(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における治療又は予防に有用な有機化合物、特に、慢性腎疾患、鬱血性心不全、高血圧、原発性アルドステロン症及びクッシング症候群の治療又は予防のためのアルドステロン合成酵素(CYP11B2又はCYP11B1)阻害薬に関する。
【0002】
本発明は、式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり;
R
2は、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり;
R
3は、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり;
R
4は、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであるか;
又はR
3及びR
4は、これらが連結している炭素原子と一緒になって、二重結合を形成し;
R
5は、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり;
R
6は、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり;
R
7は、H、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであるか;
又はR
6及びR
7は、これらが連結している炭素原子と一緒になって、シクロアルキルを形成し;
R
8及びR
9は、これらが連結している窒素原子と一緒になって、オキソ置換基並びにH、ハロゲン、シアノ、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル及びハロシクロアルキルから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されているヘテロアリールを形成し;
R
10は、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルであり;
R
11は、H、ハロゲン、アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル又はハロシクロアルキルである]
で表される新規化合物又は薬学的に許容し得る塩若しくはエステルを提供する。
【0003】
本明細書において、本発明者らは、絶対的又は相対的に過剰なアルドステロンによって引き起こされる臓器/組織障害を防ぐ可能性を有する、アルドステロン合成酵素の阻害薬を記載する。先進国では、成人人口の約20%が高血圧を患っている。60歳以上の人では、このパーセンテージは60%超に上昇する。高血圧患者では、卒中、心筋梗塞、心房細動、心不全、末梢血管疾患及び腎機能障害を含む、他の生理学的合併症のリスクの増加を示す。レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系は、高血圧、体液量及び塩分バランスに関係している経路であり、最近では、心不全又は腎疾患の進行期における末期臓器障害に直接的に寄与している経路である。ACE阻害薬及びアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)は、患者の寿命及び生活の質の改善に使用され成功している。これらの薬物は、最大限の防御をもたらすわけではない。比較的多くの患者では、ACE及びARBは、アルドステロンレベルがまず初期低下を起こした後に病理学的レベルまで再上昇する現象である、いわゆるアルドステロンブレイクスルーを導く。不適切に増加したアルドステロンレベル(塩分の摂取/レベルに対して)によって生じる有害な結果が、鉱質コルチコイド受容体拮抗薬によるアルドステロン遮断によって最小限に抑えられ得ることが実証されている。アルドステロン合成の直接阻害は、アルドステロンの非ゲノム効果もまた同様に低下させるだろうから、さらに良好な防御を提供すると期待されている。
【0004】
Na/K輸送に対するアルドステロンの作用は、腎臓におけるナトリウム及び水の再吸収並びにカリウムの分泌の増加を導く。全体として、これは結果として血液量を増加させ、それ故血圧を増加させる。腎臓のナトリウム再吸収の調節において役割を果たす以外に、アルドステロンは、腎臓、心臓及び血管系に対して、特に、「高ナトリウム」環境において有害作用を発揮し得る。そのような条件下では、アルドステロンは、最終的に臓器障害の一因となり得る増加した酸化ストレスを導くことが知られている。腎機能障害ラット(高い塩分処置又は一側性腎摘出のいずれかによる)へのアルドステロンの注入は、腎臓に様々な損傷(タンパク尿に反映される糸球体拡大、有足細胞損傷、間質性炎症、メサンギウム細胞増殖及び線維症を含む)を誘発する。より具体的には、アルドステロンが、腎臓において接着分子ICAM−1の発現を増加させることが示された。ICAM−1は、糸球体の炎症に大きく関与している。同様に、アルドステロンが、インターロイキンIL−1b及びIL−6、MCP−1並びにオステオポンチンなどの炎症性サイトカインの発現を増加させることが示された。細胞レベルでは、血管の線維芽細胞において、アルドステロンが、線維症のメディエーターであるI型コラーゲンmRNAの発現を増加させたことが実証された。アルドステロンはまた、ラットのメサンギウム細胞においてIV型コラーゲンの蓄積を刺激し、平滑筋細胞においてプラスミノーゲン活性化抑制因子−1(PAI−1)の発現を誘発する。まとめると、アルドステロンは、腎障害に関与する重要なホルモンであることが明らかとなった。アルドステロンは、心血管系リスクの媒介において同様に重要な役割を担っている。
【0005】
MR拮抗薬(スピロノラクトン及びエプレレノン)が、様々な前臨床モデルにおいて、血圧、心臓及び腎臓の機能を改善するという数多くの前臨床証拠がある。
【0006】
最近の前臨床研究は、心血管及び腎臓の疾病率及び死亡率にCYP11B2が大きく寄与していることを明らかにした。CYP11B2阻害薬のFAD286及びMR拮抗薬のスピロノラクトンが、慢性腎疾患のラットモデル(高いアンジオテンシンII曝露;高い塩分及び一側性腎摘出)で評価された。アンジオテンシンII及び高い塩分処置は、アルブミン尿、高窒素血症、腎血管肥大(renovascular hypertrophy)、糸球体障害、増加したPAI−1及びオステオポンチンmRNAの発現、並びに尿細管間質線維症を引き起こした。両方の薬物は、これらの腎臓への作用を抑制し、心臓及び大動脈の中膜肥厚を軽減させた。FAD286による処置の4週間後、血漿アルドステロンは減少したが、一方でスピロノラクトンは、処置の4及び8週目の時点でアルドステロンを増加させた。同様に、FAD286ではなくスピロノラクトンだけが、大動脈及び心臓においてアンジオテンシンII及び塩刺激によるPAI−1のmRNAの発現を増大させた。他の研究で、CYP11B2阻害薬のFAD286は、実験的心不全ラットにおいて血圧並びに心血管の機能及び構造を改善した。同じ研究において、FAD286が腎臓の機能及び形態を改善することが示された。
【0007】
原発性アルドステロン症患者への経口活性CYP11B2阻害薬LCI699の投与は、この阻害薬が、原発性アルドステロン症の患者においてCYP11B2を効果的に阻害して血中アルドステロンレベルを著しく低下させ、かつ低カリウム血症及び軽度の血圧低下を修正するという結論に導いた。この糖質コルチコイド系に対する作用は、当該化合物の低い選択性及びコルチゾール合成の潜在的阻害と一致した。まとめると、これらのデータは、CYP11B2阻害薬が不適切に高いアルドステロンレベルを低下させ得るという概念を支持している。CYP11B1に対して良好な選択性を達成することは、HPA系に対する望ましくない副作用を回避するために重要であり、異なるCYP11B2阻害薬との差別化になるであろう。
【0008】
式(I)に係る本発明の化合物は、CYPB11B2の強力な阻害薬であり、CYP11B1に対してよりもCYP11B2に対して改善した選択性を示す。
【0009】
本発明の目的は、式(I)の化合物並びにそれらの前述の塩及びエステル、治療活性物質としてのそれらの使用、前記化合物の製造のためのプロセス、中間体、医薬組成物、前記化合物、それらの薬学的に許容し得る塩又はエステルを含有する医薬、病気の治療又は予防のための、とりわけ慢性腎疾患、鬱血性心不全、高血圧、原発性アルドステロン症及びクッシング症候群の治療又は予防における前記化合物、塩又はエステルの使用、並びに慢性腎疾患、鬱血性心不全、高血圧、原発性アルドステロン症及びクッシング症候群の治療又は予防のための医薬の製造のための前記化合物、塩又はエステルの使用である。
【0010】
用語「アルキル」は、1〜12個の炭素原子の一価の直鎖又は分岐飽和炭化水素基を示す。特定の実施態様において、アルキルは、1〜7個の炭素原子、より特定の実施態様において、1〜4個の炭素原子を有する。アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルを含み、特定のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル及びイソプロピルを含む。より特定のアルキル基は、メチルである。
【0011】
用語「二環式環系」は、共通の単結合又は二重結合を介して(縮環した二環式環系)、連続した3個以上の共通の原子を介して(架橋した二環式環系)、又は共通の単一原子を介して(スピロ二環式環系)、互いに縮合している2個の環を示す。二環式環系は、飽和、部分不飽和、不飽和又は芳香族であり得る。二環式環系は、N、O及びSから選択されるヘテロ原子を含むことができる。
【0012】
用語「シアノ」は、−C≡N基を示す。
【0013】
用語「シクロアルキル」は、3〜10個の環炭素原子の一価の飽和単環式又は二環式炭化水素基を示す。特定の実施態様において、シクロアルキルは、3〜8個の環炭素原子の一価の飽和単環式炭化水素基を示す。二環式は、2個の炭素原子を共有する2個の飽和炭素環からなることを意味する。特定のシクロアルキル基は、単環式である。単環式シクロアルキルの例は、シクロプロピル、シクロブタニル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルである。二環式シクロアルキルの例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタニル又はビシクロ[2.2.2]オクタニルである。特定の単環式シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブタニル、シクロペンチル及びシクロヘキシルである。より特定の単環式シクロアルキル基は、シクロプロピルである。
【0014】
用語「ハロアルキル」は、アルキル基の水素原子の少なくとも1個が同じ又は異なるハロゲン原子に置き換えられている、アルキル基を示す。用語「ペルハロアルキル」は、アルキル基の全ての水素原子が同じ又は異なるハロゲン原子に置き換えられている、アルキル基を示す。ハロアルキルの例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロメチルエチル及びペンタフルオロエチルを含む。特定のハロアルキル基は、トリフルオロメチルである。
【0015】
用語「ハロシクロアルキル」は、シクロアルキル基の水素原子の少なくとも1個が同じ又は異なるハロゲン原子、特定するとフルオロ原子に置き換えられている、シクロアルキル基を示す。ハロシクロアルキル基の例は、フルオロシクロプロピル、ジフルオロシクロプロピル、フルオロシクロブチル及びジフルオロシクロブチルを含む。
【0016】
用語「ハロゲン」及び「ハロ」は、本明細書において互換的に使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを示す。特定のハロゲンは、クロロ及びフルオロである。
【0017】
用語「ヘテロアリール」は、N、O及びSから選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含み、残りの環原子が炭素である、5〜12個の環原子の一価の芳香族複素環の単環式又は二環式環系を示す。ヘテロアリール基の例は、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、トリアジニル、アゼピニル、ジアゼピニル、イソオキサゾリル、ベンゾフラニル、イソチアゾリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、イソベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル及びキノキサリニルを含む。特定のヘテロアリール基は、ベンゾチアゾリル、チアトリル(thiatolyl)、ピリジニル及びピリミジルを含む。さらなる特定のヘテロアリール基は、ピリジニルである。
【0018】
R
8及びR
9が、これらが連結している窒素原子と一緒になることによって形成されかつオキソ基で置換されている、特定のヘテロアリールは、基A、B、C及びDである。
【化2】
【0019】
R
8及びR
9が、これらが連結している窒素原子と一緒になることによって形成されかつオキソ基で置換されている、さらなるヘテロアリールは、基Cである。
【0020】
用語「オキソ」は、=O基を示す。
【0021】
「薬学的に許容し得るエステル」は、一般式(I)の化合物を官能基で誘導体化して、インビボで親化合物に変換し戻ることが可能な誘導体を提供することができることを意味する。そのような化合物の例は、メトキシメチルエステル、メチルチオメチルエステル及びピバロイルオキシメチルエステルなどの生理学的に許容し得かつ代謝的に不安定なエステル誘導体を含む。加えて、代謝的に不安定なエステルと類似し、インビボで一般式(I)の親化合物を製造することが可能な一般式(I)の化合物の任意の生理学的に許容し得る等価物も本発明の範囲内である。
【0022】
用語「保護基」(PG)は、合成化学において従来それに用いられる意味で、多官能性化合物中の1つの反応部位を選択的にブロックして、化学反応を別の保護されていない反応部位で選択的に行うことができる基を示す。保護基は、適切な時点で除去され得る。典型的な保護基は、アミノ保護基、カルボキシ保護基又はヒドロキシ保護基である。特定の保護基は、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及びベンジル(Bn)である。さらなる特定の保護基は、tert−ブトキシカルボニル(Boc)及びフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)である。より特定の保護基は、tert−ブトキシカルボニル(Boc)である。
【0023】
略語uMは、マイクロモル濃度を意味し、記号μMに相当する。
【0024】
式(I)の化合物は、いくつかの不斉中心を含有することができ、光学的に純粋なエナンチオマー、エナンチオマーの混合物(例えば、ラセミ体など)、光学的に純粋なジアステレオ異性体、ジアステレオ異性体の混合物、ジアステレオ異性体のラセミ体又はジアステレオ異性体のラセミ体の混合物の形態で存在することができる。
【0025】
Cahn-Ingold-Prelog順位則に従って、不斉炭素原子は、「R」又は「S」の立体配置をとることができる。
【0026】
また、本発明のある実施態様は、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物及びその薬学的に許容し得る塩又はエステル、特に、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物及びその薬学的に許容し得る塩、より特定すると、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0027】
本発明の別の実施態様は、R
1がアルキルである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0028】
本発明のさらなる実施態様は、R
2がHである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0029】
本発明の特定の実施態様は、R
3がHである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0030】
本発明のさらなる実施態様において、R
4がHである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物がある。
【0031】
本発明の別のさらなる実施態様は、R
5がHである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0032】
本発明の別の実施態様は、R
6がHである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0033】
本発明はまた、R
7がHである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物に関する。
【0034】
本発明のさらなる特定の実施態様は、R
8及びR
9が、これらが連結している窒素原子と一緒になって、オキソ置換基並びにH、ハロゲン、シアノ、アルキル及びハロアルキルから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されているヘテロアリールを形成する、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0035】
本発明のより特定の実施態様は、R
8及びR
9が、これらが連結している窒素原子と一緒になって、置換2H−ピリジニル、置換ピリミジニル、置換チアゾリル又は置換ベンゾチアゾリルを形成し、ここで、置換2H−ピリジニル、置換ピリミジニル、置換チアゾリル及び置換ベンゾチアゾリルが、オキソ置換基並びにH、ハロゲン、シアノ、アルキル及びハロアルキルから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されている、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0036】
また、本発明のある実施態様は、R
8及びR
9が、これらが連結している窒素原子と一緒になって、H、ハロゲン、シアノ、アルキル及びハロアルキルから独立して選択される1〜3個の置換基で置換されているオキソ−2H−ピリジニルを形成する、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0037】
本発明はまた、R
8及びR
9が、これらが連結している窒素原子と一緒になって、H、ハロゲン及びアルキルから独立して選択される1〜2個の置換基で置換されているオキソ−2H−ピリジニルを形成する、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物に関する。
【0038】
本発明の別の実施態様は、R
8及びR
9が、これらが連結している窒素原子と一緒になって、フルオロ−オキソ−2H−ピリジニル、クロロ−オキソ−2H−ピリジニル又はメチル−オキソ−2H−ピリジニルを形成する、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0039】
本発明の特定の実施態様は、R
10がH又はアルキルである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0040】
本発明の特定の実施態様は、R
10がアルキルである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0041】
本発明の特定の実施態様は、R
11がH又はハロゲンである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0042】
また、本発明のある実施態様は、R
11がハロゲンである、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0043】
本発明の特定の実施態様は、式(Ia)で表される化合物であって、かつR
12及びR
13が、H、ハロゲン及びアルキルから独立して選択される、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物又はその薬学的に許容し得る塩である。
【化3】
【0044】
本明細書に記載されるような式(I)の化合物の特定の例は、以下から選択される:
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−ベンゾチアゾール−3−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(5−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−チアゾール−3−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(3−クロロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(3−フルオロ−2−オキソ−5−トリフルオロメチル−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(3−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−メチル−6−[5−(6−メチル−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−メチル−6−[5−(4−メチル−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(5−クロロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−3−トリフルオロメチル−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−メチル−6−[5−(2−メチル−6−オキソ−6H−ピリミジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−2H−ピリミジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−[5−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−6−イル)−ピリジン−3−イルメチル]−2−オキソ−1,2−ジヒドロ−ピリジン−4−カルボニトリル;
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−5−トリフルオロメチル−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
1−[5−(1−メチル−2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−6−イル)−ピリジン−3−イルメチル]−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−ピリジン−3−カルボニトリル;
6−[5−(6−クロロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(6−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−6−[5−(3−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−1−メチル−6−[5−(4−メチル−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(5−クロロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(6−クロロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−1−メチル−6−[5−(6−メチル−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−1−メチル−6−[4−メチル−5−(6−メチル−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(6−クロロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−4−メチル−ピリジン−3−イル]−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−6−[5−(3−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−4−メチル−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−6−[5−(6−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−4−メチル−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
及びその薬学的に許容し得る塩。
【0045】
本明細書に記載されるような式(I)の化合物のさらなる特定の例は、以下から選択される:
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−ベンゾチアゾール−3−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(3−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−1−メチル−6−[5−(6−メチル−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
7−フルオロ−1−メチル−6−[4−メチル−5−(6−メチル−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
6−[5−(6−クロロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−4−メチル−ピリジン−3−イル]−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン;
及びその薬学的に許容し得る塩。
【0046】
本明細書に記載されるような式(I)の化合物の製造のためのプロセスは、本発明の1つの目的である。
【0047】
本発明の式(I)の化合物の調製は、逐次又は収束合成経路で実施され得る。本発明の合成は、以下の一般スキームに示される。本反応及び生じた生成物の精製を実施するのに必要な技能は、当業者に公知である。反応の間にエナンチオマー又はジアステレオ異性体の混合物が生成する場合、これらのエナンチオマー又はジアステレオ異性体は、本明細書に記載される方法又は当業者に公知の方法、例えば、キラルクロマトグラフィー又は結晶化によって分離され得る。以下のプロセスの説明において使用される置換基及び指数は、本明細書に与えられる意味を有する。
【0048】
本文において以下の略語が使用される:
【0049】
AcOH=酢酸、BOC=t−ブチルオキシカルボニル、BuLi=ブチルリチウム、CDI=1,1−カルボニルジイミダゾール、CH
2Cl
2=ジクロロメタン、DBU=2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−ピリミド[1,2−a]アゼピン、DCE=1,2−ジクロロエタン、DIBALH=水素化ジ−i−ブチルアルミニウム、DCC=N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、DMA=N,N−ジメチルアセトアミド、DMAP=4−ジメチルアミノピリジン、DMF=N,N−ジメチルホルムアミド、EDCI=N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩、EtOAc=酢酸エチル、EtOH=エタノール、Et
2O=ジエチルエーテル、Et
3N=トリエチルアミン、eq=当量、HATU=O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、HPLC=高速液体クロマトグラフィー、HOBT=1−ヒドロキシベンゾ−トリアゾール、ヒューニッヒ塩基(Huenig's base)=iPr
2NEt=N−エチルジイソプロピルアミン、IPC=インプロセス制御、LAH=水素化アルミニウムリチウム、LDA=リチウムジイソプロピルアミド、HMDS=ヘキサメチルジシラザン(hexamethydisilazane)、LiBH
4=水素化ホウ素リチウム、MeOH=メタノール、NaBH
3CN=シアノ水素化ホウ素ナトリウム、NaBH
4=水素化ホウ素ナトリウム、NaI=ヨウ化ナトリウム、Red−Al=水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、RT=室温、TBDMSCl=塩化t−ブチルジメチルシリル、TFA=トリフルオロ酢酸、THF=テトラヒドロフラン、quant=定量的。
【0050】
【化4】
Xは、ハロゲン又はOSO
2CF
3である。
R
101及びR
102は、例えば、これらが連結しているホウ素原子と一緒になって、
【化5】
を形成する。
R
103は、例えば、スキーム2、3に示されるような置換基を表し、合成の後の段階で
【化6】
へのさらなる変換を可能にする。
【0051】
ラクタム化合物1(スキーム1)は、公知であるか又は本明細書に記載される方法若しくは当業者に公知の方法によって調製され得る。化合物1は、DMF又はTHFのような溶媒中、好ましくは0℃〜約80℃の間の温度範囲で、水素化ナトリウム又はナトリウム若しくはカリウムtert−ブトキシドのような塩基を使用し、続いて、式R
1−Y(式中、Yは、ハロゲン、トシラート又はメシラートである)のアルキル化剤の添加によって窒素でアルキル化され、N−アルキル化ラクタム2を与え得る(工程a)。
【0052】
ラクタム2と例えば4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−5ジオキサボロラン)との、ジメチルスルホキシド又はジオキサンのような溶媒中、酢酸カリウム及び(1,1’−ビス−ジフェニルホスフィノ)−フェロセン)パラジウム−(II)ジクロリド(ジクロロメタンとの1:1錯体)のような触媒の存在下、約100℃までの温度での反応は、ボロン酸エステル化合物3を与える(工程b)。ボロン酸エステル化合物3と好適なハロゲン化アリール4又は6(ハロゲン化アリール4又は6の可能な合成については、スキーム3を参照のこと)との縮合は、Suzuki条件を使用して、例えば、トリ−o−トリルホスフィン/酢酸パラジウム(II)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド又はジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)(場合により、ジクロロメタン錯体(1:1)の形態で)などの触媒の存在下、水性又は非水性リン酸カリウム、炭酸ナトリウム又はカリウムなどの塩基の存在下、ジメチルスルホキシド、トルエン、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒中、アルゴン又は窒素などの不活性雰囲気下、好ましくは室温〜約130℃の間の温度範囲で実施され、付加体5又は7へと導き得る(工程c)。化合物7は、以下のスキーム、実施例に記載される方法によって又は当業者に周知の方法によって、一般式5の化合物へとさらに変換され得る(工程d)。
【0053】
【化7】
Xは、ハロゲン又はOSO
2CF
3である。
R
101及びR
102は、例えば、これらが連結しているホウ素原子と一緒になって、
【化8】
を形成する。
A
2は、場合により置換されている炭素又は場合により置換されているヘテロ原子を表す。
HETは、本明細書に定義されるようなヘテロアリールを表す。
【0054】
ヒドロキシ−アルキルで置換されているハロアリール化合物100(スキーム2)とアリール−ボロン酸誘導体3との工程c(スキーム1)に記載したような条件下でのSuzuki反応、続く、例えば、DCMのような溶媒中、ほぼ室温で、塩化チオニルで処理することによるOHのクロロ官能基への変換は、クロロアルキル化合物102を与える(工程a、b)。NH−ヘテロアリール103を、DMF、アセトニトリル又はDMSOのような溶媒中、約0℃〜溶媒の還流温度の間の温度で、炭酸セシウム、ナトリウム又はカリウムのような塩基で処理したクロロアルキル化合物102と反応させて、付加体104にする(工程c)。
【0055】
【化9】
Xは、ハロゲン又はOSO
2CF
3である。
A
2は、場合により置換されている炭素又は場合により置換されているヘテロ原子を表す。
HETは、本明細書に定義されるようなヘテロアリールを表す。
【0056】
ヒドロキシ−アルキル化合物100(スキーム3)は、公知であるか又は例えばジ−ハロピリジン化合物150及びアルデヒド又はケトン151から、例えば、THFのような溶媒中、−78℃でのnBuLiによるジ−ハロピリジン化合物150の処理、続く、アルデヒド又はケトン151とのおよそ−78℃の温度でかつその後RTまで温める再度の反応によって調製され得る(工程a)。
【0057】
クロロアルキル化合物152は、ヒドロキシ−アルキル化合物100から、例えば、DCMのような溶媒中、ほぼ室温で、塩化チオニルで処理することによるOHのクロロ官能基への変換によって得られ得る(工程b)。NH−複素環103を、DMF、アセトニトリル又はDMSOのような溶媒中、約0℃〜溶媒の還流温度の間の温度で、炭酸セシウム、ナトリウム又はカリウムのような塩基で処理したクロロアルキル化合物152と反応させて、付加体153にする(工程d)。場合により、Hと異なるR
6及び/又はR
7を有する化合物153は、テトラヒドロフラン又は1,2−ジメトキシエタンのような溶媒中でのLDA又はHMDSのような塩基による水素に相当するR
6及びR
7を有する化合物153の処理、続く、モノアルキルハロゲン化物、α,ω−ジハロアルカン又は連続的に2つの異なるアルキルハロゲン化物の添加(反応は、好ましくは、−78℃〜室温で実施される)によって調製され得る。
【0058】
ハロアリール化合物153は、化合物4の例であり、工程c(スキーム1)に記載したようなSuzuki反応の好適な基質である。
【0059】
【化10】
【0060】
クロロプロピオン酸アニリド202(スキーム4)は、塩化クロロプロピオン酸200及びアニリン201から、DCMのような溶媒中、ピリジンのような塩基の存在下、好ましくはほぼ室温での反応によって調製され得る(工程a)。クロロプロピオン酸アニリド202は、好ましくは無溶媒で、例えば100〜150℃の高温で、AlCl
3で処理した場合に、ラクタム化合物203に閉環される(工程b)。ラクタム化合物203は、DMF又はTHFのような溶媒中、好ましくは0℃〜約80℃の間の温度範囲で、水素化ナトリウム又はナトリウム若しくはカリウムtert−ブトキシドのような塩基を使用し、続いて、式R
1−Y(式中、Yは、ハロゲン、トシラート又はメシラートである)のアルキル化剤の添加によって窒素でアルキル化され、N−アルキル化ラクタム204を与え得る(工程c)。N−アルキル化ラクタム204のハロゲン化は、例えば、DMFのような溶媒中、好ましくはほぼ室温で、N−ブロモ又はN−クロロスクシンイミドを使用することによって実施され、ハロラクタム化合物2(式中、Xは、それぞれ、臭素又は塩素に相当する)を与え得る(工程d)。
【0061】
また、本発明のある実施態様は、式(III)の化合物の存在下での式(II)の化合物の反応を含む、上に定義されるような式(I)の化合物を調製するためのプロセスである;
【化11】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
9、R
10、R
11及びAは、上に定義されるとおりであり、R
101及びR
102は、アルキル及びシクロアルキルから独立して選択されるか、又はR
101及びR
102は、これらが連結しているホウ素原子と一緒になって、ボロランを形成し、そして、Xは、ハロゲン又はトリフラートである)。
【0062】
特に、ジメチルスルホキシド、トルエン、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒(場合により水と共に)、特定するとエタノール又はDMF中、トリ−o−トリルホスフィン/酢酸パラジウム(II)、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド又はジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)などの触媒、特定するとテトラキス−(トリフェニルホスフィン)−パラジウム又はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドの存在下、水性又は非水性リン酸カリウム、炭酸ナトリウム又はカリウムなどの塩基、特定すると水性炭酸ナトリウムの存在下、アルゴン又は窒素などの不活性雰囲気下、好ましくはRT〜還流、特定するとRT〜130℃の間の温度範囲での、プロセスである。
【0063】
また、本発明の目的の1つは、治療活性物質としての使用のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0064】
同様に、本発明の目的の1つは、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物と治療上不活性な担体とを含む、医薬組成物である。
【0065】
本発明はまた、慢性腎疾患、鬱血性心不全、高血圧、原発性アルドステロン症及びクッシング症候群の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用に関する。
【0066】
本発明はまた、慢性腎疾患の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用に関する。
【0067】
本発明はまた、鬱血性心不全の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用に関する。
【0068】
本発明はまた、高血圧の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用に関する。
【0069】
本発明はまた、原発性アルドステロン症の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用に関する。
【0070】
本発明の特定の実施態様は、慢性腎疾患、鬱血性心不全、高血圧、原発性アルドステロン症及びクッシング症候群の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0071】
また、本発明の特定の実施態様は、慢性腎疾患の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0072】
また、本発明の特定の実施態様は、鬱血性心不全の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0073】
また、本発明の特定の実施態様は、高血圧の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0074】
また、本発明の特定の実施態様は、原発性アルドステロン症の治療又は予防のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物である。
【0075】
本発明はまた、慢性腎疾患、鬱血性心不全、高血圧、原発性アルドステロン症及びクッシング症候群の治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用に関する。
【0076】
また、本発明のある実施態様は、慢性腎疾患の治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用である。
【0077】
また、本発明のある実施態様は、鬱血性心不全の治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用である。
【0078】
また、本発明のある実施態様は、高血圧の治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用である。
【0079】
また、本発明のある実施態様は、原発性アルドステロン症の治療又は予防のための医薬の調製のための、本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物の使用である。
【0080】
また、本発明の目的の1つは、慢性腎疾患、鬱血性心不全、高血圧、原発性アルドステロン症及びクッシング症候群の治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物を投与することを含む方法である。
【0081】
また、本発明のある実施態様は、慢性腎疾患の治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物を投与することを含む方法である。
【0082】
また、本発明のある実施態様は、鬱血性心不全の治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物を投与することを含む方法である。
【0083】
また、本発明のある実施態様は、高血圧の治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物を投与することを含む方法である。
【0084】
また、本発明のある実施態様は、原発性アルドステロン症の治療又は予防のための方法であって、有効量の本明細書に記載されるような式(I)に係る化合物を投与することを含む方法である。
【0085】
本発明の別の実施態様は、記載されるプロセスのいずれか1つに従って製造される、本明細書に記載されるような式(I)の化合物である。
【0086】
アッセイ手順
本明細書において、本発明者らは、CYP11ファミリーの酵素を異所的に発現する(一過性に又は安定的に)宿主細胞としてのG−402細胞株の使用を特定した。具体的には、本発明者らは、ヒトCYP11B1、ヒトCYP11B2、ヒトCYP11A1、カニクイザルCYP11B1又はカニクイザルCYP11B2酵素活性を異所的に発現する安定なG−402細胞を開発した。重要なことに、特定した細胞株G−402は、CYP11ファミリーの活性に重要な補因子(アドレノドキシン及びアドレノドキシン還元酵素)を発現し、CYP11ファミリー関連の酵素活性(H295R細胞と比較して)はこれらの細胞で検出されなかった。従って、G−402細胞株は、CYP11ファミリー由来の酵素の異所的発現の宿主細胞として独自に適する。
【0087】
G−402細胞は、ATCC(CRL−1440)から得られることができ、これは腎平滑筋芽腫由来のものであった。
【0088】
発現プラスミドは、好適なプロモーター(CMV−プロモーター)及び好適な耐性マーカー(ネオマイシン)の制御下にあるヒト/カニクイザルCYP11B1又はCYP11B2のいずれかのORFを含有する。標準的な技術を用いて、発現プラスミドをG−402細胞にトランスフェクトし、次に、これらの細胞において所与の耐性マーカーを発現するものを選択する。次に、11−デオキシコルチコステロン(Cyp11B2)又は11−デオキシコルチゾール(Cyp11B1)を基質として使用して、所望の酵素活性を示す個々の細胞クローンを選択し及びアッセイする。
【0089】
CYP11構築物を発現するG−402細胞を上述したように構築し、これを、10%FCS及び400μg/ml G418(ジェネティシン)を含有するMcCoy's 5a改変培地(ATCC Catalog No.30-2007)中、5%CO
2/95%大気の雰囲気下、37℃で維持した。細胞酵素アッセイを、2.5%活性炭で処理したFCS及び適切な濃度の基質(0.3〜10uM 11−デオキシコルチコステロン、11−デオキシコルチゾール又はコルチコステロン)を含有するDMEM/F12培地中で実施した。酵素活性をアッセイするために、細胞を96ウェルプレート上にプレーティングし、16時間インキュベートした。次に、上清のアリコートを移し、予想される生成物(CYP11B2の場合アルドステロン;CYP11B1の場合コルチゾール)の濃度を分析した。これらのステロイドの濃度は、アルドステロン又はコルチゾールのいずれかを分析するCisBio社のHTRFアッセイを使用して決定され得る。
【0090】
生成したステロイドの放出の阻害は、細胞酵素アッセイ中に加えられた試験化合物による各酵素の阻害の指標として使用され得る。化合物による酵素活性の用量依存的阻害は、加えられた阻害薬の濃度(x軸)と測定されたステロイド/生成物レベル(y軸)をプロットすることによって計算する。次に、最小二乗法を使用して、以下の4パラメーターシグモイド関数(Morgan-Mercer-Flodin(MMF)モデル)を生データ点にフィッティングすることによって阻害を計算する:
【数1】
[式中、Aは、最大y値であり、Bは、XLFitを使用して決定されたEC50因子であり、Cは、最少y値であり、そして、Dは、傾斜値である]。
【0091】
最大A値は、阻害薬の非存在下で生成されたステロイドの量に対応し、C値は、酵素が完全に阻害されたときに検出されたステロイドの量に対応する。
【0092】
本明細書において請求される化合物のEC50値は、記載したG402ベースアッセイ系を用いて試験した。Cyp11B2酵素活性は、1μMデオキシコルチコステロン及び可変量の阻害薬の存在下で試験し;Cyp11B1酵素活性は、1μMデオキシコルチゾールン及び可変量の阻害薬の存在下で試験した。
【0093】
【表1】
【0094】
本明細書に記載されるような式(I)の化合物及びその薬学的に許容し得る塩又はエステルは、0.000001uM〜1000uMの間のEC
50(CYP11B2)値を有し、特定の化合物は、0.00005uM〜500uM間のEC
50(CYP11B2)値を有し、さらなる特定の化合物は、0.0005uM〜50uMの間のEC
50(CYP11B2)値を有し、より特定の化合物は、0.0005uM〜5uMの間のEC
50(CYP11B2)値を有する。これらの結果は、記載した酵素アッセイを使用することによって得られた。
【0095】
式(I)の化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、医薬として(例えば、医薬製剤の形態で)使用され得る。医薬製剤は、経口(例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の剤形で)、鼻内(例えば、鼻内スプレーの剤形で)又は直腸内(例えば、坐剤の剤形で)投与など、内服的に投与され得る。しかしながら、投与はまた、筋肉内又は静脈内(例えば、注射剤の剤形で)など、非経口的に達成され得る。
【0096】
式(I)の化合物及びその薬学的に許容し得る塩は、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤の製造のため、薬学的に不活性な無機又は有機補助剤と共に加工され得る。乳糖、トウモロコシデンプン又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などを、例えば、錠剤、糖衣錠及び硬ゼラチンカプセル剤のためのそのような補助剤として使用することができる。
【0097】
軟ゼラチンカプセル剤に好適な補助剤は、例えば、植物油、ロウ、脂肪、半固体物質及び液体ポリオールなどである。
【0098】
液剤及びシロップ剤の製造に好適な補助剤は、例えば、水、ポリオール、ショ糖、転化糖、グルコースなどである。
【0099】
注射用液剤に好適な補助剤は、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などである。
【0100】
坐剤に好適な補助剤は、例えば、天然又は硬化油、ロウ、脂肪、半固体又は液体ポリオールなどである。
【0101】
さらに、医薬製剤は、保存剤、可溶化剤、増粘性物質、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、浸透圧を変動させるための塩、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含有することができる。これらはまた、さらに他の治療有用物質を含有することができる。
【0102】
用量は、広い範囲内で変えることができ、当然それぞれの特定の症例における個別の要求に適合させる。一般に、経口投与の場合には、好ましくは、1〜3回の個々の用量(例えば、同量からなり得る)に分割した、体重1kgあたり約0.1mg〜20mg、好ましくは、体重1kgあたり約0.5mg〜4mgの1日用量(例えば、一人あたり約300mg)が適切であろう。しかしながら、本明細書においての上限値は、必要であれば、これを超えてよいことは明らかであろう。
【0103】
本発明によれば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩及びエステルは、アルドステロン媒介疾患の治療又は予防のために使用され得る。
【0104】
本明細書の式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩及びエステルは、CYP11B1の可変的阻害作用(variable inhibition)も示す。これらの化合物は、CYP11B2の可変的阻害作用と組み合わせてCYP11B1の阻害のために使用され得る。そのような化合物は、過剰なコルチゾール産生/レベル、又は過剰なコルチゾールレベルとアルドステロンレベルの両方を示す病態(例えば、クッシング症候群、熱傷患者、鬱病、心的外傷後ストレス障害、慢性ストレス、副腎皮質刺激ホルモン分泌腺腫、クッシング病(Morbus Cushing))の治療又は予防のために使用され得る。
【0105】
本発明によれば、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩及びエステルは、心血管疾患(高血圧及び心不全を含む)、腎疾患、肝疾患、血管疾患、炎症性疾患、疼痛、網膜症、神経障害(末梢神経障害など)、異常インスリン症、浮腫、内皮機能不全、圧受容器機能不全;線維症、鬱病などの治療又は予防のために使用され得る。
【0106】
心血管疾患は、鬱血性心不全、冠動脈性心疾患、不整脈、動脈細動、心臓病変、駆出率の低下、拡張期及び収縮期心不全、冠動脈の線維素様壊死、心不全、肥大型心筋症、動脈コンプライアンスの低下、拡張期充満障害、虚血、左室肥大、心筋及び血管線維症、心筋梗塞、心筋壊死病斑、心筋壊死病斑、心臓不整脈、突然心臓死の予防、再狭窄、卒中、血管損傷を含む。
【0107】
腎疾患は、急性及び慢性腎不全、末期の腎疾患、クレアチニンクリアランスの低下、糸球体濾過率の低下、糖尿病性腎症、著しい細胞過形成を伴う又は伴わない網状メサンギウム基質の拡大、糸球体毛細血管の局所血栓形成、全線維素様壊死、糸球体硬化、虚血性病変、悪性腎硬化、例えば、虚血性退縮、微量アルブミン尿、腎症、タンパク尿、腎血流量の減少、腎臓動脈疾患、毛細血管内細胞(内皮及びメサンギウム細胞)及び/又は毛細血管外細胞(半月体)の膨張及び増殖を含む。
【0108】
肝疾患は、限定されないが、肝硬変、肝性腹水、肝鬱血、非アルコール性脂肪性肝炎などを含む。
【0109】
血管疾患は、限定されないが、血栓性血管疾患(壁在線維素様壊死、赤血球の溢出及び破砕並びに管腔及び/又は壁在血栓症など)、増殖性動脈症(粘液性細胞外基質によって囲まれた筋内膜細胞(myointimal cell)の腫大及び結節性肥厚など)、アテローム性動脈硬化、血管コンプライアンスの減少(剛性、心室コンプライアンスの低下及び血管コンプライアンスの低下など)、内皮機能不全などを含む。
【0110】
炎症性疾患は、限定されないが、関節炎(例えば、骨関節炎)、炎症性気道疾患(例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD))などを含む。
【0111】
疼痛は、限定されないが、急性疼痛、慢性疼痛(例えば、関節痛)などを含む。
【0112】
浮腫は、限定されないが、末梢組織浮腫、肝鬱血、脾臓鬱血、肝性腹水、呼吸器又は肺鬱血などを含む。
【0113】
異常インスリン症は、限定されないが、インスリン抵抗性、I型糖尿病、II型糖尿病、グルコース感受性、前糖尿病状態、X症候群などを含む。
【0114】
線維症は、限定されないが、心筋及び腎内線維症、腎間質線維症及び肝線維症を含む。
【0115】
さらに、本明細書に記載されるような式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩及びエステルはまた、高血圧、心不全(特に、心筋梗塞後心不全)、左室肥大及び卒中からなる群より選択される心血管疾患の治療又は予防のために使用され得る。
【0116】
別の実施態様において、心血管疾患は高血圧である。
【0117】
別の実施態様において、心血管疾患は心不全である。
【0118】
別の実施態様において、心血管疾患は左室肥大である。
【0119】
別の実施態様において、心血管疾患は卒中である。
【0120】
別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩及びエステルは、腎疾患の治療又は予防のために使用され得る。
【0121】
別の実施態様において、腎疾患は腎症である。
【0122】
別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩及びエステルは、II型糖尿病の治療又は予防のために使用され得る。
【0123】
別の実施態様において、式(I)の化合物又はその薬学的に許容し得る塩及びエステルは、I型糖尿病の治療又は予防のために使用され得る。
【0124】
本発明は、実施例によって以降説明されるが、これらは限定性を持つものではない。
【0125】
調製例では、エナンチオマーの混合物として得られるが、純粋なエナンチオマーは、本明細書に記載される方法によって又は当業者に公知の方法、例えばキラルクロマトグラフィー若しくは結晶化によって分離され得る。
【0126】
実施例
特に指定のない限り、全ての実施例及び中間体をアルゴン雰囲気下で調製した。
【0127】
中間体A−1
1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化12】
【0128】
[A]6−ブロモ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化13】
0℃に冷却したDMF(100mL)中の6−ブロモ−3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−オン(5g、22.1mmol)の溶液に、カリウムtert−ブトキシド(4.96g、44.2mmol)を少しずつ加え、反応混合物を0℃で15分間撹拌した。次に、ヨウ化メチル(4.08g、28.8mmol)を加え、反応混合物を室温まで放温し、撹拌を一晩続けた。さらなるMeI(1.25g、8.86mmol)を加え、反応の完了まで反応混合物を40℃まで加熱した。混合物をEtOAcで希釈し、1M HCl 100mLに注ぎ、水相をEtOAc(2×200mL)で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した。残渣を、0〜30%EtOAc−ヘプタン勾配で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(4.23g、80%)をオフホワイトの固体として与えた。MS:240.0、242.1(M+H
+)。
【0129】
[B]1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化14】
フラスコに、6−ブロモ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(3g、12.5mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(3.81g、15.0mmol)、酢酸カリウム(3.68g、37.5mmol)及びジオキサン(48mL)を投入した。混合物をArでパージし、次に、ジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン)パラジウム(II)ジクロロメタン錯体(1:1)[PdCl
2(DPPF)−CH
2Cl
2付加体](457mg、0.625mmol)を加え、得られた混合物を80℃で一晩加熱した。反応混合物をEtOAcで希釈し、ダイカライト(Dicalite)に通して濾過し、EtOAc(2×150mL)で洗浄した。得られた濾液をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した。残渣を、0〜40%EtOAc−ヘプタン勾配で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(2.63g、73%)をオフホワイトの固体として与えた。MS:288.0(M+H
+)。
【0130】
中間体A−2
1−(5−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−6−クロロ−1H−ピリジン−2−オン
【化15】
【0131】
[A]3−ブロモ−5−クロロメチル−ピリジン
【化16】
DCM(5mL)中の(5−ブロモピリジン−3−イル)メタノール(1g、5.32mmol)の溶液に、塩化チオニル(2.53g、21.3mmol)を滴下し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物をDCMで希釈し、20%NaOH水溶液(20mL)に注ぎ、得られた溶液をDCM(2×25mL)で抽出した。合わせた有機物をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固して、標記化合物(1.02g、93%)を明褐色の固体として与えた。MS:208.3(M+H
+)。
【0132】
[B]2−((5−ブロモピリジン−3−イル)メトキシ)−6−クロロピリジン及び1−(5−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−6−クロロ−1H−ピリジン−2−オン
【化17】
DMF(1mL)中の3−ブロモ−5−クロロメチル−ピリジン(0.05g、0.242mmol)の溶液に、6−クロロ−1H−ピリジン−2−オン(0.031g、0.242mmol)及びK
2CO
3(0.067g、0.484mmol)を加え、反応混合物を室温で6時間撹拌した。混合物をEtOAcで希釈し、H
2O(3mL)に注ぎ、水層をEtOAc(2×10mL)で抽出した。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を、0〜100%EtOAc−ヘプタン勾配で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、2−((5−ブロモピリジン−3−イル)メトキシ)−6−クロロピリジン(0.05g、69%)MS:301.3(M+H
+)を無色の液体として;及び1−(5−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−6−クロロ−1H−ピリジン−2−オン(0.011g、15%)MS:301.3(M+H
+)を黄色の固体として与えた。
【0133】
中間体A−3
6−(5−クロロメチル−ピリジン−3−イル)−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化18】
【0134】
[A]6−(5−ヒドロキシメチル−ピリジン−3−イル)−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化19】
密閉管に、(5−ブロモ−ピリジン−3−イル)−メタノール(1g、5.32mmol)、1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(中間体A−1)(1.6g、5.58mmol)及びDMF(15mL)を投入した。反応混合物をアルゴンでパージした後、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.373g、0.532mmol)及び1M Na
2CO
3水溶液(13.3mL、13.3mmol)を加え、反応物を120℃で1.5時間加熱した。混合物をダイカライトで濾過し、EtOAcで洗浄し、得られた濾液を蒸発乾固した。残渣を、3〜10%MeOH−DCM勾配で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(1.392g、97.5%)を褐色の固体として与えた。MS:269.5(M+H
+)。
【0135】
[B]6−(5−クロロメチル−ピリジン−3−イル)−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化20】
DCM(10mL)中の6−(5−ヒドロキシメチル−ピリジン−3−イル)−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(1.39g、5.19mmol)の溶液に、塩化チオニル(2.47g、20.8mmol)をゆっくり滴下し、反応混合物を室温で3.5時間撹拌した。混合物をDCMで希釈し、氷浴で0℃に冷却した20%NaOH水溶液(20mL)に注ぎ、得られた溶液をDCM(2×50mL)で抽出した。合わせた有機物を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した。残渣をEt
2Oでトリチュレートし、固体沈殿物を濾別し、さらに乾燥させて、標記化合物(1.37g、90%)を黄色の固体として与えた。MS:287.4(M+H
+)。
【0136】
表1に列挙した以下の中間体を、3−ブロモ−5−クロロメチル−ピリジン(中間体A−2[A])から、中間体A−2[B]の調製について記載した手順と同様にして、適切な反応パートナーを使用し調製した:
【0137】
【表2】
【0138】
中間体A−9
7−フルオロ−1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化21】
【0139】
[A]3−クロロ−N−(3−フルオロ−フェニル)−プロピオンアミド
【化22】
DCM(100mL)中の3−フルオロアニリン(10mL、104.02mmol)の溶液に、ピリジン(21mL、260.2mmol)及び3−クロロプロピオニルクロリド(12mL、124.4mmol)を加えた。出発物質が消失したことがLC−MS分析によって示されるまで、反応混合物を室温で3時間撹拌した。次に、反応混合物をH
2Oで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮して、標記化合物を固体として与えた。これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0140】
[B]7−フルオロ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化23】
磁気撹拌子を備えた火炎乾燥させた50mLのフラスコに、3−クロロ−N−(3−フルオロ−フェニル)−プロピオンアミド(10g、49.6mmol)及びAlCl
3(23.1g、173.6mmol)を投入した。予め加熱しておいた油浴で、反応が完了したことをLC−MS分析が示すまで、フラスコを120〜125℃で2時間加熱した。室温まで冷ました後、混合物を氷水でゆっくり処理した。EtOAcで抽出した後、合わせた有機層を水及びブラインで順に洗浄した。有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、5.3:1の比率の2つの位置異性体生成物(7−フルオロ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン及び5−フルオロ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン)の粗混合物として白色の固体(7.63g)を与えた。次に、この混合物をEtOAc(70mL)中で30分間還流した後、室温まで冷まし、約35mLまで濃縮した。沈殿した固体(5.83g)を真空濾過によって回収し、95.8%まで濃縮された所望の7−フルオロ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オンを与えた。上記の再結晶化手順を4回以上繰り返した後、標記化合物4.12gを白色の固体として>99.5%純度で得た。
【0141】
[C]7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化24】
DMF(200mL)中の7−フルオロ−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(16.5g、0.1mol)の氷冷溶液に、カリウムtert−ブトキシド(22.4g、0.2mol)を2回に分けて加えた。反応混合物を0℃で30分間撹拌した後、MeI(25.4g、0.18mol)を加えた。添加後、反応混合物を室温までゆっくり放温し、室温で一晩撹拌した。反応混合物をEtOAc(500mL)で希釈し、次に、1N HCl水溶液200mLに注いだ。EtOAc(200mL、3×)で抽出した後、合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、粗標記化合物を油状物(16.0g、収率89%)として与えた。これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0142】
[D]6−ブロモ−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化25】
DMF(200mL)中の7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(16.0g、89.4mmol)の氷冷溶液に、NBS(16.0g、89.4mmol)を加えた。添加後、反応混合物を室温まで温め、3時間撹拌した。LC−MS分析が反応の完了を示した後、混合物をEtOAc(500mL)で希釈し、水(500mL)に注いだ。次に、水層をEtOAc(200mL、3×)で抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮して、粗標記化合物を油状物(18.0g、収率78%)として与えた。これをさらに精製することなく次の工程に使用した。
【0143】
[E]7−フルオロ−1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化26】
脱水ジオキサン(400mL)中の6−ブロモ−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(18.0g、69.8mmol)の混合物に、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’−オクタメチル−2,2’−ビ(1,3,2−ジオキサボロラン)(20.0g、83.8mmol)、酢酸カリウム(20.5g、209.4mmol)及びジクロロ[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]パラジウム(II)ジクロロメタン錯体(1:1)[PdCl
2(DPPF)−CH
2Cl
2付加体](2.55g、3.49mmol)を加えた。アルゴン保護下で、反応混合物を85℃で一晩加熱した。EtOAcで希釈した後、混合物をセライトパッドに通して濾過し、フィルターケーキを追加のEtOAcで数回洗浄した。次に、合わせた濾液をブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー分離(ヘキサン中の0〜30%EtOAc)は、粗標記化合物を白色の粘性物質として与えた。ヘキサンによる数回のトリチュレートは、粗生成物を明褐色の固体(10.0g、収率47%)として与えた。MS:306.1(M+H
+)。
【0144】
中間体A−10
6−(5−クロロメチル−ピリジン−3−イル)−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化27】
中間体A−3の調製について記載した手順と同様にして、(5−ブロモ−ピリジン−3−イル)−メタノールを、7−フルオロ−1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(中間体A−9)と反応させて、7−フルオロ−6−(5−ヒドロキシメチル−ピリジン−3−イル)−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オンを与え;次に、塩化チオニルによるさらなる処理は、標記化合物を黄色の固体として与えた。MS:305.5(M+H
+)。
【0145】
中間体A−11
6−(5−クロロメチル−4−メチル−ピリジン−3−イル)−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化28】
中間体A−3の調製について記載した手順と同様にして、(5−ブロモ−4−メチル−ピリジン−3−イル)−メタノールを、7−フルオロ−1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(中間体A−9)と反応させて、7−フルオロ−6−(5−ヒドロキシメチル−4−メチル−ピリジン−3−イル)−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オンを与え;次に、塩化チオニルによるさらなる処理は、標記化合物を明褐色の固体として与えた。MS:319.4(M+H
+)。
【0146】
実施例1
1−メチル−6−[5−(2−オキソ−ベンゾチアゾール−3−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化29】
密閉管に、3−(5−ブロモ−ピリジン−3−イルメチル)−3H−ベンゾチアゾール−2−オン(中間体A−4)(0.04g、0.125mmol)、1−メチル−6−(4,4,5,5−テトラメチル−[1,3,2]ジオキサボロラン−2−イル)−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(中間体A−1)(0.039g、0.137mmol)及びDMF(1mL)を投入した。反応混合物をアルゴンでパージした後、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(0.009g、0.012mmol)及び1M Na
2CO
3水溶液(0.31mL、0.31mmol)を加え、反応物を100℃で1時間加熱した。反応混合物をEtOAcで希釈し、H
2O(5mL)に注ぎ、EtOAc(2×10mL)で洗浄した。得られた濾液をブラインで洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発乾固した。残渣を、0〜100%EtOAc−ヘプタン勾配で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物(0.026g、52%)を明赤色の固体として与えた。MS:402.5(M+H
+)。
【0147】
実施例2
6−[5−(5−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン
【化30】
DMF(1mL)中の6−(5−クロロメチル−ピリジン−3−イル)−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(中間体A−3[B])(0.05g、0.147mmol)の溶液に、5−フルオロ−1H−ピリジン−2−オン(0.019g、0.174mmol)及びK
2CO
3(0.048g、0.349mmol)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌した。混合物を蒸発乾固し、残渣を0〜5%MeOH−DCM勾配で溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、6−[5−(5−フルオロ−ピリジン−2−イルオキシメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(0.016g、25%)MS:364.5(M+H
+)を無色の固体として;及び6−[5−(5−フルオロ−2−オキソ−2H−ピリジン−1−イルメチル)−ピリジン−3−イル]−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(0.045g、71%)MS:364.5(M+H
+)を無色の固体として与えた。
【0148】
表2に列挙した以下の実施例を、実施例1又は実施例2の調製について記載した手順と同様にして、適切な出発物質を使用し調製した:
【0149】
【表3】
【0150】
表3に列挙した以下の実施例を、実施例2の調製について記載した手順と同様にして、6−(5−クロロメチル−ピリジン−3−イル)−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(中間体A−10)と以下に列挙した反応パートナーとを反応させることによって調製した:
【0151】
【表4】
【0152】
表4に列挙した以下の実施例を、実施例2の調製について記載した手順と同様にして、6−(5−クロロメチル−4−メチル−ピリジン−3−イル)−7−フルオロ−1−メチル−3,4−ジヒドロ−1H−キノリン−2−オン(中間体A−11)と以下に列挙した反応パートナーとを反応させることによって調製した:
【0153】
【表5】
【0154】
実施例A
式(I)の化合物は、以下の組成の錠剤の製造のための活性成分として、それ自体公知の様式で使用され得る:
1錠当たり
活性成分 200mg
微結晶セルロース 155mg
トウモロコシデンプン 25mg
タルク 25mg
ヒドロキシプロピルメチルセルロース
20mg
425mg
【0155】
実施例B
式(I)の化合物は、以下の組成のカプセル剤の製造のための活性成分として、それ自体公知の様式で使用され得る:
1カプセル当たり
活性成分 100.0mg
トウモロコシデンプン 20.0mg
乳糖 95.0mg
タルク 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム
0.5mg
220.0mg