【文献】
P. Maletinsky, et al.,A robust scanning diamond sensor for nanoscale imaging with single nitrogen-vacancy centres,Nature Nanotechnology,2012年 4月15日,Vol.7, No.5,第320−324頁
【文献】
J. M. Taylor, et al.,High-sensitivity diamond magnetometer with nanoscale resolution,Nature Physics,2008年 9月14日,Vol.4,第810−816頁
【文献】
L. Rondin, et al.,Nanoscale magnetic field mapping with a single spin scanning probe magnetometer,APPLIED PHYSICS LETTERS,2012年 4月 9日,Vol.100, No.15,第153118-1 - 153118-4頁
【文献】
D. Le Sage, et al.,Efficient photon detection from color centers in a diamond optical waveguide,Physical Review B,2012年 3月23日,Vol. 85, No.12,第121202-1 - 121202-4頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光取り出し構造は、ナノピラー、ソリッドイマージョンレンズ、または内面反射を介することのうち1つによって形成されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検知プローブ。
前記検知プローブは、50、30、10、5、3、2、または1つ以下のスピン欠陥を備え、前記スピン欠陥は、前記検知表面から50nm以内に位置しており、前記光取り出し構造に光学的に結合されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の検知プローブ。
前記検知プローブは、50以下のスピン欠陥を備え、前記スピン欠陥は、前記検知表面から50nm以内に位置する層の形態であり、前記光取り出し構造に光学的に結合されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の検知プローブ。
前記装着システムに結合され、前記1つ以上のスピン欠陥に光学的にアドレスしてそれを読み出すように構成された光学顕微鏡を備えている、請求項11または12に記載のシステム。
マイクロ波源をさらに備え、前記マイクロ波源は、前記スピン欠陥のうち少なくとも1つの共鳴周波数に合わされたマイクロ波を生成するように構成されている、請求項11〜13のいずれか一項に記載のシステム。
前記1つ以上のスピン欠陥は、NV欠陥であり、前記システムは、前記NV欠陥のスピン状態のゼーマンシフトを測定することによって外部磁場を検出するように構成されている、請求項14に記載のシステム。
2の信号対雑音比を有する単一スピン撮像のために必要とされる積分時間は、5分、3分、2分、1分、30秒、15秒、10秒、5秒、2秒、1秒、または0.5秒未満である、請求項19に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本出願では、例示的な実施形態について説明する。他の実施形態は、追加として、または代わりに、使用され得る。
【0029】
本出願は、説明する特定の実施形態に限定されず、したがって変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本出願の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図するものではない。
【0030】
別段に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で説明する方法および材料に類似または同等の任意の方法および材料も、本出願で説明する概念の実施または試験において使用されることができるが、本明細書では、限られた数の例示的な方法および材料が説明されている。
【0031】
ある範囲の値が与えられる場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が別段に明確に規定しない限り下限の単位の10分の1に至る、各中間値、および記述された範囲内の他の任意の記述された値または中間値も本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、このより小さい範囲に独立して含まれ得、この記述された範囲内に特に除外する限定がない限り、これもまた本発明の範囲内に含まれる。記述された範囲が上限および下限の一方または両方を含む場合、これらの含まれた上限および下限の一方または両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0032】
本開示では、スピン欠陥、たとえばNVセンターに基づくナノスケール走査センサに関する方法およびシステムが説明される。いくつかの実施形態では、ナノスケール走査プローブは、組み合わされたAFMおよび光学顕微鏡と共に上部からの収集を実施する。
【0033】
以下でさらに詳細に説明するように、NV
−センターは光学撮像のための明るく安定した単光子源を形成し、優れた温度、磁場、および電場の検知機能を提供するスピン三重項基底状態を有するので、NV
−センターなどのスピン欠陥に基づくナノスケール検知が可能である。本文書の残りの部分では、NV欠陥の負電荷状態は単にNVと示されることに留意されたい。そのようなスピンに基づく検知スキームにおけるNVセンターの優れた性能に寄与する要因としては、限定するものではないが、長いNVスピンコヒーレンス時間ならびに効率的な光学的スピンの準備および読み出しがある。これらの性質は極低温から周囲条件まで存続し、単一分子または量子ドットなどの量子センサとして提案されている他のシステムからNVセンターを区別する特徴である。
【0034】
図1Aは、格子空孔110に隣接する置換窒素原子120からなるNVセンターを示す図である。
図1Aに示されているように、NVセンターは、ダイヤモンド格子中の欠損している炭素原子130から生じた、空の位置すなわち空孔110である。NVセンターは、他のスピンからの磁気干渉から比較的隔離される。NVセンターのスピンの量子状態が調べられ、室温で制御され得る。ダイヤモンド中のNVセンターならびに固体格子(solid state lattice)中の他のタイプの欠陥を含むシステムは、背景格子とのごくわずかな相互作用を有する電子スピンを提供することができる。そのような電子スピンは、固有の光学的痕跡により光学的に検出可能である。NVセンターは、レーザによって照らされると、赤い点として見える。
【0035】
図1Bは、ダイヤモンド中のNVセンターの電子構造を示す。
図1Bに示されているように、NVセンターの基底状態は常磁性であり、スピン1(S=1)三重項である。NVセンターの基底状態は、m
s=0と、二重縮退したm
s=±1副準位とに分割され、Δ=2.87GHzの結晶場分離を有する。NVセンターは、電子基底状態と励起状態と間のその遷移から蛍光放射線を放出する。電子遷移はスピン保存であり、m
s=0遷移は、m
s=±1遷移よりも明るい。共鳴周波数におけるマイクロ波励起は蛍光低下を引き起こし、蛍光測定によって共鳴周波数が測定されることを可能にする。
【0036】
静的外部場は、磁気回転比γ=2.8MHz/Gによって決定される、m
s=+1状態とm
s=−1状態との間のゼーマンシフトを引き起こす。したがって、m
s=±1状態の縮退は外部場の下で解除され、電子常磁性共鳴スペクトルは、2つの共鳴線、すなわちより高い周波数にシフトされた一方の共鳴線と、より低い周波数にシフトされた他方の共鳴線を含む。2つのシフトされた共鳴周波数およびそれらの差δωを測定することによって、外部場の大きさを計算することができる。
【0037】
NV欠陥を使用して磁場を検出することが可能であるだけでなく、それは、温度(Phys.Rev.X 2、031001(2012年))および電場(Nature Physics7巻、459〜463頁(2011年))を測定するために使用可能であることも示されている。これは、本発明の特定の実施形態と組み合わされると、広範囲の使用法を有する可能性がある。たとえば、生物標本における電場、磁場、および温度の検出である。
【0038】
当技術分野では、軸方向ゼロ磁場分裂(ZFS:zero−field splitting)パラメータすなわちD(2.87GHz)が、(Phys.Rev.B 82、201202(R)(2010年))に記載されている室温ダイヤモンド磁気測定法に関する技術的課題を提供する温度により著しく変化することが知られている。この性質は、温度すなわち本発明ではナノスケール温度センサを推測するために使用可能である。正確なB場検知のために、この温度効果を回避することが望ましいことがある。そのような方法は、1)温度の効果を較正することを可能にする、ダイヤモンドの温度を監視するための温度センサ、2)これを制御することを目的とするフィードバック機構を提供するためのm
s=±1共鳴の両方の測定、および3)温度によって影響を受けない、(m
s=0とm
s=±1との間の遷移に対比して)磁場測定を提供するためのm
s=±1共鳴遷移の使用を含み得る。
【0039】
本発明の特定の実施形態と組み合わされた、測定中の温度分散の効果を打ち消すためのこれらの方法は、検知デバイスの改善を可能にする。
【0040】
NVセンターにおける電場は、m
s=+1状態とms=−1状態とを混合し、そのZFSにおけるシフトを引き起こす。(NVセンターの歪みと比較して)小さな磁場の存在下で、このシフトは、高い感度で測定可能である(線形の)シュタルクシフトを含む。この特定の実施形態では、50〜200Vcm
−1Hz
−1/2にわたるAC電場感度が達成可能である。この範囲の感度(たとえば120Vcm
−1Hz
−1/2)では、積分時間の1秒以内では、10nmの距離における0.01電子電荷に等しい場が検出可能である(1の信号対雑音)。
【0041】
NVセンターにおける温度の変動は、格子定数の変を誘発し、この変化が、NVセンターにおける局所結晶場を修正し、ZFSをシフトさせる。したがって、ZFSを測定することによって、NVセンターはさらに、感度のよい温度計として動作することができる。この指定された実施形態では、温度は、0.2〜0.8KHz
−1/2にわたる感度で測定可能である。
【0042】
NVセンターの上記で説明した光学的性質および磁気的性質により、NVセンターは、センサプローブとして使用されることができる。NVセンターが有用なプローブであるために、NVセンターは、ナノメートルの精度で配置される一方、同時にその蛍光が測定されなければならない。これは、光学顕微鏡法と組み合わされたAFM方法と共にセンサプローブとしてNVセンターを使用することによって達成されることができる。
【0043】
ある程度の成功は、走査AFMプローブ先端上に移植されたダイヤモンドナノ結晶を使用する走査型NVセンサを実施することで達成されているが、これらの手法は、ナノ結晶ベースのNVセンターの低い検知性能を有し、ナノ結晶ベースのNVセンターに対するスピンコヒーレンス時間は、通常、バルクダイヤモンドにおけるNVセンターよりも桁違いに短い。
【0044】
本出願では、AFMの走査プローブとしてダイヤモンドナノピラーを使用するNVセンサが開示され、個々のNVは、その遠位端の数ナノメートル以内にある。
【0045】
NVは、照射およびアニーリングによって成長させられ、形成される移植の1またいくつかの組み合わせによって配置され得る。
【0046】
図2は、本出願の1つ以上の実施形態による、上部からの収集を可能にするナノスケール走査型NVセンサシステム200の概略ブロック図である。システム200は、ダイヤモンドナノピラー210を走査プローブとして使用するモノリシック走査型NVセンサを含み、個々のNVセンター208は、ダイヤモンドナノピラーの遠位端から短距離たとえば約25nmのところに人工的に作製される。
【0047】
システム200は、組み合わされたAFM202および光学顕微鏡、すなわち光学顕微鏡と一緒に使用されるAFM202を含む。いくつかの実施形態では、AFM202および光学顕微鏡は単一の機器に統合され得る。図示の実施形態では、光学顕微鏡は、共焦点顕微鏡対物レンズ222を含む共焦点顕微鏡である。
【0048】
AFM202は、AFM202のダイヤモンドカンチレバー203に取り付けられたダイヤモンドナノピラー210を含む。
図2に示されるように、ダイヤモンドカンチレバー203は位置決めシステム207に取り付けられ得、位置決めシステム207は、たとえば、その上に試料209を配置することができる可動台を含み得る。したがって、ダイヤモンドナノピラー210は試料209の表面に対して移動可能に配置され、したがって、試料表面は、AFMフィードバックを使用してダイヤモンドナノピラー210によって走査されることができる。いくつかの実施形態では、位置決めシステム207は、光学顕微鏡の固定された光軸に対して試料およびAFMヘッドを配置するように構成された3軸圧電位置決め器を含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、マイクロメートル厚さの単結晶ダイヤモンド板215が、ダイヤモンドナノピラー210を生成するために製作される。以下で
図4Aに関してさらに詳細に説明されるように、ダイヤモンドナノピラー210は単一のNVセンター208を含むように製作されることができ、NVセンター208は、標的試料209の数十ナノメートル以内に持ってこられることができる。
【0050】
ダイヤモンドナノピラー210は細長い構成を有し、試料表面の真向かいに配置可能な遠位端214と、AFMカンチレバー203に結合されるべき近位端216とを含む。したがって、ダイヤモンドナノピラー210は、NVセンター208によって放出される蛍光を、通常、遠位端214から近位端216の方へ延びる方向に光学的に誘導するように構成される。
【0051】
図示の実施形態では、ダイヤモンドナノピラー210のサイズは直径が約200nmであり、これは、ダイヤモンドナノピラーによる上記で説明した光学的導波路を最適化する。他の実施形態は、ダイヤモンドナノピラー210に異なるサイズ(たとえば直径が200nm未満のナノピラー)を使用し得る。図示の実施形態では、ダイヤモンドカンチレバー203のサイズは、横方向寸法が約4μm×30μm、高さが約2μmであり得る。他の実施形態は、ダイヤモンドカンチレバーに異なるサイズ(たとえばより大きいまたはより小さい横方向寸法および/または高さを有するダイヤモンドカンチレバー)を使用し得る。
【0052】
システム200は、カラーセンターに適用されるとカラーセンターからの蛍光光の放出を引き起こす励起光を生成するように構成された光源220をさらに含む。図示の実施形態では、光源220は532nm励起レーザである。他の実施形態では、異なるタイプの光源を使用することができる。たとえば、光源は、637nm未満の波長に調整可能なレーザまたはLEDであり得る。
【0053】
マイクロ波源230は、マイクロ波放射線のパルスを生成するように、およびマイクロ波パルスをNVセンター208に適用するように構成される。いくつかの実施形態では、マイクロ波源230は、レーザ220からのレーザ光によるNVセンターの励起中に、およびダイヤモンドナノピラー210による試料表面の走査中に、NVセンター208の共鳴周波数に合わされたマイクロ波パルスをNVセンターに適用するように構成される。
【0054】
マイクロ波源は、検知されるべき外部磁場の周りでのNVセンターの電子スピンの歳差運動を可能にするマイクロ波パルスをNVセンターに適用するように構成され得、歳差運動の周波数は、電子スピンのエネルギーレベルのゼーマンシフトによって磁場に線形に関連付けられ、したがって、外部磁場の強度は、測定されたゼーマンシフトから決定されることができる。
【0055】
マイクロ波源は、NVセンターの電子スピンのエネルギーレベルの測定されたシフトから外部電場の強度が決定されることができるように、マイクロ波パルスをNVセンターに適用するように構成され得る。
【0056】
本出願のいくつかの実施形態では、上部からの収集が実施される。これらの実施形態では、NVセンター208からの蛍光光度が、カンチレバー203の上部から、したがってナノピラー210全体を通って、読み出される。言い換えれば、NVセンター208によって放出される蛍光は、NVセンター208からの蛍光光がダイヤモンドナノピラー210の長さ全体を通して光学的に誘導され、ダイヤモンドナノピラー210の近位端216を通って出た後で、光検出器240によって検出される。
【0057】
上部読み出しは、NVセンサシステム100の著しく改善された性能を可能にする。たとえば、上部読み出しは、NVセンター208からの蛍光放射線に対して不透過な試料の試験を可能にする。下部からの読み出しが、従来の方法で行われたように使用された場合、蛍光は試料自体を通して収集される。これは、試験可能な試料のタイプを厳しく制限する。
【0058】
さらに、上部読み出しは、ダイヤモンドナノピラー210からの光学的導波路を利用して、光子収集効率を高める。いくつかの実施形態では、収集効率は約5倍改善され得る。そのような収集効率の増加は感度の増加をもたらす。これは、多数の用途における重要な利点である。
【0059】
上記で説明したようなダイヤモンドナノピラーを使用して上記で説明した上部収集を実施することによって、励起光、通常は532nmの緑色レーザは、試料からより良く隔離される。これは、強いレーザ場に否定的な反応を示す撮像試料、たとえば生体試料にとって重要なことがある。必要とされる電力は、ダイヤモンドナノピラー210による上記で説明した光学的導波路により、NV蛍光を飽和させるために最小限に抑えられる。いくつかの実施形態では、飽和出力が約10倍減少する。さらに、レーザからの励起光がナノピラーの導波モードに集束されるので、試料の遠距離場励起は最小限に抑えられることができる。
【0060】
これらの実施形態では、システム200は、上記で説明したようにダイヤモンドナノピラーの長さを通って光学的に誘導された後、ダイヤモンドナノピラー210の近位端216を通って出る放出された蛍光光を受け取るように配置された少なくとも1つの光検出器240を含む。ダイヤモンドナノピラーがNV蛍光バンドのための効率的な導波管であるので、非常に高いNV信号収集効率が、上記で説明した上部収集方法を使用して達成されることができる。
【0061】
これらの実施形態では、
図2に示されているように、顕微鏡対物レンズ222が光検出器240とカンチレバー203の上部との間に配置される。対物レンズ222は、作動距離の長い顕微鏡対物レンズ222であり得る。いくつかの実施形態では、対物レンズ222は、約0.7の開口数を有することができる。他の実施形態では、0.7よりも大きいまたは小さい開口数を有する顕微鏡対物レンズを使用することができる。
【0062】
システム200は、NVセンター208によって放出される蛍光をレーザ220によって生成される励起光から分離する1つ以上のダイクロイックミラーも含み得る。
【0063】
AFM202は、NVセンターと試料表面との距離を制御するように構成されたAFMフィードバックシステムを含み得る。NVセンサの空間解像能は、NVセンターから試料までの距離による影響を受ける。限定するものではないが機械的制御およびフィードバック制御を含む適切なAFM制御は、NVセンターが試料表面に近接していることを保証するために達成されなければならない。不良な装着および/または不適切なAFMフィードバック制御は、過大なAFM先端−試料距離につながり得る。いくつかの実施形態では、たとえばAttocube ASC500コントローラによって提供されるAFMフィードバックシステムは、AFMフィードバックの適切なセットアップおよび調整に使用され得、これと共に、AFM先端の正確な装着によって、所望の変数の正確な観測が可能になる。
【0064】
処理システムが上記で説明したシステムと統合され得、本出願で説明する方法、システム、およびアルゴリズムを実施するように構成される。この処理システムは、任意のタイプのマイクロプロセッサ、ナノプロセッサ、マイクロチップ、またはナノチップを含み得るか、これからなり得る。処理システムは、その中に保存されたコンピュータプログラムによって選択的に構成および/または起動され得る。処理システムは、上記で説明した方法およびシステムを実施するために、そのようなコンピュータプログラムが保存され得る、コンピュータが使用可能な媒体を含み得る。このコンピュータが使用可能な媒体は、その中に、処理システムのための、コンピュータが使用可能な命令を保存していることもある。本出願における方法およびシステムは、任意の特定のプログラミング言語に関して説明されていない。したがって、本出願の教示を実施するためにさまざまなプラットフォームおよびプログラミング言語が使用され得ることが理解されるであろう。
【0065】
図3Aは、その先端の約25nm以内に単一NVセンターを含む単結晶ダイヤモンド走査プローブの代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。そのようなデバイスを準備するために、(たとえば、低エネルギーイオン注入によって)NV作製を形成すること、いくつかの連続的に整列された電子ビームリソグラフィステップ、および反応性イオンエッチングを含む一連の製作ステップが順次実行される。
【0066】
このシーケンスに対する重要な要素は、
図3Aに示される走査プローブデバイスの基礎を形成するマイクロメートル厚さの単結晶ダイヤモンド板の製作である。
【0067】
走査ダイヤモンドナノピラーは、約200nmの一般的な直径と約1μmの長さを有し、走査のために原子間力顕微鏡(AFM)先端に個々に取り付けられた数マイクロメートルサイズのダイヤモンドプラットフォーム上に製作される。
【0068】
図3Bは単結晶ダイヤモンドプローブからの赤色蛍光の共焦点画像を示し、
図3CはNV蛍光に対する光子自己相関測定を示す。
図3Bでは、一般的な単一走査NVデバイスの共焦点走査が、緑色レーザ照明の下、532nmの励起波長で実行された。ナノピラー(白色の円)から出現する明るい光子放出は、
図3Bに示される光子−自己相関測定における顕著なディップ、および
図3Cに見られる光学的に検出されたNV電子スピン共鳴(ESR)の特徴的痕跡によって示される単一のNVセンターから生じる。すべてが同じデバイスから得られたこれらの結果は、製作されたナノピラーデバイスの先端に対してNVが近接しているにもかかわらず、ナノピラーを通る光子導波路が存続していることを確認する。
【0069】
図3Dは、ナノピラー内の単一放出体をNVセンターとして識別する光学的に検出されたESRを示す。
図3Dのデータは100μWの励起力で取得され、毎秒2.2×10
5カウント(c.p.s.)に近づく単一NVのカウントを示す(すなわちパターン化されていないダイヤモンド試料における同様の条件の下で観測されるNVと比較して検出される蛍光強度でほぼ5倍の増加)。したがって、走査NVからの蛍光信号強度の著しい増加があり、同時に緑色の励起光に対する試料の最小限の曝露がある。これは、走査センサの可能な生物学的用途または低温用途に特に関連し得る。
【0070】
図3Eは、ダイヤモンドナノピラーデバイス内のNVセンターに対するスピンエコー測定を示す。NVセンターのスピンコヒーレンス時間T
2は、コヒーレントなNV−スピン操作のための十分に確立された技法を使用して特徴付けられ得る。スピンコヒーレンスは、磁場に対するNV感度を設定し、NVスピンに対して実行されることができるコヒーレント動作の数を制限する。したがって、スピンコヒーレンスは、磁場撮像および量子情報処理における用途に関する性能指数である。
【0071】
ハーンエコーパルスシーケンスを使用して、
図3Eに示される特徴的な単一NVコヒーレンス減衰が測定された。減衰エンベロープから、T
2のスピンコヒーレンス時間=74.8μsが推測された。このT
2時間は注入された窒素イオンの密度(3×10
11 cm
−2)と一致し、デバイス製作手順がNVスピンコヒーレンスを完全に維持していることが結論付けられ得る。T
2時間の測定を、上記で取得した蛍光計数率およびNVスピン読み出しコントラスト(contrast)と組み合わせると、33kHzの周波数における56nT Hz
−1/2の最大交流磁場感度と、
図3Dのデータに基づいた6.0μT Hz
−1/2の直流感度が取得された。
【0072】
交流磁場感度および直流磁場感度の両方は、それぞれ、スピンデカップリングシ−ケンスとスピン読み出しのための最適化されたパラメータとを使用することによってさらに改善され得る。いくつかの実施形態では、約10nT Hz
−1/2から100nT Hz
−1/2の間の範囲が、交流磁場感度に対して達成され得る。いくつかの実施形態では、200、100、75、60、50、25、10、または5nT Hz
−1/2よりも優れた交流感度が達成され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、約0.5μT Hz
−1/2から10μT Hz
−1/2の間の範囲は、直流磁場感度に対して達成され得る。いくつかの実施形態では、50、20、10、6、4、1、0.5μT Hz
−1/2よりも優れた直流感度が達成され得る。
【0074】
図4Aは、本開示の1つ以上の実施形態による、AFMプローブ先端として使用されるダイヤモンドナノピラーの製作を概略的に示す。概略的に、電子ビームリソグラフィが、ダイヤモンド膜414の上部および下部からナノピラーおよびプラットフォームを画定するために使用される。次いで、RIE(反応性イオンエッチング)によって、パターンがダイヤモンドに転写される。マスク蒸着およびトップエッチングは中間構造410を生じさせ、中間構造410は、図示の実施形態ではSiO
2マスクを有する。マスク蒸着およびボトムエッチングは構造420を生じさせ、これは、イオン注入による各個々のナノピラー408内での単一NVセンター416の作製を可能にする。モノリシックダイヤモンド膜414は、数マイクロメートル程度の厚さを有することがある。
【0075】
いくつかの実施形態では、上記の段落で説明した構造は、高純度の単結晶ダイヤモンドの試料から製作され得、この試料は、たとえばElement Sixの電子部品用ダイヤモンドであり得る。単結晶の場合、主要な面(すなわちナノピラーの最終的方向に垂直)は、{111}、{110}、または{100}の主結晶軸から実質的に10度、5度、2度未満であり得る。場合によっては、多結晶すなわちHPHTタイプのダイヤモンドも適切であり得る。
【0076】
一例では、試料は、約6keVのエネルギーおよび約3×10
11 cm
−2の密度で原子状窒素により衝撃が与えられ、約10nmの公称平均NV深度につながり得る。これに続く約800℃、約2時間のアニーリングは、×25NV/μm
2の密度および約25nmの深度を有するNVセンターの浅い層を生じる。
【0077】
これらの実施形態では、次いで、反応性イオンエッチングを使用して、試料が、注入されていない側から約3μmの厚さにエッチングされる。いくつかの実施形態では、10分のArCl
2エッチング、続いて30分のO
2エッチングおよび15分の冷却ステップを含む循環のエッチング法が使用され得る。このシーケンスは、数時間のエッチング時間の間にダイヤモンド表面の完全性を維持することを可能にする。上記で説明したように電子ビームリソグラフィおよびRIEを使用することによって、得られる薄いダイヤモンド膜414の上に、ダイヤモンドナノピラー210の配列が上部に製作されることができる。
【0078】
次に、ダイヤモンド膜の裏面で第2のリソグラフィステップが実行されることができ、これは、ダイヤモンドナノピラーを保持するためのプラットフォームを画定した。最後のRIEプロセスが、レジストパターンを試料に転写し、ダイヤモンド膜が完全に切断され、
図4Aに示される構造をもたらした。
図4Bは、結果としてのナノピラーを有するダイヤモンドプラットフォームの配列のSEM画像である。
【0079】
第2の例では、NVは、成長のみを使用して生成され得るか、または照射(たとえば電子線照射)およびアニーリングの当技術分野で公知の方法を使用することによりNからNVへ変換することによって生成され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、上記で説明したナノスケールNVセンサシステムは、ナノスケール磁気検知および/または撮像に適用されることができる。たとえば、1つ以上の実施形態では、システム100は、ダイヤモンドナノピラー210によって走査された試料209内に含まれるスピンによって生成された磁場を検知するために使用され得る。標準的なスピンエコー技法が、コヒーレントなNV−スピン操作のために使用され得る。これらの実施形態では、マイクロ波源230は、ゼーマンシフトの影響下でNVセンターのスピンに歳差運動させるNVセンターマイクロ波パルスに適用されるように構成され、それによって、外部場の強度は、測定されたゼーマンシフトから決定されることができる。磁気撮像などの用途では、試料表面の磁場画像がシステム200によって取得されることができるように、マイクロ波源230は、ダイヤモンドナノピラー210が試料表面を走査している間、NVセンター208にマイクロ波パルスを適用するように構成され得る。
【0081】
十分に確立された、上記で言及したコヒーレントなNV−スピン操作のための技法を使用して、NVセンターのスピンコヒーレンス時間T
2が特徴付けられることができる。スピンコヒーレンスは、磁場に対するNV感度を設定し、NVスピンに対して実行できるコヒーレント動作の数を制限する。したがって、スピンコヒーレンスは、磁場撮像および量子情報処理における用途に関する本質的な性能指数である。
【0082】
単一NVコヒーレンス減衰についての情報を取得するために、ハーンエコーパルスシーケンスを使用することができる。このようにして、上記で
図2に関して説明したダイヤモンドナノピラーに関して、T
2=74.9μsのスピンコヒーレンス時間が得られる。マイクロ波源230によって生成可能な他のデカップリングパルスシーケンスの例としては、限定するものではないが、CPMG(カーパーセルマイボームギル:Carr Purcell MeiboomGill)パルスシーケンス、XYパルスシーケンス、およびMREVBパルスシーケンスがある。
【0083】
上記で説明した実施形態について、T
2時間の測定を、蛍光計数率およびNVスピン読み出しコントラストの測定値と組み合わせると、約33kHzの周波数における約56nT Hz
−1/2のAC磁場感度と、約6.0μT Hz
−1/2のDC磁場感度を取得することができる。AC磁場感度およびDC磁場感度の両方は、スピンデカップリングシ−ケンスおよび/またはスピン読み出しのために最適化されたパラメータを使用することによってさらに改善されることができる。
【0084】
図5A〜
図5Eは、走査型NVセンサの解像能力を特徴付ける、ナノスケール磁気記憶媒体の撮像に関する方法および結果を示す。さまざまなビットサイズを有する交互する(面外)磁化のビットトラックからなるナノスケール磁気記憶媒体を撮像した。走査型NVセンサは、NVラビ振動(図示せず)から決定されるような固定周波数ω
MWおよび一般的な大きさB
MW≒2GのESR駆動場の存在下で赤色NV蛍光の継続的な監視によってNV軸に沿った一定の磁場強度(B
NV)の輪郭を撮像したモードで動作した。ω
MWは、元の(bare)NVスピン遷移周波数ω
MWからδ
MW離調されていたが、試料による局所磁場は、この離調を画像取得中に変化させた。特に、局所場がNVのスピン遷移をω
MWで共鳴させた場合、NV蛍光率の低下が観測され、これは、画像内にB
NVδ
MW/γ
NVの定数の輪郭がもたらされた。ここで、γ
NV=2.8MHzG
−1はNV磁気回転比である。
【0085】
図5Aは、170nmおよび65nmのビット間隔を有する白色破線によって示される、2筋の磁気ビットの得られた走査型NV磁気測定画像を示す。正規化データI
norm=I
RF,1/I
RF,がプロットされ、B
NV=±3GのNV軸に沿って試料磁場に対応する磁力線を明らかにする。さらに、B
NV≒52Gのバイアス磁場が適用され、測定された磁場の符号を決定した。観測されたドメインの形状は、書き込まれたトラックに対応する寸法の方形磁区を有する理想化した試料に対するNV磁力計の反応を計算することによって十分に再現される。
【0086】
図5Bは、
図5Aに示す画像と類似の磁気画像であるが、NV−試料距離が推定50nm減少している。NV磁力計の空間解像能は、NVセンターから試料までの距離による影響を受ける。NVを試料に近づけることによって、NVセンサにおける磁場の大きさが増加し、撮像の空間解像能が改善され、幅が×38nmの磁気ビットの撮像が可能になる。NVセンサを磁気試料により密接に接近させることによって、磁気ビットが、
図4Bに示すように、約28nmの平均サイズを有することを明らかにした。この画像では、ドメイン間の境界で生成される大きい場の勾配により、磁場線間の遷移が約3nmの長さスケールで観測され得る。おおよそのNV−試料距離が実験構成を示す概略図に記され、検知NVセンターは、光軸上に固定され、磁気試料は、ピラーの下で走査された。総画像取得時間は、
図5Aでは11.2分(ピクセルあたり50ms)、
図5Bのデータでは12.5分(ピクセルあたり75ms)であり、レーザ出力は130μWであった。
【0087】
図5Cは、検知されたNVセンターの光学的に検出されたESRを示す。
図5Dは、
図5Bに示される白色線に沿って切断された線である。
図5Eは、簡略化した磁気試料という仮定の下で
図5Aの実験状況に対してモデルにより計算されたNV反応を示す。
図5Fは、観測された最小ドメインが25nmの平均サイズを有する実験的実現による、
図5Aおよび
図5Bにおけるような磁気画像である。
【0088】
NV−試料距離のなお一層の減少は、幅が約25nm(
図5F)のさらに小さいドメインの撮像を可能にするが、低下した撮像コントラストがNV軸に対して直角な強力な磁場によって引き起こされ、この磁場は、試料の表面に対してごく近くで生じる。ハードドライブを使用して先端を特徴付けることの欠点のうち1つは、局所磁場が非常に大きく、この技法の通常の動的範囲を超えることである。しかしながら、そのような実験は、NV−試料距離に関する貴重な情報を提供し、結果として、撮像において空間解像能が達成された。特に、観測される最小磁区サイズに基づいて、走査型NVと試料との間の距離が25nmに匹敵することが推定される。
【0089】
ダイヤモンド表面に対するNVの近さを独立して検証するために、鋭利な金属先端(直径が<20nm)がNVを含むピラー上で走査されNVの場所を撮像する測定を行った。撮像コントラストは、NVが金属先端の近傍に位置する場合に変化する遠距離場における検出されるNV蛍光から構成された。NV蛍光率がNVと金属試料との間の距離に強く依存するため、この場合、部分的な蛍光消光および励起光強度の局所的な修正に起因して、この技法は、ダイヤモンドナノピラー内でNVセンターを正確に配置するために使用されることができる。
【0090】
図6A、
図6B、および
図6Cは、走査型NVセンサのナノスケール蛍光消光撮像を示す。
図6Aは、鋭利な金属先端の上でのダイヤモンドピラーの走査に対する実験構成の概略図ならびに生成された蛍光信号である。
図6Bは、NVセンターの場所における赤色の正方形領域の拡大画像である。
図6Cは、
図6Bのデータと同時に取得されたAFMトポグラフィ画像である。
【0091】
鋭利な金属先端の上でダイヤモンドピラーを走査することは、試料トポグラフィによる明るい円形の特徴をもたらす。しかしながら、金属先端をNVセンターの場所(正方形で示される)に正確に配置することによって、NV蛍光の急激なディップがもたらされる。図は、この実験で使用された実験構成を示す。
【0092】
図6Bは、
図6Aの正方形領域の拡大画像である。観測された蛍光消光ディップは、×20nmの空間解像能を有する。
図6Cは、
図6Bのデータと同時に取得されるAFMトポグラフィ画像である。スケールバーは、全方向における100nmの変位を表す。画像取得時間は35μWのレーザ出力にて、
図6Aで30分(ピクセルあたり320ms)、
図6Bで2.7分(ピクセルあたり250ms)であった。
【0093】
得られるデータは、NV蛍光信号内の明るいリングとして現れる、走査ダイヤモンドナノピラーのトポグラフィのシグネチャ(signature)を示した。しかしながら、より重要なことに、ダイヤモンドプローブの前端が鋭利な金属先端を走査する間、金属先端がNVセンターの場所に配置されたとき、NV蛍光のディップ(
図6Aおよび
図6Bの拡大画像では正方形)が観測された。この特徴は、どんなトポグラフィの特徴も伴わず、したがって、鋭利な金属先端によるNV蛍光の部分的消光に起因する。この蛍光消光スポットの25.8nmのガウス幅(標準偏差の2倍)は、おそらく、依然として金属先端のサイズによって制限されており、したがって、ピラー内のNVセンターを限局化する機能の上限を示す。そのようなデータは、デバイスのトポグラフィに対して単一のNVセンターの位置が見つけられることを可能にする。これは、将来の検知用途および撮像用途における、目標に対する検知NVセンターの正確な整列を非常に容易にし得る。
【0094】
走査型NVセンターと試料との間の距離に対する残る不確実性は、NV注入プロセスにおける垂直方向の不揃いである。自然に発生する安定したNVセンターは、ダイヤモンド表面から3nmの近さで観測されており、そのため、NVセンターの制御された作製の将来の進歩は、NV−試料距離がさらに改善され、したがって、走査型NV撮像における空間解像能が約1桁改善されることを可能にするであろう。さらに、ダイヤモンド表面に近い人工的に作製されたNVセンターのコヒーレンス性質は、アニーリング法または動的デカップリングによってさらに改善される可能性があり、アニーリング法と動的デカップリングの両方は、走査型NVの磁気検知機能を著しく改善し得る。磁場撮像について、上記で説明した方法を使用する個々の磁区を解像する能力は、非侵襲的で定量的であるという追加の利点を伴って、代替方法の一般的な性能を等しいものにする。
【0095】
図7A、
図7B、および
図7Cは、NV走査センサにより取得された磁気画像のシミュレーションに関する。
図7Aは、NV走査センサにより撮像された磁気ビットをシミュレートするために使用される電流分布を示し、
図7Bは、
図7Aの電流分布によって生成され、NV軸に投影された磁場を示す。
【0096】
走査型NVセンサにより取得された磁気画像を再現するために、実験でサンプリングされ撮像されたハードディスク近傍の局所磁場のモデル計算が実行された。磁区は、
図7Aに示されている試料面内の電流ループの配列によって近似されることができる。ループのサイズは、試料上の磁気ビットの公称サイズに合致するように選定可能であり、図に示されるトラックに対してビット幅200nm、ビット長125nmおよび50nmを有する。電流は、(0.1nm)
2あたりおよそ1ボーア磁子の密度に相当する1mAに設定された。これらの値は、実験で観測される磁場強度への最良の量的合致をもたらすことがわかった。次いで、ビオサバールの法則を電流分布に適用して、試料の上方の半平面における磁場分布を得ることができる。
【0097】
図7Bは、電流ループの上方50nmの走査高さにおけるNVセンター上への得られた磁場投影を示す。外部から適用された磁場に対するNV−ESR反応を監視することによって、x−、y−、およびz−が
図7Bの水平方向、垂直方向、および面外方向である座標系において、NV方向が、ダイヤモンドナノピラーの([011])結晶方向に沿っていることが実験的に決定されることができる。外部磁場は、3軸ヘルムホルツコイルを使用して適用され得る。ダイヤモンド結晶軸と走査方向との間の整列誤差によるNV方向のわずかな変化が、実験データを最も良く再現するNV方向を見つけるために可能にされることができる。この手順によって、NV方向
【0099】
が見つけられた。ここで、φ=π162/180である。
【0100】
この磁場分布は、上記で説明したように、磁気測定走査に対するNVセンターの反応を計算するために使用されることができる。この計算では、オリジナルの実験パラメータに従って、9.7MHzの半値全幅、20%の可視性、および元のESR周波数からの離調±10MHzを有する2つの外部RF源における全幅によるローレンツ型ESR反応が仮定された。
【0102】
NV軸に対して直角の強い磁場B
⊥の存在は、光学的に検出されるESRにおけるコントラストの減少をもたらし、さらに、NVセンターの全体的な蛍光強度を減少させる。これらの効果は、B
⊥の存在下でのNVセンターの光学的基底状態および励起状態におけるNVスピンレベルの混合から生じる。そのような混合は、一方ではスピン非保存光学遷移を可能にし、他方では、NV励起状態(三重項)状態から準安定NV一重項状態への移行(shelving)におけるスピン依存を抑制する。光励起下でのスピン保存およびスピン依存の移行の両方は、NVセンターの光学的に検出されたESRにおける非ゼロコントラストの原因であり、したがって、横断方向磁場による抑制は、強く磁化された試料に密に接近している場合のNV磁気測定特徴の消滅を説明する。
【0103】
図8Aは、ハードディスク試料近傍のNVに対する試料位置の関数として全NV蛍光を示し、
図8Bは、
図8AのNV蛍光計数と同時に記録されたNV磁場画像である。
図8Cは、7つの隣接ピクセルにわたって平均化された、
図8Aに示される白色線に沿って切断された線を示す。具体的には、
図8Aの未加工のNV蛍光計数は、NVと試料表面との間の25nmの推定距離で試料近傍でダイヤモンドナノピラー内のNVを走査するときに観測された。暗い特徴は、B
⊥を増強する磁気ビット上でNVが走査されたときに出現するが、逆のものは、局所場によって、B
⊥が減少させられたとき、または長手方向場B
NVが増強されたときに発生する。ビット撮像のこのモードは、
図8Cに示されるように、およそ20〜30nmの空間解像能を可能にする。
【0104】
同時に、本文で説明する技法により記録された磁気画像は、目に見えるほどの撮像コントラストを示さない。
図8Dは、磁気記憶媒体上の蛍光接近曲線である。
図8Eは、
図8A〜
図8Dに使用された同じNVセンサを用いた磁気撮像を示す。数時間程度の非常に長い積分時間のみが、
図8Dに示されるような、20nm程度の寸法を有する弱い磁気特徴が明らかにされることを可能にする。
【0105】
ESRコントラストの消滅をもたらす2つの効果、すなわちスピンフリップ光遷移およびm
s=0の電子状態の準安定一重項への移行の割合は、それぞれ、ほぼ
【0109】
であり、D
GS(ES)は、それぞれ、2.87GHzおよび1.425GHzの基底(励起)状態スピンゼロ磁場分裂である。D
GS≒2D
ESであると仮定すれば、B
⊥を伴う2つの機構のスケーリングは非常に類似している。したがって、ESRコントラストの消滅に対するD
ES(D
GS/2)の特性スケールは、試料に近いB
⊥が、B
⊥≒D
ES/γ
NV≒514ガウスであると推測することを可能にする。しかしながら、これは、B
⊥の過大評価をもたらすことがある。なぜなら、より小さな値が、NVスピンポンプの複雑なダイナミクスにより、ESRコントラストおよびNV蛍光強度にすでに著しく影響を及ぼしていることがあり得るからである。実際のところ、100G未満のB
⊥に対するNV蛍光率の大きな減少が過去に観測されたことがある。この程度での横断方向磁場は、上記の実験で観測された大きな軸上の磁場、ならびに本出願で説明した磁場プロファイルの計算と合致した。これらの図に使用されるパラメータに対して、20nmのNV−試料距離に対するB
⊥≒200ガウスの最大値が取得された。
【0110】
NV−試料距離は、弱い磁性標的が撮像されることができる全体的な解像能を決定するので、顕微鏡の性能に関する本質的なパラメータである。NV−試料距離に影響を及ぼし得る3つのパラメータとしては、ダイヤモンドナノピラー内のNVセンターの深度、走査型ダイヤモンドナノピラーの汚染、およびAFM制御がある。
【0111】
NVセンターを制御可能に配置させ、ダイヤモンド表面の近く、たとえば50nm、40nm、30nm、20nm、10nm、または5nmよりも近くに配置させることが望ましい。
【0112】
イオン注入を使用して作製されるNVセンターの深度は、たとえば、NV作製に使用されるイオンのエネルギーによって制御されることができる。しかしながら、物質内でのイオンの停止はランダムなプロセスであり、したがって、作製されるNVセンターの深度は完全には明確ではない。イオン注入におけるこの不揃いによって、走査型NVとダイヤモンドナノピラーの端との距離に対する本質的不確定性が生じる。この作業で使用される6keVの注入エネルギー(10nmの注入深度を有する)の場合、近年、NVの不揃いが10〜20nmもの大きさであることが示されている。NV注入における不揃いは回避が困難であるので、将来的に、ダイヤモンドナノピラー内での所与の検知NVの深度をあらかじめ正確に決定するための技法を開発することが不可欠である。これは、NVセンターのための近年開発されたナノスケール撮像方法を使用して、または明確な磁場源の上でNVセンサを走査させることによって、実行されることが可能であろう。
【0113】
成長によって生成されるNVセンターの深度は、時間およびCVDダイヤモンド成長プロセスに窒素ドーパントガスを追加する継続時間によって制御され得る。
【0114】
図9Aは、走査中の汚染後の走査型ダイヤモンドナノピラーの端のAFM像である。
図9Bは、ピラーの端面の洗浄後の、
図9Aに示されるのと同じナノピラーのAFM像である。
【0115】
走査動作中に、走査ダイヤモンドナノピラーは、試料または環境から汚染を集め得る。そのような汚染されたダイヤモンド先端に関する一例が、
図9Aに示されるAFM像に示されている。この画像は、
図10に示される鋭利なダイヤモンド先端を使用して、
図10で用いられる走査プロトコルにより取得された。そのような汚染は、たとえば
図9Aに示されるように、走査型NVセンターから試料までの距離を人工的に数十nm増加させることができる。汚れた試料上での過剰な走査の後でダイヤモンド先端の汚染をもとに戻すため、「先端清掃技法」は、
図9Aから
図9Bへの遷移によって示されるように、汚染された先端をその最初のクリーンな状態に戻すことを可能にすることができる。先端の清掃は、AFMフィードバックなしに、鋭利なダイヤモンド先端(
図9Aに示される)上でのダイヤモンドナノピラーの走査を繰り返すことによって実行され得る。そのようなフィードバックのない走査によって、ダイヤモンドピラーから汚染を部分的に除去することができ、これは、動作の繰り返し後、
図9Bに示されるデバイスのようなクリーンなデバイスをもたらす。
【0116】
適切な試料清掃、環境条件に対する制御、および時折の「先端清掃」の実行により、先端汚染の悪影響を除去することができる。次いで、これは、NVセンターの優れた光安定性とあいまって、走査型NVセンサの長期動作を可能にする。
【0117】
適切なAFM制御は、NVセンターが試料表面に近接していることを保証するために必要である。不良な装着および/または不適切なAFMフィードバック制御は、20nmを超えるAFM先端−試料距離につながり得る。したがって、AFM先端の慎重な装着と、いくつかの実施形態ではAttocube ASC500コントローラによって提供され得るAFMフィードバックの適切なセットアップおよび調整とは、たとえば蛍光消光特徴を観測するために不可欠である。
【0118】
鋭利な先端を有するナノピラーに関連して先に説明した実験では、蛍光消光によって走査ナノピラー内でのNVを限局化するために、鋭利なダイヤモンド先端を製作し、金属で被覆した。ダイヤモンド先端の製作は、上記で説明した走査型ダイヤモンドナノピラーの生成にすでに用いていたナノ製作技法に基づくものであった。タイプIbのダイヤモンド(Element six)を、直径100nmの円形エッチングマスク(流動可能な酸化物、Fox XR−1541、Dow Corning)でパターンを形成した。
【0119】
円柱状ダイヤモンドナノピラーではなく鋭利なダイヤモンド先端を得るために、先に使用したRIEエッチング法を次のように修正することができる。酸素エッチングの化学作用(chemistry)をピラー製作と同一に保ちながら、ダイヤモンド基板上のエッチングマスクを完全に侵食するなどのためにエッチング時間を大幅に増加させることができる。その結果、エッチングされたダイヤモンド構造は、
図10の代表的なSEM画像に示されるように、鋭利な先端の形を取得した。一般的な先端半径は10nmの範囲であり、先端の長さは200nm程度であった。
【0120】
上記で説明した実験では、次に、熱による金属蒸発を使用して、鋭利なダイヤモンド先端を薄い金属層で被覆した。金属の酸化を避けるために、金を消光金属として選定することができ、金とダイヤモンドとの間でクロム接着を使用することができる。この作業で用いられる先端の場合、5nmの金および5nmのクロムが使用される。
【0121】
そのうちの1つが
図10に示されているいくつかの実施形態では、円柱状断面ではなく鋭利な尖った先端410を有する遠位端を有するダイヤモンドナノピラーが製作され得る。これらの実施形態では、ダイヤモンド膜は、約100nm程度の直径を有する円形エッチングマスクでパターンを形成されることができる。鋭利なダイヤモンド先端を得るために、エッチング時間は、ダイヤモンド膜414上のエッチングマスクを完全に侵食するように大幅に増加される。その結果、エッチングされたダイヤモンド構造は、
図10に示されるような鋭利な先端410の形を取得し得る。
【0122】
個々のNVセンターがダイヤモンドナノピラーの遠位端から短い距離にある、ダイヤモンドナノピラーを走査プローブとして使用するナノスケール走査型NVセンサについて説明してきたが、多くの他の変形形態および実施形態が可能である。
【0123】
一般に、ナノスケール走査センサシステムは、光源からの励起光およびマイクロ波源からのマイクロ波パルスに応答して蛍光光を放出するように構成された固体スピン欠陥(たとえば上記で説明したダイヤモンド内のNVセンター)を含み得る。システムは、スピン欠陥を含むかまたはこれに結合された光取り出し構造(outcoupling structure)をさらに含み得る。この光取り出し構造は、スピン欠陥によって放出される蛍光光を光取り出し構造の出力端の方へ光学的に誘導するように構成され得る。
【0124】
光検出器は、1つ以上のスピン欠陥から放出され、光取り出し構造を通って光学的に誘導された後、光取り出し構造の出力端を通って出た蛍光光を検出するように構成され得る。装着システム(たとえばAFM)は、光取り出し構造と試料表面との間の相対運動を可能にしながらスピン欠陥と試料の表面との間の距離を制御するように、光取り出し構造を移動可能に保持するように構成され得る。光学顕微鏡は、装着システムに結合され、1つ以上のスピン欠陥に光学的にアドレスしてそれを読み出すように構成され得る。
【0125】
光取り出し構造は、励起光およびマイクロ波がスピン欠陥に適用されている間、試料表面が光取り出し構造によって走査可能であるように、試料表面に対して移動可能に配置可能であり得る。
【0126】
いくつかの実施形態では、光取り出し構造は単結晶ダイヤモンド膜であり得る。いくつかの実施形態では、光取り出し構造は、上記で説明したようなダイヤモンドナノピラーであり得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、光取り出し構造の出力端とスピン欠陥との距離は、好ましくは、50、40、30、20、10、または5nm未満であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、光取り出し構造の出力端とスピン欠陥との距離は、約1μmであり得る。いくつかの実施形態では、光取り出し構造の出力端とスピン欠陥との距離は、0.5μmから10μmの間であり得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、光取り出し構造は、100nmから300nmの間の直径と、0.5μmから5μmの間の長さとを有し得る。
【0130】
図12A、
図12B、
図12C、
図12D、
図12E、および
図12Fは、スピン欠陥に基づくナノセンサの代替実施形態を示す。
図12Aは、単結晶ダイヤモンドに基づく光取り出し構造を示す。
図12Bは、先の段落で説明したようなAFMに基づくセットアップであるが、モノリシックダイヤモンドの中に形成されたNVセンターを有し、ナノピラーを備えず、全内面反射を使用して蛍光を検出器の方へ向けるセットアップを示している。
【0131】
図12Cに示されている実施形態も、同様に、ナノピラーを含まない。むしろ、
図12Cの光取り出し構造も、同様に単結晶ダイヤモンドに基づき、NVセンターの光路にSIL(ソリッドイマージョンレンズ)を含む。SILは、ダイヤモンドの中で加工され得るし、取り付けられた別個のダイヤモンドSILであってもよいし、別の材料で製作されたSILであってもよい。
図12Dは、この場合もモノリシックダイヤモンドに基づき、ナノピラーを含まないが、全内面反射を使用して蛍光を検出器の方へ向ける代替外形を示す。
図12Eは、カンチレバーなしで光取り出し構造を装着できる構成を示す。
図12Fでは、NVセンターは、ダイヤモンド材料内部のアズグロウン(as−grown)窒素空孔欠陥または(イオン注入された窒素を介してではなく)照射およびアニーリングによってアズグロウン窒素の窒素空孔欠陥への変換によって形成された窒素−空孔欠陥を使用して形成される。
【0132】
図13A〜
図13Gは、NV距離をさらに減少させることが可能なバックエッチングを示す。上記で説明したように、NVに基づく走査磁力計の最も重要なパラメータのうち1つは、NVセンターと取り付けられた走査プローブの先端の端との間の距離である。
【0133】
この距離が重要なのは、この距離によって、磁気撮像における空間解像能を達成するための下限が設定されるからである。さらに、磁場強度は、通常、距離とともに急激に低下する。そのため、所与の磁気感度に対して、データ取得時間は、距離が減少するにつれて急激に減少する。単一スピンからの場のような磁気ダイポール場を測定すると、場の強度は、距離の3乗で低下する。測定の信号対雑音は積分時間の平方根になるので、必要なデータ取得時間は、したがって、距離により6の逆べき(d
−6)に変倍される。すなわち、NV−標的距離が2分の1に縮小されることができる場合、必要な積分時間は64分の1に減少する。
【0134】
したがって、NV磁力計の性能を最適化するために、NV欠陥と走査先端の端たとえばナノピラーの遠位端(または出力端)との間の距離を最小限に抑えることが重要である。浅いNVセンターを作成するための確立された方法は、窒素注入およびその後のアニーリングによるものである。しかしながら、この方法の確率的性質は、単一のNVセンターを含む所与のデバイスに関するアプリオリな不明のNV−試料距離をもたらす。さらに、NV収率および品質は注入距離の深度とともに急激に低下し、そのため、NVセンターは、試料表面に任意に近づけられることはできない。
【0135】
いくつかの実施形態では、許容可能な収率および磁気感度を達成するために、6keVのエネルギーにより3e
11 N/cm
2の適用量で窒素を注入し得る。6keVの注入エネルギーは、名目上、表面の下に10nmの層深度を形成する。しかしながら、上記で説明した実験方法は、およそ25nmの平均深度を示す。
【0136】
いくつかの実施形態では、NV−試料距離を減少させるために、NV−試料距離を正確に測定すること、次いでダイヤモンドプローブの最終端を慎重にエッチングして取り除くことを反復するバックエッチング方法が使用され得る。このスキームでは、この距離は、大幅にたとえば2.3分の1に短縮され得る。重要なことに、NVセンサのスピン性質(T
1、T
2、NVコントラスト、NVカウント)は、この減少中、維持され、そのためNV感度はエッチング中、保持される。したがって、単一スピン撮像のために必要な積分時間は、およそ140分の1に短縮された。達成された単一スピン撮像は、2分の積分時間以内に1の信号対雑音比を達成し得る。このバックエッチングにより、撮像は今や、およそ1秒の積分時間で実行され得る。これは本発明の重要な部分であり、したがって、好ましくは10分、5分、3分、2分、1分、30秒、15秒、10秒、5秒、2秒、1秒、0.5秒未満の実験的積分時間に、単一スピンに対して2の信号対雑音比が達成される。
【0137】
NVと走査先端の端との距離を測定するために、いくつかの実施形態では、グラフェン単層内への蛍光消光の程度を測定することに基づく方法が使用され得る。NVセンターまたは他のスピン欠陥などの光学的放出体が、光学的遠距離場(optical far−field)内へと放出するのではなく、金属の極近傍(通常、数十ナノメートル以内)に動かされるとき、いくらかの蛍光が金属内へと放出され、プラズモンまたは電子−正孔対のどちらかを作製する。
【0138】
通常、この蛍光消光は、距離とともに急激に変化し(d
−4に比例する)、そのため、非常に感度の高い距離の尺度である。金属としてグラフェン層を使用する場合、そのAC伝導度は周知であるので、距離と消光量との間の較正を定量化することができ、これによって正確な距離の決定が可能になる。実際には、これは、グラフェン薄片から離れるNVセンターからの蛍光を測定し、次いで、蛍光がグラフェン単層薄片の上で走査された後、どれほど多くの蛍光が減少したかを比較することによって達成される。通常、グラフェン薄片は横方向に分離され、そのため、グラフェン薄片は依然として基板上にある。
【0139】
ナノピラー先端の端は、決定されたNV−試料距離を用いて、NVセンター自体をエッチングして取り除く恐れなしにエッチングされることができる。いくつかの実施形態では、数個の基準、すなわち、1)エッチングは、数(約1〜3)ナノメートル刻みで制御可能にエッチングするのに十分に遅いこと、2)エッチングは、表面終端(通常、酸素終端される)を変化させることによってNVの電荷状態に悪影響を及ぼさないこと、および、3)NV−試料距離を測定した後でエッチングを実行し、約150℃以上のプロセスに耐えることができない一連の接着剤を使用する走査プローブにNVセンサを装着するので、エッチングプロセスは低温で機能することを満たすこのエッチングを行うためのプロセスが使用され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、このプロセスは弱い酸素プラズマを使用する。
図13Aは、酸素プラズマによるNV距離の減少を示す。RF出力は、約100Wであり得、他では、代わりに50〜150Wの範囲であり得、低いバイアス電力を伴う。この低バイアス電力は<50Wであり得る。いくつかの実施形態では、この低バイアス電力は0Wであり得る。
【0141】
図13Bは、ダイヤモンド先端上でのエッチングを示す。
図13Bに示されるように、37.5分エッチングすることによって、ほぼ50%の消光がもたらされる。上記で説明したエッチングプロセスは、一度に最大約20分間実行され得る。時間が長くなると、過剰な熱が生成されることがあり、これによって、使用されている接着剤が溶けることがある。
図13Cは、より多くのエッチング後の消光の増加を示す。いくつかの実施形態では、<1nm/分のエッチング速度が達成され得る。これらのエッチング速度は、ダイヤモンドの、エッチングマスクによって部分的に覆された領域をエッチングし、次いで、得られたダイヤモンドプロファイルをAFMにより測定することによって較正され得る。いくつかの実施形態では、エッチングを行うために使用される機械は、プラズマストリッパーであり得る。
【0142】
図13Dはグラフェン消光対エッチング時間を示し、
図13EはNV蛍光対エッチング時間を示す。
図13Fは、NV距離を確認するためのESRカウントを示す。
図13Gには、NV深度対エッチング時間のまとめが記載されている。
【0143】
要約すると、単一NVセンターなどのスピン欠陥を有するナノスケール走査センサに関する方法およびシステムについて説明してきた。これらのセンサは、高い機械的堅牢性および高い信号収集効率とともに、長いスピンコヒーレンス時間を達成する。
【0144】
上記で説明した方法およびシステムは、多くの他の潜在的用途を有する。これらの用途としては、限定するものではないが、光センサ、ならびにシリコン中のリンなどの他のスピンシステム、他のNVセンター、または炭素に基づくスピン量子ビットに走査NVスピンをコヒーレントに結合するためのプラットフォームがある。それによって、量子情報を、静止した量子ビットと上記で説明した走査NVセンターとの間で、およびそこから単一光子またはダイヤモンド基盤中の長寿命核スピン量子ビットなどの他の量子ビットシステムに、移すことができる。
【0145】
説明してきた構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点は単なる例に過ぎない。それらのうちいずれも、またはそれらに関する説明も、いかなる形であれ保護の範囲を制限することを意図するものではない。より少数の、追加の、および/または異なる構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、および利点を有する実施形態を含む多数の他の実施形態も企図されている。これらの構成要素およびステップはまた、異なるように配置され順序づけされ得る。
【0146】
記述または図示されたいずれのものも、任意の構成要素、ステップ、特徴、目的、利益、利点、または同等物の献身を一般化することを意図するものではない。本明細書では、本開示の特定の実施形態について説明しているが、当業者は、本開示に開示されている本発明の概念から逸脱することなく本開示の変形形態を考案することができる。
【0147】
特定の実施形態について説明してきたが、これらの実施形態において暗黙的な概念は他の実施形態でも使用され得ることを理解されたい。本開示では、単数形での要素への言及は、そのように明記されていない限り「唯一の(one and only one)」を意味することを意図するのではなく、「1つ以上」を意味することを意図する。本開示全体にわたって説明したさまざまな実施形態の要素に対するあらゆる構造上および機能上の等価物は、当業者に公知であろうと後で公知になろうと、参照により本明細書に明白に組み込まれる。