特許第6117973号(P6117973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117973医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットおよび溶液漏出の検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6117973
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットおよび溶液漏出の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/20 20060101AFI20170410BHJP
   A61M 5/14 20060101ALI20170410BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G01M3/20 N
   A61M5/14 500
   A61J1/05 353
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-101130(P2016-101130)
(22)【出願日】2016年5月20日
【審査請求日】2016年12月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100101085
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 健至
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100185258
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 宏理
(72)【発明者】
【氏名】川島 芳之
(72)【発明者】
【氏名】川生 剛
(72)【発明者】
【氏名】黒田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】北上 亮二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 伊万里
(72)【発明者】
【氏名】川井 千春
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−306113(JP,A)
【文献】 特開平11−190678(JP,A)
【文献】 特開2004−354124(JP,A)
【文献】 特開2015−171489(JP,A)
【文献】 特開2003−175101(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/003960(WO,A1)
【文献】 特開2004−028921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/20
A61J 1/05
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液漏出検出用偽薬組成物に用いる可食性の色素化合物を封入して溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能に保持したバイアルと、検査箇所の拭き取り具と、検査箇所を湿潤させるための精製水と、拭き取り具の密閉収納容器とを含む、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キット。
【請求項2】
前記検査箇所の拭き取り具が、ガーゼタンポン、綿棒、綿球、不織布、ワイプ、サンプリングシート又はクーポンであることを特徴とする、請求項に記載の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キット。
【請求項3】
前記医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットのバイアルは複数本のバイアルからなり、互いのバイアルにはそれぞれ異なる種類の可食性の色素化合物が封入されていることを特徴とする、請求項または請求項に記載の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キット。
【請求項4】
可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物の溶液を輸液中に投入し、投与状態における輸液バッグ及び輸液用配管、シリンジおよび接続部の周囲を、精製水で湿潤させた拭き取り具で拭き取った後、該拭き取り具から、色素化合物の成分が検知されるか否かを確認する、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法。
【請求項5】
前記色素化合物の検出が、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC−MS/MS)、フーリエ変換型赤外分光高度法(FTIR)、HPLC、分光光度法により行われることを特徴とする、請求項に記載の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法。
【請求項6】
複数種類の、可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物をそれぞれ異なる箇所の輸液中に投入し、検出された色素化合物の組成から当該色素化合物の投入箇所と関連付けて溶液漏出箇所を特定することを特徴とする、請求項または請求項に記載の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物、溶液漏出検出用キットおよび溶液漏出の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、癌患者の治療方法の一つとして、がん治療用医薬の投与による治療法が採用されている。そして、がん治療用医薬としては、放射性医薬品や化学療法剤などの抗がん剤が汎用されている。これらのがん治療用医薬は、放射性同位体や毒性を有しているものが多く、治療対象となる患者以外の一般人に対しては、健康上の悪影響を生じさせる危険性を有している。そのため、がん治療用医薬の調剤や投与に従事する、医師、看護師、薬剤師、在宅で自家投与を行う患者及びその家族は、使用箇所やその周辺環境に、がん治療用医薬が漏出し、多くの人に曝露される事態が生じることの無いよう、がん治療用医薬の取り扱いにおいて特に慎重を期す必要がある。また、近年では、難治療性疾患の治療において各種の遺伝子治療薬の投与が動物または人体を用いて試みられるようになっている。遺伝子治療薬は、遺伝子レベルで作用するため、がん治療用医薬と同様に、使用箇所やその周辺環境に漏出し、多くの人に曝露される事態が生じることの無いよう、その取り扱いにおいて特に慎重を期すことが求められている。
【0003】
上述した医薬は、通常、輸液と混合して調合された後、シリンジや輸液セットを用いて癌患者の静脈内に注射し投与される。がん治療では患者の生存を図ることが要求されるため、一般に、がん治療用医薬の使用量は多くなる。また、がん治療においては、治療効果を最大限に高めるよう、投与時間を長く設定し、有効な血中濃度を長時間維持して治療効果を高める治療方法が採用されるため、必要とされる輸液の量が多くなる。さらに、近年、がん治療効果をより高めるために複数の異なる種類のがん治療用医薬をそれぞれ輸液と混合し、それらを組み合わせて長期間にわたり投与する治療方法が採用されている。このように医薬品を複数の組み合わせて使用する場合には、各輸液を治療計画に則って順番に投与しなければならず、必要とされるがん治療用医薬の種類や、がん治療用医薬を混合した輸液の種類や投与量、およびそれらの組合せが、さらに多く複雑なものとなっている。そして、これに伴い、使用後の器具や患者からの排泄物に残留した医薬や医薬由来成分の量も増加し、廃棄処理の工程も増加している。
【0004】
このように、医薬の種類や組合せやその使用量、および、調剤時、調合時、投与時ならびに廃棄時の作業工程が増加し複雑になると、使用箇所やその周辺環境に医薬が漏出して多くの人に曝露されるリスクが高まっており、また、実際に、使用中の医薬が意図せず漏出し、多くの人に曝露されてしまう事象が数多く生じている。特に昨今、上述の医薬を扱う機会の多い医療従事者の職業被曝問題が、大きな社会問題となっている。これは医師が決定する治療計画の下で、薬剤師が行う調製、看護師が行う投与及び投与完了後の廃棄、患者の排泄物処理等、各プロセスで治療用医薬に対する適切な漏出対策が出来ていない事に起因して起こると考えられている。さらに、在宅がん患者の化学療法が行われるようになり、在宅医療における曝露予防対策の必要性も高まっている。
【0005】
そのため、漏出して人に曝露されることで健康上の悪影響を生じさせる危険性を有している各種疾患を治療するための医薬の、より効果的な漏出防止対策ならびに漏出予防対策を行うことが、強く要請されている。
【0006】
そこで、医療従事者、患者及び家族への危険性薬剤による被ばくを防止するため、医薬を投与するために用いるシリンジ、薬剤移送装置、輸液セットなどの各種医療器具の構造そのものを、なるべく閉鎖された系となるよう変更することで、治療用医薬品の漏出を防止する試みがなされている。しかしながら、着脱を要する部位から医薬がエアロゾルなどの微細粒子となって漏出することがあり、曝露対策は必ずしも十分なものとはいえない状態にあった。
【0007】
発明者らは、液の漏出がない簡便な工程でプライミングおよびバックプライミングができるとともに一体化した輸液セットとして使用することができる新たな輸液セットを提案している(特許文献1および特許文献2)。これらの輸液セットは、使用手順の誤りの発生が防止されており、また、輸液バッグ等を途中で外す必要がないため、エアロゾルなどの微細粒子は生じる現象は構造的に生じないが、全ての医療機関や在宅医療の現場において採用されているわけではない。そのため、医薬の漏出対策としては、構造的な対策以外に、医薬の漏出の有無を把握することが依然として重要である。加えて、習熟していない医療従事者や在宅医療患者がためらい刺しや接続間違いなどのミスをしたまま気付かずに使用し続けていることもあり得るので、適切な使用方法をとっていることを確認しながら習得することも対応することが望まれている。
【0008】
そこで、調剤、調合、投与ならびに廃棄の各作業工程において、実際に医薬の漏出が生じたか否かを測定して調査し、漏出が特定された作業工程ごとに漏出防止対策を施すという管理手法が提案され、現在、医療現場において、広く利用されている。
【0009】
具体的には、まず、治療に使用する、または、治療に使用した器具、器材ならびに床等の表面や、医師、看護師、薬剤師、患者ならびに家族の指等の皮膚を、ガーゼタンポン、綿棒、綿球、または、専用のワイプ、サンプリングシート、クーポンを用いてそれぞれ拭いた後、それらガーゼタンポン、綿棒、綿球、または、専用のワイプ、サンプリングシート、クーポンを検査用サンプルとして集める。次に、検査用サンプルに付着した医薬の量を検査機器によってそれぞれ測定し、医薬の漏出量を算出する。そして、実際に漏出が確認された部位が同定されたら、当該漏出部位の器具や作業工程を確認して新たな漏出防止の対策を施し、再度漏出の確認することを繰り返すというものである。
【0010】
しかし、患者の治療時に医薬の漏出による汚染が確認された場合には、当該汚染部位を徹底的に清拭するなどして洗浄し、一旦清浄な治療環境を用意する必要があり、治療を行いながら漏出の検証を続けることは治療の妨げにもなってしまうため、漏出の原因を直ぐに特定することが難しい状況となっていた。また、医薬漏出に関しては、抗がん剤(実薬)でのワイプテストは広く行われてきた。しかし、曝露が確認された後、対策手技導入後に効果判定を行うためのビフォー・アフター検証は、抗がん剤が高価格で汚染の危険性のあるハイリスク薬である事から、治療現場で行うことは避けられ、薬剤師による調製プロセスのみで行われている事が殆どであった。薬剤師は安全キャビネット内と言う限られた環境で調製作業のみに関わる事が多いが、看護師は患者を対象とする事やプライミング・バッグ交換・廃棄、と関わるプロセスが多い事等から、対策手技導入後にどれだけの効果があったかの検証・判定が事実上困難であった。また、ビフォー・アフター検査を行おうとすれば、環境リセット、ビフォー検査、環境リセット、アフター検査と合計4回、検査用溶媒を使用して徹底的に清拭する必要があるが、抗がん剤の拭き取り調査では過去からの汚染の蓄積も検出されてしまい、手技が正確に行われていることをシミュレーションする場合には、抗がん剤(実薬)で行うことは環境のリセットが難しい側面があるために、必ずしも適しているとはいえなかった。
【0011】
また、医療機関や在宅医療を行う患者は、各種医薬のサンプル検査が可能な機器を通常は有していないため、専門の検査機関に検査用サンプルの分析を依頼することになるが、検査サンプルの分解を防止するためには−20℃で保管し輸送するなど配慮する必要があり、コストが高くつくため、改善が求められていた。
【0012】
そして、拭き取り検査は、滅菌したガーゼタンポンまたは綿棒・綿球や、専用のワイプ、サンプリングシート、クーポンを、りん酸緩衝生理食塩水1mLまたはペプトン加生理食塩水1mLで湿らせ、検査対象の器具や器材等の表面を拭いた後、滅菌りん酸緩衝生理食塩水9mLまたは滅菌ペプトン加生理食塩水9mL入り試験管に入れて、撹拌均一化して試料検液とするのが従来の一般的手法であった。しかしながら、工程が煩雑であるとともに、漏れ出た医薬による二次汚染を防止しながら検査を実施するには経験を要し、改善が求められていた。また、りん酸緩衝生理食塩水やペプトン加生理食塩水が検査用溶媒としては不適な治療用医薬では、検査用溶媒の組成を変えなければならない。しかしながら、好適な検査用溶媒の中にはアルカリ性・酸性のものがあり、高価な医療機器等に付着した場合に故障の原因となる可能性があって、検査自体が難しくなる状況も生じており、改善が求められていた。
【0013】
さらに、近年頻用されているがん治療用医薬の併用療法において、組み合わせる治療用医薬に好適な検査用溶媒がそれぞれ異なる場合には、一回の検査では、それら異なる種類の治療用医薬を同時に検出することが出来ず、漏出の原因が正確に把握できない。そのため、検査用溶媒を変更し、さらに多くの漏出試験と検査を繰り返さなくてはならず、患者や治療現場への負担が大きく、この点についても改善が求められていた。
【0014】
医薬の実薬で漏出試験やその検証を行おうとすると、薬によっては非常に高価であること、臨床での治療時に同時に漏出試験を行うには別途患者からの同意書を要する場合があること、漏出した際の危険性が高い医薬を用いて漏出試験を行う場合には実際に漏出が生じると患者や試験担当者に危険がおよぶこと、漏出した際の危険性が高い医薬を用いて漏出試験をする場合に、多数の人が見ている中で行うと漏出した場合の危険性から緊張して普段と同様の作業が行い辛くなり、通常時の行動が正確に反映されにくくなることといった問題があった。そのため、これまでは、比較的安全な一部の抗がん剤を用いる投与パターンでしか漏出試験は行われておらず、それ以外の多種多様な医薬を用いた治療に対しては、十分な漏出試験やその結果に基づく対策が取られていたとはいえない状況にあり、改善が求められていた。
【0015】
また、検査が必要とされる放射性医薬品や化学療法剤などの医薬は、その種類が膨大であるが、検査会社により測定メニューが提供されるなどして容易に検出することが可能な医薬の種類は少ない。そのため、検出可能な医薬を用いる場合のみに検査と漏出対策がなされ、検出が難しい医薬を使用する工程は、漏出対策がなおざりになっている現状があり、改善が求められていた。さらには、検出可能な医薬は、漏出検査において漏出したとしてカウントされる頻度が高いため、それら頻回に検出される医薬のみに曝露対策を行う施設が続出し、頻回に漏出がカウントされる医薬が、治療においては有効であるにも関わらず、危険な医薬であるという誤った認識を持つ施設が増え、その結果として、その医薬の使用が避けられてしまい、患者にとって最適な治療法が適切に採用されにくくなる状況も生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第5774802号公報
【特許文献2】特許第5856718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明が解決しようとする課題は、癌治療において用いられる放射性医薬品や化学療法剤などの抗がん剤や、遺伝子治療に用いられる遺伝子治療薬など、漏出して人に曝露されることで健康上の悪影響を生じさせる危険性を有している各種疾患を治療するための医薬の、より効果的な医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの漏出防止対策ならびに漏出予防対策を図ることである。そして、本発明が解決しようとする課題は、それら漏出防止対策ならびに漏出予防対策において、漏出して人に曝露されることで健康上の悪影響を生じさせる危険性を有している各種疾患を治療するための医薬そのものを用いることのない、安全で低コストな、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からのからの溶液漏出検出手段及び溶液漏出検出方法を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、上記医薬による汚染が繰り返され除染が困難な場で、安全で低コストな、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からのからの溶液漏出検出手段及び溶液漏出検出方法を提供することである。さらに、本発明が解決しようとする課題は、複数の医薬を併用投与する場での溶液漏出部位の特定を、上記危険性を有している各種疾患を治療するための医薬を用いることなく、安全、低コストで、簡便に行う手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するための本発明の第1の手段は、可食性の色素化合物を溶液漏出検出用染料成分として含有することを特徴とする医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物である。
【0019】
上記の課題を解決するための本発明の第2の手段は、前記色素化合物が、水溶性の蛍光色素化合物であることを特徴とする、本発明の第1の手段の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物である。
【0020】
上記の課題を解決するための本発明の第3の手段は、前記色素化合物が、タール系色素、イリドイド系色素、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、キノイド系色素またはベタライン系色素であることを特徴とする、本発明の第1または第2に記載の手段の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物である。
【0021】
上記の課題を解決するための本発明の第4の手段は、前記色素化合物が、赤色2号、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色213号、赤色214号、赤色230号、赤色231号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、緑色3号、緑色204号、青色2号、ハイメロンP−2、ハイブルーAT、ハイメロンP−2、アナトール、クロシンG150、クロシンL、βカロテン、アンナットーWA−20、ハイレッドG150、ハイレッドRA200、ハイレッドV80、アピゲニニジン、シアニジン、デルフィニジン、フィセチニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ロビネチニジン、トリセチニジン、ペツニジン、カプサンチン、エピガロカテキンガレート、サフラワーY1500、クルクミン、スルフレチン、ミリセチン、クェルセチン、コチニール、ハイレッドS、ハイレッドBL、インドシアニングリーンまたはジンゲロールの可食性成分であることを特徴とする、本発明の第1〜第3のいずれか1に記載の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物である。
【0022】
上記の課題を解決するための本発明の第5の手段は、溶液漏出検出用偽薬組成物に用いる可食性の色素化合物を封入して溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能に保持したバイアルと、検査箇所の拭き取り具と、検査箇所を湿潤させるための精製水と、拭き取り具の密閉収納容器とを含む、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットである。
【0023】
上記の課題を解決するための本発明の第6の手段は、前記検査箇所の拭き取り具が、ガーゼタンポン、綿棒、綿球、不織布、ワイプ、サンプリングシート又はクーポンであることを特徴とする、本発明の第5の手段のの医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットである。
【0024】
上記の課題を解決するための本発明の第7の手段は、前記医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットのバイアルは複数本のバイアルからなり、互いのバイアルにはそれぞれ異なる種類の可食性の色素化合物が封入されていることを特徴とする、本発明の第5または第6に記載の手段の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットである。
【0025】
上記の課題を解決するための本発明の第8の手段は、可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物の溶液を輸液中に投入し、投与状態での輸液バッグ、輸液用配管、シリンジおよび接続部の周囲における漏出の有無を視認可能とする、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法である。
【0026】
上記の課題を解決するための本発明の第9の手段は、可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物の溶液を輸液中に投入し、投与状態における輸液パック及び輸液用配管、シリンジおよび接続部の周囲を、精製水で湿潤させた拭き取り具で拭き取った後、該拭き取り具から、色素化合物の成分が検知されるか否かを確認する、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法である。
【0027】
上記の課題を解決するための本発明の第10の手段は、前記色素化合物の検出が、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC−MS/MS)、フーリエ変換型赤外分光高度法(FTIR)、HPLC、分光光度法により行われることを特徴とする、本発明の第9の手段の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法である。
【0028】
上記の課題を解決するための本発明の第11の手段は、複数種類の、可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物をそれぞれ異なる箇所の輸液中に投入し、検出された色素化合物の組成から当該色素化合物の投入箇所と関連付けて溶液漏出箇所を特定することを特徴とする、本発明の第9または第10に記載の手段の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の手段によって、放射性医薬品や化学療法剤などの抗がん剤や遺伝子治療薬などの、漏出して人に曝露されることで健康上の悪影響を生じさせる危険性を有し、かつ高価な、各種疾患治療用の医薬を用いた、より効果的、かつ、確実な、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの漏出防止対策ならびに漏出予防対策を策定することが可能となる。
【0030】
そして、本発明の手段によって、上記危険性を有し、かつ高価な、各種疾患治療用の医薬の実薬を用いることなく、溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物を、溶液漏出検出用偽薬組成物、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キット、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法に用いたものとすることで、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出を安全、低コスト、かつ、簡便に実施することが可能となる。
【0031】
さらに、本発明の手段によって、複数種類の、可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物をそれぞれ異なる箇所の輸液中に投入し、検出された色素化合物の組成から当該色素化合物の投入箇所と関連付けて溶液漏出箇所を特定することが可能となるため、医薬の併用療法など、複数の医薬を順次、輸液セットなどを用いて投与する際に生じる複数ヶ所の汚染についても、具体的な汚染箇所を、安全、安価、かつ簡便な手法にて、特定することができ、より効果的、かつ、確実な、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの漏出防止対策ならびに漏出予防対策を策定することが可能となる。
【0032】
また、本発明の手段によって、投与手順の訓練や漏出例の検証作業などを、危険性の高い高価な医薬の実薬を用いずとも、安全、安価な可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物を用いて実施することが可能となり、過度の緊張からバイアスのかかった結果を得ることなく、確実な手技を取得、検証することが可能となる。
【0033】
またさらに、本発明の手段によって、医療従事者のみならず、在宅医療における患者自身もしくは家族のような、医療に専門に従事していないものが医薬の投与を行うにあたり、危険性を有し、かつ高価な各種疾患治療用の実薬を用いて、汚染の危険性に怯えることなく、安全、安価な可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物を用いて事前に十分に投与手技を練習することが可能となり、さらに汚染の可能性についても容易に確認することが可能となり、より確実な手技の習得が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明を実施するための形態について、以下に説明する。
【0035】
<溶液漏出検出用成分について>
本発明の手段の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キット、および、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法に用いる溶液漏出検出用偽薬組成物とするため、人体に曝露されても安全性に関する懸念の少ない非医薬成分を含有させたものを用いる。溶液漏出検出用に適したものとするため、水溶性で、視認することができるか、または検査機器で検出することが可能な成分を用いることが好ましい。また、医薬調合用器具、医薬投与用器具や医療機器に付着しても装置を変質させ故障させることのない反応性の低い成分を用いることが好ましい。
【0036】
そして、本発明の手段に用いる溶液漏出検出用の成分としては、溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物を用いる。可食性であることから、安全性が高く、仮に人体に曝露されても人体に悪影響が及ぶ心配がとても小さい。また、染料成分であることから、溶媒となる水溶液に溶け込み、顔料のように沈殿するなど局所に偏在することがなく、検査対象となる医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの漏出条件に影響を及ぼす可能性がとても低い。
【0037】
さらに、これら溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物は、視認可能な色を有しているため、検査対象となる医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からから溶液が漏出しても、すぐに漏出箇所が視認でき、漏出判別が容易となる。また、色素は可食性で安全性が高く、実際の医薬を用いる場合に比して大変に安価なため、この可食性の色素化合物を溶液漏出検出用染料成分として含有させた医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物を、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具の基本的な使用手順の習得時に使用することで、安全な環境下においてじっくりと繰り返し訓練を行うことが可能となる。加えて、漏出後の試験検討時に用いる場合であっても、蓄積してしまっている可能性のある漏出済みの医薬の影響を受けることなく、溶液漏出検出用偽薬組成物を用いて安全な環境下で医療従事者や患者の手技を再検証することが可能となる。
【0038】
溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物は、水溶性の蛍光色素化合物を用いる。好ましくは、タール系色素、イリドイド系色素、カロテノイド系色素、フラボノイド系色素、キノイド系色素またはベタライン系色素を用いる。そして、タール系色素としては、赤色2号、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色213号、赤色214号、赤色230号、赤色231号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、緑色3号、緑色204号または青色2号など、イリドイド系色素としては、ハイメロンP−2またはハイブルーATなど、カロテノイド系色素としては、ハイメロンP−2、アナトール、クロシンG150、クロシンL、βカロテンまたはアンナットーWA−20など、フラボノイド系色素としては、ハイレッドG150、ハイレッドRA200、ハイレッドV80、アピゲニニジン、シアニジン、デルフィニジン、フィセチニジン、マルビジン、ペラルゴニジン、ロビネチニジン、トリセチニジン、ペツニジン、カプサンチン、エピガロカテキンガレート、サフラワーY1500、クルクミン、スルフレチン、ミリセチンまたはクェルセチンなど、キノイド系色素としては、コチニールまたはハイレッドSなど、ベタライン系色素としては、ハイレッドBL、インドシアニングリーン、ジンゲロールなどが好適に用いられる。
【0039】
上記の溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物は、可視光により赤色、黄色、緑色、青色などの各種の色として視認することができ、または検出器により計測することができる。また、上記の溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物は、紫外光や700nm以上の長波長の光といった、適切な励起光を照射するにより蛍光を発するものである。そこで、用いる色素ごとに分析された適切な励起波長を設定して励起することで、発する蛍光を液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC−MS/MS)、フーリエ変換型赤外分光高度法(FTIR)、HPLC、分光光度法などの各種測定方法により検出し、色素の種類や量を各々同定することが可能である。
【0040】
<バイアルについて>
溶液漏出検出用偽薬組成物に用いる可食性の色素化合物を封入して溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能に保持するものとして用いるバイアルは、放射性医薬品や化学療法剤などの抗がん剤のような医薬を封入することに一般に用いられているバイアルを用いることができる。たとえば、ガラス製バイアルを用いることができる。そして、このバイアルとしては、ゴムや樹脂などによる封止可能な栓を有し、注射針などを栓から差し込むことで内部の溶液を取り出すことが可能なものを用いる。
【0041】
<検査箇所の拭き取り具について>
検査箇所の拭き取り具は、ガーゼタンポン、綿棒、綿球、不織布、ワイプ、サンプリングシート又はクーポンなどを用いることができる。溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物を拭き取るため、予め精製水で湿潤させてから用いることが好ましい。
【0042】
<精製水について>
精製水は、溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物を湿潤させ、該精製水中に溶解させ、所望の濃度に希釈するための溶媒として用いられる。測定値のバックグラウンドが低減されるよう、ミリQ水や逆浸透処理をした水などのものを精製水として用いることが好ましい。
【0043】
<拭き取り具の密閉収納容器について>
拭き取り具の密閉収納容器は、溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物を精製水で湿潤させて拭き取ったガーゼタンポン、綿棒、綿球、不織布、ワイプ、サンプリングシート又はクーポンなどの検査箇所の拭き取り具を密閉して可能な収納容器を用いる。本発明においては、検査箇所の拭き取り具を室温で保存することが可能であるが、冷蔵や−20℃などの冷凍下で保存しても良いため、それらいずれの温度帯においても密閉して保存することができる容器を用いることが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明の手段の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用偽薬組成物、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キットを製造し使用した実施例、および、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法を実施した実施例を示す。本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【実施例1】
【0045】
医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からのからの漏出を検出すべき医薬の代用となる溶液漏出検出用偽薬組成物として、可食性の色素化合物を溶液漏出検出用染料成分として含有させることとした。そこで、その一例として、溶液漏出検出用染料成分である可食性の色素化合物として、タール系色素の赤色106号を用い、溶液漏出検出用偽薬組成物を調製した。
【0046】
溶媒として水を用い、赤色106号を希釈して、赤色106号の1%溶液、0.3%溶液、0.1%溶液、0.03%溶液溶液、0.001%溶液、0.0003%溶液溶液、0.0001%溶液をそれぞれ調製し溶液漏出検出用偽薬組成物とした。いずれの溶液も赤色が容易に視認できた。そこで、赤色が濃すぎず、適度な色あいの濃度であった0.001%溶液を更なる確認試験に用いた。
【0047】
さらに、液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析法(LC−MS/MS)を用いて赤色106号の希釈溶液に紫外領域の光をあて、蛍光強度を測定した。その結果、微量の赤色106号の存在を確認することが可能であることが明らかとなった。さらに、精製水で湿潤させたガーゼタンポン、綿棒、綿球、不織布、ワイプ、サンプリングシート又はクーポンなどの拭き取り具に様々な量の赤色106号の希釈溶液を付着させ、当該付着した赤色106号を精製水に溶かしたサンプルにて、LC−MS/MSにより蛍光強度を測定すると、10ng/cm2という極僅かな量であっても赤色106号の存在を検出することが可能であることが明らかとなった。このことから、エマルジョンのような視認できないほどの極微量な水滴として漏れが生じても、精製水で湿潤させた拭き取り具で拭き取り、計測することで、漏れ出た極微量な水滴を的確に検出することが可能であることが明らかとなった。
【0048】
さらに、赤色106号の0.001%溶液を、輸液中に投入し、その輸液をプライミングが完了し輸液を投与する状態とした輸液キットへと流入させ、輸液バッグ、輸液キットにおける輸液用配管やコネクタ、シリンジや、それらの各接続部の周囲における赤色106号の0.001%溶液の漏出状態を確認した。
【0049】
接続部を若干緩めた輸液キットを用いた場合には、緩めた接続部から赤色106号の0.001%溶液が漏れ出して赤色の水滴となっていることが容易に視認できた。輸液溶液の漏れ出しの量が多い場合には、漏れ出した部位が速やかに判別できることが明らかとなった。また、ガーゼタンポン、綿棒、綿球、不織布、ワイプ、サンプリングシート又はクーポンなどの拭き取り具で漏れ出した部位を拭き取ると、これら拭き取り具に水滴による赤色で染まった部位が生じ、一見して赤色106号の0.001%溶液が漏れ出していることを判別することができた。
【0050】
一方、接続部をほんの僅かに緩めた輸液キットを用いた場合や、輸液セットの活栓を閉鎖状態として、接続部を一旦解除したのち再接続した場合には、緩めた部位や再接続した部位には、赤色106号の0.001%溶液が漏れ出しは視認できなかった。また、ガーゼタンポン、綿棒、綿球、不織布、ワイプ、サンプリングシート又はクーポンなどの拭き取り具で漏れ出した部位を拭き取っても、赤色106号の0.001%溶液が漏れ出しているかどうかは視認によって判断することはできなかった。そこで、精製水で湿潤させた拭き取り具にて当該部位を拭き取り、LC−MS/MSにより蛍光強度を測定すると、漏れ出た赤色106号の存在を確認することができた。
【0051】
また、これらの検出サンプルを−20℃又は室温のいずれの条件で保管しても、同様に漏れ出た赤色106号の存在を確認することができた。
【実施例2】
【0052】
医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からのからの漏出を検出すべき医薬を代用するためのものとして、溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物として、赤色3号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色213号、赤色230号、黄色202号、緑色204号の溶液を用意した。そして、これらの溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけ、可視光ピークが確認された時点で送液をとめて蛍光スペクトルを測定した。さらに、上記色素化合物の溶液を希釈した10μLのサンプルをそれぞれ用意し、蛍光ピークにおける定量限界を測定した。
【0053】
その結果、各色素ごとに異なる蛍光スペクトルや最適な励起波長と蛍光ピークが得られることが明らかとなった。また、赤色3号で0.1μg/mL、赤色104号で0.02μg/mL、赤色105号で0.1μg/mL、赤色106号で0.01μg/mL、赤色213号で0.002μg/mL、赤色230号で0.02μg/mL、黄色202号で0.1μg/mL、緑色204号で0.002μg/mLが定量限界となった。このことから、可視光ピークや蛍光スペクトルを分析することで、検出される色素化合物の種類や量を特定できることが理解された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出のために、溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能な可食性の色素化合物を、溶液漏出検出用偽薬組成物、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キット、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法に用いたものとすることで、漏出すると健康上の悪影響を生じる危険性があり、かつ、高価な医薬を用いることなく、安全、低コスト、かつ、簡便に、より効果的な漏出防止対策を図ることが可能な、新たな溶液漏出検出用偽薬組成物、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出検出用キット、医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からの溶液漏出の検出方法を提供することが可能となる。さらに、複数種類の、可食性の色素化合物を含む溶液漏出検出用偽薬組成物をそれぞれ異なる箇所の輸液中に投入できるものとすることで、各色素化合物の漏出の有無を視認可能とし、又は、精製水で湿潤させ拭き取られた各色素化合物を検出し、漏出箇所を同定することが可能な新たな手段を提供することが可能となる。
【要約】
【課題】漏出すると健康上の悪影響を生じる危険性がある医薬の医薬調合用器具並びに医薬投与用器具からのより効果的な漏出防止対策ならびに漏出予防対策、および、複数の医薬を併用投与する場での溶液漏出部位の特定と漏出防止対策ならびに漏出予防対策を、安全、低コストかつ簡便に行う新たな手段の提供。
【解決手段】可食性の色素化合物を溶液漏出検出用染料成分として含有させた偽薬組成物と、溶液漏出検出用偽薬組成物に用いる可食性の色素化合物を封入して溶液漏出検出用染料成分として水溶液中に溶解可能に保持したバイアルと、検査箇所の拭き取り具と、検査箇所を湿潤させるための精製水と、拭き取り具の密閉収納容器とを含むキットとする。また、1種以上の、溶液漏出検出用偽薬組成物の溶液を輸液中に投入し、各色素化合物の漏出の有無を視認可能とし、又は、精製水で湿潤させ拭き取られた各色素化合物を検出し、漏出箇所を同定する。
【選択図】なし