特許第6117878号(P6117878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117878
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】過電流検出部を有するモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   H02P27/06
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-172974(P2015-172974)
(22)【出願日】2015年9月2日
(65)【公開番号】特開2017-50996(P2017-50996A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年8月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】平山 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 樹一
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/077187(WO,A1)
【文献】 特開2014−075694(JP,A)
【文献】 特開2013−123340(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0136135(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/121765(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧をスイッチング素子のスイッチング動作により交流電圧に変換して交流モータに交流電流を供給するモータ駆動装置であって、
内部のスイッチング素子がオンオフ駆動されることでDCリンク側の直流電圧を交流電圧に変換して交流モータ側へ出力するモータ駆動部と、
受信したゲート駆動指令に応じてモータ駆動部のスイッチング素子をオンオフ駆動するゲート駆動回路と、
前記ゲート駆動回路に対し前記ゲート駆動指令としてオン指令およびオフ指令のいずれかを出力するゲート駆動指令生成部と、
前記モータ駆動部のDCリンク部を流れる電流もしくは交流モータ側の交流電流についての過電流の発生を、設定された過電流検出レベルに基づいて検出する過電流検出部と、
を備え、
前記ゲート駆動指令生成部は、前記過電流検出部が前記設定された過電流検出レベルに基づいて過電流の発生を検出したとき、オン指令に対するオフ指令の割合を徐々に増加させながらオン指令およびオフ指令を交互に出力し、最終的にはオフ指令のみを出力することを特徴とするモータ駆動装置。
【請求項2】
DCリンク部を流れる電流を検出するDCリンク部電流検出器を備え、
前記過電流検出部は、前記DCリンク部電流検出器が検出する電流を監視し、過電流の発生を検出した際には前記ゲート駆動指令生成部に対し過電流発生を通知する請求項1に記載のモータ駆動装置。
【請求項3】
交流モータ側の交流電流を検出するモータ電流検出器を備え、
前記過電流検出部は、前記モータ電流検出器が検出する交流電流を監視し、過電流の発生を検出した際には前記ゲート駆動指令生成部に対し過電流発生を通知する請求項1に記載のモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の送り軸や主軸、あるいは産業機械、産業用ロボットのアーム等を駆動するモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の送り軸や主軸、あるいは産業機械、産業用ロボットのアーム等の駆動源である交流モータを駆動するモータ駆動装置においては、交流電源側から入力された交流電圧を直流電圧に一旦変換したのちさらに交流電圧に変換して交流モータへ交流電流を供給している。このため、モータ駆動装置は、交流電源側から供給された交流電圧を整流してDCリンク(直流リンク)に直流電圧を出力する整流器と、整流器の直流側であるDCリンクに接続され、内部のスイッチング素子のスイッチング動作によりDCリンク側の直流電圧を交流電圧に変換して交流モータに交流電流を供給する逆変換器とを備える。
【0003】
図5は、直流電源を用いて三相交流モータを駆動する一般的なモータ駆動装置を示す回路図である。三相交流モータ(以下、単に「交流モータ」と称する。)200を駆動するモータ駆動装置100内には逆変換器50が設けられており、逆変換器50のDCリンク側には直流電源からの直流電圧が印加され、逆変換器50からはモータ200を駆動するための三相の交流電流が出力される。なお、ここでは特に図示しないが、一般に逆変換器50のDCリンク側には、商用の交流電源から入力された交流電流を直流電流に変換して出力する整流器が設けられる。
【0004】
モータ駆動装置100は、逆変換器50と、ゲート駆動回路61と、ゲート駆動指令生成部62と、過電流検出部63と、電流指令生成部64とを備える。逆変換器50は、スイッチング素子Sおよびこれに逆並列に接続されたダイオードDを有するスイッチ部のブリッジ回路からなり、スイッチング素子Sがオンオフ駆動されることでDCリンク側の直流電圧を交流電圧に変換して交流モータ200側へ出力する。ゲート駆動指令生成部62、過電流検出部63および電流指令生成部64によりモータ制御部60が構成される。電流指令生成部64は、モータ電流検出器71によって検出された交流モータ200へ流れ込む交流電流に基づいて電流指令を生成する。ゲート駆動指令生成部62は、ゲート駆動回路61に対しゲート駆動指令としてオン指令およびオフ指令のいずれかを出力する。ゲート駆動回路61は、受信したゲート駆動指令に応じてモータ駆動部のスイッチング素子をオンオフ駆動する。なお、図面を簡明にするためにゲート駆動回路61については1相分のみ図示している。過電流検出部63は、DCリンク部電流検出器72によって検出されたDCリンク部を流れる電流もしくはモータ電流検出器71によって検出された交流モータ200側の交流電流についての過電流の発生を検出する。
【0005】
図5に示すように、モータ駆動装置100の交流モータ200側の出力相間で異常短絡が発生すると、太字矢印に示すような経路を流れる過電流が発生する。過電流が流れ続けるとスイッチング素子S等の各素子が故障するため、過電流を遮断して各素子を保護することが必要である。このため、過電流検出部63が過電流の発生を検出したときは、ゲート駆動指令生成部62はゲート駆動回路61に対しスイッチング素子Sをオフするオフ指令を生成し、これに応じてゲート駆動回路61はスイッチング素子Sを即座にオフし、過電流を遮断する。
【0006】
しかしながら、非常に大きな過電流を高速に遮断することから電流の時間変化が大きく、電流経路のインダクタンスによって生じるサージ電圧が非常に大きくなり、スイッチング素子S等の各素子の故障の原因となる。
【0007】
そこで、過電流遮断時に生じるサージ電圧を抑制するために、図5に示すようなサージを吸収するスナバ回路81が設けられることが多い。なお、図5においては図面を簡明にするために、スナバ回路81については1相分のみ図示している。
【0008】
またこれ以外にも、過電流遮断時に生じるサージ電圧を抑制する方法として、例えば、スイッチング素子のゲート抵抗を大きくすることでスイッチング素子のスイッチング速度を低下させて電流の遮断を緩やかに行う方法がある。
【0009】
また、過電流時と通常時とでスイッチング速度を切り分ける方法として、例えば、スイッチング素子のゲート抵抗として抵抗値が大きなものと小さなものの二種類用意しておき、通常時は小さなゲート抵抗を使用してスイッチング速度を遅くせず、過電流時には大きなゲート抵抗を使用してスイッチング速度を遅くする方法がある。
【0010】
また例えば、通常のスイッチングにおいて、ゲート電圧パターン発生器を用いて、サージ電圧が小さくなるようにゲート電圧変化が緩やかな部分と、スイッチング損失が大きくならないようにゲート電圧変化が急な部分の2つのパターンを持ったゲート電圧パターンを生成することで、サージ電圧を抑制する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3692740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように過電流遮断時に発生するサージ電圧を抑制することは、スイッチング素子S等の各素子の故障を防ぐために重要である。
【0013】
過電流遮断時に生じるサージ電圧を抑制する方法のうち、スナバ回路による方法は、抑制しようとするサージ電圧が大きくなるほどスナバ回路を構成する部品の規模を大きくする必要があり、過電流遮断時ではない通常時においても過剰なスナバ回路を搭載せざるを得ず、コストが増大する問題がある。
【0014】
また、ゲート抵抗を大きくすることでスイッチング素子のスイッチング速度を遅くする方法は、スイッチング速度が早くても問題のないような通常時においてスイッチング損失が増加してしまい、効率が悪いという問題がある。
【0015】
また、抵抗値の異なるゲート抵抗を複数使用する方法は、回路の構成要素を増やすことになり、コストが増大し、信頼性を損なうという問題がある。
【0016】
また、特許文献1に記載された発明によれば、1回のターンオフ動作で、スイッチング速度が早い部分と遅い部分を持ったゲート電圧パターンを作成しなければならず、制御が複雑になることや、回路の構成要素を増やす必要があるという問題がある。
【0017】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、通常時のスイッチング損失を増加させずかつ回路の構成要素を増やさずに過電流遮断時に発生するサージ電圧を容易に抑制することができる、信頼性の高いモータ駆動装置を高効率、低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を実現するために、本発明においては、直流電圧をスイッチング素子のスイッチング動作により交流電圧に変換して交流モータに交流電流を供給するモータ駆動装置は、内部のスイッチング素子がオンオフ駆動されることでDCリンク側の直流電圧を交流電圧に変換して交流モータ側へ出力するモータ駆動部と、受信したゲート駆動指令に応じてモータ駆動部のスイッチング素子をオンオフ駆動するゲート駆動回路と、ゲート駆動回路に対しゲート駆動指令としてオン指令およびオフ指令のいずれかを出力するゲート駆動指令生成部と、モータ駆動部のDCリンク部を流れる電流もしくは交流モータ側の交流電流についての過電流の発生を検出する過電流検出部と、を備え、ゲート駆動指令生成部は、過電流検出部が過電流の発生を検出したとき、オン指令に対するオフ指令の割合を徐々に増加させながらオン指令およびオフ指令を交互に出力し、最終的にはオフ指令のみを出力する。
【0019】
ここで、モータ駆動装置は、DCリンク部を流れる電流を検出するDCリンク部電流検出器を備え、過電流検出部は、DCリンク部電流検出器が検出する電流を監視し、過電流の発生を検出した際にはゲート駆動指令生成部に対し過電流発生を通知するようにしてもよい。
【0020】
また、モータ駆動装置は、交流モータ側の交流電流を検出するモータ電流検出器を備え、過電流検出部は、モータ電流検出器が検出する交流電流を監視し、過電流の発生を検出した際にはゲート駆動指令生成部に対し過電流発生を通知するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、通常時のスイッチング損失を増加させずかつ回路の構成要素を増やさずに過電流遮断時に発生するサージ電圧を容易に抑制することができ、効率を下げることや、コストを上げることなく、モータ駆動装置の高信頼性化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例によるモータ駆動装置を示す回路図である。
図2】本発明の実施例によるモータ駆動装置における過電流遮断時におけるサージ電圧発生を説明する図であり、(A)はゲート駆動指令を示し、(B)はゲート電圧を示し、(C)はコレクタ電流、コレクタ−エミッタ間電圧およびサージ電圧を示す。
図3】本発明と比較するために従来の過電流遮断時におけるサージ電圧発生を説明する図であり、(A)はゲート駆動指令を示し、(B)はゲート電圧を示し、(C)はコレクタ電流、コレクタ−エミッタ間電圧およびサージ電圧を示す。
図4】本発明の実施例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
図5】直流電源を用いて三相交流モータを駆動する一般的なモータ駆動装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施例によるモータ駆動装置を示す回路図である。本発明の実施例によるモータ駆動装置1は、入力された直流電圧をスイッチング素子Sのスイッチング動作により交流電圧に変換して交流モータ200に供給する。交流モータ200は、例えば工作機械の送り軸や主軸、あるいは産業機械、産業用ロボットのアーム等の駆動源として用いられる。また、ここでは特に図示しないが、モータ駆動装置1のDCリンク側には、商用の交流電源から入力された交流を直流に変換して出力する順変換器が設けられてもよく、またあるいはバッテリなどの直流電源が設けられてもよい。なお、ここで説明する実施例では、1個の交流モータ200を駆動制御するモータ駆動装置1について説明するが、駆動制御するモータの個数は、本発明を特に限定するものではなく、複数個のモータを駆動制御するモータ駆動装置にも適用可能である。また、モータ駆動装置1によって駆動される交流モータの種類についても本発明を特に限定するものではなく、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。
【0024】
本発明の実施例によるモータ駆動装置1は、モータ駆動部11と、ゲート駆動回路12と、ゲート駆動指令生成部13と、過電流検出部14とを備える。また、モータ駆動装置1は、一般的なモータ駆動装置と同様、電流指令生成部15と、DCリンク部電流検出器16と、モータ電流検出器17とを備える。ゲート駆動指令生成部13、過電流検出部14および電流指令生成部15によりモータ制御部10が構成される。
【0025】
モータ駆動部11は、スイッチング素子Sおよびこれに逆並列に接続されたダイオードDを有するスイッチ部のブリッジ回路からなる逆変換器(インバータ)であり、スイッチング素子Sがオンオフ駆動されることでDCリンク側の直流電圧を交流電圧に変換して交流モータ200側へ出力する。スイッチング素子Sの例としては、IGBT、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)、サイリスタ、GTO(Gate Turn−OFF Thyristor:ゲートターンオフサイリスタ)などがあるが、スイッチング素子Sの種類自体は本発明を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
【0026】
ゲート駆動回路12は、後述するゲート駆動指令生成部13から受信したゲート駆動指令に応じてモータ駆動部1のスイッチング素子Sをオンオフ駆動するための電圧を各スイッチング素子Sに対して出力する。なお、図面を簡明にするためにゲート駆動回路12については1相分のみ図示しているが、ゲート駆動回路12はモータ駆動部11内の各スイッチング素子Sについてそれぞれ設けられるものである。
【0027】
ゲート駆動指令生成部13は、ゲート駆動回路12に対しゲート駆動指令としてオン指令およびオフ指令のいずれかを出力する。ゲート駆動指令生成部13は、通常時は、電流指令生成部15によって生成された電流指令に応じたゲート駆動指令を出力するが、過電流発生時は、オン指令に対するオフ指令の割合を徐々に増加させながらオン指令およびオフ指令を交互に出力し、最終的にはオフ指令のみを出力する。
【0028】
過電流検出部14は、モータ駆動部11のDCリンク部を流れる電流もしくは交流モータ200側の交流電流についての過電流の発生を検出する。過電流検出方法自体は本発明を限定するものではなく、公知のものを用いればよい。また、過電流検出レベルについては、モータ駆動装置1を構成する部品や使用環境等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
DCリンク部電流検出器16は、DCリンク部を流れる電流を検出する。上述の過電流検出部14は、DCリンク部電流検出器16が検出する電流を監視し、過電流の発生を検出した際にはゲート駆動指令生成部13に対し過電流発生を通知する。
【0030】
モータ電流検出器17は、交流モータ200側の交流電流を検出する。上述の過電流検出部14は、モータ電流検出器17が検出する交流電流を監視し、過電流の発生を検出した際にはゲート駆動指令生成部13に対し過電流発生を通知する。
【0031】
電流指令生成部15は、モータ電流検出器17によって検出された交流モータ200側の交流電流に基づいて、通常時(すなわち過電流発生時ではない)における電流指令を生成する。より詳しくは、電流指令生成部15は、モータ電流検出器17の検出値、入力された速度指令、交流モータ200の動作プログラム、交流モータ200の回転速度などを用いて、交流モータ200の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するための電流指令を生成する。
【0032】
上述のように、ゲート駆動指令生成部13は、過電流検出部14が過電流の発生を検出したとき、オン指令に対するオフ指令の割合を徐々に増加させながらオン指令およびオフ指令を交互に出力し、最終的にはオフ指令のみを出力する。以下、これについてより詳細に説明する。図2は、本発明の実施例によるモータ駆動装置における過電流遮断時におけるサージ電圧発生を説明する図であり、(A)はゲート駆動指令を示し、(B)はゲート電圧を示し、(C)はコレクタ電流、コレクタ−エミッタ間電圧およびサージ電圧を示す。また、図3は、本発明と比較するために従来の過電流遮断時におけるサージ電圧発生を説明する図であり、(A)はゲート駆動指令を示し、(B)はゲート電圧を示し、(C)はコレクタ電流、コレクタ−エミッタ間電圧およびサージ電圧を示す。
【0033】
まず、従来の過電流遮断時におけるサージ電圧発生について図3を参照して説明する。従来は、時刻t1で過電流が発生したとすると、図3(A)に示すように過電流を遮断するためにスイッチング素子のオフ指令をゲート駆動回路に与えていた(時刻t2)。ゲート駆動回路にオフ指令が与えられることでスイッチング素子は即座にオフするが、図3(B)に示すようにスイッチング素子のゲート電圧の低下が早いため、図3(C)に示すようにコレクタ電流の時間変化が大きくなり、コレクタ−エミッタ間電圧に生じるサージ電圧が大きくなる。
【0034】
これに対し、本発明の実施例では、ゲート駆動指令生成部13は、図2(A)に示すように、時刻t1で過電流検出部14が過電流の発生を検出したとき、時刻t2以降でオン指令に対するオフ指令の割合を徐々に増加させながらオン指令およびオフ指令を交互に出力し、最終的にはオフ指令のみを出力する(時刻t3)。オン指令に対するオフ指令の割合を徐々に増加させながらオン指令およびオフ指令を交互に出力することで、図2(B)に示すようにスイッチング素子のゲート電圧の低下が従来よりも緩やかになり、図2(C)に示すようにコレクタ電流の時間変化が小さくなり、コレクタ−エミッタ間電圧に生じるサージ電圧を従来よりも抑制することができる。
【0035】
図4は、本発明の実施例によるモータ駆動装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0036】
ステップS101において、電流指令生成部15は、モータ電流検出器17の検出値、入力された速度指令、交流モータ200の動作プログラム、交流モータ200の回転速度などを用いて、交流モータ200の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するための電流指令を生成する。これにより、交流モータ200は駆動される。
【0037】
ステップS102において、過電流検出部14は、モータ駆動部11のDCリンク部を流れる電流もしくは交流モータ200側の交流電流について、過電流が発生したか否かを判別する。過電流が発生したと判定された場合は、ステップS103へ進む。過電流検出部14は、DCリンク部電流検出器16が検出する電流およびモータ電流検出器17が検出する電流を監視しており、これらDCリンク部電流およびモータ電流のいずれかについて過電流の発生を検出した際にはゲート駆動指令生成部13に対し過電流発生を通知する。
【0038】
ステップS103では、ゲート駆動指令生成部13は、オン指令に対するオフ指令の割合を徐々に増加させながらオン指令およびオフ指令を交互に出力し、最終的にはオフ指令のみを出力する。これにより、ゲート駆動回路12は、オン時間に対するオフ時間の割合を徐々に増加させながらスイッチング素子Sのゲートに対してオンするための電圧およびオフするための電圧を交互に出力し、最終的にはオフするための電圧のみを出力する。これに応じてスイッチング素子Sは、オン時間に対するオフ時間の割合を徐々に増加させながらオンオフを交互に繰り返し、最終的にはオフする。この結果、スイッチング素子Sのゲート電圧の低下が従来よりも緩やかになり、コレクタ電流の時間変化が小さくなり、コレクタ−エミッタ間電圧に生じるサージ電圧を従来よりも抑制することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 モータ駆動装置
10 モータ制御部
11 モータ駆動部
12 ゲート駆動回路
13 ゲート駆動指令生成部
14 過電流検出部
15 電流指令生成部
16 DCリンク部電流検出器
17 モータ電流検出器
200 交流モータ
D ダイオード
S スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5