上記方法は、上記サンプル容器へ1以上のフロートを配置する工程と、上記液体サンプルを複数の成分に階層化する工程とを含む。上記1以上のフロートのそれぞれは、上記複数の成分の内の1以上の成分に対応する濃度と関連付けられている。さらに別の例では、上記方法は、上記1以上のフロートのそれぞれが上記複数の成分の内の1以上の成分を選択された収集領域に保持した状態で、上記サンプル容器を縦向きから横向きに変える工程をさらに含む。さらに別の例では、上記方法は、上記1以上のフロートの少なくとも1つの位置を音響的に決定する工程をさらに含む。上記排出口を介し上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程は、上記1以上のフロートの少なくとも1つに対応する上記1以上の成分の少なくとも1つの液滴を音響出射させる工程を含む。
【0131】
さらに別の例では、上記方法は、1以上の化学反応を起こし、上記液体サンプルにおける1以上の検体の劣化または分解を低減させるために、上記液体サンプルに1以上の物質を添加することにより上記サンプル容器を変性させる工程をさらに含む。さらに別の例では、上記サンプル容器を変性させる工程は、上記液体サンプルの1以上の成分をトラップまたは不活性化する工程を含む。さらに別の例では、上記サンプル容器を変性させる工程は、上記1以上の出射された液滴へ上記1以上の物質のいずれかを放出しない。
【0132】
さらに別の例では、上記方法は、上記サンプル容器の側面を横向きに配置する工程と、上記サンプル容器内にある上記1以上のフロートの各々の1以上の位置を決定する工程とをさらに含む。さらに別の例では、上記1以上のフロートの各々の1以上の位置を決定する工程は、上記1以上のフロートを音響的に検出する工程を含む。さらに別の例では、上記方法は、少なくとも上記側面を介し上記サンプル容器と音響発生器とを音響結合させる工程と、上記1以上の位置の1つと関連付けられた情報に少なくとも基づき、上記音響発生器を上記1以上のフロートの少なくとも1つと一列に並べる工程と、上記音響発生器により音響ビームを発生させる工程と、上記液体サンプル内の上記1以上のフロートの1つに対応する焦点に上記音響ビームをフォーカスさせる工程とを含む。
【0133】
さらに別の実施形態によれば、液体サンプルを保持する方法は、液体サンプルをサンプル容器に移動させる工程と、上記サンプル容器の1以上の内面に1以上の物質を添加する工程と、上記サンプル容器の上記1以上の内面上の上記1以上の物質に上記液体サンプルの1以上の成分を結合させる工程とを含む。例えば、上記方法は、少なくとも図9に従って実施される。
【0134】
別の例では、上記サンプル容器の上記1以上の内面上の上記1以上の物質に上記液体サンプルの1以上の成分を結合させる工程は、上記1以上の物質を介し上記1以上の内面に上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分を結合させる工程を含む。さらに別の例では、上記1以上の物質を介し上記1以上の内面に上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分を結合させる工程は、上記1以上の物質を介し上記1以上の内面に上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分の総量の50%以上を結合させる工程を含む。さらに別の例では、上記1以上の物質の1つの結合能力は、上記液体サンプル内の上記1以上の部分の所定の量の50%を超える。さらに別の例では、上記1以上の物質を介し上記1以上の内面に上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分を結合させる工程は、上記1以上の物質の1つのリンカーにより、上記液体サンプル中の上記1以上の成分の第1の数の付着位置 を設ける工程を含む。上記第1の数の付着位置は上記1以上の内面に対する上記1つのリンカーにより設けられる第2の数の付着位置よりも多い。さらに別の例では、上記1つのリンカーは、ホモ多官能性リンカーおよびヘテロ多官能性リンカーからなる群から選ばれた1つを含む。
【0135】
さらに別の例では、上記サンプル容器により許容される上記液体サンプルの最大量は1mL以下である。さらに別の例では、上記サンプル容器により許容される上記液体サンプルの最大量は300μL以下である。さらに別の例では、上記方法は、上記液体サンプルの1以上の液滴を上記サンプル容器から外部に移動させる工程をさらに含む。上記外部に移動させた1以上の液滴は上記1以上の物質のいずれも含まない。さらに別の例では、上記サンプル容器の上記1以上の内面上の上記1以上の物質に上記液体サンプルの1以上の成分を結合させる工程は、上記液体サンプル中の1以上の部分の劣化または分解を低減させる工程を含む。
【0136】
〔サンプル容器の誘導体化の実施例A〕
実施例Aを図9に示すように実施形態として行った。ポリプロピレン1.5mLマイクロチューブ(Eppendorf、Safe−Lock、カタログ番号022363204、Hauppauge、ニューヨーク)をPVA TePla America(コロナ、CA)へ送り、そこでこれらのチューブをプラズマで処理し当該チューブの露出した表面を共有結合されたヒドロキシル基の導入により親水性にした。
【0137】
その後、これらのプラズマ処理チューブは、内面をシリル化した。2mLの純3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS、カタログ番号SIA0611.0、Gelest,Inc.,Morrisville、PA)を190mLのメタノールに加え、均質になるように混合した。10mLの脱イオン水をアルコール溶液に加え、当該溶液を均質になるように混合した。当該溶液を時折混ぜながら1時間室温で置き、シリル化試薬を加水分解しオリゴマーを形成した。プラズマ処理されたポリプロピレンチューブをAPTMS溶液で満たし、キャップをし、一晩軽く振とうさせた。
【0138】
一晩インキュベートした後、チューブから液体を流し出し、チューブを1.5mLのメタノールで3回洗浄し、その後イソプロパノール(EMD Millipore、カタログ番号PX1834−1、ダルムシュタット、ドイツ)で2回洗浄した。チューブを真空下で乾燥させた。完全に乾燥させキュアした後、無酸素の乾燥した環境を確保するため、乾燥剤のパック(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号07−580、Waltham、MA)の存在下で窒素被覆の下で閉めた状態で格納した。
【0139】
次の工程の直前に3つの異なるリガンドの溶液を作製した。20mLの無水ジメチルホルムアミド(DMF、Sigma−Aldrich、カタログ番号227056)に77μLの3−アミノ−1−プロパノール(AP、Sigma−Aldrich、カタログ番号A76400、St.Louis、MO)を溶解し完全に混合することにより50mMのリガンドAP溶液を作った。例えば、APの溶液はトリプシンタンパク分解活性の阻害剤となることを期待されていない。20mLの無水DMFに37mgのN−アルファ−トシル−L−リジンクロロメチルケトン塩酸塩(TLCK、Sigma−Aldrich、カタログ番号90182、Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を溶解し完全に混合することにより5mMのリガンドTLCK溶液を作った。別の例では、TLCKの溶液はトリプシンタンパク分解活性の阻害剤となることを期待されている。20mLの無水DMFに24mgのフッ化4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩(AEBSF、カタログ番号A8456、Sigma−Aldrich)を溶解し完全に混合することにより5mMのリガンドAEBSF溶液を作った。さらに別の例では、AEBSFの溶液はトリプシンタンパク分解活性の阻害剤となることを期待されている。
【0140】
20mLの無水DMFに50mgの上記液体を溶解させることによりホモ二官能性リンカーのジ−(N−ヒドロキシスクシンイミジル)−4,7,10,13,16−ペンタオキサノナデカ−1,19−ジオアート(BS5、Thermo Fisher Scientific Inc.、カタログ番号21581)の溶液を新たに作製し、4.7mMの溶液を作った。11.3μLの無水ピリジン(1.5等量)をDMF溶液に加えた。この溶液1.0mLを、キュアされAPTMS誘導体化されたポリプロピレンチューブのそれぞれに加えた。チューブをキャップし、時折混ぜながら2時間室温でインキュベートした。その後BS5の溶液をチューブから流し出した。
【0141】
リガンドAP溶液、リガンドTLCK溶液およびリガンドAEBSF溶液を含む3つの新たに作製されたリガンド溶液のそれぞれの1.0mLを各新たに作製された誘導体化されたポリプロピレンチューブに即座に加え、時折混ぜながら2時間室温でインキュベートした。インキュベート後、リガンド溶液をチューブから流し出し、チューブを1.5mLの無水DMFで洗浄した。1.5mLの100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、Gibco−BRL、カタログ番号15567−027、Grand Island、NY)の水溶液(pH7.5)を各ポリプロピレンチューブに加えた。TRIS溶液と共にチューブを30分間室温で培養した。この培養は、チューブの内壁にもう活性リンカー部分が付着していないことを確実にするために行った。TRIS溶液をチューブから捨て、チューブを1.5mLの脱イオン水で3回洗浄した。その後、チューブを1.5mLのイソプロパノールで洗浄し、25mmの水銀の真空下、室温で乾燥させた。チューブを完全に乾燥させた後、4℃、窒素下で格納した。
【0142】
プロテアーゼ活性およびその阻害を蛍光プロテアーゼアッセイキット(Thermo Scientific Pierce、カタログ番号23266)で測定した。TRISバッファサリン(TBS、25mM Tris、0.15M NaCl、pH7.2)をキット内の乾燥固体から脱イオン水で再構成した。1mLの脱イオン水でキットからのTPCKトリプシンを溶解することによりトリプシンストック溶液を新たに作製し、50mg/mLの溶液を作った。トリプシン活性に影響を与えずにキモトリプシン活性の汚染を阻害するため、TPCKトリプシンはL−1−トシルアミド−2−フェニルエチルクロロメチルケトン(TPCK)で処理される。10μLのアリコットを−60℃で格納した。原液の個々のアリコットを1.0mLのTBSにおいて希釈し(0.5mg/mL)、この溶液10μLを10mLのTBSにおいてさらに希釈した(0.5μg/mL)。この溶液を逐次1:1でTBSにて希釈し62.5ng/mLのトリプシン溶液を作った。当該トリプシン溶液を使用するまでアイスバス中に置いておいた。200μLの希釈したトリプシン(12.5 ng)を、作製した各ポリプロピレンチューブに加えた。溶液が完全に混ざりチューブの誘導体化された内壁と接触することを確実にするため、各チューブ内において溶液を3回吸引し再投与した。移動の度に新しい使い捨てチップを用いた。120分間室温でインキュベートした後、各チューブから100μLのトリプシン溶液を96ウェルの黒色の平底プレート(Greiner Bio−one、カタログ番号655076、Monroe、NC)の個々のウェルに入れた。TBSバッファにおけるFTC−カゼイン(フルオレセインイソチオシアネートの付加により修飾されたカゼインタンパク質、蛍光プロテアーゼアッセイキットの一部)溶液を新たに作製し、この溶液100μLを各ウェルに加え、吸引と投与とにより混合した。プレートを95分間室温でインキュベートした。96ウェルプレート中のサンプルの蛍光を、溶液を加えてから5分後そしてさらに10、20、40、60および95分後に、SpectraFluor Plus蛍光分光計(Tecan、Mannedorf、スイス)で測定した。増大した蛍光は、無傷のタンパク質に存在するFRETベースの蛍光消光の減少を介し加えられたFTC−カゼイン溶液のトリプシンを介した消化を示すものである。
【0143】
20分後、FTC−カゼインを含有しトリプシンを含有しないコントロールウェルは平均して5382RFU(相対蛍光単位)のバックグラウンド蛍光であった。この値は、FTC−カゼイン、トリプシンおよび0.1mMTLCK(6841RFU)を含むウェルやFTC−カゼイン、トリプシンおよび1.0mMAEBSF(5265RFU)を含むウェルと遜色ないものだった。システムのバックグラウンド蛍光として全ての数値から5382RFUを引いた。固定化APリガンドを有するチューブに露出したトリプシンを含有するウェルの平均は21289RFUだった。例えば、APリガンドは、トリプシンの阻害を示すことを期待されていない。別の例では、21289RFUは、阻害剤が加えられず大量のトリプシン(50ng/ウェル)が存在するウェル(21035RFU)と遜色ないものだった。これらの場合の両方において、阻害なく顕著なトリプシン活性を期待することができる。
【0144】
上記のように固定化したAEBSFリガンドに露出されたトリプシンは13164RFUの平均蛍光を示し、上記のように固定化したTLCKリガンドに露出したトリプシンは15521RFUの蛍光を有していた。上記のように固定化したAEBSFリガンドは50%のトリプシン活性の阻害を示し、上記のように固定化したTLCKリガンドは35%のトリプシン活性の阻害を示した。よって、固定化したリガンドによるトリプシンのより強い阻害は、TLCKではなくAEBSFによって達成された。さらに、この阻害方法は、チューブを最初にプラズマ処理しヒドロキシル化表面を生じていれば、より効果的である。
【0145】
〔サンプル容器の誘導体化の実施例B〕
実施例Bを図9に示すように別の実施形態として行った。ポリプロピレン1.5mLマイクロチューブをIntegrated Surface Technologies(Menlo Park、CA)へ送り、そこでこれらのチューブを処理し当該チューブの露出した表面をシリカの原子層成長法により親水性にした。
【0146】
その後、これらの処理チューブは、内面をシリル化した。2mLの純(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン(カタログ番号SIG5840.0、Gelest,Inc.、Morrisville、PA)を190mLのメタノールに加え、均質になるように混合した。10mLの脱イオン水をアルコール溶液に加え、当該溶液を均質になるように混合した。当該溶液を時折混ぜながら1時間室温で置き、シリル化試薬を加水分解しオリゴマーを形成した。処理されたポリプロピレンチューブをシリル化溶液で満たし、キャップをし、一晩軽く振とうさせた。
【0147】
一晩インキュベートした後、チューブから液体を流し出し、チューブを1.5mLのメタノールで3回洗浄し、その後イソプロパノール(EMD Millipore、カタログ番号PX1834−1、Darmstadt、ドイツ)で2回洗浄した。チューブを真空下で乾燥させた。完全に乾燥させキュアした後、無酸素の乾燥した環境を確保するため、乾燥剤のパック(Thermo Fisher Scientific、カタログ番号07−580、Waltham、MA)の存在下で窒素被覆の下で閉めた状態で格納した。
【0148】
次の工程の直前に3つの異なるリガンドの溶液を作製した。20mLの無水ジメチルホルムアミド(DMF、Sigma−Aldrich、カタログ番号227056)に77μLの3−アミノ−1−プロパノールを溶解し完全に混合することにより50mMのリガンドAP溶液を作った。例えば、APの溶液はトリプシンタンパク分解活性の阻害剤となることを期待されていない。20mLの無水DMFに37mgのN−アルファ−トシル−L−リジンクロロメチルケトン塩酸塩(TLCK、Sigma−Aldrich、カタログ番号90182、Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を溶解し完全に混合することにより5mMのリガンドTLCK溶液を作った。別の例では、TLCKの溶液はトリプシンタンパク分解活性の阻害剤となることを期待されている。20mLの無水DMFに24mgのフッ化4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホニル塩酸塩(AEBSF、カタログ番号A8456、Sigma−Aldrich)を溶解し完全に混合することにより5mMのリガンドAEBSF溶液を作った。さらに別の例では、AEBSFの溶液トリプシンタンパク分解活性の阻害剤となることを期待されている。
【0149】
リガンドAP溶液、リガンドTLCK溶液およびリガンドAEBSF溶液を含む3つの新たに作製されたリガンド溶液のそれぞれの1.0mLを各新たに作製された誘導体化されたポリプロピレンチューブに即座に加え、時折混ぜながら2時間室温でインキュベートした。インキュベート後、リガンド溶液をチューブから流し出し、チューブを1.5mLの無水DMFで洗浄した。pH7.5の水における1.5mLの100mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS、Gibco−BRL、カタログ番号15567−027、Grand Island、NY)の溶液を各ポリプロピレンチューブに加えた。TRIS溶液と共にチューブを30分間室温でインキュベートした。このインキュベートは、チューブの内壁にもう活性リンカー部分が付着していないことを確実にするために行った。TRIS溶液をチューブから捨て、チューブを1.5mLの脱イオン水で3回洗浄した。その後、チューブを1.5mLのイソプロパノールで洗浄し、25mmの水銀の真空下、室温で乾燥させた。チューブを完全に乾燥させた後、4℃窒素下で格納した。
【0150】
プロテアーゼ活性およびその阻害を蛍光プロテアーゼアッセイキット(Thermo Scientific Pierce、カタログ番号23266)で測定した。TRISバッファサリン(TBS、25mM Tris、0.15M NaCl、pH7.2)をキット内の乾燥固体から脱イオン水で再構成した。1mLの脱イオン水でキットからのTPCKトリプシンを溶解することによりトリプシンストック溶液を新たに作製し、50mg/mLの溶液を作った。10μLのアリコットを−60℃で格納した。原液の個々のアリコットを1.0mLのTBSにおいて希釈し(0.5mg/mL)、この溶液10μLを10mLのTBSにおいてさらに希釈した(0.5μg/mL)。この溶液を逐次1:1でTBSにて希釈し62.5ng/mLのトリプシン溶液を作った。当該トリプシン溶液を使用するまでアイスバス中に置いておいた。希釈したトリプシン(12.5 ng)200μLを、作製した各ポリプロピレンチューブに加えた。溶液が完全に混ざりチューブの誘導体化された内壁と接触することを確実にするため、各チューブ内において溶液を3回吸引し再投与した。移動の度に新しい使い捨てチップを用いた。120分間室温でインキュベートした後、各チューブから100μLのトリプシン溶液を96ウェルの黒色の平底プレート(Greiner Bio−one、カタログ番号655076、Monroe、NC)の個々のウェルに入れた。TBSバッファにおけるFTC−カゼイン(フルオレセインイソチオシアネートの付加により変性されたカゼインタンパク質、蛍光プロテアーゼアッセイキットの一部)溶液を新たに作製し、この溶液100μLを各ウェルに加え、吸引と投与により混合した。プレートを95分間室温でインキュベートした。96ウェルプレート中のサンプルの蛍光を、溶液を加えてから5分後そしてさらに10、20、40、60および95分後に、SpectraFluor Plus蛍光分光計(Tecan、Mannedorf、スイス)で測定した。増大した蛍光は、無傷のタンパク質に存在するFRETベースの蛍光消光の減少を介し加えられたFTC−カゼイン溶液のトリプシンを介した消化を示すものである。
【0151】
20分後、FTC−カゼインを含有しトリプシンを含有しないコントロールウェルは平均して5382RFU(相対蛍光単位)のバックグラウンド蛍光であった。この値は、FTC−カゼイン、トリプシンおよび0.1mM TLCK(6841RFU)を含むウェルやFTC−カゼイン、トリプシンおよび1.0mM AEBSF(5265RFU)を含むウェルと遜色ないものだった。システムのバックグラウンド蛍光として全ての数値から5382RFUを引いた。固定化APリガンドを有するチューブに露出したトリプシンを含有するウェルの平均は20847RFUだった。例えば、APリガンドは、トリプシンの阻害を示すことを期待されていない。
【0152】
上記のように固定化したAEBSFリガンドに露出されたトリプシンは12592RFUの平均蛍光を示し、上記のように固定化したTLCKリガンドに露出したトリプシンは13386RFUの蛍光を有していた。上記のように固定化したAEBSFリガンドは53%のトリプシン活性の阻害を示し、上記のように固定化したTLCKリガンドは48%のトリプシン活性の阻害を示した。よって、固定化したリガンドによるトリプシンのより強い阻害は、TLCKではなくAEBSFによって達成された。
【0153】
例えば、本発明の様々な実施形態の一部または全ての構成要素は、個々にまたは少なくとも別の構成要素と組み合わせて、1以上のソフトウェア構成要素、1以上のハードウェア構成要素および/またはソフトウェア・ハードウェア構成要素の1以上の組み合わせを用いて実施される。別の例では、例えば、本発明の様々な実施形態の一部または全ての構成要素は、個々にまたは少なくとも別の構成要素と組み合わせて、1以上のアナログ回路および/または1以上のデジタル回路などの1以上の回路において実行される。さらに別の例では、本発明の様々な実施形態および/または実施例を組み合わせることができる。
【0154】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願および公報が、参照として本明細書にその全体が援用される。ただし、1以上の明確な定義を含む特許、特許出願または公報が参照として援用される場合、これらの明確な定義は、それらを記載している援用された特許、特許出願または公報に適用され、本出願の残りの記載、特に本出願の特許請求の範囲に適用されるものではないと理解されるべきである。
【0155】
本発明の特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態と同等の他の実施形態もあることは当業者に理解されるだろう。よって本発明は記載された特定の実施形態により限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであることが理解されるだろう。
【0156】
なお、本発明は、以下の発明を包含する。
【0157】
(1) 液体サンプルを保持し移動させるためのサンプル容器であって、
液体サンプルがサンプル容器に入るように構成された注入口と、
上記液体サンプルの1以上の液滴のそれぞれが、1以上の音響出射のそれぞれによって、サンプル容器から排出されるように構成された排出口と、を備え、
上記注入口および排出口は異なる位置にあることを特徴とするサンプル容器。
【0158】
(2)上記サンプル容器と音響発生器との間に音響結合を生じさせ、上記液体サンプル内の焦点に音響ビームを合焦させるよう構成された側面をさらに備えることを特徴とする(1)に記載のサンプル容器。
【0159】
(3)上記側面が横向きに置かれている場合に、上記1以上の液滴の、上記排出口を通った上記1以上の音響出射を可能とするようにさらに構成された(2)に記載のサンプル容器。
【0160】
(4)上記排出口は、上記側面の反対側にあることを特徴とする(3)に記載のサンプル容器。
【0161】
(5)上記排出口は、キャップ、隔壁、摺動部材、捻回部材、接着剤、および電気的に作動する部材からなる群から選ばれた少なくとも1つにより制御されることを特徴とする(3)に記載のサンプル容器。
【0162】
(6)上記液体サンプルの1以上の成分に対応する1以上の濃度に関連付けられた、1以上のフロートをさらに備えることを特徴とする(1)に記載のサンプル容器。
【0163】
(7)上記1以上のフロートは、音響的に均一であることを特徴とする(6)に記載のサンプル容器。
【0164】
(8)上記1以上のフロートは、各々、上記液体サンプルの1以上の成分のものとは異なる1以上の音響インピーダンス値に関連付けられていることを特徴とする(6)に記載のサンプル容器。
【0165】
(9)1以上の化学反応を起こし、上記液体サンプルにおける1以上の検体の劣化または分解を低減させるために、上記液体サンプルに1以上の物質を添加することにより修飾されるようにさらに構成された(1)に記載のサンプル容器。
【0166】
(10)上記1以上の化学反応により、上記液体サンプルの1以上の成分をトラップまたは不活性化するようにさらに構成された(9)に記載のサンプル容器。
【0167】
(11)上記1以上の出射された液滴への、上記1以上の物質のいずれかの放出を防ぐようにさらに構成された(9)に記載のサンプル容器。
【0168】
(12)液体サンプルを保持し移動させるための方法であって、
注入口を介して液体サンプルをサンプル容器に移動させる工程と、
排出口を介して上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程と、を含み、
上記注入口および排出口は異なる位置にあることを特徴とする方法。
【0169】
(13)上記サンプル容器の側面を横向きに配置する工程と、
少なくとも上記側面を介して上記サンプル容器と音響発生器とを音響結合させる工程と、
上記音響発生器により音響ビームを発生させる工程と、
上記音響ビームを上記液体サンプル中の焦点へ合焦させる工程と、をさらに含むことを特徴とする(12)に記載の方法。
【0170】
(14)上記排出口を介して上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程は、上記側面の反対側の上記排出口を介して上記1以上の液滴を音響出射させる工程を含むことを特徴とする(13)に記載の方法。
【0171】
(15)上記サンプル容器を少なくとも揺動または回転させることによって、上記液体サンプルから1以上の気泡を除去する工程をさらに含むことを特徴とする(12)に記載の方法。
【0172】
(16)音響により上記液体サンプル中の1以上の気泡を検出する工程と、
上記液体サンプルから上記1以上の気泡を除去する工程と、をさらに含むことを特徴とする(12)に記載の方法。
【0173】
(17)上記サンプル容器へ1以上のフロートを配置する工程と、
上記液体サンプルを複数の成分に階層化する工程と、を含み、
上記1以上のフロートのそれぞれは、上記複数の成分の内の1以上の成分に対応する濃度と関連付けられていることを特徴とする(12)に記載の方法。
【0174】
(18)上記1以上のフロートのそれぞれが上記複数の成分の内の1以上の成分を選択された収集領域に保持した状態で、上記サンプル容器を縦向きから横向きに変える工程をさらに含むことを特徴とする(17)に記載の方法。
【0175】
(19)上記1以上のフロートの少なくとも1つの位置を音響的に決定する工程をさらに含み、
上記排出口を介して上記液体サンプルの1以上の液滴をサンプル容器から音響出射させる工程は、上記1以上のフロートの少なくとも1つに対応する上記1以上の成分の少なくとも1つの液滴を音響出射させる工程を含むことを特徴とする(17)に記載の方法。
【0176】
(20)1以上の化学反応を起こし、上記液体サンプルにおける1以上の検体の劣化または分解を低減させるために、上記液体サンプルに1以上の物質を添加することにより上記サンプル容器を修飾する工程をさらに含むことを特徴とする(12)に記載の方法。
【0177】
(21)上記サンプル容器を修飾する工程は、上記液体サンプルの1以上の成分をトラップまたは不活性化する工程を含むことを特徴とする(20)に記載の方法。
【0178】
(22)上記サンプル容器を修飾する工程は、上記1以上の出射された液滴へ上記1以上の物質のいずれも放出しないことを特徴とする(20)に記載の方法。
【0179】
(23)上記サンプル容器の側面を横向きに配置する工程と、
上記サンプル容器内にある上記1以上のフロートの各々の1以上の位置を決定する工程と、をさらに含むことを特徴とする(12)に記載の方法。
【0180】
(24)上記1以上のフロートの各々の1以上の位置を決定する工程は、上記1以上のフロートを音響的に検出する工程を含むことを特徴とする(23)に記載の方法。
【0181】
(25)少なくとも上記側面を介して上記サンプル容器と音響発生器とを音響結合させる工程と、
上記1以上の位置の1つと関連付けられた情報に少なくとも基づき、上記音響発生器を上記1以上のフロートの少なくとも1つに位置合わせする工程と、
上記音響発生器により音響ビームを発生させる工程と、
上記液体サンプル内の上記1以上のフロートの1つに対応する焦点に上記音響ビームを合焦させる工程と、を含むことを特徴とする(23)に記載の方法。
【0182】
(26)液体サンプルを保持する方法であって、
液体サンプルをサンプル容器に移動させる工程と、
上記サンプル容器の1以上の内面に1以上の物質を添加する工程と、
上記サンプル容器の上記1以上の内面上の上記1以上の物質に、上記液体サンプルの1以上の成分を結合させる工程と、を含むことを特徴とする方法。
【0183】
(27)上記サンプル容器の上記1以上の内面上の上記1以上の物質に、上記液体サンプルの1以上の成分を結合させる工程は、上記1以上の物質を介して上記1以上の内面に、上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分を結合させる工程を含むことを特徴とする(26)に記載の方法。
【0184】
(28)上記1以上の物質を介して上記1以上の内面に、上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分を結合させる工程は、上記1以上の物質を介して上記1以上の内面に、上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分の総量の50%以上を結合させる工程を含むことを特徴とする(27)に記載の方法。
【0185】
(29)上記1以上の物質の1つの結合能力は、上記液体サンプル内の上記1以上の部分の所定の量の50%を超えることを特徴とする(27)に記載の方法。
【0186】
(30)上記1以上の物質を介して上記1以上の内面に、上記液体サンプル内の1以上の所定のタイプの1以上の部分を結合させる工程は、上記1以上の物質の1つのリンカーにより、上記液体サンプル中の上記1以上の成分の第1の数の付着位置を設ける工程を含み、上記第1の数の付着位置は、上記1以上の内面に対する上記1つのリンカーにより設けられる第2の数の付着位置よりも多いことを特徴とする(27)に記載の方法。
【0187】
(31)上記1つのリンカーは、ホモ多官能性リンカーおよびヘテロ多官能性リンカーからなる群から選ばれた1つを含むことを特徴とする(30)に記載の方法。
【0188】
(32)上記サンプル容器により許容される上記液体サンプルの最大量は1mL以下であることを特徴とする(26)に記載の方法。
【0189】
(33)上記サンプル容器により許容される上記液体サンプルの最大量は300μL以下であることを特徴とする(32)に記載の方法。
【0190】
(34)上記液体サンプルの1以上の液滴を上記サンプル容器から外部に移動させる工程をさらに含み、上記外部に移動させた1以上の液滴は上記1以上の物質のいずれも含まないことを特徴とする(26)に記載の方法。
【0191】
(35)上記サンプル容器の上記1以上の内面上の上記1以上の物質に、上記液体サンプルの1以上の成分を結合させる工程は、上記液体サンプル中の1以上の部分の劣化または分解を低減させる工程を含むことを特徴とする(26)に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0192】
図1A】本発明の実施形態に係る音響出射および分析に適合したサンプル容器を示す概略図である。
図1B】本発明の実施形態に係る音響出射および分析に適合したサンプル容器を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る音響出射および/または分析のための音響発生器とともにサンプル容器を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る音響出射および分析に適合したサンプル容器およびサンプル容器の断面を示す概略図である。
図4A】本発明の実施形態に係る音響発生器によりサンプル容器から出射されている液体サンプルの1以上の液滴を示す概略図である。
図4B】本発明の実施形態に係る音響発生器によりサンプル容器から出射されている液体サンプルの1以上の液滴を示す概略図である。
図5A】本発明の別の実施形態に係るサンプル容器を音響出射および/または分析のための音響発生器と共に示す概略図である。
図5B】本発明の別の実施形態に係るサンプル容器を音響出射および/または分析のための音響発生器と共に示す概略図である。
図6】本発明のある実施形態に係る、サンプル容器中のフロートを用いた液体サンプルの成分の分離および音響出射のための1以上の成分の選択を示す概略図である。
図7A】本発明の実施形態に係るサンプル容器において用いられるフロートの断面を示す概略図である。
図7B】本発明の別の実施形態に係るサンプル容器において用いられるフロートの別の断面を示す概略図である。
図8】本発明の実施形態に係る音響発生器によりサンプル容器から標的へ出射されている液体サンプルの1以上の液滴を示す概略図である。
図9】本発明のある実施形態に係るサンプル容器の1以上の内面および/または容器の内部と一体化している1以上の他の部品に対する表面処理の様々な組み合わせを示す概略図である。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9