(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118029
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/24 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
B60C11/24 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-47112(P2012-47112)
(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公開番号】特開2013-180707(P2013-180707A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2015年1月29日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳樹
【審査官】
田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−202902(JP,A)
【文献】
特開平10−044719(JP,A)
【文献】
特開2001−030721(JP,A)
【文献】
米国特許第03833040(US,A)
【文献】
特開2010−234559(JP,A)
【文献】
特開2002−022514(JP,A)
【文献】
特開平05−178021(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0079333(US,A1)
【文献】
特表2014−523827(JP,A)
【文献】
特表2014−516867(JP,A)
【文献】
特表2014−516868(JP,A)
【文献】
特開2009−096464(JP,A)
【文献】
特開昭62−299410(JP,A)
【文献】
特開2006−264480(JP,A)
【文献】
特開2006−056508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド面に形成される周方向に延びる主溝の溝底にウェアインジケータを有する空気入りタイヤであって、
前記ウェアインジケータには、複数の凹部が形成され、凹部が形成されていない部分が格子状になることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ウェアインジケータに於ける凹部の占有体積の割合を、凹部が形成されていないウェアインジケータの体積の10〜50%としたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ウェアインジケータに複数の凹部を形成する場合、各凹部の深さを変化させたことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ウェアインジケータに形成する各凹部の深さを、周辺領域に比べて中央領域で深くしたことを特徴とする請求項3に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、特に、主溝の溝底にウェアインジケータを有する空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トレッド部の主溝の溝底にウェアインジケータを形成してなる空気入りタイヤとして、ウェアインジケータの溝幅方向両側の主溝壁部分のうち、少なくとも片側の主溝壁部分に、トレッド踏面に対して開口する窪み部を形成するための突起部を少なくとも1つ突設した構成のものが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
トレッド部の主溝の溝底にウェアインジケータを形成してなる他の空気入りタイヤとして、ウェアインジケータのタイヤ周方向前後の溝底又は左右両側の溝壁に窪みを設けたものが公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
トレッド部の主溝の溝底にウェアインジケータを形成してなるさらに他の空気入りタイヤとして、ウェアインジケータの両側に薄い切込みを形成した構成のものが公知である(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の空気入りタイヤでは、トレッド踏面に窪み部を開口させる必要があるため、外観の点で難がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の空気入りタイヤでは、主溝に窪みが形成されているので、この窪みからクラックが発生しやすいという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献3に記載の空気入りタイヤでは、ウェアインジケータの占有体積が大きく、加硫成形時にベア(ゴム流れ不良による未加硫ゴム生地の表面露出)が生じ、外観不良の原因となる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−234559号公報
【特許文献2】特開2002−225514号公報
【特許文献3】特開平5−178021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、外観を損なったり、クラックを発生させたりすることなく、ウェアインジケータでのベアの発生を抑制可能な機能を備えた空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
トレッド面に形成される周方向に延びる主溝の溝底にウェアインジケータを有する空気入りタイヤであって、
前記ウェアインジケータには、複数の凹部
が形成され、凹部が形成されていない部分が格子状になるものである。
【0011】
この構成により、ウェアインジケータの占有体積は凹部を形成された分だけ小さくなり、この部分に使用されるゴム材料を抑制することができる。そして、体積を小さく抑えた分、加硫成形時のゴム流れ不良が発生しにくくなり、ベアの発生を抑えることができる。
また、ベアが発生しにくくなるほか、外観上も優れたものとすることができる。
【0014】
前記ウェアインジケータに於ける凹部の占有体積の割合を、凹部が形成されていないウェアインジケータの体積の10〜50%とすればよい。
【0015】
この構成により、ベアの発生を抑制しつつ、ウェアインジケータの強度を適切なものに維持することができる。
【0016】
前記ウェアインジケータに複数の凹部を形成する場合、各凹部の深さを変化させればよい。
【0017】
前記ウェアインジケータに形成する各凹部の深さを、周辺領域に比べて中央領域で深くするのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ウェアインジケータに凹部を形成するようにしたので、加硫成形時のゴム流れ不良が発生しにくくなり、外観を損なったり、クラックを発生させたりすることなく、ベアの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面のうち、ウェアインジケータを含む部分斜視図である。
【
図2】(a)は
図1の平面図、(b)はその断面図である。
【
図3】他の実施形態に係るウェアインジケータを含むトレッド面の一部を示す平面図である。
【
図4】(a)は他の実施形態に係るウェアインジケータを含むトレッド面の一部を示す平面図、(b)はそのA−A線断面図、(c)はそのB−B線断面図である。
【
図5】他の実施形態に係るウェアインジケータを含むトレッド面の一部を示す平面図である。
【
図6】他の実施形態に係るウェアインジケータを含むトレッド面の一部を示す平面図である。
【
図7】他の実施形態に係るウェアインジケータを含むトレッド面の一部を示す平面図である。
【
図8】従来例に係るウェアインジケータを含むトレッド面の一部を示す平面図である。
【
図9】従来例に係るウェアインジケータを含むトレッド面の一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1から
図3は、本実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面1の一部を示す。トレッド面1には、周方向に延びる主溝2が形成されている。また、トレッド面1には、主溝2に交差する副溝3が形成されている。そして、これら主溝2及び副溝3によって複数のブロック4が形成されている。
【0024】
主溝2の溝底には、溝底から外径方向へと突出するウェアインジケータ5(TWI)が形成されている。ウェアインジケータ5は、トレッド面1の摩耗限界を示すためのもので、ここでは1本の主溝2に対して周方向に3箇所等分に設けられている。各ウェアインジケータ5は、両側で対向するブロック4によって形成される溝壁間でつながっており、その上面には複数の凹部6が形成されている。凹部6の容積は、凹部6が形成されていないウェアインジケータ全体の体積に対して10〜50%の容積比率とされている。10%未満では、加硫成形時にウェアインジケータ5にベアが発生する恐れがあり、50%を超えると、強度面で不十分となる恐れがあるためである。
【0025】
凹部6の形成パターンとしては、例えば、次のものが挙げられる。
【0026】
図2では、凹部6は、トレッド面1の幅方向に3列、周方向に4列の合計12箇所に形成される平面視矩形状のものである。各凹部6の底面は、主溝2の溝底と面一となっている。凹部6の容積の合計は48mm
3であり、ウェアインジケータ全体の体積に対する容積比率は34%となっている。
【0027】
図3では、凹部6は平面視楕円(平面視円形状でもよい。)に形成されている。凹部6の深さは、
図2に示すものと同じであるが、凹部6を設ける数は、トレッド面1の幅方向に3列、周方向に3列の合計9箇所となっている。そして、凹部6の容積の合計は29mm
3であり、ウェアインジケータ全体の体積に対する容積比率は21%となっている。
【0028】
図4では、凹部6は平面視で前記
図2に示すものと同じ矩形状であるが、中央部2箇所の凹部6と、その周囲10箇所の凹部6とで深さが相違している。中央部2箇所の凹部6の底面は主溝2の溝底と面一となっており、周囲10箇所の凹部6は、中央部2箇所の凹部6の約半分の深さとなっている。そして、凹部6の容積の合計は28mm
3であり、ウェアインジケータ全体の体積に対する容積比率は20%となっている。
【0029】
図5では、凹部6は、トレッド面1の幅方向に3列、周方向に4列の合計12箇所に形成される平面視矩形状のものである。各凹部6の深さと、平面視で中央部2箇所の凹部6の面積とは、前記
図2に示すものと同じであるが、周囲10箇所の凹部6の面積は中央部2箇所の凹部6の面積よりも小さくなっている。そして、凹部6の容積の合計は21.3mm
3であり、ウェアインジケータ全体の体積に対する容積比率は15%となっている。
【0030】
図6では、凹部6は、トレッド面1の幅方向に3列、周方向に4列の合計12箇所に形成される平面視矩形状のものである。各凹部6の深さは前記
図2に示すものと同じであるが、平面視での開口面積は
図2に示すものよりも大きくなっている。そして、凹部6の容積の合計は77mm
3であり、ウェアインジケータ全体の体積に対する容積比率は55%となっている。
【0031】
図7では、凹部6は、トレッド面1の幅方向に3列、周方向に4列の合計12箇所に形成される平面視矩形状のものである。各凹部6の深さは前記
図2に示すものと同じであるが、平面視での開口面積は
図2に示すものよりも小さくなっている。そして、凹部6の容積の合計は11mm
3であり、ウェアインジケータ全体の体積に対する容積比率は8%となっている。
【実施例】
【0032】
表1は、前記
図2から
図7を、実施例1〜6とし、比較例1及び2との間で、不良率(ベア発生比率)、視認性、及び、耐久性を比較したものである。比較例1は、
図8に示すように、ウェアインジケータ5には凹部6は形成されていない。比較例2は、
図9に示すように、両側(主溝2の両溝壁側)の2箇所に周方向に延びる溝7が形成されている。この場合の溝7の容積の合計は7mm
3であり、ウェアインジケータ全体の体積に対する容積比率は2%となっている。
【0033】
不良率(ベア発生指数)は、実施例1〜6、比較例1、2のウェアインジケータ5を有する供試タイヤを各100本ずつ加硫成形し、そのうちの何%にベアが発生しているのかを示すものである。視認性は、比較例1の空気入りタイヤの指数を100とした場合の他の空気入りタイヤの指数を示す。指数が100よりも大きければ大きいほど視認性に優れていることを意味する。耐久性は、空気入りタイヤの摩耗末期となる距離(4万km)を走行後の外観を、比較例1の空気入りタイヤの指数を100とした場合の他の空気入りタイヤの指数を示す。指数が小さくなれば小さくなるほど、耐久性が劣化していることを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
表1から明らかなように、実施例1から5ではベア発生指数を大幅に改善でき、実施例6でも十分な効果があった。また、実施例1から6のいずれでも視認性が向上した。さらに、実施例5を除き、耐久性の面で劣化することもなかった。これらの結果から、特に、実施例1、2が好ましい形態であると判断することができる。
【0036】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0037】
前記実施形態では、副溝3を備えた空気入りタイヤについて説明したが、主溝2のみの空気入りタイヤであっても、前記ウェアインジケータ5の構成を採用することができる。
【0038】
前記実施形態では、凹部6をウェアインジケータ5の表面で格子状となるように形成したが、これに限らず、例えば、千鳥状、あるいは、放射状等、他のパターンで形成することもできる。勿論、凹部6はランダムに形成することも可能であるし、凹部6を設ける数が問題とされることもない。要は、ウェアインジケータ5の表面の少なくとも1箇所に形成されていればよい。これにより、不良率(ベア発生比率)、及び、視認性の点で効果を発揮させることができる。但し、凹部6は、視認性及び耐久性の点で、複数箇所に点対称あるいは線対称に形成するのが好ましい。
【0039】
前記実施形態では、凹部6の深さを、
図4に示すように、中央部2箇所でのみ深く形成するようにしたが、深く形成する位置は自由に設定することができる。また、深さも2段階となるようにしたが、多段階となるようにしてもよい。但し、ウェアインジケータ5の全体から見て偏りがないようにレイアウトするのが好ましい。
【符号の説明】
【0040】
1…トレッド面
2…主溝
3…副溝
4…ブロック
5…ウェアインジケータ
6…凹部
7…溝