特許第6118049号(P6118049)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6118049-積層体の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118049
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20170410BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20170410BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20170410BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20170410BHJP
   B32B 25/08 20060101ALI20170410BHJP
   C09J 7/02 20060101ALN20170410BHJP
【FI】
   B32B27/00 M
   B60C5/14 A
   B60C5/14 Z
   B29D30/06
   B32B37/00
   B32B25/08
   !C09J7/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-181491(P2012-181491)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-37116(P2014-37116A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】畠中 晃人
(72)【発明者】
【氏名】北野 秀樹
【審査官】 佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−138691(JP,A)
【文献】 特開2010−162703(JP,A)
【文献】 実開平06−020043(JP,U)
【文献】 特表2002−544364(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/119685(WO,A1)
【文献】 特開2006−169266(JP,A)
【文献】 米国特許第06524675(US,B1)
【文献】 特開2009−155504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
B29D 30/06
B60C 5/14
C09J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガスバリア層を含む樹脂フィルム層と粘接着剤層とを有する積層体の製造方法であって、該粘接着剤層の前記樹脂フィルム層との接着面に凹凸を形成し、該凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した輪郭曲線要素の平均長さRSmが1000μm以下であり、かつ該凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した算術平均粗さRaが2〜50μmであることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂フィルム層が、更にエラストマー層を有する請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記粘接着剤層がエポキシ化ジエン系重合体を含む請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記エポキシ化ジエン系重合体がエポキシ化天然ゴムである請求項3に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体の製造方法を含むタイヤ用インナーライナーの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のタイヤ用インナーライナーの製造方法を含むタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム層と粘接着剤層とを有する積層体の製造方法と、この製造方法により得られた積層体、その積層体を用いたタイヤ用インナーライナー、及びそのインナーライナーを備えたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのインナーライナー層として、従来はブチル系ゴムを主成分とするゴム層が一般に用いられていたが、近年のタイヤの軽量化の要請に伴い、低気体透過性を有する薄肉の樹脂フィルムを用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2及び3)。
従来のブチル系ゴムを主成分とするゴム層からなるインナーライナーでは気泡が入った場合は、タイヤ成型時に未加硫のインナーライナーをキリでつくなどして空気を抜いてもゴム層がキリでつくられた穴をタイヤの加硫時に自己修復するので問題がない。
しかしながら、樹脂フィルム層をインナーライナーとして用いて、樹脂フィルム層と粘接着剤層とを貼り合せる場合、層間に気泡が入ってしまうことがある。この場合、樹脂フィルム層のインナーライナーではキリでつくなどすると修復できず穴が開いたままになってしまい、インナーライナーとしての機能を失ってしまうので、タイヤ成型時にキリでつく等の補修はできなかった。
また、タイヤ成型・加硫の際の圧力で気泡とともにインナーライナーが割れて、ガスバリア層としての機能が失われたり、ガスバリア性が低下したりする恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−40207号公報
【特許文献2】特開2004−176048号公報
【特許文献3】特開2007−099146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、樹脂フィルム層と粘接着剤層との間の気泡の発生を抑えることができる積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、樹脂フィルムと粘接着剤層とを有する積層体において、粘接着剤層の樹脂フィルム層との接着面の表面性状に着目し、鋭意研究を重ねて本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[2]を提供するものである。
[1]樹脂フィルム層と粘接着剤層とを有する積層体の製造方法であって、該粘接着剤層の樹脂フィルム層との接着面に凹凸を形成し、該凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した輪郭曲線要素の平均長さRSmが1000μm以下であり、かつ該凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した算術平均粗さRaが2〜50μmであることを特徴とする積層体の製造方法。
[2][1]に記載の製造方法で得られた積層体。
[3][2]に記載の積層体を用いたタイヤ用インナーライナー。
[4][3]に記載のインナーライナーを備えたタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層体の樹脂フィルム層と粘接着剤層との間の気泡の発生を抑えることができる。そして、得られた積層体をタイヤ用インナーライナーとして使用することにより、ガスバリア性が一層良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の製造方法で得られる積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[積層体]
以下、図面を参照して本発明の製造方法で得られる積層体を詳細に説明する。図1は、本発明の製造方法で得られる積層体の一例を示す模式的な断面図である。
図1の積層体10は、樹脂フィルム層11と粘接着剤層12とを有する。
この樹脂フィルム層11は、ガスバリア層11aの単層からなっていてもよく、ガスバリア層11aの2層以上の多層よりなっていてもよく、このガスバリア層11aと他の層との2層以上の多層よりなっていてもよい。
図1に示すように、積層体10は、ガスバリア層11aとエラストマー層11bとを有することが好ましい。これにより、ガスバリア層11aの延性が低い場合でも、樹脂フィルム層11の全体的な延性を高めることができ、樹脂フィルム層11を低温環境において柔軟にすることができる。
【0010】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体10の製造方法は、樹脂フィルム層11と粘接着剤層12とを有する積層体の製造方法であって、粘接着剤層12の樹脂フィルム層11との接着面に凹凸を形成し、該凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した輪郭曲線要素の平均長さRSmが1000μm以下であり、かつ該凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した算術平均粗さRaが2〜50μmであることを特徴とする。粘接着剤層12の樹脂フィルム層11との接着面に凹凸を形成するのは、樹脂フィルム層11と粘接着剤層12との間の気泡の発生を抑えるためである。
この凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した輪郭曲線要素の平均長さRSmは、1000μm以下であることを要する。1000μm以下であれば、樹脂フィルム層11と粘接着剤層12の密着を押えて脱気しながら貼り合せがしやすいなるからである。この観点から、1〜1000μmであることが好ましく、1〜500μmであることがさらに好ましい。
また、上記凹凸のJIS B 0601:2001に準拠した算術平均粗さRaが2〜50μmであることを要する。2μm以上であれば、樹脂フィルム層と粘接着剤層との間の気泡の発生を好適に抑えることができる。また、50μm以下であれば、凹凸の加工性が向上することとなる。
【0011】
本発明の積層体10の粘接着剤層12表面の凹凸の形成方法を具体的に説明する。
第1の凹凸の形成方法は、樹脂フィルム層11と粘接着剤層12とを貼り合せる直前に、粘接着剤シートを必要なRSm及びRaとなるような形状のエンボスの付いたロールで挟んで表面に凹凸をつける。この場合、粘接着剤シートは、予め粘接着剤組成物をシート状にしておいてもよいし、エンボスの付いたロール上で粘接着剤組成物を凹凸のついたシート状に加工してもよい。
第2の表面凹凸の形成方法は、ポリシートからの転写である。通常、圧延後に、粘接着剤シートに貼りつき防止ポリシートなどを貼り合せるが、そのポリシートを必要なRSm及びRaとなるような形状にして、粘接着剤シートに転写させる。ポリシートは粘接着剤層12を樹脂フィルム層11と貼り合せる直前に剥す。
なお、凹凸の形成方法としては、上記の形成方法に限定されるものではない。
予め粘接着剤シートを準備する場合の粘接着剤シートの製造方法として、例えば、押出機等を用いて粘接着剤層のシートを作製する方法が挙げられる。
【0012】
<多層構造体>
本発明に係る樹脂フィルム層11はガスバリア層11aとエラストマー層11bとを合計で3層以上有する多層構造体であることが好ましく、5層以上有する多層構造体であることがより好ましく、7層以上有する多層構造体であることがさらに好ましい。樹脂フィルム層11が、低気体透過性であり、かつ低温環境における耐クラック性に優れた積層体となるからである。多層構造体の層の数の上限は特に限定されないが、2000層以下が好ましい。
【0013】
この多層構造体は、ガスバリア層11a(以下、「A層」と略称することがある。)及びエラストマー層11b(以下、「B層」と略称することがある。)以外のC層等を有することも可能である。また、A層及びB層の積層順としては、例えば、
(1)A,B,A,B・・・A,B(つまり、(AB)n
(2)A,B,A,B・・・・・A(つまり、(AB)nA)
(3)B,A,B,A・・・・・B(つまり、(BA)nB)
(4)A,A,B,B・・・B,B(つまり、(AABB)n
等の積層順を採用することができる。また、その他のC層を有する場合、例えば、
(5)A,B,C・・・A,B,C(つまり、(ABC)n
等の積層順を採用することができる。なお、上記(1)〜(5)において、nは1以上の整数である。
【0014】
特に、ガスバリア層11a及びエラストマー層11bの積層順としては、上記(1)、(2)又は(3)のように、ガスバリア層11aとエラストマー層11bとが交互に積層されていることが好ましい。このようにガスバリア層11aとエラストマー層11bとが交互に積層された積層体に、活性エネルギー線を照射してもよく、これにより積層される各層間の結合性が向上し高い接着性を発現することができる。その結果、当該多層構造体の層間接着性ひいては低気体透過性、耐屈曲性等を格段に向上させることができる。また、ガスバリア層11aとエラストマー層11bとを交互に積層することで、ガスバリア層11aが両面からエラストマー層11bに挟まれるため、ガスバリア層11aの延性がより向上される。ガスバリア層11aとエラストマー層11bとが交互に配設されることにより、ガスバリア層11aの延性が低い場合でも、樹脂フィルム層11の全体的な延性をさらに高めることができ、樹脂フィルム層11を低温環境においてさらに柔軟にすることができる。
【0015】
この多層構造体においては、上記ガスバリア層11a及びエラストマー層11bの一層の平均厚みは、それぞれ、好ましくは0.001〜40μmであり、より好ましくは0.001〜10μmである。ガスバリア層11a及びエラストマー層11bの一層の平均厚みを上記範囲とすることで、多層構造体の全体の厚みが同じである場合でも数を増やすことができ、その結果、当該多層構造体の低気体透過性、耐屈曲性等をさらに向上させることができる。
【0016】
なお、当該多層構造体にあっては、上記範囲の厚みを有するガスバリア層11aと共に、エラストマーを含む樹脂組成物からなるエラストマー層11bが積層されているため、ガスバリア樹脂自体の延性が低い場合でも、延性の低い樹脂組成物からなるガスバリア層11aの延性をより高めることができる。これは、延性に優れたエラストマー層11bに、延性の低い樹脂組成物からなるガスバリア層11aを薄く積層させることで、この延性の低い樹脂組成物が、延性の高い状態に転移するためと考えられる。本発明者は、上記事実に着目し、ガスバリア層11aは一般に延性が低い材料からなるが、このように各層の厚みを非常に薄くすることで、熱可塑性樹脂フィルムを含む層に求められる低気体透過性と耐屈曲性とを高度に両立できる。そのため、当該多層構造体は、屈曲などの変形をさせて使用する場合でも、低気体透過性等の特性を維持することができる。
【0017】
ガスバリア層11a一層の平均厚みの下限としては、0.001μmが好ましく、0.005μmがより好ましく、0.01μmがさらに好ましい。一方、ガスバリア層11a一層の平均厚みの上限としては、40μmが好ましく、10μmがより好ましく、7μmがさらに好ましく、5μmがさらに好ましく、3μmがさらに好ましく、1μmがさらに好ましく、0.5μmがさらに好ましく、0.2μmさらには0.1μmが特に好ましく、0.05μmが最も好ましい。
【0018】
ガスバリア層11a一層の平均厚みが上記下限以上であれば、均一な厚みで成形することが容易となり、当該多層構造体の低気体透過性及びその耐屈曲性が向上する。逆に、ガスバリア層11a一層の平均厚みが上記上限以下であれば、当該多層構造体全体の厚みが同じである場合、ガスバリア層11aの延性が向上し、当該多層構造体の耐久性及び耐クラック性が向上することとなる。なお、ガスバリア層11aの一層の平均厚みとは、当該多層構造体に含まれる全ガスバリア層11aの厚みの合計をガスバリア層11aの層数で除した値をいう。
【0019】
エラストマー層11b一層の平均厚みの下限としては、0.001μmが好ましく、ガスバリア層11aと同様の理由により0.005μmがより好ましく、0.01μmがさらに好ましい。一方、エラストマー層11b一層の平均厚みの上限としては、40μmが好ましく、20μmがより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。エラストマー層11b一層の平均厚みが上記上限以下であれば、当該多層構造体全体の厚みが同じである場合、当該多層構造体の耐久性及び耐クラック性が向上することとなる。なお、エラストマー層11bの一層の平均厚みも、当該多層構造体に含まれる全エラストマー層11bの厚みの合計をエラストマー層11bの層数で除した値をいう。
【0020】
なお、エラストマー層11b一層の平均厚みに関しては、エラストマー層11b一層の平均厚みのガスバリア層11a一層の平均厚みに対する比(エラストマー層11b/ガスバリア層11a)が1/3以上であることが好ましく、1/2以上であることがより好ましい。また、上記比が1以上、すなわちエラストマー層11b一層の平均厚みがガスバリア層11a一層の平均厚みと同じ又はそれ以上であることがさらに好ましく、2以上であることが特に好ましい。ガスバリア層11aとエラストマー層11bとの厚みの比をこのようにすることで、当該多層構造体が全層破断に至るまでの屈曲疲労特性が向上する。
【0021】
当該多層構造体の厚みとしては0.1μm以上1,000μm以下が好ましく、0.5μm以上750μm以下がより好ましく、1μm以上500μm以下がさらに好ましい。当該多層構造体の厚みを上記範囲とすることで、上記のガスバリア層11a及びエラストマー層11bの一層の平均厚みを上記範囲とすることと相まって、空気入りタイヤのインナーライナー等への適用性を維持しつつガスバリア性、耐屈曲性、耐クラック性、耐久性、延伸性などをさらに向上させることができる。ここで、多層構造体の厚みは、多層構造体の任意に選ばれた点での断面の厚みを測定することにより得られる。
【0022】
≪ガスバリア層≫
上記ガスバリア層11aは、60℃、65RH%における酸素透過係数が、1.0×10-10cm3・cm/(cm2・sec・cmHg)より小さいガスバリア性樹脂からなることが、タイヤの内圧保持性を高めるために、ガスバリア層11aを薄くすることができ、タイヤ用インナーライナーとして用いた場合、タイヤの重量を十分に軽量化することができるので好ましい。
樹脂フィルム層11は、7.0×10-10cm3・cm/(cm2・sec・cmHg)より小さい酸素透過係数(60℃、65RH%)を有することが好ましい。
なお、ガスバリア層、エラストマー層、樹脂フィルム層等の酸素透過係数は、JIS K 7126−1:2006「プラスチック−フィルム及びシート−ガス透過度試験方法−第1部:差圧法」に従って、各ゴム組成物の酸素透過係数を測定する。具体的には、GTR−TEC社製、商品名「GTR−10X」にて60℃、65RH%で酸素透過係数を測定する。
【0023】
ガスバリア層11aに用いられるガスバリア性樹脂については、所望の空気バリア性(特に酸素バリア性)を確保できるものであれば特に限定されない。例えば、ポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体、変性エチレン−ビニルアルコール系共重合体、ウレタン系重合体、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系重合体又はジエン系重合体等が挙げられる。また、これらの樹脂を、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、前記ガスバリア性樹脂については、OH、S、Cl又はFの極性基を有する樹脂のうちの少なくとも1種であることが好ましい。前記ガスバリア性樹脂がこれらの極性基を有することで、凝集エネルギー密度が高まる結果、ガスバリア性をさらに向上できるからである。
さらにまた、前記極性基を有する樹脂が、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エチレン−ビニルアルコール共重合体から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。かかる樹脂は、空気透過量が低く、ガスバリア性に優れるためである。
【0024】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、エチレン含有量が10〜60モル%であることが好ましく、20〜55モル%であることがより好ましく、25〜50モル%であることが一層好ましく、30〜48モル%であることがさらに好ましく、35〜45モル%であることが一層好ましい。エチレン含有量が10モル%以上であれば、耐クラック性、耐疲労性及び溶融成形性が向上し、一方、60モル%以下であれば、ガスバリア性を十分に確保できることとなる。また、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ケン化度が80%以上であることが好ましく、ケン化度が90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが一層好ましい。ケン化度が80%以上であれば、ガスバリア性及び成形時の熱安定性がより良好となる。さらに、該エチレン−ビニルアルコール共重合体は、メルトフローレート(MFR)が190℃、2160g荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることがさらに好ましい。
【0025】
上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体に、エポキシ化合物を反応させて得ることができる。かかる変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、通常のエチレン−ビニルアルコール共重合体に比べて弾性率が低いため、層曲時の耐破断性が高く、また低温環境における耐クラック性にも優れている。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体に反応させるエポキシ化合物としては、一価のエポキシ化合物が好ましい。二価以上のエポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体と架橋反応し、ゲル、ブツ等を発生して、熱可塑性樹脂フィルムを含む層の晶質を低下させることがある。なお、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造容易性、ガスバリア性、耐屈曲性及び耐疲労性の朧点から、一価のエポキシ化合物の中でも、グリシドール及びエポキシプロパンが特に好ましい。また、上記エポキシ化合物は、エチレン−ビニルアルコール共重合体100質量部に対して1〜50質量部を反応させることが好ましく、2〜40質量部を反応させることがさらに好ましく、5〜35質量部を反応させることが一層好ましい。
【0026】
さらに、ガスバリア層11aは、架橋されていることが好ましい。ガスバリア層11aが架橋されていれば、タイヤの加硫工程で積層体が変形して不均一となることを抑制でき、ガスバリア層11aのガスバリア性、耐屈曲性、耐疲労性が向上する。ここで、架橋方法としては、エネルギー線を照射する方法が好ましく、該エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、これらの中でも電子線が特に好ましい。電子線の照射は、ガスバリア層11aをフィルムやシート等の成形体又は多層構造体に加工した後に行うことが好ましい。ここで、電子線の線量は、10〜60Mradの範囲が好ましく、20〜50Mradの範囲がさらに好ましい。電子線の線量が10Mrad未満では、架橋が進み難く、一方、60Mradを超えると、成形体の劣化が進み易くなる。
多層構造体に加工した後に架橋処理をすれば、活性エネルギー線の照射によって、ガスバリア層11aとエラストマー層11bとの界面で分子間の架橋反応が生じ、強固に結合していると考えられ、高い層間接着性が発現される。
また、ガスバリア層11aは、粘接着剤層12との粘着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熟風処理、オゾン、紫外線照射処理等の処理をしてもよい。これらの中でもコロナ放電処理が好ましい。
【0027】
≪エラストマー層≫
上記多層構造体は、耐水性及びゴムに対する密着性の観点から、さらにエラストマー層11bを一層以上含むことが好ましい。このエラストマーとしては溶融成形のためには熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
この熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(以下、「TPU」と称することがある)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー及びフッ素樹脂系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの中でも、成形容易性の観点から、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられ、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーがより好ましく用いられる。
ここで、上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ポリオ−ルと、イソシアネート化合物と、短鎖ジオールとの反応によって得られる。ポリオール及び短鎖ジオールは、イソシアネート化合物との付加反応により、直鎖状ポリウレタンを形成する。上記ポリオールは、熱可塑性ウレタン系エラストマーにおいて柔軟な部分となり、イソシアネート化合物及び短鎖ジオールは硬い部分となる。なお、熱可塑性ウレタン系エラストマーは、原料の種類、配合量、重合条件等を変えることで、広範囲に性質を変えることができる。かかる熱可塑性ウレタン系エラストマーとしては、ポリエステル系ウレタン、ポリエーテル系ウレタン等が好適に挙げられる。
【0028】
<多層構造体の製造方法>
上記多層構造体の製造方法は、ガスバリア層11aとエラストマー層11bとが良好に積層・接着される方法であれば特に限定されるものではなく、例えば共押出し、はり合わせ、コーティング、ボンディング、付着などの公知の方法を採用することができる。これらの内、ガスバリア層11a形成用の樹脂組成物とエラストマー層11b形成用の樹脂組成物とを用いた多層共押出法により成形する方法が好ましい。
多層共押出法においては、ガスバリア層11a形成用の樹脂組成物とエラストマー層11b形成用の樹脂組成物とは加熱溶融され、異なる押出機やポンプからそれぞれの流路を通って押出ダイに供給され、押出ダイから多層に押し出された後に積層接着することで、当該多層構造体が形成される。この押出ダイとしては、例えばマルチマニホールドダイ、フィールドブロック、スタティックミキサーなどを用いることができる。
【0029】
<粘接着剤層>
本発明に係る粘接着剤層12を構成する粘接着剤組成物は、変性ジエン系ポリマーを含有することが好ましい。ここで、変性ジエン系ポリマーとは、極性官能基により変性されたジエン系ポリマーのことをいう。
上記極性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イソシアネート基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基及びスズ含有基が挙げられ、特にエポキシ基、イソシアネート基が好ましい。
上記変性ジエン系ポリマーとしては、変性天然ゴム及び/又は変性合成ゴムが挙げられる。変性合成ゴムとしては、変性ポリイソプレンゴム(IR)、変性ポリブタジエンゴム(BR)、変性スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、変性スチレン-イソプレン共重合体(SIR)などが挙げられる。これら変性天然ゴム及び変性合成ゴムは、低温環境における耐久性に優れる。
上記変性ジエン系ポリマーとしては、エポキシ化ジエン系重合体であることが好ましい。このエポキシ化ジエン系重合体としては、エポキシ化天然ゴム(以下、「ENR」と略記することがある。)及び/又はエポキシ化ポリブタジエンゴム(以下、「EBR」と略記することがある。)が好適に用いられる。
【0030】
(エポキシ化天然ゴム(ENR))
本発明に好適に用いられるエポキシ化天然ゴム(ENR)は、市販のエポキシ化天然ゴムを用いてもよいし、天然ゴムをエポキシ化して用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては、とくに限定されるものではないが、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行うことができる。過酸法としてはたとえば、天然ゴムに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。この反応により天然ゴムの分子中に存在する二重結合がエポキシ化し、この構造はプロトン核磁気共鳴スペクトル(NMR)や赤外吸収スペクトル(IR)から明らかにされる。また、IRと元素分析からエポキシ基の含有量が測定される。
このエポキシ化天然ゴムは天然ゴムよりも空気透過性が少なく、空気透過率が大幅に減少する傾向にある。
【0031】
このエポキシ化天然ゴム(ENR)は、エポキシ化率の異なるENRを少なくとも2種含有することが好ましい。これにより、樹脂フィルム層とゴム状弾性体層との接合において、エポキシ化度の低いENRでゴム状弾性体層との接着性、エポキシ化率の高いENRで樹脂フィルム層との接着性を向上させることができる。
ここで、エポキシ化率Aモル%とは、天然ゴムにおける二重結合のA%がエポキシ化されていることを云う。なお、前記エポキシ化率は、オキシランに転化されたゴム中にもともと存在するオレフィン不飽和位置のモル%を意味し、「オキシラン酵素濃度」と呼ばれることもある。
【0032】
エポキシ化率の異なるENRとしては、(a)エポキシ化率5〜30モル%のENRと、(b)エポキシ化率40〜90モル%のENRの少なくとも2種の組み合わせが好ましく、また、粘接着剤層12を構成する粘接着剤組成物のゴム成分中の前記ENR組み合わせの合計含有量は、80〜100質量%であることが好ましい。粘接着剤層12を構成する粘接着剤組成物のゴム成分中の前記ENRの組み合わせの合計含有量が80〜100質量%の範囲にあれば、粘接着剤層12における成分同士の相溶性が向上し、接着力及び粘接着剤層12の耐久性が向上する。このような観点から、粘接着剤層12を構成する粘接着剤組成物のゴム成分中の前記ENR組み合わせの合計含有量は、90〜100質量%であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0033】
また、低エポキシ化率のENRとして、エポキシ化率5〜30モル%のENRを用いることにより、天然ゴムの性質を保持し、粘接着剤層12の−20℃における動的貯蔵弾性率E2’の上昇を抑制して、低温環境におけるクラックの発生を防止することができる。高エポキシ化率の天然ゴムとして、エポキシ化率40〜90モル%のENRを用いることにより、ENRの特性を生かして、樹脂フィルム11中の官能基と作用し、得られる積層体10のガスバリア性を向上させることができる。
本発明においては、前記の低エポキシ化率のENRと、前記の高エポキシ化率のENRとの含有割合は、前記したそれぞれの効果のバランスの観点から、質量比(低エポキシ化率のENR/高エポキシ化率のENR)で20:80〜80:20の範囲であることが好ましい。
【0034】
≪加硫剤、加硫促進剤≫
粘接着剤層12を構成する粘接着剤組成物は、加硫性を付与するために、加硫剤、あるいは加硫剤と加硫促進剤を含有することができる。
上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5質量部である。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアゾリルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)等のチアゾール系、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3質量部である。
【0035】
≪任意成分≫
粘接着剤層12を構成する粘接着剤組成物は、前記の成分以外に、必要に応じ、充填材、粘着付与樹脂、ステアリン酸、亜鉛華、老化防止剤などを含有させることができる。
(充填材)
充填材としては、無機フィラー及び/又はカーボンブラックが用いられる。無機フィラーとしては特に制限はないが、例えば湿式法によるシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイト、マイカ、スメクタイト、有機化モンモリロナイト、有機化マイカ及び有機化スメクタイトなどを好ましく挙げることができる。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、カーボンブラックとしては、従来ゴムの補強用充填材などとして慣用されているものの中から任意のものを適宣選択して用いることができ、例えばFEF、SRF、HAF、N339、IISAF、ISAF、SAF、GPFなどが挙げられる。
これら充填材の含有量は、粘接着剤組成物のゴム成分100質量部に対して10〜100質量部含むことが好ましく、タック性及び剥離抗力などの点から、カーボンブラックと共に、無機フィラー5質量部以上含むことが好ましい。
【0036】
(粘着付与樹脂)
粘接着剤層12に粘着性を付与する機能をもつ粘着付与樹脂としては、例えばフェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、C5 、C9 石油樹脂、キシレン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられるが、これらの中で、フェノール系樹脂、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン樹脂及びロジン系樹脂が好適である。
フェノール系樹脂としては、例えばp−t−ブチルフェノールとアセチレンを触媒の存在下で縮合させた樹脂(p−tert−ブチルフェノール・アセチレン樹脂)、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとの縮合物などを挙げることができる。また、テルペン系樹脂、変性テルペン系樹脂、水添テルペン系樹脂としては、例えばβ−ピネン樹脂やα−ピネン樹脂などのテルペン系樹脂、これらを水素添加してなる水添テルペン系樹脂、テルペンとフェノールをフリーデルクラフト型触媒で反応させたり、あるいはホルムアルデヒドと縮合させた変性テルペン系樹脂を挙げることができる。ロジン系樹脂としては、例えば天然樹脂ロジン、それを水素添加、不均化、二量化、エステル化、ライム化などで変性したロジン誘導体などを挙げることができる。
これらの樹脂は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、特にフェノール系樹脂が好ましい。
この粘着付与樹脂は、粘接着剤組成物のゴム成分100質量部に対し、5質量部以上用いることが好ましく、より好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは5〜30 質量部の割合で用いられる。
【0037】
(軟化剤)
軟化剤としては、プロセスオイル及び可塑剤が挙げられる。プロセスオイルとしては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル等が挙げられ、可塑剤としては、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOP:例えば、大八化学工業株式会社製)が好適に挙げられる。
【0038】
粘接着剤層12を構成する粘接着剤組成物は、前記各成分を、例えばバンバリーミキサーやロールなどを用いて混合することにより調製することができる。
【0039】
≪粘接着剤層の厚み≫
上記粘接着剤層12の厚みは、好ましくは0.1〜2mmであり、より好ましくは0.1〜1mmであり、さらに好ましくは0.1〜0.4mmである。0.1mm以上であれば、熱可塑性樹脂フィルムとカーカスとを強固に接合することができ、低温環境における耐クラック性の向上機能が良好に発揮される。2mm以下であれば、空気入りタイヤの軽量化が達成される。
【0040】
[空気入りタイヤの製造方法]
本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、積層体10を粘接着剤層12が外側となるようにしてタイヤ成形ドラムに巻き付けてインナーライナーとし、さらにタイヤ用部材を巻き付けた後に前記成形ドラムを抜き取ってグリーンタイヤとして、前記グリーンタイヤを加熱加硫して空気入りタイヤとするものである。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各特性の測定方法及び評価方法について先に説明する
【0042】
[各特性の測定方法及び評価方法]
(1) ENRのエポキシ化率
ENRを重水素化クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴(NMR(日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズ))分光分析により、炭素−炭素二重結合部と脂肪族部の積分値h(ppm)の比から以下の算出式を用いてエポキシ化率を算出した。
(2)輪郭曲線要素の平均長さRSm及び算術平均粗さRa
JIS B 0601:2001に準拠して測定した。
(3)気泡残りの有無
タイヤの樹脂フィルム層と粘接着剤層との界面を目視により評価した。
【0043】
[製造例1]樹脂フィルム層(21層フィルム)の作製
EVOH[(株)クラレ製「E105」{エチレン含有量:44モル%、ケン化度:99.9%、メルトフローレート(MFR):5.5g/10分(190℃、2160g)}]と、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)[(株)クラレ製「クラミロン3190」]とを使用し、2種21層多層共押出装置を用いて、下記共押出成形条件で21層構造のフィルム層(TPU層/EVOH層/TPU層…EVOH層/TPU層。TPU層:11層とEVOH層:10層とを交互に配設した。)を作製した。各層の厚みは、TPU層は2μm、変性EVOH層は1μmである。
【0044】
多層用のフィードブロック温度を210℃、ダイを208℃で21層の多層フィルムを押し出した。
各樹脂の押出機仕様:
熱可塑性ポリウレタン:25mmφ押出機「P25−18AC」[大阪精機工作株式会社製]
EVOH:20mmφ押出機ラボ機ME型「CO−EXT」[株式会社東洋精機製]
Tダイ仕様:500mm幅2種21層用[株式会社プラスチック工学研究所製]
冷却ロールの温度:50℃
引き取り速度:4m/分
【0045】
実施例1及び2並びに比較例1及び2
(1)粘接着剤層の調製
第1表に示す粘接着剤組成物の成分組成にて、常法に従って混練りし、押出機を用いて、厚み400μmのシート状に成形してなる粘接着剤シートを調製した。
(2)積層体の作製
製造例1で得た樹脂フィルム層(21層フィルム)の片面に前記の粘接着剤シートを貼合し、樹脂フィルム層と粘接着剤層とを有する積層体を作製した。粘接着剤シートの貼合時に、粘接着剤シートの樹脂フィルム層側表面をエンボスの付いたロールで挟んで表面に凹凸をつけた。実施例1及び2並びに比較例1及び2の凹凸のRSm及びRaは第2表に示すとおりである。
【0046】
(3) タイヤの作製
タイヤ成形ドラム上に、積層体の樹脂フィルム層(21層フィルム)側がドラムと対面するようにして、実施例1及び2並びに比較例1及び2の積層体の各々を巻き付けてインナーライナーとした。次いで、積層体上にカーカスを巻き付け、さらに、ベルト層、トレッド部用ゴム部材、及びサイドウォール部用ゴム部材を順次巻き重ねた後、ドラムを抜き取ってグリーンタイヤとした。このグリーンタイヤを加熱加硫して、空気入りタイヤ(195/65R15)を作製した。
得られた実施例1及び2並びに比較例1及び2の4種類のタイヤについて、気泡残りの有無を上記測定方法評価した。その結果を第2表に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
[注]
1)ENR25:エポキシ化天然ゴム(商品名「ENR25」、RRIM社製)(エポキシ化度(エポキシ化率):25モル%)
2)ENR50:エポキシ化天然ゴム(商品名「ENR50」、RRIM社製)(エポキシ化度(エポキシ化率):50モル%)
3)カーボンブラック:東海カーボン株式会社製HAF、商品名「シーストNB」
4)老化防止剤:化学名 N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン、住友化学株式会社製、商品名「アンチゲン6C」
5)粘着付与剤:p−tert−ブチルフェノール・アセチレン樹脂、BASF社製、商品名「KORESIN」(登録商標)
6)軟化剤:パラフィン系オイル:出光興産株式会社製、商品名「プロセスオイルPW−380」
7)加硫促進剤CZ:化学名 N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラーCZ−G」、
【0049】
【表2】
【0050】
第2表から明らかなように、実施例1及び2の積層体は、気泡残りが全く認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の積層体は、この積層体を用いた空気入りタイヤ用インナーライナー及び該インナーライナーを備える空気入りタイヤの気泡残りを好適に抑制できるので、ガスバリア性が一層良好となり、従来に比べて、さらに長期間使用できる空気入りタイヤが得られる点で、産業上有用である。
[符号の説明]
【0052】
10 積層体
11 樹脂フィルム層
11a ガスバリア層
11b エラストマー層
12 粘接着剤層
図1