(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117867
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】しっとりとした食感のクッキー製造用組成物、これを使用したクッキーの製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20170410BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20170410BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D13/08
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-143620(P2015-143620)
(22)【出願日】2015年7月21日
(65)【公開番号】特開2016-86810(P2016-86810A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年7月21日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0153933
(32)【優先日】2014年11月6日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501401593
【氏名又は名称】ロッテ コンフェクショナリー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】コウ アールム
(72)【発明者】
【氏名】パク ホヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジョンテ
(72)【発明者】
【氏名】リ キュヨン
(72)【発明者】
【氏名】イェ ミョンジャイ
【審査官】
市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−508891(JP,A)
【文献】
特表2009−526530(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/190303(WO,A1)
【文献】
特開2014−050351(JP,A)
【文献】
特表2014−510544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00−17/00
CAplus/FROSTI/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉、油脂及び砂糖を基本とするクッキー製造用組成物において、クッキー製造用組成物100重量部に対してグリセリン1.5〜3重量部とポリグリシトールシロップ1〜2重量部との混合物が含有されていることを特徴とするクッキー製造用組成物。
【請求項2】
小麦粉、油脂及び砂糖を基本とするクッキー製造用組成物を用いたクッキーの製造方法において、前記クッキー製造用組成物100重量部に対してグリセリン1.5〜3重量部とポリグリシトールシロップ1〜2重量部との混合物を含有させて前記混合物を含有する前記クッキー製造用組成物を練り、
前記混合物を含有する前記クッキー製造用組成物を、ワイヤーカットまたは共押出機を使用して成形することを特徴とするクッキーの製造方法。
【請求項3】
前記油脂と前記砂糖を混合して乳化させた後、液状原料を投入する前に、前記混合物を添加することを特徴とする請求項2に記載のクッキーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はしっとりとした食感のクッキー製造用組成物及びこれを使用したクッキーの製造方法に関し、さらに詳細には、クッキー製造用組成物を構成するにあたり、ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を使用して保湿性を高めることで、賞味期間中に柔らかくてしっとりとした食感を保つことができるようにした、クッキー製造用組成物及びこれを使用してクッキーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、消費者の嗜好が多様化し、既存の概念に含まれない新しいタイプの食感の食品が求められる傾向があり、焼き菓子類のソフトクッキーでも同じく新しい食感が求められている。
【0003】
従来のソフトクッキーについては軽くてさっくりとした食感が求められ、油脂及び砂糖の配合割合を高めることで食感を軽くてさっくりとするようにでき、例えば日本特許公開平10-327738号では、食用油脂、糖質、水分及び乳化剤から成る水中油型乳化物を添加する技術が提案されているが、最近の消費者を満足させる新しい食感を与えることはできない。
【0004】
また、韓国特許公開第2004-0072662号では、油脂性菓子生地に、上記菓子生地の油脂分に対して1.2〜1.8重量%の高融点トリグリセリド類を添加して混合し、加熱融解した後冷却して、上記高融点トリグリセリド類の結晶型全てを安定型以外の結晶型にしたのち、上記油脂性菓子全体を加温処理することで油脂性菓子を製造する方法に関して提案されている。このような菓子は、クッキー製造に適しておらず、消費者を満足させる新しい食感も与えることができない。
【0005】
そして、韓国特許公開第2011-16831号では、中間水分の常温流通の焼成食品として湿潤剤混合、親水コロイド混合及び疎水性混合を含み、湿潤剤としてグリセリン、プロピレングリコール、グリセリルトリアセタート、ポリオール、キシリトール、マルチトール、重合体ポリオール、ポリデキストロース、キラヤの天然抽出物及び乳酸の天然抽出物を含むことが提案されている。しかし、この場合もクッキー製品として適用する時、クッキー特有のしっとりとした湿潤性や油脂などの品質を十分に維持することが難しい。
【0006】
従来より、菓子類、パン類においては、製品保存中の老化抑制が試みられていて、乳化剤の様々な老化防止技術が提案されてきた。しかし、乳化剤だけで老化防止の効果を発現させるためには、多量を添加しなければならない。その結果、ある程度の老化防止効果は得られるが、過量に添加されると乳化剤の風味などが目立ってしまい、適用製品の風味と食感が良好でない場合があった。また、老化防止の効果は得られるが、菓子の水分流出や乾燥を防止することができず、日数が経過すれば菓子本来の食感を失うことになる。
【0007】
この解決方法として、高果糖シロップや水飴を入れて、しっとりとして柔らかい効果を与える技術が使用されてきたが、保湿感を向上させるためには、製品の甘味質に及ぼす影響が大きく、また、にちゃにちゃした食感が発現され、その使用に限界があるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本特許公開平10-327738号
【特許文献2】韓国特許公開第2004-0072662号
【特許文献3】韓国特許公開第2011-16831号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような従来技術の問題点を解決するために、本発明では保湿性を高めて賞味期間中に柔らかくてしっとりとした食感を保つクッキーの製造を解決課題とする。
【0010】
したがって、本発明の目的は、保湿性を高めて賞味期間中に柔らかくてしっとりとした食感を保つクッキー製造用組成物を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、柔らかくてしっとりとした食感を保つ高品質のクッキーを製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような本発明の課題を解決するために、本発明は小麦粉、油脂及び砂糖を基本とするクッキー製造用組成物において、ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を含有するクッキー製造用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明はクッキーを製造するにあたり、ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を含有するクッキー製造用組成物を練って、これをワイヤーカットまたは共押出機を使用してクッキーを製造する方法を提供する。
【0014】
本発明は、小麦粉、油脂及び砂糖を
基本とするクッキー製造用組成物において、
クッキー製造用組成物100重量部に対してグリセリン1.5〜3重量部とポリグリシトールシロップ1〜2重量部との混合物が含有されていることを特徴とするクッキー製造用組成物である
。
本発明は、
小麦粉、油脂及び砂糖を基本とするクッキー製造用組成物を用いたクッキーの製造
方法において、
前記クッキー製造用組成物100重量部に対してグリセリン1.5〜3重量部とポリグリシトールシロップ1〜2重量部との混合物を含有させて前記混合物を含有する前記クッキー製造用組成物を練り、
前記混合物を含有する前記クッキー製造用組成物を、ワイヤーカットまたは共押出機を使用
して成形することを特徴とするクッキーの製造方法である。
本発明は、
前記油脂と
前記砂糖を混合して乳化させた後、液状原料を投入する前に
、前記混合物を添加することを特徴とするクッキーの製造方法である
。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のような新しい構成でクッキーを製造することで、クッキーの保湿性を高めて、保存中に柔らかくてしっとりとした食感を保つ高品質の菓子を提供し、商品力を高めて消費者の嗜好を大きく満足させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による実施例と比較例で製造されたクッキーに対して、保湿剤の添加による保存中の水分変化を比較して示したグラフである。
【
図2】本発明による実施例と比較例で製造されたクッキーに対して、保湿剤の添加による保存中の水分活性の変化を比較して示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を一つの具体例としてさらに詳細に説明すれば次の通りである。
【0018】
本発明は、クッキーの保湿性を高めて保存中に柔らかくてしっとりとした食感を保つ高品質の菓子を製造するために、クッキー製造用組成物にポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を添加して使用することを特徴とする。
【0019】
本発明によると、クッキーは保存中に保湿性を高めるために特定の成分を使用する必要があるという事実に基づいて、ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を使用することが好ましいことを確認した。
【0020】
特に、本発明の好ましい具体例によると、上記ポリグリシトールシロップを単独で使うより、グリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を使用した方が、その効果がさらに高くなる。本発明によると、斯かる成分はこのように増大された保湿効果があるが、風味には影響がない量で添加しないと、その添加はあまり意味がないので、保湿性を高めて保存中に柔らかくてしっとりとした食感を保ちながらも風味に影響を与えない含量の設定は、また別の重要な要素である。
【0021】
本発明によると、上記ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を特定割合で添加すると同時に、糖類加工品の含量を調節して製造中の組成物の伸展性を調節してクッキーを製造する場合、型を用いて焼かなくても形の不良が発生しないという驚くべき事実も確認した。また、本発明によるとこのような組成物は、保湿性を高めて菓子の保存中に水分の流出によって表面にクラックが発生しない菓子を製造することができる。
【0022】
本発明は、保湿剤を使用して賞味期間中に柔らかくてしっとりとした食感を保つクッキー製造用組成物とこれの製造方法において、ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を特定割合で添加し、保存中に柔らかくてしっとりとした咀嚼感を保つクッキー製造用組成物を構成し、これを使用してクッキーを成形する時、ワイヤーカットあるいは共押出機を使えば大量生産に適用しても好ましくクッキーを製造することができる。これは本発明によるクッキー製造用組成物の生地の伸展性を調節することが容易で、型を用いて焼かなくても良い特性によって可能なことである。
【0023】
本発明によるクッキー製造用組成物は、グリセリンとポリグリシトールシロップを除いた他の原料は、一般的に製菓産業で使う原料と同一の構成のものを使うことができ、原料の投入順序以外の工程は通常の方法である。
【0024】
本発明の好ましい具体例によると、ワイヤーカットあるいは共押出機で成形する菓子の一般的な製造方法を用いて製造することができ、菓子を製造するために油脂と砂糖を混合して乳化させた後、最後に小麦粉を入れてグルテンを形成することで、ワイヤーカットあるいは共押出機を適用し易い生地を製造することができる。
【0025】
本発明によると、この過程で上記ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を添加して使う時、油脂と砂糖を混合して乳化させる段階で添加することが一般的であるが、本発明の好ましい具体例によると、乳化させた後、液状原料を投入する前に添加して混合することが、油脂の起泡力が上がって乳化が促進され、ポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を均一に配合させることができる。
【0026】
また、本発明の好ましい具体例によると、上記ポリグリシトールシロップはクッキー製造用組成物100重量部に対して0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部含有させることができ、この時0.5重量部未満であると、保存中に保湿力が落ちてしまい硬くて砕けやすくなり、20重量部を超過すると、生地の伸展性が高くなって生地の焼成中に形の不良が発生して菓子の模様が不規則になるので大量生産時に包装し難いという問題が発生する。
【0027】
本発明の好ましい具体例によると、上記グリセリンはクッキー製造用組成物100重量部に対して0.1〜15重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部で添加して使用することができる。
【0028】
上記ポリグリシトールシロップの代りに糖アルコールとしてキシリトール、マルチトール、ソルビトール、エリトリトール、イソマルト、ラクチトール及びマンニトールなどの中から選択された1種または2種以上の混合物を使う場合、生地に影響はないが、焼成後に菓子表面に糖が結晶化して析出してしまうので、表面がべたつく問題が発生してしまい、また、糖アルコール特有の冷涼感のために菓子の風味が低下してしまう。
【0029】
しかし、本発明おけるポリグリシトールシロップは4糖類以上の糖アルコールに限られず、水分を容易に放出したり吸収したりしない特徴を持っている。また、熱安定性(180℃まで安定)が高い特徴がある。そして、酸性下やアルカリ性下でも褐変が生じず、アミノ酸とのメイラード反応による着色が発生しないため、高温で焼かなければならないクッキー類に適用しやすい特徴を持つ。よって、本発明によると最終製品の咀嚼感、味、外観、工程の容易性を考慮した時、糖アルコール類ではないポリグリシトールシロップを使うことで、優れた効果を期待することができる。
【0030】
上記ポリグリシトールシロップを単独で使用した時も保湿性を高め、柔らかくてしっとりとした咀嚼感のあるクッキーを作ることができるが、ポリグリシトールシロップにグリセリンを混合して使用することで、より高い効果を出すことができる。
【0031】
本発明の好ましい具体例によると、食感と風味及び焼成後の菓子の形などを考慮した時、二つの混合物がクッキー製造用組成物100重量部に対して20重量部、好ましくは10重量部を超えないことが好ましい。本発明の好ましい具体例によると、クッキー製造用組成物100重量部に対してグリセリン0.5〜5重量部、ポリグリシトールシロップは1〜10重量部を混合して使うことが好ましい。さらに好ましくは、グリセリンとポリグリシトールシロップの混合物を使用する場合、菓子100重量部に対して、混合物を基準にして1.5〜5重量%使用するのが、保存中の製品の保湿性を向上させることができ、異味の発生と焼成後の菓子の形を考慮した際に好ましい。
【0032】
本発明のより好ましい具体例によると、クッキー製造用組成物100重量部に対して上記グリセリン0.2〜2重量部とポリグリシトールシロップ0.3〜3重量部を含有させることができる。
【0033】
本発明は上記のように本発明によって構成されるクッキー製造用組成物で製造されたクッキーを含む。
【0034】
上記のように、本発明によるとポリグリシトールシロップ、またはグリセリンとポリグリシトールシロップを特定の含量で混合して添加すると、保湿性を高めて柔らかくてしっとりとした咀嚼感を保つクッキー製造用組成物の生地を構成することができる。また、このような組成物を使用してクッキーを製造する場合、成形手段としてワイヤーカット及び/あるいは共押出機を使用することで高品質のクッキーを大量に生産することができる。
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、次の実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0036】
比較例1〜5
グリセリンを次の表1の含量でミキサーに入れて混合した後、生地をワイヤーカット方法を使用して成形し、この中の一部をスチールバンドに整列させ、オーブンに入れて焼成した。
【0038】
上記表1で示したように、比較例1のようにグリセリンを0.1重量部使用した時と、比較例2のようにグリセリンを0.5重量部使用した時と、比較例3のようにグリセリンを5重量部使用した時と、比較例4のようにグリセリンを10重量部使用した時とでは、生地の物性が成形に適していたが、比較例4では焼成後に異味が発生する傾向が見られた。しかし、比較例1〜4の全体を比較例5と比較した時、焼成後の官能面での差はなかった。但し、比較例4の場合、グリセリンの添加量が過多であると異味が発生する兆候を見せており、グリセリンは15重量部より多く配合すると本発明の目的を達成できない臨界的意義があることを確認した。
【0039】
実施例1〜4及び比較例6
ポリグリシトールシロップを次の表2の含量でミキサーに入れて混合した後、生地をワイヤーカット方法を使用して成形し、この中の一部をスチールバンドに整列させ、オーブンに入れて焼成した。
【0041】
上記表2で示したように、実施例1のようにポリグリシトールシロップを0.5重量部使用した時と、実施例2のようにポリグリシトールシロップを5.0重量部使用した時と、実施例3のようにポリグリシトールシロップを10重量部使用した時と、実施例4のようにポリグリシトールシロップを15重量部使用した時とでは、生地の物性が成形に適していたが、実施例4では焼成後に伸展性が若干表れ始めて形がやや不安であった。また、実施例1では比較例6と比較した時、焼成後の官能面での差はなかった。但し、実施例4の場合、ポリグリシトールシロップの添加量が過多であると、伸展性が表れ始めて、生地の形が不良になる兆候を見せていて、ポリグリシトールシロップの添加量を20重量部より多く使用すると、本発明の目的を達成できない臨界的意義があることを確認した。
【0042】
実施例5〜6及び比較例7〜9
グリセリンとポリグリシトールシロップを混合して使用した場合に関し、次の表3の含量でミキサーに入れて混合した後、生地をワイヤーカット方法を使用して成形し、この中の一部をスチールバンドに整列させ、オーブンに入れて焼成した。
【0044】
上記表3で示したように、実施例5のようにグリセリン1.5重量部、ポリグリシトールシロップ1重量部使用した場合と、実施例6のようにグリセリン3重量部、ポリグリシトールシロップを2重量部使用した場合と、比較例7のように二つの原料何れも添加しない場合と、比較例8のようにグリセリンのみ5重量部使用した場合と、比較例9のようにポリグリシトールシロップのみ5重量部添加する場合とで、焼成後の保湿性維持に関する実験を行った。
【0045】
その結果は、
図1と2にそれぞれ示した。
【0046】
図1は実施例と比較例で製造されたクッキーに対して、保湿剤の添加による保存中の水分変化を比較して示したグラフである。
図1を見ると、焼成後、保存中における水分変化を測定した結果、グリセリンとポリグリシトールシロップを添加しない比較例7では、1日経過後水分が他の例より低くなったが、これはグリセリンとポリグリシトールシロップ自体の水分によって、生地内の水分含量が相対的に低く、同一温度と時間で焼成する時、水分の蒸発が容易に起きるからである。また、14日間保存された時と24日間保存された時とでは、水分の減少が他のどの例よりも大きくなった。グリセリンとポリグリシトールシロップを混合して2.5%重量比と5.0%重量比で添加した実施例5、実施例6では、24日間保存した場合にもほとんど水分の流出が発生しなかった。これに比べてグリセリンとポリグリシトールシロップをそれぞれ添加した比較例8、比較例9の場合は、14日目における水分の流出の差は微々たるものであったが、24日を経過した場合はそれぞれ水分流出の差はもっと大きくなった。
【0047】
図2は実施例と比較例で製造されたクッキーに対して保湿剤添加による保存中の水分活性の変化を比較して示したグラフである。
図2の水分活性の変化を見ると、保湿剤を添加しなかった比較例7の場合、14日目には高くなりつつあり、24日目には低くなる傾向を示すことに対して、他の保湿剤添加例は相対的にほとんど差がなかったが、これは保存中に相対的に早い水分流出によって水分活性がさらに早い速度で低くなったためと判断される。
【0048】
一方、24日保存後、菓子の官能評価とテクスチャーアナライザー(Texture Analyser)を用いて硬度を測定した結果を下記表4に示した。
【0050】
上記表4を見ると、外観の変化においてもグリセリンとポリグリシトールシロップの未添加(比較例7)は、水分流出によって菓子表面の硬化が一番大きくなったが、表面から固くなって硬度値が最も高くなり、クラックが生じて菓子が砕けやすくなってしまう現象が発生した。一方、グリセリンとポリグリシトールシロップを使用した場合は、24日目までにはこのような現象が発生しなかった。24日経過後、官能評価を行った時、しっとりとした咀嚼感に対する評価はグリセリンとポリグリシトールシロップを同時に使用した場合が、それぞれ一方を使用した比較例8、比較例9より高い評価となった。
【0051】
上記の結果によって、グリセリンとポリグリシトールシロップとの一方を添加した場合より、両方を添加することが保存による水分の遊離及び乾燥を防ぐ効果がより大きくなり、しっとりとした咀嚼感の維持にさらに効果的であることが分かった。