特許第6117893号(P6117893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セキスイ・スペシャルティ・ケミカルズ・アメリカ・エルエルシーの特許一覧

特許6117893冷水可溶性ポリビニルアルコール/アルキルアクリレートコポリマーおよびそれらのフィルム
<>
  • 特許6117893-冷水可溶性ポリビニルアルコール/アルキルアクリレートコポリマーおよびそれらのフィルム 図000008
  • 特許6117893-冷水可溶性ポリビニルアルコール/アルキルアクリレートコポリマーおよびそれらのフィルム 図000009
  • 特許6117893-冷水可溶性ポリビニルアルコール/アルキルアクリレートコポリマーおよびそれらのフィルム 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117893
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】冷水可溶性ポリビニルアルコール/アルキルアクリレートコポリマーおよびそれらのフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 216/06 20060101AFI20170410BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20170410BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C08F216/06
   C08F8/12
   C08J5/18CEX
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-216584(P2015-216584)
(22)【出願日】2015年11月4日
(62)【分割の表示】特願2013-546257(P2013-546257)の分割
【原出願日】2011年12月16日
(65)【公開番号】特開2016-65244(P2016-65244A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】61/459,979
(32)【優先日】2010年12月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511040573
【氏名又は名称】セキスイ・スペシャルティ・ケミカルズ・アメリカ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ヴィカーリ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ブレット
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭48−035719(JP,B1)
【文献】 特開昭63−182311(JP,A)
【文献】 特開昭63−182313(JP,A)
【文献】 特表2006−521449(JP,A)
【文献】 特表2007−520584(JP,A)
【文献】 特開昭64−014244(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0034575(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0161557(US,A1)
【文献】 特表2008−510039(JP,A)
【文献】 特開昭63−168437(JP,A)
【文献】 特表2000−501136(JP,A)
【文献】 特開昭59−217708(JP,A)
【文献】 特開2008−184614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00、301/00
C08J 5/00−5/02、5/12−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とアルキルアクリレート(“AA”)とを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)との冷水可溶性で実質的にランダムなコポリマーであって、3分未満の特徴的冷水フィルム溶解時間を示し、勾配溶出クロマトグラフィー分析における本質的に1つのピークの存在によって明示されるように組成ドリフトを実質的に含まない上記コポリマー、ここで、前記冷水フィルム溶解時間は、76μm×2.3cm×3.4cmの寸法のフィルムをスライドフレームに据え付け、温度を21℃±1℃に保持した撹拌下の400mlの水中にフィルムを浸漬させ、フィルムの残留ストリングとフィルム粒子がフレーム上に残らなくなるまでの合計時間である。
【請求項2】
コポリマーが2〜25モル%のAAを含む、請求項1に記載の、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とAAとを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)との冷水可溶性で実質的にランダムなコポリマー。
【請求項3】
コポリマーが3〜10モル%のAAを含む、請求項1に記載の、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とAAとを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)との冷水可溶性で実質的にランダムなコポリマー。
【請求項4】
コポリマーが2分未満の特徴的冷水フィルム溶解時間を示す、請求項1に記載の、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とAAとを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)との冷水可溶性で実質的にランダムなコポリマー。
【請求項5】
コポリマーが1分以下の特徴的冷水フィルム溶解時間を示す、請求項1に記載の、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とAAとを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)との冷水可溶性で実質的にランダムなコポリマー。
【請求項6】
コポリマーが単峰性GPECクロマトグラムを有する、請求項1に記載の、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とAAとを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)との冷水可溶性で実質的にランダムなコポリマー。
【請求項7】
AAが、メチルアクリレート(AA)、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびこれらの混合物から選ばれる、請求項1に記載の、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とAAとを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)との冷水可溶性で実質的にランダムなコポリマー。
【請求項8】
請求項1に記載のコポリマーから製造されるフィルム。
【請求項9】
10ミクロン〜400ミクロンの厚さを有する、請求項8に記載のフィルム。
【請求項10】
ビニルアセテートから誘導されるモノマー単位を少なくとも75モル%有する請求項1に記載のコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この非仮出願は、2010年12月22日付け出願の“改良された水溶解性を有するポリビニルアルコールの製造方法”と題する米国仮特許出願第61/459,979号の出願日の恩典を主張する。これによって米国仮特許出願第61/459,979号の優先権を主張し、該仮特許出願の開示内容を参照により本特許出願に含める。
【0002】
本発明は、一般には、水溶性ポリビニルアルコール(PVOH)ポリマーとそれらの製品に関し、特に、粒状製品を包装・封入するためのフィルムに関する。本発明の冷水可溶性PVOH/アルキルアクリレートコポリマーは、実質的にランダムなモノマー分布(該コポリマーの冷水可溶性とGPECクロマトグラムにて示されている)を有する。
【背景技術】
【0003】
ポリビニルアルコール(PVOH)は、一般にはポリビニルアセテートのアルコール分解(通常は、加水分解または鹸化と呼ばれる)によって製造される合成樹脂である。完全加水分解PVOH(実質的に全てのアセテート基がアルコール基に転化されている)は、強く水素結合した高結晶質ポリマーであって、約140°F(60℃)より高い熱水にだけ溶解する、ポリビニルアセテートの加水分解後に充分な数のアセテート基が残っている場合、該PVOHポリマーは部分加水分解ポリマーとして知られており、水素結合がより弱くてより低結晶質であり、約50°F(10℃)未満の冷水に可溶である。完全加水分解PVOHタイプと部分加水分解PVOHタイプはともに、通常PVOHホモポリマーと呼ばれているが、部分加水分解タイプは、技術的にはビニルアルコール−ビニルアセテートコポリマーである。
【0004】
PVOHコポリマーという用語は、一般には、ビニルエステル(通常はビニルアセテート)と別のモノマー(たとえば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等)とのコポリマーを加水分解することによって誘導されるポリマーを表わすために使用される(Vicariによる米国特許第7,932,328号、第7,790,815号、第7,786,229号、および第6,818,709号明細書を参照)。PVOHコポリマーは、共重合されるモノマーの種類と性質を変えることによって所望のフィルム特性に調整することができる。
【0005】
当業界では公知のことであるが、PVOHコポリマーの多くは、それらの構造から、部分加水分解タイプのPVOHホモポリマーよりも、冷水に対してはるかに速やかに溶解しうる。したがってこのようなコポリマーは、農薬、家庭用・工業用洗浄剤、洗濯洗剤、および水処理用薬品等を含む種々の液状・粉末状製品を単位用量投与(unit dose
presentation)するための包装用フィルムを製造する上で高い有用性を有する。しかしながら、全てのPVOHコポリマーが、種々の液状・非液状(たとえば粉末状)製品を単位用量投与するための包装用フィルムの製造において有用な、あるいは肥料、農薬、家庭用・工業用洗浄剤、洗濯洗剤、および水処理用薬品等を含めたこれらの製品をカプセル封入する望ましい最良の水溶性を有しているわけではない。
【先行特許文献】
【0006】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,932,328号明細書
【特許文献2】米国特許第7,790,815号明細書
【特許文献3】米国特許第7,786,229号明細書
【特許文献4】米国特許第6,818,709号明細書
【発明の概要】
【0008】
逐次重合プロセスにおいて、ビニルアセテートモノマー供給量に対するアルキルアクリレート(AA)モノマー供給量を制御することによって、冷水可溶性であって組成上のずれ(compositional drift)を実質的に含まないポリマーが製造される、ということを本発明者らは見出した。共重合プロセスは、AAの量を2つの部分に分割すること;AAの第1の部分と、必要とされる全てのビニルアセテートモノマー(VAM)とを第1の反応器において共重合させること;そして残りのAAだけを第2の反応器中に加え、第1の反応器からのコポリマーと重合させること;を含むのが好ましい。鹸化すると、コモノマー組成分布が実質的にランダムであるPVOHは、大幅に改良された冷水可溶性を有する。こうした生成物は、粒状製品や液状製品を包装する際に使用されるフィルム用に、そして粒状製品や液状製品をカプセル封入するために使用されるフィルム用に特に有用である。供給することができるカプセル封入物としては、肥料や他の農業製品、医薬製品、生物医学品、および化粧品などがある。
【0009】
本発明のポリマーは、3分未満の特徴的冷水溶解時間を示し、典型的には2分未満の特徴的冷水溶解時間を示し、好ましくは1分以下の特徴的冷水溶解時間を示す。同様に、冷水フィルム崩壊時間は、一般には2分未満であり、典型的には1分未満であり、好ましくは45秒以下である。
【0010】
特徴的冷水溶解時間と特徴的冷水フィルム崩壊時間は、76ミクロンのフィルムに関して測定される。しかしながら、これらのパラメーターは、フィルムが製造されるポリマーの特性であることは言うまでもない。本発明のポリマーは、一般には10〜400ミクロンの厚さを有する、典型的には20〜200ミクロンの厚さを有する、そして好ましくは25〜100ミクロンの厚さを有する包装用フィルムとして使用するための任意の適切な厚さに造り上げることができる。本発明のポリマーはさらに、粒状固体、液体、及び/又はゲル等のコア製品を、溶液コーティング、エマルジョンコーティング、溶融塗布、スプレーコーティング、浸漬コーティング、流動床コーティング、または超臨界COを使用する塗布によってカプセル封入するために使用される。「カプセル封入された材料を含む組成物」と題する米国特許第7,799,752号明細書、「カプセル封入された化粧用組成物」と題する米国特許第7,622,132号明細書、およびYueらによる“Particle Encapsulation With Polymers Via In Situ−Polymerization in Supercritical COPowder Technology 146(2004),pp.32−45”(これら文献の開示内容を参照により本明細書に含める)中に適切な技法が記載されている。本発明のポリマーは、カプセル封入用材料として使用される場合、一般には0.01〜30ミクロンの厚さに塗布され、より典型的には0.05〜25ミクロンの厚さに塗布され、より一層典型的には0.1〜20ミクロン(たとえば0.25〜5ミクロン)の厚さに塗布される。1〜3ミクロンの厚さのフィルムが、多くの製品をカプセル封入するのに適切に使用される。
【0011】
本発明のさらなる特徴と利点は、以下の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
それぞれの軸のスケールに対して正確に描かれている、添付の勾配極性溶出クロマトグラフ〔Gradient Polarity Elution Chromatogra
ph(“GPEC”)〕図面によって、本発明をより詳細に説明する。図面は、ポリマーがGPECカラムから溶出するときのポリマーの極性〔ミリボルト(mV)表示での電気的応答〕を、溶出時間(分)に対してプロットしたものである。
図1図1は、VAMとメチルアクリレート(MA)との70:30スプリットのコモノマー添加比から得られる本発明のポリビニルアルコール−メチルアクリレートコポリマーのGPECトレースであり、水溶解性がかなり高いことを示している。グラフからわかるように、この溶出ポリマー組成物は、実質的に単一のピークによって示されていることから2分間隔以内のかなり近い極性(実質的なランダム性)を有する、あるいは言い換えれば、GPECクロマトグラムは実質的に単峰性である(すなわち、単一のポリマーピークを示す)。
図2図2は、VAMとMAとの50:50スプリットのコモノマー添加比から得られるポリビニルアルコール−メチルアクリレートコポリマーのGPECトレースであり、水溶解性が不確かであることを示している。ピークは、図1の場合と同様に実質的なランダム性を示しているが、同じ時間間隔内の一部分としての別のピークの出現によって示されるように、組成がわずかに広がっていることを示している。2つのピークは溶出時間がほぼ同じで、ベースラインからの高さの50%超が実質的に重なっている。本発明者らは、こうした種類のGPECクロマトグラムを近接極性(close polarity)GPECクロマトグラムと呼ぶ。
図3図3は、VAMとMAとの100:0スプリットのコモノマー添加比から得られるポリビニルアルコール−メチルアクリレートコポリマーのGPECトレースであり、水溶解性が低いことを示している。別個のピークが現れ始め、異なる極性を有するポリマー組成物が存在することを示している。図3の場合、二峰性のGPECクロマトグラムであると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を、図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。このような説明は、単に例証のためのものである。添付の特許請求の範囲に記載の本発明の要旨を逸脱しない範囲での改良は、当業者には容易に明らかとなろう。明細書と特許請求の範囲の全体にわたって使用されている専門用語は、通常の意味で使用されている。
【0014】
特徴的冷水フィルム溶解時間と特徴的冷水フィルム崩壊時間は、76ミクロンのフィルムと、写真スライド用に使用されるクラスのスライドフレームとを使用し、米国特許第7,745,517号(後述する)に記載の手順を利用して測定される。これらのパラメーターがコポリマーそれ自体の特性であることは言うまでもない。
【0015】
本発明の1つの態様においては、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とアルキルアクリレート(“AA”)とを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレートとの、冷水可溶性の実質的にランダムなコポリマーが提供され、このコポリマーは、3分未満の特徴的冷水フィルム溶解時間を示す。本発明のコポリマーは、一般には2〜25モル%のAAを含み、典型的には3〜10モル%のAAを含み、好ましいクラスでは4〜8モル%のAAを含む。本発明のランダムコポリマーはさらに、典型的な実施態様では2分未満の特徴的冷水フィルム溶解時間を示し、好ましくは1分未満の特徴的冷水フィルム溶解時間を示す。同様に、本発明のコポリマーは、好ましくは1分未満の特徴的冷水フィルム崩壊時間を示し、単峰性のGPECクロマトグラム(たとえば図1のクロマトグラム)を有する。
【0016】
AAは、メチルアクリレート(MA)、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、およびこれらの混合物から選択するのが適切である(特に、メチルアクリレートまたはエチルアクリレート)。
【0017】
本発明のコポリマーから製造される包装用フィルムは、一般には10ミクロン〜400ミクロンの厚さを有し、25ミクロンから100ミクロンの厚さを有するのが適切である。
【0018】
幾つかの応用では、本発明は、コア製品を取り囲む外側カプセル封入フィルムを含む、カプセル封入された製品を提供し、ここでカプセル封入用フィルムは、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とアルキルアクリレート(“AA”)とを共重合させることによって製造される、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレートとの、冷水可溶性の実質的にランダムなコポリマーを含み、該コポリマーは、3分未満の特徴的冷水フィルム溶解時間を示す。カプセル封入用フィルムは、一般には0.05ミクロン〜25ミクロンの、典型的には0.25ミクロン〜5ミクロンの厚さを有し、粒状固体をカプセル封入する。
【0019】
本発明はさらに、ビニルアセテートとメチルアクリレートのコポリマーの連続的製造方法を含む。
VAMとメチルアクリレート(MA)の共重合に使用されるラジカル生成重合開始剤としては、たとえば2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート(Trigonox EHP)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−セチルペルオキシジカーボネート、およびジ−s−ブチルペルオキシジカーボネートなどがある。実質的には、ラジカルを生成しうるいかなる開始剤も使用することができる。
【0020】
ここに記載の製造方法では、MAをコモノマーと呼んでいる。しかしながら、これは限定していると見なすべきではない。そうではなくむしろ、本発明の製造方法は、他の類似のアルキルアクリレートとの併用に対しても適していると理解すべきである。
【0021】
本発明の製造方法では一般に、コモノマーであるVAMとMA、重合開始剤、および反応ゾーン中に形成されるコポリマーに対する溶媒が使用される。適切な溶媒としては、たとえばメタノール、エタノール、およびプロパノール等がある。好ましい溶媒はメタノールである。
【0022】
前述したように、両方の反応ゾーンに連続的に供給される必要なMAの合計量を2つの部分に分割する:第1の反応ゾーンのための第1の部分、および第2の反応ゾーンのための残量(第2の部分)。“スプリット(split)”、すなわち第1の反応ゾーンに供給されるMAの量(第1の部分)と第2の反応ゾーンに供給されるMAの量(第2の部分)との間の比は、たとえば約50:50〜約80:20、好ましくは約60:40〜約75:25であってよい。
【0023】
第1の反応ゾーンに供給される重合開始剤の量は、たとえば、供給されるVAMの重量を基準として約0.0001〜約1重量%であってよい。
第1の反応ゾーンに供給される溶媒の量は、たとえば、供給されるVAMの重量を基準として約10〜約40重量%であってよい。重合開始剤は、溶媒中に溶解させた溶液として、溶液の重量を基準として約0.1〜約10重量%の濃度で第1の反応ゾーンに供給するのが好ましい。
【0024】
第1の反応ゾーンに供給される成分の、第1の反応ゾーン中の平均滞留時間は、たとえば約30〜約120分の範囲、好ましくは約45〜約70分の範囲である。
第1の反応ゾーン中の反応温度は、たとえば約55〜約85℃であり、好ましくは約6
0〜約80℃である。
【0025】
第1の反応ゾーンからの流出液中の成分と、第2の反応ゾーンに供給される追加のMAの、第2の反応ゾーン中の平均滞留時間は、たとえば約30〜約120分の範囲であり、好ましくは約45〜約70分の範囲である。
【0026】
第2の反応ゾーン中の反応温度は、たとえば約55〜約85℃であり、好ましくは約60〜約80℃である。
それぞれの反応ゾーン中の圧力は、たとえば約1〜約30psigの範囲であり、好ましくは約3〜約15psigの範囲である。
【0027】
第1と第2の反応ゾーン中の滞留時間と温度は、一般には、系に供給されるMAの実質的に全ての重合が果たされるに充分な滞留時間と温度であるが、系に加えられるVAMのわずかな比率が未重合のまま残ることがある。
【0028】
第2の反応ゾーンからの流出液中のポリマー固体含量は、たとえば約30〜約85%の範囲、好ましくは約55〜約75%の範囲であってよく、そして実際のポリマー固体含量と加えられるモノマーの量に等しい理論的ポリマー固体含量から算出される転化率は、約40〜約99%の範囲、好ましくは約45〜約50%の範囲であってよい。第2の反応ゾーンからのコポリマーの分子量(15%メタノール溶液の粘度で示される)は、たとえば約20〜約200cpsの範囲、好ましくは約35〜約70cpsの範囲である。
【0029】
VOH/MAコポリマーをもたらす鹸化工程を行う際に、第2の反応ゾーンからの流出液を、たとえばストリッピング塔に送って、VAMとMAのコポリマーからより揮発性の高い成分(たとえば未反応のVAM)を除去することができる。こうして得られる“ペースト”を、次いで強塩基(たとえば水酸化ナトリウム)の水溶液(たとえば、約10〜約50重量%の水酸化ナトリウムを含有)と混合して、約0.01〜約0.1の苛性モル比(CMR、コポリマーにおける塩基のモル数とアセテートのモル数との比)の塩基を得る。必要に応じて、ある量の揮発性アルコール(メタノール)を加えて、ペースト中の固体含量を約30〜約65重量%に減らすことができる。こうして得られるマスを、ほぼ室温(RT、約22℃)〜約50℃の温度にてある時間(たとえば約5分〜約24時間)反応させて、コポリマー中のアセテート基のヒドロキシル基への、たとえば約70〜約99+%の範囲の(好ましくは約80〜約95%の範囲の)加水分解%を得る。
【0030】
VOHとMAの鹸化コポリマーは、たとえば約1〜約8モル%の重合MA(ポリMA)、約0〜約4モル%の重合VAM(PVAc)、および約75〜約98モル%の重合ビニルアルコール(PVOH)〔好ましくは約2〜約7モル%のポリMA、約0〜約2モル%のPVAc、および約90〜約95モル%のPVOH〕;たとえば約70〜約99+%(好ましくは約80〜約95%)の加水分解度(C13NMRによって示される);ならびに、たとえば約5〜約30cps(好ましくは約15〜約28cps)の相対分子量(VOHコポリマーの4%水溶液の粘度によって示される);を有してよい。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに説明する。実施例1〜10は、種々のプロセス条件下での連続的プロセスによる、VAMとメチルアクリレートとのコポリマーの製造について説明している。
【0032】
重合は、還流冷却器、機械的攪拌機、および供給ラインを備えた、直列2つの2リットルのジャケット付きガラス反応器を使用して行った。反応器1に、ビニルアセテート(VAM)、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート(Trigonox EH
P)開始剤を含有するメタノール、およびメチルアクリレートを、それぞれ計量ポンプを使用して別々の供給ラインとして連続的に供給した。正確な供給速度を確実に得るために、各供給物をバランス上に配置し、経時的な重量差を測定することによって供給速度をチェックした。メチルアクリレートをさらに第2の反応器に連続的に供給して、組成ドリフトを最小限に抑えた〔反応器1(PK1)と反応器2(PK2)の間のスプリットは70:30であった〕。表1に、各試験に対する供給速度と開始剤濃度を示す。反応器1の温度は60℃、反応器2の温度は64℃であった。滞留時間は、それぞれの反応器において96分であった。反応器2から出てくるポリマー溶液をOldershaw(登録商標)カラムに送って、メタノール蒸気を使用して残留ビニルアセテートを除去した。重合を確実にラインアウトするために、各試験を12時間実施した。
【0033】
【表1】
【0034】
表2は、実施例においてメチルアクリレートとビニルアセテートとの重合から得られた結果を、15%メタノール溶液の粘度によって示されるポリマーの相対分子量、反応器2における固体の実際の百分率、および実際の固体%と理論的固体%(括弧外の数値)から算出される転化率(括弧内の数値)を含めて示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2は、ビニルアセテートとメチルアクリレートのポリマーへの全体的な転化率を示す。これらの理論的固体レベル(モノマーからコポリマーへの転化に直接関係する)を基準として、転化率は45.93〜58.23%の範囲であった。残留メチルアクリレート(50ppm〜100ppm)はGC分析によって測定した。
【0037】
VAM/MAコポリマーの鹸化は、反応器2からの流出液からVAMをストリッピングするのに使用されるOldershaw(登録商標)カラムから得られるペーストを、50重量%NaOH水溶液で種々の苛性モル比(CMR)値にて処理することによって行い、固体含量が35重量%となるよう、さらにメタノールで希釈した。実施例1〜10は、実施例3のVAM/MAコポリマーに対してなされる鹸化条件を変えることの影響を表わしており、結果を表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
苛性モル比(CMR)は、ポリマーが100%PVAcであると仮定して算出した。CMRの算出において少量のco−MAは無視した。
前述のように、50%NaOHをペーストに加えるときには、50%NaOHを充分なMeOHで希釈して固体含量が35%になるよう希釈した。NaOH/MeOHを、室温にて手でペースト中に混合した(10〜20分のミキシング)。40℃での鹸化により、約1分のミキシング後にゲル化した。次いでペーストを、上記の表に示す時間と温度にて反応させた。実施例1〜10に記載の手順に類似の鹸化手順を、実施例1〜10のポリマーに対して施した。
【0040】
表4は、重合メチルアクリレート、重合VAM(PVAc)、および重合ビニルアルコール(PVOH)のモル%、C13NMRによって示される加水分解度、4%水溶液の粘度によって示される相対分子量、ならびに滴定によって示される加水分解度を含めた、表1と2の各実施例に対する鹸化ポリマーの組成と特性を示す。
【0041】
【表4】
【0042】
13NMR分光法を使用して、コポリマーの組成とコポリマー中のMAのランダム性を決定することができる。MAの供給速度が、コポリマー中へのMA組み込みを制御する上での唯一の変数である。これとは別に、後述する溶解度試験やGPEC分析に基づいて、該コポリマーが実質的にランダムであるかどうかを決定することができる。
【0043】
形成されるコポリマーのランダム性をGPEC分析によって測定した。得られた結果を図1〜3に示す。GPECは、溶媒と非溶媒との混合物を使用することによってポリマー中の化学組成分布を測定するのに使用できる手法であり、Coolsらによる「“Determination of the Chemical Composition Distribution of Copolymers of Styrene and
Butadiene by Gradient Polymer Elution Chromatography”,Journal of Chromatograph A,736(Elsevier Science B.V.,1996),pp.125−130」(該文献の開示内容を参照により本明細書に含める)に説明されている。本発明のコポリマーに対し、以下の条件、材料、および装置を使用した:カラム:Agilent PLRP−S 1000A 5μm 50×4.6mm。移動相:1)5%アセトニトリルと95%水でスタートする;2)6分かけて60%アセトニトリルと40%水の
勾配にし、この比率を7.5分保持する;3)12分かけて5%アセトニトリルと95%水の勾配にする;4)22分までカラム5%アセトニトリルと95%水で状態調節し、試験を停止する。温度:65℃。流量:1ml/分。注入体積:2
μl。検出器:ELSD。サンプル濃度:5mg/ml。
【0044】
図1〜3のそれぞれに示されているポリマー組成は、極性ピークをカラムからのポリマー溶出液として示している。ピークが近いほど、コポリマーの組成における組成ドリフトは小さくなる。100:0スプリット比のモノマーを加えた場合(図3)、顕著な組成ドリフトを示す別個のピークが見られるだけでなく、別個のポリマーブロックやホモポリマー等が形成されていることを示すより多くのピークが見られる。図2の50:50スプリット比のポリマーは、形成されるポリマーの組成が、100:0スプリット比付加の場合より均一になる(組成ドリフトがより小さくなる)が、図1の70:30スプリット比付加ポリマーは、組成ドリフトが実質的に認められないことを示す単峰性のクロマトグラムを有する。
【0045】
表1〜4のデータから、本発明の連続的プロセスを使用することで、VOHとMAとのコポリマーを、比較的高いMA組み込み量、高い転化率と生産性、高い加水分解度、および組成ドリフトの実質的な非存在にて得ることができる、ということがわかる。
【0046】
さらに一般的には、本発明は、ビニルアセテートとアクリレートもしくはアクリレート誘導体とのコポリマーを製造するための連続的プロセスを含む。アクリレートモノマーもしくはアクリレート誘導体モノマーおよびこれらを組み込んだコポリマーを、ここでは便宜上、それぞれアクリレートコモノマーおよびアクリレートコポリマーと呼ぶ。したがって本発明によれば、(a)ビニルアセテートとより高反応性のアクリレートコモノマーを含む反応混合物を反応ゾーンに連続的に供給する工程、ここでビニルアセテートコモノマーとアクリレートコモノマーを少なくともある程度消費させて中間反応混合物を形成させる;(b)この中間反応混合物に、より高反応性のアクリレートコモノマーを高含量にて含んだストリームを連続的に供給し、この追加のアクリレートコモノマーと中間反応混合物とを共重合させてビニルアセテート/アクリレートコポリマー生成物を形成させる工程;および(c)ビニルアセテート/アクリレートコポリマー生成物を連続的に回収する工程;を含む、ビニルアセテート/アクリレートコポリマーを製造するための連続的プロセスが提供される。
【0047】
本発明によって製造されるPVOHからフィルムを作製した。典型的な実験では、コポリマーの水溶液を調製し(4〜10%固体)、ガラス板上にキャストした。この溶液を室温で一晩乾燥してから、ガラス板から剥がした。得られたフィルムを22℃、50%相対湿度にて24時間状態調節してから、特性を測定した。このようにして作製したフィルムの特性を、改良された水溶解度を含めて表5に示す。
【0048】
フィルムの溶解度特性は、米国特許第7,745,517号明細書(該明細書の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載のスライドフレーム試験によって測定することができ、試験方法は下記のとおりである。7%水溶液をガラス板上にキャストし、重力によって平らにし、約6〜15%の含水率になるまで乾燥する(2〜7日かかることがある)ことによって、配合物からフィルムを作製する。このペーストにある量の溶液を加えて、約76μmのターゲット厚さを有するフィルムを得る。フィルムの2.3×3.4cmサンプルをスライドフレームに据え付け、400mlの水を入れた500mlビーカー中に配置する。このビーカーをマグネチックスターラー上に置き、電磁撹拌バーにより400rpm(コントロールノブで設定)にて、渦がつくり出されるように水を撹拌する。水の温度を21℃±1℃に保持する。プラットホームで支持されたクランプを使用して、撹拌水がフィルムを押すように、フレームをビーカー中に固定する。フィルムは、ふくら
み始めるか又は波状になり始める。フィルムバルーンが破裂するときの崩壊時間を記録する。崩壊後、フレームが水中に残り、フィルムの残留ストリングとフィルム粒子がフレーム上に残らなくなるときの合計時間(崩壊時間を含めて)としての溶解時間を記録する。
【0049】
【表5】
【0050】
したがって本発明は、MAコモノマーの全部を同じ反応器に供給するのではなく、MAコモノマーを2つの部分に分けて2つの反応器に供給することによって改良された水溶解度を有するPVOHを製造する方法を説明している。比較のため、全てのモノマーと開始剤を1つの反応器に加えることによるコポリマーの製造を試みた。必要とされる全てのモノマーを第1の反応器だけに加えることによってコポリマーを製造すると、図6に示すように、不溶性であるか又は溶解性が著しく低下したPVOHが得られた。これは、コポリマー中にメチルアクリレートブロック及び/又はメチルアクリレートホモポリマーが形成されることによるものと考えられる。表6において、フィルムが3分以上の経過にて崩壊しない、あるいは10分超の溶出時間を有する場合でも、フィルムは上記の溶解試験に合格しないと考えられる。
【0051】
【表6】
【0052】
代替実施態様
種々の態様にて、本発明はさらに、以下のような代替実施態様を含む:
代替実施態様No.1は、ビニルアセテートモノマー(“VAM”)とAAを共重合さ
せることによる、ビニルアルコール(“VOH”)とアルキルアクリレート(“AA”)〔たとえば、メチルアクリレート(“MA”)〕とのコポリマーの製造方法であり、該製造方法は、(a)第1の反応ゾーン中に、必要なVAM量の実質的に主要な量および必要なAA量の第1の部分、ラジカル生成重合開始剤、ならびに2種のモノマーと開始剤と該2種のモノマーの共重合から得られるコポリマーに対する溶媒を、撹拌しながら連続的に供給して第1の反応マスを形成させる工程;(b)該第1の反応マスを、該第1の反応ゾーン中に、該第1の反応ゾーンに供給されるAAの主要割合が重合するに足る滞留時間にわたって重合条件下にて保持する工程;(c)該第1の反応ゾーンからの該第1の反応マスを、AAの第2の部分と共に第2の反応ゾーンに連続的に供給する工程;(d)第1の反応マスを第2の反応ゾーン中に、MAの主要割合が重合して第2の反応マスを形成するに足る滞留時間にわたって保持する工程;(e)該第2の反応マスを第2の反応ゾーンから連続的に取り出す工程;(f)第2の反応マスからVAMとAAとのコポリマーを分離する工程;および(g)該コポリマー中のアセテート基の主要割合を加水分解及び/又はアルコール分解によって鹸化して、VOHとAAとのコポリマーを形成させる工程;を含み、ここでAAの該第1の部分とMAの該第2の部分とを合わせたものがAAの全必要量となる。
【0053】
代替実施態様No.2は、必要なVAMの100%を工程(a)において供給するという場合の、代替実施態様No.1の方法である。
代替実施態様No.3は、必要なVAMの少なくとも80%を工程(a)において供給するという場合の、代替実施態様No.1〜2のいずれかに従った方法である。
【0054】
代替実施態様No.4は、必要なVAMの少なくとも90%を工程(a)において供給するという場合の、代替実施態様No.1〜3のいずれかに従った方法である。
代替実施態様No.5は、該溶媒がメタノール、エタノール、またはプロパノールである場合の、代替実施態様No.1〜4のいずれかに従った方法である。
【0055】
代替実施態様No.6は、該溶媒がメタノールである場合の、代替実施態様No.1〜5のいずれかに従った方法である。
代替実施態様No.7は、MAの第1の部分とMAの第2の部分との比率が約50:50〜約80:20の範囲であるという場合の、代替実施態様No.1〜6のいずれかに従った方法である。
【0056】
代替実施態様No.8は、MAの第1の部分とMAの第2の部分との比率が約60:40〜約75:25の範囲であるという場合の、代替実施態様No.1〜7のいずれかに従った方法である。
【0057】
代替実施態様No.9は、第1の反応ゾーンに供給される該溶媒の量が、供給されるVAMの重量を基準として約10〜約40重量%であるという場合の、代替実施態様No.1〜8のいずれかに従った方法である。
【0058】
代替実施態様No.10は、第1と第2の反応ゾーンに供給される成分の、第1と第2の反応ゾーン中の平均滞留時間が約30〜約120分であるという場合の、代替実施態様No.1〜9のいずれかに従った方法である。
【0059】
代替実施態様No.11は、該平均滞留時間が約45〜約70分であるという場合の、代替実施態様No.1〜10のいずれかに従った方法である。
代替実施態様No.12は、該第1と第2の反応ゾーン中の反応温度が約55〜約85℃であるという場合の、代替実施態様No.1〜11のいずれかに従った方法である。
【0060】
代替実施態様No.13は、該反応温度が約60〜約80℃であるという場合の、代替実施態様No.1〜12のいずれかに従った方法である。
代替実施態様No.14は、それぞれの反応ゾーンにおける平均反応圧力が約1〜約30psigである場合の、代替実施態様No.1〜13のいずれかに従った方法である。
【0061】
代替実施態様No.15は、該反応圧力が約3〜約15psigである場合の、代替実施態様No.1〜14のいずれかに従った方法である。
代替実施態様No.16は、第1と第2の反応ゾーンにおける滞留時間と温度が、系に供給される実質的に全てのMAの重合をもたらすという場合の、代替実施態様No.1〜15のいずれかに従った方法である。
【0062】
代替実施態様No.17は、該第2の反応ゾーンからの溶出液が、約35〜約85%の実測ポリマー固体含量と該実測ポリマー固体含量から算出される転化率を有し、系に加えられるモノマーの量に等しい理論的ポリマー固体含量が約45〜約60%であるという場合の、代替実施態様No.1〜16のいずれかに従った方法である。
【0063】
代替実施態様No.18は、第2の反応ゾーンから得られるVAM/MAコポリマーの相対分子量が、コポリマーの15重量%メタノール溶液にて約35〜約80cpsの粘度によって示される場合の、代替実施態様No.1〜17のいずれかに従った方法である。
【0064】
代替実施態様No.19は、該転化率が約40〜約60%である場合の、代替実施態様No.1〜18のいずれかに従った方法である。
代替実施態様No.20は、VOHとMAとの鹸化コポリマーが、約1〜約8モル%の重合MA、約85〜約98モル%の重合VOH(PVOH)、C13NMRによって示される約70〜少なくとも99%の加水分解度、およびVOHコポリマーの4%水溶液にて約15〜約30cpsの粘度で示される相対分子量を有するという場合の、代替実施態様No.1〜19のいずれかに従った方法である。
【0065】
代替実施態様No.21は、代替実施態様No.1〜20のいずれかによって製造されるPVOHである。
代替実施態様No.22は、(a)第1の反応ゾーン中に、必要なVAM量の実質的に主要な量および必要なAA量の第1の部分、ラジカル生成重合開始剤、ならびに2種のモノマーと開始剤と該2種のモノマーの共重合から得られるコポリマーに対する溶媒を、撹拌しながら連続的に供給して第1の反応マスを形成させる工程;(b)該第1の反応マスを、該第1の反応ゾーン中に、該第1の反応ゾーンに供給されるAAの主要割合が重合するに足る滞留時間にわたって重合条件下にて保持する工程;(c)該第1の反応ゾーンからの該第1の反応マスを、AAの第2の部分と共に第2の反応ゾーンに連続的に供給する工程;(d)第1の反応マスを第2の反応ゾーン中に、MAの主要割合が重合して第2の反応マスを形成するに足る滞留時間にわたって保持する工程;(e)該第2の反応マスを第2の反応ゾーンから連続的に取り出す工程;および(f)第2の反応マスからVAMとAAとのコポリマーを分離する工程;を含む方法よって製造されるビニルアセテートとアルキルアクリレートとのコポリマーであり、ここでAAの該第1の部分とMAの該第2の部分とを合わせたものがAAの全必要量となる。
【0066】
代替実施態様No.23は、MAの第1の部分とMAの第2の部分との比が、約50:50〜約80:20の範囲である場合の、代替実施態様No.22のコポリマーである。
代替実施態様No.24は、MAの第1の部分とMAの第2の部分との比が、約60:40〜約75:25の範囲である場合の、代替実施態様No.23のコポリマーである。
【0067】
本発明を詳細に説明してきたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲での改良は、当業者に
は容易に明らかであろう。上記の説明、当業界の関連した知見、および背景技術と詳細な説明に関連した上記文献(これら文献の開示内容を参照により本明細書に含める)を考慮すると、さらなる説明は不必要であると考えられる。さらに、理解しておかねばならないことは、本発明の態様と種々の実施態様の部分を、全部または一部において合わせたり、交換したりすることができる、という点である。さらに、当業者にとっては言うまでもないことであるが、上記の説明は単に例として挙げただけであって、本発明を限定することを意図していない。
図1
図2
図3