【実施例】
【0064】
本発明を、具体的実施例によってより詳細に説明する。以下の実施例は、説明目的のために提供され、本発明をいかなるようにも制限すると意図されない。当業者は、変更または修飾しても本質的に同じ結果を生じることができる多様な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0065】
実施例1
本実施例は、インスリンがおよそ2のpH記憶を有するインスリン/DMSO製剤を調製する方法についての情報を提供する。比較のためのインスリン/H
2O製剤も同様に提供して、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)および動的光散乱(DLS)分析(以下の実施例2および3においてそれぞれ考察される)のために用いる。本明細書の実施例において用いたインスリンは、Sigma-Aldrich(Saint Louis, MO)から購入した組み換え型非修飾ヒトインスリンであったことに注意されたい。
【0066】
インスリン/緩衝剤A/DMSO:組み換え型ヒトインスリン(Sigma-Aldrich, Saint Louis, MO)を緩衝剤A(すなわち、10 mMクエン酸+1 mM EDTA、pH 2.0)中で10 mg/mLの濃度で溶解して、HPLCバイアルに0.25 mLアリコートを入れて、「製剤を作製する方法」の章において上記の段階1〜5に概要した技法に従って凍結乾燥した。各バイアル中の凍結乾燥インスリンは、2.0のpH記憶を有し、DMSO 100μLによって濃度25 mg/mLとなるように再構成した(インスリンは肉眼で検査するためにDMSO中に可溶化した)。この保存液のアリコートを緩衝剤Aによってさらに希釈して、所望のクエン酸緩衝インスリン/DMSO/H
2O溶液(たとえば、DMSOおよび緩衝剤A中で12.5および5 mg/mLインスリン)を作製した。これらの製剤を、「Ins-A/DMSO」またはその表記の希釈液と呼ぶ。
【0067】
インスリン/緩衝剤A/H
2O:インスリンを、蒸留脱イオン水に10 mg/mLの濃度で溶解して、0.25 mLアリコートを凍結乾燥した。インスリン起源および凍結乾燥技法は上記と同じであった。バイアルを緩衝剤A(すなわち、H
2O+10 mMクエン酸+1 mM EDTA、pH2.0)250μLによって再構成して、緩衝剤A溶液中で10 mg/mLのインスリンを作製した。次に、この保存液のアリコートをさらに、緩衝剤Aによって希釈して、所望のインスリン/緩衝剤A溶液(たとえば、緩衝剤A中で5 mg/mLインスリン)を作製した。肉眼で検査するために、インスリンを緩衝剤A中で可溶化した。これらの製剤を「Ins-A/H
2O」と呼ぶ。
【0068】
インスリン/緩衝剤E/DMSO:インスリンを緩衝剤E(すなわち、H
2O+10 mMクエン酸+1 mM EDTA+10 mM NaCl、pH2.0)中で10 mg/mLの濃度で溶解して、0.5 mLアリコートを凍結乾燥した。インスリンの起源および凍結乾燥技法は上記と同じであった。各バイアル中の凍結乾燥インスリンは2.0のpH記憶を有し、DMSO 100μLによって50 mg/mLの濃度となるように再構成した。インスリンを肉眼で検査するためにDMSO中で可溶化した。次に、この保存液のアリコートをDMSOによってさらに希釈して、所望のインスリン/DMSO溶液(たとえば、DMSO中で30、25、10、5、および3 mg/mLインスリン)を作製した。これらの製剤を「Ins-E/DMSO」と呼ぶ。
【0069】
インスリン/緩衝剤EおよびF/H
2O:インスリンを、蒸留脱イオン水に10 mg/mLの濃度で溶解して、0.5 mLアリコートを凍結乾燥した。インスリン起源および凍結乾燥技法は上記と同じであった。1つのバイアルを緩衝剤E 500μLによって再構成して、これは緩衝剤E溶液中で10 mg/mLインスリンを生じた。他のバイアルを緩衝剤F 500μL(すなわち、H
2O+10 mMリン酸-クエン酸+1 mM EDTA+10 mM NaCl、pH 7.0)によって再構成して、これは緩衝剤F溶液中で10 mg/mLのインスリンを生じた。肉眼で検査するために、インスリンを緩衝剤EおよびF溶液の両方において可溶化した。これらの試料をそれぞれ、「Ins-E/H
2O」および「Ins-F/H
2O」と呼ぶ。
【0070】
実施例2
本実施例は、インスリンのコンフォメーションに及ぼすDMSOの効果を示すFTIRデータを提供する。BioTools Inc.(Jupiter, Florida USA)がFTIR分析を行って、対応するデータを提供した(以下を参照されたい)。
【0071】
FTIR分析の材料および方法:以下の製剤をFTIR分析のために調製した。
処方1(F1):緩衝剤Aの1の割合によって12.5 mg/mLに希釈したIns-A/DMSO
処方2(F2):緩衝剤Aによって5 mg/mLに希釈したIns-A/H
2O
処方3(F3):緩衝剤Aによって10 mg/mLに再構成したIns-A/H
2O
処方4(F4):25 mg/mLのIns-A/DMSO
処方5(F5):緩衝剤Aの4の割合によって5 mg/mLに希釈したIns-A/DMSO
【0072】
FTIRスペクトルを、DTGS検出器を備えたPROTA FTIR分光計(BioTools, Inc)において、解像度4 cm-1ならびに各試料および緩衝剤に関して収集時間20分で収集した。試料を記述のように溶解して、水性試料の場合はCaF2窓を用いて6μmバイオセルに入れて、DMSOに基づく試料の場合は75ミクロンセルに入れた。スペクトル分析(緩衝剤の減算および構造の解明)は全て、PROTAソフトウェアスイートを用いて行った。
【0073】
結果:
図1は、コンフォメーション感受性アミド1領域におけるFTIRスペクトルを示す。インスリンプロファイルは、試験した処方1〜5に対して比較的一定のままであることから、これらのデータは、インスリンがDMSO中で非可逆的にアンフォールドしないことを確認する。特に、処方3は、混合α-ヘリックスβ-シートタンパク質を示す典型的なインスリンスペクトルを示す。処方4は、そのプロファイルを保持しながらより高い周波数へのシフトを示す。これは、コンフォメーション変化の結果またはDMSO溶媒のより強い水素結合特徴の結果である可能性がある。処方5は、インスリンの水溶液中でのスペクトルと本質的に同一である。
図1におけるこれらのデータは、インスリンがDMSO中で非可逆的にアンフォールドしないことを確認する。
【0074】
実施例3
本実施例は、対照試料と比較してDMSO中でインスリンの会合状態(すなわち、単量体型、二量体型、六量体型)を確認するためのDLS分析を提供する。Alliance Protein Laboratories(Thousand Oaks, California USA)がDLS分析を行い、対応するデータを提供した(以下を参照されたい)。DLSアッセイを行うために必要であるNaClの存在により、緩衝剤Eおよび緩衝剤F系を用いたことに注意されたい。
【0075】
DLS分析のための材料および方法:以下の製剤をDLS分析のために調製した。
処方6(F6):50 mg/mLのIns-E/DMSO
処方7(F7):30 mg/mLのIns-E/DMSO
処方8(F8):10 mg/mLのIns-E/DMSO
処方9(F9):3 mg/mLのIns-E/DMSO
処方10(F10):10 mg/mLのIns-E/H
2O
処方11(F11):10 mg/mLのIns-F/H
2O
【0076】
DLS(準弾性光散乱または光子相関分光法としても知られる)において、散乱光の時間依存的変動を測定する。これらの変動は、分子のブラウン運動に関連し、それゆえ、拡散係数を決定するために用いることができる。この拡散係数は通常、ストークス-アインシュタイン関係:
を通して流体力学(ストークス)半径R
hに変換され、式中、k
βはボルツマン定数であり、Tは絶対温度、ηは溶媒の粘度、およびDは拡散係数である。
【0077】
データは、12μLの石英散乱セルを用いてProtein Solutions(現在はWyatt Technology)のDynaPro MS/X機器を用いて25℃の調節された温度で収集した。試料を微量遠心機(Fisherモデル235A)において10分間遠心沈降させて、ダストおよび大きい粒子を除去した後、分析キュベットにロードした。典型的に、シグナル/ノイズを改善するために、10秒間のデータ25回の蓄積を記録して平均した。得られたデータを、製造元によって提供されたDynamicsバージョン6.12.0.3ソフトウェアによって分析した。平均(z-平均)サイズは、累積法に基づく。Dynals分析法を用いてサイズ分布を計算した。重量分画は、Ralleigh球モデルを用いて推定した。機器の校正は、時間および距離(光源の波長によって測定した距離)の単位に基づく絶対法である。しかし、その機器の校正は、校正されたラテックス球のサイズ標準(直径21±1.5 nm、Thermo Scientific社の製品3020Aロット35266)を用いて毎年確認する。DMSOの粘度指数を、1.991 cpおよび1.4768と割付した。
【0078】
総合結果:DMSO中のインスリンの凝集状態を、動的光散乱(DLS)を用いて調べた。単量体インスリンは、およそ6 kDaの真の分子量を有する。したがって、二量体インスリンは12 kDaの真の分子量を有し、六量体インスリンは36 kDaの真の分子量を有するであろう。
図2は、調製したDMSOおよび水溶液中で測定したインスリン(すなわち、処方6〜10)の見かけの分子量(MW)を要約する。pH 7.0および濃度10 mg/mL(処方10)での水性製剤中のインスリンの見かけの分子量は53 kDaである。この高濃度では溶液はおそらく非理想液体であり、分子間効果により、真の分子量より大きい見かけの分子量が得られる。それにもかかわらず、測定された見かけの分子量は六量体状態のインスリンを示している。
【0079】
インスリン/DMSO製剤に関して、10 mg/mL(処方7)では、見かけの分子量は16 kDaで、10 mg/mL(処方10)の水性インスリンの分子量のおよそ3分の1であり、DMSO中のインスリンは、この濃度では二量体として会合することを示している。濃度を増加させると観察される見かけの分子量のほぼ直線的な差は、おそらくこの技術の典型である排除体積効果のアーチファクトであることから、このことは、50 mg/mL(処方8〜9)までの濃度の場合にも当てはまるように思われる。しかし、3 mg/mL(処方6)で見かけの分子量が13 kDaに減少したことは、この傾向から外れており、この濃度では単量体への可逆的解離が存在することを示している。
【0080】
これらのDLS試験は、関連する使用濃度の範囲にわたって、DMSO中でのINS-2Eの最大の多量体状態が二量体であり、濃度範囲の下限では、単量体-二量体平衡が存在することを示唆している。これらの知見は、亜鉛の非存在下であっても六量体が優勢で、単量体が不安定で容易に原線維を形成するインスリン水性製剤とは対照的である。インスリンの会合および吸収に関する現在の速度論モデルに基づいて、六量体インスリンを欠如するインスリン製剤では、なおも有意な量の六量体インスリンを含む現在の速効型インスリン(たとえば、Lispro(登録商標)、Aspart(登録商標)等)の吸収速度論より速い吸収速度論が得られるはずであると予想される。併せて考慮すると、これらの物理化学試験は、超速効型インスリン製剤を開発するために非水性溶媒を用いるアプローチが、水性アプローチより成功する可能性がより高いことを示している。速効型製剤を含む水溶液では、単量体インスリンは不安定であり、六量体型が優勢を占めるが、DMSO中では、より急速に吸収されるインスリン単量体/二量体は、比較的高濃度であっても熱力学的に好ましい。さらに、これらのデータ(DLSおよびFTIRデータを含む)は、DMSOによって誘発されるように思われるいかなるコンフォメーションの変化も、水性培地への再構成の際に可逆的であることを示している。
【0081】
処方6(50 mg/mLのIns-E DMSO)の具体的結果:DMSO中で50 mg/mLでのIns-Eに関するサイズ分布(散乱強度対流体力学半径のヒストグラム)を
図3に示す。メインピーク(重量)は第一のピークであり、これは平均半径2.12 nmを有し、総散乱強度の34.7%を表す。その半径は、水性球状タンパク質標準に基づくと、およそ20 kDaのモル質量に対応する。メインピークの他に、より大きい半径で3つのピーク、すなわち平均半径110 nm、2.29μm、および9.85μmが検出される。これらの3つの他のピークは、総散乱強度の約2/3を占めるが、それらは実際に、以下の表2において推定されるように重量百分率で非常に軽微な分画を表す。残念なことに、1μmより大きい種に関する重量推定によって意味のある分画を作製することは可能ではなく、その理由は(1)そのような大きい粒子の散乱は、粒子の詳細な形状に大きく依存し(内部反射により)、および(2)ほぼ全ての散乱光が前方方向に放射され、本明細書において観察される角度90度で放出される散乱光はごく小さい分画であるためである。これらの他の種のいくつかまたは全ては、インスリン凝集体よりむしろ、混入物質または不完全に溶解した緩衝剤成分による可能性がある。
【0082】
(表2)*
(DMSO中で50 mg/mLのIns-Eの要約)
* z-平均半径24.5 nm;平均強度182 kcnt/s。
** この大きい種の重量分画は、信頼可能に推定することができないことから、このピークをこの計算から除外した。
【0083】
処方7(30 mg/mLのIns-E/DMSO)の具体的結果:DMSO中で30 mg/mLのINS-Eについて得られたサイズ分布を
図4に示す。この濃度では、メインピークは、2.02 nmのわずかにより小さい半径の方向にシフトしている(推定質量17 kDa)。特に、2.29および9.85μmの種はもはや検出されず、それらがこの濃度では溶解している緩衝剤成分であったことを強く示唆している。100 nm付近の種の相対強度もまた実質的に低下している。この濃度では、17.7 nmで新規種が検出された。その種は総散乱光の1.9%を表すに過ぎないことから、この種が50 mg/mLの試料中に同じレベルで存在した可能性があるが、眩輝(100 nmおよびそれより大きい種からの強い散乱)の中で失われたことから検出されなかった。DLS(自己補正機能)からの未加工データは、限定的なダイナミックレンジを有し、このことは、総散乱光の約1%未満を表す種がしばしば検出閾値より下に低下することを意味する。これらのデータの要約を処方7に関して表3に提供する。
【0084】
(表3)*
(DMSO中で30 mg/mLのIns-Eの要約)
* z-平均半径2.12 nm:平均強度77.9 kcnt/s。
【0085】
処方8(10 mg/mLのIns-E DMSO)の具体的結果:DMSO中で10 mg/mLでのサイズ分布を
図5に示す。希釈によって、メインピークはさらに1.94 nm(推定質量16 kDa)へと下方にシフトした。この濃度では、17.7 nmのピークは検出されず、100 nm付近の種の相対強度はさらに低下している。5.45μmでの微量の大きい粒子も同様に存在した(が、遠心沈降によるそのような種の除去は時に完全ではない)。表4は、処方8のデータの要約を提供する。
【0086】
(表4)*
(DMSO中で10 mg/mLのIns-Eの要約)
* z-平均半径1.07 nm;平均強度43.1 kcnt/s。
** この大きい種の重量分画は、信頼可能に推定することができないことから、このピークをこの計算から除外した。
【0087】
処方9(3 mg/mLのIns-E/DMSO)の具体的結果:DMSO中で3 mg/mLでのサイズ分布を
図6に示す。この濃度では、メインピークは1.79 nmに低下する(推定質量13 kDa)。この濃度では6.34 nmで新しいピークが検出され、これは少量のインスリン凝集体を表す可能性がある(おそらく凍結乾燥によって生じた)。この試料において60.8 nmで認められるピークはおそらく、より高濃度で100〜110 nmで測定される材料と同じ材料であり、明らかなシフトは、この濃度でのシグナル/ノイズがより低いためでありうるか、または6.34 nmでの新しいピークの分解の結果である可能性がある。表5は、処方9のデータの要約を提供する。
【0088】
(表5)*
(DMSO中で3 mg/mLのIns-Eの要約)
* z-平均半径0.24 nm;平均強度31.4 kcnt/s。
【0089】
処方10(Ins-E/H
2O)の具体的結果:緩衝剤E(pH 2.0)におけるIns-H
2Oのサイズ分布を
図7に示す。メインピークは、半径3.08 nmで起こる。その半径は、推定質量47 kDaに対応し、この低いpHでも試料がなおも主に六量体(またはそれ以上)であることを示唆している。10 mg/mLの濃度では、溶液の非理想液体(「分子クラウディング」)効果がサイズの何らかの歪みを引き起こしている可能性があるが、歪みが上向きとなるか下向きとなるかは、静電気効果または排除体積効果のどちらが優勢であるかに依存することに注意されたい。27 nmおよび165 nmでの微量のより大きい種も同様に検出されたが、これらがインスリン凝集体または微粒子混入物のどちらを表すかは不明である。表6は、処方10のデータの要約を提供する。
【0090】
(表6)*
(緩衝剤Eにおける10 mg/mLのIns-H
2Oの要約)
* z-平均半径4.06 nm;平均強度375 kcnt/s。
【0091】
処方10(Ins-F/H
2O)の具体的結果:緩衝剤F(pH 7.0)中のIns-H
2Oのサイズ分布を
図8に示す。メインピークは半径3.26nmで起こる。その半径は、推定質量53 kDaに対応する。この場合も、10 mg/mLでは溶液の非理想液体効果がサイズの何らかの歪みを引き起こしている可能性があるが、中性pHでの電荷がより低いことはおそらく、排除体積効果が優勢であることを意味しており、それゆえ見かけのサイズは真のサイズよりわずかに大きいであろう。35 nmおよび238 nmでの微量のより大きい種も同様に検出された。表7は処方11のデータの要約を提供する。
【0092】
(表7)*
(緩衝剤Fにおける10 mg/mLのIns-H
2Oの要約)
* z-平均半径3.80 nm;平均強度447 kcnt/s。
【0093】
実施例4
本実施例は、本発明の製剤の文脈におけるプラムリンタイドとインスリン/プラムリンタイド配合剤に関するデータを提供する。
【0094】
DMSOおよびDMSO-水共溶媒中でのプラムリンタイドの溶解度:プラムリンタイド溶液を10 mMクエン酸、pH 2.0、または10 mMクエン酸、pH 4.0においてそれぞれ2 mg/mLトレハロースの存在下または非存在下で2 mg/mLの濃度で調製した。溶液を、真空下の25〜30℃でおよそ3.5時間遠心沈降させることによって乾燥させるか、または上記のように凍結乾燥した。
【0095】
2.0のpH記憶を有する乾燥クエン酸緩衝プラムリンタイド(トレハロースの存在下および非存在下)は、DMSO原液に数分間時折軽くピペッティングすることによって20 mg/mL(調べた最高濃度)で完全に溶解した。得られた溶液は流動性であり、肉眼での検査によって完全に透明であった。
【0096】
4.0のpH記憶を有する乾燥クエン酸緩衝プラムリンタイドは、DMSO原液における2 mg/mLの開始濃度への再構成に対していくぶん抵抗性であり、水には事実上不溶性であった。6%から10%の水を、名目上のプラムリンタイド濃度2から5 mg/mLでDMSO中のプラムリンタイドに加えると、肉眼での検査によって測定した場合にペプチドの溶解度は改善されたか、またはほぼ完全な溶解度が得られた。
【0097】
インスリンとプラムリンタイドの配合剤:インスリンとプラムリンタイドの配合剤を以下のように調製した:組み換え型ヒトインスリンを、10 mMクエン酸/1.0 mM EDTA緩衝剤、pH 2中で10 mg/mLの濃度で溶解した。プラムリンタイドを10 mMクエン酸、pH 2.0中で2 mg/mLの濃度で、2 mg/mLトレハロースの存在下または非存在下で溶解した。溶液を上記のように0.5 mLアリコートにして真空下での遠心沈降によって乾燥させた。インスリンをDMSO 50μLによって、100 mg/mLの濃度に再構成して、プラムリンタイドをDMSO 50μLによって20 mg/mLの濃度に再構成した。ペプチド-DMSO溶液の等量を混合して、10 mg/mLトレハロースの存在下または非存在下で、50 mg/mLインスリンと10 mg/mLプラムリンタイドの混合溶液を得た。溶液は流動性で、肉眼での検査によって完全に透明であった。インスリン対プラムリンタイド5:1(w/w)の比率は、可能な1つの代表的な治療用量比であり、ペプチドは、肉眼での観察により1つの高濃度溶液中で6時間以上安定に維持された。既存の製剤技術では、これらのペプチドは、個別の非適合性の緩衝系を必要として、体の個別の部位での個別の注射による投与を必要としており、このことは、この有益な処置を実行するにあたって有意な障害となる。
【0098】
実施例5
これは、既存の速効型インスリン製品(たとえば、Aspart(登録商標)、Glulisine(登録商標)、Lispro(登録商標))と比較した場合の、本発明の製剤の生物活性、薬理活性、および薬物動態能を決定するための予言的実施例である。
【0099】
生物活性:細胞レベルでのインスリンの作用は、インスリン受容体(IR)に対する結合、受容体の自己リン酸化、インスリン受容体基質のIR媒介リン酸化、およびその後のPI3キナーゼ-Aktカスケードの活性化を伴う。受容体結合は、部分的にインスリン分子の会合状態によって決定され、このように、インスリン製剤の全体的な生物活性のみならず、ペプチドの多量体(または単量体)状態を測定することができる。本発明の製剤の生物活性は、R&D Systems社の酵素結合免疫測定法(ELISA)キットを用いて、IR-Bイソ型(インスリン感受性組織において見いだされる主要な型)を過剰発現するマウス胚線維芽細胞におけるIRリン酸化の誘導能によって測定および比較することができる。IR結合は、単独では必ずしも、グルコース調節および脂肪酸取り込みおよび脂肪分解などの最終的な生物反応に対してより近い下流のシグナル伝達を予測しないが、細胞溶解物は、リン酸化Aktに関して同様に定量することができる(その全てが参照により本明細書に組み入れられる、Marks, A.G., et al. (2011), "Plasma distribution and signaling activities of IGF-II precursors. Endocrinology," 152:922-930; Denley, A., et al. (2007), "Differential activation of insulin receptor substrates (IRS)-1 and 2 by IGF-activated insulin receptors," Mol. Cell. Biol. 27:3569-3577; and Denley, A., et al. (2006), "Differential activation of insulin receptor isoforms by insulin-like growth factors is determined by the C domain," Endocrinology, 147:1029-1036を参照されたい)。
【0100】
薬理学:薬理学試験は、皮下留置血管アクセスポート(VAP)を有するオクトレオチドを注入した意識のあるブタモデルを用いて行うことができる。非糖尿病Yorkshire系ブタモデルは、(a)炭水化物生理学がヒトと類似である、(b)IVカテーテル留置にとって適した大きい静脈、(c)意識のあるモデルにより長時間の麻酔の合併症(アテレクターゼ、肺炎、挿管/抜管困難)がない、および(d)1匹のブタを多数回の試験のために用いることができることに基づき、用いることができる。試験は、0、5、10、20、30、45、60、90、120、180、および240分の時点を用いて、許容可能なインスリン用量(たとえば、0.2 mg/kg)を有する本発明の製剤を試験するために設計することができる。
【0101】
薬物動態:OHSUにおいてブタ血清中で天然インスリンおよびアナログインスリンに関する既にバリデートされたアッセイを用いて、血液試料をアッセイすることができる(Mercodia Iso-Insulin ELISA、製品番号10-1128-01、製造者Mercodia AB Uppsala, Swedenを参照されたい)。ヒトインスリン(たとえば、本発明の製剤および同等の水性製剤)ならびにインスリンアナログの血中レベルを、表記の時間経過にわたって定量して、曲線下面積、Cmax、Tmax、初期1/2Tmax、および後期1/2Tmaxに関して比較することができる。一次エンドポイントは、PKの変化に対して実質的にTmaxより感受性である初期および後期1/2Tmax値でありうる。Tmaxはしばしば長い平衡で起こり、これは測定することが難しく、間違った結果を生じうるが、初期および後期値は急速に上昇および低下して、このようにかなりより信頼できる。
【0102】
本明細書において開示および特許請求される成分、組成物、または方法は全て、本開示に照らして不当な実験を行うことなく作製および実行することができる。本発明の成分、組成、または方法は特定の態様に関して記述されているが、本明細書において記述される活性成分、組成物、または方法、および方法の段階または段階の順序に変更を適用してもよく、それでも本発明の概念、精神、および範囲に含まれることは当業者に明らかであろう。