特許第6117842号(P6117842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117842
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】タングステンMEMS構造の製造
(51)【国際特許分類】
   B81C 1/00 20060101AFI20170410BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   B81C1/00
   B81B3/00
【請求項の数】21
【外国語出願】
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-68743(P2015-68743)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2015-199191(P2015-199191A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2015年3月30日
(31)【優先権主張番号】61/975,061
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501144003
【氏名又は名称】アナログ・デバイシズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エー. ギーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ エム. モルナー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー エス. デイビス
(72)【発明者】
【氏名】マ ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ジェイ. コール
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ティモニー
(72)【発明者】
【氏名】ケネス フランダース
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−221450(JP,A)
【文献】 特開2013−219303(JP,A)
【文献】 特開2012−042452(JP,A)
【文献】 特開平08−125199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 1/00−7/04
B81C 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン系MEMS構造を有するMEMSデバイスを製造するための方法であって、
下層酸化物層の上に、最初に前記酸化物層を圧縮することなく、少なくとも2ミクロンの厚さの低応力タングステン系材料層を形成するために、500℃未満の温度で、かつ、粒成長抑制剤を使用して、タングステン系材料を堆積することと、
タングステン系MEMS構造を形成するために、前記タングステン系材料層をエッチングすることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記タングステン系MEMS構造は、解放可能なタングステン系可動質量であり、前記方法は、前記タングステン系可動質量を解放するために、前記解放可能なタングステン系可動質量の下にある酸化物を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MEMSデバイスは、前記タングステン系材料を堆積する前に、電子回路を含み、前記タングステン系材料の前記堆積は、450℃を超えて前記電子回路の温度を上昇させない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タングステン系材料を堆積することは、
粒成長抑制剤でドープされた標的上に前記タングステン系材料を堆積すること、または、
(1)タングステン系材料層を堆積すること、および、(2)続いて堆積されたタングステン系材料層に垂直粒成長を停止するための粒成長抑制剤を導入することを交互に行うこと
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記粒成長抑制剤は、
ホウ素、または
希土類金属、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記タングステン系材料層をエッチングすることは、正確な強異方性のエッチを形成するために、本質的に六フッ化硫黄(SF6)ガスから生成されるフッ素であるエッチング液と、トリフルオロメタンから生成されるポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの保護層とを使用して、前記タングステン系材料層をエッチングすること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸素プラズマを使用してエッチングした後に、前記ポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの残留物を除去すること
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タングステン系材料を堆積することは、
前記タングステン系材料の前記堆積中に、酸素レベルを制御すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記低応力タングステン系材料層を形成するために、前記タングステン系材料を堆積する前に、前記酸化物層を通して下層基板に少なくとも1つのタングステン系アンカーを形成することをさらに含み、前記MEMS構造は、前記少なくとも1つのタングステン系アンカーによって、前記下層基板に固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、複合アンカーであり、前記複合アンカーは、それぞれの直径が1ミクロンの小型タングステン系アンカーのマトリクスを含み、小型タングステン系アンカーの前記マトリクスを形成することは、
前記酸化物層を通った前記下層基板へのそれぞれの直径が1ミクロンの小さな穴のマトリクスを含むパターン化された酸化物層を形成するために、前記酸化物層をパターン化することと、
小型タングステン系アンカーの前記マトリクスを形成するために、前記穴をタングステン系プラグで充填することと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、大型タングステン系アンカーを含み、前記大型タングステン系アンカーを形成することは、
空洞が前記酸化物層を通って前記下層基板まで延在し、実質的に底部よりも頂部でより幅広くなるように、前記空洞の幅および深さを徐々に増加させる複数のエッチングステップを使用して、前記酸化物層中に空洞をエッチングすることによって、前記酸化物層をパターン化することと、
前記大型タングステン系アンカーを形成するために、前記空洞をタングステン系材料で均一に充填することと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記下層基板は、前記MEMSデバイスのグランドプレーン構造であり、前記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成され、前記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、空隙または亀裂なしで均一に充填される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つのタングステン系アンカーおよび前記タングステン系材料層は、同じタングステン系材料から形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
非圧縮酸化物層と、
前記非圧縮酸化物層の上にある少なくとも2ミクロンの厚さのタングステン系材料層と
を備えたMEMSデバイスであって、
前記タングステン系材料層は、粒成長抑制剤を含み、前記タングステン系材料層は、タングステン系MEMS構造をさらに含む、MEMSデバイス。
【請求項16】
前記非圧縮酸化物層の下にある基板をさらに備え、前記MEMS構造は、前記MEMS構造から前記非圧縮酸化物層を通っ下層基板まで延在する少なくとも1つのタングステン系アンカーによって、前記下層基板に固定される、請求項15に記載のMEMSデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、複合アンカーであり、前記複合アンカーは、それぞれの直径が1ミクロンの小型タングステン系アンカーのマトリクスを含む、請求項16に記載のMEMSデバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、底部よりも頂部で実質的に幅が広い大型タングステン系アンカーを含む、請求項16に記載のMEMSデバイス。
【請求項19】
前記下層基板は、前記MEMSデバイスのグランドプレーン構造であり、前記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成され、前記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、請求項16に記載のMEMSデバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1つのタングステン系アンカーおよび前記低応力タングステン系MEMS構造は、同じタングステン系材料から形成される、請求項16に記載のMEMSデバイス。
【請求項21】
前記粒成長抑制剤は、ホウ素または希土類金属のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のMEMSデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2014年4月4日出願の「FABRICATION OF TUNGSTEN MEMS STRUCTURES」と題する米国仮特許出願第61/975,061号の利益を主張し、したがってその優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は概して、MEMSデバイスに関し、より具体的には、タングステンMEMS構造の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
慣性センサ(例えば、容量、圧電、および対流加速度計、ならびに振動おおよび音叉ジャイロスコープ)、マイクロホン、圧力センサ、RFデバイス、ならびに光学デバイス(例えば、光スイッチ)等を含む微小電気機械システム(MEMS)デバイスは、多くの場合、可動になるように解放される多くの構造を含む。解放される構造の例としては、マイクロホン振動板、慣性センサセンサプルーフマスおよびシャトル、ならびにセンサ構造に蓋をする懸濁カプセル化層(複数を含む)が挙げられる。
【0004】
MEMSデバイスは典型的には、基板にエッチングする、および/または種々の材料を堆積/パターン化するなど、種々のマイクロマシニング技術を使用して、基板(例えば、シリコンまたはシリコン・オン・インシュレータウエハ)上に形成される。解放される構造は典型的には、構造を解放するために後に除去される材料の1つ以上の「犠牲」層の上に形成される。MEMSウエハ製造のための典型的な犠牲層としては、酸化物層が挙げられる。酸化物層は典型的には、ウェットまたはドライエッチプロセスを使用して除去される。ウェットエッチプロセス(例えば、緩衝酸化物エッチ)は典型的には、ウェットエッチアクセスを可能にするために注意深く配置および離間される解放穴を必要とし、それは、製品設計およびプロセスにある特定の制約を課す可能性がある。ドライエッチプロセス(例えば、蒸気HF)は概して、エッチ穴の配置および離間においてさらなる自由を提供し、それは、センサ設計においてさらなる柔軟性をもたらし得る。
【0005】
タングステンがマイクロマシン加工慣性機器を製造するための材料として従来使用されているシリコンよりも有意な利点を有することが、10年以上にわたって、本発明者らによって認識されてきた。特に、タングステン機械構造が、米国特許第5,417,111号(特許文献1)でShermanらによって教示されるものと同様の方法で、電子機器に組み込まれ得る場合、費用および精度における実質的な改善が行われ得る。所与の性能に対する費用が、機械構造のサイズを減少させることによって低減され得るか、または精度が、タングステンからのより大きい慣性信号を利用することによって、所与のサイズで強化され得る。
【0006】
この理由は、タングステン金属の特性にある。第一に、それは、シリコンのように常温で脆弱な材料である(すなわち、可塑性ではないという意味で)。つまり、それは、破断に満たない程度まで引っ張られたとき、永久変形を取らない。したがって、それは安定した形状および剛性を有する移動構造を形成する。第二に、それはシリコンの8.3倍の密度を有する。したがって、タングステン構造は、同様のサイズのシリコン構造と比較して、約8倍の慣性力を経験する一方で、それらは、周囲媒質のブラウン運動などの非慣性源からのさらなるほぼ同一の摂動力を得ることが予想され得る(あるいは、タングステン構造は、同一の慣性力を経験するために、シリコン構造の約1/8のサイズであり得、例えば、4um厚のタングステンは、33um厚のシリコンとほぼ同一の質量である)。したがって、タングステンがはるかに改善された信号対ノイズ比(SNR)を得ることが期待される。第三に、タングステンは、シリコンよりも2.5倍大きいヤング率を有する。より大きい構造的剛性は、所与のサイズから得られることができ、摂動の影響を受けにくくする。第四に、我々の測定は、タングステン微細構造の絶対強度が、シリコンの絶対強度に匹敵することを示す。強度は、移動構造の設計において重要なパラメータである。第五に、シリコンとは異なり、タングステンは、導電性酸化物を有する。シリコンは自然に、温度にわたって異なる程度まで時間および環境要因が電荷をトラップする、絶縁表面酸化物を形成する。これは、概して慣性機器精度の最も重要な基準である、マイクロマシン加工ジャイロスコープおよび加速度計中立点バイアスを不安定にする。米国特許第5,205,171号でO’Brienらによって教示されるように、導体でシリコンセンサの活性表面を被覆することは、それらの安定性を大いに改善することが分かっている。シリコンのように、タングステンは表面上に異物種を吸着する可能性があるが、それは、主要な帯電効果がない。
【0007】
MEMSデバイス中のタングステンの使用が、特にシリコンの代用としてある特定の利点を有することを認識している者もいる。例えば、米国特許第7,367,232号(特許文献2)および米国公開特許出願第US 2011/0005319号(特許文献3)および同第US 2011/0096623号(特許文献4)は、種々のMEMS構造に対して可能な材料として、タングステンに言及している。しかしながら、MEMS構造に対して可能な材料としてのタングステンの単なる開示は、使用可能な方法でそのようなタングステンMEMS構造の実装を実際に開示していないか、または可能にしていない。本発明者らは、タングステンMEMS構造(例えば、シリコン構造の代用として)による実験を行い、タングステンMEMS構造が解放されたときに歪曲または屈曲する傾向があるように、従来の製造プロセスの使用が、高い内部応力を有するタングステンMEMS構造を生成し、使用不可能な、または低性能のデバイスをもたらすことを発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,417,111号明細書
【特許文献2】米国特許第7,367,232号明細書
【特許文献3】米国公開特許出願第2011/0005319号明細書
【特許文献4】米国公開特許出願第2011/0096623号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態では、MEMSデバイスを製造するための方法は、最初に酸化物層を圧縮することなく、下層酸化物層の上に、少なくとも2ミクロンの厚さの低応力タングステン系材料層を形成するために、約500℃未満の温度で、かつ粒成長抑制剤を使用して、タングステン系材料を堆積することを伴う。方法はまた、タングステン系MEMS構造を形成するために、タングステン系材料層をエッチングすることを伴う。
【0010】
種々の代替の実施形態では、タングステン系MEMS構造は、解放可能タングステン系可動質量であってもよく、その場合、方法はさらに、タングステン系可動質量を解放するために、解放可能タングステン系可動質量の下にある酸化物を除去することを伴ってもよい。
【0011】
種々の代替の実施形態では、MEMSデバイスは、タングステン系材料を堆積する前に、電子回路を含んでもよく、その場合、タングステン系材料の堆積は、約450℃を超えて電子回路の温度を上昇させない可能性がある。
【0012】
種々の代替の実施形態では、タングステン系材料層を堆積することは、ホウ素または希土類金属などの粒成長抑制剤でドープされた標的上に、タングステン系材料を堆積することを伴ってもよい。あるいは、タングステン系材料層を堆積することは、(1)タングステン系材料層を堆積すること、および(2)続いて堆積されたタングステン系材料層に、垂直粒成長を停止するためのホウ素または希土類金属などの粒成長抑制剤を導入することを交互に伴ってもよい。
【0013】
さらなる代替の実施形態では、タングステン系材料層をエッチングすることは、正確な強異方性のエッチを形成するために、本質的に六フッ化硫黄(SF6)ガスから生成されるフッ素であるエッチング液、およびトリフルオロメタンから生成されるポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの保護層を使用して、タングステン系材料層をエッチングすることを伴ってもよい。残留保護ポリマーは、酸素プラズマを使用して、エッチング後に除去されてもよい。タングステン系材料を堆積することは、タングステン系材料の堆積中に酸素レベルを制御することを伴ってもよい。少なくとも1つの解放可能タングステン系可動質量を形成するためにタングステン系材料層をエッチングすることはさらに、可動質量に隣接した少なくとも1つの電極を形成するために、タングステン系材料層をエッチングすることを伴ってもよい。
【0014】
方法はさらに、低応力タングステン系材料層を形成するために、タングステン系材料を堆積する前に、酸化物層を通して下層基板に少なくとも1つのタングステン系アンカーを形成することを伴ってもよく、MEMS構造は、少なくとも1つのタングステン系アンカーによって下層基板に固定される。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのタングステン系アンカーは、それぞれ直径が約1ミクロンの小型タングステン系アンカーのマトリクスを含む、複合アンカーであってもよく、その場合、小型タングステン系アンカーのマトリクスを形成することは、酸化物層を通った下層基板へのそれぞれ直径が約1ミクロンの小さな穴のマトリクスを含む、パターン化された酸化物層を形成するために、酸化物層をパターン化することと、小型タングステン系アンカーのマトリクスを形成するために、タングステン系プラグで穴を充填することとを伴ってもよい。あるいは、少なくとも1つのタングステン系アンカーは、大型タングステン系アンカーであってもよく、その場合、大型タングステン系アンカーを形成することは、空洞が酸化物層を通って下層基板まで延在し、実質的に底部よりも頂部でより幅広くなるように、空洞の幅および深さを徐々に増加させる複数のエッチングステップを使用して、酸化物層中に空洞をエッチングすることによって、酸化物層をパターン化すること、および大型タングステン系アンカーを形成するために、タングステン系材料で均一に空洞を充填することとを伴ってもよい。下層基板は、MEMSデバイスのグランドプレーン構造であってもよく、その場合、少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成されてもよく、グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成されてもよい。いずれの場合においても、少なくとも1つのタングステン系アンカーは、空隙または亀裂なしで均一に充填され得る。少なくとも1つのタングステン系アンカーおよびタングステン系材料層は、同じタングステン系材料から形成されてもよい。
【0015】
本発明の別の実施形態では、MEMSデバイスは、最初に酸化物層を圧縮することなく、下層酸化物層の上に、少なくとも2ミクロンの厚さの低応力タングステン系材料層を形成するために、約500℃未満の温度で、かつ粒成長抑制剤を使用して、タングステン系材料を堆積し、タングステン系MEMS構造を形成するために、タングステン系材料層をエッチングするプロセスによって形成される、少なくとも2ミクロンの厚さの低応力タングステン系MEMS構造を含む。
【0016】
種々の代替の実施形態では、MEMS構造は、MEMS構造から酸化物層を通って下層基板まで延在する、少なくとも1つのタングステン系アンカーによって、下層基板に固定されてもよい。ある特定の実施形態では、少なくとも1つのタングステン系アンカーは、それぞれ直径が約1ミクロンの小型タングステン系アンカーのマトリクスを含む、複合アンカーであってもよい。代替の実施形態では、少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に底部よりも頂部でより幅広い、大型タングステン系アンカーを含んでもよい。下層基板は、MEMSデバイスのグランドプレーン構造であってもよく、その場合、少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成されてもよく、グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成されてもよい。少なくとも1つのタングステン系アンカーおよび低応力タングステン系MEMS構造は、同じタングステン系材料から形成され得る。
【0017】
追加の実施形態が開示および請求され得る。
【0018】
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
タングステン系MEMS構造を有するMEMSデバイスを製造するための方法であって、
下層酸化物層の上に、最初に上記酸化物層を圧縮することなく、少なくとも2ミクロンの厚さの低応力タングステン系材料層を形成するために、約500℃未満の温度で、かつ粒成長抑制剤を使用して、タングステン系材料を堆積することと、
タングステン系MEMS構造を形成するために、上記タングステン系材料層をエッチングすることと、
を含む、方法。
(項目2)
上記タングステン系MEMS構造は、解放可能タングステン系可動質量であり、上記方法は、上記タングステン系可動質量を解放するために、上記解放可能タングステン系可動質量の下にある酸化物を除去することをさらに含む、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記MEMSデバイスは、上記タングステン系材料を堆積する前に、電子回路を含み、上記タングステン系材料の上記堆積は、約450℃を超えて上記電子回路の温度を上昇させない、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目4)
上記タングステン系材料を堆積することは、
粒成長抑制剤でドープされた標的上に上記タングステン系材料を堆積すること、または
あるいは(1)タングステン系材料層を堆積すること、および(2)続いて堆積されたタングステン系材料層に垂直粒成長を停止するための粒成長抑制剤を導入すること、
のうちの少なくとも1つを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
上記粒成長抑制剤は、
ホウ素、または
希土類金属、
のうちの少なくとも1つを含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
上記タングステン系材料層をエッチングすることは、正確な強異方性のエッチを形成するために、本質的に六フッ化硫黄(SF6)ガスから生成されるフッ素であるエッチング液、およびトリフルオロメタンから生成されるポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの保護層を使用して、上記タングステン系材料層をエッチングすること
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
酸素プラズマを使用してエッチングした後に、上記残留保護ポリマーを除去すること
をさらに含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
上記タングステン系材料を堆積することは、
上記タングステン系材料の上記堆積中に、酸素レベルを制御すること
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
上記低応力タングステン系材料層を形成するために、上記タングステン系材料を堆積する前に、上記酸化物層を通して下層基板に少なくとも1つのタングステン系アンカーを形成することをさらに含み、上記MEMS構造は、上記少なくとも1つのタングステン系アンカーによって、上記下層基板に固定される、
上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
上記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、それぞれ直径が約1ミクロンの小型タングステン系アンカーのマトリクスを含む、複合アンカーであり、小型タングステン系アンカーの上記マトリクスを形成することは、
上記酸化物層を通った上記下層基板へのそれぞれ直径が約1ミクロンの小さな穴のマトリクスを含む、パターン化された酸化物層を形成するために、上記酸化物層をパターン化することと、
小型タングステン系アンカーの上記マトリクスを形成するために、上記穴をタングステン系プラグで充填することと、
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
上記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、大型タングステン系アンカーを含み、上記大型タングステン系アンカーを形成することは、
空洞が上記酸化物層を通って上記下層基板まで延在し、実質的に底部よりも頂部でより幅広くなるように、上記空洞の幅および深さを徐々に増加させる複数のエッチングステップを使用して、上記酸化物層中に空洞をエッチングすることによって、上記酸化物層をパターン化することと、
上記大型タングステン系アンカーを形成するために、上記空洞をタングステン系材料で均一に充填することと、
を含む、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
上記下層基板は、上記MEMSデバイスのグランドプレーン構造であり、上記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成され、上記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
上記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、空隙または亀裂なしで均一に充填される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
上記少なくとも1つのタングステン系アンカーおよび上記タングステン系材料層は、同じタングステン系材料から形成される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
項目1に記載のプロセスによって形成される、少なくとも2ミクロンの厚さの低応力タングステン系MEMS構造
を備える、MEMSデバイス。
(項目16)
上記MEMS構造は、上記MEMS構造から上記酸化物層を通って上記下層基板まで延在する、少なくとも1つのタングステン系アンカーによって、上記下層基板に固定される、上記項目に記載のMEMSデバイス。
(項目17)
上記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、それぞれ直径が約1ミクロンの小型タングステン系アンカーのマトリクスを含む、複合アンカーである、上記項目のいずれか一項に記載のMEMSデバイス。
(項目18)
上記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に底部よりも頂部でより幅広い、大型タングステン系アンカーを含む、上記項目のいずれか一項に記載のMEMSデバイス。
(項目19)
上記下層基板は、上記MEMSデバイスのグランドプレーン構造であり、上記少なくとも1つのタングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成され、上記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、上記項目のいずれか一項に記載のMEMSデバイス。
(項目20)
上記少なくとも1つのタングステン系アンカーおよび上記低応力タングステン系MEMS構造は、同じタングステン系材料から形成される、上記項目のいずれか一項に記載のMEMSデバイス。
【0019】
(摘要)
特に、いわゆる「MEMSラスト」製造プロセス(例えば、電子回路が製造された後に、MEMS構造が製造されるとき)に対して、厚い(すなわち、2ミクロンよりも大きい)、微粒子、低応力タングステンMEMS構造が、低温で製造される。堆積したタングステン層から非常に正確に構造細部をエッチングするための、かつ下層基板にタングステン層を強力かつ安定に固定するための手段が開示される。また、タングステンを損傷することなく、またはそれを表面張力によって引き下ろさせ、動けなくさせることなく、可動タングステン層の下にある犠牲層を除去するための手段が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
上記の実施形態の特徴は、添付の図面を参照しながら以下の「発明を実施するための形態」を参照することによってより容易に理解されるであろう。
図1図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図2図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図3図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図4図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図5図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図6図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図7図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図8図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図9図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図10図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図11図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図12図1〜12は、1つの例示的な実施形態に従った、本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスのための種々の製造プロセスステップを示す。
図13図13〜18は、1つの例示的な実施形態に従った、台座の使用のための種々の製造プロセスを示す。
図14図13〜18は、1つの例示的な実施形態に従った、台座の使用のための種々の製造プロセスを示す。
図15図13〜18は、1つの例示的な実施形態に従った、台座の使用のための種々の製造プロセスを示す。
図16図13〜18は、1つの例示的な実施形態に従った、台座の使用のための種々の製造プロセスを示す。
図17図13〜18は、1つの例示的な実施形態に従った、台座の使用のための種々の製造プロセスを示す。
図18図13〜18は、1つの例示的な実施形態に従った、台座の使用のための種々の製造プロセスを示す。
図19図19は、1つの特定の例示的な実施形態に従った、単一の大型タングステン系アンカーの代わりに我々のための、小型タングステン系アンカーのマトリクス(例えば、それぞれ約1ミクロン)を示す。
図20図20〜23は、図19に示される解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図21図20〜23は、図19に示される解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図22図20〜23は、図19に示される解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図23図20〜23は、図19に示される解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図24図24は、当該技術分野で既知の、スパッタ金属層に対する「ブレッドローフィング」の現象を示す。
図25図25〜28は、1つの特定の例示的な実施形態に従った、解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図26図25〜28は、1つの特定の例示的な実施形態に従った、解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図27図25〜28は、1つの特定の例示的な実施形態に従った、解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図28図25〜28は、1つの特定の例示的な実施形態に従った、解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
図29図29は、タングステン系ジャイロスコープの改善された分解能下限値を示す、タングステン系ジャイロスコープおよびシリコン系ジャイロスコープに対するアラン偏差プロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、以下の用語は、文脈上他に要求されない限り、示される意味を有するものとする。
【0022】
用語「タングステン系」は、低温(すなわち、約500℃未満)の堆積プロセス中に粒界を制御するために含まれる、少量の1つ以上の物質を任意に有する、実質的に固体のタングステンである、材料を意味する。
【0023】
MEMSデバイスの質量に関する用語「可動」は、所定のモードで移動するように構成されるMEMS構造を意味する。一部の種類のMEMSデバイスにおいて、質量の移動が駆動されてもよい一方で(例えば、MEMSジャイロスコープ中の共振器)、他の種類のMEMSデバイスにおいて、質量の移動は受動的であってもよい(例えば、MEMS加速度計中のプルーフマス)。駆動による移動は、並進(例えば、左右に動揺した)、回転(例えば、中心枢動点の周囲を前後に動揺した)、バルク超音波、または他の駆動モードであってもよい。
【0024】
上記のように、MEMSデバイス中のタングステンの使用は、特にシリコンの代用として、ある特定の利点を有することが認識されてきた。シリコンの代わりにタングステンを使用するとき、米国特許第6,122,961号の種類のジャイロスコープのSNRに対する効果は、別紙A−Bに示される実施例によって推定される。
【0025】
(タングステン構造の製造)
タングステンMEMS構造の製造に関するいくつかの検討事項がここで考察される。
【0026】
第一に、タングステンの層は、安定した構造的形状を提供するために、本質的に非常に低い応力である必要があり、したがって、微粒子である必要があり、かつ微粒子のままである必要があり、特に、いわゆる「MEMSラスト」製造プロセス(例えば、電子回路が製造された後に、MEMS構造が製造されるとき)に対して、タングステンの堆積は、下層の電子回路が熱によって破損されないように、低温プロセスである必要がある。タングステンのアニーリングが低応力層を生成することができる一方で、タングステンをアニーリングするために必要とされる温度は、電子機器の融点を超えている。
【0027】
第二に、タングステン層を下層基板に強力かつ安定に固定する手段が必要とされ、そうでなければ、強力な脆弱材料の利点は失われる。その接着はまた、低く安定した電気接触抵抗を有しなければならない。
【0028】
第三に、タングステンの均一な堆積物から構造細部を非常に正確にエッチングする手段が必要とされる。非常に正確な慣性機器は通常、示差測定技術によってそれらの安定性を得る。厳密な示差測定を維持するために、構造の反対部分は、正確に同一のサイズおよび形状でなければならない。
【0029】
第四に、タングステンを損傷することなく、またはそれを表面張力によって引き下ろさせ、動けなくさせることなく、可動タングステン層の下にある犠牲層を除去するための手段が必要とされる。
【0030】
本発明のある特定の例示的な実施形態では、タングステンは、特に、スパッタリング中に酸素レベルを注意深く制御すると同時に、500℃未満(例えば、約400℃〜500℃の間)の温度でスパッタリングすることによって、約450℃(これは概して、ほぼ、現代の電子機器が損傷なく達することができる最高温度であり、トランジスタなどのより小さい部品は概して、損傷をより受けやすい)を超えて基板材料の温度を上昇させることなく、低温で堆積される。特に、これらのプロセス温度は、下層の電子機器がタングステン堆積プロセスを耐えることを可能にするはずである。以下に考察されるように、タングステンは、使用可能な安定した構造を生成するために、平均残留応力が引張および100MPa未満の両方であるように、堆積され得る。しかしながら、通常のスパッタリング中、多結晶タングステンの一部の粒子は概して、層が厚くなるにつれて選択的に成長し、もう一方の側面よりも一方の側面でより粗い粒子構造を有する円柱状の構造をもたらす。これは、フィルムを通して応力勾配を誘発し、構造がその犠牲下層から解放されたとき、湾曲をもたらす。また、非常に微細な粒子の材料は、加工硬化に対して長期的な安定性を維持するため、および個々の微結晶の異方性を所与されたヤング率の正確な定義を促進するための両方に対して強く求められる。
【0031】
本発明のある特定の例示的な実施形態では、これは、粒界に集中し、それらを「ピン止め」し、粒成長を防止する、タングステン中で不溶性の少ない割合の別の材料を慎重に組み込むことによって達成される。たるみを防止するための白熱光フィラメントにおいて、またタングステン工具の製造において、カリウムを使用した同様の技術が使用される。しかしながら、フィラメントで使用されるカリウムの包含は、工具のために使用される高温プロセスのように、半導体ベースの電子機器製造には適合しない。本発明者らは、ホウ素およびランタンが粒成長抑制剤として使用され得ることを発見し、他の材料(例えば、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、イットリウム、セリウム、希土類、ならびに金属銅、ニッケル、鉄、およびコバルトの酸化物)もまた粒成長を阻止し得るが、これらの材料は、半導体不純物として様々な度合いの懸念を引き起こすことをさらに推測する。例えば、トリウムの放射能は、メモリー要素の信頼性に対して懸念を引き起こす。ランタンおよび他の希土類の有効性は、処理中にそれらの酸化物の不溶性粒子の形成に起因すると考えられる。酸素は、スパッタリング標的中に存在し得るか、またはスパッタリングガス中に導入され得る。
【0032】
0.01〜1原子パーセントのホウ素添加は、特に、粒界がホウ化タングステン粒子によってピン止めされる0.2%超で有効である。参照により本明細書に組み込まれるNASA技術ノートD−2649は、マクロ工具および人工物との関連で、タングステンに対する可能な粒成長抑制剤としてのホウ素を考察する。ホウ素は、概して半導体製造プロセスに適合するため、特に魅力的である。
【0033】
ある特定の例示的な実施形態では、粒成長抑制剤(例えば、ホウ素またはランタン)は、スパッタリング標的中のドーパントとして提供されてもよく、すなわち、粒成長抑制剤は、次いでタングステンでスパッタリングされる標的の一部であり得る。
【0034】
ある特定の他の例示的な実施形態では、粒成長抑制剤は、粒子が垂直方向に成長することを停止するために、スパッタリング中に定期的に導入されてもよい(例えば、タングステンの薄層を堆積し、粒界をピン止めするために粒成長抑制剤を導入し、タングステンの別の薄層を堆積し、粒界をピン止めするために粒成長抑制剤を導入するなど)。例えば、ホウ素は、粒成長を妨げる1つ以上の層を形成するために、スパッタリングチャンバ中の多少のジボランを定期的に導入することによって使用されてもよい。
【0035】
第三に、低温スパッタリングはまた、MEMS構造下で金属電気構造(例えば、グランドプレーンまたは遮蔽構造および電気相互接続)を可能にする。これらは、シリコン堆積温度が高すぎるため、かつ電子機器製造への汚染リスクの両方の理由から、シリコン構造には適合しない。シリコン構造で使用されるポリシリコンから作られる相互接続は、それらが金属よりもはるかに大きい抵抗を有するため(金属に対するオームとは対照的におよそキロオーム)、センサノイズの重要な一因である。チタン−タングステンは、強力なアンカーの製造を可能にし、ポリシリコンと比較してほぼ一桁ノイズの一因を低減するため、相互接続および遮蔽層のための好ましい材料であるが、他の材料も相互接続および遮蔽層のために使用され得る。
【0036】
第四に、正確な強異方性のエッチが得られ得る手段は、エッチング液が、本質的に六フッ化硫黄ガスから生成されるフッ素であり、ポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの保護層が、トリフルオロメタンから生成される、米国特許第5,501,893号(参照により本明細書に組み込まれる)でLarmerらによってシリコンに関して教示される手段と同様である。プロセスは、その高い分子量にもかかわらず、六フッ化タングステンが揮発性であり、大気圧でおよそ20℃で沸騰し、そのため、それが基板を加熱する必要なく、気相中の反応部位から迅速に拡散するため、感熱集積回路上でタングステン層に適用され得る。エッチング後の残留保護ポリマーは、良好な電気絶縁体であり、上記の二酸化ケイ素と同様に表面電荷をトラップすることによって、機器誤差を引き起こし得る。したがって、それは、さらなる短い等方性エッチングで、エッチングされたウエハから除去される。そのような例は、チャンバ洗浄に関して米国特許第8,486,198号(参照により本明細書に組み込まれる)で教示される酸素プラズマである。
【0037】
(例示的な製造プロセス)
本質的に、シリコン系MEMS構造および電気相互接続をタングステン系MEMS構造および電気相互接続で置き換える、例示的な製造プロセスが、ここで、断面図で種々の製造プロセスステップを示す図1〜12を参照して記載される。
【0038】
図1に関して、頂部金属構造102および104(例えば、チタン−タングステンまたは他の適切な導電性材料から形成される)は、下層酸化物層上に形成され、次いで上層酸化物層106によって被覆される。この特定の例示的な実施形態では、酸化物層は、高密度プラズマ(HDP)酸化物から形成されるが、代替の実施形態は、別の酸化物堆積製造プロセスを使用してもよい。
【0039】
図2に関して、上層酸化物層106は、砥粒/研磨などによって薄層化される。
【0040】
図3に関して、保護層108が酸化物層106上に形成される。この特定の例示的な実施形態では、保護層108は、窒化物保護層であるが、代替の実施形態は、別の保護材料を使用してもよい。
【0041】
図4に関して、ビア110および112のセットが、保護層および酸化物層を通して頂部金属構造102および104のそれぞれまで形成される。ビアは、例えば、保護層108をパターン化し、保護層108および酸化物層106を通してエッチングすることによって形成される。
【0042】
図5に関して、ビア110および112のセットは、タングステン系プラグ114および116のそれぞれで充填される。特定の例示的な実施形態では、タングステン系プラグは、実質的に純粋なタングステンであってもよいが、代替の実施形態は、別のタングステン系材料(例えば、チタン−タングステン)または別の導電性材料を使用してもよい。
【0043】
図6に関して、タングステン系グランドプレーン構造118、120、および122は、例えば、タングステン系材料層123(例えば、好ましくはチタン−タングステン材料)を堆積し、次いで、タングステン系材料層123をパターン化することによって形成される。この特定の例示的な実施形態では、グランドプレーン構造118が、ビア114によって頂部金属構造102に電気接続される一方で、グランドプレーン構造120および122は、ビア116によって頂部金属構造104に電気接続される(グランドプレーン構造120の電気接続性は、図面の断面特性のため明示されない)。
【0044】
図7に関して、犠牲(スペーサ)酸化物層124がグランドプレーン構造上に形成される。特に、この酸化物層124は、後のプロセスステップで形成される種々の解放可能タングステンMEMS構造を支持するために使用される。
【0045】
図8に関して、酸化物層124は、グランドプレーン構造の複数部分を露出するために、パターン化された酸化物層126を形成するためにパターン化される。
【0046】
図9に関して、厚い(すなわち、約2ミクロン厚以上の)タングステン系材料層128が、パターン化された酸化物層126およびグランドプレーン構造の露出部分上に形成される。重要なことに、タングステン系材料は、下層酸化物層124/126を圧縮することなく、約500℃未満の低温で堆積される。下層酸化物の圧縮は概して、シリコン系材料が概して堆積される高温のため、シリコン系材料の堆積のために必要とされる。したがって、この例示的な製造プロセスは、下層酸化物層を圧縮するステップを排除し、それは、製造時間を節約し(したがって費用を低減し)、また電子回路を損傷し得る高温プロセスを回避する。続いて、接着パッド130がグランドプレーン構造118上の一部分上のタングステン系材料層128上に形成される。この特定の例示的な実施形態では、接着パッド130は、AlCu材料から形成されるが、代替の実施形態は、別の導電性材料を使用してもよい。
【0047】
図10に関して、タングステン系材料層128は、解放可能タングステンMEMS構造(複数を含む)134(例えば、ジャイロスコープ共振器または加速度計プルーフマス)、ならびに導電性タングステン接着パッド基部132を形成するためにパターン化される。上記のように、特定の例示的な実施形態では、正確な強異方性のエッチは、エッチング液が、本質的に六フッ化硫黄ガス(SF6)から生成されるフッ素であり、ポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの保護層が、トリフルオロメタンから生成される、米国特許第5,501,893号(参照により本明細書に組み込まれる)でLarmerらによってシリコンに関して教示されるものと同様の方法で得られ得る。この特定の例示的な実施形態では、エッチング後の残留保護ポリマーは、実質的に、チャンバ洗浄に関して米国特許第8,486,198号(参照により本明細書に組み込まれる)で教示されるような酸素プラズマを使用して、さらなる短い等方性エッチングで、エッチングされたウエハから除去される。
【0048】
続けて図10を参照すると、導電性タングステン接着パッド基部132および接着パッド130は、金属キャップのための接着部位を提供する。導電性タングステン接着パッド基部132および接着パッド130は、解放可能タングステンMEMS構造(複数を含む)134、および便宜上図示されない他の関連したMEMS構造(例えば、種々の駆動および感知電極)を完全に包囲してもよい(かつ典型的には包囲する)。便宜上、キャッピングのための1つの接着部位のみが図面中に示される。
【0049】
図11に関して、タングステンMEMS構造134を解放するために、酸化物層126が除去される。酸化物層126を除去するために、HFウェットエッチ技術が使用されてもよい。
【0050】
図12に関して、MEMSデバイスを(典型的には、密封して)密閉するために、金属キャップ136が接着パッド130に接着される。この特定の例示的な実施形態では、金属キャップ136は、接着パッド130、接着パッド基部132、およびビア114によって、頂部金属構造102に電気接続される。
【0051】
上記の例示的な製造プロセスが、便宜上本明細書では省略される、追加および/または代替の製造ステップを含んでもよい(かつ多くの場合、含む)ことに留意されたい。例えば、特定の材料層のパターン化は、種々の堆積およびエッチングステップを含んでもよい。また、追加の構造が、示される層および/または種々の追加の層に形成されてもよい。例えば、タングステン系可動質量の移動を駆動および/または感知するためなどの種々のタングステン系電極が、タングステン系材料層123(例えば、可動質量の下にある電極)から、および/またはタングステン系材料層128(例えば、可動質量に沿った電極)から形成されてもよい。
【0052】
(MEMS解放中の吸着を防止するための台座)
解放動作中の解放可能MEMS構造の吸着を防止するために、種々の代替の実施形態は、例えば、米国特許第5,314,572号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、解放動作中に、解放可能MEMS構造を支持するための1つ以上の台座を利用してもよい。
【0053】
図13〜18は、1つの例示的な実施形態に従った、台座を使用するための種々の製造プロセスを示す。図13〜18は本質的に、上記の例示的な製造プロセスの図8〜11に置き換わる。
【0054】
図13に関して、グランドプレーン構造の複数の部分を露出するために、パターン化された酸化物層126を形成するために、また台座のための開口部1302を形成するために、酸化物層124はパターン化される。
【0055】
図14に関して、台座1304は、例えば、解放可能MEMS構造を支持し、MEMS構造の解放後に除去され得る、フォトレジスト材料または他の好適な材料から、開口部1302に形成される。
【0056】
図15に関して、厚い(すなわち、約2ミクロン厚以上の)タングステン系材料層128が、パターン化された酸化物層126、およびグランドプレーン構造の露出部分、および台座1304の露出部分上に形成される。重要なことに、タングステン系材料は、下層酸化物層124/126を圧縮することなく、約500℃未満の低温で堆積される。下層酸化物の圧縮は概して、シリコン系材料が概して堆積される高温のため、シリコン系材料の堆積のために必要とされる。したがって、この例示的な製造プロセスは、下層酸化物層を圧縮するステップを排除し、それは、製造時間を節約し(したがって費用を低減し)、また電子回路を損傷し得る高温プロセスを回避する。続いて、接着パッド130がグランドプレーン構造118上の一部分上のタングステン系材料層128上に形成される。この特定の例示的な実施形態では、接着パッド130は、AlCu材料から形成されるが、代替の実施形態は、別の導電性材料を使用してもよい。
【0057】
図16に関して、タングステン系材料層128は、解放可能タングステンMEMS構造(複数を含む)134(例えば、ジャイロスコープ共振器または加速度計プルーフマス)、ならびに導電性タングステン接着パッド基部132を形成するためにパターン化される。上記のように、特定の例示的な実施形態では、正確な強異方性のエッチは、エッチング液が、本質的に六フッ化硫黄ガス(SF6)から生成されるフッ素であり、ポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの保護層が、トリフルオロメタンから生成される、米国特許第5,501,893号(参照により本明細書に組み込まれる)でLarmerらによってシリコンに関して教示されるものと同様の方法で得られ得る。この特定の例示的な実施形態では、エッチング後の残留保護ポリマーは、実質的に、チャンバ洗浄に関して米国特許第8,486,198号(参照により本明細書に組み込まれる)で教示されるような酸素プラズマを使用して、さらなる短い等方性エッチングで、エッチングされたウエハから除去される。タングステン系材料層128のパターン化は、台座1304が解放可能MEMS構造134を支持するように、台座1304をもとの状態のまま残すことに留意されたい。
【0058】
図17に関して、タングステンMEMS構造134を解放するために、酸化物層126は除去される(例えば、便宜上図示または記載されないが当業者には既知である、解放可能MEMS構造134中にエッチングされる追加の穴を通して)。酸化物層126を除去するために、HFウェットエッチ技術が使用されてもよい。酸化物層126の除去は、台座1304が解放可能MEMS構造134を支持するように、台座1304をもとの状態のまま残すことに留意されたい。
【0059】
図18に関して、台座1304は、MEMS構造134を完全に解放するために除去される。フォトレジスト台座1304を除去するために、酸素プラズマエッチング技術が使用されてもよい。
【0060】
上記の例示的な製造プロセスが、便宜上本明細書では省略される、追加および/または代替の製造ステップを含んでもよい(かつ多くの場合、含む)ことに留意されたい。例えば、特定の材料層のパターン化は、種々の堆積およびエッチングステップを含んでもよい。また、追加の構造が、示される層および/または種々の追加の層に形成されてもよい。例えば、タングステン系可動質量の移動を駆動および/または感知するためなどの種々のタングステン系電極が、タングステン系材料層123(例えば、可動質量の下にある電極)から、および/またはタングステン系材料層128(例えば、可動質量に沿った電極)から形成されてもよい。
【0061】
(横方向駆動/感知電極)
上記のように、可動質量の移動を駆動および/または感知するための電極が、タングステン系材料から形成されてもよい。例えば、グランドプレーン構造120および122は、例えば、可動MEMS構造134の面外移動を駆動および/または感知するために、ある特定の例示的な実施形態においてタングステン系材料から形成されてもよい。
【0062】
横方向電極が加えて、またはあるいは、例えば、タングステン系可動質量の面内移動を駆動および/または感知するために、タングステン系材料から形成されてもよいことに留意されたい。特に、横方向電極は、(例えば、図9に示される層128からの)可動質量自体と同じタングステン系材料層から形成されてもよい。いくつかの例示的な横方向電極は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第US 2012/0137773号に記載される。例えば、図10を参照して図示および記載されるタングステン系材料層128のパターン化は、可動質量に隣接した1つ以上の横方向電極の形成を含んでもよく、上記の種類の正確な強異方性のエッチで、電極が質量に非常に近接して配置される、バルク超音波(BAW)ジャイロスコープのような高アスペクト比のMEMSデバイスが形成され得る。可動構造のMEMS構造134と同様に、横方向電極は、タングステン系電気相互接続を使用して下層回路に電気接続されてもよい。
【0063】
(タングステンアンカー)
図11および18は、グランドプレーン構造120および122上に直接形成される可動MEMS構造134を示す。種々の代替の実施形態では、可動MEMS構造134は代わりに、1つ以上のタングステン系アンカーを使用して、グランドプレーン構造120および122または他のタングステン系構造に固定されてもよい。電極などの他の構造が同様に、タングステン系アンカーを使用して固定されてもよい。
【0064】
1つの特定の例示的な実施形態では、小型タングステン系アンカー(例えば、それぞれ約1ミクロン)のマトリクスが、図19に示されるように、単一の大型タングステン系アンカーの代わりに使用される。本発明者らは、個々で有用になるには弱すぎるとても小型のアンカーが、空隙または亀裂なしで均一に充填され、十分に強力な複合アンカーを形成することを発見した。
【0065】
図20〜23は、1つの例示的な実施形態に従った、解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。図20〜23は本質的に、上記の例示的な製造プロセスの図8〜10に置き換わる。
【0066】
図20に関して、小型アンカーのマトリクスのための小さな穴1902(例えば、それぞれ約1ミクロン)のマトリクスを含み、またグランドプレーン構造118の一部分を露出する、パターン化された酸化物層126を形成するために、酸化物層124がパターン化される。
【0067】
図21に関して、穴1902は、好ましくは、タングステン系可動MEMS構造を形成するために使用される同一のタングステン系材料の、アンカーを形成するためのタングステン系プラグ1904で充填される(例えば、グランドプレーン構造120および122がチタン−タングステンから形成され得る、実質的に純粋なタングステン)。
【0068】
図22に関して、厚い(すなわち、約2ミクロン厚以上の)タングステン系材料層128が、パターン化された酸化物層126およびグランドプレーン構造118の露出部分上に形成される。重要なことに、タングステン系材料は、下層酸化物層124/126を圧縮することなく、約500℃未満の低温で堆積される。下層酸化物の圧縮は概して、シリコン系材料が概して堆積される高温のため、シリコン系材料の堆積のために必要とされる。したがって、この例示的な製造プロセスは、下層酸化物層を圧縮するステップを排除し、それは、製造時間を節約し(したがって費用を低減し)、また電子回路を損傷し得る高温プロセスを回避する。続いて、接着パッド130がグランドプレーン構造118上の一部分上のタングステン系材料層128上に形成される。この特定の例示的な実施形態では、接着パッド130は、AlCu材料から形成されるが、代替の実施形態は、別の導電性材料を使用してもよい。
【0069】
図23に関して、タングステン系材料層128は、解放可能タングステンMEMS構造(複数を含む)134(例えば、ジャイロスコープ共振器または加速度計プルーフマス)、ならびに導電性タングステン接着パッド基部132を形成するためにパターン化される。上記のように、特定の例示的な実施形態では、正確な強異方性のエッチは、エッチング液が、本質的に六フッ化硫黄ガス(SF6)から生成されるフッ素であり、ポリテトラフルオロエチレン状ポリマーの保護層が、トリフルオロメタンから生成される、米国特許第5,501,893号(参照により本明細書に組み込まれる)でLarmerらによってシリコンに関して教示されるものと同様の方法で得られ得る。この特定の例示的な実施形態では、エッチング後の残留保護ポリマーは、実質的に、チャンバ洗浄に関して米国特許第8,486,198号(参照により本明細書に組み込まれる)で教示されるような酸素プラズマを使用して、さらなる短い等方性エッチングで、エッチングされたウエハから除去される。
【0070】
別の特定の例示的な実施形態では、小型アンカーのマトリクスを使用するよりもむしろ、1つ以上の大型アンカーは、本質的に、実質的に図20〜23に関する上記のような酸化物層126中にアンカー(複数を含む)を形成することによって、使用されてもよい。しかしながら、本発明者らは、大型タングステン系アンカーの堆積が、二酸化ケイ素などの他の材料を堆積するときの半導体加工でよく知られている「ブレッドローフィング」の現象によって複雑にされ得ることを発見した。「ブレッドローフィング」の図は、米国特許第6204200号で、または図24のスパッタ金属層に関して見ることができる。「ブレッドローフィング」は、アンカーを形成するためのMEMSの犠牲酸化物で使用されるものなど、急勾配の壁を有するエッチングされた空洞中に堆積される材料の空隙をもたらす。本発明者らは、有益に強力になるには十分大きいタングステンアンカーを製造するとき、得られる空隙が機械的完全性を損なう小亀裂として延在し得ることを発見した。
【0071】
したがって、特定の例示的な実施形態では、大型タングステン系アンカーは、空洞が底部よりも頂部ではるかに幅広くなるように、段階的に酸化物層126中の空洞をエッチングすることによって形成される。急勾配の側壁がないことは、これらの空洞がタングステンで均一に充填され、したがって、エッチに応じて種々の断面を有するが、実質的には「V」字形のアンカーに代表される、アンカーを形成することを可能にする。
【0072】
図25〜28は、1つの例示的な実施形態に従った、解放可能MEMS構造を固定するためのタングステン系アンカーの形成のための種々の製造プロセスを示す。
【0073】
図25に関して、第1のエッチは、部分空洞2502を形成する。
【0074】
図26に関して、第2のエッチは、より幅広く、かつより深い空洞2504を形成する。
【0075】
図27に関して、第3のエッチは、最終空洞2506を形成する。
【0076】
図28に関して、空洞2506は、大型アンカーを形成するために、タングステン系材料で充填される。次いで、可動MEMS構造(図示せず)が、酸化物層126およびアンカー2506上に形成され得る。
【0077】
上記の例示的な製造プロセスが、便宜上本明細書では省略される、追加および/または代替の製造ステップを含んでもよい(かつ多くの場合、含む)ことに留意されたい。例えば、特定の材料層のパターン化は、種々の堆積およびエッチングステップを含んでもよい。また、追加の構造が、示される層および/または種々の追加の層に形成されてもよい。例えば、タングステン系可動質量の移動を駆動および/または感知するためなどの種々のタングステン系電極が、タングステン系材料層123(例えば、可動質量の下にある電極)から、および/またはタングステン系材料層128(例えば、可動質量に沿った電極)から形成されてもよい。
【0078】
移動不可能なタングステン系電極構造などの他の構造が、タングステン系プラグを使用して固定されてもよいことに留意されたい。例えば、タングステン系アンカーは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国特許出願公開第US 2012/0137773号に記載される種類の電極構成で使用されてもよい。特に、固定された電極は概して、特に、電極が質量に非常に近接して配置される、バルク超音波(BAW)ジャイロスコープなどの高アスペクト比のMEMSデバイスにおいて、可動質量との相互作用によって引き起こされる偏向の影響をあまり受けない。
【0079】
(試験結果)
本発明者らは、4umシリコンよりもむしろ2.5umタングステンで製造されたシールド面、ランナー、およびセンサ構造を有する、Analog Devices iMEMS ADXRS640の設計及び形状に基づき、タングステン系ジャイロスコープの実環境試験を実施した。したがって、本発明者らは、同一条件下で動作したとき、シリコン系ジャイロスコープよりもタングステン系ジャイロスコープから、約2〜4倍良好なノイズ特性を予想した。シリコンおよびタングステン構造は、同一電圧および同一雰囲気で動作したとき、ほぼ同一の偏向を有することが予想され、本発明者らは、タングステン系ジャイロスコープが、予想されたQおよび予想された運動振幅を有する予想された周波数に近く、それらの集積電子機器と共振することを発見した。重要なことに、本発明者らは、タングステン系ジャイロスコープの分解能下限値が、大幅にシリコンよりも改善されたように思われ、タングステン系ジャイロスコープがシリコン系ジャイロスコープよりも良好な長期的安定性を有することを示すことを発見した。これは、より大きいコリオリの力、および電荷をトラップするための絶縁表面がないことから予想された(タングステンの表面酸化物が導電性である一方で、シリコンの表面酸化物は絶縁性である)。図29は、タングステン系ジャイロスコープの改善された分解能下限値を示す、タングステン系ジャイロスコープおよびシリコン系ジャイロスコープに対するアラン偏差プロットを示すグラフである。
【0080】
(雑則)
見出しは便宜上上記で使用され、いかなる方法によっても本発明を制限するものと解釈されるものではないことに留意されたい。
【0081】
本発明の種々の実施形態は、以下の段落に続く段落に(かつ本願の最後に提供される実際の請求項の前に)列挙される潜在的請求項によって特徴付けられ得る。これらの潜在的請求項は、本願の書面による明細書の一部をなす。したがって、以下の潜在的請求項の主題は、本願または本願に基づき優先権を主張する任意の出願書を伴う、後の手続きにおける実際の請求項として示され得る。そのような潜在的請求項の包含は、実際の請求項が潜在的請求項の主題を含まないことを意味すると解釈されるべきではない。したがって、後の手続きにおいてこれらの潜在的請求項を提示しないという決定は、一般への主題の提供として解釈されるべきではない。
【0082】
制限なく、請求され得る潜在的主題(以下に提示される実際の請求項との混同を避けるために、文字「P」で始まる)は、以下を含む。
【0083】
P15. 単一の大型タングステン系アンカーの代わりに、小型タングステン系アンカーのマトリクスを使用して、MEMSデバイスの下層基板にMEMS構造を固定する方法であって、
前記酸化物層を通った前記下層基板へのそれぞれ直径が約1ミクロンの小さな穴のマトリクスを含む、パターン化された酸化物層を形成するために、酸化物層をパターン化することと、
小型タングステン系アンカーの前記マトリクスを形成するために、タングステン系プラグで前記穴を充填することと、
前記パターン化された酸化物層上に、少なくとも2ミクロン厚の厚いタングステン系材料層を形成することであって、前記タングステン系材料層は、前記下層酸化物層を圧縮することなく、約500℃未満の低温で堆積され、前記厚いタングステン系材料層は、小型タングステン系アンカーの前記マトリクスによって前記下層基板に固定される、パターン化された酸化物層上に、少なくとも2ミクロン厚の厚いタングステン系材料層を形成することと、
を含む、方法。
【0084】
P16. 前記下層基板は、前記MEMSデバイスのグランドプレーン構造である、請求項P15に記載の方法。
【0085】
P17. 前記タングステン系プラグは、実質的に純粋なタングステンから形成され、前記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、請求項P16に記載の方法。
【0086】
P18. 前記穴は、空隙または亀裂なしで均一に充填される、請求項P15に記載の方法。
【0087】
P19. 前記タングステン系アンカーおよび前記タングステン系材料層は、同じタングステン系材料から形成される、請求項P15に記載の方法。
【0088】
P20. さらに、
小型タングステン系アンカーの前記マトリクスによって、前記下層基板に固定される解放可能タングステン系MEMS構造を形成するために、前記タングステン系材料層をパターン化すること
を含む、請求項P15に記載の方法。
【0089】
P21. MEMSデバイスであって、
基板と、
前記基板上の非圧縮酸化物層であって、前記酸化物層を通って前記基板まで延在する、それぞれ直径が約1ミクロンの小型タングステン系アンカーのマトリクスを含む、非圧縮酸化物層と、
前記酸化物層上にあり、小型タングステン系アンカーの前記マトリクスによって前記下層基板に固定される、少なくとも2ミクロン厚の厚いタングステン系MEMS構造と、
を備える、MEMSデバイス。
【0090】
P22. 前記基板は、前記MEMSデバイスのグランドプレーン構造である、
請求項P21に記載のMEMSデバイス。
【0091】
P23. 前記タングステン系プラグは、実質的に純粋なタングステンから形成され、前記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、請求項P22に記載のMEMSデバイス。
【0092】
P24. 前記タングステン系アンカーは、空隙または亀裂なしで均一に充填される、請求項P21に記載のMEMSデバイス。
【0093】
P25. 前記タングステン系アンカーおよび前記タングステン系材料層は、同じタングステン系材料から形成される、請求項P21に記載のMEMSデバイス。
【0094】
P26. 前記MEMS構造は、解放可能MEMS構造である、請求項P21に記載のMEMSデバイス。
【0095】
P27. 大型タングステン系アンカーを使用して、MEMSデバイスの下層基板にMEMS構造を固定する方法であって、
前記空洞が酸化物層を通って前記下層基板まで延在し、実質的に底部よりも頂部でより幅広くなるように、前記空洞の幅および深さを徐々に増加させる複数のエッチングステップを使用して、前記酸化物層中に空洞をエッチングすることを含む、前記酸化物層をパターン化することと、
大型タングステン系アンカーを形成するために、前記空洞をタングステン系材料で均一に充填することと、
前記パターン化された酸化物層上に、少なくとも2ミクロン厚の厚いタングステン系材料層を形成することであって、前記タングステン系材料層は、前記下層酸化物層を圧縮することなく、約500℃未満の低温で堆積され、前記厚いタングステン系材料層は、前記大型タングステン系アンカーによって前記下層基板に固定される、前記パターン化された酸化物層上に、少なくとも2ミクロン厚の厚いタングステン系材料層を形成することと、
を含む、方法。
【0096】
P28. 前記下層基板は、前記MEMSデバイスのグランドプレーン構造である、請求項P27に記載の方法。
【0097】
P29. 前記大型タングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成され、前記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、請求項P28に記載の方法。
【0098】
P30. 前記空洞は、空隙または亀裂なしで均一に充填される、請求項P27に記載の方法。
【0099】
P31. 前記タングステン系アンカーおよび前記タングステン系材料層は、同じタングステン系材料から形成される、請求項P27に記載の方法。
【0100】
P32. さらに、
前記大型タングステン系アンカーによって前記下層基板に固定される解放可能タングステン系MEMS構造を形成するために、前記タングステン系材料層をパターン化すること
を含む、請求項P27に記載の方法。
【0101】
P38. MEMSデバイスであって、
基板と、
前記基板上の非圧縮酸化物層であって、実質的に底部よりも頂部でより幅広くなり、前記酸化物層を通って前記基板まで延在する、大型タングステン系アンカーを含む、非圧縮酸化物層と、
前記酸化物層上にあり、前記大型タングステン系アンカーによって前記下層基板に固定される、少なくとも2ミクロン厚の厚いタングステン系MEMS構造と、
を備える、MEMSデバイス。
【0102】
P39. 前記基板は、前記MEMSデバイスのグランドプレーン構造である、請求項P38に記載のMEMSデバイス。
【0103】
P40. 前記大型タングステン系アンカーは、実質的に純粋なタングステンから形成され、前記グランドプレーン構造は、チタン−タングステンから形成される、請求項P39に記載のMEMSデバイス。
【0104】
P41. 前記大型タングステン系アンカーは、空隙または亀裂なしで均一に充填される、請求項P38に記載のMEMSデバイス。
【0105】
P42. 前記大型タングステン系アンカーおよび前記タングステン系材料層は、同じタングステン系材料から形成される、請求項P38に記載のMEMSデバイス。
【0106】
P43. 前記MEMS構造は、解放可能MEMS構造である、請求項P38に記載のMEMSデバイス。
【0107】
本発明は、本発明の真の範囲から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得、本明細書の教示に基づき、多くの変化形および修正形が当業者には明らかとなるであろう。本「発明」への任意の参照は、本発明の例示的な実施形態を指すよう意図され、文脈が他に要求しない限り、本発明の全ての実施形態を指すよう解釈されるべきではない。記載された実施形態は、全ての点において、制限的ではなく例示的なものとしてのみ見なされるものとする。

別紙A−プロセスパラメータの観点からのZ軸櫛歯駆動型ガス減衰ジャイロスコープの理想的な速度ノイズ

これは、試設計を行うために必要とされる全てのトレードオフおよびかなり複雑な計算を行う必要なく、プロセスを定量的に比較するために使用され得る近似公式である。それは、固定形状を使用するよりもむしろプロセスに対する最適化を明示的に含み、したがって、以前の「性能指数」からのかなり誇張された順位付けよりも公平な比較であるが、それは、同一の定性的結果を示す。これは、別紙Bで得られるエアジャイロスコープに関する。真空ジャイロスコに関しては別紙Cを参照されたい。
【0108】

導出は別紙Bにある。
【0109】

全ての単位はΩnを除いてSIUである。
Ωnは(度/秒)/ルートHzの速度ノイズスペクトル密度である。
b=構造の厚さ: g=最小形状: h=犠牲層の厚さ
E=ヤング率: p=密度: ζ=空気粘性
V=印加された電圧: Vn=差動増幅器入力ノイズ: Ct=フィンガー終端静電容量


一般的なパラメータ:
u:=10−6 ε:=8.9・10−12 Vn:=12・10−9 fo:=22000 k:=1.4・10−23 T:=300

ζ:=6・u(700Kで70mbarの空気で覆う)
【0110】
【化1】
【0111】
度/ルート秒
4μmシリコン 21V BiMOS
【0112】
【化2】
【0113】
これはほぼ、シリコンジャイロスコープの生成で得られるものである。
4μmタングステン 21V BiMOS
【0114】
【化3】
【0115】
タングステンは、7倍を超える改善を示す。
2.5μmタングステン 21V BiMOS
【0116】
【化4】
【0117】
より薄いものは、3倍の改善を示す。
【0118】
別紙B:ガス減衰ジャイロスコープに対する導出
所与の幅(W)および厚さ(b)の構造における使用可能な周波数範囲は、第1の屈曲面外モードによって上方で境界される。この周波数は通常、ほぼ正方形の設計に対して最高であり、実際には、同一サイズの単純に支持された正方形プレートの第1のモードよりもわずかに低い。そのプレートモードの周波数は、
【0119】
【化5】
【0120】
のような「Roark」に示され、式中、Eは材料係数であり、pはその密度であり、vはそのポアソン比である。すなわち、
【0121】
【化6】
【0122】
であり、式中、
【0123】
【化7】
【0124】
は、材料中の圧縮音波の速度である。
確かな経験則は、ジャイロ共振器周波数、foが、fp/2を超えてはいけないことである。我々は常に、所与のダイ面積に対する最良の性能のために、これを限界近くまで押し上げる。したがって、ほぼ、
【0125】
【化8】
【0126】
である。 (1)

可能な限り最大の機械的信号を得たいと願う。これは、所与の入力速度、Ω度/秒に対するコリオリ加速度計の変位xであり、
【0127】
【化9】
【0128】
によって示され式中、vは共振器速度であり、ka、kbは無次元設計パラメータ、それぞれ我々のジャイロスコープにおいてほぼ0.5および2の、共振器:加速度計慣性比、および周波数増大係数である。
しかし、
【0129】
【化10】
【0130】
であり、式中、Fは利用可能な力であり、Dは共振器減衰である。したがって、この場合も同様にほぼ、
【0131】
【化11】
【0132】
である。 (2)
これは、foに対する別の制限を強調する。foが、xが大きくなり得るように可能な限り小さいことを願う。しかしながら、それが低くなるほど、ジャイロスコープは衝撃および振動をより受けやすくなる。foが非常に低くなる場合、ジャイロスコープは、粘着にさらに負ける可能性がある。経験豊富な顧客は、10kHzでは不安になり、一方で、20kHzは、忘れるには十分に高い。我々は通常、約16kHzで作業する。したがって、実際には、foの選択における自由はほとんどなく、方程式(1)は以下の通りになる:
【0133】
【化12-1】
【0134】
タングドライブフィンガーアレイからの利用可能な力は、
【化12-2】
であり、式中、Vは印加された電位であり、εは空気の誘電率であり、kfは駆動櫛歯のために使用されるWの割合を乗じられたフリンジ係数であり、gはフィンガー間の間隙であり(Fを最大化するために、プロセス最小限で引かれる)、kfはこれがほぼ、
【0135】
【化13】
【0136】
になるまで低減するように、1に近い。(4)
犠牲層および構造の両方がわずか数μmの厚さである場合、基板へのせん断減衰は、Dを占める。
【0137】
構造がより厚い場合、移動するフィンガーおよび縁部による空気の置換はより有意になる:
【0138】
【化14】
【0139】
方程式(2)、(4)、(5)を組み合わせる。
【0140】
【化15】
【0141】
コリオリ加速度計減衰Daは、同様に第一次近似に対して、フィンガースクイーズ膜によって占められる:
【0142】
【化16】
【0143】
式中、Nは長さλの移動するフィンガーの数である。
gen1およびgen2設計の両方において、
【0144】
【化17】
【0145】
であり、式中、pはアンカー配置基準によって決められたフィンガーのピッチである。BiMOS基準、p=12gが単純化するために使用され、gは、gは、製造時公称値、1.25μmである。分析結果は、明らかになるように、この単純化の影響をそれほど受けていない。
加速度計上の1ルートHzあたりのブラウン力は、
【0146】
【化18】
【0147】
である。
foにおける、1ルートHzあたりのブラウン変位、Xbはしたがって、
【0148】
【化19】
【0149】
であり、式中、kTは通常通りボルツマンエネルギーである。
したがって、DaおよびNを置き換えることで、
【0150】
【化20】
【0151】
が得られる。(7)
加速度計の変位によって誘発される差動信号電圧は、
【0152】
【化21】
【0153】
であり、式中、Ctは、1フィンガーあたりの有効終端静電容量である。
したがって、電子機器の入力換算電圧ノイズがfoにおいて1ルートあたりVnである場合、等価加速度計変位、Xvは、
【0154】
【化22】
【0155】
である(次元チェックOK) (8)

また、総等価変位ノイズ電力は、
【0156】
【化23】
【0157】
である。
【0158】
これは、方程式(6)を使用し、復調器のノイズの折り返しが信号電力ではなく有効ノイズ電力を倍増することを覚えておくことによって、ジャイロスコープ性能を示す等価速度ノイズ、Ωnに変換され得る。
【0159】
【化24】
【0160】
それは、
【0161】
【化25】
【0162】
に単純化される。
これは、自由パラメータλを含有し、それは、最小Ωnに対して最適化される。
【0163】
【化26】
【0164】
また、方程式(1)と一緒に再び置き換える。
【0165】
【化27】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29